小説/サイドストーリー/グルーヴガールズ

Last-modified: 2020-04-14 (火) 00:05:05

1.萌衣

「え、軽音楽?萌衣ちゃんが?」
幼なじみの照華に興味があるんだと話してみた。もちろん吹奏楽に一生懸命になれないわけではないし、ほんの興味で言ってみただけ。
それでも照華は目を輝かせてこう語る。
「いいね、私もやってみたい。けど軽音楽ってトランペットでもいいのかな?」
「やりたい楽器でやればいいと思うよ!」
軽音楽は言葉としては知ってるけど、正しい意味はわからない。きっと照華も同じように思っているし、調べて来なきゃ。

「で、ギターの人が歌って、みんなで演奏………って感じなんだって。」
「ベースとドラム、ギター、あとはキーボードがいると良いんだね、そしたらまず真っ先に思いつくのは…」
ステージで一緒に演奏する、そのために一緒に練習出来るメンバーを探すならやっぱり吹奏楽部の中が一番見つかりやすい。
そして、その中で一人だけ目立っている部員といえば…
「「Ariaさんだ…」」
部活の中で、Aria先輩は曲の中でピアノを弾いていることが多い。ピアノを使わない日はそもそも部活にいなかったりするからか、いつも目立っている気がする。
「Ariaさん、話したことないしちょっと怖いな…留学生なのかな?」
「顔は日本人だけど、名前は英語で書かれてるし、どうだろうね…」

2.照華

「今日は高等部1,2年が研修があるので休み、3年生は自主パート練習を希望したので、残ったのは中等部の2,3年生と入部の決まってきた1年生です。簡単な曲を配布しますので、一回合わせでやってみましょう!」
2,3年は合わせて14人しかいないからか、演奏はイマイチ上手くいっていないように聞こえた。私:照華はこの中で唯一のトランペットパート。誰よりもしっかり、演奏しなきゃ…!

練習終了後-

Ariaさんはピアノの近くで荷物を片付けている。その長い髪を邪魔そうにしていて、何故かカッコいい。
「あの、Ariaさん。話があって。」
「新入生のトランペッターさんだよね。どうしたの?」
留学生ではなさそう。…まあそれは分かってたけど。
「私と、萌衣ちゃんってクラリネットの一年生と一緒に軽音楽するんですけど、一緒にやりませんか?」
「ふーん、軽音楽。バンドね。吹奏楽部結構忙しいけど、間を縫って部活としてやれるなら協力したいな。」
もう少し苦労するかと思ってた。よし、あとは今の私たちのことを一通り説明して…
「まずAriaさんはキーボードで、あとドラムとベースが足りないんです。」
「うーん……ベースの方は心当たりがあるよ。折角だから誘ってみようか?」
「え、ホントですか?」
まさかここまで早く進むなんて思ってなかった。それじゃ、と言いかけたところでAriaさんがまた口を開く。
「ちょっと色々準備したいから、三日後の土曜午後に二人で学校来れる?」
準備…?なんの準備が必要なんだ…??



3.Aria

軽音楽か…軽音楽……今まで学んできたクラシックとはまた違う音を出さないといけない。ベースとギターが中心の、私たちの年代の若い人が聴くあの音。厳しい親に許可をとることは難しそうだから、ここは秘密裏に…。

土曜日-
迎え入れた照華さんと萌衣さんを、誘う張本人である友達の緑谷 咲に紹介し、器楽室へと連れて行った。二人は「あ、パーカッションの」とか言ってた。部活の土日練習は許可されているため、広い校舎も基本的には空いている。
「咲は1年の時ちょっと使ったベースが上手かったよね、その前から触ってたんだよね?」
「あー、まあほんのちょっとだけ」
「でさ、私とこの子たちと、一緒にバンドやらない?弾きたくないなら諦めるんだけどさ。」
「ふーん、バンド…ただでさえ吹奏楽部で結構毎日疲れてるのに、そんな日を増やすのは嫌かも」
しばらくの沈黙。ここにいる4人は全員その大変さを分かってると思っている。
「ベースは今は寮に置いてないんでしょ?家から私のやつ持ってきたけど弾いてみる?」
咲がうなずくのを見ると、(父の)エレキベースを備品のスピーカーに繋げて手渡す。言わずとも弾いてくれそうな気が、協力してくれそうな気がする。
「緑谷先輩とAriaさん、1年の時クラス同じだったんですね…。」
ついさっきまで黙ってみていた1年2人のうち、ボーカルをしたいと言う萌衣がこう話した。咲は答える代わりにベースを弾き始めた。
♪♪♪
「上手…!」
「でもまあ、暇に困るよりはましかもね」
「そうだ。みんなに言ってなかったけど、私は曲のアレンジくらいだったら出来るから、その辺は心配しないで大丈夫。」
少し後で思い出した。小学生の頃から一度こんなこと言ってみたかったんだったっけ。



4.咲

♪♪♪
Ariaは寮にある多目的室に突然入ってきた。一人でうるさくしても問題ない場所はここしかなかった。
「咲、ベースやってるんだね。」
「まあね、ホントにあの子たちと一緒にやるなら少しはならしておかないと」
「私、咲が何となく張り切ってる気持ちも分かる気がする。ちゃんとした後輩が出来るのって初めてだからじゃないかな。」
これは[図星]自分の顔が見えなくても赤くなっていくのがわかる。少し恥ずかしいし.
「まあね…。」
「そうだよね~。私もそんな感じで協力してるのはあるけどね…。」
Ariaはキーボードを背負っていた。普通より一回り小さいキーボードを準備している彼女-音楽をするAria-は、どこかいつもの雰囲気と違う気がした。
一通り思い思いの音を鳴らしたあと、いつもしているような雑談をした。父親がどうとか、数学と理科の進級テストのこととか、流行りの音ゲーのこととか色々。コミュニケーションが苦手でも、一度仲良くなった数人とは沢山話ができる、そんな私。

「そういえば、ドラムってどうするのかな」
「確かに5人集まってどういう音楽をしたいかによって変わってくるから、萌衣さんとまた話してくるよ。」
なんて話をしながら自室に戻った。



5.沙羅
あらすじ-
今朝は仲良くしている後輩の萌衣ちゃんがバンドをしたいから是非メンバーに入ってくれと頼んできた。楽しそうだと賛成すると突然今日の放課後集まるように言われた。

「あ、平先輩と萌衣ちゃん、何してるんすか」
「こんにちは咲先輩、沙羅せんぱいがドラムで協力してくれるって!」
「そういえば平先輩は一応ドラム出来るんでしたっけ、同じパーカッションですしそんなに驚きませんけど」
「あ、どうも...。楽器は打楽器以外疎いので…ドラムで良いなら是非やらせてください…」
しばらくして、吹奏楽でもピアノとトランペットで異彩を放つあの二人 - Ariaさんと照華ちゃんがやってきた。
「沙羅先輩、こんにちは。」「初めましてですね!」
はじめまして、と一言返すと、他の4人はメンバーが揃ったことへの喜びを共有し始めた。一通り聞いた後、Ariaさんから
「じゃあさ、どんなバンドにしたい?」
という問いがあった。
「周りを驚かせるほどカッコいいバンドにしたいな~、」
と萌衣ちゃんは話しはじめた。
「わたし実はね、近江原さんって人に去年の軽音楽の映像見せてもらったんだけど、それがカッコよくって凄かったの!」
「ちょっと待って?それって4人組でラウンチパッドを使う人がいるバンド?」
咲ちゃんが口を挟む。
「え、何?ラウンチパッド?」
「あ...まあいいや、あとで聞かせて...私も、観客をあっと言わせるようなカッコイイバンドにしたい、かも」
過去に何かあったみたいだ。私がこの中で一番の先輩なんだけど...
「あたしは、トランペットを吹きたい、かな。......えっと、勿論ギターも練習するよ!だけど得意な楽器だから、」
トランペットへの拘りが人一倍強い照華ちゃん。ここにいる1年生2人はどことなく私とシンパシーを感じる。
「大丈夫。みんな得意は違うし、トランペットの入ったアレンジを私が作ればいいんだよ。私はね、実は音楽の経験なんてそんなに役に立たないと思ってたけど、みんなを見てたらちょっと色々やってみたいなって気持ちになったから、だから積極的に色々やりたい。」
Ariaさんのフォロー。話し方が私より大人だ。学園に来てからこういう驚きは少し減ったけど。
私がやりたいバンド。想像していなかったけど、みんなの話を聞いてなんとなくわかった気がする。
「私は...」
私は、想いを伝える音楽を作りたい。
メンバーの、観客の心の底に響くような音楽をしたい。



そうして中学部軽音楽バンド「GROOVE GUNGUN!!」が完成した。
音楽ゲームと密接に関わる学園に通っているからか、みんなの音楽の理想は音楽ゲームの楽曲のそれと似ていることに着目し、音楽ゲームになぞらえた名前を付けた。

器楽準備室 火曜日-
Aria「ここまでに色々考えて、夏ごろに毎年行われてる学祭って行事があるんだけど、そこでパフォーマンスをするっていうのはどう?」
笛口「いいと思う!高校の方とかぶらないと良いね!」
緑谷「学祭…ね(1年の時の嫌な思い出が蘇る..)」
平「その前に発表の練習、しておいた方が良いよね…緊張しちゃって……」
町田「時間はたっぷりありますし、焦ることはないですよ、平せんぱい!…そういえば、Ariaさんの名前の由来、どうしてAriaなのか聞いてませんでしたね。教えてくれますか?」
Aria「これは隠してる訳じゃないのだけれど、本名は春姫アリアよ。小学校の頃になんとなくハンネでAriaって付けたら良い感じでハマっちゃって。」
笛口「らしくないフワフワした理由ですね…良いんじゃないですか?」
Aria「なにその反応…?まあ別にいいけどさ。」

Groove GUNGUN!!としてのグルーヴな音楽は、まだ始まったばかりだ。