15章 
ダメージを挽回 
■日本語版 15章 p.360
ダメージを挽回するにはもう遅すぎたが、
■UK版 p.179
It was a bit late to repair the damage, but
■試訳
- 失った点を取り戻す時間はあまり残っていなかったが、
- やったことはもう取り返しがつかないけれど、
■備考
- ときどき「汚名返上」「名誉挽回」と言うべき所で「汚名挽回」と言って笑われる人がいるが、
「ダメージを挽回」とはねえ…。
注目を引く 
■日本語版 15章 p.360
ハーマイオニーは教室でみんなの注目を引くのをやめ、うつむいたまま黙々と勉強していた。
■UK版 p.179
Hermione had stopped drawing attention to herself in class, keeping her head down and working in silence.
■試訳
ハーマイオニーは教室でみんなの注意を引くのをやめ、うつむいたまま黙々と勉強していた。
■備考
- 注目を集める、目を引く、注意を引くとは言うけど注目を引くとは言わないな。
木星の星図、木星の月 
■日本語版 15章 p.363
ハリーはきっぱりとそう言い切ると、木星の星図を引き寄せ、木星の月の名前を覚えはじめた。
■UK版 p.181
He pulled a map of Jupiter towards him and started to learn the names of its moons.
■試訳
ハリーはきっぱりとそう言い切ると、木星の図を引き寄せ、木星の衛星の名前を覚えはじめた。
■備考
- moonは、ここでは月ではなく衛星のことでしょう。
日本語の「月」にも衛星の意味はあることにはありますが、一般的ではないですよね。 - 「星図」も「天球を一つの平面状に投影して、天体の位置や明るさを現わした図。恒星図。」(広辞苑より)ですから、
map of Jupiterも「木星の星図」なんて無理矢理訳さずに、普通に「木星の図」ぐらいでいいのに。
気がついていたわ 
■日本語版 15章 p.370
「(略)お二人さん、こっちはロナンだよ。ケンタウルスだ」
「気がついていたわ」ハーマイオニーが消え入るような声で言った。
■UK版 p.184
‘(略)An' this is Ronan, you two. He's a centaur.’
‘We'd noticed,’ said Hermione faintly.
■試訳
「(略)ハリー、ハーマイオニー、こっちゃロナンだ。ケンタウロスでな」
「見たところそのようね」ハーマイオニーはささやくように言った。
■備考
- 気がついていたって、ケンタウルスがいることに?
それともロナンがハリーたちに気付いてたの? - 紹介して貰って「こんにちは」とか「はじめまして」ならまだしも
「気がついていたわ」だと失礼な人という感じがする。 - ここでnoticedの直訳である「気がついた」を使うのは機械翻訳レベルなんだよね。
「そのようね」「そうみたいね」で、「気がついていたわよ」のニュアンスが出てると思うけど、
こういう意訳の判断ができず、おどおど訳してる感じ。
連中は深い、心がな 
■日本語版 15章 p.373
「(略)連中は深い、心がな。ケンタウルス……(略)」
■UK版 p.185
'(略)They’re deep, mind, centaurs . . .(略)'
■試訳
だが、連中の言っていることは難しいぞ。ケンタウルス……
■備考
- mind you(いいかい、よく聞け、言っておくけど、念のため、しかし)という成句の省略形 mind を名詞と間違えてる。
- ここのdeepも「深い」と訳すと、それこそ「深くて」何は言いたいのかわからない。
- 前後を読めばハグリッドが何を言いたいかはほぼわかるね。
ケンタウルスは何やら独自の哲学を持っているらしく理解しにくいと。
それをdeepといってる。
パロミノ 
■日本語版 15章 p.376
もっと若く、明るい金髪に胴はプラチナブロンド、淡い金茶色のパロミノのケンタウルスだった。
■UK版 p.187
this one looked younger; he had white-blond hair and a palomino body.
■試訳
こちらはもっと若く見えた。髪と尾は淡い金色、胴体は薄い茶色(黄金色)だ。
■備考
- 禁じられた森(ユニコーン探し中)でのフィレンツェの容姿についての記述。
パロミノとは「たてがみと尾が淡黄色で体が黄金色の馬」または「たてがみと尾が白で胴が黄金色か淡黄褐色の馬」のこと。月毛ともいう。
「パロミノ」では日本人には理解できない。 - このときの焦点は「パロミノとは?」。その謎は解消されたけど、日本人の感覚ではプラチナブロンドはマルフォイ父のような白に近い金髪。明るい金髪は黄色に近いイメージだと思われる。だから邦訳は、胴と髪の表現も逆にならなければいけないのではないか?
- 金茶色のパロミノって白い白馬みたいなもん?
- パロミノは体毛が白から淡い金茶色の馬。たてがみと尾は胴体よりも白いことが多いので、頭髪がホワイトブロンドなら胴体はもっと濃い色のはずだ=薄い茶色(黄金色)になる。でも邦訳だとその辺のことが全然わかんないね。「こっちの(人)はもっと若く見えた。パロミノのケンタウロスだ。頭髪と尾はプラチナブロンドで、胴体の毛色は淡い金茶色だ」(注釈でパロミノ説明)とかでどうでしょ。
16章 
話がうますぎると思わないか? 
■日本語版 16章 p.388
ハグリッドにたまたま出会ったなんて、話がうますぎると思わないか?
■UK版 p.193
Lucky they found Hagrid, don’t you think?
■試訳
やつら運がよかったと思わないか?
■備考
- 作者がLuckyを使わせた気持ちを察しろよ。
ハリーは、Luckyを使ってわざと遠回しな言い方をしてるんだから
そのニュアンスを再現するのが翻訳者の仕事。 - ハリーが「やつら運がよかったと思わないか?」とわかりにくい言い方したので。
ロンが「何が言いたいんだ?」と聞き返した。この流れが大事。 - つまり原作はハリーが皮肉で遠回しな言い方をしたせいで意味が伝わり難かったけど、
邦訳はそのニュアンスを無視してハリーの台詞をはっきりした内容に勝手に変えたせいで
ロンが察しの悪いアホの子になってるワケですね?
…ダメじゃん。 - 3巻でも同じような間違いとして、ルーピンが
「まね妖怪のボガートとはなんでしょう?」という馬鹿な質問をしてしまっているという…。
その時点で出ていない発言を解釈して補足しないでほしい。
ネタバレする本とか最悪だよ…
いやに愛想よく 
1巻における代表的な誤訳を参照。
魔法陣 
■日本語版 16章 p.395
「何度言ったらわかるんです!たとえ私でも破れないような魔法陣を組んでいるとお思いですか!」
■UK版 p.196
‘I suppose you think you're harder to get past than a pack of enchantments!’
■試訳
- 「どうやらあなたがたは何重にもしかけた魔法のトラップより、自分達の方が頼もしいと思っているようですね!」
- 「どうやら貴方達は我々が用意した魔法の仕掛けの数々よりも、自分達の方が優れていると思っているようですね!」
■備考
- ハードカバーの邦訳は原文の文意がかなりわかりにくくなっており、オリジナルに近い。
- hard
:〈俗〉とても良い、素晴らしい、格好いい、最高にいかす、超すごい、一流で、魅力的で
- get past
:~を通り抜ける
- 「a pack of enchantments」=「魔法のしかけ(守り)を束にした物」は
マクゴナガル先生の巨大チェスやスネイプの毒薬パズルなど賢者の石を守るための侵入者よけの魔法群のこと。
それを「魔方陣」というのは、どう考えても立派な間違い。
ハリポタには召還魔法出たこと無いけどそれとは関係なく酷いよ。 - 携帯版では「何度言ったらわかるんです!あなたたちの方が、何重もの魔法陣の守りより強いと思っているのですか!」に変更されているが、
「何度言ったらわかるんです!」という原文にないオリジナルの部分や「魔法陣」が残っているため、修正としては不十分。
心臓にいやな震えが走った 
■日本語版 16章 p.409
ハリーの心臓にいやな震えが走った。
■UK版 p.202
With an unpleasant jolt of the heart.
■試訳
嫌な予感に心臓がドキンとした。
■備考
- スプラウトの仕掛けた「悪魔の罠」を突破して通路を歩いてると、
ドラゴンが守っているといわれているグリンゴッツを思い出し、ここにもドラゴンがいたらどうしようと思う場面。
- 心臓にではなくて、「心、気持ち」が震えた、不安がよぎった、だと思う。
胸が激しく高鳴っているのだろうなというのは何となくわかるけど。 - an unpleasant jolt 直訳すると「不快なショック」
これは『嫌な予感に心臓がドキンとした。』とかでいいんでは。
無駄な擬態語が多い訳だけど、心臓震えさすくらいなら「ドキン」でいいと思う。 - 「心臓にいやな震えが走った」だと心臓に疾患があるみたい。
日本語版は擬音語や擬態語が無駄に多いんだから、こういうときこそ擬音語や擬態語を使えばいいのに。
論理パズル 
1巻における代表的な誤訳を参照。
17章 
「金縛りの術」をかけられたより 
■日本語版 17章 p.451
マルフォイは、「金縛りの術」をかけられたよりももっと、驚き、恐れおののいた顔をしていた。
■UK版 p.222
Malfoy, who couldn't have looked more stunned and horrified if he'd just had the Body-Bind Curse put on him.
■試訳
マルフォイは、金縛り術をかけられたとしてもこれほどではあるまいと思われるほど、呆然として恐怖にかられた表情をしていた。
■備考
- 直訳すると、
Malfoy, who couldn't have looked more stunned and horrified
(マルフォイは、より呆然と恐怖にかられたようには見えなかっただろう)
if he'd just had the Body-Bind Curse put on him
(もし、金縛りの術をかけられたばかりだったとしても)
これをまとめて整えるとき、「よりももっと」を使えばいい場合もあるけど
この場合は、マルフォイがBody-Bind Curseにかけられたことがあるかどうか
わからないので、「かけられたよりも」とは書かない方がいいだろうね。
「マルフォイは、金縛り術をかけられたとしてもこれほどではあるまいと
思われるほど、呆然として恐怖にかられた表情をしていた。」
とかにするのがベターと思う。 - 訳者は
「金縛りの術をかけられた」よりも
と考えたのだろうけれど、日本語ではこういう言い回しはしないから気持ち悪くて仕方ない。
金縛りの術をかけられた時よりも
なら多少ましなのだけど。
はい、その人です 
■日本語版 17章 p.441
「クィレルが言うには、スネイプが」
「ハリー、スネイプ先生じゃろう」
「はい、その人です…(略)」
■UK版 p.217
"Quirrell said Snape -"
"Professor Snape, Harry."
"Yes, him - Quirrell said (略)"
■試訳
「クィレルが言うには、スネイプが」
「ハリー、スネイプ先生といいなさい」
「はい…クィレルがいうには(略)」
■備考
- ダンブルドアは「『先生』とつけなさい」という意味で言ったんであって、誰のことかわからなかったわけじゃないんだから、「はい、その人です」はおかしい。
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- 論理パズルは全文を書いて該当箇所を赤い文字にしました。見にくいと感じるようでしたら直していただいてもかまいません。あと、検証の部分はそのままリンクを貼ったけど、このWiki内にコピーしたページを作ったほうが良かったですかね? -- ヘキサ 2018-10-16 (火) 02:18:03
- 検証ページのコピーを作成しリンクを貼り換えました。 -- ヘキサ 2019-05-12 (日) 16:20:22
- わかったわかった… -- 2019-06-21 (金) 14:53:49
- みたいなノリで「はい、その人です」って言ったのかと思った。 -- 2019-06-21 (金) 14:54:35
- あれだけ問題視されたし論理パズルの誤訳はさすがに直ってると信じたいが… -- 2020-06-03 (水) 12:02:39
- 論理パズルは「1巻における代表的な誤訳」に移したほうが良さげ -- 2021-11-04 (木) 14:50:32
- 反映させました
-- nevi 2021-11-04 (木) 15:50:31
- 反映させました
- 代表的な誤訳ページと章ごとのページに重複があっても別によくない?このページで一行だけでリンク飛ばしたら読み飛ばされそう。 -- 2021-11-06 (土) 07:27:25
- 確かにそう思うぞ -- 2021-11-06 (土) 11:29:54
- 先日の論理パズル、わたしは重複させてコピーしただけだったのですが、後日ほかのかたが整理整頓してくださったようです。たしかにスクロールしていくとリンク一行だと目立たないですね。少し考えてみます。 -- nevi 2021-11-08 (月) 00:33:22