アダム・ダン率

Last-modified: 2022-05-06 (金) 15:44:22

打席あたりの本塁打・四球・三振の割合のこと。計算式は

(本塁打+四球+三振)/打席

である。数字を100倍してパーセントで表すこともある。
なお、ここでいう四球に敬遠四球は含まない。


概要

アダム・ダンは優れた長打力を武器にシカゴホワイトソックスなどで活躍し、当たれば高確率で本塁打になるが、異常なまでに多い三振及び四球数、そして低打率という極端な特徴を持っていた。アダム・ダン率はアダム・ダンらしさを表す指標として考案された。

誤解もされやすいが、ダンはメジャーで5年連続40本塁打を放つなど非常に優れたスラッガーである*1。三振と四球が異常に多いのも、常に厳しいコースを攻められていることに加えてダンの高い選球眼の現れでもあり、100四球を8度・リーグ最多四球を2度記録している。その為出塁率を買われて1番での出場もあった。

現役通算14年間で462本塁打・1168打点・2379三振・1317四球という成績をマーク*2。特に三振については数多くの記録を持ち、2012年にはシーズン最多三振記録(223個)更新寸前でチームの「温情」で試合に出場しなくなったこともある。

あくまでアダム・ダン率は「アダム・ダンらしさ」のみを計算する指標であり、数値の大小で選手の優劣がつけられる訳ではないため注意が必要である。ただし以下に述べるように、まったく無意味な指標というわけでもない。

セイバーメトリクスでのアダム・ダン率

セイバーメトリクスでアダム・ダン率は、「本塁打・四球・三振は、他の打撃結果と比べて運の影響を受けにくい」という研究結果に基づき、TTO率(Three True Outcomes Percentage)という名で用いられている。TTOは直訳すると「3つの純粋な打撃結果」。元々はアメリカの野球ファンがロブ・ディアーを称賛するために1990年代中頃に考えた一種のジョーク指標だったらしい。この記事によればディアーはメジャーリーグで’90年代最高となるアダム・ダン率53.6%を残している。

セイバーメトリクスで用いられる評価指標に、インプレーになった打球がセーフになる確率を表すBABIPという指標がある。このBABIPには運*3が大きく影響し、同じ選手の別の年度であっても値が大きくばらつくことが知られている。すると「逆に運がほとんど影響しない打撃成績の要素とは何か?」という疑問が生じ、これに応える指標がTTO率である。本塁打・四球・三振が多く、インプレーの打球とならずに打席が終わることの多い選手は、打撃成績が運に影響されにくく、毎年同じくらいの結果が期待できる。このことから、アメリカでは、チーム編成や成績予想などでこれが活用されている。

事実、ダンはルーキーイヤーの2001年から2010年まで0.9前後の高いOPSを記録し続けた。

関連指標

似たような評価指標として、野手の守備力を排除した投手の(奪)三振・(与)四死球・(被)本塁打で求められるDIPSがある。

2021年には、「ギャロ率」なる指標が新たに提唱された。同年のMLBオールスターのホームランダービーにて中継ゲストの林修がジョーイ・ギャロ(TEX→NYY)の「当たればホームラン」という性質に着目したものであり、「本塁打数/単打数」で求められる。
同日付での通算ギャロ率は.911。つまり10本シングルヒットを打つ間に9本ホームランを打っている計算になる。
ちなみに同ダービーに出場した大谷翔平(LAA)の同年前半戦でのギャロ率は1.179である。

計算例

アダム・ダン本人の2012年のアダム・ダン率は{(41+105+222)/649}×100=56.7%である。

同じく2012年の日本でアダム・ダン率が最も高い選手は埼玉西武ライオンズの中村剛也で、{(27+56+125)/498}×100=41.8%となっている。

このデータによると、メジャーリーグのアダム・ダン率の年間最高記録は2021年のジョーイ・ギャロで、{(38+111+213)/616}×100=58.8%(下記参照)。なお短縮シーズンでの記録も含めると、2020年のミゲル・サノが{(13+18+90)/205}×100=59.0%を記録している。この年のサノは60試合制シーズン(うち53試合出場)で90三振しており、これは例年の162試合制シーズンに換算すると243三振に相当する。

このスレによると、日本プロ野球のアダム・ダン率の年間最高記録は1990年のラルフ・ブライアント(近鉄)で、{(29+41+198)/461}×100=58.1%。

高いアダム・ダン率をマークして注目された選手

細川成也(DeNA)

ルーキーイヤーの2017年、レギュラーシーズンで6打席2本塁打3三振1四球という成績を残し、なんと驚異のアダム・ダン率100%を達成。
クライマックスシリーズでも四球と三振だけを継続し、初タイムリーを記録するまで10打席2本塁打5三振3四球で100%を維持し続けた
打席数こそ少ないものの「アダム・ダンよりアダム・ダン」と称され、現在でも「和製アダム・ダン」とのイメージが定着していることがある。
最終的には一軍アダム・ダン率は73.33%*4、二軍アダム・ダン率は53.55%*5
その後2018年以降はオフに秋山翔吾(西武)に師事して鍛え上げた結果なのか、長打率は多少落ちたものの三振率を大幅に減らし、追い込まれてからの軽打でヒットを放つというアダム・ダンとは真逆のスタイルで結果を残し、2017年終盤との別人ぶりにDeNAファンは困惑している。

丸佳浩(広島、現巨人)(2018年)

丸は三振も多いが四球もよく選ぶ打者で、シーズン最多三振2度・2017年まで3年連続で100三振以上を喫すると同時に、シーズン最多四球も2度記録していた。真骨頂が2018年であり、シーズンを通じて四球をよく選び、一時期は出塁率.500超えを記録する一方、三振もシーズン通じてコンスタントに記録。またシーズン中盤から終盤にかけては本塁打も量産し、最終盤にネフタリ・ソトに抜かれるまではホームランダービートップ争いをしていた。
結果春先1ヵ月程の離脱がありながらも歴代4位タイの130四球*6、39本塁打、130三振(リーグ1位)をマーク。アダム・ダン率にして52.8%とアダム・ダン本人に迫る勢いだった。

ジョーイ・ギャロ(TEX→NYY)

上記「ギャロ率」の項目で少し触れたジョーイ・ギャロだが、こちらも本家同様三振と四球の多さに加えて長打力が非常に高い*7
2019年には通算単打100本より先に100本塁打を達成*8するというMLB史上初の珍記録を樹立。
更に2021年シーズンは打率は僅か.199(498-99)。しかし99本の安打のうち長打が52本*9と単打より長打の方が多い。
また、111四球、213三振を記録したため、同年の出塁率は.351。アダム・ダン率は58.8%という本家アダム・ダンを上回る歴代最高の数値を叩き出した。
なお、ヤンキース時代に限ると打率はたった.160(188-30)で88三振だが、13本塁打・37四球を記録しているため、出塁率.303、アダム・ダン率はなんと6割を超えて60.5%である。
結果としてギャロは打率1割台でホームランランキングリーグトップ10入り(9位)という、まじん斬りの真骨頂とも言える成績となった。

関連項目


*1 本塁打と四球と三振が非常に多く低打率で鈍足、加えて守備指標は極めて悪いという特徴から、イチローの対極に位置する選手とも言われている。
*2 通算アダム・ダン率は.497(8368打席)。
*3 野手の守備位置はもちろん、当たり損ねがエラーだけでなくイレギュラーバウンドになることもあるが、ヒット性の打球が風で失速したり野手の正面をつくなどしてノーバウンドキャッチということもありえる。
*4 {(2+3+6)/15}×100=73.33%。
*5 {(10+34+182)/422}×100=53.55%。ちなみに182三振はイースタンリーグではダントツであり、リーグの最多三振記録となっている。
*6 当然ながらリーグ1位。なお1位から3位は全て王貞治の記録で、4位で並んだのも王の記録。春先の離脱が無ければ王の記録を超えたのではないかと言われる事もあった。
*7 ちなみに外野手としても俊足・強肩で守備範囲が広く、2020年、2021年に2年連続でゴールドグラブ賞を獲得する等守備面においても貢献できるところは本家とは正反対である。
*8 100本塁打達成時点で単打は93本。
*9 38本塁打、13二塁打、1三塁打
*10 2011年は規定打席未到達だったものの打率.156、11本塁打と凄惨な成績だった。なお相変わらず四球は選んだ(安打(66)より四球(75)の方が多い)ため出塁率は.296あった模様。