アダム・ダン率

Last-modified: 2024-04-19 (金) 13:45:03

2001~14年にMLBでプレーしたアダム・ダンの、彼自身の打撃スタイルらしさを表す指標。

(本塁打+四球+三振)/打席

※四球に敬遠は含まない。100倍でパーセント表記。

で表される。

概要

ダンはMLBで5年連続40本塁打を放つなど長打力に定評のある一方、低打率に加え極端に多い三振及び四球という特徴を備えていた。

通算成績は14年間で462本塁打、2379三振*1、1317四球。当たれば高確率で本塁打になるものの、ミート力は低いため三振も多いことで知られる。2012年は特にハイペースで三振を重ね、最終戦を前にMLBシーズン最多記録(223個)まであと1と迫ったため、チームの計らいで出場を回避している。一方で常に厳しいコースを攻められつつも高い選球眼を備えているため四球も多く、100四球を8度、リーグ最多四球を2度記録。出塁率を買われて1番で出場した経験もある。

本指標はそんな彼らしさを表すものとして考案された。

あくまでアダム・ダン率は「アダム・ダンらしさ」のみを計算する指標であり、数値の大小で選手の優劣がつけられる訳ではないため注意が必要である。ただし以下に述べるように、まったく無意味というわけでもない。

セイバーメトリクスにおけるアダム・ダン率

「本塁打・四球・三振は、他の打撃結果と比べて運の影響を受けにくい」という研究結果に基づき、TTO率Three True Outcomes Percentage / 「3つの純粋な打撃結果」率)という名で同様の指標が用いられている。
元々はアメリカの野球ファンがロブ・ディアーを称賛するために1990年代中頃に考えた一種のジョーク指標だったらしい。この記事によればディアーはMLBで90年代最高となるTTO率(アダム・ダン率)53.6%を残している。

BABIPの存在

関連の深い指標としてBABIP*2が挙げられる。フェアグラウンドに飛んだ打球がヒットになるかアウトになるかは運の要素が大きく関わると考えられており、一般的には打数を重ねれば本指標は3割付近に収まることで知られることから、著しく高い/低い場合は打者目線では運が良い/悪い状態であり以降の成績の回帰が予想される*3

上記に対し「逆に運がほとんど影響しない打撃成績の要素とは何か?」という疑問が生じ、これに応える指標として提唱されたのがTTO率である。TTO率の高い(=本塁打・四球・三振が多く、インプレーの打球とならずに打席を終えることの多い)選手は、打撃成績が運に影響されにくく毎年同じ程度の結果が期待できる。以上より、MLBではチーム編成や成績予想などでTTO率が活用されている。


計算例

アダム・ダン

表中の太字リーグ最高。(アダム・ダン率は対象外)

シーズン所属打席本塁打四球三振アダム・ダン率
通算83284621317237949.9%
2001CIN28619387445.8%
20026762612817047.9%
2003469277412648.4%
20046814610819551.2%
20056714011416848.0%
20066834011219450.7%
20076324010116548.4%
2008CIN6514012216450.1%
ARI
2009WSH6683811617749.6%
2010648387719948.5%
2011CWS4961175*417753.0%
201264941105222*556.7%
2013607347618949.3%
2014CWS511227115949.3%
OAK

上記の通り、通算49.9%、シーズン最高は2012年の56.7%。

主な記録保持者

ジョーイ・ギャロ (MLBシーズン最高記録) ソース

シーズン所属打席本塁打四球三振アダム・ダン率
2021TEX6163811121358.8%
NYY

ヤンキース時代に限ると60.5%。当該シーズンは長打(52本)>単打(47本)で、打率は1割代(.199)。
2019年にMLB史上初の通算単打100本より先に100本塁打を達成するという珍記録を樹立。
彼を発祥とした「ギャロ率」なる指標も存在する。

ミゲル・サノ (短縮年を含めたMLBシーズン最高記録) ソース

シーズン所属打席本塁打四球三振アダム・ダン率
2020MIN20513189059.0%

60試合制。例年の162試合制に換算するとMLB歴代最多を更新する243三振に相当する。

ラルフ・ブライアント (NPBシーズン最高記録 ※2014年開幕時点) ソース:5(2)chスレ

シーズン所属打席本塁打四球三振アダム・ダン率
1990近鉄461294119858.1%


近年の特筆人物

細川成也

シーズン所属打席本塁打四球三振アダム・ダン率
2017DeNA62*631100%

ルーキーイヤー。打席数こそ少ないものの驚異のアダム・ダン率100%を記録。
同年は2軍でイースタンリーグ最多の182三振を喫した。


丸佳浩

シーズン所属打席本塁打四球三振アダム・ダン率
2018広島56639*713013052.8%

春先に1ヵ月程離脱したうえでの記録。四球は歴代4位タイ*8
同年を含めシーズン最多四球3回、最多三振2回を記録。
この手の打者にしては珍しく打率が高く、この年は.306を記録している。

カイル・シュワーバー

シーズン所属打席本塁打四球三振アダム・ダン率
2023PHI72047126215*953.9%

MLB史上初の打率1割台*10でシーズン40本塁打を達成。シーズン途中にも打率1割台のリードオフマン*11単打よりも多い本塁打*12逆イチロー*13等でWBC決勝戦にてダルビッシュからホームランを打ったことで注目もあった選手*14であったことも手伝い海を越えた日本にも定期的にネタをもたらした。


関連指標

DIPS

投手版アダム・ダン率とも言うべき概念(複数の指標の総称)。野手の守備力を排除した(奪)三振、(与)四死球、(被)本塁打を用いて求められる。
指標の例としてFIP(Fielding Independent Pitching)等が存在する。計算式は複雑なため各自検索されたし。

関連項目


*1 MLB歴代3位。
*2 Batting Average on Balls In Play / インプレーとなった打球がセーフになる確率のこと。
*3 ただし完全に運のみで左右される指標でもなく、キャリアを通して高い値を記録し続ける打者も存在する。
*4 同年の安打数(66本)より多い。
*5 アメリカンリーグ歴代最多、MLB歴代2位。
*6 このうち1本は中日の笠原祥太郎から放ったプロ初打席本塁打。なお、2022年の現役ドラフトで細川が中日に、笠原がDeNAに指名されて因縁ある2人が相手球団に移籍することになった。
*7 セ・リーグ2位。
*8 シーズン記録トップ10は本例と2001年の金本知憲(6位)を除き全て王貞治
*9 MLB史上5位。
*10 シーズン打率は.197。当然ながらナ・リーグの規定打席到達者の中ではワースト打率。
*11 打率に比べ出塁率は.343と優秀。四球と三振が多すぎるため安打や進塁打と言った打線に必要な機能が求めにくいこと、またチームでシュワーバー以上に出塁率が稼げる野手がほぼいなかったことなどが理由で殆どのスタメン出場試合で1番で起用されていた。
*12 40本塁打到達時点で単打は39本で本塁打の方が多かった。最終的には単打48本、本塁打47本で惜しくも単打の方が多かった。
*13 低打率で大量の三振と四球と本塁打、守備難の左翼手とイチローと真逆の要素を集めていたためアメリカの記者によって比較記事が出された。かつてはアダム・ダンも逆イチローとして比較されていた。なお、比較されていたのはこの年のシュワーバーの成績と2007年のイチローの成績であるがOPSはほぼ同値である
*14 ちなみにWBCの成績も14打数3安打で打率.214ながら出塁率.450、OPS1.093とらしさ全開であった。
*15 2011年は規定打席未到達で打率.156、11本塁打と凄惨な成績だった。