シャングリア内戦/前編用過去ログ①

Last-modified: 2023-12-24 (日) 14:40:29

ここにEP1~EP10の本編を貼っておきます

EP1「悲しむ前に」


治世が続いたシャングリアの世に一つのほころびが生じようとしている
ヤマタノミコトの命が消えるとともに、帝王の権威が消え去ろうとしている
シャングリアが揺れ始める


ヤマタノミコトが昏睡して23時間

ヤマタノミコトの床にツルギ、アマタ、彰がついている
ツルギ「まだ目が覚めないのか」
そばにいた医者は首を横に振った
医者「残念ながら脳出血がかなり進行しています。助かる確率は…」
医者は100に一つもないと答えた
それを聞いたアマタは下を向いた
アマタ「…もう少し、父上とお話ししたかったのに…あの後継宣言について」
しかしそれを聞いたツルギは気が逸った
彰は無言で立ち去った

彰が外に出ると信と渋川が待っていた

渋川「諸星。帝王様のご容態は」
彰は首を横に振る
信も暗い表情をしている
彰が自分の部屋に戻ろうとすると息子の泰樹が
泰樹「父さん、本当に帝王様は死ぬのですか」
彰「帝王様は死ぬ。この国は必ず揺れる」

同じ頃、渋川も同僚にこのことを伝えていた

渋川「帝王様が…死ぬぞ」
同僚「新しい帝王様はアマタ様だとてい様がおっしゃっていた気がするのですが…」
渋川「だがいずれ次期帝王のことによってこの国は割れる
同僚は驚愕した
渋川「その時を待てばよい…」

6月22日深夜 新しい帝王について議事堂で事が行われた

彰「帝王様の遺言通り、次期帝王はアマタ様とする。異議はないな?」
渋川「待て。帝王様はいくら容態が悪いとはいえまだ亡くなっていない。まだ決めるのは早いのではないか?」
軍事隊のほとんどの者は賛成の意見に
文官の者達は反対と意見が出た
結果口論となり、
1時間経つと激しい口論になり始めた

信「勝手にことを決めるな!」
文官「そちらが勝手に決めたことであろう!」
元々文官と軍事隊の仲は悪い

彰はそそくさに議事堂の部屋を出て、ヤマタノミコトの床に向かった
床にはアマタがずっとヤマタノミコトの側についている

彰「アマタ様。ずっといたのですか」
アマタ「ああ。せめて最期の時は…」
彰「しかし寝不足なのでは?」
しかしアマタはヤマタノミコトの床を離れようとはしなかった
それに感心したのか彰は立ち去った

そして夜が開けた

アマタは寝不足のあまりうたた寝してしまっていた
アマタ「しまった!」
アマタが床を見るとヤマタノミコトはいなかった
しかし周りを見ると縁側に座っているヤマタノミコトの姿が
アマタ「父上!」
アマタは驚きのあまり叫んでしまい誰かを呼ぼうとする

だが

アマタが再びヤマタノミコトの方を向くと彼は斃れていた
アマタ「ちち…うえ?」
その場に膝から崩れ落ちる
そこに彰とツルギが駆けつけた
2人が目にしたのはヤマタノミコトの倒れている姿を見て遺憾の意を示しているアマタの姿
2人は静かに目を閉じ、下を向いた

6月22日午前7時3分。ヤマタノミコト、崩御

国民は悲しみに暮れた

ユートピア議事堂では次の帝王について最終議論が行われていた

彰「前帝王様の遺言書通り、次期帝王はアマタ様と最終確認する」
渋川「まぁいいだろう。賛成する」
信「(珍しい…非常に珍しい…)」
文官の者達は驚きの表情を見せるも、異議はないと意見を出した
八重「では可決します。新帝王はアマタ様で最終決定します」
彰「決まったことだし、私はこの席を退出させてもらう」
彰は椅子を引き、立ち去っていく
八重は牛島の耳元で
「最近、諸星総司令官の様子おかしいと思いません?」
信「あ、まっそうだな…」

彰はアマタの元に向かった

アマタは少し曇っている空を見ていた
彰「アマタ様。あなたに伝える事が…」
アマタ「わかっておる。次期帝王は私だろう?」
彰「……」
アマタ「どうした」
彰は下から上を向き
彰「私は…あなたが帝王になったら軍事隊から身を引こうと思っておりまして…」
アマタ「!?」
彰「息子がつい先ほど…こんなことを言っておりまして…」

数時間前

悲しみに暮れている彰に泰樹がやってくる
泰樹「父さん。私は帝王様が亡くなったのは、脳出血だけではないと考察しました」
彰「?」
泰樹「もちろん帝王様のストレスによって脳出血が起きたという医者の見解は正しいと思いますが、落馬時の衝撃が致命的だと思います」
泰樹はヤマタノミコトが落馬時にきていた服の襟元が汚れていたことから脳出血で倒れたのではなく、一時気を失って倒れた打ちどころが悪く脳出血になったと説明した
彰「よく言った」

再び時は戻る

彰「私は今まで前帝王様のために尽くしてまいりました。前帝王様が亡くなった今私に存在意義はありません」
アマタ「は?」
彰「私あってのシャングリアではありません。シャングリアあっての軍事隊なのです。息子は齢11にしてあの洞察力。それに優秀な人材が軍事隊にはたくさんいます。私いなくても彼らがやってくれるでしょう。文官、軍事隊。それぞれが私欲に走らずアマタ様をお支えすればこの国は安泰でございましょう」
笑みを見せると立ち去ろうとする
するとアマタは彰に呼びかける
「私はお前達の議論で腹を括ったのに、自分だけ逃げるとは卑怯だ」
彰「…。」
アマタ「お前が父上を支えたように、これからは私を支えてくれ」
彰は迷っているようなそぶりを見せる
アマタは彰の手を握り
この国を、シャングリアを見捨てないでくれ
彰「アマタ様…」
言葉を聞いた彰は強く握り返し、決意を固めた瞳でアマタを見つめた

彰が戻ってきた

信「先輩。大丈夫っすか?」
彰「ああ。なんでもない」
彰「しっかりついてこいよ?これからのシャングリアに
信「???」
彰は少し笑いながら去っていく

6月23日 ついにシャングリアの新しい帝王が即位する


つづく


EP2「天と政と武と」


新たな権力者はアマタに譲られた
様々な有力者の思惑が錯綜する中、
アマタはそれらを治められるのか


シャングリア帝国の西部にあるジェネレン地方の某ホテル…

リゲル「おい2人とも。シャングリアの新しい帝王が決まったみたいだぞ?」
ベテルギウス「まじ?」
リゲル「名は、アマタノミコト
そこにある男がやってくる
ベテルギウス・リゲル「よぉサイレント
[[サイレント「よぉ」
彼らはスペーストリオ
冒険家で今はシャングリア帝国に居候していた
サイレント「…ヤマタノミコトの跡目か…さぞ重そうだな…」
サイレントはテレビを消してトイレに行った

6月23日 アマタノミコトとしての即位式が行われた
その終幕にアマタノミコトが前に出て意思表明をする
アマタノミコト「私は父上が守ってきたもの、成し遂げたものを守っていかねばならぬ。そして父を超えてみせる!皆のもの、前へ進むのだ!
すると
渋川「ではこれより先は帝王様に判断をしてもらう時はこの渋川を必ず通すようにしてお願いします」
アマタノミコト「は?」
渋川の言葉にイラついたのか
信「いいえ。軍事隊を通してから決めるように」
彰「(いつもの仲違い…)」
しかし彼らの言葉が全く通用なかったのか
アマタノミコト「渋川や軍事隊を特別扱いにはしない。父上はそうしていたようだが、私は特別扱いすると何かと災いが起こると思ってある。以上解散」
信と渋川は何か言いたそうだが帰って行った

その夜、軍事隊のミーティングルームにて

信は不満そうな顔をしている
彰「なんでそんなにイラついてるんだよ」
彰はお茶を差し出すも信は拒否した
信「はぁ…あの文官の渋川まじでイラつきます」
彰「どこかだよ」
信「鼻につくんですよ!
信はそこまで頭はよくない
彰は信に説得しようとしたものの効果は皆無だった
彰「あんまりやりすぎんなよ」

そして即位式の帰りにアマタノミコトはツルギと会った

アマタノミコト「おおツルギ」
ツルギ「兄う…いや、帝王様」
ツルギは身を引き締めた
アマタノミコト「固くする必要はない。私とお前は兄弟。これからも頼りにしているぞ」
アマタノミコトは優しくツルギの肩を叩き、去っていく
アマタノミコトがいなくなったのを確認したツルギは
自分が持っていた小刀を思い切り地面に投げつけた
ツルギ「クソが…」

ほぼ同時刻、文官のミーティングルーム…

文官1「渋川。お前はアマタノミコト様をどう思う」
渋川はコーヒーを飲み終えると
「はっきり言うと…ヤマタノミコト様には遠く及ばないな」
文官2「それはどう言う意味で?」
渋川「ぶっちゃけ言えば、アマタ様は統率力と諦めの悪さぐらいしかヤマタノミコト様から受け継いでない。ツルギ様は文武両道、勇猛果敢な所がいい。俺はツルギを推していたんだけどな
笑いながら言っていたが、あたかも本気で思っていることかもしれないと文官たちは息を呑んだ
渋川「はい。今日は解散解散」

そして翌日から訴訟がきたことにより会議が行われた

彰「それでは、この前来た住民からの訴訟について…」
アマタノミコト「確か住民同士の騒動だっけ?殴り合いがあったとか」
すると渋川が
渋川「ここは私らにお任せください」
信「あ?」
アマタノミコト「私が決める!」
強い口調に一同は静まり返った
アマタノミコト「お前たちは下がれ!」
信と渋川は強制退出された
彰「(自業自得)」
アマタノミコト「騒動は基本的に両成敗だが、どちらかに非があるのならそれらによって…」

アマタノミコト「疲れたー。まさかこの訴訟で3時間もかけてしまうとは」
彰「まだ4つ残っているゆえ…」
アマタノミコト「お前に伝えたいことが…」
彰「なんでございましょう」
アマタノミコトは深く息を吸うと
「私は、帝王としての役目が務まっていると思うか?」
彰「はい?」
アマタノミコト「お前は私のことをどう思ってる。正直に言え
彰はしばらく悩むが
彰「言えません」
アマタノミコト「何?お前まで…」
アマタノミコト「私はそんなに頼りないように見えるか」
彰「いや…」
アマタノミコト「なぜだ…私は精一杯やってるつもりなのに」
立ち去ろうとする
彰「ヤマタノミコト様は初めから上手くいったとは限らないと私は思っています」
アマタノミコトは振り向く
彰「むしろあの時の方が余計に大変だったと思っております。革命の混乱の中でなったのですから、まとめるのが大変だったでしょう…。今あるシャングリアはあの方が皆で支え合ってできて行った。私がここにいるのは、あなたをお支えするためにいるのです。決してあなたが頼りないわけではございません
アマタノミコト「お前、そんないいことを言う奴だったのか」
彰はいい意味でため息をついて
「皆で新しいシャングリアを作ってまいりましょう」

am:0:23…彰の部屋
彰は1人で軍事隊の今後の方針について考えていた
そこに八重がやってくる
八重「諸星総司令官。筆記試験の結果が届きましたよ」
彰「おう、そこにおいておけ」
軍事隊では実技試験と筆記試験が定期的にある
彰は筆記試験の結果を見ている。すると
彰「ん?鳳城春輝…か」
八重は何か言いたそうに近づいているその時
信「先輩ー。俺の愚痴聞いてくだ…」
彰「?」
信は少し戸惑って
信「あ、なんでもないっす」
出て行った
八重「ここだけの話…」

翌朝

澪は怒っていた
彰「…?」
澪「信君から聞いたよ。八重さんと何してたの」
彰「は?ただ話してただけなんだけどな(信のやつ…)」
彰「別に浮気なんかしねーよ」
澪「ならいいのよ」
彰は真っ先に信のところへ向かった
ある者には彰の怒鳴り声が聞こえたとか

渋川「うるせぇな…あいつは。これから戦が近づこうとしてるのに
数分後、渋川はツルギに…

内戦が始まるまで96時間を切っている


つづく


EP3「動き出した宿命」


アマタノミコトの元に生まれたシャングリアの新体制
しかしその裏で陰謀が進んでいる
彼らはまだ気づいていない
戦争の足音が近くまできている


6月24日夕方。軍事隊一般隊員は訓練を終えたところだった

隊員1「なぁ最近変な噂があるんだよね」
隊員2「知ってる。なんかツルギ様が…」
そこに一般隊隊長の道玄原がやってくる
菜穂「ちょっと君たち、その話について教えてくれない?」
隊員たち「うっ」
なすがままに連れ去られた
春輝「おやおや…」
隊員2「おい春輝!お前も関係あるだろ!」
春輝もついて行った

その噂はあっという間に彰や信たちにも伝わった

彰「どう言う事だ?」
菜穂「どうやら、ツルギ様と文官の者たちが何か企んでいると言う噂が広がっています」
信「これは言わなければ…」
ちなみに調べさせられた隊員たちは地下牢にいる
隊員たちが何か話し合ってる中、春輝は1人で角にいる
菜穂が地下牢にきた
隊員たち「おい春輝」
菜穂「ねぇ春輝。誰がその噂を出したか教えてくれる?」
春輝は黙秘している
菜穂「知らないの?何か言ってよ」
何も言わない
彰「言わないなら、嘘かもしれないぞ?この件は我々が処理する。この者たちは解放していい」
いつのまにか彰がいた
地下牢に入っていた隊員たちは解放された

6月25日 彰はアマタノミコトにこのことを伝えた

アマタノミコト「それは確かな情報か」
彰「あくまで憶測に過ぎないかと」
アマタノミコト「聞いてくる」
アマタノミコトはツルギの元へ急いだ
彰「(もし本当だとしたら戦が起こってもおかしくはない…)」

アマタノミコトはツルギを見かける
アマタノミコト「ツルギ!」
ツルギ「あ、兄上!?」
目を丸くしている
アマタノミコト「…お前、まさかじゃないだろうな?」
ツルギ「(まさかバレた…)」
アマタノミコトは焦るような声で
「私を…信用しているよな?企んだりしてないだろうな?」
ツルギ「…あなたに、私の気持ちなどわかるはずがない!
突如怒鳴った

それは、数十年前のこと

私は小さい頃から器用で、戦術をできて、頭も良かった
親戚からは天才とも言われ、他の者たちからも讃えられ、褒められた
父上を除いて
父上は決して私を褒めなかった。それがなぜなのかは知らなかったけど
そして父が死に、新帝王が兄上になった時…
私は兄上のことが嫌いというわけではない。しかし劣等感を抱いていた
父上は兄上だけを優遇してきた

アマタノミコト「…なぁ、私たちは兄弟。共に助け合うものだろ?」
ツルギ「兄上、私が恨んでいるのは…」
アマタノミコト「ならば我々でやっていこうではないか、軍事隊や文官を凌ぐほどに」
「我々なら、必ずうまく行く
するとツルギは感激したのか
「そうだな。兄上は政務がある上、早くお戻りください」
アマタノミコトは去って行った
いなくなったのを見届けたらツルギは小声で
だまされるものか…

その後ツルギは渋川のもとに行った

ツルギ「渋川。武器はどのくらいだ」
渋川「武器は軍事隊が支給してくれる。すでに500万人のうち220万人を調略済みだ。そしてその中には、鳳城春輝も…」
ツルギ「そんなにか」
渋川「まぁ手分けしてやりましたからな」
余裕そうに話している
ツルギ「決行日はいつだ」
渋川「6月27日。私は出張任務でジェネレン地方に行くとアマタノミコトに伝えておく。そこにツルギ様も同行していただく。さらに文官の仲間と調略済みの者たちが翌日に内部クーデターを起こしてもらう。ユートピア議事堂を占領するのがベストだ」
ツルギ「完璧すぎる…」

その頃、彰は慌てていた

彰は思い切り信の部屋のドアを開けると
彰「牛島!いるか!」
信「先輩…こんな夜中にうるさいですよ…」
※6月26日am:2:14
彰「内戦は起こってはいけない」
信「起きませんよ。ただの噂でしょ?」
彰「あの渋川のことだ。ツルギ様のことを唆しているに違いない。もし内戦(いくさ)が起こってみろ。ヤマタノミコト様が、先の者たちが作り上げたユートピアシティが火の海に包まれようとしてるんだぞ。なぜそんなに心配していないんだ?」
信「…。」
彰を無理やり部屋から出した
彰「朝になったらやるか…」

部屋を出て歩き出そうとした瞬間、猛烈な眩暈が彰を襲った
彰「うっ、ぐっ…」
いまだに覚えているあの記憶
30年前のあの悪夢
あの日、街はたちまち火の海に包まれ…人々は虐殺され…
???「思えば、お前はなぜここにいる」
彰「あ?この国を守るために決まってるだろ?」
???「陰謀が進んでるというのに?」
彰「何が言いたい」
???「このまま戦が起きればお前は戦を防げなかったとして反感を買うだろう。本当はアマタノミコトなんて国を治める資格などないと思っているんだろ?自分がやれば争い事など起こらないと思っているんだろ?動くなら今だぞ?お前には…国を治める資格が…
彰「うるさい!うるさいうるさい!」
俺は何のためにここにいる?戦を起こさないため?シャングリアのために生きる?結局できていないじゃないか
このまま放置していればまた戦が起こる。何も変わってない
何も変わらない
何も変えられない
彰「…俺には、何が足りない?
???「お前は何も変えることができないまま、崩れ落ちていく…」
彰「黙れ!
気づけば俺は澪を突き飛ばしていた
澪「あき…ら?私…」
そのまま走って行ってしまった
彰「はぁー…」

ユートピア議事堂の上に誰かが立っている

神永 羅紗?「いい景色だな…まぁこの景色ももうすぐ跡形もなく…」
そう言うとどこかに消え去った

夜が明けた

信「え?彰先輩が?」
八重「そうなんですよ。寝込んでしまって…」
場所は変わって
渋川「いい機会だな」
部下の文官「この隙に出ちゃいます?」
渋川「いや、予定通り明日でいい」

八重と信は寝込んでいる彰を見舞いに来た

八重「大丈夫ですかー?」
彰は悪夢を見ているのか唸り声を出している
信「いったいどんなものなのか…」
そのうちわかる
信「誰だ!」
しかし周りには八重と信と彰以外誰にもいなかった

そして6月27日…

アマタノミコト「あっ、雨か…」
まるで何か近づいているのかを示すように雨が降り出した


つづく


EP4「蝉時雨が降る時」

6月27日。朝8時 天候は雨

ツルギ「兄上。これから私たちはジェネレン地方地方へ文官の者たちと共に出張へ行ってまいります」
アマタノミコト「おう、しっかりやって来い」
アマタノミコトはツルギの肩を強く叩いた
ツルギは長い長い廊下を歩く
ツルギ「(さらば兄上…あなたとはもう二度と…)」
ツルギは憎しみ、悲しみ、悔いなどさまざまな感情が錯綜してる中、廊下を歩き続けた
雨は依然として降り続けている


同じ帝王の子として生まれ、別々の道を歩んできた2人
憎しみが、シャングリアを変えてしまう
運命は、戦で交錯しようとしている


昨日寝込んでいた彰は復活した

彰「雨かよ…」
信「そういえば今日、ツルギ様が出張に行くそうで…」
彰は一瞬戸惑ったが
彰「そうか」
そこに澪がやってくる
彰は昨日のことについて深々と謝った
澪「…。あの時の彰は…」
彰「あっいいや。あの時の俺は…夢の中というか…決してお前のことが嫌いになったわけじゃないからな!」

午前8時25分。ツルギたちは少し雨が降っているもののジェネレン地方へと出発した  

春輝「いっちまったなぁ」
仲間1「おい、お前明日動くんだぞ?覚えてんのか?」
春輝「もちろん。ツルギ様たちはジェネレン地方に行くと見せかけてユートピアシティ北西部で止まり、明日の午前9時にユートピア議事堂に砲撃をし、その時俺たちはユートピア議事堂を占領するんだろ?
春輝はペラペラと説明した
仲間たちはびっくりしたのかささっとどこかへ行ってしまった
春輝「うまく行くかどうかだな…俺は…」
香澄「鳳城くん?」
春輝「香澄か…」
彼女は俺の幼馴染
昔から一緒にいたけど、あいつは天然すぎてあんまり…
香澄「なんか最近変な陰謀が起きてるみたいだけど…鳳城くんはもちろんこっち側だよね?」
春輝「!!」
俺は焦った。香澄は昔から鋭かったが…
春輝「当たり前だろ?俺が…お前を裏切るような真似するか?」
汗が流れ出た
香澄は春輝をじっと見つめると
香澄「だよねー」
香澄はどこかへ行った
春輝「(ごめんな…お前らのこと裏切って…)」

場面は変わって彰の部屋

彰は窓を見ている
彰「(嫌な雲行きだな…)」
彰は再び政務に戻る
しかし脳内にもまだよぎる、謎の人物の記憶
頭痛が起きるほどだった
彰はめまいを起こし、ついには意識が飛んで倒れてしまった
澪「彰ー?いる…彰!?」
駆け寄り、彰の体を揺らす
彰「あ…?澪か…」
澪「心配させないでよね!」
しかしあの謎の人物…なぜここまで…

午前8時36分。雨の中ユートピアタワーの最高地点*1にて神永が立っている

羅紗「よーく見える…あの軍勢が」
ツルギたちの軍勢はゆっくりと進軍している
羅紗「いつ攻撃が入るかね…いずれにしろ、面白いことになることは間違いない
苦笑いすると一瞬で消え去った

信「彰先輩、本当に大丈夫なんすか?」
彰「大丈夫だって、ちょっと意識が飛んだだけだ」
八重「それ死亡フラグなのでは?」
死亡フラグにピンときたが俺は簡単に死ぬわけにはいかない、ヤマタノミコト様から託されたこのシャングリアを…
そのためにはなんだって…
澪「いずれにしても気をつけてよ!」
まぁ今はそのためにはのことはいいか…

その日は忙しかった。実技試験の会議や筆記試験の実施日の会議など日が暮れる頃にはヘトヘトだった
ユートピアシティ北西部、午後6時35分

ツルギたちはテントを設置していた

ツルギ「夕飯はどのくらいでできそうだ?」
渋川「7時にはできる」
人目のつかないところにテントを設置している。その理由は…
渋川「大砲の調子はどうだ?」
シャングリア帝国武器管理人「今のところ、全く異常なし。最大射程3km。明日の午前9時に放つんだろ?」
管理人は降っている雨を見上げると
「ただ、火を使って放つから雨にあたったらダメになるんだよな。明日の天気がどうなるかだな」
渋川も空を見上げた
ツルギは竹の前で剣を持って佇んでいる
次の瞬間
ツルギ「ええいっ!」
一瞬で刀を振り、竹を斬り倒した
渋川「お見事でございますな。覚悟は決まったということで?
拍手をしながら渋川がやってきた
両者雨に濡れながら
ツルギ「無論」
渋川は去っていくツルギを見てにやけた

午後11時ごろ、ユートピア議事堂にて反乱軍の者たちが集まっていた

春輝は手紙を書いている
仲間「何書いてんだ?」
春輝「っ、手紙だよ」
仲間たちが手紙を見ると香澄宛名と菜穂宛の手紙が2枚あった
仲間「えっまさか…」
春輝「ばっ、ちげーよ!俺とあいつらは同期だかんな!」
春輝「(もう…明日からは敵だから…)」
春輝は俯いた

ジェネレン地方の某ホテル…

リゲル「おい、ルウク地方梅雨明けしたってよ」
ジェネレン地方は常に雨は降らない
サイレント「おい知ってるか?この国のある言い伝えを
ベテルギウス「?」
サイレント「それは…天候が悪くなった後には不吉なことが起きる
2人は驚愕した
サイレント「あくまで憶測だけどな…」
ベテルギウスとリゲルは心配そうな思いで就寝した
サイレント「戦乱の世も、そう遠くないのかもな…」

そして6月28日 運命の日

彰「おまえら、仕事の時間だぞ」
信「わかってますよ先輩」
八重と澪も信の後ろから歩く

雨は止み、蝉が鳴いている

春輝「蝉時雨だな…」
仲間「準備はいいか?」

渋川たちも…

ツルギ「砲弾準備」
渋川「砲台を議事堂方面へ向けろ!」
午前9時1分、一つの砲台がユートピア議事堂へ向けられる
そしてその一発の弾がシャングリアを大きく揺らすことになる
長い長い戦が始まろうとしている
渋川「3.2.1…発射!」


つづく


EP5「ユートピア事変」


先人たちが作り上げたユートピアシティが火の海に包まれようとしている
軍事隊の転覆、そしてアマタノミコトの失脚を狙う者たち
戦は一度入ったら戻ることのできない、一方通行の道


渋川「3.2.1…発射」
大砲から砲弾が発射される
その衝撃で大砲の近くにいたものは吹き飛ばされた
ツルギ「っぷう…これで」
発射された砲弾はユートピアシティの空を凄まじい速度で進んでいき
市民「なんか、今、すごい音しなかった?すごい速度でさ」
そして、ユートピア議事堂に…

ドカンッ

午前9時2分、その弾はユートピア議事堂3階付近に着弾した
その瞬間議事堂全体が激しく揺れ、壁や棚などが崩壊した
彰「なんだ!?地震か!?」
また爆発音が彰の耳に響く
追加で砲弾が入ったのだ
彰は呆然と立ち尽くしている
信「先輩危ない!」
彰の目の前に鉄骨が落ちてこようとするが、信が彰を抱えて回避する
彰は呆然としている。きっとこの現実をまだ受け入れていないのだろう
彰の目の前には鉄骨や壁の崩落によって下敷きされた隊員の遺体が
彰は近づこうとするが
信「先輩!なりませぬ!」
信は必死で彰の腕を掴み、近づかせないようにしている

一方、アマタノミコトも混乱に陥っていた

走りながら「一体何が起こっている!」
廊下はほぼ崩壊しており、通行不能状態になっている
アマタノミコト「(誰がこんなことを…)」
部下「帝王様!砲弾の着弾位置から発射位置を推定しました!」
しかしそれを聞いたアマタノミコトは絶句した
アマタノミコト「すまない、もう一回言ってくれ」
部下「だから…砲弾を撃った位置はここから北西3kmで、スパイの情報によればそこにはにはツルギ様や渋川の軍勢があったとの情報が入っています
アマタノミコトは思考が回らない

前から陰謀が進んでいることは知っていたがまさかツルギが関与しているとは…
否、いつからツルギが関与していないと錯覚していた⁉︎

部下「とりあえずは今は逃げましょう!危険です!」
アマタノミコトは急いで避難した

息子の泰樹も彰の元に駆けつけた
泰樹「父さん!大丈夫ですか?母さんや八重さんは無事です!」
しかし泰樹が見たのは絶望に打ち付けられている父の姿
泰樹「父さん、俺たちに指示を!父さん!」
反応しない
それに激昂したのか泰樹は父の頬を叩いた
彰「…泰樹?」
泰樹「父さん!それでも軍事総司令官ですか⁉︎」
泰樹「皆が苦しんでいるというのに父さんが何もしない限り、事態は動きません!父さんが絶望するのもわかりますが、今は俺たちに指示を出してください!出ないと、また被害が広がる!
彰「…!」
彰は何かを思い出すと立ち上がった
彰「今すぐ全員避難させるぞ!隊員たちの安全が最優先事項だ!」
一同「承知!」
全員が移動しようとしたその時ー

一階の中央広間から銃撃音が彼らの耳に響いた
彰「なんだ?」
彼らが駆けつけると軍事隊の隊員同士が撃ち合っていた
信「何をしている!」
春輝「始めから言わせてもらおう…今日からお前らは俺たちの敵だ!」
春輝の周りにいたものたちは銃を乱射する
彰「くそっ…図られたか!逃げるぞ!」
彰たちは逃走する
反乱軍「逃すか!」
春輝「いや、俺たちの目的はここを占領することだ。それが最優先事項だ」
春輝たちは中央広間から人がいなくなったのを確認すると
春輝「あとは2階と3階か…」

午前9時11分、反乱軍は2階に侵入した

春輝「殺されたくなければ、この議事堂から出ていけ!」
しかし春輝の目の前にいたのは菜穂と香澄の姿
菜穂「春輝?」
香澄「鳳城くん?なんで?」
春輝は反乱軍の集団の中に去っていった
菜穂「とりあえず逃げましょう!」
2階もあっけなく占領された

午前9時16分、議事堂の非常階段を使って彰たちが走っている

彰「帝王様は今どこにいる?」
信「裏側の非常口から逃亡しているそうです」
手勢は15人程度
目指すはここから南西1.5kmにあるユートピアシティセントラル公園
彰「そこで皆と合流だ!」

少し時は遡り、午前9時13分。ユートピアシティウェストステーション前、ツルギたちの軍勢本部

渋川「ここからでもよく見えるなぁ…煙が見える…」
渋川は駅の頂上から眺めている
ツルギ「そうだ。一つ指示を与えなければ
ツルギは本部の前にいる隊員たちに 
ツルギ「諸星彰を殺せ

午前9時25分、ユートピア議事堂がついに反乱軍に占領された

果たして民は何を思う
彰たちはセントラル公園まで800mの位置にいる
彰「やられたか…」
信「また取り返せばいいだけの話じゃないですか!」
次の瞬間
「いたぞ!諸星だ!殺せ!」
無数の反乱軍が押し寄せてきた
信「渋川のことだから先輩を狙うことはわかる…下がっててください!」
ライフルを使って信たちは応戦する
しかし反乱軍は彰たちを取り囲んだ
泰樹「まずいな…」
彰たちを取り囲みながらゆっくりと近づいてくる
銃を構えており、今でも放ちそうな様子だ
信「ヤバイ!このままだと俺たち全滅っす!」
全員の背中が凍りつく
泰樹の脳内に浮かぶ、死の可能性

その様子をユートピアタワーの頂上から誰かが見ている
「…仕方ない、ちょっといってやるか…」

反乱軍と彰たちの距離は4mもない

彰「1人でも生き残れるように…」
信「少しでも時間を稼ぐぞ」
反乱軍の者たちが銃を構えると同時に彰たちも構える
反乱軍「放て!」

ーその瞬間ー

シャドウミスト

突如彼らの周囲を黒い煙が襲う
彰「なんだこれは!」
黒い煙が漂う中、その中に1人降り立つものが
泰樹「ケホッ…誰だ…?」
彼は黒い服装を着ており、白髪。それ以外はまだ見えない
信「…?」
つくづく、醜い

その様子をツルギたちも見ていた

ツルギ「チッ、折角諸星を殺す機会だったのだがな…」
渋川「まぁいいだろう。奴の実力でも見ておけ」

彰「…お前は!」
その男は首につけていた白いスヌードを取る
どこかで見覚えがある。あの時の心の中に出てきた…
「神永羅紗だ」
その男はにやけた


つづく


EP6「束手無策」

あの時心の中に出てきた、見覚えのある…
彰「…神永?」
羅紗「それが俺の名前だ」
彰は彼は何をしにきたのか、なんのために来たのかがわからない
しかしその思考は数分で消え去ることになる


堕天と呼ばれる男、神永羅紗
謎に包まれた彼の思惑は
彰たちは仲間たちと合流できるのか
内戦はさらに混迷しようとしている


反乱軍1「なんなんだこいつは!」
反乱軍2「まぁいい。諸星を助けたということは敵判定だ!射殺するぞ!」
ライフルを放つ。しかし
羅紗は手を伸ばし、弾丸を弾き出す
反乱軍「構わず放て!」
放たれた弾丸は全て羅紗の体を貫くことはなかった
羅紗「終わり?」
反乱軍の者たちは震えてしまった
羅紗は右腕を大きく振り
羅紗「
衝撃波を放つと反乱軍の者たちは吹っ飛ばされた
反乱軍「…何が起きた?」
彰「神永…お前は何のためにここにきた」
彰の目は鋭くなっている
羅紗「俺には俺の計画がある。ただそれだけだ」
信「教えろ。その計画は内戦にどう関係しているのか?」
羅紗は黙示している
それに激昂したのか信は発砲した
羅紗「まぁそのうちわかるさ…」
ズオンッ

すると黒い煙に包まれながら消えた
信は舌打ちした
泰樹「まぁイラつくのも仕方ないですが、最優先事項は仲間たちと合流することです!」
信「そうだな…」

午前9時38分。彰たちはセントラル公園に到着した

彰「周りを警戒しろ。奇襲攻撃されないようにな。ここを臨時拠点とする」
テントを設置し、周りに兵を置き、アマタノミコトと澪たちを待つ
泰樹「…遅いな」
そこにアマタノミコトとその手勢が到着する
アマタノミコト「遅くなった!」
しかし所々に傷がある
彰「帝王様!ご無事で!」
アマタノミコト「少し襲われてな…でも命に別状はない。心配するな」
アマタノミコトを急いでテントに入れ、治療させた

その頃、ツルギたちの軍本部…

ツルギ「できれば諸星や澪たちは逃走の間に殺しておきたかったが…まぁ仕方ないか」
渋川「現在ユートピア議事堂には反乱軍およそ20万人で埋まっています」
ツルギは首を傾げる
ツルギ「それがどうした」
渋川「おそらく…諸星たちは数日後には議事堂を奪還しようとしているでしょう」
ツルギ「っ!!ならば我々も」
渋川「ダメだな。奴らは全力で取り返そうとする。本気でやれば我々が勝つことなんて100にひとつもないだろう。せいぜい奇襲攻撃でトントンだからなぁ」
ツルギは了承した

午前10時1分。澪や八重たちと合流した彰たちはユートピアセントラルタワーに移動、拠点とした
セントラルタワー14階…
彰「負傷者はどのくらいだ?」
八重「逃げてきた者たち40万人のうち、2万人が重症、15万人が軽症です」
泰樹「現在2階と3階で治療しています」
彰はしばらく黙り込むと
「住民の避難状況はどうなっている?」
澪「地下壕、臨時避難所に避難済みですが、どこも狙われやすいところで…」
彰「厳重警戒だな。食べ物も支給しろ」

それからというものの、渋川たちの軍勢から襲われることはなかった

6月28日午後10時32分。ユートピアセントラルタワー17階

彰は明かりが消えたユートピアシティの街並みを見下ろしている
彰はため息をついた
無事住民たちは逃げ切れてるだろうか…これも全て…
八重「何してるんですか?」
彰「…お前こそ何をしにきた。」
すると
彰「…八重、お前だけに伝えておく。ここからは修羅の道だ。俺はこの内戦を止めるためなら何にだってなってやる。お前もついてこい」
八重「もちろんですよ」
彰は下を向いて笑った

ほぼ同刻、ユートピア議事堂…

春輝は中央広間の椅子に1人で座っている
仲間「何してんだ?」
春輝「2人に申し訳ないと思ってな」
仲間「あの同期か」
春輝「ひとまずもう遅いから寝ろ」
そういうと仲間たちは出て行った
出て行ったのを確認した春輝は罪悪感に襲われたのだった

そして激動の1日が終わった

6月29日朝。ツルギたちの陣
ツルギ「まだ動かないのか?」
渋川「まだだ。戦は、勝ってからするもの。今は様子を見ろ」
ツルギたちは動かない

ユートピア議事堂では反乱軍の兵が集っている
春輝「どっちが先に動くかだ。今は様子を見なければならない。電波が途絶えた中、渋川か、諸星かどちらが先に動くかで今後の俺たちの運命が決まるかもしれない」
二つの軍は彰たちが動くのを待っている。それに応えるかのように…
彰「…決めた」
1人部屋の中でそう呟いた
そして朝集会の中で
彰「ユートピア議事堂(あそこ)は俺たちにとって重要な拠点であり、軍事倉庫にはまだ武器がたくさん残っている。かくして…」
信「もしかして…」
彰「まずは、ユートピア議事堂を奪還することからだ」
すると集会の場は叫び声に包まれた
信「(やられてばっかで黙ってると思うなよ…)」
彰「だが、無茶はするな。本当の敵は皆がわかってるはず。我々の手で、議事堂を取り戻すぞ!」
彼らの猛反撃が始まる


つづく


EP7「ユートピア議事堂奪還作戦」


窮地を奪回するために彰たちが目をつけたのは軍事拠点のユートピア議事堂
だが、全ては渋川の掌で操られている


6月30日。ユートピアセントラルタワー20階にて会議が開かれた
内容は彰が提案した奪還作戦について

彰「と、いうことで奪還するための策を考えるために会議を開いた」
セントラルタワーから議事堂までおよそ南東に2km
攻め込みやすいところはなく、死角は二箇所しかなくそれは把握されてると思われる
信「どっから攻め込むんだ?議事堂にいる軍勢はおよそ五万人。こちらは20万人。攻める場所の影響で被害も変わるからな」
彰は黙り込んだ
それに続くように全員も策を考えているのか黙り込んでいたその時
泰樹「なんか焦げ臭くね?」
信「おい外見ろよ!街燃えてんぞ!」
彰たちが窓を見ると燃え盛る街の光景が目に焼きついた
澪「な…⁉︎とりあえず避難指示を出しましょう!」
彰「いや、違うな。奴らは街を焼き払ってるだけでこの目から見える限り虐殺はしていないようだ」

その頃、ユートピアシティ市街部…

ツルギ「民は殺すな!街を壊せ!」
戦車や軍隊がどんどん街を壊していく
彰「なぜ民を狙っていないのだ?何が目的かわからん…?」
街を破壊しながら渋川は防空壕に隠れている住民を見つけた
住民は震え上がっている
渋川は何か住民に言うと去っていった

信「もう耐えられません!行きます!」
信はわずかな手勢を連れてタワーの外を出た
彰「おいバカ!」
その声は届かなかった
ツルギたちの目の前には信の手勢が
ツルギ「お前には興味ないんだけどな」
信は黙って睨んでいる
信「放て!」
一斉に銃を放つ
信「前へ進め!」
渋川「本当に君たちにはうんざりしたよ。そんな無謀に突っ込んでどうなるか。教えてやるよ、戦というものを
信たちの手勢の後ろから渋川たちの軍が奇襲攻撃する
信「チッ、しくった!両端は建物で逃げきれん!」
渋川「悪いが、ここで死んでもらう」
攻撃が激しくなると信の手勢たちは近くにあったシャングリアメトロセントラル線セントラルタワー駅1番口から逃げ込んだ
しかし入る前に斃れていく兵士もしばしば

セントラルタワー駅地下2階…
逃げきれた者たちはわずか三十人
信「くっ…深く攻めすぎたか。」
しかし信が見上げた先に入ったのは地下鉄の路線図
信「…これだ!」
何かを閃いた顔をした
信の手勢は駅の地下を通り、4番出口を出た
数分後
伝令「諸星総司令官!牛島副司令官が帰還した模様です!」
彰が駆けつけると少し傷を負っている信と重傷を負っている手勢の姿が目に入った
その瞬間、彰は一瞬にして頭に血が昇った
彰は信の頬を殴る
彰「馬鹿野郎!お前は気が早すぎる!今は辛抱するんだ。ここで無駄な兵力を使うんじゃない!」
彰「…まずはそれをせいぜい噛み締めろ」
信は無言で立ち去った。信のツルギたちへの怨念が溢れ出しそうなのを彰は感じている
彰「…さて、兵もさぞかし不満が溜まっているだろうな…」

7月1日。再び会議が行われた

八重「諸星さん。牛島から作戦があるそうです」
信は地下鉄の地図を出した
彰「…?」
信「この前、地上からは攻めにくいと言いましたよね?ならば地下から攻めれば良いと
一同はざわ目ついた
彰「…地下か」
信「現在地下鉄は機能を停止しています。線路を行軍すれば良いと思います」
彰「なるほど、では俺が地上から議事堂にいる軍を誘き寄せ、その間にお前が地下鉄の線路を辿って議事堂の最寄駅から攻撃するでいいな?」
信「もちろん」
隊員たちは納得し、これで策ができた。あとは兵の士気や相手がどのくらい強いかだ…
彰「決行日は、7月4日だ!」

同じ頃、ユートピア議事堂…

春輝「…くるぞ」
仲間「何が?」
春輝は仲間たちに昨日の牛島の事件を語った
仲間「それでもしかしたら諸星たちが攻撃してくるかもしれないと」
春輝「もしなにかあったらここを…」
春輝はここを捨てると言おうとした。しかし言えなかった。なぜなら…

7月4日。午前8時25分。彰たち10万人の軍勢がユートピアセントラルタワーを出た
彰「では俺たちは正面から議事堂を攻撃し、信たちは地下から攻撃してくれ、ここで別れる。ご武運を」
信「わかってる。後でな
渋川「思っていたより、早かったな」
渋川は望遠鏡で彰たちを見ていた
楽しそうに見ているところにツルギが、やってきた
ツルギ「行かないのか?」
渋川「当たり前だろ?奴らは議事堂を必ず奪うって言ったじゃないか」
渋川「さて、裏切り者の覚悟でもよーく見ておくか…」

午前8時31分。メトロセントラルタワー駅地下2階…
信「このエスカレーターを下っていけばすぐに地下鉄のホームに着く。そこから線路を歩いて、議事堂前駅で地上に出る」
信の軍勢にある中にある人物が銃を持っていながら体が震えている
信「泰樹、震えてるのか?」
泰樹「そっ、そんなわけありませんよ!ただの武者ぶるいです!」
口がガタガタしていることから信は一瞬で武者ぶるいではないと判断した
信は自分の過去を思い出すと
信「いいか?落ち着いて行動しろ。そして俺から離れるなよ?」
泰樹「お…押忍!」

午前8時34分。地下3階にある地下鉄のホームをセントラルステーション駅方面に向かって信たち率いる2万人の軍は進軍した

トンネルは真っ暗で懐中電灯を頼りに進む
八重「暗っ…」
菜穂「電線が途切れた影響ですかね。トンネルの出口が見えません」
議事堂から一番近い議事堂前駅のホームまでは700メートル

一方その頃、地上から進軍している彰たち…

彰「最低でも、8時50分には議事堂の裏側から攻撃開始してほしいな…」
澪「ここから議事堂までおよそ300メートル。私たちが誘き寄せるけど、どのくらいくるかだよね」
作戦を話しながら行軍していく
香澄「というか帝王様はタワー待機で大丈夫なんですか?」
彰「ああ。タワーには帝王様の護衛が、1.2.3階にそれぞれいる。渋川も帝王様の待機には気づいていないだろう」
香澄「だといいんですけどね…」

伝令「見えました!諸星彰の軍勢が200メートル先に発見!」
春輝「数はどのくらいかわかるか?」
伝令「…おおよそ10万人。」
春輝「よし、戦の準備だ!銃を構えて議事堂の窓を開け、そこから攻撃しろ!」

対する彰たちは

彰「…できるだけこちらに引きつけろ」
澪・香澄「了解!」
春輝「放て!」

攻防戦が始まった。先手を取ったのは議事堂に立てこもったいる反乱軍
彰たちの陣に銃弾の雨が降り注ぐ
彰「くっ…盾で防げ!」
春輝「容赦無く攻めよ!」
彰たちは防戦一方となった
香澄「皆さん!盾を前に構えながら前進してください!」
守りながら少しずつ、議事堂に近づいていく
春輝「ちっ…あの盾は俺たちの銃じゃ貫通できないやつだな…」
春輝たちはまだ気づいていない

8時46分。シャングリアメトロセントラル線議事堂前駅地下3階ホーム…

信「ここから議事堂に最も近い4番出口から出て、奇襲を加える」
信たち率いる奇襲隊5000人は階段を上がる
信「さて、地上に出ればもう目の前だ…」
議事堂まで150メートル。敵兵はいない
八重「牛島さん、ご命令を」
信はライフルを空高く上げ
信「すわ、掛かれ!
8時51分、奇襲隊がユートピア議事堂に突入した

これにより、戦況は諸星側に傾く


つづく


EP8「得喪」


牛島たちが奇襲攻撃を加えたことにより戦況は大きく彰たちに傾く
彰たちは被害を抑えて奪還することができるか
彰たちが大勝負に出る


議事堂から銃声と足音が聞こえる
春輝「なんだ!?」
伝令「奇襲です!議事堂の裏側から牛島の軍勢が攻め込んだようです!」
春輝「チッ、袋の鼠か!」
春輝たちが混乱している様子を彰は見ていた
彰「ようやく来たな!」
彰「混乱してる今が好機!攻め立てよ!」

彰たちの軍の攻撃が激しくなった
春輝「一旦退くぞ!」
春輝たちは中央広間の方に逃亡する
澪「追う?」
彰「否」
春輝たちが中央広間に逃げると
それはもう手遅れだった
信「待ってたぜ」
信たちの軍勢が目の前にいた
春輝「…まずい!渡り廊下を通れ!」
信「だが…'お前らの逃げ場はないんだけどな''」
春輝たちが渡り廊下をいった先にはまた敵兵が
春輝「仕方ない…一発やるか
すると春輝は左腕を前に突き出す
春輝「生き残るためには…この切り札を…」
???「させねぇよ」
天井を破り落下してきたところで春輝を取り押さえる
信「ぷぅ」
力強く押さえると春輝は抵抗しなくなった
そこに彰たちも合流する
彰「安心しろ。拷問するとかそんな野暮なことはしない」
春輝「…じゃあ、何をする気だよ」
彰「あの人をを呼べ
奥からやってきたのは
春輝「…菜穂⁉︎」
こちらをなんとも言えない表情で見ている
春輝「…フッ、お前が来たって降伏する気はねぇよ」
すると菜穂は表情を変え
菜穂「別に降伏しろと言うつもりはない。お前たちの目的を知りに来た。わざわざ砲撃までさせといて、何がしたいんだ?」
春輝「答えねぇよ。そう言うことは門外不出ってやつだ。すでに俺は契約済だかんな」
春輝の契約という言葉に一同はざわついた
泰樹「契約…?」
春輝「ああ。こっち側にはな、ちゃんと大義名分があるんだよ」
彰「…なら鳳城。交渉だ」
春輝「…あ?」
彰「今お前をここで解放してやる。その代わりここを開け渡せ」

春輝はしばらく沈黙したが
春輝「…なにか条件はあるのか?」
彰「無条件だ」
その言葉にその場にいた者たちは驚愕した
信は焦っていながら
信「いいのですか⁉︎こいつは反乱軍の中でも有力な人物なんですよ?」
彰「問題ない。ユートピア議事堂(ここ)を取り返したところで奴らと戦力が互角になるんだ。今ここで調べてもなんも意味もならん。…それに、こいつのことだから調べさせられても答えないだろう」
春輝「…呑んでやるよ」
信は拘束を解き、春輝を逃す
春輝「ああそうだ。菜穂、手紙見たか?」
菜穂「え?」
菜穂が春輝を次に見たときにはいなくなっていた

7月4日午後6時34分。ユートピア議事堂、反乱軍全員の立ち退きにより開け渡し完了

彰たちが議事堂を探索したが間抜けの殻だった
彰「…武器とか持っていったな…」
八重「コレじゃ獲った意味ないじゃないですか」
彰「…いや、奴らはあそこに気付いていない、ついて来い」

彰は八重を連れてミーティングルームに連れ出した

八重がなぜミーティングルームなのか、聞くまでもなく、彰はミーティングルームの机をどかす
そして机の下には扉があった
八重「これは⁉︎」
彰「地下の武器保管庫に通じる隠し通路だ。奴らはこれに気づかなかったみたいだな」
扉の下にある階段を使い、下っていく
八重「あのー…いいんですか?ここは軍事隊の上層部でも入れないって聞いてるんですけど…」
彰「は?内戦中(今なんか)はそんなものなんて通用しないよ。それにここに来たのはただの確認だけ。さぁもう少しだ」
20分は降りただろうか。地下50m下に
八重「すごーい!ここが…」
八重の目には果てしなく広く、それは銃や戦車、刀、砲台で埋め尽くされてる倉庫が目に入った
彰「ここがシャングリア地下武器倉庫だ」
彰「最後に見たのは3ヶ月くらい前だが…何も変わってないな。よし、戻るぞ」
八重「えっ⁉︎早くないですか⁉︎」
八重の手を連れ、階段を駆け上がった

午後7時4分。中央広間に彰たちが集結した

信「ユートピア議事堂内では武器などは全て持っていかれましたが、地下倉庫は無事だったのですね?」
彰「ああ。だからこれからの戦には倉庫にある武器を使っていく所存だ」
彰「ひとまず、今日はこれまでだ。各々自由時間とする」
中央広間にいた八重や澪、牛島たちは解散していった

一方その頃、ユートピアシティ北西部にあるツルギたちの陣に春輝たちが帰ってきた

春輝はよろめきながら
春輝「此度は…本当に…申し訳ございませ…」
すんでのところで倒れた
そこにツルギたちがやってくる
ツルギ「怪我人の手当てをせよ!」
春輝「…?」
気付いたときには包帯をつけられていた
ここは怪我した者たちが運ばれる救護者用テント
そこにー
ツルギ「怪我の様子はどうだ?春輝」
渋川「ゆっくり休んどけ」
春輝は驚いた。それより先に
春輝「この度は、立て籠りのリーダーでありながら、ユートピア議事堂を奪還させてしまい、本当に申し訳ございませんでした!」
渋川「問題ない。メタなこと言えば、ここまでは想定内。あまり悔やむな。内戦は、ここからが本番だ
春輝「…もったいなきお言葉です!」
渋川たちは内戦で戦うのは自分たちと諸星達だけだという算段だった

誤算

少し時は遡り、7月2日
シャングリア帝国の北部にあるムーブタウン…

???「この勢力争いに俺達がのらないわけがないだろう?宣戦布告だ」
???「もちろん、第三勢力としてな

内戦は次のステージに進もうとしている


つづく


EP9「北方の狼」

2023年7月2日。ムーブタウン議事堂
この日、ある会議が行われていた

議長「みな、最近ユートピアシティで内戦が起きたのは知っているな?」
参加したのはムーブタウンの参議およそ650人
議長「そこで我々はどう対応するかの話だが…」
???「そんなの、一つに決まってるじゃないか」
議長「…淳一か」
彼の名は畑 淳一。ムーブタウンの首相である
とても好戦的であり、単純
首相でありながらとても武勇に優れる
淳一「今起きてる勢力争いに乗り遅れっちゃダメだろ?」
議長「…なぜ?」
淳一は考えることなく
淳一「このご時世、何が起こるかわからない。だが、この争いでもし…」
副議長「もし?」
淳一「もちろん、これは大きな賭けだがな。だが、穏やかに暮らしていくだけではこの世は乗り切れぬ!皆の者!戦の支度をせよ!」
高らかに叫んだ
議員はざわつくものもいれば、反対の抗議をするものもいた
淳一「わからないようだな…この乱世の行先を…」
議長「お待ちください。あちら側のツルギ様には妹の帰蝶様が嫁いでいるのですが…」
淳一「誰がツルギ様を狙うと言った?
抗議していたもの達はその言葉で黙り込んだ
淳一「決まったな。雪月隊に指示を出せ。戦を始めるぞ、とな」

今ここに、新たな乱入者が現れようとしていた


北の狼が獲物を目指し、南方を開始した
狙われた獲物の選択肢は
逃げるか、あるいはー


7月5日。彰たちの陣にある知らせが届いた

彰「ついにきたか…いや、まさか来るとは…」
アマタ軍への宣戦布告の知らせだった
そこに
アマタノミコト「良いか。狼に決して降伏してはならぬ。」
彰「帝王様!いつのまに。なぜでございましょうか」
アマタノミコト「雪月隊は…お前達の軍時代よりも厳しい訓練。そして首相の畑のおかげにより、兵隊の士気は常に高い状態だ。」
そこに信が割り込んで
信「つまり勝算はきついとな」

3人が議論している中、1人の伝令がやってきた

伝令「我らが本陣めがけて、雪月隊が迫っております!」
彰「っ!思っていたより早かったな」
すかさずアマタノミコトが
アマタノミコト「兵の数は?」
伝令「およそ3万5000人です」
信「たった3万5000か。俺たちは全兵力で迎え撃てば勝つのは簡単じゃないか?」
すると彰は呆れた顔をした
彰「信…わかってないみたいだな」
アマタノミコト「我々の敵は淳一だけではない。ツルギ達もだ。我々が全兵力をかけて進軍し、淳一たちと戦っている間にツルギたちに奇襲されたらどうする?勝ち目はゼロに近い」
彰たちはまだ負傷兵もいることから対雪月隊軍に2万4000の兵を率いることを決めた

7月5日午後2時ごろ、ユートピアシティ北東部。鳥綱橋付近…

雪月隊新参「ここで良いのですか?首相」
淳一「良いのだ。この戦いは地の利をどう活かすかが鍵だ。奴らはどうするかな?」
地の利だけで言えば、雪月隊の方が有利である

彰「出撃は7月7日。七夕だ。それまでに準備を整えろ」
その指示のもと、各自準備を進めている
対雪月隊軍には彰、信、菜穂がついていくことになった
澪「相手は私たちの戦力を凌ぐ、雪月隊ですよ?勝てるの?」
彰「そんなのやんないとわかんないだろ?鳥綱橋は戦場が狭い。今回の戦を制するのは、采配次第だな」
泰樹「絶対に、戻ってきてくださいね」
彰「まぁな。泰樹、俺がいない間、澪を頼んだぞ」
彰は泰樹の背中を叩いた
まるで背中を押す様に
そして彰は去っていった

支度を整えている信に八重が来た

八重「今回の戦、かなりきついと思うので、頑張ってください」
信には棒読み的に感じた
信「お前こそ、ツルギ達にここを奪われるんじゃないぞ?」
八重は沈黙した
すると
信「お前、先輩*2のこと好きだろ
八重は一瞬で顔を赤らめた
信は何か察した様に
信「じゃあな」
とだけ言って去っていった

7月6日午前9時。鳥綱橋付近。今日は朝から雨が降っていた

雪月隊古参「一応聞くが、なぜ我々が地の利で有利なのだ?」
淳一「こちら側は河岸が広い。だから極限までたくさんの兵を置くことができる。対して奴らは河岸が狭いため、兵を少ししか置けない。総攻撃をするためには橋を渡ることしか手段がなくなるからだ」
図にするとこんな感じ↓(フリーボードなの許して)
File not found: "IMG_1645.jpeg" at page "シャングリア内戦/前編用過去ログ①"[添付]

信は心配そうに空を見上げている
彰「雨だろ?この国の言い伝えが当たらないようにって願ってるんだろ?」
冗談げに言っているように聞こえたが、何か裏がありそうな顔だった
彰「命を惜しめ。俺はいつも、何か大事が起きるたびにそうしてきた。不惜身命のようにはするな。お前もそうすれば、きっと…」
そのあとの言葉は雨音によってかき消されたため聞こえなかった

7月7日。ついに諸星彰を筆頭とする雪月隊征伐軍2万4000人がユートピア議事堂を出発した
天気は曇り。地面は湿っている

彰「皆の者、我につづけ。恐るな!」
そう言ったものの、兵の進軍はとても士気の悪いものだった
まるで曇りの空のように
鳥綱橋までは10km。その道中、信が彰に話しかけた
信「本当に大丈夫なんですか?この士気じゃ全滅もあり得ますよ?」
彰「ならお前が鼓舞しろ。副司令官としても意地を見せてみよ。この戦、お前に采配を任せる
信は快く軍配を受け取った

淳一「敵の居所、知れたみたいだな
午前10時ごろ。鳥綱橋付近に彰達が到着した
彰は地の利を見るやいなや
彰「信、ここからはお前がやれ
そういうと彰は下がり、本陣に戻った
淳一「さて、お手並み拝見」
信は軍配を前に突き出し
信「全軍!橋を渡り総攻撃せよ!いざ、掛かれ!」
兵が橋を渡り攻撃を開始する  
淳一「真っ向勝負か。いいだろう。雪月隊たちよ!練り上げし武を用いて、敵を喰らい尽くせ!

今ここに、鳥綱橋の戦いが始まろうとしていた


つづく


EP10「勝負に負けて戦に勝つ」

荒野になった戦場にただ1人立っているものがいる
鳥綱川や橋は血に染まり、河岸には無数の死体が散らばっている
その目は何を思うのかー


ついに始まった彰と淳一の大勝負
鳥綱橋はユートピアシティに繋がる大事な一筋の線
運命の采配は牛島に握られている


信「全軍、橋を渡り掛かれ!」
午前10時06分。開戦
先に攻撃を仕掛けたのはアマタ軍
雪月隊本陣めがけて攻撃をする
信「押し潰せ!」
川を挟み両軍が激しく撃ち合い、戦う

淳一「果たして、牛島(お前)は俺の陣にたどり着けるかな?我々の本陣はは5段の構えを設置してある。俺にたどり着く前に…」
それを言っている最中
伝令「伝令!5段構えの1段目が突破されました!」
戦は始まってからまだ15分しか経ってない
淳一「思っていたより早かったな。じゃあ、マジで相手してやるか3段目の軍と4段目の軍は2段目の軍に援護してやれ」
信「皆!もう少し粘れ!あと少しで淳一に辿り着けるぞ!」
信も自ら奮戦している
淳一「自ら奮戦するとはなかなかの強者よ…さぁ小豆袋の作戦をせよ!」
5段目の一部の軍が二手に分かれ、信たちの軍を三方向から攻めようとする
信「チッ」
さらに、2段目と3段目と4段目の軍は下がり、完全に挟み撃ちにされた
信「一旦退くぞ!背を向けずに逃げろ!」
橋の方へと逃げる
しかしそれを雪月隊が逃すわけがない
距離が近いものには刀を、遠いものには銃を使って殺していく

開戦から30分も経つうちにほぼ信の部隊は潰走状態に近かった
信の額から汗が流れる
信「(ここが俺の死場所となるか…)」
彰たちの本陣は動かない
兵士「総司令官!なんとしてでも牛島副司令官を救援しなければ!」
彰はずっと黙って戦場を見つめている
どうやら助けるつもりはないようだ
信「くそっ…兵も俺も大分疲労してきたな…」
殺された兵士は川に落とされ、川には兵士の水死体で増えていく
信が戦っている最中
雪月隊兵士「お覚悟願おう
信の目の前に現れ、銃を構え、引き金を引く
信「しまっー」

ドンッ

鈍い音が鳴った
雪月隊兵士「…何?」
信「ドンマイ!
兵士の目の前には左眼から血を流しながらも笑顔を見せている信の姿があった
信「(撃ったと同時に顔を上に向けてダメージを目を潰すだけに抑えることにできた)」
信はすぐに自分を撃った兵士を刺し殺した
信「皆!もう少しの辛抱ぞ!持ち堪えろ!」
だが全体の3分の2はやられていた
ついに橋を渡り終わり、撤退に成功した
時刻は14時を回っていた
淳一「深追い無用!今日はここまでだな」
雪月隊35000のうち10000の被害を被った
そのため、一時撤退した

15時から怪我人の手当てが行われていった
菜穂「24000のうち16000がこの5時間でやられたか…」
菜穂は出撃命令が出なかったため、罪悪感を抱いている
彰「質では奴らの方がうえだったからな」
軍事隊兵士「只今、牛島副司令官の治療が終わりましてございます!」
彰は菜穂を連れて信のいるテントに向かった

治療用テントの中にいた信は左眼に眼帯をつけていた
彰「…調子はどうだ?」
信「…それどころじゃないっすよ先輩。今回の戦は、私が失態を犯した。どんな罰も覚悟しております」
真剣な顔だった
信「今回の采配のせいでたくさんの兵が失われた私の責任です。どうか重い罰を!」
彰「…そうやって1人でなにも抱え込もうとするのがお前の悪い癖だ
ため息をついてそう言う
信「ヘ?」
彰「お前は正義の味方(ヒーロー)じゃない、軍事隊副司令官だろ?俺たち軍事隊を本当の意味で裁くことができる者はこの国にはいないかもしれない。だとしたら、俺たちは軍事隊としての存在意義を保たなくちゃいけないんだ。もう、1人で悩むな。これは全体の責任だ。皆で考えなければならない。軍事隊(ここ)は、そう言う場所なんだ!」
しかし信が立ち上がる
信「待てよ。まさかこの戦いを無かったことにするんじゃあるまいな。皆で考えたからって、俺の心には一生残るんだぞ!今回の兵士の死は俺が殺したようなもんだ!今更どうこうしたって、何もかわらねぇよ!それに拠点に戻ったとして!あいつらに顔向けができねぇよ…」
ついにうずくまり、信の右目から銀色の粒がこぼれ出した

誰もが次の日も継続すると予想していたこの戦いは意外な結末を迎えることになる

18時31分。雪月隊本部…
淳一「いやぁしかし…あの牛島も俺たち相手によく粘ったものよ」
雪月隊司令官「しかしほぼ壊滅状態。翌日攻めれば全滅を狙えるでしょう」
淳一「アマタノミコト…そして次はツルギだな…」
意気揚々としている中、一つの知らせが淳一たちに届く
伝令「首相!一大事でございます!ムーブタウンにて護衛を行っていた議長が下郎に刺殺された模様です!」
歓喜に包まれていた空気は一瞬にして静まり返った
淳一「それは確かな情報か?(だとしたらクーデターか?もしかしたら俺のことをよく思わない議会の奴らが起こしたのか?)」
司令官「これがもし本当だとしたら、これは一世一代の危機ですぞ!」
淳一「(くそっ…俺の野心が招いた結果か…)皆!陣をおろせ!撤退するぞ!」
兵士たちは何が起きたのかわからないままただ淳一の命に従うのみだった

撤退していったことを彰たちは知らぬまま翌日の朝を迎えた

兵士たちは今日も戦わなければ行かないのかとおじけついていた
彰「さて、今後の作戦についてだが…」
伝令「総司令官!先はど外を見たところ、雪月隊の姿が見当たりません!」
彰「何⁉︎」
急いで外に出て、鳥綱橋周辺を見渡すも、それらの姿はどこにもなかった
彰「何が起きたのだ…?天が我々に味方したのか…」
信も駆けつけ、彰の横に立つ
信「つまり我々は…勝負に負けて、戦には勝ったのですな
彰は兵士たちに伝えるため戻っていった
片目になった信は鳥綱橋を見つめる
斃れている死体はたくさんあり、ハエがたかっている
それらを見つめ信は何を思うのか
決意の意を固めた眼差しをすると本陣に戻ってきた

午前8時から会議が再開された

菜穂「ここでカウンターを仕掛けたいところですが…こちらも十分被害がでかいから、しばらくここに留まり、兵の手当てをすることはどうでしょう」.」
会議に参加していたものたちは承諾した
彰「2週間かな…」

鳥綱橋の知らせは澪たちのところにも届いていた

澪「よく戦い抜いたわね…信君」
八重「おそらくこのことも渋川側にも届いていると思います。これで兵の士気は上がります!」
しかし、彰が不在な中、澪たちにも危機が迫ろうとしているー


つづく



*1 500m
*2 諸星彰