謎のプリンス/1~5章

Last-modified: 2021-10-11 (月) 18:01:18
 

1章

むこうの大臣

■日本語版 1章 p.5
むこうの大臣

■US版 p.
The Other Minister

■試訳
もう一人の大臣

■備考

  • 1章の章題。
  • 「むこう」と言うと、「こちらで無い」「あっち側」「自分と関係無い側」ってニュアンスなんですよね。
    マグルの首相は、徐々にファッジに親近感を感じて、今回は運命共同体であることを認識するのが、この章のテーマと思うのですが。


元首

■日本語版 1章 p.6
さる遠国の元首

■US版 p.
the President of a far distant country

■試訳
遠い国の大統領

■備考

  • 「元首」にビックリ。「President」は誰が訳しても「大統領」でしょうが。
  • 「さる遠国」も古い表現な気がする。


記憶を押しつぶす

■日本語版 1章 p.6
(略)不愉快な数々の記憶を押しつぶすのに精一杯で(略)

■UK版 p.8
(略)and trying to suppress unpleasant memories(略)

■試訳
不愉快な数々の記憶をふり払うのに精一杯で

■備考

  • 「記憶を押しつぶす」という言葉に違和感。
  • 原文も「抑圧する」みたいな意味のsuppressです。
  • でも日本語では不愉快な記憶などを思い出さないようにすることをあまり「押しつぶす」とはいわないので、
    普通の訳者なら「ふり払うのに精一杯で」などとしたと思います。
  • 電子版では「不愉快な記憶の数々を頭の隅に追いやるのに精一杯で」に修正されている。


輝かしい自己満足

■日本語版 1章 p.20
しかし、そんな気持は、輝かしい自己満足で、たちまち掻き消されてしまった――――

■US版 p.
It was, however, eclipsed almost immediately by a glow of smugness at the thought (略)

■試訳
しかしながらそんな気持ちは、心地よい優越感の前にたちまち薄れてしまった――

■備考

  • 邦訳の方は、なぜ自己満足が「輝かしく」と形容されているのか、その理由がはっきりしない。
  • 「心地よさ」「満悦」「高揚」などと訳すべきglowを「輝き」と訳してしまい
    「自己満足の輝き」では変だから「輝かしい自己満足」としてお茶を濁したものと思われる。
  • smugnessは「ひとりよがり」「自己満足」などと訳される言葉だが、
    ここではようやく気持ちの上でファッジの上に立った喜びに浸っているので「優越感」がピッタリだと思う。


連中は転覆、騒動を引き起こし

■日本語版 1章 p.21
「存在があからさまになって以来、連中は転覆、騒動を引き起こしていましてね。(略)」

■UK版 p.17
'Since they have moved into the open, they have been wreaking havoc. (略) '

■試訳
「その復活を公にしてからというもの、闇の勢力は大惨事を引き起こしてきました。(略)」

■備考

  • 「転覆」って引き起こすもの?そもそも原文に転覆なんてなくない?
  • ‘wreak havoc’は大惨事を引き起こすということだよね。
    なんで「転覆、騒動」にしたんだろう。わからん。
  • 橋が落とされたりしたせいでたくさんの人が死んだのだからまさに大惨事。騒動なんてもんじゃないよ。
  • 電子版では「存在があからさまになって以来、連中は破壊騒動を引き起こしていましてね。(略)」に変更されているが、修正としてはやや不十分。


下手人

■日本語版 1章 p.23
下手人

■試訳
犯人

■備考

  • 下手人て表現どうなん…犯人でいいじゃねえか。


2章


3章

流言蜚語

■日本語版 3章 p.60
流言蜚語

■試訳
流言飛語

■備考

  • 通常は「流言飛語」と書きます。
  • 蜚は常用漢字ではないので一般の書籍で使うことは推奨されないはず。
    常用漢字に当てはまらない漢字を無意味に多用しているのも、邦訳の大きな問題の一つではなかろうか。


名前を明かすことを拒んだ

■日本語版 3章 p.60-61
忘却術士の一人は、昨夜魔法省を出る際に、名前を明かすことを拒んだ上で、動揺した様子で次のように語った。

■US版 p.
said one agitated Obliviator, who refused to give his name as he left the Ministry last night.

■試訳
動揺したある忘却術士は昨夜魔法省を出た時、匿名を条件にして次のように語った。

■備考

  • 新聞記事だから「名前を明かすことを拒んだ」より「匿名を条件に~」の方が良い気がする。


巷では

■日本語版 3章 p.61
問題の予言がどのようなものかは知られていないが、巷(ちまた)では、「死の呪文」を受けて生き残った唯一の人物であり、
さらに問題の夜に魔法省にいたことが知られている、ハリー・ポッターに関するものではないかと推測されている。

■UK版 p.43
The nature of that prophecy is unknown, although speculation is rife that it concerns Harry Potter,
the only person ever known to have survived the Killing Curse, and who is also known to have been at the Ministry on the night in question.

■試訳
予言の内容その他については不明だが、ハリー・ポッターに関するものではないかという憶測が広まっている。
彼は、「死の呪文」を生き延びたことで知られる唯一の人物であり、問題の夜に魔法省にいたことも知られている。

■備考

  • こういう長い文章は、頭から訳していくとわかりやすくなります。
  • 「巷(ちまた)では」というような原文にない言葉の使用は避けた方がよいでしょう。


学校に帰る学生

■日本語版 上巻3章 p.63
秋の新学期にホグワーツ魔法魔術学校に帰る学生の安全を確保するため、(略)

■UK版 p.44
(略)ensure the safety of students returning to Hogwarts School of Witchcraft and Wizardry this autumn.

■試訳
この秋、ホグワ―ツ魔法魔術学校に戻る生徒の安全を確保するため、(略)

■備考

  • 「新学期」に該当する単語が原文中にはありません。ていねいに説明しないと読者が理解できないだろうという配慮が見え隠れしてイラっとする。
  • 「帰る」という表現が不自然。生徒が全員、学校に帰属しているみたいです。こんな新聞記事を書いたら、親御さんに怒られそう。
    家には帰りますが、学校には戻りましょう。(学校に「帰る」感覚なのはハリーぐらい)
  • 「学生」でもいいですが、後の方に「生徒」と訳しているのだから、統一して「生徒」に。


暗くなる前に完了

■日本語版 3章 p.64
外出は、可能なかぎり暗くなる前に完了するよう段取りすること

■US版 p.
Wherever possible, arrange to complete journeys before night has fallen.

■試訳
外出の際はできるだけ暗くなる前に帰宅するよう心がけること

■備考

  • 日本語として変な表現。


お墨付き

■日本語版 3章 p.66
「お墨付き」

■UK版 p.46
missive

■試訳
「信書」

■備考

  • ダンブルドアが迎えにくるという手紙を原書ではletterとせずmissiveとカタい言葉を使ってるから訳も工夫しようとしたのだろうが、
    「お墨付き」は権威ある人からの許可や保証のことだから少しおかしい。
    この手紙が本物でダンブルドアが本当に来るという保証もなかったし。
  • ここは「信書」くらいでよかったのでは。


吹き出したい気持ち

■日本語版 3章 p.68
大変だという焦りと、吹き出したい気持ちの両方を感じながら、

■UK版 p.48
Feeling both panicky and close to laughter,

■試訳
大変だという焦りとこぼれそうになる笑みを両方感じながら、

■備考

  • 吹き出すというと、なにか滑稽なシーンを目撃したときに、ぷっと笑う感じがします。
  • birst into laughter であれば、間違いなく「吹き出す」でいいんですが、
    close to laughter だと「笑い出しそうな気持ち」ぐらいではないかと思います。


4章

空っぽの旅籠

■日本語版 4章 p.88
ダンブルドアはきびきびした歩調で、空っぽの旅籠や何軒かの家を通り過ぎた。近くの教会の時計を見ると、ほとんど真夜中だった。

■UK版 p.60
He set off at a brisk pace, past an empty inn and a few houses. According to a clock on a nearby church, it was almost midnight.

■試訳
(略)人気(ひとけ)のない宿屋(略)

■備考

  • 籠と教会が近くにあることが想像できない。
  • こういうときは「人気(ひとけ)のない宿屋」と訳せばいい思う。
    emptyだから「空っぽ」とかどんだけ語彙がないのか…
  • 魔法界が古風だから「旅籠」があると思っていた人がいたけど
    これがマグル界の宿屋だとはわからなかったりするのかも。


手水場

■日本語版 4章 p.104
「いや、手水場を拝借したいが」ダンブルドアが言った。

■UK版 p.70
‘No, I was wondering whether I might use your bathroom,’said Dumbledore.

■試訳
「いや、お手洗いを使わせていただきたいのだが」ダンブルドアが言った。

■備考

  • スラグホーンの家のシーン。
  • 「手水場」はすごく和風な感じがするし、こんな言葉使いのダンブルドアは原作より老人っぽく感じる。


取らぬふくろうの羽算用

■日本語版 4章 p.119
「取らぬふくろうの羽根算用はせぬことじゃ」

■UK版 p.79
‘Don't count Your owls before they are deliverd,’

■試訳
「結果が届かないうちにふくろうの数を数えてはならん」

■備考

  • 魔法薬のO.W.L.試験でO(優)は取れていないに違いないと心配するハリーに向かってダンブルドアがいった言葉。
  • 原文は“Don't count your chickens before they are hatched”(卵が孵るまえにひよこの数を数えるな)という英語のことわざ(結果はでるまでわからんよ、ということ)のもじりかな。
  • 通常日本のことわざでは「取らぬ狸の皮算用」がそれに相当すると言われているが、ここでもってくるのは苦しいような。
    「ふくろうの羽算用」っていうのが意味不明だし、「取らぬ狸の~」は結果に過剰な期待を寄せることなのにハリーは逆に余計な心配をしているのですごく違和感がある。
  • 無理して日本のことわざを当てはめず、そのまま「結果が届かないうちにふくろうの数を数えてはならん」とでも訳して
    これがダンブルドア流のことわざだという注釈でもつければよかったのに。


5章

風船ガムピンクの髪

■日本語版 5章 p.123(※原文は改行なし)
ハリーは、トンクスがやつれたように思った。病気かもしれない。無理をして笑っているようだったが、
見た目には、いつもの風船ガムピンクの髪をしていないので、間違いなく色褪せている。

■US版 p. (※原文は改行なし)
Harry thought she looked drawn, even ill, and there was something forced in her smile.
Certainly her appearance was less colorful than usual without her customary shade of bubble-gum-pink hair.

■試訳
トンクスは無理をして笑っているようだったが、ハリーには病気でやつれているように感じた。
髪の色は普段の鮮やかなピンクではなく、普段より色鮮やかではなかった。

■備考

  • 風船ガムピンクって何?
  • 「けばけばしいピンク」とか「派手なピンク」じゃダメだったのか?
  • トンクスの髪は茶色だったっていうんだから、
    「色褪せている」じゃなく「いつものようにカラフルじゃない」って直訳のほうがよくない?
    色褪せただとくすんだピンクなのかなって思ってしまう。
  • 前の文が一部くっついてるな。


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