Side Story(9-1~)

Last-modified: 2021-08-03 (火) 19:05:27
 

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Side Story

Esoteric Order

 

9-1

解禁条件 楽曲「Paper Witch」のクリア

日本語

目の前の景色が、移り変わっていく。

一歩一歩が踏まれる度に次々と変わっていく、景色。
その一歩が地面を変え、空間を、変えていく。
今、少女は織物の端に近づいていた。世界という名のそれが、
決して縫製されきっていないことを確かめる、ただそれだけのために。
ゆるやかに、すぐ近くを通り過ぎていた硝片が、急に蠢いた。まるで動揺した様に。
少女の周囲に白さは乏しく、むしろ黒くなっていた。
宙空に星がきらめき、歩いてきた軌跡はひび割れていた。

記憶の織物であるところのArcaeaは、そもそも端がほつれている。
見過ごされ、忘れ去られてきたほつれ糸だ。
その前、その渦中に今立っている少女こそ、初の生き証人なのである。

「——…どうやら」

彼女は今、真にひとりだった。

「誰かがここにたどり着くとしても、私と同じ道を辿る人はいないのでしょうね……」
声に出た一言は、確かめるような独り言。
呟きはそのままに、ねじれた荒れ道に沿って進んでいく。
「そういうことでしょう?道が形を失ってから随分になります。
目の前の景色はそのまま、変わり続けてますし……」

彼女ははるか遠く、右方にある事象、その一連の様子を眺めていた。
上向きにくるり、下向きにくるり、回っている白い螺旋が、
やがて崩れて、有象無象の粒子と散っていく様を。
そのまま、その粒子ら——欠片らは暗闇の中をきらきらと光りながら、
緩やかに彼女に向かって漂ってきていた。

「また欠片、ですか。——なにか、言うことはないのですか?」
と、傍らに浮くモノへと水を向ける。カロンと名付けられたソレへ。
衛星のようなソレは、動かない。その無駄に出来た頭を撫でながら、
「さあ、話してごらんなさい」と、命じてみる。

しかしその頭上で浮く、三角形の輪が意味もなく回るだけだった。

「……まあ、でしょうね」と、頭に手を置いたまま振り返ると、
眼前に広がる、その虚無の世界をじっと見つめた。
「ええと、『底の世界(lowest world)』と名付けたんでしたっけ…
なんとかこうしてあそこに向かえば、道すがらきみの寿命を延ばしつつ、
記憶を蓄積しつつ、そうしていずれは意識も……と思っていました…が、
それでもきみはいまだ…何も識りはしないようですね、カロン」

失敗作のしっぽが、ゆるりとSの字を描く。
揺れる耳はどこか物憂げに、けれど考えなしのようでもあって。

手を離しながら、「その動きは、愛らしいですけれど」と、
そう、ラグランジュは心から、安らいだ様子でそう認めた。

まだ白い世界にいた頃、硝片から作り出された衛星はやがて、お気に入りの場所と思しき
少女の左肩へと漂うように戻っていった。そうして、形が定着しつつある道へと、少女は向き直る。

奇異なことに、今まで見たものの中でもその道は、一段と幅が広かった。
——もはや道というより、平地だ。今見る限りでは少なくとも、そう見える。
そんな彼女を推し量ろうと、右側からArcaeaが集い始めた。
この人物、その心に、付け入る場所はあるのか、と探るように。
少女が意に介さず歩き始めると、どうやら違うらしいと見て、早々に散っていった。

彼女がここにいるのは、記憶のためではない。そしてこの、記憶の地は、
飽くまで過去の記憶に過ぎない。限界を超えても、学ぶことは多く、発見することもまた、多い。

これが、この場所がほつれた織物の端。
移り気に姿を変える道を進みながら、この場所の揺らぎと出会いたいと少女は考えていた。
そして叶うなら、この織物、それ自体の続きを手織れるようにと。

そうして、彼女は進む。自らが選んだ世界へと。
昏き世界、『虚無』へと。

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9-2

解禁条件 9-1の解禁 & 楽曲「Crystal Gravity」のクリア

日本語

ここには、およそ理解できるものがない。

もはや、ここという概念すらない『虚無』。けれどここが、Arcaeaそのもの。
境界と理の外であるこの空間が告げている。そう、最初からこの世界の全てが、
本当は真実を告げていたのだ。目覚めたときから、ずっと。

なにより、目覚めたばかりの少女が自らについて考えられるほど落ち着く前に、
Arcaeaが自ずとその存在を示してきたことは忘れてはならない。
(そして彼女が最後まで、『自分について考える』ことはなかったということも)
その上、ただ存在を示したわけではない。しつこく、実的に示し続けたのだ。
まるで、『ようこそ、この世界へ。そしてこれが世界だ』とでも言うように。

あるのは記憶に特化した、抽象的な書庫と、理由もなくまばらに散在する廃墟群。
そして意味のない名前のついた、名前のない少女。
それでも孤独な少女は、この世界の流れに気づくこともないけれど。
最初に彼女がしたことといえば、書庫が提供する『蔵書』を読むことだった、
だからそうして、少女は硝片を覗いていったのだ。

そこに一貫したテーマのようなものは一つとして見つけられず、
またつながりのようなものもなかった。書庫ならば、分類し、選分し、
整頓するシステムがあって然るべきだというのに。
——それもまた、観てきた記憶から得た知識にすぎないけれど。

Arcaeaにおける記憶はといえば、もはやそこに意図の類は見られなかった。
配置されている場所から、向かう場所においてもそうだ。
そもそも、彼女の存在自体もまた必然性がなく、まるで偶然起きたことのようで。
それに思えば、彼女は目覚めた最初からArcaeaという世界を知っていた、
にもかかわらず、自分がどうしてこの世界にいるのか、知りもしなかったのだ。

「……それに考えても見てください、カロン。これまで見た世界について。」

その言葉で、カロンの目が少女の方へ。ただその目に、思慮の光は見受けられなかった。
一人と一匹の主従はいまだ、『虚無』の中にいた。何処に向かうでもなくただ、歩いている。

「きみの材料になった世界といってもいいでしょう」
と、そっとカロンの耳に触れながら言葉を続けた。
「その中で一つでも、明確な意図の元に作られたモノなど、ありましたか?
これと似たような記憶を見た覚えはないですし、きみの材料になった記憶においても、
心当たりがないので……。 まるで、明確な意図のもとに作られた世界でありながら、
どこか意図が欠落しているような…」

「その辺、きみは...どう思いますかね?」
言葉を切って、同行者に尋ねた。

視線はそのまま、眼前に揺らめく白い道に向いているだけだった。
仕方なく、手を放す。

「……、思えてならないんですよ。あまりに半端な仕事だと」
とひとりごちれば、カロンが頷いたような気がした。
静かに、共に進みながら、彼女は過去に思いを馳せる。

すると、眼前にその思いを馳せた過去、そのものが現れた。

……または、これこそが現在なのか?

「これは、一体……?」

ありありとその声色に、心からの困惑が出ていた。

突如、雲のようなものが現れたのだ。今までは浮かぶ道しかなかった、その場所に。

宙空で揺らめく、あまりに非現実的に、唐突に現れたその造形。
どうやらソレは、少女が気づかない内に発生したらしかった。

少女はそこに、再び見た。
雲のようなものの向こうに、廃墟と白、浮遊する硝片の世界を。
それは唯一覚えている世界で、置き去りにしてきた世界だった。

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9-3

解禁条件 9-2の解禁 & 楽曲「Far Away Light」のクリア

日本語

これは、今起きていることだ。

もし記憶だったとしても、目覚めてから見たものとは全く異なっている。
誰かの視界ではなく、そもそも乗り移る視界がない。

飽くまでも、どこまでも、映るのは古く、荒廃した世界。

「……」

少女は言葉もなく、眺めている。

「……いわゆる馬鹿にされている、というやつでしょうか。私」

そう漏らしつつ、彼女は前に進んで行った。

ふと考えたのだ、最初の世界について。すると、あの世界の景色が自ら現れたのである。
冷やかしか?虚仮にしているのか?ああ、きっとそうに違いない。たしかにアレは、
どこか少女を嘲っているようだったから。道なりに進んでいると、更に同様の白い世界の景色がいくつも、
雲様に広がっていた。殆どは空虚なもの、けれどそのいくつかには、誰かが映って——。

想定通りだが、捻りがない。その雲のような窓を少し調べてみればどうやら、
不可視の壁があるようだったし……

そもそも、Arcaeaの世界自体に関心が残っているとか、あの場所に留まる意欲があるのなら、
こんな場所ではなく、少女はあの世界に留まっていたのではないだろうか。
それでもなお、以前の、かの地での生活に彼女は思いを馳せてしまっていた。

多くの記憶を見てきて、一時はこの世界の真実を含む記憶がどこかにあるかもしれないと、
そう思っていた頃もあった。だが見てきた殆どは、言ってしまえば『薄っぺらい日常』だ。
その日その日の出来事だけ。朝の目覚めから、夜に訪れる死まで。始まりから終わりまで、
ありとあらゆるモノの一巡があっただけ。真実なんてそんなものは、存在しなかったのだ。
多くを、それでも学んだ。だがこの世界については、何一つとしてわからなかった。

それでも、より多くを識るためにかの世界を離れ、世界の端に行くことを決めた時、
思ったのだ。世界の一部くらいは連れて行こうか、と。けれど少女はむしろ、
世界の一部…おそらくは良い部分から、何かを作ろうと考えたのだった。

そうして、カロンを見る。周囲にきらめく旧世界への窓には目もくれず、
少女は、自分の衛星だけを見つめていた。

そもそも少女はこの衛星を、気まぐれで作ったのではなかったか?

あの時、脳裏に浮かんだのは、とある仮説。もしもこの記憶でできた場所が、
この人の消え失せた世界が、なにか新しいものを作る材料になるとしたら……?

硝片、Arcaeaをいくつかまとめて手繰り寄せ、一つになるように願った。
すると、今のカロンの形になったのだ。

「……」

そのカロンからはだが、何も語られず、為されることもない。

それでも母星に寄り添う月のように、カロンは彼女と共にある。

だから、もうあの世界はいらないのだ。

あの世界が少女にとって、どれだけちっぽけな存在なのかは、
今、 まさにカロンこそが体現しているのだから。

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9-4

解禁条件 9-4の解禁 & 楽曲「Löschen」のクリア

日本語

暗がりの中を進む。静かに、静かな衛星を道連れに。
その思考は再び、あちらこちらへと飛び交っている。

どうしても、あることを考えてしまう。

もしかしたらどこかに、全てを創造した神がいるのではないか、と……。

少なくとも、この世界の責任を負うものを神と呼ぶのは、正しいはずだ。

言ってみれば、そんな仮定が今彼女を突き動かしている。

——その神らしきモノを、見つけるためだ。

「いわゆる、インテリジェントデザイン、というやつですかね」
呟くのは、ここにあった記憶から学んだ知識。

「ですが、これは……」その思考が脱線する前に、そう続けた。
自身の前、眼前の光景に目を向ける。

世界の歪みは、もはや計り知れないものになっていた。左右は斜めに、上下は反転している。
動きたい方向へと歩きだしても、意識が逸れればすぐに、浮き上がったり、落ちたりしてしまうのだ。
造物主の失踪した世界はどうやら、少女の無意識が求める形を好き勝手に取るらしかった。
結果として見えない地面に見えない階段やら、それでいて物理的な実体を持つ
長々とした道として、彼女の眼前に現れているようだった。

そして、あとは少女が気付いた通りだ。
その視線は、上へと向いていた。

こんな有様です。この世界は感情から生じた、という方がそれらしい気がしますね」

この世界という、意図のわからない作品の落とし所は、そんなところだろう。

太陽が、ここにはある。あの白い世界では、空そのものから光が降り注いでいるようだったけれど。
ここでの太陽は闇に紛れて、忘れられたように弱々しく光るだけだ。
それとも、Arcaea世界の終わりない日々が、光を奪い去ってしまったのだろうか。

「……それも先日、終わりを告げたようですけれど」
独りごちる、視線の先にあるものに関心を向けながら。
そこにはもう雲はない。代わりに見えるのは、きらめく数多の星空だ。

数時間か、数日前か。虚無の中、複数の渦らしきものが現実を引き裂き始めた。
まるで、旧世界を見せていた雲に代わって、奇異なものを見せようとでも言うように……。

消えた太陽に造りかけの世界が、大きなヒントだった。
当然、引き裂く渦や旧世界の雲もそうだ。個々にある全てが一つの事実を語っている。

白の世界に戻ってもそうだ。『それ』は度々現れた。
ここでも、どこであろうとも『それ』は現れ、周囲の存在を脅かすのだ。

それこそが『アノマリー』。具現化した異常なるモノ。

白い世界でも、それには度々遭遇してきた。少女の周りに硝片の窓があった頃、
廃墟では更に頻繁に見かけていたくらいだ。今ではラグランジュにとって、
日々の出来事といって差し支えないが、それでも、物事を奇怪に変質させ、
無益な混沌をもたらすモノの代表格が『アノマリー』だった。

この空間は、『アノマリー』が密集したような、いわば群生地だ。
しかも彼女の見る限り、その発生になにか意図がある様子もない。
ここにある全ては、あくまで空間に生じる発作的なモノに過ぎないらしい。

ゆえに、少女は疑う。この世界を作った神のコトを——。

「……」

黒い渦を前にして、歩みを止めれば、緩やかに記憶の硝片が、中に吸い込まれていく。
この場にはもう、いくつとも残らない硝片が、もはや透けては薄くなり、やがて割れていく。

世界の果ては、もう確実に近い。

その腕を、少女は掲げる……。

記憶も、植えられた考えや先入観もなく、
けれど、人格とこの世界の知識だけを持って目を覚ましたことで、
少女の心は揺れ続けていたのだ。

少女が紡いで、考えてきた全てに関わらず、彼女は、思っていた。
この混沌としたArcaeaの世界に何の意義もないなんて、
到底、そんなことが在り得るはずがないと。

だって、こんなにも意味に満ちて、意図に満ちている。

記憶も、建物も、硝片も。

そして、あの子たちだって。

本当に、なぜなのだろう?

「……カロン」
自らの作った衛星、その名を呼ぶ。
気づいた様子などなさそうだが、それでも少女は言葉を続けた。

「まだ、思考も難しいのでしょうか……?ちゃんと着いてきてはいますけど……
ねえ、カロン。わたしのことを主人と、信じていますか……?」
名を呼ぶ。すると、その目が瞬いたような気がした。

「ここから生まれたんです。きみも、私も。
だからなにか、わかったような…気がするんです」
眼前に渦巻くモノに、腕を差し入れた。少女は無造作に、気張った様子もない。

……カロンはただ、その様を見つめている。
今まさに主人の片腕が、文字通り糸のように分解されていく、その光景を。

「……どう、思いますか。これが手品の類にみえますかカロン?
それとも私達、同じなのでしょうか。きみに血は通っていません。
なら私には?はたして、通っているのでしょうか……」

ほどけていく、ほつれていく。少女のからだ。

心臓は、あった。今も、少女の中で脈打っているのが見えている。

思考も出来る。現実に、彼女は存在している。

では逆になぜ、私がここに?そもそも、なぜ人が迷い込むのか?

……きっと、この体にも血は流れているのかもしれない。
けれどそれを、一滴として見ることはかなわない。

記憶の中で見てきたものとは、この体は全く異なっていた。

銀色に輝く糸は、さっきまで私の手で、胴体だったもの。

——ようやく、確信できた。この肉塊(からだ)が、造り物だと。

「……っ?!」

横から、衝撃。カロンの体当たりに、思わず飛び退いた。
すると銀の糸が直ちに巻き戻り、彼女の体は元に戻っていた。

空っぽの手のひらを、じっと見る。
それから、カロンを、変わらず、何を言うこともないその衛星を見る。

……肩の力が抜けた気がした。
結局、少女こそが主人である、ということでいいらしい。

従者の視線に応えながら、呼びかける。

「……さぁ、行きましょうか?行けるところまで」

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9-5

解禁条件 9-4の解禁 & ラグランジュ(Lagrange)を使用して楽曲「Aegleseeker」をクリア

日本語

こんなことにいつなったのだろう。
いったいいつ、この暗闇がこうなった?

暗闇は抜け落ち、世界もまた零れ落ちた。
Arcaeaの世界の外には、何もないのだ。

唇を震わせても、言葉を運ぶ空気さえ存在しない。
震えるものはない。音も当然、生まれない。

ただぼんやりとした空間が、眼前に広がっている。

まるで、目を動かすほどに、空間が滲むような。
まるで、見えるべきものではないとでも言うような。


——すこしだけ、帰ることを考えていました。
来てすぐに、帰還についてもうちょっとだけ真面目に検討していたら、
ここから出て、帰ることも出来たかもしれません。

けれど、もう迷ってしまったんです。

…いえ、もう違いますね。

『迷う』とは、『場所』の概念が前提になる言葉です。
実に基本的な、上下左右という概念もそう。

ここにはもう、存在しないのです。むしろ、随分前から存在していません。
そんな大事なことを私は、今の今まですっかり意識していませんでした。
加えて、対象『私』の存在も消失。認識ができません。

はい、もう手は存在しません。足も、舌も存在しません。

現在、残存部位は眼球のみ、それと脳に残る影らしきもののみです。

現状報告。つ、まり……

く……感覚と、動作が奪われてしまうと、
ほぼすぐに分裂してしまうようです……精神が。
集中、しないと……それこそ、この世界の神ごときの二の舞を踏むわけにはいきません。

……

……んっ。

つまり、そういうことです。事実としてこの世界は、本当に考えなしに作られたモノで。
いわば.……設計図のないデザイン、曖昧な模造品。

大地があって、太陽があって、そして日没のあとには夜空へ星が登る…。
そして、その後には…?これ、明らかに考えてなかったですよね?

正直、言わせてもらいたいんですが…。

あなた、何をこの場所に求めていたんですか?なぜここに誰かを導いたんです?
私の過去をまるごと隠したのは、何故なんですか?

私は、誰かだったんです。それを奪った。奪われたんです、あなたに。

……。

…私は、他の人とおなじように死んだのでしょうか?

兄を愛した彼女のように?紅い紅い少女のように?

恐れるとでも思ったんですか?そんな死を、私が?

これが……フッ。

……こんな場所から、何を理解しろというんでしょう。さて…。

ここで、あなたが自分自身のために作ったこんなモノに閉じ込められて、
どうしろっていうんですか?自分のためですよね?これを作ったのは。
どうせ楽園のような……逃避行、そんなところですか。
そもそも、どうやって成立させたんですかねそれに何の意味がありますか?
意味とはなんですか?

……、また、分裂しそうに。

本当に、無意味な……。

……はあ、ふふ。今なら正直、あの子がこの世界を憎むのがわかります。心から。

この世界について理解した人は、この世界の滅亡を願うことでしょうとも。

——あなた、これで救ったつもりでいるんですか。私を?ありえない。
仮に、そうだとしても。今私は自分をしくじった。そうでしょう?なんのために。

こんなモノで、一体何をしろっていうんですか?

……っ、カロン。

か、カロンは…ここにいませんよね。私の、体は?今でも——いえ。

……すぐに。

すぐにここから消して下さい、私を。カロンはどうしてあの時私を止めて……?

振り返れば……振り返る?

目が、まだ私には目があるんですか?

み、みえない…。
私は、どこに…?
い、いや…嫌!
嫌です、本当に出られないんですか?戻れない?
ここから出られないんですか?
うごけない?
嫌ッ、ほんとうにうごけないの?

……っく……。まだ爪があったら、噛み切っていたかもしれません。

……言っておきますけどね。

私は硝子じゃ…人型の硝子じゃありません。

たとえ私が硝子から、作られたとしてもです。

ええ、感じます。わかるんです。こんなの、何一つ欲しかったわけじゃない……。

聞こえていますか、この言葉が。

言いますよ、何度でも。……こんなの、求めてたわけじゃないッ!!

……ただ、知りたかったんです。知りたかったんですよ、私は。

その結果が、これだと……?

こんなもの。こんなの、なにも……。

……

……ここまでの全てが無意味だなんて冗談、
……吐き気さえしそうです。おなかが、気持ち悪い……


……おなか、胃?あ、え、腕……?

……そうでした。もう、ないんでしたね。


……これが光だと、そう言えるはずないんです。

私の周囲のこれは、形容しようのないものです。

あの荒れた世界を離れてこの『虚無』に来た時は、闇を歓迎さえしましたよ。

だって、違いました。眩しさもなく、わかりやすさもない。

光と闇。どちらも沢山の世界でありふれているモノです。
光は暖かく心地よくて、闇は恐ろしくて、わからない。

でも私はだからこそ、知りたかったんです。闇の昏さを。

……


…すぐに気づきましたよ、どこかで感じていましたけど。
この場所が、弱い心の持ち主を匿う安全基地として作られたことは。

でも生憎、私は違います。
こんな逃避先を作るような、弱い心の持ち主じゃない。

仮に造ったとして……私ならもっと上等なものを創ります。

カロンがその成果……、いえ、そのものを示してくれています。

私が先陣を切って闇を進んで来たのは、よりよい真実を見いだすため。
……けれどいつもの想定通り、真実というのは苦くも無慈悲なものですね。

はあ、こんな状態になって長く経ちすぎました。もう、時間の感覚がありません。

そうしていつも、再び直視することになるんです。

光を。——彼方に輝く、真実の光を。



……きっと、ずっと私を導いてくれていたのでしょうね。

こんなの、誰にも言うことはないでしょうけど。

なんだか負けた気分です。散々主張してきたものを覆さざるを得ないようで。

けれど、今なら確かに感じます。あの光が今は私を手招いている。

あの旧い世界からの光が輝いて、私を呼んでいる。そうして——

——その光に、私は救いを見出すのです。



……

いいでしょう、取りましょう。その手を。




近づく。近づけば近づくほど、指先がわかる。吐く息が、見える。

どうやら、戻れているらしい。

ならば私はきっと、ここに真実を置いていくだろう。

忘れることは、ない。だが、持っていくこともない。

だって、明らかなのだ。

私なら、あんな神よりいいモノが作れる。

でも、まず初めに、腕を取り戻さなくては。

それに……自分が秀でているなんて軽薄な言葉よりも、
きっと先に実現して見せるべきなのでしょう。……叶えてみせますよ、実際に。

けれどほんとに、増長しているわけではないんです。
あんな場所から逃げ延びることが出来たとはいえ。

どちらかといえば、これは応報のようなモノです。

——私は、世界を変えてみせましょう。またはより良い世界を作りましょう。

あなたはこの世界を酷く壊れたまま放置している。
本っ当に、もっとどうにか、上手く出来たはずでしょうに……

わたしなら、あるいは。いえ……

もう、わかってるんです。答えなら。

——

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9-6

解禁条件 9-5の解禁 & ラグランジュ(Lagrange)を使用して楽曲「Far Away Light」をクリア

日本語

Arcaeaの地平は、およそ不可能に満ちている。多くを知るラグランジュといえど、
知るべきことを全て学んだわけでもないし、疑問も多い。…今となっては、後回しでいい。

結局、あの虚無の中でも再び自分を見つけることはできた。
全身を、欠けることなく。もちろん、カロンも一緒に。

どうやって『最果て』にたどり着いたのか、いまだに彼女にもわからない。
そもそも、それ以外のこともわからないままだ。けれど——

——つまり、この奇異にも壊れた世界という牢獄は、
薄弱な魂によって作られたもので。理性から外れた行動は存在しないのだ。

『最果て』から戻ろうとも。『虚無』から生還して、
『誰か』を見つけて、『旧世界の窓』の向こうに届いたとしても。

不可能に満ちたこの世界で、できないなんてことがあるのだろうか?

少女は、カロンを両手で抱えあげた。その眼には光がきらめいている。
「……では、きみが私のガイドさん、というわけですか?」
そのきらめきに目を合わせながら、尋ねてみる。

気ままなカロンは、無言を返すのみであった。

……それでも、少女の口端には笑みが浮かんでいた。

「……、見ないで下さいよ、そんな目で。ほらその『だからいっただろう』みたい目。
そもそも、きみ喋ったことさえないじゃないですか……」

そんなー言に、カロンは……ぴくぴくと耳を動かした。

「……ヘー」


少女は、前進する。
自由になった衛星は間もなく、いつも通り、少女の肩のあたりにふわふわと落ち着いた。

一人と一匹は、歩いていく。
今、Arcaeaへと、雲のようなその輝きの群れへと向かっていく。

——その時、なにかが少女の注意を惹きつけるまで。

他のモノとは異なり、それは奇異な輝きを湛えている。その表面は波打っていて、
内側では硝片自体の時間がねじ曲がっていて、先へと飛び飛びになっている。

今見えるのは、世界の裂け目のようなもの。
そこでの空は、いつかのように割れていて——、
けれどいつかのように、紅い少女が裂いたわけではなかった。

見えるのは、影に身をつつむ少女。

光を纏った少女もまた、そこに。

そうだ。あちら側では今、新たな『終焉』が訪れようとしている。

ラグランジュは食い入るように、その結末を見守っている。
眼前の光景に飛び込みそうなほどに。

全てを超えて、それは結末、墜落へと続くもの。

不協和へと向かうもの。

そうして、少女は笑う。
目の前の出来事は、明らかな悲劇だというのに。

光と闇の、舞うような せめぎ合い。

これが、Arcaea。

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