アズカバンの囚人/5章

Last-modified: 2021-10-16 (土) 18:41:07
 

階段

■日本語版 5章 p.92-93
「漏れ鍋」の狭い階段を、全員のトランクを汗だくで運び出して出口近くに積み上げたり、ヘドウィグやら、パーシーのコノハズクのヘルメスが入った籠をそのまた上に載せたりと、何やかやでそれどころではなかったのだ。

■UK版 p.56
they were too busy heaving all their trunks down the Leaky Cauldron's narrow staircase and piling them up near the door, with Hedwig and Hermes, Percy's screech owl, perched on top in their cages.

■試訳
「漏れ鍋」の狭い階段からやっとの思いで全員のトランクを下ろし、ヘドウィグやエルメス ―パーシーのコノハズク― が入った鳥かごと一緒にドアの近くに積み上げたりするのでとても忙しかったのだ。

■備考

  • 文頭と文末がうまくつながってない。
  • 「狭い階段を~(略)~何度も往復した」 「狭い階段を~(略)~降りた」など、階段をどうしたかの説明がないため、まるで階段を運び出したように取れる。
  • 原文には「何やかや」にあたる言葉はない。邦訳はなんだか余計な言葉をはさんで文を長くしているような感じがする。


猫撫で声

■日本語版 5章 p.93
「大丈夫よ、クルックシャンクス」
ハーマイオニーが籠の外から猫撫で声で呼びかけた。
「汽車に乗ったら出してあげるからね」

■UK版 p.56
‘It's all right, Crookshanks,' Hermione cooed through the wickerwork, ‘I'll let you out on the train.'

■試訳
ハーマイオニーが籠の外からささやくように話しかけた。

■備考

  • 原文中のcooedは優しい声で話しかけた。ささやくように話しかけた。とするのが普通かと。
  • 猫なで声では相手に媚びる、優しさを装うの意味となり、ハーマイオニーがクルックシャンクスに呼びかけたときの心情が異なる。


胡散臭い

■日本語版 5章 p.93
二台ともエメラルド色のビロードのスーツを着込んだ胡散臭い魔法使いが運転していた。

■UK版 p.57
(省略)each of which was driven by a furtive-looking wizard, wearing a suit of emerald velvet.

■試訳
二台ともエメラルド色のベルベットスーツを着た忍び寄るような魔法使いが運転していた。

■備考

  • ハリーたちが車でキングズ・クロス駅に向かう場面。
  • furtive-lookingは胡散臭いではなく、「人目を忍ぶような様子」という意味では?


はがれかけた文字

■日本語版 5章 p.99
カバンの片隅に、R・J・ルーピン教授と、はがれかけた文字が押してあった。

■UK版 p.60
The name ‘Professor R. J. Lupin’ was stamped across one corner in peeling letters.

■試訳

  1. カバンの片隅に、R・J・ルーピン教授と今にも剥がれそうな文字が押してあった。
  2. カバンの片隅に、『R・J・ルーピン教授』と薄れかけた文字のスタンプが押されていた。

■備考


安モン

■日本語版 5章 p.101
「ウン……だけど、安モンだよ」ロンが言った。「エロールの脚にハリーへの手紙を括りつけようとしたら、メッチャ回ったもの」

■UK版 p.61
‘Yeah ... mind you, it's a very cheap one,’Ron said.‘It went haywire just as I was tying it to Errol's leg to send it to Harry.’

■試訳
「うん……言っとくけど相当ちゃちなやつだよ」ロンが言った。「ハリーに送ろうとしてエロールの脚にくくりつけようとしただけで狂ったみたいに回ったんだから」

■備考

  • スニーコスコープに興味を示したハーマイオニーに対するロンのセリフ。
  • 原文ではなにも変な言い方をしていないのに「安モン」「メッチャ」という言葉がひっかかる。
  • また邦訳では「手紙を括りつけようとしたら」となっているが
    原文を読むとロンがエロールの脚に結び付けようとしたitは明らかにスニーコスコープ。
    一緒にバースデーカードを送ってはいるが、このitを手紙にする理由はないと思われる。
    (携帯版では安物に「やすもん」とルビ、「メッチャ」はひらがなに変わっているが
    スニーコスコープを手紙としてしまった件の訂正はなし)


ディメンターの声

■日本語版 5章 p.111
ガラガラと音を立てながらゆっくりとながーく息を吸い込んだ。
■日本語版 12章 p.312
吸魂鬼がガラガラと息を吸い込み
■日本語版 20章 p.502
がっぽり空いた形のない穴が、死に際の息のように、ザーザーと空気を吸い込んでいる。
■日本語版 20章 p.503
ザーザーという吸魂鬼の息が次第に消えていった。

■UK版 p.66
drew a long, slow, rattling breath,
■UK版 p.178
drawing its rattly breath;
■UK版 p.281
a gaping, shapeless hole, sucking the air with the sound of a death-rattle.
■UK版 p.282
the rattling, sucking sounds of the Dementors were fading.

■備考

  • ディメンターが喉を鳴らす音の表現。
  • 前半では「ガラガラ」だったのがクライマックスシーンでは「ザーザー」になっている。
  • rattleは「ガラガラ鳴る」とか「ガタガタ音を立てる」という意味だが
    「臨終の人が喉をゴロゴロ、ゼイゼイいわせる」ときも使われる。
    原文にdeath-rattle(死に際に喉が鳴る音)という表現があることから
    作者は吸魂鬼に死に際の人出すような不気味な呼吸音をたてさせようとしていたのだと思われる。
    「ガラガラ」も「ザーザー」もどちらも不自然。「ゼイゼイ」などに変えたほうが良い
  • またdrew a long…を「ながーく」としたのはシリアスなシーンにそぐわないし、
    「がっぽり空いた」という表現は日本語としておかしい。「ぽっかり開いた」にするべき。


自然に信用

■日本語版 5章 p.121
アルバス・ダンブルドアは誰もが自然に信用したくなる気持にさせる。

■UK版 p.71
You couldn't help trusting Albus Dumbledore,

■試訳
アルバス・ダンブルドアは信頼せずにはいられない人だ。

■備考

  • 「誰もが自然に信頼したくなる人だ」でもいいけれど。
  • 「信用したくなる気持ちにさせる」というのは日本語としてありえない。




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