小説/サイドストーリー/花は爛漫、咲き乱れ。

Last-modified: 2021-08-20 (金) 00:24:50

著:100-KA RYO-RANG

 

なぜ隣に彼女が寝ているのだろうか?
昨日の曖昧ながら継ぎ接ぎの記憶を辿り、酒の影響を未だに受けている重い眼を開きながらそう思いに耽ける後姿は何やら寂しそうで、忸怩たる有様であった。

 

EX話:花は爛漫、咲き乱れ。

 

さていつ頃であったか。記憶に留めている限りでは最初に出会ったのはかなり最近なはずであるが。しかし、何か懐かしい雰囲気を醸し出していた。旧来の幼馴染に久々に会った時に感じる感情だろうが、過去に会った記憶など毛頭ないはずである。だが、曰く彼女によれば間違いなく過去に会っているはずではないか?との話であった。このような性格の友人など過去に会った記憶は無いはずだが。
流石に気が付かないなんてことは無いが私のことをその時から、あるいは私が出会う以前から好いているような立ち振る舞いをされた。当初は人違いを疑ったがどうも私だとわかって行っているらしい。
ともかく、だ。最初の出会いはそれまで経験のない熱烈的なものであったが、まさに彼女の性格を表すのにピッタリなものであっただらう。
そして夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎ、春になる。それを3度ほど感じ取れた時に進学を考えると会うのもここまでだろうな、と思っていた。しかし、天は私に何をしたのか?進学先の、しかも同じアパートの隣同士になってしまったのである。これには私も泣きたい気持ちになった。
とはいえど流石に毎日は会わないだろう、そんな淡い期待はすぐに消し飛んだ。なんせ毎日訪ねてくるのだ。当初は無視していたが、私も流石に世間体には勝てない。そうして家に招き入れる事となったのだが…なんと居座り続けようとしたのである。流石にそれはやめてほしい、と諭したが結論から言えば無駄な時間であった。最終手段を用いてなんとか退かすことが出来たとはいえ、この一連の流れを毎日する身にとっては胃がもたない。だが、引っ越してすぐに引っ越すのも考えものだろう。
どうしようか、と悩んでいる内に一年以上が経過していたのはまた別の話である。
さて、酒も抜けただろうし最初に戻ろうか。昨日はやれ誕生日だなどと彼女はワインやチューハイなどの酒と共に家に突撃してきた。流石に遠慮したが、当人は既に酔っ払っているような風貌で聞く耳を持たず、仕方なく絡まれることにした。結果、こうなっている。
よく酒を飲み、起きると記憶をケロッと忘れるような人が漫画の世界では多いがそんなことは無く、全て覚えてしまっている。だからこそ、口にしたくないのである。
さて、どうしたものか。

副題:愛は絢爛、咲き誇り。

 
 
 

幼い頃から彼は私の憧れでした。
何となく感じとれたのは私は将来この人と結婚する、と絶対的な自信がその時はありました。
でも、小学生になった時、その人はいなくなってしまったのです。後で知った事なのですが、親の都合で引っ越したらしいのです。けど、幼い私は涙を流したのを覚えています。
小学生になると様々な話題が耳に入りました。当然、他の人の好きな人とかも噂程度には耳にした記憶があります。でも、私には憧れの人しか好きになっていなかったのです。
中学生になると他の学校の多くの人が同じクラスになりました。でも、憧れの人はいません。
きっと、いつかまた会いに来ると期待を抱きましたが結局9年間会えなかったのです。そうこうしているうちに受験シーズンとなりました。
悲しいことに私は頭が良い方ではありませんし、悪い方だったので行ける高校はかなり絞られていました。
どれにしようか帰路で迷っていて、ふと家のポストを開くと封筒が入っているのを確認しました。
当然聞いたことの無い学校でした。ただ、確信したのです。ここに憧れの人がいる、と。結論は居ました。けれど、その憧れの人は…私のことを…覚えていないみたいで。
9年も会っていなかったら普通そうですよね。
だからこそ、私はそんな名前なんだと思う。

 

-あなたの名前の由来?
-そうね。
-本当は違う文字だったのにあの人ったらこれにするんだって言って聞かなかったのよ。
-それでも愛情は変わらないわよ?なんていったって私の子なんですから。

 

時に人を恋い慕い、時に切なく胸がつまってしまう。
そんな今の私を表す文字なのかもしれない。

 
不要かもしれない解説
  • 前半の「花は爛漫、咲き乱れ。」は涼介が語り手、後半の「愛は絢爛、咲き誇り。」は笹川が語り手である。
  • 「花は爛漫、咲き乱れ。」及び「愛は絢爛、咲き誇り。」は、「クックロビン音頭」の歌詞より引用。
  • また、「愛は絢爛、咲き誇り」の「愛」は笹川の名前である「アイ」とのダブルミーニングを意味している。また、そのアイは「愛」と「哀」の相対する意味を持っている、とも感じ取れるかもしれない。