オフシーズンの契約更改で、選手と球団の間で年俸を巡って行われる闘いの事。特に選手から球団に対して挑む方を指すことが多い。
概要
選手は少しでも高い年俸を、球団は少しでも出費を抑えるため、毎年あの手この手を使って契約改正の交渉が行われる。その結果飛び出す名言・珍言などは、オフシーズンの楽しみの一つである。
銭に対する執着度合は「銭闘力」、銭闘力の高い人物は「銭闘民族*1」と呼ばれ、1990年代では日本ハム時代の西崎幸広やロッテ時代の小宮山悟、2000年代では近鉄時代の中村紀洋やソフトバンク時代の杉内俊哉などが特に有名だった。また、契約更改の場で選手側が訴える内容は年俸だけに限らず、チームの待遇改善やファンサービスなどといった球団改革、さらにはポスティングによる海外移籍の緩和にまで踏み込んだ発言に及ぶこともある。
銭闘の是非
プロ野球選手は個人事業主*2であるため、環境の改善や不当な買い叩きに対し声を上げるのは正当な権利である。しかし分不相応な銭闘を繰り広げる選手も多く、行き過ぎると「守銭奴」「問題児」などのマイナスイメージを持たれる。
ヘイトを集め過ぎた選手は、成績が落ちてくると容赦ない減俸をされたり、突然のトレードやクビであっさりと球団を追い出されることもある。さらに引退後の人生も支援してくれなくなり、ファンからも見捨てられて哀れな末路を迎えることすらあり、落ちぶれた元銭闘民族の姿はまさに栄枯盛衰の様を呈する*3。
一方、球団側も活躍に見合った額をいくら交渉しても出さない場合は、チーム内外問わず選手からの不信を買い、「FAによる選手の流出=戦力の低下」や「FA選手からの敬遠=戦力補強の失敗」、ファンからも不信感を持たれフロント批判、観客動員の低迷に繋がることも多い。
ちなみにかつて西武ライオンズ代表を務めた黒岩彰氏*4は2006年に「この季節になると急に頑張る人がいるが、それならシーズン中にグラウンドで頑張れと言いたい」という発言を残している。
平成末期~令和時代になるとブラック企業問題が社会問題になったことと相まってフロントがあまりにもブラックな対応を取ったり不用意な失言が明るみになると、ファンからのヘイトが球団フロントや上層部に集中しがちになった。特に2020年の中日の契約更改においては、折からのコロナ禍による親会社である中日新聞社の減収もあるが、球団代表の加藤宏幸による2019年における問題発言よりも更に踏み越え、球団側が選手に銭闘を仕掛ける行為に出て3名もの保留者を出した上に、(木下拓哉と福谷浩司が中日ドラゴンズ選手会の要職だった為)労働組合/一般社団法人である日本プロ野球選手会*5*6から、加藤の言動に関し抗議文を送付する前代未聞の事態に発展した。
余談
このような契約更改での闘いについて語り合うのがプロ野球板の名物スレ『ゴネそうな選手をニヤニヤしながら予想するスレ』である。
だが、他人にも自分にも一貫した行動を要求した福留孝介の「誠意は言葉ではなく金額」や年俸調停の末に概ね主張が認められた2010年の埼玉西武ライオンズ・涌井秀章など「妥当と判断された要求にすら人格否定レベルで非難や罵倒をする書き込み」も多くみられ、高額所得者である野球選手に対するルサンチマンの色が強いスレでもある。
そのためまともに選手や選手の年俸を語りたい人間には上記スレやそのスレの価値観をよそに持ち込む住人を嫌う者も少なくない。