原辰徳監督が敷いた内野5人シフト、およびそれが招いた悲劇のこと。
概要
2014年7月11日、読売ジャイアンツ対阪神タイガース(東京ドーム)での出来事。
2-4とビハインドで迎えた6回表。一死二三塁、打者今成亮太とピンチの場面で原監督は左翼手の亀井善行を一二塁間に立たせる内野5人シフトを発動*1。
その後今成の代打に西岡剛が送り出され、このシフトもいったんは解除されたのだが、2ストライクとなった場面で亀井は今度は三遊間へ*2。
そして6球目。西岡の打球は平凡なセンター方向へのフライになったのだが、中堅手の松本哲也がレフト寄りに守っていたためボールは誰もいない外野を転々。タイムリーセンターフライ*3となってしまい2失点。原監督の奇策は考えうる限り最悪と言える結果につながり、これをきっかけに試合の流れも一気に阪神へ。結局5-12と大敗を喫してしまった。
采配の是非
無論、この内野5人シフトに関しては、高校野球やメジャーリーグでも時折見られる立派な戦法*4である。
NPBにおける内野5人シフトは、広島と楽天で指揮を取ったマーティ・レオ・ブラウン監督によるいわゆるブラウンシフトが有名であり、広島時代に5度(2006年に2回、2009年に3回)、楽天監督時代の2010年に2度敢行している。うち一回は原監督が率いていた巨人との対戦(2010年6月7日)にて発動されており*5、原監督も当時のことを記憶していたものと思われる。
ただしこのシフトの要は「1点が勝敗を左右する場面で、外野を手薄にしてでも内野ゴロでの本塁生還阻止率を高める」というところにあり、具体的には外野フライに仕留めてもタッチアップで1点が入ってしまう無死または一死三塁の場面が挙げられる。
実際にブラウンシフトも「試合の最終盤のピンチの場面」という限定された状況でしか発動されておらず、6回2点ビハインドという状況でこのシフトを敷いた原監督の采配とは根本から異なる。しかも併殺を狙うべき場面にもかかわらず、西岡を敬遠してセオリー通りに満塁策を取らなかったこともツッコミどころと言える。
以上の点から到底最善の采配だったとは言えず、原監督には「ありえない」「意味がわからない」「NPB史上最低レベルの采配」等と批判が集中した。
故に、上記の通り失敗した際のリスクが非常に大きく、現にブラウンシフトに関しても7回のうち4回が失敗*6に終わっている。加えて国際大会でも2015年のプレミア12 日本vsベネズエラ戦、2021年の東京オリンピック 日本vsアメリカでいずれも日本にサヨナラ勝ちを献上したため、ネタ戦術として認識されているのが現状である。
高校野球でも
2022年センバツの1回戦、木更津総合対山梨学院のカードで内野5人シフトが発生。延長12回でも決着が着かず無死12塁から始まるタイブレークが採用。そして13回裏山梨学院が内野5人シフトを敷く。そして最初の打者は左飛に抑えたものの2塁ランナーが3塁に進塁。そして次の打者を申告敬遠し満塁となった後サヨナラ押し出し四球で木更津総合が勝利している。