明坂 芹菜／試練の三送会編

　イロドリミドリのドラムス担当。
　このバンドの言い出しっぺにして、何にでも前向きな姿でみんなの原動力になる、明るいリーダー！
　勉強は苦手だけど身体能力は人間離れしていて、小さな頃から友達のように「たいこ」に触れて育ってきたそのドラミングは、実のいとこで同じリズム隊のなるからも「野生児」と言われるほどにパワフル。

　両親が営む「カレー喫茶あけさか」を手伝っているせいか実は料理が得意で、オリジナルメニュー「芹菜スペシャル」の出来は、味にうるさい那知が一目置くほど。
　反面、リーダーとしてはどちらかといえば抜けている方でもあるのだが、このメンバーでバンドを組む、些細ながら大きなきっかけを産んだ芹菜に対するみんなの信頼は、とてもあつい。

　舞ヶ原高校の卒業式は、舞ヶ原が誇る華やかなイベンド群の傾向に漏れず賑やかな…と思いきや、存外普通の卒業式だったりする。
　夕方には「三送会」こと卒業祝賀ライブが開かれるので、はしゃいで盛り上がるのはそっちの楽しみということなのか、式自体は概ね厳かに終了するのが常。
　とはいえ最後のホームルームを終えた卒業生が集う校門前は、卒業を祝う父母や先輩とのお別れを惜しむ在校生でごった返すという、よくある卒業式の一コマが見られる。

　一方、那知の卒業を前に、７人編成で編曲された新オリジナル曲を含むリハに忙しいイロドリミドリ。
　当の那知は卒業式の後、数日を待たずに日本を出発する予定らしいため、白奈以外のメンバーにとっては「三送会」が本当に那知と顔を合わせる最後の機会、ということになりそう。
　登校日も残り僅かのこの時期にてんやわんやとしてしまったメンバーたちだが、芹菜の気持ちもまた前を向き始め、バンドの気力は十分のようだ。

　うーん…私、お姉ちゃんとは絶対気が合うー！！って思ってたんだけど、もしかして、成績悪い同士、なんかキュピピーン！！みたいの、あったのかなあ…
　あ、でも初めてあった時から、勉強好きそうな感じはしなかった気がするかも。
　白奈ちゃんが言ってた通り、補習授業も途中で脱走しようとしてたもんね。（その時は結局トイレに行くだけだったけど…）
　まあでも、勉強好きな人はいないか！
　凪ちゃんくらいかな？？

　お姉ちゃん卒業できないと、三送会もやれないし、それにお姉ちゃんの方から私たちのこと、なんか頼ってきてくれるなんて全然思ってなかったし！
　私たち先輩のためならなんでも頑張るよ！！
　がんばろー！！！！！！！！！！！

　大学もすぐそばだし、ここを乗り切ればきっとこれからはずっと７人でバンドできると思う！
　めっっっっっっっっっっっちゃ楽しみー！！！！！

　お姉ちゃん、卒業したら海外行くんだって！！
　小さい頃、たまに家族で一緒にスパイスの仕入れで、インドとか行ったりしたことあるけど…
　一日中ずーっと飛行機乗って、空港着いても遠くまで車乗って、すごいとこまで行ったりして。
　わー、すごい遠いところまで来た…みたいな。
　そんな遠いところでなっち先輩、じっくり自分の楽器で戦うのじゃ、って言ってて。
　なんか、決意も硬そうで…すごいな、って思ったよ。
　もしかして、もう当分…って、もちろん三送会は７人でやるけど、そこから先は７人じゃできないのかな、なんて。
　本当は、リハの時そんなこと考えてたらダメなんだけど！　お姉ちゃんにも怒られちゃったしね！！！
　う、うーーーん！！　らしくないなーーー！！！

　お、おかしいよね…こないだまでは５人だったし。
　別にずーーっと会えなくなるわけでもない、ってことくらい、わかるんだけど。
　なんだろ。あんまり、うまく言葉にできないな…

　お姉ちゃんの持ってきてくれたどら焼き、ほんっとおいしいの！甘くてフワッフワ！
　学校からお姉ちゃんちの間の駅で買えるんだって。
　もーー、一緒にやろうよって言ってくれたし、どら焼きは美味しいし！
　それで、お姉ちゃんの卒業公演の曲。なんとかっていうクラシックの曲なんだけど、編曲白奈ちゃんにやってほしいんだって！　もー今すぐメールした！！
　なるるんと凪ちゃんとぶっつけでやった時も、なんかめちゃめちゃめちゃめちゃ楽しかったもんなーー！
　うーん私こういうの、好きなのかな？？？？

　…私、なんかだいぶ鈍感な自信、あるんだけど…
　あーりんもお姉ちゃんも、凪ちゃんもなるるんもなずなちゃんも、あと白奈ちゃんも…みんな少しずつ、私のこと色々心配してくれてたの、気づいちゃった。
　でももう叩けるし、全然大丈夫だから！！
　お姉ちゃんの卒業は寂しいけど、ライブは絶対最高にするから！！
　７人のイロドリミドリ、絶ーーー対頑張ろーー！！！