概要
中日一期目の福留は銭闘民族として有名であり、全盛期は中村紀洋や杉内俊哉と並び球界屈指の『黄金銭闘士』*1として君臨していた。
2006年の福留は打率.351(首位打者)・31本塁打・104打点・47二塁打(当時セ・リーグ新記録)の好成績で中日のリーグ優勝に大きく貢献、攻守にわたってチームを牽引しベストナインとゴールデングラブ賞を受賞しセ・リーグMVPにも輝いた。そして福留はオフの契約更改を前に、マスコミの取材に対して希望額は年俸4億円(チーム内日本人選手最高額)であることを示唆。一方で「契約済の岩瀬仁紀(推定3億9000万円)とのバランスを考慮して査定する」との球団関係者によるコメントも報道されていた。
これを受け、福留は
自分でも満足のいく年だったし、やった時にはガーンと上げてもらわないとね。
(チーム内の)バランスなんて選手には関係ない。
命かけて戦ってきたのに、通用しないでしょ。評価は言葉じゃなく金額。
別に自費キャンプでも構わない。
と交渉前から銭闘モード全開で徹底抗戦を宣言。
しかし、いざ交渉に臨むと球団側は岩瀬を下回る3億8000万円の提示によりサインを保留した福留は、
(サインは)していません。
言葉が出ませんでした。
あぜんとしたかな。
球団からの提示は自分(の希望額)と大きくかけ離れていた。
久々に呆れました。自分でも目一杯の成績を出したつもり。
それにしては球団の提示額は大きくかけ離れていたので何も言わず出てきた。
これ以上の成績を求められても僕自身苦しい。
一番いいと思った年。
その評価としてはちょっと低いと思う。
言葉が出ません。(希望額との開きは)大きいと思います。
球団の提示を楽しみにしてたけど、今シーズン(2007年シーズン)に向けてという意味ではガッカリしました。
「球団としては精一杯」と言われたが、いくら言葉で最大限の評価をしたと言われてもね。
と会見で発言。言葉では「最大限の評価」を口にするも、金額では最高額を提示しなかった中日球団への不信感を爆発させた。
その後も中日側は「岩瀬を超える金額は出せない」との姿勢を崩さず、再交渉の末に福留は3億8500万円でサイン。しかし、サインした理由を聞かれて「ユニホームを着て野球をしたいのでサインしました」と不本意であることを口にし、翌年オフに早々とMLBへFA移籍してしまった。
この言動は猛バッシングを受け、守銭奴福留を象徴するキーワードとして「誠意は言葉ではなく金額」が使われるようになり、野球ch・なんJでは迷言として定着した。
また、この時のネット記事の見出し“福留「あきれた」3億8000万円を保留”は、ぼく将スレなどで改変のネタになっている。
100万ドル寄付
しかし2011年、福留の評価を一変させる出来事が起きる。
3月11日に発生した東日本大震災を受けて、当時シカゴ・カブスに所属していた福留は100万ドルを被災地に寄付(当時のレートで約8000万円)。これはイチロー、松坂大輔、アレックス・ラミレスと並んでスポーツ選手として最高額の寄付であった。
さらに福留本人はこのことを公表しておらず、マスコミが関係者に取材したことで偶然判明した事実であった。
福留の義援金は100万ドル(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/f-bb-tp2-20110410-759289.html
東日本大震災の被災者へ送った義援金が、100万ドルだったことが米国内の関係者への取材で、この日分かった。
マネジメント会社が先月末に寄付を発表した際、福留は「一日でも早い被災地の復興がかないますよう、そして、一人でも多くの方たちの笑顔がその地に戻りますよう、心からお祈り申し上げます」とコメントしている。
この事実を受け、なんJでは「福留は言葉ではなく金額で被災地に誠意を示した」「あの発言はフロントだけでなく自分自身にもキチンと適用していた」と熱い手のひら返しが続出しており、この発言はプロとしての信念を説いた至言と解釈されるようになった。
寄付するつもりだった発言
福留は2004年の銭闘でも「上がった分は(10月に起きた新潟県中越地震の被災地に)寄付するつもりだった」と発言している。
当時は「福留が被災地に寄付」というニュースが流れなかったため、当然のように「銭闘を正当化するための嘘」だと思われていたが、公表もせずに大金を寄付するという東日本大震災時の行動により「2004年の発言も真意だったのではないか?」と評価が見直されることになった。
元祖「言葉じゃなく金額」
上記の通り、福留の実際の発言は「誠意は言葉ではなく金額」ではなく「評価は言葉じゃなく金額」である。そして、この「評価は言葉じゃなく金額」は福留発祥ではない。
福留の発言から遡ること4年、2002年に金田政彦(当時オリックス)は最優秀防御率のタイトルを獲得*2。しかし、同年のオフの契約更改でオリックスが提示した金額は2000万円増の年俸7000万円だった。
金田は
思った以上に低く、ショックでした。
先発投手の役割を果たしてくれたと言われたが、プロ野球選手として、評価は言葉じゃなく金額でしてほしかった。
と発言して保留した。なお、福留が金田の発言を意識して発言したのかどうかは不明である。
真逆の発言
これとは真逆の「誠意とは金額ではなく言葉」を発言したのが栗原健太である。
広島時代、FA権を取得した2011年に栗原は権利行使について球団と交渉を重ねていた際に「条件うんぬんではなく、言葉で残ってほしいと言ってもらいたい」「誠意で判断したい」とコメント。
FA権をダシにした年俸交渉を行う選手も多い中、金額より誠意を求める真逆の姿勢を見せていた*3。