【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS / VERSE )】【マップ一覧( LUMINOUS / VERSE )】
| 名前 | タクヤ |
|---|---|
| 年齢 | 2歳(人間年齢29歳) |
| 職業 | 元ホスト/テーマパーク再生家 |
- 2025年7月16日追加
- VERSE ep.ORIGINマップ3(進行度1/VERSE時点で205マス/累計265マス)課題曲「luminoid love PART2」クリアで入手。
かつてホストクラブ『TopDreamLight』の頂点として有名だった元ホスト。
クビになって路頭に迷う中、色々あって廃園危機のテーマパーク『グンマーファミリーパーク』を再建する事になったのだが……。
スキル
| RANK | 獲得スキルシード | 個数 |
|---|---|---|
| 1 | 【HARD】 ジャッジメント(VRS) | ×5 |
| 10 | ×5 |
【HARD】ジャッジメント(VRS)
- 高い上昇率の代わりに、強制終了のリスクを負うスキル。
- GRADE初期値はジャッジメント【SUN】と同じ。
- 【HARD】オーバージャッジ(VRS)よりも許容MISS数が10個多く強制終了のリスクが低い代わりに、同GRADEでは上昇率が20%少ない。
- GRADE100を超えると、上昇率増加が鈍化(+0.3%→+0.2%)する。
- GRADE201以上も効果が上昇するようになった。GRADE202以上でゲージ9本に到達可能。
- スキルシードは300個以上入手できるが、GRADE300で上昇率増加は打ち止めとなる。
- LUMINOUS PLUSまでに入手した同名のスキルシードからのGRADEの引き継ぎは無い。
効果 ゲージ上昇UP (???.??%)
MISS判定20回で強制終了GRADE 上昇率 ▼ゲージ7本可能(190%) 1 210.00% 6 211.50% 11 213.00% ▼ゲージ8本可能(220%) 36 220.50% 61 228.00% 101 239.90% 151 249.90% ▼ゲージ9本可能(260%) 206 260.90% 251 269.90% 291 277.90% 300~ 279.70% 推定データ n
(1~100)209.70%
+(n x 0.30%)シード+5 1.50% n
(101~300)219.70%
+(n x 0.20%)シード+5 +1.00%
プレイ環境と最大GRADEの関係
| 開始時期 | 所有キャラ数 | 最大GRADE | 上昇率 |
|---|---|---|---|
| 2025/8/7時点 | |||
| VERSE | 35 | 351 | 279.70% (9本) |
| X-VERSE | 10 | 101 | 239.90% (8本) |
所有キャラ
- CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
Ver マップ エリア
(マス数)累計*1 キャラクター VERSE ep.Ⅰ 4
(155マス)320マス 鬼蝮 ユリア
/null☆nulllぱにっくX-VERSE ep.ORIGIN 3
(205マス)265マス タクヤ ep.PARADISE 1
(455マス)455マス マリア・キュリアス
- ゲキチュウマイマップで入手できるキャラクター
バージョン マップ キャラクター VERSE maimai でらっくす 白法院ラグ※2 オンゲキ
Chapter6藍原 椿
/教えて!椿先生※1結城 莉玖
/夜明けの缶コーヒー※1東雲 つむぎ
/雨降りエモーショナル※3X-VERSE オンゲキ
Chapter6三角 葵
/穏やかな時間※3※1:該当マップ進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。
※2:該当マップ進行度1~3の全てのエリアをクリアする必要がある。
※3:該当マップ進行度1~4の全てのエリアをクリアする必要がある。
- 期間限定で入手できる所有キャラ
カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。
また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。- EVENTマップで入手できるキャラクター
※1:同イベント進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。
※2:同イベント進行度1~2の全てのエリアをクリアする必要がある。
※3:同イベント進行度1~3の全てのエリアをクリアする必要がある。
- EVENTマップで入手できるキャラクター
STORY
ストーリーを展開
EPISODE1 元ナンバーワンホストのオレがクビにされて無職
グンマ県タカサキ市には、夜の街と呼ばれる眠らない区画がある。
そこがどんな場所かは、周囲を見渡せばすぐに理解できるだろう。
成功を手にした者、夢破れた者。
綺羅びやかな光と、先の見えない闇。
ここは、勝者と敗者が共存する世界。
当然、オレは勝者だ。
オレが店に顔を出せば、指名が途切れることはない。
高い酒しか飲まないオレを酔わせたくて仕方ない姫は頼んでもないのにジャンジャン注文してくれる。
これが、勝者だけが見られる景色だ。
そんな世界でオレは生きている。
綺羅びやかな光を手にした成功者として――。
「タクヤ、お前はクビだ」
「……え?」
そう告げたのはオレが働くホストクラブ――『TopDreamLight』のオーナーだった。
「ちょっ!? ま、待ってくださいよ! なんでオレがクビなんですか!」
「なんでか? お前、よくそんなことが言えたな」
「だ、だって、ちゃんと働いてるじゃないですか!」
「なにが働いてるだ! お前の仕事はなんだ、言ってみろ!」
「そりゃあ、ホストですよ! お客様をもてなす、最高の職業で――」
「もてなす客も取れねえやつがホスト名乗るな!指名の取れないホストは、もうホストじゃねえ!」
「そ、それは……」
オーナーが言う通り、ほとんど指名は取れてない。
今やってることといえば、店の掃除とかの裏方業務。
あとは……SNSを更新するくらいだ。
「タクヤさん、アンタがナンバーワンだったのは昔の話だ。いつまでも過去の栄光にすがりつくのはやめとけって、あんた言ってたよな」
「カズキ……」
オレとオーナーの会話が聞こえていたのか、それとも最初から聞いていたのか。
シャム猫の後輩カズキが間に割って入ってくる。
「アンタみたいな老人に、いつまでも居座られたらナンバーワンのオレまで格が下がっちまうんですよ。いい加減、わきまえてくんねーかな」
「うっ……」
返す言葉もなかった。
だけど、オレにはここしか居場所がない。
ホストになるためにタカサキに来て、ホストとして生きてきた。
他の生き方なんて、できやしない。
「いや、待ってくれ! オレだってまだやれる!オーナー、頼むよ! もう少しだけチャンスを!」
「いい加減にしろよ、じじい!」
「ぐっ!?」
カズキがオレの腹に蹴りを食らわしてきた。
その痛さに蹴られた腹を押さえてうずくまる。
「カ、カズキ……お前……!」
「てめえはクビなんだよ。ク・ビ! とっとと消えろ!」
「お、オーナー……!」
「もう決まったことなんだよ、タクヤ。お前はもう、この店に必要ない」
「そん、な……」
「おい、お前ら。このドブネズミを裏に捨ててこい」
「はいよ!」
「や、やめろ! 離せ! なあ、お前たちにホストのイロハを教えたのはオレだろ? そこに慈悲はないのか!?」
「ねえよ」
一緒に働いてきたはずのホスト仲間が、オレの腕を掴んで引きずるように裏口へと引っ張っていく。
「うわっ!?」
そのまま投げ捨てるように放り出された。
突然のことでうまく立ち上がれずにいたオレを、カズキが見下ろしてくる。
「さようなら、元ナンバーワンさん」
「カズキ……!」
オレを鼻で笑ったカズキ。
そして、無情にもドアが閉められた。
「オレは、これから……」
どうすればいいんだ。という言葉は突然振り始めた雨の音でかき消されてしまった。
この日、オレは勝者から敗者になっちまったんだ。
EPISODE2 職がない!
ホストクラブをクビになって数日。
オレはホストクラブを巡って営業をかけていた。
新しい働き口を探すためだ。
全盛期に稼ぎまくっていたとはいえ、食えない後輩たちにおごりまくっていたから貯金がない。
だから、すぐにでも働かなきゃいけなかったんだ。
まだナンバーワンになれる場所があると信じて。
「ここでキャストを募集してると聞いて来ました。これ、履歴書です!」
「お前『TopDreamLight』のタクヤだな?」
「チュチュっ! そうです、そうです! よく知ってますね!」
「ああ、有名人だからな」
「なら話は早い! どうかオレをここで――」
「帰れ」
「……えっ?」
クラブの店長がオレの言葉を遮ってくる。
「そのデカい耳は飾りか? 私は、帰れと言った」
「な、なんで!」
「なんで? もうホストって歳でもないだろ。お前みたいな爺さんを誰が雇うか」
「爺さんって! オレはまだ2歳ですよ!」
「いや、爺さんだろ。2歳のネコなら分かるが、お前はネズミだ」
「そ、それはそうかもしれないけど! ちゃんとオレを見てください。まだバリバリの現役で!」
「いいから帰れ」
「そこをなんとか! ここで最後なんですよ!」
「いくら頼まれても雇わねえよ。帰られねえなら力ずくでつまみ出すぞ?」
「うっ……わかりました……」
また痛い目にあいたくなかったオレは、しぶしぶ店を後にすることにした。
「はあ……」
今の店が最後の希望だった。
だがオレの望みは絶たれ、人生はお先真っ暗だ。
「オレは……もう一度だけ輝ける場所が欲しかった。それだけなのに……」
ホストは切り替えが大事。
宛てがないなら他の職を探すしかない。
生きるためには、働かないといけないからな。
「よし! こうなったらバイトからのし上がるぜ!」
オレは、気分を新たに再出発することにした。
「――ありませんね。あなたができそうなバイトは」
「な、なんで!?」
「あなた、ネズミで2歳でしょう? ここには力仕事しかありませんよ」
「いやいや、まだ働けますよ!」
「若いサイやゴリラに混じって働けますか?無理ですよね。ご自身の年齢と体力に見合った仕事を探したほうが懸命ですよ」
「うっ……」
オレは何も言い返せなかった。
「そんなに落ちこまないで。きっとどこかに働き口はありますよ。……ああそうだ、これでもどうぞ」
「これは……?」
アルパカの職員が手渡してきたのは『グンマーファミリーパーク』と書かれたチラシだった。
名前が虹色のフォントで書かれていて絶妙にダサい。
「宣伝してほしいって置いてったんです。ほら、ここに割引チケットがあるでしょう?」
「だからなんだよ、これ」
「気分転換でもして、また明日から職探しを頑張りましょう」
「ふざけんな! こんなところ二度と来るか!」
叫んだオレは、彼女の前から姿を消した。
「ったく、本当に失礼なやつだったな。オレを老いぼれみたいに扱いやがって。なにがテーマパークで気分転換だよ。そんなんで仕事先が見つかるかっての」
オレは握って、くしゃくしゃになったチラシを見る。
タカサキで暮らしてるのに、まったく聞き覚えのない名前だ。
「いや、一度だけ同伴で遊びに行ったことがあった気がするな」
そのときは相手を喜ばせることに集中してたから、アトラクションなんて全然楽しめなかった。
「……どうせやることもないし、行くだけ行ってみるか」
オレは割引チケットを手に、テーマパークへと足を運ぶことにした。
電車とバスを経由して2時間後。
やっとグンマーファミリーパークに着いたが……。
「営業、してるんだよな……?」
テーマパークと言う割には人があまりにもいない。
まったくと言っていいほどいない。
神隠しにでもあったのかってくらい酷いあり様だ。
「どうやって成り立ってるんだ、ここは」
本当に営業しているのか入場口に行ってみると、そこにはちゃんと従業員がいた。
「ようこそ、グンマーファミリーパークへ。ええっと、お客さんですか?」
「そうだけど」
「はいはい。じゃあ、入場券をご購入ください」
やる気のない接客態度に思うところもあったが、まあそういうやつもいるか。
「割引チケットはございますか? お安くなりますよ」
「……」
オレはもらったチラシを見た。
……たった100円しか違わないじゃないか。
オレはあえて割引チケットを使わずに入場した。
中はなんとも言えない空気をかもし出している。
なにせ、目を引かれるようなアトラクションがないのだ。
良くも悪くも普通のテーマパークでしかない。
客が少ない理由を察したオレは、適当に目についたメリーゴーランドに乗る。
亀のようにのんびりと進む乗り物は、絶妙な乗り心地だった。
「ハッ、今の俺にはお似合いかもな」
なんだかんだで楽しんでいたオレが辺りの景色に目を向けると、誰かの声が聞こえてくる。
「なんだよアレ! 腹立つなぁ!」
「いいじゃんもう。別のとこで食べようよ」
どうやら遊びに来ていたカップルのようだ。
彼らが歩いて来た方向を目で追うと、レストランが見えた。
酷い接客でもされたのか、それとも純粋に飯がまずいのか。
興味がわいたオレは、レストランに行ってみることにした。
「――ふざけるんじゃねえ!」
「うおっ!?」
両開きの扉をくぐった途端、オレは怒鳴り声に迎えられた。
何事かと様子をうかがうと、シェフらしき強面のブルドッグが、顔を真っ赤にして怒鳴っている。
「なにが映えるだ! 出された料理に手もつけねえで写真なんぞ撮りやがって! こっちが親切に冷めねえうちに食べろって言ってんのによ! なんでこっちがキレられなきゃなんねーんだ!」
「時代が変わったんですって。まーたお客さんが減っちゃいますよ、リーダー」
「リーダーじゃねえ! シェフだ!」
ああ、なるほど。
さっきのカップルはこのシェフに怒鳴られて帰っていったのか。
まあ、確かにあの顔で怒鳴られたら帰りたくなるだろう。
オレは、何も見なかったことにしてレストランを離れた。
それからオレはテーマパーク内を一周した。
レストランにアトラクション、土産屋。
どれも悪くない。だが、特にオレの心を揺さぶるようなものがなかった。言ってしまえばどれも普通なんだ。
ただ、それだけでテーマパークへの客足が遠ざかるなんてことはないとオレは思う。
じゃあなんで、こんなに寂れてるのか?
たぶん、原因はスタッフなんじゃないだろうか。
どこを見ても、ここにいるスタッフたちは客へのサービス精神や気迫が足りていない。
ダラダラと働いているんだ。
「はあ、これじゃ気分転換にもならない。もう帰るか……」
気分も金もすり減らしたオレが出口に向かおうとすると、どこからともなく賑やかな音楽が流れてきた。
「これは……ああ、ショーの時間なのか」
手に持ったパンフレットで確認すると、やはりショーの時間だった。
「せっかくだし見てから帰るか」
オレはショーが行われるステージに向かい、客席に座る。見ている客はオレだけ。もう過疎ってレベルじゃない。
「さあさあ、素敵なショーの始まりです!」
その掛け声と共にステージの幕が上がった。
袖からステージ上にキャストが登場すると、音楽とナレーションに合わせてショーが披露される。
重要な場面でタイミングを外してる効果音や、音飛びしてるBGM。
年季の入った玩具より動きのないアクション。
いまいち感情がこもっていない台詞。
オレはステージ上で披露されるショーに感動――
「するわけあるか!」
気付けばオレはステージに上がりこんでいた。
「お前ら、それでも本当に人を楽しませるために集まったキャストなのか!?」
「お、お客様、どうかされましたか?」
オレに気づいたスタッフがステージ袖から出て来る。
「どうしたもなにもあるかよ! オレはいったい、なにを見せられてるんだ!」
「これは当テーマパークの――」
「そういう話をしてるんじゃない! こんなやる気のないショーになんの意味がある!」
「……っ!?」
「お前たちは客を楽しませるためにステージに立ってるんじゃないのか! 本当に、それで楽しませられると思ってるのかよ!」
「そ、それは……」
オレの言葉に言い返せないスタッフの代わりに、ショーをしていたキャストが答えた。
「私だって楽しませたいって思ってるよ。でも、お客さんがいないのに、どうやって……」
「じゃあ、お前にとってオレは客じゃないのか?」
「えっ? そ、それはお客さんだけど……」
「たったひとりの客のために本気にはなれない。そんなふざけたことを言うつもりなのか」
「うっ、うぅ……っ」
しまった、言い過ぎたか。
「なあ泣くなって。オレも言い過ぎたよ。オレはもう帰る。ショーの邪魔をして悪かったな」
「待ってくれ!」
「……ん?」
帰ろうとするオレの腕を掴んだのはウサギの男。
上下黒いスーツでスタッフって感じではない。
「先程の言葉、わたくし心にじーんと響きました!ぜひうちで働いてくださいませんか!?」
「はあああっ!?」
「申し遅れました。わたくしはこういうものです」
そう言いながら渡されたのは1枚の名刺。
「グンマーファミリーパークオーナー・ヤヨイ……って、オーナー!?」
「あなたに、このパークの再生をお願いしたい!」
「ちょ、はぁ? なんで!?」
EPISODE3 プロ意識が足りない!
「……つまり、ヤヨイさんはオレのアドバイスがほしいと?」
「はい、そういうことです」
オーナーはパークの現状をオレに話した。
今となってはどちらが先かは分からないが、客足の減少とサービスの質の低下が繰り返された結果、こうなってしまったらしい。
オーナーも最初は危機意識を持って様々な改革に乗り出したが、どれも失敗に終わってしまった。
「状況は分かったよ。でも、なんでオレなんだ?」
「あなたの言葉は真に迫るものがありました。もしやあなたは同業、もしくは誰かに奉仕する仕事をされていたのではないですか?」
「んー……まあ、つい最近までホストをやってたよ。なんなら、ナンバーワンに輝いたこともある」
「おお! なら話は早い!」
何が話は早い、だ。
「ここであなたに会ったのも運命! 是非とも当パークの再生をお願いしたい! パークの命運は、あなたの手にかかってるんですよ!」
「何を勝手に進めてるんだ! てか重いって!会ったばかりのネズミに命運預けないで!?」
「私たちからもお願いします!」
今まで黙ってたキャストたちがオレを取り囲み、涙目で訴えかけてくる。
こいつら、分かっててやってるのか?
「……ったく、仕方ないな」
オレはパークの再生を引き受けることにした。
それに、誰かに頼られるっていうのも、悪くない。
「おおっ! ありがとうございます!」
「このテーマパークを、立派なホストクラブにしてやる!」
「いえ、ホストクラブにはしないでほしいんですが」
「あー、そうだったな」
こうして、パーク再生とキャストたちの教育が始まった。
「まずはこのパークの花形であるショーから見直したい。ええっと、まずはオレにショーを見せてもらえるか?」
「はい!」
キャストたちが始めたショーは、オレがステージで見たものと同じ演目だ。
「ん……?」
前回は酷いものだったが、今はかなりマシになっていた。キャストのキレも、動きも、表情も違う。
「ど、どうでしたか!」
ショーが終わってオレのところにキャストたちが集まってくる。
「なんだよ、やればできるじゃんか」
「やった!」
「ところで、なんで前はあんな有様だったんだ?」
「そ、それは……」
オレの言葉にキャストたちは黙ってしまう。
「たったひとりでも相手を楽しませる。笑顔にさせるため、満足させるために全力を尽くす。それがプロってもんじゃないのか?」
「は、はい……」
「まあ気持ちはわかるよ。腐りたくもなる。オレも最初の頃は客がつかなくて、オレの実力はこんなものじゃない、もっと凄い男なんだって心の中で息巻いた。そんなだったから、やっとついてくれた客を前にしてオレは雑な接客をしちまった」
「……」
「そこでやっと気づいたんだ。最初からズバ抜けて売れっ子になる奴はいないって。1人1人を心からもてなし、笑顔にさせて……マジになって向き合うことでオレのファンを増やしたんだよ」
「……タクヤさんの言うとおりです。ひとりひとりに
全力を尽くすべきですよね!」
そうだ、そのとおりだ、とキャストから次々と声が上がり始める。
「接客の神髄を忘れるな。お客様は神様じゃない、お客様だ!」
(ねぇねぇ……どういうこと?)
(要は気持ちの問題ってことよ)
「これは、オレが後輩ホストたちに散々言ってきた言葉だ。心に刻んでおけ」
オレは手を叩いて無言のまま動かないキャストたちを急かす。
「ショーをもう一度見せてくれ。オレが一発で変えてみせるぜ」
「はい! ……はい!?」
――数日後。
「いやあ、素晴らしいよ! 君のおかげで早速客足が戻り始めたよ!」
「いえ、オレは大したことはしてません。ただ、彼らの意識を変えただけですよ」
そう、オレはただキャストとしての初心を思い出させただけなんだ。
オーナーはこの結果に満足しているが、まだまだ客足はまばらだ。
だが、今のキャストたちなら、そのうちステージは客でいっぱいにできるだろう。
「さあご来場の姫様、殿方! 本日のショーはあなたがたに向けてお送りします!」
「ナイトプリンス&プリンセス! これは一夜の恋に溺れた、一組の男女の物語……」
スポットライトに照らされた男女のキャストがポーズをとる。
「ここのショーってこんなに大人向けだっけ?」
「いいじゃない、面白そうだし!」
そう反応するのも無理はない。
これは、オレの実体験を元に脚色を加えた大人も子供も楽しめる恋愛物語なのだから。
その後、ショーの評判は口コミで更に広がりを見せ、瞬く間に席が埋まっていった。
EPISODE4 意地っ張りしかいない!
「貴様になにがわかる、若造が!」
「オレはこう見えても2歳です」
オレが次に再生させたいと考えたのは、ブルドッグのシェフが切り盛りするレストランだ。
シェフはオーナーからオレを手伝うよう指示されても首を縦に振らなかった。
「なぁにが『食事をエンタメにしろ』だ! 飯はパパっと済ませるもんだろう? ここはテーマパークだ遊ぶ場所ならいくらでもある! 違うか!?」
「だから、これもお客様のためなんですって」
「俺にこんなけったいな服を着て料理しろと?バカにするのもいい加減にしろ! 厨房はな、料理人の聖域なんだよ!」
せっかく用意した衣装をオレに投げつけると、シェフは厨房に引っこんでしまう。
ダメだ、まったく話が通じない。
こうなったら、やり方を変えるしかないな。
オレは、厨房に立つシェフに向かって語りかけた。
「シェフ。ひとつだけ教えてくれ。あんたはどんな想いで料理を作ってるんだ?」
「お前に話す義理はねえ。俺の料理を食ったことすらないお前にはな」
「いや、食べたよ。オレの顔を見たらあんたがキレそうだったから、お弟子さんに頼みこんで一品包んでもらったんだ」
「……なに?」
シェフが、黙ってオレたちのやり取りを見ていた弟子の見習いシェフを睨む。オレは、ここぞとばかりにたたみかけた。
「聞いてくれ。オレは、あんたが作った料理を食べて確信したことがある。あんたの心には、食べた者を喜ばせたいっていう、おもてなしの心が宿ってるって」
「……」
「本当は、美味しく食べて欲しいって思いながら一品一品に力をこめてるんだろ? そうじゃなきゃ、あんたほどの腕ならいくらでも手を抜けるはずだ」
「なぜそう言い切れる」
「シェフとしてのプライドに決まってるだろ?まさか、あんたほどの漢が自分の名を汚すようなことしてないよな?」
オレがそう思ったのは、もうひとつ理由がある。
それは、年季の入っていそうな厨房や道具、食器にいたるまでピカピカに磨きあげられていたことだ。
シェフは、客が入らなくても決して腐ることなく、この聖域を護り続けている。
「ほお、言うじゃねえか」
そう言うと、シェフはようやくオレの目をまっすぐに見つめ返した。
「気が変わった。お前の言葉に免じて、一度だけ話にのってやる」
「じゃあ……!」
「だが! その前に!」
シェフが急に手を叩き、「シェフズテーブルを用意しろ!」と叫んだ。
「な、なんだ?」
見習いたちが厨房の奥に引っ込むと、小さなテーブルと椅子を持ってきて厨房の開けた場所に置いた。
「お前はまだ、俺のフルコースを味わってないだろ。まさか、1を知って100を語ろうなんざ思ってないよな?」
「……チュチュ。ああ、そうだな」
オレは元ナンバーワンホストだ。
キレイゴトならいくらでも並べ立てられる。
だけど、シェフにそう言われたら引き下がるわけにはいかない。
シェフとの対決から2週間後。
急ピッチで改造したレストランは、大盛況を迎えていた。
改造なんて大掛かりなもんじゃなかったが、オレは元ホスト。“雰囲気”作りならお手の物だ。
「パパ! 見て見て!」
「へえ、宝箱に見立てたワゴンになってるのか」
「はいよ! お子様ランチ、お届けだ!」
ウェイターはそう言うと、ワゴンの中から赤いバンダナを取り出して子供の頭に巻く。
「これでお前も俺たちの仲間だ!」
「やった~!」
オレは、レストランに海賊船というコンセプトを加えた。
それに合わせてリニューアルしたメニューのうち、海賊メシのフルコース料理は、早くも人気メニューになっていた。
「ふぅ……ちゃんと引き受けてくれるか不安だったけど、上手くいって良かったよ」
オレは厨房で腕を振るうシェフを見る。
「おめえら、料理ができたぞ。運びやがれ!」
「「「アホーイ!」」」
「シェフ! 海賊定食入りました!!」
「おい! 俺はシェフじゃねえ、キャプテンだ!分かったな!」
「アイアイサー!」
シェフの性格を見込んで海賊船というコンセプトを提案してみたが、結果は大正解。
シェフはすっかりこのコンセプトにノリノリになっていて、見習いたちとともに自発的に改革案を提案するようになっていた。
「これでまた一歩、テーマパークの再生に貢献できたかな」
もう客足はかなり戻ってはいたが、オーナーはまだまだ上を目指しているらしく、次に再生させたい場所をリストアップしているようだ。
「まったく、どれだけオレをこき使う気なんだか」
だが、不思議と悪い気はしなかった。
誰かに頼られるようになって、こうしてたくさんの笑顔を見られるようになったんだからな。
EPISODE5 SNSがつまらない!
「タクヤ君、次に取り組んでもらいたいのはSNSの運用なんだ」
客足は順調に右肩上がりを続けていたが、グンマーファミリーパークの全盛期にはまだまだ遠いらしい。
更なる集客を見込むには、SNSを今より積極的に運用する必要があった。
その時、オレはあの日渡されたチラシを思い出す。
あのチラシの出来は、それはもう酷かった。
普段のオレだったら、行ってみたいとすら思わなかったはず。当然、SNSもひどいことになっているだろう。
「……あー、なんなんですかこれ」
SNSには、なぜかオーナーの自撮りがたくさん掲載されていた。
しかも微妙に楽しくなさそうな顔なのが腹立たしい。
別の画像ではホログラム加工されたオーナーの顔が映っている。
「お、それは一か月に一度だけランダムに実施するレアバージョンだよ! おめでとう!」
「何がおめでとうですか! 宣伝してくださいよ、宣伝をぉ!」
まさか、テーマパークが開園してからずっとこんなことをやっていたのか、このオーナーは!?
「してるじゃないか、宣伝」
「これは、オーナー自身を売りこんでるだけでパークの宣伝じゃありません! しかも、なにが『結婚相手募集中』ですか。集客してくださいよ!」
しまった。つい本音が出てしまった。
オーナーは、本当にパークのためを思って宣伝してるかもしれないんだ。
「だって、寂しいから……」
「反応に困ること言わないでくださいって!」
オレは気を取り直してチラシのことを尋ねた。
「まさかとは思いますが、チラシもオーナーが?」
「ああ、そうなんだ。こう見えて写真を撮るのが趣味だからね。ああそうそう、そういえば、いま新作を作っているところでね、君の意見を聞かせてほしい」
「はぁ……」
チラシのデザイン案を受け取った。
言葉に詰まるほど、チラシはださかった。
アトラクションよりも空がメインの写真。
料理は説明文が虹色のフォントで読みにくいし、まずそうに見える。
なによりも酷いと思ったのは、裏面に掲載されたスタッフたちの写真。証明写真のような一覧表は、全員が真顔で、いったいどう伝えて撮ったのか思わず問いただしたくなる。
「どうかね?」
やはり、このオーナーが最初の原因なのでは?
喉まで出かかった言葉をグッと飲み込んで、オレは言った。
「オーナー。全部オレに任せてください!」
「おお、なんと頼もしい!」
そこからは話が早かった。
臨場感のあるアトラクションに、ショーの山場を捉えたワンショット。
そして、
「写真撮るなら注文しやがれ!」
見栄えよく海賊定食とフルコース料理をカメラに収めることに成功した。
今までは人に動いてもらう必要があったから時間がかかったが、これならオレ一人で動けるため、あっという間に素材集めが終わった。
「お疲れさまタクヤ君。どうかな、写真の方は?」
「ええ、バッチリですよ!」
オレは自信満々に撮ってきた写真をオーナーに見せていく。
「……君、写真撮るのうまいねえ」
「まあ、どの角度で撮れば一番よく見えるのか、ずっと研究してきましたからね。オレのSNS、けっこう人気だったんですよ」
ホスト時代、オレは客が店に来なくても楽しめるように日記に自撮りの画像をつけて投稿していた。
それを読めば、もう一度オレに会いたくなるような言葉も添えて。
「オーナー、これを見てください」
オレはSNSにあげる予定の写真と、写真に添える文章をオーナーに見せた。
――ひとときの奇跡を君へ――
短い命の中で、運命と巡り合うのは難しい。
だって、この広い世界……
数多くのテーマパークがある中でものすごい奇跡だ。
誰かとの出逢いも同じ。
多くの奇跡が重なって今、この瞬間がある。
『グンマーファミリーパーク』
運命の出逢いを果たした誰かと素敵な1日を過ごす。
そう、ここは奇跡が集う楽園。
『グンマーファミリーパーク』
さあ、行こう。
楽園は、いつでも君たちを迎え入れる。
――奇跡の見届人――
オレの文章を読んだあと、オーナーは深く溜め息をついた。
「……やはり、君は天才だよ。こんな文章、私には書けない……わたくしはファン第一号として、更新を楽しみにさせてもらうよ」
「ありがとうございます!」
「広報は一任する。ただ、たまにはわたくしの写真をSNSに載せてくれないか」
オーナーは、これからも結婚相手をSNSで探したいらしい。
「もちろんです。なんなら、オレがオーナーにホストで培った技術をレクチャーしますよ」
広報担当に就任してから数日後。
SNSの反応は上々で、今では集客の一部を担うようになっていた。
「チュチュ、順調だ。正直、できすぎなくらいだ」
オレは、これまでのことを思い返しながら帰路につく。
もう十分すぎるほどパークに貢献した気がするが、すっかりパークの再生が楽しくなったオレは、退勤してもパークのことばかり考えるようになっていた。
「誰かに認められるっていいな……」
まだ変えられる場所はあるだろうか。
かけたコスト以上の演出を用意できるだろうか。
そんなことを考えていた時だった。
「よう、タクヤ」
「お前はカズキ……!」
オレの家の前に、後輩ホストのシャム猫のカズキが待ち構えていたんだ。
EPISODE6 なにも心配ない!
「なんの用だよ、カズキ」
「つれないじゃないか、タクヤ」
カズキはニヤニヤ笑いながらオレに近寄って来る。
体格はカズキの方がデカい。近くに身を隠せるような場所もなかった。オレはカズキを睨んだまま言った。
「オレは忙しい。お前なんかの相手をしてる場合じゃないんだよ」
「そんなに拾ってくれたテーマパークが大事か?」
「……」
「聞いたぜ。閉園寸前だったテーマパークの風向きを変えたんだってな」
カズキがポンポンとわざとらしく手を叩く。
「ッチ、余計なお世話だ」
どうせ客から聞いたんだろう。
パークが人気になれば、いずれオレに気づくやつが現れるってことは分かっていた。まさかカズキが自分からやってくるなんて思いもしなかったが。
「オレのことを笑いにでも来たのか?」
「まさか。その逆だ。オレはお前を迎えに来たんだ。帰るぞ、『TopDreamLight』に」
「お前、なにを言って……!?」
「うちはそこらの弱小クラブとは違う。もっともっと大きくなる! 俺たちはタカサキだけで終わらない。シンジュクにも勢力を伸ばすんだ。そこでお前は、その足掛かりになる新店舗の経営をするんだ」
こいつは、『TopDreamLight』のオーナーの命令でオレを再雇用しに来たようだ。
カズキの顔には「なんでお前が?」とでも言いたげな苦々しい感情が見え隠れしている。
「悪い話じゃなさそうだな。金払いもあのテーマパークに比べたら確実に高い」
「だろ? いい思いできるぜ?」
「だが断る」
「だよな。じゃあ俺と――なにィッ!?」
オレはカズキを睨みつけながら言ってやった。
「今更帰ってこいだと? ふざけるな! お前たちは年齢を言い訳にして、一方的にオレを見捨てたんだよ。そんな所に、今更戻るわけないだろうが!」
「……この野郎、言わせておけば」
「それにな、オレは今の仕事に誇りを持ってるんだ。パークにやって来た客を笑顔にすることに、オレはすべてを賭けた! ホストに未練はないんだよ!」
「し、信じられねえ……生涯ホスト宣言した、あのタクヤが……」
オレは、ショックで動けないカズキの横を通り過ぎ、背後で立ち止まった。
「お前、ずっとそうしてるつもりか?」
「クソ! オーナーの誘いを断って、後悔しても知らないからな! 絶対に、後悔させてやるぞ!」
「ハ、言ってろ。ああそうだ、今度お前たちをファミリーパークに招待してやるぜ」
オレは一度も振り返ることなくカズキの前から消えた。
お前たちとは住む世界が違うとでも言うように。
家に帰ったオレは窓から外を眺めた。
ちょうどカズキが夜の街に戻っていく後ろ姿が見え――ふと、頭の中にひらめきが走る。
オレはオーナーに電話した。
「オーナー、実は新しいアトラクションを思いついたんです!」
EPISODE7 使えるものは使うしかない!
その日、ファミリーパークは開園からしばらくして騒がしいことになった。
「タクヤ! お前の望み通り遊びに来てやったぜ!」
パークに客を迎え入れた直後、見るからにガラの悪そうな見た目の男たちがパークの入り口に集結していた。
グレートデンやセントバーナードといった図体のデカい犬たちの中心にいたのは、腕を組んでふんぞりかえるカズキだ。
「わざわざ貫禄ありそうな奴つれて来やがって。それでオレが大人しく言うこと聞くと思ってるのかね」
「か、彼らは君の知り合いなのかな、タクヤくん?」
チケット売り場の職員の連絡を受けてやって来たオレは、カウンターの奥に隠れているオーナーに説明する。
「ええ、ホスト時代の後輩です」
「ま、まさかパークを荒らしに……すぐに警察を呼ばないと!」
「待ってくださいオーナー。前にも話したでしょう?これにはちゃんと理由があって――」
オーナーに、これからオレがやろうとしていることを伝えると、パーク内のキャストたちにあるものを配るよう頼んだ。
「ほ、本当に大丈夫なのかい? 彼らを見ていたら自信がなくなってきたよ……」
「大丈夫です。あいつの考えることなら手に取るようにわかりますから。オレがこの日のためにどれだけ準備してきたか知ってるでしょう?」
「き、君はそこまでこのパークのことを……。分かった、準備はこちらで進めさせてもらうよ」
「お願いします」
オレはカズキのところへと向かった。
「ちゃんと来るなんて見直したぜ、カズキ! 時間もろくに守れなかったお前でも成長するんだな!」
「タ、タクヤ、てめえ……!」
オレは、この日のために準備していたことがある。あとは、カズキたちがこっちの予想通りの動きを見せてくれるかどうかだ。
「そんな棒きれで、俺たちを相手にするつもりか?」
「まさか。ここは子供も大人も楽しめるテーマパークなんだ。物騒な世界のやり方なんか、ここに持ち込むつもりはない」
オレはポケットから撮影用の小さなカメラを出すと、棒の先に取りつけた。カメラの電源を入れて、カズキを撮る。
「カズキ! これからオレとゲームをしようじゃないか!」
「ゲームだと?」
「ああ。追いかけっこだ! お前たちがオレを捕まえられたら、大人しく夜の世界に戻ってやる」
「言ったな?」
「ただし! 狙うのはオレだけだ! パークの客にもキャストたちにも手を出すな! そうしたら、この話は全部無かったことになる! どうだ、これならお前でも理解できるだろ?」
オレが挑発すると、予想通りカズキは誘いに乗った。
「男に二言は無しだぞ、タクヤ! お前ら、あいつを捕まえろ!」
「さあ始まりました! グンマーファミリーパークを舞台にした大捕り物の始まりです!」
カメラに向かってそう宣言すると、オレはパークの中へと駆ける。
オレは、このテーマパークの再生を続けていくうちにひとつ気になったことがあった。
それは、テーマパークに何度も足を運んでもらうにはどうすればいいのかということだ。
「待ちやがれ、タクヤぁぁ!!」
「遅いんだよ! どいつもこいつも運動不足なんじゃないか?」
そこで思いついたのが、テーマパーク全体を使い、“訪れた客の前で即興劇のようなショーをする”というものだった。
「見て見て! 追いかけっこしてるよ!」
「あら、あれがアナウンスで流れてたイベントなのかしら?」
『さあ皆さん、黒服の集団に追いかけられるタクヤは無事に逃げおおせるのでしょうか!』
場内アナウンスでイベントの詳細が語られるようになっていた。昼の時間を過ぎたばかりのパーク内は、至る所で椅子に座って休憩している家族がいる。
オレはそんな家族たちから見えるように近くで立ち止まり、黒服たちをからかっては逃げるということを繰り返していた。
次の目的地であるメリーゴーランドに向かう頃には、大捕り物に興味を示した何人かの客が、オレたちの後をついてくるように。
「ちょっと通らせてもらうよ!」
乗り物の間をジグザグに抜けながら、追手をさばき続ける。
「どうしたどうした! 誰もオレに触れられないのか~!?」
「クソ! ちょこまかと逃げやがって!」
「捕まるんじゃないぞー!」
客からの声援を浴びながら、オレは次のアトラクションに向かった。
こいつがオレの一世一代のショーになる。
オレは、このショーを必ず成功させるんだ!
EPISODE8 無職になったオレがホスト術を駆使してテーマパークを再建してみた
オレとカズキ率いる黒服たちの追いかけっこは、何度かアトラクションや建物の中を移動するうちにオレとカズキだけになっていた。
ずっと追いかけて来るカズキはといえば、執念だけでどうにか食らいついている状態だった。
「……まっ、待ち……ッ、やが……れぇ……!」
顔には疲労感が浮かんでいて、とてもホストとは思えない酷い表情をしてる。
さすがにオレも限界が近い。
最後の力を振り絞って引き離しても良かったが、これは客を巻きこんだ体験型のアトラクションだ。
「宣伝もたっぷりした。そろそろ幕引きだな!」
オレは、カズキとの距離を保ったまま、大ホールに向かった。
うす暗いホールの中をぬけてステージに上がると、オレ目掛けてスポットライトの光が降り注ぐ。
そこへカズキが遅れてやって来た。
「遅かったなカズキ! ちゃんと鍛えておけよ!」
「ゼェ……ゼェ……うるせえ。ようやく追い詰めた。もう逃げ場はねえぞ! タクヤ――」
「「「わあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
カズキの言葉は、観客席に座っていた客たちの歓声と拍手でかき消された。
「な、なんだこりゃ……?」
「悪いなカズキ! これは、オレたちの勝負のために集まってくれた観客なんだ!」
「はあ?」
ホールを埋めるのは、オレの宣伝や場内アナウンスを聞いてここにやって来てくれた観客たち。
ここに来ることを伝えてあったおかげで客入りも良い。
あとは、カズキとの決着をつけるだけだ。
「ふざけやがって……! ブッ飛ばしてやる!」
「やってみろ! 俺は逃げも隠れもしないぜ!」
カズキがステージ目掛けて全力で駆けてくる。
ステージには、おあつらえ向きと言わんばかりに、開催中のショー――海賊をモチーフにしたショー用の海賊船のセットが組まれてあった。
オレは海賊船に乗りこむと、カズキに向かって小道具の剣を投げ渡す。
「剣を使ったことは?」
「あるかよ!」
カズキはそう叫ぶと、剣を大きく振り上げながら突進する。
「くたばれ、タクヤ!」
「なってないぞ、カズキ!」
オレは、両手で構えた剣でカズキの攻撃を受け流し、がら空きになった腹に一発叩きこんだ。
「ぐえっ!」
体力の限界を迎えていたカズキは、その一発で床に倒れて動かなくなった。
「タ、タクヤ……」
「一流のホストを名乗るなら、客のどんな要望にも応えられるよう、己を磨いておけ!!」
「クソ……がくっ」
大根役者みたいなことを言って、カズキは力尽きた。
「「わああぁぁぁぁぁ!!」」
「みんな! 見に来てくれてありがとう! これからグンマーファミリーパークは、何度も来たくなるようなイベントをやってくから、応援してくれよ!!」
客も舞台の一部にしたサプライズショーは、無事に終えることができた。
――
――――
ショーが終わってしばらくして。
オレがカズキを連れてホールを出ると、外にはヤヨイオーナーと拘束されたカズキの手下に加えて皇帝ペンギンたちがいた。
黒い帽子に制服、赤い腕章。そして白黒のバイク。
それは、サファリ市の平和を守る警察の証だ。
「オーナー、こちらは?」
「俺はペンデラ、こっちは相棒のドイルだ」
大きいほうがペンデラさんで小さいほうがドイルさんというらしい。
「大勢で誰かを追いかけていると通報を受け、これは大事件だと急いで駆けつけたんだが……どうやら騒ぎは収まったようだね」
さすがに全員に知らせることはできなかったようだ。
オレはペンデラさんたちに今回のことを説明した。
「――わざわざサファリ市から来てもらったのに、すみませんでした」
「気にしないでくれ。俺たちの役目は、サファリ市のみんなが楽しく暮らせるようにすることだからね」
ペンデラさんはそう言うと気を失ったカズキを叩き起こした。
「タ、タクヤ!? てめえ、オレをはめたな!?」
「違うって。ただ、ペンデラさんがお前の口からも今日のことを聞きたいだけなんだ」
結局、くわしい話はサファリ市で聞くことになり、カズキたちは応援で駆けつけた警察官たちと一緒にパークを出ることに。
車に乗せられる寸前で、カズキがオレのほうへ振り返る。
「お前、本当に戻る気はないんだな?」
「ああ。オレは、このテーマパークをこれからも盛り上げたいんだ」
「……そうか」
「利用して悪かったな。オレを許してくれるなら、今度は客として皆を招待させてくれ。絶対に後悔はさせないから」
「大した自信だな」
「自分を大きく見せるのも、一流のホストの条件だぜ」
「……フン」
カズキは、小さな声で「楽しみだ」とこぼすと、ペンデラさんとパークを去った。
「タクヤ君! 一時はどうなるかと思ったけど、このイベントは大成功だったよ!」
興奮したオーナーが、オレにスマホの画面を見せる。
そこには、今回のイベントを楽しんでくれた客たちの感想が並んでいた。
「これはきっと、当パークの目玉になるよ!」
「オーナー……オレ、頑張りますよ!」
オレは満面の笑みで答えた。
誰かをもてなすこと、喜んでもらうこと。
それはきっと、どんな仕事でも変わらないんだ。
「そこでなんだけどね、実は君にはもうひとつ立て直してもらいたいテーマパークがあるんだ」
「え?」
どうやら、オレとテーマパークの再生物語は、まだまだ続くらしい。
「任せてください! どんなテーマパークも、輝かせてみせますよ!」
| ■ 楽曲 |
| ┗ 全曲一覧( 1 / 2 / 3 ) / ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順 |
| ┗ WORLD'S END |
| ■ キャラクター |
| ┗ 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE |
| ┗ NEW / SUN / LUMINOUS / VERSE |
| ┗ マップボーナス・限界突破 |
| ■ スキル |
| ┗ スキル比較 |
| ■ 称号・マップ |
| ┗ 称号 / ネームプレート |
| ┗ マップ一覧 |
コメント
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- クビにされてマジ狂い -- 2025-07-24 (木) 00:14:20
- AIタクヤにテーマパークを作らせてみた -- 2025-07-25 (金) 03:09:11
- ストーリー普通に良くて草 -- 2025-07-25 (金) 09:17:29
- 期待を裏切らないコメント欄 -- 2025-07-26 (土) 12:16:10
- 激〇〇の元ホスト -- 2025-07-27 (日) 12:25:47
- タクヤで元ホストってウニ運営の事だからわかった上で作ってるんだろうけどXにいる自称淫夢厨のウニマーにはあんまり伝わってないのがちょっと面白い -- 2025-07-27 (日) 12:47:32
- クビにされるくだりのセリフ回し、なんか人力の同人の方で見覚えあるなりね -- 2025-07-29 (火) 00:10:38
- 岡山ドバーランドの正当後継者 -- 2025-08-09 (土) 20:04:29
- 案の定新曲組でこいつだけやたらとコメント多くて草 -- 2025-08-10 (日) 07:33:44
- 再建代もバカにならないけどね笑 -- 2025-08-12 (火) 11:01:41
- ライバルキャラがわざわざシャム猫って明言されてるのおもろい -- 2025-08-12 (火) 18:07:36
- のべっちもToneSphereコラボかStarBirthコラボで来て(懇願) -- 2025-08-29 (金) 23:21:41
- チュウニズムに「タクヤ」の名前称号が実装されたの草 -- 2025-08-30 (土) 09:15:16
- ネタにされがちだがストーリーはぜひ読んでほしい -- 2025-09-07 (日) 22:23:32
- よくストーリー読んだら所属してたホストクラブの頭文字がTDLなのね -- 2025-10-25 (土) 22:12:25

