不死鳥の騎士団/26~30章

Last-modified: 2023-10-21 (土) 12:46:37
 

26章

逡巡(ためら)う

■日本語版 26章 p.247
逡巡(ためら)わなかったら、

■試訳
ためらわなかったら、

■備考

  • ひらがなで良いと思うし、もし漢字で書くなら普通「躊躇う」では。

アンブリッジができること

■日本語版 26章 p.254
「学校中が、一人残らずあなたのインタビューを確実に読むようにするために、アンブリッジができることはただ一つ。禁止することよ!」

■UK版 p.513
‘If she could have done one thing to make absolutely sure that every single person in this school will read your interview, it was bannning it!’

■試訳
「学校中が一人残らずあなたのインタビューを読むように仕向ける絶対確実な方法があったとしたら、それは禁止することだったのよ!」

■備考

  • 英語の場合はどうしても主語が必要だから、原文のsheは間違いなくアンブリッジ。
    でも日本語でそれを訳出するとあまり自然な文にならないと思うんだよね。
    ここで何かを禁止する権限をもっていたのはアンブリッジだけ。
    だからわざわざ「アンブリッジ」と書かなくても良い。
  • もう一つこれはアンブリッジが禁止令を出した後なのに、
    邦訳は現在形で訳してるので何となく分かり難いんだと思う。

図星

■日本語版 26章 p.255
どうやらハーマイオニーが図星だった。

■UK版 p.513
And it seemed that Hermione was quite right.

■試訳
ハーマイオニーが正しかったみたいだ。

■備考

  • 自分の思っている事をぴたりと当てられた時などに「図星をさされた」と言うんだよね。
    ハーがぴたりと言い当てたのは誰かの考えてる事じゃなくて未来予測だから「図星」という言葉を使うのは間違ってる。
  • 「ハーマイオニー『が』図星だった」の「が」に違和感がある。
    実際はハーマイオニーしか予測をしてないが、これだと「2人以上が予想をしていてハーマイオニーの方が当たった」と言う風に読める。

創面(そうめん)

■日本語版 26章 p.259-260
蝋燭(ろうそく)の灯りで、創面(そうめん)が浮き彫りになった。

■UK版 p.
the scars were thrown into relief by the candlelight.

■試訳
ろうそくの灯りで、傷のある顔が浮き彫りになった。

■備考

  • 創面自体は、正しい言葉だけど意味が分かり難い。
    「傷のある顔」ではダメなのか?

塊(かた)まっている

■日本語版 26章 p.273
背の高いスリザリン生が(かた)まっている

■試訳
背の高いスリザリン生たちが固まっている

■備考

  • 人が集団で居る描写。こういう漢字なの?

28章

破裂した伏魔殿状態

■日本語版 28章 p.332
一階下は破裂した伏魔殿状態だった。

■UK版 p.556
One floor down, pandemonium reigned.

■試訳

  1. 一階下は混乱状態だった。
  2. 一階下は阿鼻叫喚の巷と化していた。

■備考

  • 明らかに「伏魔殿」という言葉の使い方に無理があるでしょ。
    普通に訳せる箇所なんだから普通に訳して欲しい。
  • 全く雰囲気が合わない「伏魔殿」と言う言葉をハリー・ポッターに使う事自体がピント外れ。
  • 一応Pandemoniumには伏魔殿と言う意味もあるが、伏魔殿は破裂しない。

スネイプの答案

■日本語版 28章 p.345
少なくとも一番近くにいる生徒たちよりも三十センチは長いし、しかも字が細かくてびっしりと書いている。

■UK版 p.565
he had written at least a foot more than his closest neighbours, and yet his writing was minuscule and cramped.

■試訳
周りの生徒たちよりも三十センチ以上は長くなっており、しかも細かい字でびっしりと書き込まれている。

■備考

  • ペンシーヴで親世代のOWLを見るシーンに出てくるスネイプの答案の特徴を書いた一文。
  • 日本語の場合「一番」とつけたらその対象は一つ。
    「一番近くの生徒(一人)」か「近くの生徒たち」のどちらかで無いと日本語として可笑しい。
  • 最上級だから機械的に「一番」としたって感じ。
    普通は「すぐ側にいる生徒達」「周りの生徒達」等と訳すはず。
  • また、主語が途中で変わっている。
    最初は(書かれていないが)「答案用紙」が主語で、それが他の生徒より長いとある。
    なのに最後は「びっしりと書いている」で、主語はスネイプに変わってしまっている。
    最初のまま「答案用紙」を主語にするのなら
    「~三十センチは長いし、しかも細かい字でびっしりと書き込まれている」だろう。

実にハンサムだった

■日本語版 28章 p.351
少し高慢ちきに構え、退屈している様子だったが、それが実にハンサムだった。

■UK版 p.568
looking rather haughty and bored, but very handsomely so.

■試訳
いくぶん偉そうな感じで退屈そうに見えたが、そんな様子もとても絵になっていた。

■備考

  • スネイプの最悪の記憶の中に出てくる学生時代のシリウスのシーン。
  • 日本語の「ハンサム」はほぼ男性の顔が良いという意味でしか使われないのに
    様子の描写で「ハンサム」という言葉を使うのは不適切。
  • また直前の教室のシーンで既にシリウスはハンサム(good-looking)だったと書いてあるのに
    同じ言葉を繰り返すのも可笑しい。
  • 原文に使われているhandsomelyを形容詞のhandsomeと混同したのだろうか。
    handsomelyは通常「立派に、みごとに、堂々として、気前よく」等と訳される副詞。
    ここは「格好良くきまって」「絵になって」と言うニュアンスだと思われる。

スネイプの灰色パンツ

■日本語版 28章 p.356
灰色に汚れたパンツ

■UK版 p.571
a pair of greying underpants.

■試訳

  1. はき古して黒ずんだパンツ
  2. 薄汚れた古いパンツ

■備考

  • スネイプの最悪の記憶の中に出てくる有名な灰色パンツの事。
  • 何かというと話題になるのは日本語では汚れたり古くなったりした衣類を「灰色」とは言わないので、
    読者に奇妙な印象を与えた為と思われる。
  • greyingとは衣服やその他のものを使い古したり、何度も洗濯を繰り返したりする内に色の鮮やかさが消えたり、
    黒ずんできている様子を表す形容詞。スネイプのパンツも同様だったのだろう。
    この後のシーンでリリーに「私ならパンツを洗うわよ」と言う様な事を言われるので、
    薄汚れていたというのも有りかもしれない。
  • 実際にパンツの色が灰色だったという意味でgreyという単語を使っている訳では無いので、
    「灰色に汚れたパンツ」と訳したのは適当ではない。

29章

一緒に育つと

■日本語版 29章 p.368
「ジョージやフレッドと一緒に育ってよかったと思うのは」ジニーが考え深げに言った。
「度胸さえあれば何でもできるって、そんなふうに考えるようになるの」

■UK版 p.577
‘The thing about growing up with Fred and George,’ said Ginny thoughtfully,‘is that you sort of start thinking anything’s possible if you’ve got enough nerve.

■試訳
「フレッドやジョージなんかと一緒に育ったりするとね」ジニーが考え深げに言った。
「度胸さえあれば何でもできるんじゃないかって考えるようになるのよ」

■備考

  • 邦訳は二つに分かれたジニーのセリフが日本語として繋がっていない。
    (このまま活かして繋ぐなら「~よかったと思うのは、~考えるようになったことなの」だろう)
  • しかし「よかったと思う」と言う部分は原文には無いし、入れる事で訳が纏まると言う様な必要性も感じられない。

暖炉の中の男

■日本語版 29章 p.388
ハリーが目を開けると、そこは厨房の暖炉の中で、木製の長いテーブルに男が腰掛け、一枚の羊皮紙をじっくり読んでいた。

■UK版 p.589
Harry opened his eyes to find that he was looking up out of the kitchen fire place at the long, wooden table, where a man sat poring over a piece of parchment.

■試訳
目を開けるとハリーはキッチンの暖炉の中にいた。誰かが長い木のテーブルに腰かけ、羊皮紙を熱心に読みふけっているのが見えた。

■備考

  • ハリーがブラック家のキッチンの暖炉に現われるシーンだが、文の繋がりが可笑しい為に暖炉の中にテーブルがある様に思えてしまう。
    試訳の様に文を二つに分けた方が分かり易くなるのでは。

30章

生徒は生徒が

■日本語版 30章 p.402
アンブリッジが教室に入ってくるだけで、生徒は気絶するやら、吐くやら、 危険な高熱を出すやら、さもなければ鼻血がどっと出てくる生徒が続出した。

■UK版 p.597
Unbridge only had to enter her classroom for the students assembled there to faint, vomit, develop dangerous fevers or else spout blood from both nostrils.

■試訳
アンブリッジが教室に入ってくるだけで、気絶するやら、吐くやら、とんでもない高熱を出すやら、あるいは大量に鼻血を出す生徒が続出した。

■備考

  • 邦訳は「生徒は」「生徒が」と主語が重なり、可笑しい。
    「鼻血がどっと出てくる」という表現も口語的で地の文に相応しくない印象がある。

半コート

■日本語版 30章 p.435
厚手木綿(モールスキン)の半コートを

■UK版 p.616
Hagrid's moleskin waistcoat

■備考

  • waistcoatは男性用のチョッキやベストの事。
    半コートとなってしまったのはウエスト丈のコートだと考えた為だろうか?
  • なおハグリッドは1~2巻でもモールスキンのオーバーコートを着ており、
    2巻から「厚手木綿(モールスキン)」の書き方になっている。
  • モールスキンは元々はモグラの毛皮の意味で、
    現在では軍用コート等にも使われる防寒用の綿の起毛素材を指す事が多い。
    しかしハグリッドの日頃の暮らし振りや良く毛皮を身に付ける習慣から考えて、
    本物のモグラ皮である可能性が高いと思われる。
  • 「厚手木綿」のコートというのもイメージしにくいので、
    ここは単に「モールスキン」として注釈を付ける等した方が良かったのではないか。

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  • 逡巡うは俺もん?と思った -- 2022-10-20 (木) 09:20:32
  • 27章、「やはり、のう。その障害に突き当たると思うておったが」の「障害」の文言に引っかかって前に進めません。ちなみに、UK版「Ah, yes. Yes, I thought we might hit that little snag.」です。 -- 2023-10-15 (日) 09:33:01
    • hit that little snagは、恐らく「小さな困難にぶつかる」という意味だと思います。(一応、snagを辞書で調べると「思いがけない障害」と出てきますが…) -- op2chスレ主 2023-10-21 (土) 12:27:29
  • 27章p.314、マクゴナガル先生が、「ダンブルドアは独りじゃありません!」と言ってますが、呼び捨てではなく、「校長先生」とか「ダンブルドア先生」ではないでしょうか?UK版は、「He will not be single-handed!」です。 -- 2023-10-15 (日) 12:21:26
  • 27章p.317、「ダンブルドアの指がハリーの肌を握ったとき」とあるけど、直訳すぎませんか? 「ダンブルドアがハリーをつかんだ」ということだと思うのですが、「指が肌を握る」って、不思議な表現。 -- 2023-10-15 (日) 12:41:23
    • 「ダンブルドアの指がハリーの肌を触れたとき」でいいと思います。 -- op2chスレ主 2023-10-21 (土) 12:29:01
  • 28章、p.347にも、「とても、ハンサムだ」という記載がある。こちらは、前の文の態度なのか、後の文の容姿をさすのか、わからない。 -- 2023-10-21 (土) 09:13:58
    • 原文ではHe was very good-looking;~なので後の文の容姿を指していると思われます。 -- op2chスレ主 2023-10-21 (土) 12:46:37