ジエンゴ

Last-modified: 2019-12-20 (金) 13:06:40

漢字で表記すると「自援護」で、文字通り投手自らのバットで打点を稼ぐこと。


概要 Edit

投手が塁に出ると休む時間が減る、投球練習も出来ない、走塁中の事故で怪我をするなどのリスクなどがある。
そのためプロ野球の投手は打撃が軽視される傾向があり、最低限求められるスキルもバントくらいである。

しかし味方が点を取ってくれないと勝てないので、「ムエンゴならば自分で点を取って勝つのが当然」などの煽りが生まれ、転じて投手が自ら打点を上げること全般をジエンゴと呼ぶようになった。

なお下記の例のようにエースと呼ばれる選手は打撃に優れている選手が多かったこともあり、里崎智也などは「ジエンゴは投手の必須スキル」と主張している。
投手で伸び悩むと打者転向する例は多く、主な例としては

OB

  • 愛甲猛(元ロッテ→中日)
  • 遠山奬志(元阪神→ロッテ→阪神)*1
  • 石井琢朗(元大洋/横浜→広島)
  • 福浦和也(元ロッテ)

現役

などが該当する。

DH制の試合 Edit

DH選手が出場している間は投手が打席に立たないので、ジエンゴ不可。DHを解除すれば打席に立てるが、一度解除したら戻せず投手が打席に立つリスクも負うので、余程の理由がないと行われない。

主なジエンゴの例 Edit

過去の例 Edit

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松坂大輔(現西武) Edit

西武→MLB→ソフトバンク→中日→西武。
松坂は横浜高校時代から投球に加えて打撃にも定評がある。プロ初安打は西武一期目、交流戦導入前の2000年8月7日の対オリックス戦で代打出場して放った適時打。また2002年日本シリーズ第1戦では7番・投手でスタメン、交流戦導入後は2006年6月9日の対阪神戦でダーウィン・クビアンから甲子園の左中間最深部に本塁打を放っている*15。それから10年以上過ぎたソフトバンク時代には故障から投手を諦め野手転向を本気で考えフロントに直訴していたことを2018年オフに明かしている。さらに2018年5月20日のナゴヤドーム、対阪神戦に先発した松坂は、自身初のマルチ安打を放ちチームの勝利に貢献した。

菅野智之(巨人) Edit

菅野は元々ムエンゴ投手として有名であるが、通算382本塁打の原辰徳を伯父に持ち投手としての能力だけでなく打撃にも定評がある*16
特に2016年は防御率2.01に対し援護率2.88と深刻なムエンゴに襲われるが、自身は打率.222(54-12)・3打点と代打陣や捕手の小林誠司*17よりも高かったため「ジエンゴしろよ」というツッコミが入った*18
2018年には5月18日の横浜戦で同点に追いつかれて3-3とされた直後の5回裏にレフトスタンドへプロ1号勝ち越しホームランを放ち、これを決勝点として試合に勝利、菅野自身も勝利投手になった*19

横浜投手陣 Edit

横浜DeNAベイスターズでは、横浜大洋ホエールズ時代から野村弘樹三浦大輔吉見祐治須田幸太今永昇太など、伝統的に打撃が得意な投手が多い。そのためかベイスターズのエースはジエンゴが必須スキルと言われるほどである。特に野村には「マシンガン打線の9人目*20」の異名があり、三浦は24年連続安打*21・通算122安打という記録を持つ。

ウィーランド(元DeNA) Edit

打撃の得意なDeNA投手陣でもとりわけ良く打ったのが2017~18に在籍したジョー・ウィーランド(現韓国・KIA)である。
公式インタビューで「投げるよりも打つほうが好き」という心情とバットのこだわりを語り、アレックス・ラミレス監督やチームメイトの宮崎敏郎から打撃を評価されている投手。実戦では特に広島キラーぶりを発揮(打率.539(13-7)・3本・9打点・OPS1.846)しており、同年10月1日の対戦では5回10安打7失点の大炎上も逆転3ランを含む3打数3安打4打点というジエンゴで勝ち投手に*22。遂にはシーズン途中から打棒の高さに野手顔負けの配球をされるようになり、さらには報道や地域から認識されるレベルの警戒*23を受けるようになり、CSでもチーム初安打を含む全打席出塁した。
また、アマチュア時代に「投げない日は遊撃を守っていた」と語っていたため、一部ファンからは「倉本寿彦の代わりにショートとして出場してくれ」とネタ混じりで言われることも。また、ラミレス監督からは「代打で使いたい」「セ・リーグなら.280は打てる」とウィーランドの打力を評価した。
2018年には、前年の公式インタビューで投手なのにバットがスポンサーから供給される契約が成立。さらに8月3日の試合では延長戦で野手が残り少なかった事もあり*24その前日に先発投手として登板したにも関わらず、11回裏二死1・2塁から本当に代打で出場、きっちり四球を選びサヨナラ勝ちに繋げている*25
NPB通算は打率.210・4本塁打*26・OPS.661。

2019年からKBO。しかしKBOは指名打者制なので当然ながら投手が打席に立つことはまずない。このためDeNAと練習試合で再会した時、ラミレス監督にボヤいていた模様。

秋山拓巳(阪神) Edit

秋山は高校通算48本塁打*27で「伊予のゴジラ」と呼ばれていた。ローテーション投手として定着した2017年は、8月18日の対中日戦で伊藤準規からナゴヤドームの右翼中段に届くプロ初本塁打を、翌年5月8日も対巨人戦で山口俊から逆方向への本塁打を放っている*28

前田健太(広島→ドジャース) Edit

PL学園高時代から打撃にも定評があり広島時代も広島市民球場最終日にホームランを放つなど打撃を得意としていた。メジャー挑戦しドジャースに入団して以降も2016年のメジャー初登板時にホームランを放つと、時に代打や走塁センスを買われての代走で起用されたりしている他、2019年は7/1に一時打率を.300(30-9)に乗せるなど打撃が好調で大谷と比較される事も出てきている。

大谷翔平(日ハム→エンゼルス) Edit

高校野球では能力の突出した投手が4番に入るワンマンチームの例は多く見られるが、大谷はこれをプロ入り後も継続。日本ハムに入団した当初は投手と打者の使い分けで起用されていたが、2016年5月29日の楽天戦にて同一試合で投球と打撃の両方を行う「リアル二刀流」を初披露*29。同年7月3日のソフトバンク戦では1番・投手でスタメン出場*30すると、中田賢一(現阪神)から投手で初球先頭打者本塁打*31という離れ業を披露、投げても8回無失点で勝利を挙げる。2017年10月4日にはついに4番・投手として先発出場。投げては9回を被安打2、10奪三振に抑え完封勝利、打っても先制の口火を切るヒットを放つなど投打両面で傑出した様子を見せつけた。名実ともに投手の基準を通り越している。しかし現在は故障から投手を半ば休業中で実質野手扱いされておりこの手の話題において逆に触れられないことも多い。

その他の例 Edit

絶望的に打撃が悪い投手の例 Edit

ウィーランド式防御率 Edit

ジエンゴに定評のある投手に対しては、防御率からジエンゴ分を差し引いたウィーランド式防御率という指標が使われることがある。
由来は上述した典型的なジエンゴ投手の一人であるジョー・ウィーランドから。

通常の防御率は「自責点×9÷投球回」で計算されるが、ウィーランド式防御率は

ウィーランド式防御率=(自責点-打点)×9÷投球回

で計算される。

ウィーランド本人のウィーランド式防御率(2017年)
対中日3.13(46回 自責点18 打点2 防御率3.52)
対阪神1.76(15回1/3 自責点3 打点0 防御率1.76)
対ヤク0.83(32回2/3 自責点4 打点1 防御率1.10)
対巨人2.25(12回 自責点3 打点0 防御率2.25)
対広島2.33(27回 自責点16 打点9 防御率5.33)
総合 2.16(133回 自責点44 打点12 防御率2.98

なお同様の指標としてウィーランド式クオリティ・スタートというものもあり、こちらは6回を投げて(自責点-打点)が3以下で達成となる。


関連項目 Edit



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*1 ロッテ時代に野手、阪神二期目に投手へ再転向
*2 投手として1試合3本塁打は史上2人目、3連発は史上唯一。
*3 1973年第3戦。投手による1試合2本塁打は史上唯一。
*4 アメリカでは日本ハム移籍の前年に同僚と「妻の交換」を行ったことで著名。
*5 なおパ・リーグでDH制が採用されたのは翌1975年からである。
*6 高校時代の甲子園大会通算本塁打は、KKコンビの片割れである■■に次ぐ歴代2位の6本。投手としては小柄でフィールディングも優れていたため、巨人は野手転向を見越して獲得したとも。実際、入団前後に遊撃手転向の話題が挙がったり不振だった1993年にも野手転向の話は再浮上したが、いずれも本人は固辞した。
*7 中3~5日で120球~190球
*8 なお伊藤がジエンゴした試合に限って無駄に味方から援護があったが、他試合では古田が引退後謝るほど重量打線チームがムエンゴに沈む。デビュー年は防御率0.91で2敗しており、12先発のうち7勝しか勝っていなかった
*9 DHでスタメンだった石嶺和彦の代走で飯塚富司が出場
*10 もう1人は1950年・塩瀬盛道(東急、投手)。敗戦処理で初登板した試合の初打席で2ランを放ったが、その後炎上して降板。それ以降は出場できずに引退、こちらは1試合・1打席のみでの達成。
*11 日本シリーズのDH制度は1985年から、しかも隔年制であり全試合でDH制がなかったのはこの年が最後。パ・リーグ主催試合で導入されたのは1987年から
*12 これがプロ初本塁打、41歳・23年目はプロ最遅記録を更新(野手では1983年・石山一秀(近鉄)の14年目が最遅)。ただし通算では打率.081(272-22)・1本・10打点と打力が突出していたわけではなくセ・リーグの無安打ワースト記録も保持しているため、むしろ不得意な方と言える。
*13 愛知大時代は外野手として愛知大学リーグ歴代2位となる通算124安打を記録している。
*14 パ・リーグ投手の日本シリーズでの安打は同年第1戦の大谷も含め、2004年松坂大輔(当時西武)以来。
*15 その次に甲子園で投げたのが2018年の自身の誕生日であるが、その際中日ファンからホームランコールが起こった。
*16 チームが数安打しかできずムエンゴ負けしてその少ない安打に投手である菅野のものが含まれるなどということも起こっていた
*17 巨人の右打者捕手の規定打席到達者は29年ぶりながら、打率.204は最下位だった。
*18 このことを首脳陣も理解してか7番打者が回の先頭で出塁した際に8番・小林に送らせて9番・菅野にはそのまま打たせるという采配が時折見られる。
*19 ちなみに、この試合の中継の解説は伯父であり入団~2015年及び2018年シーズン後からの監督でもある原辰徳だった。
*20 PL学園高校時代はエースながら立浪和義片岡篤史らを擁した中で4番を務め、甲子園では春夏連覇。プロ入り後も1996年には自ら3ランを放って2失点完投勝利、日本一となった1998年には打率.250・2本塁打・8打点など打力が高かった。
*21 NPB4位タイ。投手としてはギネス認定となる世界記録
*22 ちなみにこの勝利で球団史上初となる外国人投手2桁勝利を達成、チームも2年連続CS進出・Aクラス(3位)も決めている。
*23 対広島打者成績にウィーランドの打撃成績を併記、最速153km/hの外国人投手に対して「代打はやめてね」と明記した広告をJR西日本が掲載する
*24 9回表に守護神・山崎康晃が炎上し3点差を追いつかれる。ネクストバッターの嶺井博希は打率1割台であり、残り野手は伊藤光のみだった。サヨナラの絶好機に一割打者を送り出すわけにはいかない一方、伊藤光?を代打に送ると万一頭部死球等のアクシデントの際キャッチャーがいなくなり詰んでしまう。そのため実質「嶺井をそのまま送る」もしくは「代打ウィーランド」のどちらかしかない状態であり、実行するかどうかはさておき、機は熟していたと言える。
*25 この四球で広島戦における10打席連続出塁を記録。ちなみにサヨナラ打を放ったのは、上記でネタにされた倉本である。
*26 広島戦3本、中日戦1本。
*27 2020年に井上広大が入団するまで阪神のどの野手よりも多かった。
*28 この試合では自身8年ぶりとなる完封勝利を記録。
*29 試合前にDHを放棄し6番・投手でスタメン出場。打者では5打数3安打1打点、投手としても7回4安打1失点で勝利投手という活躍だった。
*30 「1番・投手」自体1971年8月22日の外山義明(ヤクルト)以来であった。
*31 NPB史上初、MLBでも前例なし。
*32 ちなみにMLB時代の通算打率は.100であった。
*33 三振記録を更新している間、TBS「サンデーモーニング」に「今日のドミンゴ」というコーナーがあった。
*34 ただ、俊足だったためセーフティバントや内野安打を度々決めていた。