杉内俊哉(元ダイエー/ソフトバンク→巨人)がダイエー時代の2004年6月1日のロッテ戦(福岡ドーム)で起こした事件。
転じて、選手(場合によってはコーチも)がベンチで暴れる行為自体を「ブルガリア」と呼ぶようになった。
経緯
杉内はこの試合に先発したが、2回7失点でKO。そしてベンチに戻ると怒りにまかせて、帽子とグラブをベンチに叩きつけ始めた。
それでも怒りは収まらず、ついには右手でベンチを殴り始め、さらには利き腕の左手でも殴りつけてしまう。
これにより両手小指付け根の骨折で全治3ヶ月。結局これが同年最後の、そしてダイエーで最後*1の先発登板となってしまい、試合も6-13で大敗。球団からは罰金100万円・謹慎10日を科せられ、さらに事態を重く見た球団は後日罰金を600万円に増額した。
当時監督の王貞治は「戦列を離れなければいけない。悔しさは誰にでもある。だが、何の為に選手としてやっているのか。絶対にやってはいけないことだ」と苦言を呈した。
また、杉内が引退後、フジテレビの番組『ジャンクスポーツ』でこのシーンが取り上げられた。なお杉内曰く「滅茶苦茶怒られた」との事。
ちなみにこの後の杉内は同シーズンのプレーオフで一軍復帰。中継ぎとして3試合登板している。
ブルガリア
この事件はスポーツ紙で大々的に取り上げられ、当時のベンチ内の様子について当時正捕手を務めていた城島健司が「利き手はやめろ!」と叫んだことを各社が報道していた。しかし日刊スポーツがネット上に掲載した記事には
「利き手はやめろブルガリア!ブルガリア」
と記載。
ブルガリアの部分はしばらくして削除されたものの、『深刻な事態で唐突に出た単語が意味不明』というギャップから当時のネット上で瞬く間にネタにされ、「ブルガリア」は杉内の代名詞として定着した。
考察
この「ブルガリア」についてネット上では
- 単純に日刊スポーツの誤植
- M社ヨーグルトのステマ
- 城島は実際には別の言葉を叫んだが、記者や関係者の聞き間違いで「ブルガリア」に置き換わった*2
- 杉内がチームメイトに「ブルガリア」のあだ名で呼ばれていた*3
といった説が語られた。
この事件は杉内本人や関係者の黒歴史となっており、当時について説明・言及されることが殆どないまま杉内・城島両選手が引退してしまったが、2020年4月27日、西スポが電話インタビューで事の真相を城島に聞いたところ、
「そんなこと言うわけないやん!(笑) ブルガリア? 琴欧洲しか思い浮かばんけどなぁ。『利き手はやめろ』とは言ったけど、その後に何て叫んだかなんて覚えてないですよ」
との事。これによって、少なくとも『杉内のあだ名がブルガリアだった』という説は否定された。
外部リンク
- ダイエー杉内両手骨折、イスをパンチ!! (※修正版)
- 当時の反応集 (プロ野球板)
再来
ベンチで暴れるという同様の事件は、チームがソフトバンクへと移行した後にも(こちらは自傷行為ではないものの)発生している。
2010年4月14日の対オリックス戦(京セラドーム)。この日の先発を任された神内靖*4は立ち上がりからオリックス打線に捕まり、2回1/3を7失点でKO、3回途中で交代を告げられる。
するとマウンドから降りた際、神内は自分のグラブをダッグアウト内に備え付けられていた扇風機に向かって投げつけ、更にはベンチに座るや否や前列の背もたれを力任せに蹴って破壊してしまった。
相手ホームグラウンドの設備を破壊するというプロアスリートとしてあるまじきこの行動に対し、オリックス側はベンチの修理費7万円を請求。更にはこれを受けたソフトバンク球団も(神内自身のコメントを含めた)謝罪文を発表するという異例の事態に。
結局、神内は二軍降格と同時に球団から厳重注意を受けた上、ベンチの修理費も自費負担、と大きな代償を払う事となってしまった。
なお、試合は打線が奮起し7回に同点まで追い付いたため神内の黒星こそ消えたものの、8回に登板したブライアン・ファルケンボーグが自身の失策から痛恨の失点。8-10で敗戦している。
他球団での例
パットン将軍御乱心事件
ブルガリア事件から15年以上経た2019年8月3日、DeNA対巨人戦で類似事例が発生。詳細は冷蔵庫を参照。
森友哉マスク投げ事件
2022年4月2日の西武対ロッテ戦(ZOZOマリン)でスタメン出場し3打数無安打だった西武・森友哉は8回の守備から途中交代。その後ロッカールームでキャッチャーマスクを投げつけた際に右手示指基節骨*5を骨折した。
翌3日にこの事実が判明すると、対ロッテ戦で発生した自傷的な骨折という事で、ネット上では「ブルガリア事案」ないし「令和のブルガリア事件」と認定する声が溢れた。
山田コーチ壁蹴り事件
日本ハムは2022年6月19日のロッテ戦(札幌ドーム)に2-4で敗戦、同一カード3連敗を喫する。敗戦の悔しさに山田勝彦バッテリーコーチはベンチ裏の壁を蹴ったが、その際に右足甲を骨折し、27日まで山中潔二軍バッテリーコーチと担当入れ替えとなった。
再びの対ロッテ戦で発生した自傷的な骨折ということからまたもブルガリア事案認定された。
松木平ベンチ殴り事件
中日は2024年10月6日のDeNA戦(バンテリンドーム)に0-2で敗戦、立浪監督最後の試合でチームの3年連続最下位が決定してしまう。京田に決勝タイムリーを打たれ敗戦投手となってしまった松木平は悔しさのあまりベンチで号泣、しまいには利き手の右腕でベンチのフェンスを殴ってしまう。その様子は中継に抜かれており、「利き手は大事にしてほしい」と解説に心配された。
バンダ「固いもの」殴り事件?
2024年に大谷翔平や山本由伸が加入して日本でも注目されていたMLBのロサンゼルス・ドジャース。そのリリーフ左腕であるアンソニー・バンダが同年9月10日のシカゴ・カブス戦で6回表に登板するも1回4安打1四球で3失点と乱調。試合後に「フラストレーションで何か固いものを殴って怪我をした(左手亀裂骨折)」という理由で負傷者リスト(IL)入りが発表された。
当然日本でもメジャーのブルガリア事案として騒がれたが、のちに本人が「苛立ちからペーパータオルディスペンサーに手をぶつけた」「何かを殴ったわけじゃない」と一部釈明。シーズン終盤の優勝争いで離脱する羽目にはなったが、プレーオフまでには復帰している。