読売ジャイアンツの本拠地・東京ドームの蔑称。略してからくりとも。
空調操作によって自軍の飛距離を伸ばしドームランを量産しているという噂から命名された。また、このような経緯から空調も類義語として使われる。
もっとも、これはあくまで噂に過ぎず、半分ネタとして使われているものである。
ドームラン疑惑が生まれた経緯やその真偽など詳細はドームランの項を参照されたい。
パーク・ファクター 
本塁打パークファクター(セイバーメトリクスで使われる本塁打の出やすさを統計的に表した数値)で見ると、東京ドームは2000年代以降1.0から1.5程度の数値で推移しており、ホームランの出やすい球場であることは疑いようがない(1.0が平均的球場であり、1.5ならば平均の1.5倍本塁打が出やすいということである)。しかし、断トツの一位かというとそうでもなく、神宮球場や横浜スタジアムより低い年度も多い*1。
なお、2010年以前は球場ごとに使用球が違ったため、本塁打が出やすいのは球場のせいなのか使用球のせいなのかが判別できなかった。そこで、ここでは一例として統一球が導入されて球場ごとの違いが明確になった2011年のパークファクターを記載する。
球場名 | 得点PF | 本塁打PF | 三塁打PF | 二塁打PF | 安打PF |
明治神宮野球場 | 1.22 | 1.69 | 2.08 | 0.95 | 1.08 |
---|---|---|---|---|---|
横浜スタジアム | 1.22 | 1.29 | 0.54 | 1.28 | 1.13 |
東京ドーム | 0.92 | 1.29 | 0.33 | 0.99 | 0.92 |
京セラドーム | 0.78 | 1.18 | 0.26 | 0.97 | 0.90 |
西武ドーム | 1.20 | 1.10 | 1.66 | 0.99 | 1.08 |
広島市民球場 | 1.05 | 0.98 | 1.50 | 1.08 | 1.12 |
千葉マリンスタジアム | 1.02 | 0.85 | 2.00 | 1.06 | 1.00 |
札幌ドーム | 0.85 | 0.85 | 1.43 | 0.94 | 0.94 |
福岡ドーム | 0.88 | 0.83 | 0.79 | 0.95 | 0.92 |
宮城球場 | 0.96 | 0.81 | 0.82 | 1.00 | 0.98 |
阪神甲子園球場 | 0.94 | 0.77 | 1.30 | 0.95 | 1.00 |
ナゴヤドーム | 0.72 | 0.38 | 1.06 | 0.82 | 0.83 |
本塁打パークファクター降順。球場のネーミングライツは省略。
※色分け凡例
各PF最高値:太字赤
各PF上位2,3位:赤
各PF下位2,3位:青
各PF最低値:太字青
データ出典:『2012プロ野球オール写真選手名鑑』(日本スポーツ企画出版社、2012)P.188-191
各球場の形状 
東京ドームで本塁打が出やすい理由として「単純に小さい球場だから」と言われることがある。これに対し、かつては「東京ドームは中堅122m両翼100mであり、中堅118m両翼95mの甲子園よりも大きい」という誤解をするニワカファンが多数いた。
そこで、ここでは12球団の本拠地のサイズを比較してみる。
球場名 | 中堅 | 中間 | 両翼 | フェンス |
甲子園 | 118m | 118m | 95m | 3m |
札幌ドーム | 122m | 116m | 100m | 6m |
ナゴヤドーム | 122m | 116m | 100m | 5m |
ZOZOマリンスタジアム | 122m | 116m | 100m | 4m |
京セラドーム大阪 | 122m | 116m | 100m | 4m |
メットライフドーム | 122m | 116m | 100m | 4m |
マツダスタジアム | 122m | 116m | 左翼101m | 3m |
右翼100m | ||||
楽天生命パーク | 122m | 116m | 100m | 2m |
神宮球場 | 120m | 112m | 98m | 3m |
横浜スタジアム | 118m | 111m | 94m | 5m |
PayPayドーム | 122m | 110m | 100m | 4m |
東京ドーム | 122m | 110m | 100m | 4m |
※比較を容易にするため数値は全て小数点以下四捨五入。中間部の距離で降順。
東京ドームは、ホームから中堅・両翼までの距離は平均的な数値だが、ホームから中間部分(左中間・右中間)までの距離については12球団本拠地で最小であることが分かる。
一方、甲子園はその逆で、中堅・両翼までの距離は小さいが、中間部分までの距離は日本最大である。
このことは、両球場を重ね合わせて見ると一目瞭然である。
甲子園は左中間・右中間が大きく膨らんでいるのに対し、東京ドームは全く膨らみがなく直線的である*2。
東京ドームでは、この非常に浅い左中間・右中間になんでもない外野フライ(と思われた打球)がギリギリで飛び込むシーンが良く見られ、ドームランという言葉が使われる一因にもなっている。
東京ドームが特殊形状になった経緯 
それでは、なぜ、東京ドームはこのような極端な形状なのか。それは東京ドーム建設時の事情に秘密がある。公認野球規則では
両翼は320フィート(約98メートル*3)以上、中堅は400フィート(約122メートル)以上であることが優先して望まれる。
【付記】1958年6月1日以降プロフェッショナル野球のクラブが建造する競技場は、両翼まで最短距離は325フィート(約100メートル)を必要とする。
との規格が定められている。つまり、ルール上は両翼100m中堅122mが必要ということである。これは国際規格に倣ったルールであった。
もっとも、前段については、両翼98m中堅122mが「望まれる」だけであるから必ずしも守る必要はなく、後段の付記についても「1958年以降にプロ球団が新球場を作る場合は」両翼100m以上にしなければならないというだけであって、それ以前に建築された球場やプロ野球での使用を予定せずに作られた球場は対象外であった。そのため、東京ドームが起工された1985年の時点で両翼100m中堅122mの基準を満たす球場は一つもなかった。
そんな中でプロ野球本拠地として新球場の東京ドームを建築することが決まったが、このルールを遵守して両翼100m中堅122mにしてしまうと他球場と比較して極めて巨大な球場となってしまい、本塁打が全く出なくなってしまうとの懸念が生じた。そこで、両翼100m中堅122mのルールを守りつつ他球場と同様のサイズにするため、苦肉の策として左中間・右中間の膨らみのない特殊な形状が採用されたのである。
現在では、他球団も次々と両翼100m中堅122mを満たした球場を建設した結果、東京ドームが逆に日本最小クラスの球場となっているのである。
これが東京ドームのもう一つのからくりである。