【SS】アイアン・レイン作戦/In the Darkness of Sorrowful Warfare

Last-modified: 2024-05-14 (火) 10:37:55

プロローグ

アイアン・レイン作戦・・・
今思えば、陰謀、疑惑、偽装、乱逆・・・そして、愛憎の入り乱れた、とても不透明で、悲壮な戦いだった・・・
ここに記したのは、世間一般に広く知られている戦況の裏で繰り広げられていた、紛れもない事実の物語である。

今、不透明な戦いの裏側が、明るみになる。

登場キャラ

アイアン・レイン作戦文書及び主要戦闘記録参照

概要

基本的にはWikiパックンの使用したキャラたちを中心に送る、アイアン・レイン作戦のスレで描写されなかった彼らの暗躍の物語です。
各回の最初には、その回で描かれるシーンの冒頭やそこに至るまでの流れの補足となる会話の記録を入れています。
このSSのタイトルを自然に『悲嘆な戦争の真実』と訳せたそこのあなた!おめでとう、あなたは立派なメタルギアシリーズ通です!

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Tag: 【SS】

第一話「スニーキング・ミッション」

Connection Monitor Log
Side : Iron Rain Operation Team
Time : 11:00:32, December 9
Channel : Mr.X & Unknown Person

▶︎START
 BACK
[PLAY]

協力者「X、見えて来たぜ。」
転移者X「ここが今回の戦地か・・・」
協力者「本当に良かったのか?先遣攻撃部隊に敵の目が引かれているうちに、自分は裏から単身潜入だなんて・・・陽動作戦(フェイント・オペレーション)に利用されたと思われてお前が恨まれても、俺は知らねえからな?そもそも俺正規の作戦メンバーじゃねえし。で、1人で輩と殺り合う見通しは立ってんのか?」
転移者X「定時連絡を行っている警備兵を先に仕留めればどうとでもなる。一番監視範囲の広い奴を仕留めて、偽の連絡で敵の目を誤魔化せば、侵入に気づかれる可能性はグッと落ちる。気づかれたとしても仕留めている人数は最低限・・・単身潜入だと思わせることで、大量の攻撃部隊さえ呼ばせなければ、救出部隊が離脱するまではさほど騒ぎにはならんだろう。」
協力者「相変わらず軍人でもねえのに軍の勝手をよく分かってやがる・・・んで、定時連絡の偽装はお得意の声帯スキャンか?」
転移者X「ああ、定時連絡はデモニカで誤魔化せる。警備兵を仕留めて、後は上手くやるさ。」
協力者「そう上手いことできればいいけどな・・・そうだ、あの殺し屋から情報が横流しになってる。多分、オルタナは動いて来るぞ。」
転移者X「そうか・・・わかった。ああ、言い忘れていたが、この無線のモニター音声はあるチャンネルへの音声を除いて、全てリアルタイムで改ざんされている。」
協力者「おいおい、そんな重要なこと言い忘れるとかねえだろ!モニターしてる奴らに勘付かれないように肝心なとこはぐらかしただけ無駄だったぜ、全く!・・・はぁ、こんなことでキレてても仕方ねえか。大変だとは思うけど、まぁ、気楽にやれよ。」
転移者X「ああ。わざわざオルタナの刻印のないタグボードを用意してまで、ここまで送ってくれて、ありがとうな・・・行って来る。」
(ダンッ!ザパァン、ザパァン・・・!)
協力者「うおっとっとっと!やべ、姿勢整えないとひっくり返りやがる!」
(舵輪を慌ただしく回る音が遠めに聞こえる)
協力者「・・・ふぅ。全く、無茶しやがって。頑張って来いよ、X。」

[STOP]

《敵軍基地》

とある拠点のホールで、見張りが暇そうに話をしている。
兵士A「おい、知ってるか?今、真反対の海上に敵の艦隊がいるらしいぜ。それもうじゃうじゃだってよ。」
兵士B「まじかよ?配属されてんのこっち側で良かったわー。」
兵長「警戒を怠るな!海上からの攻撃は、伏兵を潜入させるためのフェイント・オペレーションかもしれないのだ。伏兵が来ているとすればこちら側の可能性が高い。」
兵士C「もっと海岸に近い基地から何の連絡もないのに、敵なんているんですか?」
兵長「いつの時代もどこの国でも、潜入作戦というものは巧妙なものだ、メインターゲットに近づくためにわざと騒ぎを起こす場所を決めていることもある!今この時でさえ、ここに敵がいるのかもしれないのだぞ!単騎でメインターゲットまで到達することができる、強くて恐ろしい、モガッ!」
転移者X「俺みたいな敵が・・・な!」
背後からステルス迷彩を起動したまま、Xが敵兵長の首を掻き切る。目の前で見えない何かに兵長を殺され、見張り兵たちはパニックに陥る。
兵士B「へ、へいちょおおおおおおおお!」
兵士A「おい、応援だ!HQに繋いで応援を呼べ!」
兵士C「わ、わかった!」
兵士Cが無線機を取り出す。
兵士C「HQ!こちらパトロール!てk」
(チュイーン!バチッ、バチバチ・・・)
兵士C「む、無線機が破壊された!代わりに応援を・・・!」
兵士Cが振り返った先には、兵長と同じように首を落とされた兵士A、Bの遺体があった。
兵士C「ひっ!グェッ・・・」
Xは背後から兵士の首を絞める。
転移者X「運が良かったな。お前が俺の斬った奴から一番遠かったから、応援要請を頼まれた。おかげでお前は気絶で済む、最悪死んでも遺体は綺麗だ。じゃあな。」
(ドサッ)
無線機『おい、定時連絡はどうしたんだ!同じ持ち場の兵士からも応答がないんだぞ!?・・・おい!どうしたんだ!?』
転移者X「さて、行くか。」
無線機『一階ホールとの連絡が途絶えた。至急、調査に向かえ!』



《地下施設外周》

PTT
142.36 協力者
協力者『よぉ、上手くやれてるか?』
転移者X「予定通り、基地の警備1チームを仕留めた。動きは?」
協力者『こちらの思惑通りだ、手練れたちが組んだマンセルだと思ってらぁ。メインターゲット近辺の2つの基地の歩哨が応援要請を受けて慌てて現場に急行してる、今頃クレイモアの餌食になってるだろうな。クレイモアで味方が死ぬ度に、内部にばかり目が向くようになる・・・これで楽にバリケードを突破できるぜ!』
転移者X「わかった。」

140.72 作戦本部
転移者X「こちらX、バリケード近辺の歩哨を排除した。俺はいつでもOKだ。」
作戦本部『こちらHQ、了解。』
転移者X「救出チームは?」
作戦本部『メインターゲット入り口到達まではもうしばらくかかるだろう。ブリーフィングで伝えた通り、君の任務は救出チームに先立つメインターゲットへの単身潜入・救出チーム離脱までのセキュリティの偽装工作だ。くれぐれも騒ぎは起こすな。』
転移者X「承知の上だ。これより、メインターゲットに潜入する。」

体内通信というのは便利な物だ。言葉を発することなく通信を行うことができるため、身を隠して通信を行っている真横を敵に通られても気づかれることはないし、音響が激しい空間でもバレることなく味方と連絡が取れる。何より、傍受されない限り交信内容は一切知ることができないのだ。最先端技術のレベルは、既に体内通信が可能なナノマシーンを開発するには十分であるというのに、体内通信技術がこの時間軸では未だに発展していないことは、Xからすれば、転移から3ヶ月が経った今でも、到底信じがたいことだった。
しかし、ある一言で、Xはそんなことを考えている余裕がないと言う現実を思い知らされる。
歩哨「ん?誰かいるのか?」
Xは反射的にサッと物陰に隠れる。寸でのところで発見されずに済んだようだ。歩哨が辺りを見渡している。
「はぁ、気のせいか。」
異常がないと判断して、歩哨が立ち去っていく。危ないところだった。見計らって背後から仕留めようかと考えたが、そうしてはならないことを思い出し、踏み止まった。注意が散漫になりつつあることに気づいて、Xは協力者から事前に受け取っていた情報を、もう一度注意深く思い出す。

~回想・タグボートの上で~

協力者「X、注意しろ。地下施設の外周ではステルス迷彩は効かないぞ。」
転移者X「バカ言え。このステルス迷彩に使われている技術が誕生したのは、この世界にとって30年以上先の未来のことなんだぞ?妨害どころか、模倣すらまともにできないはずだ。」
協力者「それがそうもいかねえ。模倣だの妨害だの以前の問題がある。地下施設外周のノードだ。そいつが、外周一帯を守るもう一つの目になっている。」
転移者X「パーソナル・エリア・ネットワークによる管理か・・・」
協力者「そうだ。お前のナノマシンのバースト通信はPANの網に掛からずに済むけど、ステルス迷彩を使っている時に放出される電磁気ばかりはどうしようもねえ。」
転移者X「俺が中に入るまでの間だけでもジャミングできないか?」
協力者「そいつは無理だな、却って騒ぎになる。こないだ試しにやってみたけどよ・・・輩、チャフ撒いただけだってのに戦車まで出してきやがったんだぜ?」
転移者X「そりゃすごい・・・」
協力者「敵の隠密な排除ですら御法度、麻酔で眠らせたり、近接格闘や首絞めで気絶させただけでもアウトだ。巡回している歩哨の反応が同じ場所に留まり続けているだけでも、調査チームが送られたり、警戒を強化される。」
転移者X「無力化することもできないのか・・・伏兵泣かせだな。」
協力者「ただし、逆手に取ることなら成功したぜ。お前のバースト通信の応用で、奴らに気づかれずに、リアルタイムデータを採取することに成功した。これが、その解析データの入ったUSBだ、お前に渡しておく。そいつを、施設内のセキュリティルームにあるパーソナル・エリア・ネットワーク・レーダーの制御端末に差し込めば、後はその中のパッチが敵の巡回を再現したデータを送信するから、穏便にノードを無力化できる。こっちがリアルタイムで抜き取ってるデータはバースト回線でお前に送るぜ。」
転移者X「それは助かる、頼りにさせてもらうぞ。」
協力者「ああ、それともう1つ。この事を知ってるのは、お前と俺と、後はオルタナのメンバーだけ、正規の作戦チームはPANレーダーについて何も知らねえぞ。あれの視界の中で無線連絡を取っただけで、敵にバレちまうことすら・・・な。」
転移者X「となると、救出部隊がレーダーの圏内に入る前に俺がUSBを端末に挿せなかったら・・・」
協力者「ああ、大勢派遣されて、大規模な戦闘が勃発する。一度そうなっちまったら救出は絶望的だ。作戦の成否も人質の命も、全てはお前にかかっている。失敗は許されねえぞ。」

~回想終了~

「ジャングルでの隠密行動は、如何に自然を味方につけて敵を欺けるかが鍵を握る」と、Xは未来で師から習っていた。機械にかまけたただの歩哨と、自然を使った敵の躱し方が身に染み込んだXでは、結果は目に見えていた。
野鳥が止まっている木に少し大きめの石をぶつけて慌ただしく飛び立たせ、銃できのみを撃ち落とし、時には野生動物を誘導し、ありとあらゆる手段で敵を欺いた彼は、地下施設の入り口に難なく到着していた。彼は協力者にCALLする。

PTT
142.36 協力者
転移者X「思ったより楽勝だった。制御端末がある場所は?」
協力者『さっき特定できたところだぜ。地上階北西の通路の突き当たりにあるセキュリティルームだ。少し距離はあるが、中に入ればステルス迷彩は使える。そうすりゃあとは楽勝だろ?』
転移者X「ああ。ん・・・?待ってくれ。」

Xの視界には、連合軍の物でも敵軍の物でもないサイファーが映っていた。Xは身構えるが、サイファーは少しすると遥か彼方へ飛び去っていった。

転移者X「今のサイファーは?」
協力者『妙だな・・・』
転移者X「妙?と、いうと?」
協力者『どこの刻印もねえ、所属不明のサイファーだ。そもそも、あのPANレーダーが貼られてる中を、どうやって気付かれずにそこまで・・・?』
転移者X「兵に動きがないところを見ると、第三勢力の物か?」
協力者『おそらくはな。それも、相当腕の立つ技術者がバックにいる連中だろう。じゃなきゃ今頃敵さん方は大騒ぎだ。』
転移者X「連合軍に伝えておくか?」
協力者『いや、表立った行動があるまでは警戒しつつ放置だ。人質救護のメンバーなんかに無駄な緊張背負わせる意味がねえ。』
転移者X「わかった。」

通信を終えたXは通気孔から基地の中へと忍び込んだ。

《敵軍巨大施設・地上階》

転移者X「この両脇の機械・・・赤外線か。」
Xはタバコに火をつけ、赤外線が通っている下に潜り込ませた。煙によって、徐々に赤外線の通っている場所が明らかになる。天井との間に隙間があるようだ。
Xは助走をつけ、天井スレスレまで飛び上がり赤外線を抜けた。着地した時の音については仕方ないが、敵兵が様子を見に来たところで、Xの姿は視認できないので騒ぎにはならない。
それにしても、この地下施設は入り組んだ要塞のようだった。これだけ曲がり角が多いと警備の意味がないのではないだろうか?
そんなことはさておき、どうやら目的地にたどり着いたようだ。

PTT
142.36 協力者
転移者X「警備室に着いた。目的の端末の位置は?」
協力者『縦3列目、横4列目の端末だ。様子を見てみてくれ。』

Xは壁から半身を乗り出し、警備室の中の様子を伺う。
警備兵1「担当交代の時間だ。俺はここの警備をする。お前は通路を頼む。」
警備兵2「わかった。」
どうやら交代制で警備がされているようだ。さらに困ったことに目的の端末で技術者が作業をしている。

転移者X「歩哨が2人、時間制で警備室前の通路と警備室内の巡回を交代でしているらしい。その上、目的の端末に技術者が張り付いている。」
協力者『厄介だな。気絶させたり殺しでもしたら潜入がバレちまう。麻酔は持ってるか?』
転移者X「あいにく弾を切らしてしまった。」
協力者『マジかよ?まあ、湾岸の警備が想像をはるかに超えるほど厳重だったし、ボートで渡した分だけじゃ足りなくても仕方ないか・・・ちょっと待っててくれよ、物資管理サーバーに侵入してみる。少しかかるから、弾でも補充しながら待っててくれ。』

Xは一度その場を離れることにした。

協力者から連絡があったのは、それから5分後のことだった。

PTT
142.36 協力者
協力者『X、待たせた。地下一階の東倉庫の中に、PSG1-Tがある。いいか?PSG1-T麻酔狙撃銃を回収するんだ。絶対に間違って実弾ライフルのPSG1を使うんじゃないぞ!?』
転移者X「わかった。地下一階の東倉庫だな?下への行き方はどうする?」
協力者『フロア中央にエレベーターがある。乗るにはセキュリティカードが必要だ。ボートで渡したカードは持ってるな?』
転移者X「こいつか。」
協力者『そいつは認証機に通すだけで勝手にその認証を突破できるセキュリティカードに化ける代物だ。』
転移者X「相変わらずの優れ物だな・・・」
協力者『警報器付きの認証機には通すなよ?突破する前にバレちまうからな。それと、さっきサイファーで救出部隊を確認した。あと10分もすればPANレーダーの目に入る。それまでにPSG1-Tを回収して、見張りと技術者を眠らせてUSBを挿せ!PSG1-Tはステルス迷彩で透明にならない。回収したら、使ってからどっかに捨てるまではステルス迷彩は意味をなさないから気をつけろよ!』
転移者X「わかった。行動を開始する。」

 Xがカードリーダーにトランスカードを通す。
『ブブー』
 当たり前のことだが、認証失敗のブザーが鳴る。
転移者X「まあそうだよな。で、30秒だったか?・・・3、2、1・・・」
(シュッ)
 半信半疑でもう一度カードを通す。
『ピコーン』
(ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・)
 エレベーターは予定調和でもあったかのように地上階にやって来た。
転移者X「まるで意味がわからん・・・何でこんな技術が軍部や諜報機関にウケなかったんだ?」
 エレベーターに乗り込んだXは地下行きのボタンを押す。中にいるのが敵とも知らずに、鉄の箱は下へと下がって行く。
 突然、CALLが入る。

PTT
141.80 ???
???『面白そうな奴が舞い込んできたな。』
転移者X「誰だ!?」
???『誰でもない。誰であったって良いだろう?』
転移者X「どうやって俺の周波数を知った!?国連管轄が置いた作戦本部で管理されている極秘情報のはずだ!」
???『そこは秘匿させてもらおう。それよりも良いことを教えてやる。そこの地下1階には至る所に重量感圧板が仕掛けてある、接続先はガスパイプだ。踏めばたちまちガスが充満する。お前は強化外骨格を全身に纏っているから死にはしないかもしれないが、お前がいるということは敵にバレるぞ。』
転移者X「そうなったら作戦は台無し・・・」
???『感圧板は塗装が新しい。よく見れば肉眼で見分けることもできるが、お前にじっくり見ている時間はない。最低限、天井に変な色の錆が付いている場所や、壁際のパイプに露骨に穴が空いている通路では用心することだ。どうしても不安なら頭のキレるお友達にでも聞いてみな。じゃあ。』
転移者X「待て!話はまだ終わっていない!」

 通信が切られてしまったようだ。

142.36 協力者
転移者X「今CALLしてきた奴は!?」
協力者『わからねえ。でも、1つ確かなことがある。今の通信、バースト通信じゃねえぞ・・・!レーダーを処理しない限り、バースト通信以外じゃ外からお前と連絡を取ることは不可能だ。今の奴は、その施設の中にいる。』
転移者X「まさか、俺以外にも侵入者が?」
協力者『どこかで接敵するかもしれない、警戒しておけよ。だが今はノードの無力化が先だ、急いでくれ。』
転移者X「わかった。」

(ポーン)

《敵軍巨大施設・B1F》

 地下に到着したXの目にまず飛び込んできたのは、物々しい雰囲気を醸し出すパイプだった。
転移者X「トラップにかかればお終い、銃を取った後はステルス迷彩も使えないから見つかってもいけない・・・気を張り詰めて行くしかないな。」
 ともかく彼は、行動を開始しなければならなかった。救助隊のPANレーダー範囲内への進入、すなわちタイムリミットは、既に8分後にまで迫っている。急がなくては。
巡回兵1「おい、聞いたか?」
転移者X「!」
 近くから話し声が聞こえた。有益な情報を得られるかもしれない。Xは耳を澄ます。
巡回兵1「物資届いたらしいぜ。お前の担当だろ?」
巡回兵2「ご報告感謝します。搬入口はどちらですか?」
巡回兵1「8番搬入口だってよ。物資は一番近い東倉庫に運び込めよ。」
巡回兵2「わかりました。」
巡回兵1「じゃあ俺は持ち場に戻るからな。」
 若い巡回兵を残し、もう1人が西の方へと去って行った。搬入口があるということは、この施設はそこで外か別の施設に繋がっている。つまり、任務遂行後の逃走経路として使えるというわけだ。覚えておいて損はない。

 エレベーターで謎の人物から受け取った情報を頼りに、Xは地下のトラップを掻い潜っていく。すると、東倉庫には案外すぐに着いた。地下のフロアの広さからして、探索にはかなり手がかかると思っていたので、Xからすれば時間に余裕が持てるのは助かる。
『ピピッ』
(ガーッ)
 東倉庫の扉が開く。人員数が相当なだけあって、中は流石に広い。物資の量も純粋に多く、目当てのPSG1-Tの在処は見当もつかない。

PTT
142.36 協力者
転移者X「倉庫に着いたぞ。PSG1-Tはどこだ?」
協力者『それなんだが、施設内の端末から引き抜いたデータには詳細な位置が書かれていないんだ。しかもPSG1も同じ区画にあるらしい。』
転移者X「見分けは付くか?」
協力者『おう、安心しろ。PSG1-Tにはサプレッサーが標準装備されている。サプレッサーが付いていればPSG1-Tだ。』
転移者X「そうか、ありがたい。区画は?」
協力者『7列目の右から3番目だ。タイムリミットは後6分だ、急げ!』

第二話「戦闘~脱出」

Connection Monitor Log
Side : Iron Rain Operation Team
Time : 14:25:38, December 9
Channel : Mr.X & HQ

▶︎START
 BACK
[PLAY]

作戦本部『こちらHQ。X、救出チームが離脱した。事前に伝えた通り、その施設の人員の多くは、各国から攫って来た軍人に、無理やり遺伝子改造(ゲノマイズ)を施した強化兵だ。今後、各地の戦場に出て来られては厄介だからな。予定通り、君の方で排除を頼む。』
転移者X「本当に治療の目処はないのか?」
作戦本部『ああ、元に戻す方法は見当もつかない。それに今回の作戦に参加している団体のほとんどはみんつく国際連合の加盟国、またはその傘下団体だ。遺伝子改造(ゲノマイズ)及び遺伝子治療(ジーンセラピー)は皆国連発行の国際法で、如何なる用途においても全面的に禁止されている。』
転移者X「治療の目処があったとしても、そもそも治すこと自体許されていないというわけか・・・皮肉なものだな。」
作戦本部『君は人体の急所を全て把握しており、かつほぼ正確に急所を捉えられると聞いている、だから君に頼んだんだ。』
転移者X「なるほど、腑に落ちた。確かに俺に排除を任せれば、苦しまなくて済むように1発で楽にしてやれる、理にかなってるな。」
作戦本部『そういうことだ。彼らはあらゆる尊厳を踏み躙られ、関わろうとも思っていなかった戦争に無理やり参加させられている。彼らは、充分苦しんでいるんだ。せめてその苦しみの終わりは、最低限の痛みだけを伴うものにしてやりたい。』
転移者X「俺に求められているのは、文字通りの"一撃必殺"というわけだな?・・・わかった。これよりデモニカによる偽装を解除し、敵兵の殲滅を開始する。」
作戦本部『頼んだぞ、X・・・』

[STOP]

第三話「予兆と因縁」

Security Record Log
Side : Reincarnators
Time : 23:02:46, December 8

▶︎START
 BACK
[PLAY]

イレイサー「おいツァーリボンバ。どうしたんだよ、こんな夜中に大量のC4とセムテックスなんて用意して?地下施設に仕掛ける分はもう仕掛け終えただろ?」
ヌル「追加分?正直言って、あれだけでもかなり過剰だと思うけど・・・」
ツァーリボンバ「違えよ。こいつは、ある男を仕留めるために仕掛ける分だ。」
イレイサー「ある男?たった1人仕留めるだけならグラビトン爆弾一個で十分じゃ・・・あー、もしかして、アタシたちによく話してるサイボーグの奴?」
ヌル「でも、仕掛けたところで本当に来るの?」
ツァーリボンバ「奴は必ず来る。俺の失った左腕の根本が、そう言ってるからな。」
イレイサー「腕は喋んねえだろ・・・」
ツァーリボンバ「疑うなら、設置作業に付いて来てもいい。その代わり、付いて来るなら作業を手伝ってもらうぞ?」
イレイサー「上等だ、『腕が言ってるから』って理由じゃ納得できねえからな!この目で確かめてやらぁ!ヌル、お前も来い!」
ヌル「えぇ?戦闘準備とか会議とかで疲れたし、めちゃくちゃ眠いからパs」
イレイサー「うっせぇ!いいから来いってんだよッ!
ヌル「(ビクッ!)ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・付いていきますから・・・だからお願い、叱らないで・・・」
ツァーリボンバ「話は済んだか?行くぞ。」

[STOP]

第四話「Alternative Rangers」

Voice Recorder Log
Side : Alterna Rescue & Security
Time : Not recorded

▶︎START
 BACK
[PLAY]

グンジョウ「みんな、依頼だ。それもどデカいな。」
フィオネ「大きな依頼?」
グンジョウ「そうだ。和夢のことは覚えてるか?」
タイヨウ「ああ、桜葉や怪盗団の面々の母国だろ?」
グンジョウ「そこの首相ご子息が護衛もろともテロリストに攫われた。」
ビリー「何だって!?」
グンジョウ「昨今騒ぎのなろう王国ってとこの輩だ。現金4兆円と和夢国内の全研究所の明け渡し、なろう系転生者の入国制限撤廃を条件に交渉を持ち掛けているらしい。」
カエデ「要求に応じなければ?」
グンジョウ「・・・国土全域が死の海になるだろうってよ。」
カザナギ「まさか奴ら、核でも撃てるのか!?」
カムリ「でも、核攻撃をするにはセーフティーを解除しないといけないはず。起爆コード入力式の・・・」
グンジョウ「そう、PALコードが存在するはずだ。だが、まだ核だと確定したわけじゃねえ。それに匹敵するだけのナニカってのもありえるぜ。反物質爆弾、生物兵器、太陽光収束式焼却装置、あるいは」
クラリス「オメガイオンブラスター・・・?」
ルキア「っ!私も行く!」
エミリ「ダメです!ルキアさんは今身重なんですよ!?お腹の中の赤ちゃんのことを最優先に考えてください!」
ルキア「でも・・・!」
クラリス「ルキア。気持ちはわかるけど、今は控えてくれ。せっかく授かった命なんだ。大切にしないと。」
ルキア「・・・そうだね、わかった。」
ビリー「それに、傀儡兵にしろ反物質や光熱兵器にしろ、たかがテロリストに扱えるようなもんじゃねえしな!どーせハッタリかまして金と技術を巻き上げようって魂胆に決まってらぁ!」
ルキア「確かに。言われてみればそうかも。」
フィオネ「で、受けるってことでいいんだよね、総大将?」
クラリス「もちろんだ!グンジョウ、情報よこせ!戦闘員は全員ブリーフィングルームに集合!編成組むぞ!」

[STOP]

第五話「"無"の裏切り」

Connection Monitor Log
Side : Reincarnators Kingdom*1
Time : 17:45:00, December 9
Channel : Enemy's HQ

▶︎START
 BACK
[PLAY]

敵軍本部『こちらHQより各位、ダミーの地下施設から人質が救出された。カメラでパワードスーツを着用した兵士を確認、おそらく、我々が一国への脅しとして攫った人質の救出を依頼されたという、オルタナ・R&Sの戦闘員だと思われる。これより、オルタナ・R&Sの強制侵入及び偽装工作への報復として、オルタナ及び連合艦隊全軍の撤退を条件に、現時刻より、1時間に1人ずつ人質を殺害することを決定した。彼らが要求に応じない場合は、本命の護衛から順に人質を殺害し、本命のみになった時点で、一般回線にて最後通達を行え!』

[STOP]


*1 なろう王国を自分なりの解釈で英訳したらこうなった。Reincarnatorsは転生者の意。