【SS】塵は掃除しなくては

Last-modified: 2024-01-24 (水) 18:22:29
R-18R-18Gに注意

第一節

「ぐひひひひ…やはり天魔大陸の女は格別だな…」

淫らな水音が響く室内。
そこにいたのは、見ただけで吐き気を催す醜悪な男と、その従者と思しき筋肉質な男。
それらが裸になってあるものを囲み、性欲を処理していた。
それらの性欲処理に使われているあるものとは、紛れもなく生きた魔界族の女。
この国は…「オレさまのスゲーくに」は、女性に人権がない、男性のためだけの国だった。
女は抵抗すれば殺される、抵抗しなくてもぐちゃぐちゃに犯されいずれは殺される。
この国で女に生まれることは、もしくは、この国に女の身で踏み入ることは、はっきり言って死に等しい。
日中夜中問わず女の涙が止まぬこの国で、私たちに明日なぞ来ないと、女たちは思っていた。

「(だれか………たすけ………て…………)」

声にならない声で、女が助けを求めた次の瞬間…
轟音が、鳴り響いた。

「ぐひっ?!なんだ?!」

男どもは轟音に怯え、女から離れる

「ブタヤロウ様!大変です!」
「ブタヤロウじゃない!ブ・ターヤロ様だ!」
「ブタ!大変です!」
「直さぬか愚か者がぁ!」
「侵入者です!侵入者が現れm「ご紹介どうも」

主人に異常を報告しようとしていた従者の首が、突然宙を舞い、そしてごとりと音を立てて落ちた。
あたりには従者の血と肉が飛び散り、下品に飾られた高級な調度品の数々を赤黒く染めていく。
首無しとなった従者の後ろには、従者が報告しようとした異常の正体が存在していた。

「あー、えー、ただいまご紹介に預かりました、侵入者です。
今日はおめぇら豚どもを血祭りにあげに来ましたぁ」

異常の正体は、この無限世界に生きとし生けるもの全てが知るような有名人…八星翔だった。

「(翔………様…………)」

「なっなぜだ?!なぜ天魔大陸の住人(お前)が此処に居る?!
ここはお前らには決して感知できn「うるせぇよ豚ァ!」

突然声を上げた翔の手によって、従者の眼前に先程の光景がフラッシュバックする。
2mはあろうかという肉の塊のような、人の姿をした塵が、一瞬にして細切れとなり、その切り刻まれた肉塊がぶつかった衝撃で、女は気絶する。
肉塊から飛び散った血肉は再度部屋を汚し、もう元々の様子を思い出せる者がいなくなる程に、部屋は赤黒く穢れた地獄絵図と化す。

「豚がぶひぶひ泣き喚いてもカミサマには届かねぇんだよ下等存在ィ!!」

人だったモノを楽しげに嗤いながら踏み潰している者を見た従者の反応は二つ。

「ゔぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!!」

錯乱して斬りかかる者と

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

命乞いをする者。

しかしどちらも効果はなかった。

「ぁぁぁぁぁ「邪魔ァ!」
「ごめんなさいごめんなs「うるせぇ!」

攻撃も命乞いも気に留めることすらなく、なにもかもを一方的に、そして楽しげに蹂躙するその姿は、奇跡的に最後まで生きていた従者の目にはこう写った…

「…………うつく…しい…」

今蹂躙者がいる館に残った最後の男は、過程はどうあれ、幸せな最期を迎えたのだった。

「はぁ…久しぶりにハイになっちまった」

館の全ての男を殺戮した翔は、気絶した女を小脇に抱え、適当に拵えた即席の椅子に腰を下ろし、休んでいた。
あれほど大量の人間を殺害し、その血肉を浴びたにもかかわらず、彼の服や身体には一点の血痕すらない。

あいつら(・・・・)に出番やるの忘れちまったわ…
ゴネられっかもなぁ…めんどくせぇ…」
「…ま、いっか。
あいつらにゴネられるくらいで金貰えるんだったら安い安い」
「さーてと、窓から殺戮ショーの観戦といこうかねぇ」

何故か血を流す椅子(・・・・・・・・)の上で、彼はとびきり不気味に嗤った。

第二節

この塵の国に侵入した侵入者は、たった三人だった。
一人は、ある場所を除く屋内の生命体を蹂躙した八星翔。
では、残りの2人は…

「………」
「おい!そこのクソガキ!どかねぇとぶっ殺すぞ!」

街の真ん中で、フードを目深に被った青年が因縁をつけられている。
あたりには人が集まり、ひそひそと青年を馬鹿にするような話をしていた。

「うーわ、かわいそ」
「あいつに目ぇつけられたらこの国じゃもう生きてけねぇってのに…あいつ馬鹿じゃねぇの?」

青年は、気にしていないようだった。
しかし、因縁をつけた男の手に、裸で泣く女性たちに繋がる鎖が握られていることが分かると、青年はフード越しでもわかるほどに顔を顰める。

「あぁん?なんか文句あんのかよぉ?
俺は金があるから女を抱けるんだよ!金がねぇやつはお家に帰って貧相なチンコ扱いてろ!げへへへへへへへへへ!!!」

鎖を引っ張りながら下品に笑う、もはや人の顔を貼り付けただけの肉と性欲の権化。
ソレの笑い声が、突然止んだ。

「げへ?おれの…腕は………?」

「………お探し物は、これかな?」

青年の手には、ソレが探していた、ソレの腕が握られていた。
ソレの腕に握られていた筈の鎖は、切断された状態で地に落ちている。

「げひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!!!」

腕を失いパニックになったソレを、青年は無言かつ全力で殴り飛ばす。
血の混じった吐瀉物を吐きながら、ソレは天高くまで飛んでいって消えた。

ソレを殴り飛ばした青年を、女は感謝の念を、男は恐怖の念を込めて見つめる。

「…………クソガキぃっ!」

しばらく膠着していたが、1人の男が銃を取り出すと、他の男どもも思い思いの武器を取り出す。
数多の武器に囲われてなお、青年は薄ら笑いを崩さない。

「くたばれぇっ!!!」

複数人の男が銃を一斉に放つ。
青年は弾丸が届く前に一瞬にして女を空高く(安全圏)へと逃し、弾丸の雨を女の代わりに全て受ける。
1人の男がほくそ笑んだ…その刹那。

「…ん?なんだこのくさr

男の首にかかった鎖が、男の首を一瞬にして折り、命を盗る。
煙の中から現れたフードの青年の正体は、一度見れば忘れないような、目に焼き付くほど奇抜なものであった。

「全員逮捕ね、肉団子ども」

半身は赤い坊主頭に女性的な服、もう半身は青いショートボブに男性的な服。
左手には異様に長い鎖を持ち、右手には拳銃を持った彼の名は…
性犯罪者殲滅委員会総会長にして天魔大陸警察警視総監、安心院煌輝であった。
彼の身体には、確かに銃弾が撃ち込まれた跡があった。
しかし、彼は疲弊も負傷もしている様子はない。
男も、彼に受け止められた女も、誰もがきょとんとした顔で彼を見つめた。

「どうしたのかな?幻を撃ったような顔をして?」

彼は笑った。
笑いながら、女たちを亜空間へと逃す。

「………っがあ!」

男の1人が、再び動き出す。
斬りつけられた彼の身体からは、確かに血が流れていた。

「っは!やっぱり避けていただけのようだな!だが近接攻撃なら避けようg

ゼロ距離で彼は男の眉間を撃ち抜く。
撃ち抜かれて脳の機能を失った男は力無く斃れ、石畳に血と脳漿を滲ませていく。

「痛いよね、斬られたらそりゃ。
でもほら、もう治ったよ。」

流れる血は、止まっていた。
男どもの心が、石畳と共に赤黒い絶望に染まった。

「あ…がっ………」

この国の屋外にいた最後の男は、彼に首をへし折られて死んだ。
よってこの国の男は、とある場所の内部を除いて全滅したことになる。

「やー疲れた。
ちゃんとした魔装備買わないとなぁ…服がぼろぼろだよ…」

彼の身体には、傷ひとつついていなかった。
しかし、彼が生命体である証拠は、戦いの中で流れた彼の血と、ぼろぼろになった彼の服が証明している。

「ほんとは、私がぶっ殺したかったんだけど…」
「…あんなに怒ってる彼は見たことがないし、ここは大人しく従っておくとするかな」

第三節

「どういうことだえ~? 奴隷どもの献上がないえ~
おいおまえ、さっさと連れて来させないと処刑するえ!」
「もっ申し訳ありません! ただ今連絡が途絶えておりまして…」
「言い訳はいいえ! おまえ口答えしてうざいからやっぱ今すぐ処刑してやるえ!」
「ひっひぃぃぃぃそれだけはご勘べ…ん…………」

恐慌する執事は、突然に黙った。
先程から騒ぎ立てているこの国の主…ゴッドマスターは、不審に思い話しかける。

「あ? どうしたえ?」

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