小説/サイドストーリー/各々のバレンタイン

Last-modified: 2022-08-08 (月) 03:29:32

各々のバレンタイン

著:ひゃっか

~短編集 各々のバレンタイン~

1.涼介の場合

どうも今日は毎年の恒例行事とも言える行事がある日らしい。
何やらチョコを貰える日らしいが、過去に貰えたものといえば軽蔑と暴言、あと暴力。
そんな希望の無い日だったのを変えたのはまあ、言わなくてもわかると思う。
「旦那様!これを渡すのだ!」
そう、笹川である。
もう一度言おう。笹川である。
宿泊研修の時にわかっている事だが、彼女の料理はとてもではないが食べれるレベルではない。たとえどんな料理を作っても甘いのである。
ここで出す結論は1つ。
「気持ちだけ貰っておくよ」
断ることだ。だが…
「そういう訳にもいかないのだ!」
うーん、引き下がらない。

 

結局このままなし崩し的に貰ってしまった。
怪しいものが入っているとは思わないが、人が一から作った、ましてや笹川のチョコなんて…あ、美味い…というか甘い。
もしかしたら自分より美味しいかも…
ちなみにこの後宇都宮からも貰った。
ただ、それだけの日だった。

2.Felixの場合

「そういえば照美よ」
「何?」
夕陽の色に染まった廊下のすぐ近くの扉で2人が話している。
「あー…いや、そういえば今日はバレンタインデーとやらいうイベントらしいじゃないか」
「ふぅん…ってことは」
突然照美の食指が動いたように、いや実際動いて彼の頬に当て…
「私のチョコが欲しいんだ?」

 
 

「…ドイツでのバレンタインをご存知か?」
まるで平静を装っているが、彼の心臓はバクバクである。
「まあ、知らなくてもいいのだが…ドイツ式のバレンタインでは愛する者に花束を渡すものだ…まあ、つまりだな」
バツが悪そうな彼は手に握っていたものを彼女に
「君に幸多かれ、これは私からのプレゼントだ」
その手にはオレンジ色の薔薇が7本握られていた。

ちなみに…花言葉は絆や信頼、7本の意味は密かな恋である。

3.近江原の場合

「ねえ」
「なんですか菊池さん」
「…優白でいいわ」
黄昏時、白と橙の眩しさが目に入る。
「で、要件はなんでしょな」
「今日はバレンタインでしょう?」
近江原が目を逸らす。なんせ宿泊研修のあれを目の当たりにしているのだ。
「まあ、世間一般的にはそういいますね…ってまさか」
「…ごめんなさい、チョコは用意出来なかった」
近江原はほっとした
「でもその代わりに…」
のもつかの間。
「私が…プレゼントだから…」
白の柔肌の一部が露になる。
彼女の頬は彼女の眼の色のように紅く染まっている。
「んー…まあ」
しかし、そんな決死の告白を近江原は…
「今は君の気持ちに応えられない、けどいつか必ず応えてみせるよ、いつになろうとも、ね…あ、ともう1つ」
「もう…1つ?」
「今日はうちで食べていかない?」

 

このあと家で鍋パーティした。

4.劉の場合

「ヤッホーRYU!」
「おお、Leon殿か!」
相も変わらずハイテンションな2人。
留学生ってこんな陽気なものなのだろうか?
「That's Right!さあ、chocolateを渡すのデース!」
「中国には单身狗という言葉がありましてだな!」
「What's that?」
寂しげに劉が答える。
「ようは一人ぼっちの悲しいヤツって意味だこのすっとこどっこい!」
…前言撤回。寂しげではなく楽しげである。
「Alone?まさかRYUも」
「答えるまでもねぇ!」
「HAHAHA!どうやらWeはassociateみたいデース!」
2人は結託したかのように息を合わせた。なんだお前ら。
「じゃあやることは一つだけやの!」
「さあ、chocolateを渡すのデース!」
「ならこの巧克力を渡そうではないか!」
「Hmmm…なんデスかこれは?」
「黒い雷つーやつだ!味は保証するぜよ!」

 

余談だがこの後値段がバレて劉はLeonにボコられた。曰く「Ladyの純情を弄ぶなんてサイテーな男デース!」とのこと。
うーむ、わからん。