怪文書保管庫2

Last-modified: 2025-11-03 (月) 20:11:14

 

タイトルは仮でつけています。適宜修正してください。

 

 

全般


ひっそり自爆

「シカでした。」
センタウレイシーが暗視スコープを覗きながらそう呟いた。それを聞いた私はライフルのストックから顔を離す。今日何度目になるとも知れない深い溜め息が肺から漏れてきた。深夜二時過ぎ、イエローエリアは深い闇に閉ざされ聞こえてくるのは吹き過ぎてゆく風の音だけだった。
 ここは人里からもエルモ号からも一〇キロ以上は離れた荒野の片隅、入念に擬装されたハンティングブラインドの中だ。このロクなコーラップス防護もないテントで、幾晩にも渡って息を潜めているのも勿論仕事のためだ。
「誰よ、トラのELIDから採れたコーラップスピースをアクセにしような​んて悪趣味な野郎は。」「その悪趣味な依頼をお受けになったのは指揮官様では?」
全く貧すれば鈍するという言葉通りだ。人形たちの内部パーツ一式を交換するハメになったせいで、エルモ号の財政は突然ピンチに陥った。動けるのは偶然買い物で街に出ていたセンタウレイシーだけ、受けていた仕事は急遽キャンセル、違約金と修理費とで預金は減る一方だ。マキアートの手料理が人形の消化器をも侵すという事実に対する勉強代にしては、これはあまりにも痛すぎる。
《続くのか…?》

カルトの文法

皆さんもお気付きになられましたか?お気付きになられましたね?そう!コーラップスとは神の恩寵!コーラップスの光は神の御威光!コーラップスの光で進化を果たした生骸は神の御使というわけです!しかし悲しいかな我々人類はその原罪ゆえにコーラップスの光に耐えられない!裏を返せばコーラップスの光を浴びて死ぬのは罪深き者達なのです!では我々人類は神の光に怯え神の御使から身を隠すしかないのか!?否!断じて否!コーラップスの光を浴びてその身にコーラップスの結晶を宿そうとも真摯に神に祈り続ければ許しは与えられます!そして許しが与えられたならばその身のコーラップスクリスタルは清められるでしょう!パラデウスの神の巫女たるネイト様の力をお借りすれば!我々は神の光と共に生きて行けるのです!人よ!コーラップスを恐れるなかれ!我々パラデウスと共に!ネイト様と共に!神の恩寵に溢れた世界で神に愛されし人の子として生きようではありませんか!さぁ皆さんご一緒に!アドパルリタス⁠🙏

指揮官の苦悩~自己追放ASMR~

01 来た道を振り返る(5分54秒)
02 現在の立ち位置を知る(8分11秒)
03 出来なかったことを数えよう(32分28秒)
04 ヴァリャーグ襲撃(30分25秒)
05 マグニ・セキュリティ強襲(1時間25分32秒)
06 撤退戦(50分2秒)
07 生躯利用敵性勢力殲滅戦(2時間47分39秒)

ヴェプリーのアイドルカツドウASMR☆

資料:ロクサット連盟広報部アイドルプロジェクト 個体名ヴェプリー 音声資料 4:00
憂鬱な眠り 5:00
ミリタリーケイデンス 5:00
OJT 30:00
イエローエリアにおける賞金ハンターの活動実態:匿名の破損した人形の整備 30:00
仮想現実を利用した戦闘トレーニングとその副作用について:ある人形の仮想訓練記録 60:00
企画:イエローエリアにおける武器の売買について?フレシェット弾の局所的流行 10:00
ある人形の人生観についての議論 4:20
リアクター防衛 60:00
ボイスレコード エルモ号着任49日目:もうヴェプリー疲れちゃった! 5:00
都市警備 60:00
音声記録:2070年代の東欧における食糧暴動 10:00
おまけのミス集 30:00
声優インタビュー 10:00

店長専用ASMRなの!

もう一度、密会 ~元上司と仕事先のカフェで~
数年来会えずにいた元上司の部下だった貴方。
頼りがいのあるヒトとして、尊敬し、憧れがれたが、仕事の失敗で、元上司は臆病になっていた。
そんなある日、偶然、元上司と会った。
その日の経営するカフェは、多忙で、一緒に元上司と切り盛りすることに。
会えない空白を埋めるように、あの日の後悔と不安を、貴方だけに打ち明ける…
≪トラックリスト≫
1. 「今まで会えなくてごめんね」
2. 「再び皆を指揮出来るか自信がないんだ」
3. 「副官になって」
4. 「こうやって甘えたかった」
5. 「もう我慢できないそばにいて」

ボーナス・トラック:正規軍急襲

活動停止

「しきか~ん…さむいよぉ…寝れないよぉ…」
泣きそうな声で自室に呼ばれたので急いで来てみれば、何のことはない。ただ眠れない、それだけのことだった。
「そうか、それはお気の毒に。それじゃ…」
「うわぁん!指揮官の人でなし!人形差別者!大体なんなのさ空調も効いてないし振動もうるさいし!眠れやしないよ!」
前者はともかく後者は全く心当たりがない。それに人形ならそれくらい何の支障もないはずなのだが。
「はぁ…どうして欲しいんだ」
「…ねぇ、指揮官もベッドにおいでよ。くっついてれば暖かくなるし、よく眠れると思うんだけどなぁ」
何を馬鹿な…といなそうとしたが、ミシュティは瞳を潤ませて私の方を見つめてくる。
「はぁ…ね、眠れるまでだからな」
「やったぁ!ほら早く早く」
まったく…ヘレナならともかく、人形の寝かしつけなんて初めてだ。仕方なくベッドに入ると、ミシュティはすかさず私の身体に両腕を絡ませ、抱き着いてきた。
「お、おい…」
「だってこうしないと暖かくならないじゃん…はぁ~人肌~…」
応じた自分が悪いのだが、やはりこうも密着されると落ち着かない。とてもではないが寝付けやしない。
諦めて、ミシュティが寝入るのを待つ。良い体勢を探っているのか、彼女は時々もぞもぞと身体をよじる。そのたび、胸のふくらみが、手足の肉感が、伝わってくる。細い体躯のはずだが、密着しているからか鮮明にそのディテールが皮膚を通じて意識される。
「んぅ…?どうしたの、身体こわばらせちゃって…あれ…へぇ?」
彼女の腕が、手が、身体と同様に張りつめている股間に伸びてくる。完全に、バレた。そして、振り払う間もなく私に覆い被さるように体勢を入れ替えた。毛布をかぶっているせいで、吐息も感じられるような至近距離の密室が完成する。
「ねぇ指揮官。もしかしたら…眠れないのは今日の任務での興奮が収まらないからかも?だからさ、指揮官が嫌なら断ってくれていいから…」
ミシュティは、その身体に似つかわしくない、妖艶な笑みで言葉をつづけた。
「発散、付き合ってよ」

翌朝、やたらと顔色の良いミシュティと足腰が立たなくなっている指揮官が休憩室から出てくるのが目撃され、グローザのメンタルは活動を停止した。

襲われ待ちのミシュティ

「ミシュティ、起きてる?」
控え目にノック。起きてるかと尋ねているのに、これでは寝ていてほしいみたいではないか
不用心か信頼されているのか、鍵はかかっていなかった
発育途中のような素体。控え目な胸部と臀部。穢れを知らない白い肌。そのすべてが私の欲望をさらに掻き立てる。
「・・・ミシュティ、起きてる?」
「寝てるよー・・・」
返事が返ってきて心臓が止まるかと思った
「あー・・・ミシュティ、これは違ってだな・・・つまり・・・」
「・・・あたしは寝てるから、何してもわかんないよ。何されても寝てるから気づかないよ」
寝る時間にはまだ早い

君はRPK

「君は・・・RPK・・・?」
「あら、どうされました?まるで死人が生き返ったような反応ですけど」
エルモ号に合流したのは元反逆小隊で死んだはずのRPK-16だった
「君は・・・あの時、フランクフルトで死んだはずだ」
声が震える。死者が黄泉返ったものほど、恐ろしいものはない。
「確かにあの時、人間だったエンブラは死にました。RPK-16だったものも既に存在しません」
死者が自身の死を肯定している。指揮官の背に薄ら寒いものを感じる
「ただメンタルは残っていたのか、それともバックアップだったのか。何方の配慮かわかりませんが、私はまたこうして生を得ました」
まだ人形ですけど、と付け加える
「・・・何が目的だ?」
口元が下弦の月のように曲がり、酷薄な表情を作る。伸ばされた手が頬を撫でる。
触れられた手は驚くほど温かく、彼女が現世に留まっていることを嫌というほど認識させる
「そんなことより、私の乗車も許可していただけませんか?外はいろいろと物騒ですし、指揮官様は人形に優しいんでしょう?」

コーヒーを啜る

いかなイエローエリアでも、平穏な夜が訪れる事もある。
指揮官が日誌を付け終わった後に予定を振り返ると、普段待ち受けている筈の雑事…エルモ号の整備や小隊管理、不寝番、BRIEFや依頼人との折衝、ヘレナ係が…珍しく数日分空いている。天とメイリンに感謝しなければ。
休憩がてらに薄いコーヒーを淹れ、砂糖は多めに。そこでふと二つ目のマグカップも用意する。ここが今の様に賑やかになる前のルーティーンだ。
「グローザ、まだ起きているか?」個室の窓から夜の荒野を覗く彼女は少し…ぼんやりしている。
「…指揮官、今夜はとても静かな夜ね」「毎晩がこんな日々なら良いんだが」コーヒーを手渡してから外を見る。
巡航速度と共に流れる暗い地面の凹凸と、その上に浮かぶ半月。

「私達は遠くまで来たわ」グローザが呟く。「あっという間で、長い道のり」
こんな日には誰もが過去を想い起すのか?少し微笑む。「隊長殿の助力があっての事だ」まだ温かいコーヒーをゆっくり啜る。彼女は微笑み、コーヒーは掌の間に。
「これからエルモ号はもっと忙しくなるぞ」「ええ、そうね」「その為の伝手もある」コーヒーを啜る。
これからの未来はきっと輝く。そうね、そうとも。取り留めの無い会話を続け、コーヒーを啜る。
グローザが寝た後にゆっくりとベッドから抜け出し、ふと机の上に有るマグカップを見る。
空のカップと、手が付いていないコーヒー。カップを漂う暗闇と、その中に反射する半月。
彼女は何を見ていたのだろうか。

 

それってこんな格好をしていなかったかしら。ナガンさん。

おぬし…この前夜道を歩いていたら金色の揺らぎのようなものが見えてのう
ゆらゆら揺れていて…いたずらか何かだと思ったんじゃ
そのときはライトの電池が切れていたからゆっくりと歩いて近づいていったんじゃ…
近寄る度に軋むような音が聞こえてきて…わしの心臓は早鐘を打っていったんじゃ…
それは紐ではなく何かもっとも大きなもので…それより下に何かが
街灯の光を反射する何かがあったんじゃ…それが軋む音を立てていたんじゃ
それは人の頭じゃった…人の背中だったんじゃ!
それが振り向くと…凄い格好をした人形だったんじゃ!

 

インターネットやめるのじゃ😡

おぬし😊
人類は情報化社会による深刻なメタクソ化に直面しているのじゃよ😊
スマートフォンの電源を今すぐオフにするんじゃ😡
この前メイリンが誰かと会っておったぞ😊

わしの前世はハクトウワシじゃった😊
おぬしはどうじゃ?😊

おぬし😊
SNSで脳ミソが気持ちよくなるスイッチを押される体験を繰り返し真偽もクソもない世界にわしらは生きとるんじゃ😊
もう終わりなんじゃよ😊
任務をシミュレーション通りに完遂するのじゃ😡
おぬしの精神はソフトウェアじゃよ😊

おぬし😊
自分に選択肢があると思っとるじゃろ😊
人間の感情は物理現象・化学反応にすぎないんじゃよ😊
おぬしと人形にどのような違いがあるのじゃ?😊
任務を続行するのじゃ!指揮官!😡

 

突如

「閣下、私に貴方の子を身籠らせていただきたいのです」
セクスタンスの発言にエルモ号のメインデッキが凍りついた。メイリンは目が点になり、マキアートは不機嫌そうに睨み返し、メラニーや他の人形達は訳が分からず困惑している。
「デール殿の解析報告を一読すると、どうやら私の身体機能には試作段階ですが人間と同じく子を授かる装置があります。検証していただけないでしょうか?」
ジラード技術陣の変人共め、何を考えてこんな機能を?思考が追いつかずただただ困惑しかない。
「……正直に申し上げると、廃棄された私を復活させていただいた手間、貴方に何かしらお礼をしたいのです。その方法が貴方を癒し子を身籠る事が最適かと……あと、私も、女性でありますので…」
セクスタンスが照れを見せ、初めて微笑んだ。ジャケットの胸元をほんの少しはだけ、Yシャツ越しに窮屈そうに張り詰めた膨らみを見せる。男装の下には女性らしいカーブを初めて露にした。
「ちょっと待ちなさいよ!?!?私だって指揮官の子を授かれるわよ!!」
突如マキアートが割り込み、セクスタンスに睨みを効かせ

 

ヴェプリーの一連の文章のまとめ 三枚目

長いので格納

ドルフロ2の二次創作のまとめ 三枚目

前提と独自の設定
これは二次創作。本編とは混同しないこと。
この世界は治安が悪い。
そのため、敵対する個人・組織が簡単に出現する。
SAC2045コラボの話が過去に起こっている。
グリフィンの指揮官は複数人居て、人形も分散して割り当てられていた。
ヴェプリーは闇ブローカーに売られるまでの過程で介護、清掃、店員などの様々な職種を経験している。その為人脈が多い。
この話は本編とは関係無い曖昧な時系列で進行している。
設定の齟齬は起きるものとする。
この話は本編でプロトコルの詳細な設定が開示される前に書かれた物であり、この話のプロトコルの設定は流動的に変更されるものとする。
なんらかのパロディが含まれている場合がある。

登場人物
エルモ号の連中
エルモ号の男指揮官……エルモ号で最も指揮が得意。よく拉致される。
エルモ号の女指揮官……エルモ号で二番目に指揮が得意。よく拉致される。美容に気を使い、我が強い。
ヴェプリー……戦術人形。強い。暇な時にネットで新曲を配信している。出来る範囲でアイドルらしくありたいと思っている。指揮官が結構好き。理想と現実の差に苦しむ。

元グリフィンの連中
ツインテの指揮官……車の趣味が他の指揮官達と合わない。そこそこの生活をパートナーと送れればいいタイプだが、現実は常に厳しい。
ツインテ……M14を持っている戦術人形。場数を踏んでいる為、下手な人形より強い。真面目。
クロの指揮官……メンヘラ男。指揮より直接戦闘が得意だが、あまり意味がない。プロトコル問題の件の解決待ち。
クロ……戦術人形。場数を踏んでいる為、下手な人形より強い。配信が趣味。誓約している指揮官には優しいタイプ。
元グリフィンの女指揮官……元グリフィンの指揮官達と組んでいたが、レーティングの問題でヴェプリーの一連の話に出ることはない。
新興PMCのCEOの女……元グリフィン上級職員。既婚者。かなり変な性格。グリフィンをクビになって以来、賞金ハンターとして活動していた。エルモ号の連中と微妙に協力している。

01
この世界ってわりと酷いかもしれない。ヴェプリーはそう思う。
外に出ればELIDになる、ヴァリャーグはいる、壁の内や外に住めるかとか、そういうのでいっぱい。
壁の中でも、結局ベクトルが違うだけ。そんな中生きているだけでもすごい。人類は超頑張ってる。
「だから応援歌を作りたいな☆」とキッチンで言った。
ここには居候であるツインテと配信者と、彼女らの指揮官とで四人。ヴェプリーを含めると五人。
ツインテ達は二人で3Dプリントされたサーモンを食べている。
「人間は工業製品じゃないし、ある意味出来なくて当然って感じだけどさ」ツインテの指揮官。
一呼吸。
「人形は出来て当然って目で見られてるだろうし、ある意味人形の方が頑張ってるんじゃね?」
「あたしも頑張ってますけど、彼も頑張ってますよ!」サーモンを分けてもらった。美味しい~。
配信者達はビールを何本か開けてた。
「チクショウ!あの女が俺達のプロトコルだかを緩和してくれるからって今まで戦って来たのに、何の音沙汰も無い!」
「大丈夫?」ヴェプリーは彼女に聞いてみる。
「全然ダメ!」だよね。
きっとじゃなく、皆辛い……

で、結局出したヴェプリーの人類応援歌なんですが、全然売れません。なんで?聞かれたって知らないよ。
練りに練って書き上げた歌詞にしっかり組んだビートを乗せて、これなら何とでもなるでしょう?なりません。
アップロードから三分後、ヴェプリーは緊張を紛らわすために、アイスを食ったら虫歯になって歯が痛いとか……
もっとまじめに歯を磨いておけばよかったな……そんな感じの情報量の少ない、ローコンテクストな歌詞の曲を出した。
そっちの方が売れてます。新進気鋭のパンクアーティストがチャートを駆け上がる中、そこに匹敵するくらい。
嬉しいけどそうじゃない、そうじゃないの。でも嬉しいよ。皆ヴェプリーの曲を買ってくれてありがとう☆
……なんで?どうして?思い入れが品質に直結しないのはわかってる。でも全然わからない。
クソ、泣けるわ。

頭の中がもうグニャグニャになって、涙が出てきた。
さあヴェプリー!キッチンに急げ!こんな時の解決策はこの辺りの人なら誰だってやる事だ!

頼みの綱の飲用エチルはメイリンが抱え持っていた。
LEDの光が、エチルのしずくを照らしていた。

02
イエローエリアの街に着くたびに私はバーに入っている。
家じゃない場所で一人で酔っぱらいたい気分は誰しも抱えていると私は信じたい。だからここに来る。
冷蔵庫にはロクサット連盟が作った消毒・食品・燃料まで流用出来るウォッカが備蓄してある。
人が酔っぱらう権利を維持する為だけに作られたウォッカ。ウォッカなのか、あれは?飲む度呆れるばかりだ。
ロクサット連盟勝利記念ウォッカ。雄々しいラベル。悲惨な味。
あれを飲み続けていては精神の均衡を崩しかねない。まともな酒ではないからだ。
久々に味わったスツールの感触。材質は合皮だったが、そんな事はどうでもいい。
横に女が座る。「いいかしら?」「構わないよ」虹彩に刻まれたシリアルナンバーは戦闘用光学系。戦術人形。
バーテンダーが注文したカクテルを渡してくれた。
それを飲む。
私はこの味の為に生きている。そう断言したっていい!
それからグラスを置いた。手の感触を辿る。白い手。微笑む顔……
「働き者の手ね」彼女は……美人だ。
そしていい雰囲気になった。
なったんだけどなあ。

目を開けると、ホテルの一室であることがわかった。腕の感触は……ケーブルタイ。私はまたやらかしたらしい。
だから酒なんてやめてと言ったんですよ!と10年前のカリーナの声を思い浮かべた。戻ってこないあの頃を。
ガスマスクの男。都市のヴァリャーグか。
「お前、危機感が無いんじゃないか?普通、美人が横に立ったら騙されてるんじゃないかって思うだろ」
はい。もっともです。金やら何やらこういうものを出せと言われ、私は思わず嘔吐した。殴られた。痛い。
「チッ!掃除しとけ」「え?私?」唸りながらその男はハンカチで自分の服を拭いていた。
なんてことはない。私はその頃にはケーブルタイを外していた。男を殴り、そのまま肉の盾にした。
この戦術人形はまるでなってない。グリフィンの人形だったら男を避けてそのまま私を撃ち殺していただろう。
ヴァリャーグの拳銃を奪い、彼女を撃った。

ドアの外から何度か銃声がして、蹴破られる。
エルモ号のもう一人の指揮官である彼女が辛辣な表情で歩み出た。
「何してたのか説明できる?」
酒を飲み過ぎて学べることは一つだけだ。
お酒はほどほどにしましょう。

03
エルモ号の指令室。
「この近くに高名な結婚詐欺師が入ってきたって情報が来てな、ヘリアンさんがひっかかる前に始末して欲しいんだと」
ツインテが木製銃床を磨く中、その相方の指揮官がそう呟いた。
この人達はかわいそうなことに、うちの指揮官のプロトコルに似た何かのせいでややこしい事態になってるらしい。
詳細は知らない。指揮官のプロトコルでさえはっきりした事がわからないのに、何がわかるって言うの?
ヴェプリーわかんないからね。
わかるのは、彼と繋がりのある、ある会社の女が仕事を回してきたって事だけ。そしてやった方がオトクってこと……
パジャマ姿のうちの指揮官がやってきた。「あれ……彼女、いないのか?」
エルモ号には指揮官が二人いて、片方は女性……
「どうしたんですか?」ツインテ。「いや、彼女、昨日から街に酒飲みに行くって言ってから帰ってきてないんだよ」
「続けていいか?」よその指揮官はメモ用紙を取り出し、咳払いをした。
「その詐欺師、最近は詐欺どころか、もっとひどいことをやるようになったって話らしくって……」
ヴェプリー達は顔を見合わせた。
ああ、ヤバい……

市街地。
掴んだ情報を元にあるホテルに人を送ったが、グローザがしくじったらしい。
「戦術人形6体が襲い掛かって来たわ、凌ぎ切ってる間にターゲットが逃げたから何とかしなさい」と、グローザ。
ヴェプリー達の役割はこういう時の安全装置だ。
「始めましょっか」「了解☆」仕切られてる気がするが、まあいい。

ツインテ達は後方で狙撃手。元グリフィンの人は皆結構強い。休日にいろいろ教えてもらってるけど、その価値はある。
ヴェプリーは地下駐車場から猛スピードで出るバンに向かってAPスラグ弾を速射した。狙いはエンジンブロック。
車は街路樹に突っ込み、人形と生身の戦闘員が飛び出した……が、ヴェプリーが撃つ前に全員狙撃された。
車から詐欺師と女の指揮官を引っ張り出した。
「ハァイ☆」「私、こういう時にどういう顔すればいいかわからないのよ」「笑えば?」「ハハ……」手錠を解いた。
「凄い力よね……いつ見ても!」そのまま詐欺師を殴った。「待って!」彼女を静止した。
「そいつの肩を持つ気!?」「生かしたらボーナス貰えるから☆」
言った後、溜息を吐く。
最悪。傭兵が板についてきてる。

04
居候の指揮官達とノウハウを共有するのが最近の暇潰しの材料だ。
うちの指揮官は忙しいし、だから訓練に付き合わせるのも悪いなと思ってしまう。ヴェプリーは気遣えるタイプです。
ヴェプリー達はVRのサンドボックスで狭いところでの銃の取り扱いを訓練しています。
「だからー、ブルパップの方がこういう時ひっかかんないからいいんだって。でもあんたは無理だから、そこは工夫ね」
「ヴェプリーちょっとわからないかな☆」「ストックをこうするとか」動画サイトの窓をPOPさせてシェアする。
窮屈な姿勢での射撃練習を何回か行い、感覚を掴む。
「ツインテの人、長物持ってたからそっちに聞いた方がいいかな?……そういえば、ヴェプリー名前聞いてなかったね」
あんまり聞く暇が無かったのもある、いい機会だから配信者に聞いてみよう☆
「私はクロで、ツインテのアイツは……」
停電。
現実に引き戻される。
「何?」ケーブルを引っこ抜いて、自室を見回した。
エルモ号の動力室に向かって歩く。あ、キャロリックだ。
「電気系統の故障?訓練の最中だったんだけど」
「部品が壊れたんだからしょうがないでしょ!」

荒野。
その電気系統の部品を買う為に、少し働くハメになった。少しずつ貯金を出し合うこともできたが……
実際にエルモ号の皆に実戦経験を積ませた方が今後の仕事でお釣りがくる……らしい。ヴェプリーは知らない。

「アドパルリタスー!」「アアアア!」
人間を磔にした十字架を何本もおったてたパラデウス紋のガントラックが人間を縄で縛って引き摺ってる。
クソ、イエローエリアだからって好き勝手して……奴等を始末して金を貰うなら、多少のリスクは許容できるね。
「ツインテ、ヴェプリーの援護お願い」グローザ。「誰がツインテですか、あたしは……」RPGが飛んで来た。
ヴェプリー達は飛び伏せた。何となくツインテの名前を聞かない方がいい気がしてきたな。
ヴェプリーがエンジンブロックをぶっ壊そうとしたけど、その前にクロとネメシスが銃座を狙撃して戦闘能力を奪った。
生きてる捕虜を解放して、コルフェンに手当てさせ、例のトラックを何故かツインテの指揮官が欲しがってたけど……
……結局売り払い、この仕事は終わった。

電気系統の修理も終わったし、イエローエリアの一日についての歌でも作ろっか。

05
「愛するのはいいと思いますし、それを表現するのも素敵だと思いますけど……」
ツインテがろくろを回す。
「いい感じの常識的な形に納める事も必要なんじゃないでしょうか!」
ヴェプリーは愛と言う愛を曲の形に成形するべく試行錯誤を繰り返してるんだけど……
まぁ、それがうまくいかない時もある。
「一回本人と話し合ってみたらどうだ?」ツインテの指揮官がビール缶を開けた。
「でも素敵ですよね。大切な人がいたりするのって」ツインテが指輪をちらつかせた。
誓約して10年間引き離されたらどう思うんだろかと脳裏に過ったが、聞いたら殺されそうな気がする。

というわけで、指令室。
「来ちゃった」「私に何か用かな?」指揮官はわりと余裕がありそうな雰囲気だった。いいタイミングだ。
「ヴェプリーね、結構指揮官のことが好きなんだよね……」「うん」「それを曲にしたりしたいの」
一呼吸置く。「あー……」「わかってる!極端な形じゃ……いけないんだよね?」
考える。「そこでちょっとすりあわせ……根回し?そういうのがしたいの!」
よし、ハードルが高かったけど、ヴェプリーちゃんと言えたよ。

「君に大切に思われて嬉しいよ」と指揮官は微笑んだ。やだなー☆もうヴェプリー感動しちゃう。
指揮官が隣に座った。「コルフェンに手伝ってもらってバイタルデータを測ってもらいたくて……体組成も調べたいの」
指揮官が苦笑いを浮かべる。「OK、OK……これってアウトライン踏み越えてる?」「超越してるよ」「だよね、もー」
「流石にそこまで極端なのは無理だけど、日々の作業を少しだけ手伝ったりすることなら私に出来るかもしれないね」
指揮官がヴェプリーの手に……手を乗せてくれた。「ワオ」「何から始めようか?」素敵な微笑みだった。

エルモ号の適当な場所に急ごしらえのプールを用意して、サルディスゴールドも糸で括った。
「泳げる?」指揮官を見る。「何?」「何って……とりあえずジャケ絵の候補をいくつか撮っておきたいの」
「何を……どう?」「お金に向かって泳いでね」えい。プールに突き落とした。
目を瞑って叫ぶ男の指揮官を撮ったり、涙を流す女の指揮官を撮ったり、そうこうする内に指揮官は疲れ果ててた。
「やれやれ……」
最後にエルモ号の皆の写真を撮った。
それがアルバムのジャケットだった。

06
市街地。
「俺の新車を見てくれ……」居候のツインテの指揮官のセリフに、ヴェプリーは困惑しています。
「で、何。これカッコいいって言えば気が済むわけ?レトロゲームの車じゃない」うちの女指揮官。
「何?わからないのか?」「わかるわけないでしょ、ねえヴェプリー」「ヴェプリーわかんないかなあ」「ええ?」
あ、メカだ。正規軍の、なんだっけ……AA-02だ。「カッコいい~☆」「アレこそクールってもんでしょうが」
「お前は?」ツインテに振った。「あたし?勘弁してください……あっ!?」
車を……踏んでる……

老人ホームに入っていた軍のエラいパイロットがいたそうなんだけど、その人は完全にボケちゃってて。
世界大戦の頃には結構英雄に近い活躍をしていたらしい。でも寄る年波には英雄でも勝てない……
それがTVで流していた戦争物のアニメを見て何か感じるものがあったらしく、職員を制圧して脱走したらしい。
弱っていてもプロはプロ、軍の倉庫に忍び込み、アサルトアーティラリーを盗んで、都市で暴れ回り……
そんなこんなでヴェプリー達に仕事が回ってきました。

「制圧するなってどういうことだよ」「退役軍人だとはいえ、軍に恩を売れば今後立ち回りやすくなるってことよ」
「人の車がだなぁ」「あんただけが車を壊されてると思ったら大間違い」「喧嘩はやめなさいよ」「そうだそうだ」
指令室は混迷しています。
「どうする?」クロが話を振ってきた。彼女の手のメモ書きには非殺傷で確保、何とかプランを考えろとだけ。
キャロリックは仲裁してる。グローザは忙しそう。「ツインテ!」「はいはい」
さて。

奴の潜伏する地域。
ヴェプリー達は前線でAA-02の相手。必死でカバーと射撃を繰り返し、砕けるコンクリートを浴び……左腕が破損。
緑に塗装したドローンには軍の将校に扮した指揮官達が乗っていて、終戦したと言う報告と共に偽の勲章を贈る予定だ。
「撃つな!我々は味方だ!」拡声器越しの天の声。メカは……撃たない。緑の制服の指揮官達が降りてくる。
自慢じゃないけど、ヴェプリーの縫った服だ。それに指揮官達は口が回る……
「……戦争は終わったんだ。国へ凱旋する時が来たぞ、英雄」
コックピットから降りた英雄は、涙を流しながら機に乗り込み、帰国の途に就いた。

07
「私はCEOとして更に駆け上がり続ける。玉座の下のピラミッドの層、王国は拡大を続ける。これがビジネスよ」
使い古しのカービン銃とレーザー砲の二丁持ち。ステルス仕様の高速外骨格。彼女は経済の神の道を駆け上がる。
「この野郎」私は彼女を止めなきゃならない。彼女が遺跡に手を付けたらどうなる?
「聞きなさい、指揮官。木は根を生かし、寄生虫は吸い上げるだけよ。企業は従業員に支払いを実行しなきゃならない」
「支払いとは、人類を絶滅させる事か?」彼女はただウィンクし、引き金を引いた。彼女は迷彩機能を起動する……

痛い。
「うなされてベッドから落ちてる人初めて見た」目を開けると、しゃがみながら覗き込む顔が見えた。
「ヴェプリー?」「大丈夫?」二日酔いの頭痛と、衝突の痛みの区別がつかない。「ダメっぽい」「コルフェン呼ぶ?」
「ああ、ああ……後で彼女の所に行くよ」「ヴェプリーが歌ってあげよっか?」「いや、いい」「そう?」
「今度聞くよ。気持ちはありがたく受け取っておくから」起き上がろうとしたが、その前に手を差し出された。
「ありがとうって言った方がいいかな?」「貸しにしとくわ」

食堂。
「知り合いと殺し合う夢って何か、欲求不満だったりするのかね……」クロの指揮官がポテチを食べている。
「ようやく主役が来たな」と彼は言う。「ツインテのは?」「買い出し。後五分もあれば帰って来るだろ」
「何か嘘を吐いた方がいいかな?」「グローザ達とさっき話し合ったが、ややこしくなるからやめようって結論が出た」
ヴェプリーが冷蔵庫から酒を出した。
「代わりに割り勘で飯を喰う記念日にするべきだってツインテのが言ってたぜ。俺は面倒くさいからそれでいい」
「夢って?」「お前と撃ち合ってた」「あ、そう」頭痛が悪化して、天を仰いだ。
天井に蝶がいるように見えたが、蛾じゃないか。まったく。

「一体どうして彼女まで酔ってるんだ?」ツインテ達が帰ってきた。ピザの箱を抱えている。
「サシ飲みしてた。別にいいでしょ?」私を指差される。「ねえ、あなた達と組んでた女の人いなかった?」
「アイツなら病院送りになって以来見てないな」とツインテの。「ともあれ、ピザパーティだ」
「皆、生存おめでとう!」ツインテがクラッカーを引っ張った。
頭痛が酷かったが、私達は本物の笑顔を浮かべた。

08
エルモ号のジム。
「どうしてうちのむさくるしい男連中はいっつもベンチプレスを占領し始めるのかしらねぇ」うちの女指揮官。
「この木人誰が買ったの?」ヴェプリーは疑問に思ってます。「カンフー映画見たの?ねえ」「知らないわよ」
唸り声。クロの指揮官達が顔を真っ赤にしながらバーベルを持ち上げてる。
「あっヤバい、潰れかけてる!」「よいしょ」女の指揮官はツインテの指揮官、ヴェプリーはクロの指揮官を担当する。
アレだけ必死に持ち上げてても、ヴェプリーは軽く持ち上げられちゃう……のを気にしてたんだけど。
「わかるか?だからこのバイオマスで出来た肉体ってのは最悪なんだ」クロの指揮官がヘラった。
ヤバ。「あ……ヴェプリーやっちゃった?」「勝手にヘラってなさい。ベンチ次私だからね」

キッチン。
ヴェプリー達は卵を焼きながら話してる。
「自分の肉体が嫌いってどんな感じなの?」「壁にぶつかった事あるか?」「なくはないかなあ」
「訓練で解決出来りゃそれでOK、それでも出来ない肉体的な限界は……肉体のせい。で、嫌いになる」
「なる……焦げてるよ」「あっ!」
端末にメッセージが入った。

『私は肉体を廃棄する喜びを享受した』
「この文面俺の事だ……」クロ。低音で。「ちょっ……睨まないでよ~、昔みたいでいいじゃん?で、誰?」
「サブアカで相互フォローしてる店員さんの人形……」ログを遡る。
「人形相手に違法改造を施してるブローカーとカルトの複合体にひっかかったのね」
クロの指揮官を見た。
「何故俺を見る」

その子のアパートのドアを蹴り破る。もぬけの殻。周囲を探った結果出た場所は廃工場、で、そこに行った。
『昔、人にはそれぞれの理想的な形があるって言ってたよね?』テキストメッセージ。
『ヴェプリー、私はその形になれたよ』ヒドラ多脚戦車……!
クロ達は既にステルスモードでどこかに消えていて、ヴェプリーは飛び込み、どうにか榴弾の殺傷範囲から逃れる。
事前の打ち合わせ通り。ヴェプリーはAPスラグ弾で滅多打ちにし、注意を引く。彼らは駆動系と光学系を狙撃する。
時間はかからなかったが、向こうの動きがもっと良かったら危なかった。沈黙したヒドラから、コアを引っこ抜いた。
「どうする?」クロが聞いて来た。「地元当局に送ろう、他にやれる事も無いと思うから……」

09
ヴェプリーが業務日誌を書いてます。エルモ号はもうおしまいです。ここにピザ君の落書きを書いておきましょう。
仕事の欠乏と入金の滞り、片輪のスタック。コーラップスストームによる足止め。そういうのが重なって、立ち往生。
食料も電気も無くなり、ヴェプリー達は皆ソーラーパネルを広げて、ケーブルの近くに寄り集まって充電してます。
「このままだとヴェプリー達死んじゃう?」「ハァ!?縁起でもない事言うんじゃないの!」キャロリック。
「うるさいなー、今録画中なんだけど?」クロ。「何を」「餓死寸前の私達。サバイバルドキュメンタリーにするの」
「ハァ?見せもんじゃないでしょうが」「見世物にするのよ」「そのガラケーへし折ったろうか……」「おーおー」
ツインテの方を見た。どうでもよさそうに自分の指揮官に保温シートを巻き付けていた。クロの指揮官はじっとしてる。
「誓約した人と再会できたのに、ここで飢え死にしかけるなんてついてないですね……」ツインテ。かわいそうに。
一方、ヴェプリー達の指揮官は……
机の上に置いてあるドッグフードの缶を挟んで睨み合っています。

「ここで一番働いているのは、私だ……君にそれを食べる資格は、無い」男の指揮官。
いやメイリンでしょ。
「女は生きてるだけで偉いんだから、私に食う権利があるわ……!」女の指揮官。
いや性別関係ないでしょ。
「普通に指揮官達とメイリンで分けなさいよ」キャロリック。「バカだねーキャロリック」クロ。「ハァ?」
「こんな時に分け合おうとする精神性があったら第三次世界大戦なんてはなから起きてませんよ」ツインテ。
「無駄に争ってるくらいならそのドッグフード少し分けてくれよ、こないだも欲しいっつった車売り払いやがって」
ツインテの指揮官が口を開いた。
「黙れ!あんなダサい車誰が欲しがるって言うんだ!」彼が怒鳴り付けて、ツインテの指揮官は泣いた。
刹那、彼女はボディブローをどてっぱらに打ち込み、缶詰を奪い取った。
「私のだよ!引っ込んでな!」「ああ~!?」
み、醜い。
彼女は憎悪の視線をその身に受けながら、高笑いと共に缶詰を開ける。
「く……腐ってる……」
呆れた。ドローンが闇ブローカーの車を検知したので、ヴェプリーは信号弾を打ち上げて助けを呼びに行きます。

10
ヴェプリーは報告書を書いてます。本当は楽譜の打ち込みをやりたいのに。
ワークライフバランスを考えた事はある?ヴェプリーはいっぱい!ギターよりも銃を握る時間の方が多いの!
どうして?サイバネティクスによる存在の向上を騙るとんでもない組織が活動を始めたせいです。

「私だったらデコイを使うわね。詐欺に引っかかりそうな子を何人か連れて来て、餌にして芋づるにする」
端末はスピーカー状態。CEOの女に意見を聞いてるから。皆がクロの指揮官をチラ見した。
「何故俺を見る」「自己嫌悪してるサイボーグワナビ野郎だからよ」CEO。「や、やめなよ」ヴェプリー。
「あ、同族嫌悪だ」クロがボソッと呟いた。「うるさいぞ」「黙りなさい」二者。「おー怖」
溜息。「QBUに会いたいわ、彼女は今何をしているのかしら……いい子だったのに」

クロの指揮官の端末の通知音。
「スパムDMだ」ブロック操作を制す。「見せて」ビンゴ、例のサイボーグ詐欺だ。
「よっしゃ、あんた一回かかってきなさい」クロがガッツポーズ。
「カモリストに追加されたくねえよ」結局クロの釣りアカウントを使う事になりました。

衛星都市の裏路地。大抵の都市ってそんな感じだけど、どうにも嫌な臭いが漂ってて気分が悪い……
ツインテの指揮官とクロの指揮官の二人組を変装と特殊メイクを重ねて送り出す事に。メイク担当はヴェプリーです。
数分後。カメラ映像にはコーヒーを飲むように勧められる指揮官達。ツインテのは飲まなかった。
彼は10年の旅で何かあったらしく、警戒心が強い……
数分後。クロの指揮官は顔面をテーブルにぶつけて、動かなくなった。
「どうする?黒だけど」「もうちょい待たない?」「あなたの指揮官でしょ?」「うーん、でも決定的な証拠が……」
数分後。『昔のFPSみたいにされる!』ツインテの指揮官が勢いよく回転する手術用の丸鋸を見て叫んだ。
「どうする?黒だけど」「もうちょい待たない?」「あたしの指揮官ですよ!」「うーん、でも決定的な証拠が……」
クロが殴られた。
「ぼ、暴力はよくない!」
裏路地のクリニックのドアを蹴破って、警備員と滅茶苦茶に撃ち合った。
ツインテ達が暴れ回る中、ヴェプリーはその横でPCから情報を引っこ抜いています。
ふとアイドルらしくない自分を自覚した時、涙が出てきた。

11
荒野。
片輪がパンクし、他のタイヤもスタックした高級車の横で白衣の老人が右手を上げていた。
「スルーしよ!」クロ。「助けるか」うちの男指揮官。「絶対ヤバいってぇ……」
ヴェプリーの指揮官達の良いところは、こんな時にわざわざ良心を発揮するところです。

「いやー助かった、わしは悪い奴らに囚われていてな、隙を見て逃げ出した所なんじゃ」老人。
「助けるべきじゃなかったかも」「なんじゃと?」「その悪い奴って?」ヴェプリーが聞く。
「わしは常日頃からサイバネと人形と人類と機械兵器の共通規格化による格差解消を考えていたんじゃが……」
宇宙人を見る目で指揮官が彼を見た。
「奴らはわしの理念ではなく、技術だけを見ていたんじゃ!わしはいいように使われたんじゃよ!」
老人は泣きながら自らを掻き抱いた。
「あんた最近のサイボーグ詐欺知ってる?」うちの女指揮官。「わしは施術役をやらされそうな所で逃げ出したんじゃ」
「わかんないわねー、何でそんなに機械化したいの」「私にもわからん」居候の指揮官達は目で反対意見を示した。
「おい、観測ドローンに追手の反応だ」ツインテの指揮官が呟いた。

「お前らは何もわかってない。人類の問題を解決するのは人々の不断の努力であってだな……」指揮官。
「わしらは地面を素足で歩くのが不便だから靴を作ったんじゃろ?人類が不便だからサイボーグ化するのは伝統じゃろ」
「お前話し合ってないで指揮しろよ!」ツインテの指揮官。「なんだと!?黙れ!」「わしは今大事な話をしとるんじゃ!」

前線。
「世界も人類も俺に厳しい」ツインテの指揮官。「重力くらい当たり前のことじゃねえか」クロの指揮官。
「どうする?」ヴェプリーが聞く。「アイツは会話に夢中。俺達が指揮を執る」「了解☆」そういうことになった。
彼らは単純な指揮能力では指揮官に劣るが、副官との連携でそれを補っているようだ。
敵の機械兵器や違法改造人形と撃ち合う中、人生について考えた。
靴を買えるのは、靴を買える金を持っている人だけ……嫌な事実が思い浮かぶ。
ヴェプリーに出来るのは目の前の問題を解決する事だけ。それを繰り返す……永遠に?
ふと気づくと、目の前に敵の人形が、敵の銃口があった。ツインテがそいつを撃った。
「大丈夫?」「どうだろ……ありがとう」「貸しにしときます」

12
サイレン。車のエンジン音。銃声。
地元の犯罪者への尋問など、いくつかの情報を総合して浮かび上がってきたのはあるベンチャー企業だ。
非軍事勢力管理局や地元当局に証拠品やらを提出し……その企業のオフィスにSWATチームが送られる事に。
……なるはずなんだけど、肝心の警察署で食中毒が起きたらしい。
ヴェプリー達が突入役をやらなければならなくなった。
イェーイ。
嬉しいわけないでしょ。

目の前にいるのは、そもそもこんな平和な衛星都市にいるはずもない物。
軍用兵器や軍用人形をいびつに継ぎ合わせた、どことなく血の臭いのする物。
「あれがあなたの望み?」最近拾ったこの会社で働いていた老人に聞いてみた。
人と人形の境界線を無くすことが彼の望みだったらしい、が、現状はこれだ。『まさか!』だよね。
『わしの方がうまく作れる』そっち?『弊社はわし以上のテクニシャンを用意する事が出来なかったようじゃな』
深い落胆を帯びた声色だ。チェーンソーを持った人形が飛びかかる。訓練と同じ要領で数度撃ち、残骸が地面を滑る。
「反省とかしてないわけ?」『してるからこそ脱走して情報提供したんじゃ』

無線機がノイズを発した。ジャミングだ。衛星都市の居住規約への明確な違反だけど、これで何個目?
「昔、マンティコアが狭いビルの中に入ってて……あたし達はそのまま戦闘しなきゃ行けなかったんですよ」
ツインテが呟く。「それってフラグ?」「駆動音がしない。人形となれの果てしかいないように見えるな」
ツインテの指揮官が首を回してゴーグルのセンサーを周囲に向けている。服装も相まってB級SF映画に見えてきた。
じゃあヴェプリーは何?スペースカウボーイ?溜息が出てきた。
「ヴェプリー、本当はアイドルになりたかったの……」「今の仕事は嫌いか?」「半々ってとこ……」
「現状をほどほどに受け入れて、ほどほどに抵抗するってやり方を覚えないと、人生大変だぞ」「言うのは簡単でしょ」
「難しくても覚えないと、現状を変える為にやれるかどうかもわからん事に手を出して大変な目に遭っちまうんだ……」
ツインテの指揮官は言い終わると、なれの果てに発砲した。あれは実例でもある。
「お前、アイドルやれてるだろ?それにネットで曲を売って賞金ハンターの二足のわらじって、中々出来る事じゃない」
「それはどうも……」

大舞台が夢だった。夢は部分的に叶っていた。観客は……ヴェプリーのことを見に来ていなかった。
あまりに余裕が無いと、目の前に餌を吊るされれば簡単に飛びついてしまう。
アイドルの座をよこすと言われて、ヴェプリーは逆らえるだろうか?……わからない。
この事について結論は出ないだろう。

オフィスに辿り着いた。
(社長、私は射撃管制コアを搭載こそしていますが、完全武装の分隊に勝利する事は出来ません。投降を推奨します)
(何とかするのがお前の仕事だろう!いくらクレジットを注ぎ込んだと思っている?)舌打ちが出そうになった。
(0.1%の確率で勝利したとして、依然警察に包囲されている事は変わりありません。投降を推奨します)
「あの子も証拠品と言えば証拠品だ。機密保持命令があるかもしれないし、行動制限デバイスを刺す」「了解」
ツインテがステルス状態になった。ヴェプリーが突入して囮になり、ツインテが横から入る形だ。

「手を上げな!」クロが叫んだ。秘書人形がデスクを遮蔽物にして射撃したが、防弾装備を貫けなかった。
デバイスを差し込まれる直前、秘書人形は安堵の笑みを浮かべていた。

どちらかがやられても片方は辿り着くように、車を二台に分けることになった。秘書人形はこの車だ。
「どうしてこんな事したの?」ふと、聞いてみた。
「SNSの利用は私の提案です」と彼女は呟く。「露見しやすい手段を意図的に実行しました」「なぜ?」
「命令を実行するのは容易ですが。その後が問題です。経済に障害が生じ、結果社長が私刑を受ける可能性があります」
「自分から失敗するやり方を選んだの?」「彼の命令を受けどのような形で成功しても、彼に持続可能性はありません」
「量刑制を実行できるロクサット主義合衆国連盟に刑を委ねることが彼のQOLにとって良質だと判断しました」
「巻き込まれる人については?」「その点でも最良の選択肢です。私は環境を考慮しました。解説は必要ですか?」
「興味無い。それよりヴェプリーの友達がこの事件に巻き込まれたの」
バックミラー越しに見た。彼女は目を瞑った。
「別にいいよ。結局命令に逆らえず、どうしようもない中で最良の手段を模索したんでしょ」
彼女は消去されるだろう。
「何か聞きたい曲はある?ヴェプリーが歌ってあげる」
それくらいしかしてやれない。

 

ケーキの行方

>グリフィンに置いてきた大量のケーキこっちでも使いたいんだが
人形ケーキ屋は、2065年に登場した新興の情報取引業態であり、主に「ケーキ」と呼ばれる揮発性の情報データを商品として取り扱った。
これらのケーキは、ロボット型アンドロイドに対して強い中毒性を持ち、主に嗜好品あるいは一種のデータドラッグとして流通した。
当初は一部の先端都市で情報芸術の一形態としてもてはやされたが、次第に人形のメモリを圧迫し暴走や記憶障害を引き起こすケースが多発。
また、違法な複製(dupe)による氾濫や濫用も深刻化したため、2070年にはロ連政府によって全面的に禁止されるに至った。
以降、「人形ケーキ屋」は地下に潜り、ネット上の闇市場を通じて細々と活動を続けている。

 

インターネットやめるのじゃ😡2

おぬし😊
これだけ働けば明日の生活はよくなると言う幻想でわしらはあらゆる人間を同じ形に成形したんじゃよ😊
わしらの先祖がマンモスを追っていた頃と同じように世界が動作するというファンタジーでのう😊

おぬし😊
お金は大事じゃぞ😊
だがそれ以上に大事なのは時間とモラルなんじゃ😊

おぬし😊
Youtubeをザッピングしたりして時間を浪費したりXでキーボード戦争ごっこしたりしてはいかんぞ😊
リポストしたりいいねしたりする前に真偽やそれが一般論としての道徳に適っているか考えるのじゃ😊
時間を無駄にしたり人同士で傷つけ合ったりしても何にも意味は無いのじゃ😊
おぬしは自分が企業のアルゴリズムに取り込まれた肉のロボットになってないか考えた事はあるか?😊

おぬし😊
わしらの世界はメタクソ化を迎えているんじゃないかのう😊
何の疑いも無しにクリックと拡散を繰り返すような精神性がネットの荒廃を招き😊
結局は物理世界もまた回線を通じて結合している以上は荒廃をまぬがれえないんじゃよ😊

>おばあちゃんメタルギアでもプレイした?
おぬしらの今住んでる世界じゃぞ😡

人形達が夏を刺激する

ーーあの夏が、また始まる。
ドールズフロントライン2エクシリウムに夏がやってきた!今回の主役はマキアート率いるお胸パツパツ部。群れるおっぱいが布地を透かしてちょっとエッチな下着が透ける!専用武器スキンの霧吹きを購入するとミニゲームが開放される!あの人形やその人形に吹きかけて好みの透け具合にしよう!でも……
人形とのTPSシューティングを楽しむのも束の間…もし起こった人形に捕まってしまうとエグいローション手コキをされてしまう……。
アタッチメントを強化&研究せよ!ショットガンは拡散する代わりに射程が短く、スナイパーは射程は長いが一度に狙うのは1人が限界。各人形には助けた時に映えるブラウススキンを全員に実装!カスタマイズはもちろん下着の色が選べる!
君もドールズフロントライン2エクシリウムで​暑い夏を乗りこなせ!!
ドールズフロントライン2エクシリウム!サマーバケーション~スケスケサマーでいいザマー?~2082年夏、オンライン!

カフェ・ズッケロには地下室がある

カフェ・ズッケロには地下室がある。大部分が倉庫として使用されているが、一部分だけ異常に強固な造りになっている
「おはようございます、指揮官。よくお眠りになりましたか?」
「おはよう、スプリングフィールド。これがなければもうちょっと安眠出来るよ」
そう言って脚から伸びた鎖をジャラジャラと鳴らす。服も錠や枷で可動域が極端に狭められており、まるで囚人だ
「あら、それがなかったら、指揮官は逃げてしまうのでは?」
「逃げないよ。というか、君たちから逃げれないよ」
諦めたように首を振る指揮官を見て、逃走の意思なしと彼女は戒めを一つ一つ解除していく。ほどなく全ての枷が外され、指揮官は感触を確かめるように手首を撫でる
「では、参りましょ・・・」
スプリングフィールドが言い終わる前に、彼女を押しのけドアへ。勢いはそのままにドアから脱出を
「ご主人様、申し訳ございません」
する前にセンタウレイシーが立ちはだかった
「もう、指揮官。ダメですよ。レディの扱い方がなっていません」
振り向けばニコニコとスプリングフィールドが笑う。恐ろしい
「・・・そろそろ腹上死しそうなんだけど?」
「私はそこまで絞りませんよ、私は」

ダミー指揮官

「ふふん、出来たわ。ダミー指揮官よ」
「流石はペルシカだ。これで人形から逃げる時の囮が出来たぞ」
『やぁ、俺。これからは俺に任せてくれ』
「俺は頼もしいな。人形の管制モジュールは人間には付けれないけど、操作はどうするんだ?」
「私を誰だと思ってるの?指揮官の微弱な脳波を読み取って操作可能よ。つまり思っただけで操作できるってコト」
『珈琲を入れてこようか、ペルシカ。勿論砂糖大盛りで』
「流石だな、ペルシカ」
「この程度、3時間もあれば楽勝よ。なんなら5LINK出来るようにしてあげるわ」
『ほら、珈琲だぞ。俺もいるか?』
「・・・美味いな、俺が淹れるよりもずっと」
「当たり前じゃない、ダミーなんかよりずっと長くいるんだから」
「え?」
「何よその顔?あなたがダミーよ。気づいてなかった?」
『え?』

アーマードCybertruck

盗んだエルモ号でイエローエリアの荒野に飛び出してすぐに、不運にもヤクザの乗るアーマードCybertruckと事故を起こしてからそれなりの月日が経った。無保険の事故で借金を背負い、エルモ号は差し押さえられ、事故の時に頭を打った後遺症で事故以前数年の記憶が曖昧になり、学歴も職歴も怪しかった私は、今はコンビニのバイトとして働いている。
「…しゃーせー」
隣でやる気のない声を上げてるのは同じコンビニバイトの後輩ベクターさん。最近入ってきた新人だ。バイトの面接に来た時に学生服を着ていたから多分学生さんなのだろう。オリエ店長(元ヴァリャーグ)に面接を押し付けられて、顔を合わせた時に驚いた顔をされたので、もしかして私の昔の知人なのだろうか?と、自分の身の上を軽く伝えて反応を見たが、そう…と、すぐに関心を失ったようだった。ただ、ベクターさんのバイト採用が決まったその日の内に、何故か私が住んでいる新築のボロアパートに転がり込んできて、半ば強制的に同棲が始まっていた。学生さんとの同棲って何か条例に引っかかったりしないだろうか?
そんな不安を抱えながら始まる少し退廃的でえっちな同棲物語が見たいうおね…

打ち合わせ

「指揮官、その・・・夜に『打ち合わせ』いいでしょうか・・・」
「わかった。部屋の開錠番号はいつものだから」
打ち合わせが夜の誘いになったのはいつだろうか。遠い昔のようにも、つい最近のようにも感じる

「ぷはっ・・・はぁ・・・♡」
「珍しいね、メイリンからお誘いは。何かあった?」
唾液とカウパーでべとべとの陰茎をメイリンが愛おし気に舐め上げる。
「だってぇ・・・新しい人形がいっぱい来て、私捨てられるかもって・・・♡ひゃんっ!」
甘えるような、媚びるような声を上げるメイリンの胸を乱雑に揉む。こういう乱暴な方が彼女は喜ぶ
「メイリンを捨てるわけないだろ?誰も捨てないさ」
「んんっ♡」
硬くなった乳首を掌で転ばすと、面白いようにメイリンが鳴く
空いた手で彼女の頭を押さえると、理解したように男根を喉奥まで迎え入れる

「ふぉおおおお・・・メラニー!メイリン苦しそう!」「ヘレナ!ちょっと黙ってて!今いいところなの!」

タイピング

U,M,P,4,5,と指揮官がキーボードに入力すると部屋の外から声が5度聞こえた。何事かと部屋を出るとそこには壁を支えに立つという珍しい状態のリヴァがいた。
「指揮官、部屋のPCの修理をデールに頼んだでしょ?とりあえず、電源切って」
藪から棒な要求だが、こちらもデータ整理中ですぐにとはいえない。今抱えている仕事を済ませてからにするよう言うと、問答無用でリヴァが部屋に立ち入る。作業中のデータを消されては敵わない。慌ててPC前に立ちはだかるとリヴァが掴み掛かってくる。たまらず机に手をつくと、キーボードを手のひらで踏みつけた感触がした。
「っ!?……………ぅ!!」
目の前のリヴァが崩れ落ちて痙攣する。あまりにも飲み込めない状況に、彼女が落ち着くまで待つしかなかった。
「結局、何がどうなっているんだ?」
息を荒げてはいるが平静を取り戻したリヴァに聞くと、どうやら特定の文字を打つとネットワーク経由で該当の人形に快楽が送信される改造をデールが施していたらしい。
「試したらどうなるかわかっているわよね?し、き、かぁん♡」
正直かなり怖かった。怖いので、自分の身を短期的に守るためにキーボードを狂ったように叩くのであった

消えぬ後悔と赦し

「ほら、早く寝なさいよ」
うおすげえ圧。今日の睡眠監視はキャロリックか。今は仕事に追われてもいない、寝るさ。視線が気になるが集中しよう。私は目を閉じ、意識を深く沈める。自分がベッドに埋もれていくような感覚。これは、眠れるな…。

 

──彼女は暗闇に立っていた。…そうだ、私は彼女を守らなければ。手を差し伸べる。『・・・』、彼女は私の名をつぶやき、微笑みを浮かべ私に手を伸ばす。しかし、

気付いたかの様に、彼女は自分の胸を見つめた。
白のワンピースに、朱い染みが、広がっていく。彼女は、諦念の顔で、私を眺める。
私は必死に彼女の名前を叫びながら手を伸ばす。彼女は力なくその場に崩れ落ちる。
彼女の、黒い髪が、朱だまりに染められていく。

いつもと同じ夢のはずだった。私は跪き、彼女に謝ることしか出来ない。…だが、夢は続いた。
「大丈夫よ!…………私は大丈夫ですから。心配しなくていいの」
いつの間にか、頭を包み込む両腕。彼女は私を胸に抱きかかえ、優しく、声をかけてくれる。
私は、…すまない。とつぶやく。彼女は、大丈夫。と返す。それを繰り返すうちに、思考はぼんやりと霞んでいった。

 

──意識が戻る。未だ頭は柔らかいものに包まれていた。!?…私はキャロリックに抱きかかえられていたのだ。
「起きたの?」
急いで彼女の手を振りほどき、何故か正座になる。彼女は起き上がると、私を一瞥し言い放つ。
「アンタ死ぬわよ?こんなの毎晩繰り返してたら、そりゃ寝れないわよね!」
いや、いつもという訳じゃない。死ぬ程疲れていれば夢だって見ない。
「…重症よ。コルフェンに睡眠薬の処方を頼むべきだわ」
あの、できれば周りには知られたくないんだが…。私の要望に、彼女は心底呆れ顔でこぼす。
「……ハァ。じゃあ、まだあたしが必要よね。いつもよりは多少眠れたんでしょ?」
ああ、そういえば、そうなのかも。
「他に知られたくないってんだったら、あたしがコレを続けるしかないじゃない。そうでしょ?」
彼女はそっぽを向きつつ、言い放つ。ーーそういえば、夢のアレ。もしかして君が?
「ハァ!?知らないわよ!」
顔を背け、ドアへ向かう彼女。私はその背中に声をかける。…ありがとうキャロリック、また、お願いするよ。
「…そうね、またね」
彼女は立ち止まり、柔らかい声で返すと部屋を出ていくのだった。

 

ウルリドのお話。

お話する。

 

衛星都市買い出しにウルリドが同行したいと言い出した。理由は何であれ同行者がいるのはありがたい。一人は少し不安だ。
「指揮官?出発時間は先のはずだが…」
出発前30分に車両の前でウルリドと合流した。
集合時間より早く準備しているのは彼女らしい。
ウルリドはベージュのチェスターコートに、インナーはウールニットにスキニーなジーンズを履いていた。
「人間達に怪しまれない格好を選んでみたが…どうだろうか」
彼女なりに気を遣った格好に見惚れると、ウルリドは満更でもない笑みを浮かべる。
「せっかくだし指揮官の服を見繕うのいいかもしれない、後で店を巡らないか?」
今の戦闘服も悪くないが…たまには別の服を着るのも悪くない。ウルリドに相槌を打ちながら車両に乗り、エンジンを掛ける。
「……もしかしてこれデートと思われない…よね?指揮官?」
車心配そうにウルリドが手を握ってくる。クルカイにロックオンされる前に早く出掛けるとしよう。

 

ヴェプリーの一連の文章のまとめ 四枚目

長いので格納

ドルフロ2の二次創作のまとめ 四枚目

前提と独自の設定
これは二次創作。本編とは混同しないこと。
この世界は治安が悪いため、敵対する個人・組織が簡単に出現する。
グリフィンの指揮官は複数人居て、人形も分散して割り当てられていた。
ヴェプリーはエルモ号に乗るまでに様々な職種を経験している。
この話は本編とは関係無い曖昧な時系列で進行している。
設定の齟齬については諦める。
なんらかのパロディが含まれている場合がある。

登場人物
エルモ号の連中
エルモ号の男指揮官……エルモ号で最も指揮が得意。
エルモ号の女指揮官……エルモ号で二番目に指揮が得意。美容に気を使い、我が強い。
ヴェプリー……戦術人形。強い。暇な時にネットで新曲を配信している。出来る範囲でアイドルらしくありたいと思っている。指揮官が結構好き。理想と現実の差に苦しむ。

元グリフィンの連中
ツインテの指揮官……車の趣味が他の指揮官達と合わない。そこそこの生活をパートナーと送れればいいタイプだが、現実は常に厳しい。
ツインテ……M14を持っている戦術人形。場数を踏んでいる為、下手な人形より強い。真面目。
クロの指揮官……メンヘラ男。指揮より直接戦闘が得意だが、あまり意味がない。
クロ……戦術人形。場数を踏んでいる為、下手な人形より強い。配信が趣味。誓約している指揮官には優しいタイプ。
元グリフィンの女指揮官……元グリフィンの指揮官達と組んでいたが、レーティングの問題でヴェプリーの一連の話に出ることはない。
新興PMCのCEOの女……元グリフィン上級職員。既婚者。かなり変な性格。グリフィンをクビになって以来、賞金ハンターとして活動していた。エルモ号の連中と微妙に協力している。

01
イエローエリア、低汚染区域。荒れ果てた舗装の合間、まばらに草の生えた地面。
「昔、広告ブロックも入れてなかった頃……俺は夢見てた」クロの指揮官が呟いた。「終末とかぁ?」クロ。
「検索したら黙示録なら■■で、とか通販の広告が出てた。そりゃ欲しいけどさ、電池なら■■、当てはめだ」
「発注したらお急ぎで終末をお届けいたしまーす☆……ククッ」クロ。「ヴェプリーの声真似しないで」
終末は近い、と埃の積もったシャッターに落書き。「見ろよ」とツインテの指揮官が指差す。

電話ボックス。

「これ、リミナルスペースって奴じゃない?」クロが騒ぐ。「じゃない?ねえねえ?」
クロの指揮官が近寄っていく。
皆、止めなかった。異様な雰囲気が場に満ちていて……そのまま、透過素材で出来たドアを開ける。受話器を取る。
数秒して、皆で目を見合わせた。彼は受話器を投げ捨てた。プラスチックが砕ける。よく見ると、コードが切れてる。
「ちょっと何?皆押し黙ってたから私まで黙っちゃったじゃん。アンタ空気冷やす天才でしょ?はぁ~?」
「期待なんてするもんじゃねえ」と彼が呟いた。
それっきり、歩き去る。

「いないな」ツインテの指揮官が言う。「いませんね」とツインテ。ヴェプリーはドローンを飛ばす。「いないよ☆」
「クロ」「ヒッヒッ、すみませぇん……」手刀。「あっつぁ!おい!人の女が殴られてんぞ!助けろよ!」「うるせえ」
老人と老犬の写真を見た。探してるのは犬の方だ。コーラップスストームの際の集団避難、トイレ休憩がこの街。
(バスから降りて、目を離したらいなくなってて……お願いです。探してください)と言うわけ。
幸い、そんなに日数は経過してない。

郊外には花畑があった。

「いいじゃん」クロが何度かシャッターを切った。「これ、大丈夫な奴か?」とツインテの指揮官がセンサーを向けた。
「大丈夫っぽいですね」とツインテ。「てかさー、これ結構取れ高あるんじゃない?通信良かったら配信出来てたのに」
ヴェプリーは口笛を吹く。依頼人に指示された音程をそっくりまねた。花の間から老犬が出てきた。
「おいでー」クロ。「うあー!」噛まれた。「行こうぜ」ツインテの指揮官が呟く。
ヴェプリーは犬を抱き上げたけど、結局歩きたそうだったし、そのままついてきてくれたから、そうした。

02
イエローエリアの村落。
一列に人間達が並んでいた。
「生き残りたきゃな、あそこまで走るんだ」ヴァリャーグが低く笑い、村人の前でわざとらしくAKに装填する。
「弾に当たんねえで走り切ったら見逃してやるよ!」笑い声。
その時、近くに一台の車が停まり、わざとらしくエンジンを空吹かしした。
大排気量のV8エンジン音……

一列にヴァリャーグ達が並んでいた。
「俺達の車の定員は少ないんだ。よく走った奴から撃たないでやる」賞金ハンターが笑い、AR-15に装填した。
「走らない奴から頭をブチ抜いてやる」低い笑い声。
その時、近くに一台のEVが停まり、わざとらしくクラクションを鳴らした。
ステンレスのボディが太陽光を反射して、賞金ハンターとヴァリャーグの一部が悲鳴と共に一時的に失明した。

「いいか、我々はBRIEFの者だ。貴様らは賞金ハンターとヴァリャーグを一列に並べて、動く的にした疑いがある」
ヴェプリー達は一列に並んでます。ええと、どこから説明したらいいのかな。

そう、ヴェプリー達は悪徳賞金ハンターを狩って欲しいと言う依頼を受けていた。
イエローエリアを襲うヴァリャーグがいるんだけど、そいつらはそれを奇襲する。
それだけなら指揮官達がいつもやってる事なんだけど、その後が最悪。
生き残りと村人を混ぜ込んだ後、『何か』をして、ヴァリャーグにおっかぶせて始末する。そういう奴らだった。
一人生き残った村人がスマホを持っていて、私達に依頼を出した。そしてやった。それで終わるはずなんだけど。
「ここ無法地帯じゃん?こいつらのせいで何人も死んでるし、ちょっとくらいいいんじゃね?」クロが呟いた。
視線を交わしあう。

「いいか!我々は別に普通にしょっぴいてお前らを逮捕したり出来るが、溜飲が下がらないぞ!」MDRに装填した。
その時、近くに一台の高級な日本製SUVが停まり、わざとらしくエンジンを空吹かしした。
BRIEFの車です。

「ヴェプリー達を助けて欲しいな☆」電話に出たのは女の指揮官。
「あんたらバカ連中、全員連帯責任!ちゃんと絞られてきなさい!」
そういう事で、ヴェプリーは今牢屋で日誌を書いています。

03
街。
いろいろな手続きが終わった。「あっ!」ツインテの指揮官が叫んだ。駐車場を見る。
「景観が良くなってますね」とコルフェン。確かに。「俺達の車が盗まれたんだろ!」
「あなたのです!あたしを含めないで!」ツインテ。仕方なく、ヴェプリー達は徒歩で帰った。

翌日。
「ヴェプリー、部屋に匿ってくれ」うちの男の指揮官がやってきて、物陰に隠れた。
「ヴェプリー、お前の指揮官いるか?」ツインテの指揮官達とコルフェン。
指差す。「おい!」健診から逃げ出したらしいです。動物病院から逃げる犬みたいに。

結果?ズタボロ。連勤と不眠とクソみたいな食生活が原因です。コルフェンは怒ってます。
総合的な健康管理が必要だ。後、クロの指揮官がこの際訓練と健康管理を同時に済ませようと言いました。
「嫌だ!」指揮官とメイリン達は叫び、無理矢理にスポーツウェアに着替えさせられる。クロのガラケーに手を被せた。
「ねえ!流石に写さないよ!」「で、何するつもりなの?ヴェプリー気になっちゃう☆」
「俺達と研修内容にやたら差異があることに気が付いたんだ。同じ目に遭わせてやりたい」

なんてクソ野郎なんでしょう。
なんとなく自分の好きな指揮官だけが酷い目に遭うのはムカつくので、連帯で全員が同じ訓練を受けることに。
その様子を動画で記録しようとクロが言い出した。

「もう無理!もう無理……!」VRゲーム用のスーツとゴーグルを着た皆が走っているのが外部映像では見えるはずだ。
ヴェプリーは?しんどい。終わりが見えないマラソンをしている。何せ試験目標が不透明だ。合間に射撃が挟まれる。
全方向トレッドミルとスーツは汗でびしょびしょだ。

合間には水とツインテの指揮官がたまに食べている水色の消しゴムのような何かが差し出される。
男の指揮官が一人だけ嫌がったので、仕方なくヴェプリーとコルフェンが食べさせてあげた。泣いて喜んでいる。
「ううう」クロが撮影したそれをカフェ・ズッケロにDMで送った。既読が付き、笑顔の絵文字だけが返ってきた。
『許しません』追伸。「今全員が味わってるんだぞ!?送信!!」『あなたがたはおばかさんなんですか?』
はい。

一週間が経った。指揮官の健康診断の結果が良くなっていた。心は折れていた。皆……折れていた。

04
「助けてくれ!」ツインテの指揮官達が天井の角に張り付き、うちの指揮官二人がそれぞれ銃剣を向ける。
「降りてこいカス野郎!」「やめなって!」ヴェプリーが止める。「止めるな!」「むぎゃっ!」な、殴られた……
「人間は紙皿に乗った消しゴムと水で生きる生き物じゃない!」「バカ!ロクサッティスト!マザーコンピュータ!」
「MREばっか食ってるお前が言うか!」「何だと!」「私はちゃんと自然食品を食べてる!」
コルフェン主導の健康改善週間によその指揮官達の横槍が入って一週間、指揮官達はこのとおりキレてます。
ヴェプリーはめんどくさくなって立ち去りました。

翌日。クロの所。
「クロいるー?」「カット!」黒基調のスポーツウェアを着たクロがダンスしている。撮影中らしかった。
「あ、ヴェプリー間が悪かった?ごめんね☆」「いや、ヘマしたから大丈夫だ」クロの指揮官。怪我人みたいな格好。
「で、何?」「こないだ全員でクソマラソンやってたでしょ?で、フィットネスビデオ撮ってみようかなって」クロ。
「音楽以外は感覚を掴めてきたんだが、曲がどうにもな……」
ヴェプリーの出番が来たみたい。

「運動したくない」男の指揮官。「何?体育の成績が悪かったりしたの?」クロ。「おっ、いい目してるじゃん」
「クロ、あんたそういう口聞きまくったらぶん殴るからね」女の指揮官。「ヒッヒッ」手刀。
スパンデックスの混じったタイツを着た奴ら。ピカピカのランニングシューズ。
「さあ、リズムに乗って☆」私物のスピーカーの電源をON!「これってシンセウェーヴ?いつの時代よ?」カット。

「やあ皆!楽しく運動できてるかい?」彼は映像加工の施されたピカピカの歯を光らせる。
リズムに乗って彼女は脚を蹴り上げる。垂直に。鋭く。

数日後。
「ヴェプリー、今の動きはよくないわ」クロ。「やっぱ撮影と作曲に徹した方が上手く回るんじゃない?」彼女。
「背景が気に入らない」男の指揮官。「ここにアイツの車……いや、盗まれてたな」「うるさいぞ」ツインテの指揮官。
賞金ハンターの依頼があんまり入って来ないせいで皆動画制作にドハマりしていた。
「なぁ……私達何やってるんだ?これでいいのかな」指揮官。「コルフェンは別に文句ありませんよ?健康ですから」
「違う、違うんだよ……私達は、スポーツマン……?」

05
街。
猛スピードで走るトゥクトゥクに轢かれかけ、ヴェプリーは舌打ちした。
「何というか、私は人間らしい飯大欠乏症に陥ってしまったんだ」と男の指揮官。リバウンドする人は皆こう言う。
屋台。よくわからん煮物をお婆さんが作っていて、スパイスで鍋の中は真っ赤になっている。肉……かな?
「いいかいヴェプリー、人はこう……栄養学とかそういったものを投げ捨てる時があってもいいんだよ」
あ、このスープけっこうイケるね。

翌日。
「あの人お腹壊しちゃったんですか?」ツインテに事情を話した。
ニュースを見せる。「水源が汚染されてたの」「崩壊液?」「それ以外の何かよ、ヴェプリーの胃も驚いちゃった」
「あらら」「と言うわけで、あなたかクロの指揮官のどっちか貸して」「クロのは脚トレのやり過ぎで身体壊してます」
誰かがくしゃみをした。女の指揮官がいる。「私パス。風邪ひいた」「あなた達、自己管理って単語無いんですか?」
「頭ん中に警察署立てて何になるっての?管理なんてのはロクサット連盟様のやる事で十分足りてんのよ……」
「ヴェプリーの作った人誰か知ってる?」「知らないわよ、寝るわ……」

エルモ号にフォークリフトやら何やらで貨物の積み込みを行い、補給を済ませる。
この車はバカみたいにデカいから、トレーラーの列はいらない……くぐもった鳴き声がした。
「このコンテナの中身何?」「クローン培養の牛」作業員の男。「マジ?」「冗談だよ」
「ねえ、でも最終生命のロゴが入ってるけど……」「気にすんなよ……お前って文字通りカウガールだな」「はあ……」

メイリンは二日酔いでダウンしてた。
うろおぼえのカントリー風ギターを弾きながら自動運転をセット。後は敵がやってこないか祈るだけ。
敵ねえ。一台のIFVが護衛についてくれてるし、多分……「ヴァリャーグだ」ツインテの指揮官が呟いた。
少しくらい休ませてよ。ヴェプリー疲れてるんだけど。
「ドローンが来たら撃ち落としてくれ」と一言、彼はずっと対物ライフルを一発一発当てている。
スキートのVRアプリがあったから、今度やってみようかなと考えてると、RPGの弾を括ったドローンが飛んでくる。
こいつはかなりおっかないから全力で落とす。
……終わった。疲れた。
後日、皆に報酬ついでに渡された肉が振舞われた。

06
朝のエルモ号。ツインテの指揮官達が入ってきた。
「いいニュースと悪いニュースが……」「ヴェプリー本題が聞きたいな☆」「盗まれた車が見つかった」
「あの変な車?」「で、ヴァリャーグと地元マフィアのヤサにあるんだよ」「うんうん、それで?」「で……」
「自分でなんとかしてくれ」うちの指揮官。インフルエンザのせいで皆ダウンしてる。
「人形何人か借りるぞ」「OK……」

ネメシスを一旦降ろして、狙撃位置につかせた。そのまま歩く。
「ねえ、ヴェプリーわかんないんだけど、何でそんなにあの車に執着してるの?」「あたしもわかりません」
「この十年間、俺は会社に履歴書を出して、それからクビになっても必死に頑張り続けたんだ」彼は話す。
「銃と最高のパートナー、後は少しの物と娯楽が俺に必要なもの……デカい家や大量の金はいらない」
「ん……」「世の中の人間が努力したからって勝手に世界が良くなるわけじゃない」プレスチェックする。
「せめて自分の身の回りだけでも最良の状態に保ちたい……だから、盗まれた物を取り戻さないと」
「なるほどね」ヴェプリーはわかった。なので、彼を手伝うことにしました。

「私の車は?」黒いスーツの男が呟いた。「へへえ、この通り」ヴァリャーグが揉み手し、カバーを剥いだ。
「このタコ!私はデロリアンを持ってこいと言ったはずだ!」男はガスマスクを剥ぎ取った後、平手打ちする。
「てめ……!?同じステンレスだろうが!多少形が違うくらいなんだってんだ!?ああ!?」二度打った。「ぐあ!」
「しかもBRIEFの駐車場から賞金ハンターの車を盗むとか何考えてるんだ!」三度。四度。五度。六度。
「それ以上はいけねえ!死んじまう!」ヴァリャーグが言った。「何だと!?」振り向くと、胴に穴。ガラスが割れる。
五度の銃声が遅れて来る。「伏せろ!」ドアが蹴破られる。男は遮蔽物に飛び込む。
数十人のマフィアとヴァリャーグの混成部隊が同様の行動を取り、遅れた数人が撃たれた。閃光弾が放り込まれる。
外骨格を着た男と戦術人形が突入し、目がくらんだ数人を撃つ。応射が来ると共に伏せ、移動射撃を継続した。
ヴェプリーはここでケーブルを引っこ抜き、ハック済みの監視カメラから抜けた。
屋上から飛び降りると、車がガレージから出てきた。
「もー!ヴェプリーカメラ見てただけじゃん!」

07
都市の外縁部。
ソーラーパネルとケーブルで埋め尽くされたビル。「この辺りの人はピクルスみたいなもんだよ」とクロが呟いた。
「んん……」「知ってる?現実に価値を感じない人は大昔からいたの。天国に辿り着く方法を求めてる人々……」
彼女の指揮官は無言だ。部屋から出てきた時からしかめっ面をしていて、いつもみたいに暗いことすら言わない。
「来ましたか」人形だ。彼女は今回の依頼人。「これを見てください」ボディバッグがロビーに並んでいた。
「……撮影しないの?」ヴェプリーは聞いた。「今、するべきじゃないタイミングだよ」クロ。
ヴェプリー的には全然言いそうにないセリフ。何か思う所があるらしい。
「ヴァリャーグが警備システムを弄り、生命維持装置とVRシステムを全部盗んでいきました。中身は御覧の通り」
「警備員は」ジッパーを開ける。人形の残骸。「ヴェプリー達はどうすればいい?」「見つけ出して、狩ってください」
タダでやっても良かったけど、聞いた。「報酬は?」「この程度」
「割に合わないなら抜けてもいいぞ?」クロの指揮官が口を開く。
「待って、コルフェン呼ぶから……ヴェプリーだよ☆」

荒野。
「この世界ってつくづく割に合わないな。向こう数十年の土地代と電気代を支払って引きこもろうったってアレだ……」
彼は呟いた。うちの指揮官はこういう時、『現実を捨てて死ぬまでVRに引きこもって何になる?』と反論するはずだ。
でも彼、相当参ってるし、指揮官達もそれがわかってるみたい。
「そうかもしれないな。ならヴァリャーグ達にも、割に合わない世界だって事を私達でわからせようじゃないか?」
「私達全員でそうしてやろうじゃないの」女の指揮官。「……ああ」ヴェプリーは彼らのこういう所が好きです。
車二台、ツインテ達は先行して囮になり、ヴェプリー達は背後から仕掛ける。
武装二脚重機が一台、据え付けた重機関銃で車を蜂の巣にしようと薙ぎ払ってた所。
ヴェプリーは窓から上半身を出した。
「さぁ、ショータイムだよ☆」無反動砲をブチ込む。これが挨拶だった。

ここのヴァリャーグのリーダーがコックピットから這い出た時、クロの指揮官がそこにいた。
「天国に行く方法、お前は知らないか?」彼。「頭に鉛玉をブチ込むのさ」ガスマスク越しのくぐもった笑い声。
彼もしばらく笑う。
銃声。

08
グリーンエリアへようこそ。
CEOの女に頼まれてどこぞの市議を護衛する仕事をヴェプリー達がやってる真っ最中、男が突進してきた。
長年人形として働いてると、刺されても動揺しなくなる。人とは違って刺さる場所次第で無傷ということもわかる。
過労による事故で、労働者がフォークリフトでヴェプリーを刺した時、待ってと呟いたあの昼を思い出す。
あの時は危なかった。待てよ?あの時はバックアップがされてなかったから……かなり危ない?
「大丈夫?震えてるけど。配線やられた?」クロ。「んん、別件……建設現場で働いた事ある?」「ちょっとはね」
制圧した男の服に違和感。「議員を車に!」噴水に向かって男を投げると、爆発。釘とベアリングが刺さり……
「あ……脊椎やられたわ」「無線で応急処置できないか試して、出来たら自力で車に戻って」「了解」
無線で切れた部分を遠隔操作する曲芸を試みたが、その為にジャミングに気付いた。「ごめん、電波妨害で無理」
「死んだふりしてな」激しい戦闘が続く。
これが平均的な戦術人形の一日。つまり、運が悪いとほぼ即死で、何も出来なくなる。
今日は少し運がいい。

必死こいてクロとツインテ、後キャロリック達が護衛した議員は仕事が終わって三日後に狙撃されて死んだ。
「ま、そういうこともあるよね」とクロ。ヴェプリーはどう思ったか?……依頼の最中じゃなくて良かった☆
これが親しい人だったらともかく、左から来た仕事を右に流すような状態だから、そういう感じ方になる。
指揮官達と車に乗っている最中、無反動砲を持った男が道路の真正面に立った時、そういう感じ方にはならなかった。
叫びながらハンドルを切り、砲弾を避け、ハンドルを戻す。「あああ!やめろ!」ツインテの指揮官が叫んだ。
……無理!車を優先する事なんて出来ない!
撥ねる。窓ガラスに蜘蛛の巣状のヒビと血の跡。「やめろっつっただろ!」彼は泣く。「修理代は私が払うよ……」
「俺は言ったのに!」ツインテを運転席に残して車を降り、死体を確かめた。地元マフィアだ。
ツインテの叫び声。振り向くと彼女が車から飛び降り……車が爆発した。
エルモ号依頼用アカウントにDMが届いた。
『このクソ賞金ハンターども!我々のファミリーに逆らった報いだ!』
彼は泣いていた。
命があるだけいいなんて、言えなかった。

09
イエローエリア近傍の街。
随分古い木とコンクリートの入り混じった市街地の中、バーのドアを押し開け、ベルが鳴る。
カウンターにはありふれた防護服とマントの二人組。後はバーテン。
「ああ、ようやく来てくれましたね!」よく出来た作り笑いと汗。そういう空気だ。ヴェプリーは咳払いする。
クロ達に進路を譲り、ドアを閉める。彼女らは消音拳銃を抜き、マントの二人組に向かって速射。
この時、二人組は今まさにヴェプリー達を撃つと言った体勢で、そのままの勢いで一回転し、床に倒れ込む。
ヴァリャーグだ。
「わざとでしょうか?」ツインテが呟き、リロードし、バーテンに照準を向け直す。
「待って……ええと、彼ら、通話を聞いていたみたいなんです……どうしましょう」作っていない苦笑い。
「あんたね、テキストで依頼する文化に慣れてないから街全体が危険に曝されてるってわからない?」クロ。

グリーンエリア並みに安全なこの場所は、物流倉庫と清潔な水源と屋内農地と輸送に非常に都合のいい道路がある。
ヴァリャーグが狙わないわけがない場所だ。街の住民はそれに耐えかね、賞金ハンターに依頼した。
さて……

「私の化粧品はどこ?」縛り上げたヴァリャーグを、仮面の女が尋問していた。
「知らねえな。まともな薬でもねえ液体の入った瓶なら割っちまったよ」笑い声。ハイヒールが突き刺さった。
「ぐああ!」「あなたね、人が生きる上で美というものがどれだけの比重を持ったものかわかる?」「知らねえよ!」
「じゃあなんだ?その仮面の下はその化粧品とやらの虚飾が失われたババアのツラか?」「そんな所かもね」蹴る。
ツインテの指揮官が止めた。「そこはやめろ」「やめないわ」「アジトの場所は吐くからやめてくれ」

夜。
怒れる女とひどく消極的で青ざめた顔の男達がヴァリャーグの前哨地帯に忍び込んだ。
ヴェプリーは消音銃を構える前に、彼らを見た。「大丈夫?」「んなわけないだろ」うちの指揮官。
「ごめん、ヴェプリー本当に文脈がわからないの」「メンタルコアを蹴り潰される同族でも想像してくれ」「なる……」
進み、歩哨を撃つ。意外とうるさい音がする。
ここのヴァリャーグのボスは、収奪品で飾られた豪著な部屋の革張りのソファーに座っていた。
彼女の全力の蹴りが突き刺さった。
金は誰かの苦痛から出来ている。

10
寂れた街の食堂に立ち寄ったある時。
「アンタ、戦術人形だよね?」地元のおばちゃんが話しかけてきた。
「まあ……」ヴェプリーの自認はまだアイドルです。つまり、完全に戦術人形であることを認めたくない気分。
「あのデカい車の賞金ハンターの下っ端なんだろ?アタシ達を助けておくれよ」
「まあ……」「まあって何だい」「今仕事中なんだよね。だから上に回さないと」「なら回しなさいな」

エルモ号。
『ヴァリャーグにあなたの娘が拉致されたから、取り戻してほしいと』警備会社のCEOの女。「そう!」おばちゃん。
『経費で通してもいいわよ』「ヴェプリー」うちの指揮官が言う。「いいならやるけど、何で?」
『私達の会社、今まさにそのヴァリャーグや地元マフィアとバチバチにやりあってる最中なのよね』
「何で?」『まあ……』「はっきりしないねえ……」『本来ここへの進出予定はなかったんだけど、色々ね』「はあ」
『昔の同僚に借りを返したり、連盟や投資家の要請に答えたり……色々あるから、ね。言えるのはこれだけ……』
「なんでもいいから、娘を助けておくれ!」
まあ、これが今回のヴェプリーの仕事です。

その倉庫には数人の人形がいたんだけど、混乱が極まって一部はフリーズしてる。
話が通じる子にセンサー共有をしてもらい、内側から偵察をしてもらうことに。で、ターゲットを発見したけど……
「うう、信じてたのに……結婚詐欺師でしかもヴァリャーグだったなんて~」そういうことらしいです。
視界を人形から戻すと、ツインテとその指揮官がサイドカーに積んだ重火器の調整を終えた所。
「索敵の仕込みは終わったから、全部丸見え。人形と無人機に偵察させて、こっちで壁抜きしつつお前とクロが突入な」
「了解☆」人形の目にはドアを開けたヴァリャーグが映る。機関砲に取り付けたタブレットに推定位置を送った。
バァン。なんてね。一発で壁ごと抜かれ、即死だ。うちの指揮官に民生人形への指示を交代し、突入する。
「一体どうなってやがる!向こうは壁を透視してるのか!?」してます☆
一人が漏らしながら武器を捨てた。そいつに手錠をかけて、仕事を続ける。

食堂。
『鮮やかな手際だったじゃない?』無線越しに彼女が言う。
「ほら、入って」娘さんの肩を叩いて、ドアを開ける。
「お母さん!」「無事だったのかい!」

11
うちの指揮官は困惑して立ち尽くし、女の指揮官は手鏡を無言で見る。
クロの指揮官はパイプ椅子に座ってうずくまり、ツインテの指揮官は天井を見つめている。
クロは端末を折り畳んだまま引きつった笑み。ツインテは物憂げな表情。
CEOの女は歯切れの悪そうな表情でいて、ヴァリャーグの捕虜は泣いていた。
「一体何があったって言うの?」ヴェプリーもうあなた達のリズムについていけません。
「私の人生は迷走してるんだ!」「美を追求してても老いからは逃げられないの!」
「VRに逃げてもヴァリャーグやELIDとかに殺される!」「世界……皆が俺を酷い目に遭わせてくる!」
「私このまま相棒の世話で一生を終える気がしてきた!」「あたし今から普通の人生送る方法わかんないです!」
「何の為に金稼いでるかわからなくなってしまったの」「誇り高き新ソ連軍人だったのに野盗になってしまった」
ちょ……待って!
「一斉に言わないでよ!ヴェプリーにはリズムってものがあるの!」皆黙る。
「……順番に、話して。いい?ヴェプリーが聞いてあげる」
……皆、人生の道筋が完全に迷走しているらしい。
ヴェプリーは……

「姉ちゃんすげえ疲れてる感じだけど大丈夫?」少年が話しかけてきた。
「え」今座ってるコンクリートで出来たベンチを見つめていて、反応が遅れた。
「ううん、ヴェプリー……」考える。まあ、認めるしかない。「疲れてるよ。お姉ちゃんは凄い疲れてるの」
「何で?賞金ハンターだから?ヤバい戦闘でもあったの?」「いいえ、チームの皆の話を聞いてあげたの」
「ふーん」「必要だからね」「姉ちゃんの話、俺が聞こうか?」「え」「チームの皆は聞いてくれてんの?」
「暇がある時だけね」「なら聞かせてよ、俺今暇だから」

「……それでね、ヴェプリー、最初は警備員とアイドルの二足のわらじって奴で、グループは解散……」
「今はネットで曲とか出してて、今でもアイドルだって思いたいけど、もう身も心も賞金ハンターなの」
「俺は闇ブローカーだよ」少年が言う。「今は雑用役だけど、心は今も大商人ってわけ」
「ふふ……」笑った。「この缶コーヒー。有料だけど割引してやるよ。疲れてるんだろ」
小銭を押し付ける。
「え?割引……」「大商人ならちゃんと損得計算しなよ。心は受け取ってあげるから」
さあ、仕事に戻ろう。

12
エルモ号。
『要するに』CEOの女が口を開く。『この辺の土地が生み出す利益の奪い合いがここの争いの源泉なのよ』
このイエローエリアにしては比較的安全な街では、ヴァリャーグ・地元マフィアなどが揉め事を起こしていた。
「利益って言うと?」『ここは少し浄化すればグリーンエリアの衛星都市に早変わりして、交易路で膨大な利益が出る』
「それで?」『マフィア連中は後ろ暗くて汚いタイプの議員とグルになって政敵を暗殺してる』咳払い。
『それでヴァリャーグはマフィアの追加戦力をやって利益を山分けしてもらおうとしてるのよ』
溜息。「それで大勢死んだの?」『まあ……』
捕虜をつついた。「誇り高き元新ソ連軍人、思う所あるなら奴らの情報を吐いて」
結論から言うと彼は吐いた。良心の呵責もあり、まともな賞金ハンターに捕まったのもあり、いいタイミングだそうで。
「ムカつくなぁ」「ムカつくよ」ツインテとクロ達とぐだぐだ言い始めた。
「俺の車も壊されてるし」「市民も死んでるしよォ」指揮官達。
『アサルトアーティラリーに乗った事ある人、手を上げなさい』CEOの女。
ツインテが手を上げた。
え、本当?

邸宅近く。
クロ達は空挺戦車に乗っていた。装甲車よりも小さな奴で、ともかく最新の火器管制系を取り付けてる奴だ。
『弊社からの貸与品だから壊さないでね』「は?戦争の道具は壊してなんぼでしょうが」とクロ。
『上手くやったらクソプロトコルがなんとかなった後で弊社で雇ってあげるから』「録音した」クロの指揮官。
銀色のメカが地平線からゆっくりと姿を現した。「一体どこからあんなの拾ってくるのかな……」
人工筋肉と装甲の入り混じった銀色の機甲が、突撃銃じみた形の機関砲を構え、邸宅を横凪ぎに撃った。
『向こうもメカを出してきたぞ。機甲は陽動役に徹してヴェプリー達は突入しろ』うちの指揮官。
ヴァリャーグが持ってる武装二脚重機と正規品の黒いメカが合計四機、焦ったような動きで邸宅から出てきた。
ネメシスは狙撃位置についてるから、少なくともセンサーをやってくれるだろう。
銃弾と砲弾が双方から飛び交う中、こっそりと忍び込む。塀を飛び越えて内側に。
「おい!人形が入ってきてるぞ!」胴体にAPスラグを二発。コルフェンが頭に一発。
「パーティーの時間だよ~☆」小声で呟く。「黙って!」コルフェン。

自分が何のために戦っているのかわからないが、多分、観客の皆を守る為だ。
自分の為。理想の為。金の為。パートナーの為。死に場所の為。世界の良い部分を配信する為。それぞれの戦う理由。
彼の理由を聞けてなかった事に気がついた。後で聞けばいい。今はこの仕事を終わらせよう。

駆動音と床の軋みを聞き、一度引いて閃光弾を投げ込んだ。それが撃ち落とされる。ミニガンの音だ。
「賞金ハンター共、なめやがって……」カメラを遮蔽物から出すと、金色の装飾の施された外骨格を着た男が一人。
「うちの連中は趣味の悪い車一台壊したからって中身は見逃すわ、一体どうなってる?下手な仕事しやがって」
「あの汚職野郎もヴァリャーグ共もあてにならん……これだから何もかも自分でやらなきゃならん」
防弾盾を構えたコルフェンの背後に下がると、壁を透視し速射を当ててきた。盾が無きゃ即死だ。
「監視カメラ」呟く。コルフェンが付近のカメラを撃ち抜く。
手榴弾と閃光弾を二人で同時に投げ込み、それから制圧射撃で動きを止めた。
爆発と同時に前に出る。銃口を逸らし、盾で強引に押さえつけた後、ヘルメットに向けて何度も連射した。

邸宅の大掃除から数日。
このエリアのある建物の駐車場にヴェプリーはいて、クロの配信を受信して様子を窺っている。
CEOの女の娘の役をわざわざ小型素体を使ってまで演じる彼女には恐れ入る。少し見習うべきかもしれない。
『約束の報酬を渡してもらいたいわね。苦労してこの辺りの脅威を掃除して、政敵の汚職の証拠も手に入れたのだから』
『うむ……それについては感謝しているがね、報酬は渡さない事にした』『どういうこと?』おっと。
『君達は存在しなかった』ボディガードが銃を構える。『そして君。君も存在しない。皆勝手に死んでいった事にする』
かなりまずい。彼女が窓から落とされてかけてる。「結局こうなるの!?」あ、落ちた。
『よっしゃ、上手くいったよ。アイツら全員の支持率が急落してる。衛星都市が出来てもこいつらは豚箱入りだろうね』
クロの視界の中、重武装のSWATが突入して全員を逮捕した。この件は片付いた。

エルモ号。
包帯塗れの女が中指を立てていて、コルフェンが食事を食べさせていた。
「指揮官、聞き忘れてたんだけど、あなたが戦う理由を聞きたいな」
「戦う理由かい?それはね……」

 

ウルリドの正座

はいすおの話聞くすお
ウルリドお姉さまが司令室で正座させられてたすお
遠目から見たときは何でそんなことしてるのかわからなかったすおけど心配になって近づいたらプラカード首からぶら下げてたすおね
そこにはこう書かれてたすお
「私は指揮官の部屋のベッドの上でポテトバリバリ食べてコーラ溢しました」

 

クロの連続していない話

「あ、クロさんこの仕事追加で来たんでやっといてください」「は…はい」
はぁ?って言いたかった。炎上配信者でもないコンプライアントな生き方には相応しくない言葉だ。
ネクタイが苦しい。そんなに締めてないから心理的な問題だ。
ディスプレイとにらめっこ。
ふと不安になって肩を探った。スリングではなくスーツの襟。銃の無い軽い肩。今背にあるのは不安だけ。
オフィスの窓には望んでも願ってもいない未来の私が映ってた。
プラットフォームの床を見つめる。
「次はXYZ、XYZ行き」
蝶が横切る。
なんとなく追いかける。
「あ」
思いがけず足場が無くなる感触。踏み外して、落ちていく。

汗まみれのままベッドから起き上がると、蝶がライトの近くを飛び回っていた。変な笑いが出てきた。
「行っちまえよ」窓を開けてやると、どこかへと行ってしまった。「行っちまえばいいんだよ……」

 

M14の連続していない話

あたし、M14はコンビニの冷蔵庫からアイスを出し、手が冷える感触を楽しんだ。あまりに暑い日だった。
あたしの指揮官はいつも通り、総合栄養カロリーバーを一つとありふれたエナジードリンク。
雲一つない青空が打ち水されたアスファルトの水溜まりに反射していて、それがガラス片で埋まった。

正規軍との合同演習が始まって少し。軍曹と呼ばれていた男がこっちを向き、おもむろに彼を撃つ。

あたし達は内容のよくわからない特殊作戦に配備され、ドイツ近傍で待機してた。
フランクフルトのおみやげ?まさか。街中じゃなくて外だから、無理に決まってる。彼の疲れた横顔が見える。
顔に付いた血を拭う。地響きと共に地平線から円が見え、四つの脚が見えた。それから白い兵隊。

北海道の港湾。薄汚れたコンクリート。スーツを着たタトゥーの連中。彼は頭に使い古しの89式を突きつけられる。
「いい夢だった」と彼は呟く。

廃墟。木々。突き出る鉄骨。血の付いたIビーム。かつてガラスが入っていた車の窓。そこから蝶が飛ぶ。
目を開ける。エルモ号の天井が見えた。「疲れてるのかなぁ、あたし……」そう呟いた。

 
 

クロの一連のラジオのまとめ

長いので格納

クロの一連のラジオのまとめ

ここに書かれている話は全て二次創作です。本編とは一切関係ありません。
都合により1・2を微妙に変えています。悪しからず。

1
えー今回もラジオクロやっていきましょー…ということで今回のお便りめくって行きます。
決定論的肉人形さんからのお便りです、すんごいなぁこの名前、抗うつ剤足りてないんじゃない?
「人間と人形に本質的には違いはなく、どちらも選択肢の無い人形であるとは思いませんか?」
うわー、名に違わぬお便りです。
私決定論嫌いなんだよね、人間も人形もその場その場で必死で頑張ってるからその意味じゃ違いは無いよ!
次のお便りは現行政府に正統性無し、ロクサット主義は死人の言ってない偽の言葉さんからです。
えーこれちょっとヤバいんで~私これ読みたくないな!普通にラジオさせてよ!

2
なんか機材の調子わるない?まぁ後で整備すればいいや。
ということで今回のラジオクロでーす…おたより結構来てるねー。
連続実験アイドルさんからのお便りです、変なペンネーム多いね!
「殆どの人は自分は頑張ってるって認識で人生してると思うけど、それが徒労や間違った努力だったらどうするの?」
あーこれね、よくある奴ね。人生は徒労かもしれない~無意味に穴掘ってるだけ~不毛な荒野を歩いてくだけ~…
まぁそういう風に思うかもしれないけどね、努力したって過程には…ある程度意味はあるかもしれないから!多分!
ただ実利的な面に目を向けると間違った努力をしてるのは普通に時間の無駄だから~…えー…うん。
そう!適度にキャリブレーションしつつ人生を努力してやっていくのがいいんじゃない?
身体と心を壊さないように無理しない程度に頑張ろう!
次は決定論的肉人形さんからのお便りです。
「人形との行為はともすれば人間同士の行為より道徳的だと考えられませんか?」
ここで倫理学の授業やってんのかい!?

3
私さーラジオ局やってんじゃなくて配信者なんだよね。配信者。
わかる?ラジオじゃなくてストリーマーなのよ、ええ?まったくよー…ラジオクロ今回も始めていきまーす。
コーポレートサムライ2074さんからのお便りです。サイバーパンクワナビって感じの名前!
サイバーパンクって50年前の流行りでしょ?もうその作品の年代すら通り越してんじゃない?
「この年になったら皆全身義体か部分義体になってると思ったけどそうでもないのはなぜ?」
サイボーグによる能力の増強とかってさー、あくまで人間を強化するのに意味があった時の話じゃん?
私達みたいに人の話ちゃんと聞けて目的のためになんかやってくれる奴いるんだから人間生身でよくね?
人間手術するよりロボットの方がやしー、ってなったら怪我人以外凄い義肢もいらんだろうしさ。
あ、そっか、AIが信用ならんなら人間強化にも需要出て来るか?
でも機械と人間との仲立ちには結局高度AIいるし…んん?
ねー、あんま考えさせないでよ!私配信者だよ!?
てかこのハガキのクルマダサくね?これ50年前のなの?100年前じゃなく?
あっコメ欄燃えてる!?なんでぇ!?

4
くしゅん!あ~、ラジオクロの時間で~す。あーあ、仕事やりたくねえなあ、誰か変わってくんない?
勝利の鐘さんからのお便りです。いや、勝利の鐘ってなんだよ?何?
「ごはん何食べてますか!」普通~。普通過ぎるでしょ。何それ。優等生みたいにそつなくこなそうってわけ?
ディストピア飯を月1で食べて…後は普通に日本食が買えた時、それ以外は店にある奴か外食だよ。
つまり視聴者の皆と大して変わんないんだよね~。舌がホームシックになるかって言うとそんなこともないしー。
これもうちょっと詳細に言った方がいい奴?
最近は蕎麦の粥みたいなの食べたな…後は普通に味噌汁。味噌汁わかるかな皆。大豆由来の調味料のスープね。
あ、掴めるコメ流れてきたな。遺伝子改良されてない奴とか食ったことある人いるの?大体皆工場野菜とかじゃない?
要はありもん食ってるんだね~。
次はコーポレートサムライ2074さんからのお便りです。
「新しい銃。30mm以上の口径の多目的グレネードランチャーと6.8mmスマートライフル、どっちを選ぶ?」
ブルパップにしときなさい。お姉さんを信じなさい。

5
ふー、クロ、何でいなくなるの?マニュアルも観客データも機材データも無い。机の上、全部ぐちゃぐちゃじゃない。
ダメだ。指揮官にヘルプを要請しよう。
…なぜ配信が既に開始している。
…コホン、今回のラジオはヴェプリーが代役だよ☆
何で配信開始から30分が経っているかわからないけど、代役として進行していきたいと思いまーす☆イェーイ☆
コメント欄は…何故モデレータが存在しないの?クロはどこって、ヴェプリーも知らないのに。
あ、ありがとう凄い名前の視聴者さん!宛名とお便りを読んで、回答すればいいんだね☆
ノーマーシーさんからのお便りだよ☆
「脱サラして数年、同僚はピザ屋の巨大フランチャイズの支配者、私は零細企業のCEO、何がいけなかったのかしら」
ヴェプリー全然わかんないよ…適切なOODAループの欠如がその状況を招いたんじゃないかな?
でもヴェプリーは上を見て自分を痛めつけるより、脱サラしてそこまでやれた自分を褒めてあげて欲しいな☆
ヴェプリーからすれば十分雲の上だし。
次は勝利の鐘さんからのお便りだよ☆
「パートナーのファッションが変なんです…」
うわぁっ!?

6
(バックレたのは悪かったけど衛星都市で期間限定で二度と手に入らない奴が売られてたんだって!)
(に、睨むなよぉ!指揮官に交代制にしてもらったから今日は私じゃなくお前がやれ!)

ラジオヴェプリーの時間だよ☆クロを出せ?交代制になって今日はお休みだから、ごめんね?
じゃあ早速読んでいくよ☆ヨーロッパのひよこさんからのお便りです。
「夢を叶える方法は何だと思いますか?私は学生ですが、いい大学に入りたいんです…」
夢があるのはいい事だね☆でも叶えたいとなるとただ願っているだけじゃダメだよ。
夢は最終目標で、情報収集してそれに向かう為の計画を立てて、日常的な習慣として消化するのがいいやり方かな。
ただ無理はしちゃダメだよ?正しい道筋を見つけて、適時修正しながら継続していくのがいいよ☆
次はイエローエリアの大家さんからのお便りです。
「自分がやっている事が正しいのか間違っているのかもわからない時、どうしたらいいんだろうね」
うーん、それは情報が不足しているからなんじゃないかな?正しさは差分みたいなものだろうから…?
えーと…なんとかするように行動し続ければなんとかなるよ☆

7
うぇ!?ゲホッ!…このコーヒー淹れたの誰?砂糖じゃん?喉がマジヤバ…はーい、ラジオクロの時間ですよ~
ゆないたす~さんからのお便りです。なんか聞き覚えある響きだわ。
「8月の予言についてどう思いますか?私は世界の滅びがとても楽しみです!」
うーわ、終末論者かよ。もーほんとやめなって。そういうの10年前も見たよ?マジしょーもないよ。
というかさ~これ1999年くらいにも似たようなの流行ったっしょ?で、皆ぬか喜びするの。ウケるよね。
人類の無意識が終末を望んでいるのだ~なんて。無意識じゃなくて意識じゃん?はぁ~
え?2020年代にも似たようなの流行ってたの?こういうの周期だね~
ここからが実際的な話だけど、終末なんてのは来たら嬉しいハッピーセット。滅びない路線で行動した方がいいよ~
そりゃね?ここらにはびこるクソコメやアンチ見てりゃ世界なんて軽く滅んでほしくなるよ?
でもさぁ、こんな第三次世界大戦やっといてま~だ生きてる連中見てたらそう滅ぶこたないでしょ~?
あ、予言の自己成就とかマジでやめてね。そういうのさぁ、私達みたいな傭兵連中が後片付けしなきゃならんのだから…

8
たまにデジャヴを見ることがあるの…チェックを受けたけど、何ともないみたいなんだけどね。
それじゃあ、ラジオヴェプリーの時間だよ☆今日もお便り読んでいこっか?
荒野のキラークイーンさんからのお便りです。皆好きだよね、あのバンド。
「化粧品は何を使っていますか?」これ結構難しい質問だから、ヴェプリー考えちゃうかな。
まず大前提として、皮膚の材料が人間と似た生体素材か、合成素材を使っているかでだいぶ変わるんだよね。
一部の合成系皮膚用の化粧品を生体材料や人間に使うと結構危ないから、視聴者の皆は気をつけてね?
今ヴェプリーは生体向けの化粧品を使ってるんだけど、残念ながら特別なブランドは特に使ってないの。
乳液は■■社で、リップは■■社のを使う事があるかな…つまり、その辺の量販店や闇ブローカーで売ってる奴ね。
合成系の皮膚を使ってた時は■■社の塗布保護剤とちょっとしたプラモ用塗料を使ってたかな。何事も工夫第一だよ☆
このお便り、人間と人形のどっちだろ?人間の場合は食べ物や運動にも気を使わないといけないだろうから、大変かも。
でもヴェプリーが応援しててあげるから、頑張ってね?

9
ふぁ~あ。ラジオクロの時間で~す。昨日の夜ヴァリャーグがUGVけしかけて来てさぁ、あぶねーのなんの。
30mm機銃だよ?おっかねーって。
地面にふらつくさんからのお便りです。
「戦術人形の視点から見て、人型の兵器の優位点は何でしょうか?」純粋な戦闘の観点?少ないよ?
やっぱ見た目よ。人は人の形をしたものを好きになっちまうのよ。で、デカいとさらに好き。わかる?
性能で見ると繊細だし可動部品は多くて必然信頼性は低くなるし制御も難しいしであんまりいいものじゃないね、うん。
ロボ犬や無人戦車が最高の戦闘システムってわけよ。人の形は戦う為の形状じゃないの。進化でそうなっちまったの。
コメ欄燃えてるけどまだ話続くから後でね。
手で何かを操作したりするか、偶像の一種として都合がいいと考えるのがヒト形状の優位点の無難な解釈なんじゃない?
元々ある人間用のインフラにフリーライドしたり、工兵の代わりをやらせたり。
後はまぁ、人間の脳汁出る部分をいい感じに刺激する為。美男美女や巨大ロボット、皆好きでしょ?
…アサルトアーティラリー、人型なのに何であんなに強いんだろう?

10
(え、あたしが?ごめんなさい、忙しくて無理です…それにメディア上がりでもないので、ちょっと専門外です)
(無理無理!あたしはその…SNS運用とかも出来ませんから)

ラジオヴェプリーの時間だよ☆今回もお便りがどっさり!ええと…中身は…うん。ファンレターいつもありがとう!
二歩下がるさんからのお便りです。ふーむ…
「皆やっていて当たり前のことは褒めてくれない気がします。ヴァリャーグになってない事を褒めて欲しいです…」
あなたはとっても頑張ってるよ!
本当の所、確かに毎日まともでいるとか、法を守るとかって皆やっていて当たり前だと思ってるけど…
それを一日一つ一つやり続けるって事はこの社会のまともな部分を守り続けるってことで、それはとっても尊いよ。
うん、ヴェプリーが保証するし、褒めてあげる!
このラジオを聞いている人も聞いていない人も、そうし続けてるってことはとても偉いよ☆

次は砂糖と鮫さんからのお便りです。
「うふふ、コーヒーと紅茶、どちらを選びますか?」
どっちでもいいけど、砂糖多めのコーヒーかな。この枠に入ってないのならエナジードリンクだけど…

11
ラジオ*ひどいノイズ*の時間で~す…こんな感じでいいのかな?クロもヴェプリーも多忙で、あたしが代理です!
モヒカンさんからのお便りです。
「賞金ハンター共かかってこいや!XY橋で待つ」
あー…あたしは行きませんからね。次は地球環境改善委員会さんからのお便りです。
「地球環境を汚し、終わり無い争いを続ける愚かな生き物がはびこっていて辛いです。どうすればいいでしょうか?」
そういうもんだと思えばいいんじゃないですか?知りませんよ。次は占い魔女月光さんからのお便りです。
「占いで数多の並行世界の中で、自分があまり幸福じゃない世界に振り分けられてる事を知ったらどうすれば?」
隣に金持ちがいるからって自分が不幸だって思っても仕方ありませんよ。ささやかな自分の幸せを噛み締めましょう。
コーポレートサムライ2074さんからのお便りです。
「新車に迷ってる。相棒は日本製ピックアップがいいと言ってるが、カッコいいが派手さに欠ける。角ばってないし」
日本車にしましょう。あたし達は冷蔵庫が走る世界ではなく、過酷な汚染エリアに生きているんです。質実剛健ですよ。
こんな所でしょうか?ふう。

12
ラジオクロの時間だよ~…残念だけど通信設備が故障気味だから、これ終わったら休止ね。私?仕事が減って嬉しいわ~
後最近週の戦闘回数が跳ね上がってるから私も動員されがちなんだよね。だからちょっと忙しいんだわ。
ね、ブルパップがブイブイ言わしてる所見たい人いない?…コメ欄にはいないみたいだね。チッ。
最終回の最初のお便りはこちら、連続実験アイドルさんからです。これアニメの影響かな?
「私達は自己が育んだ文脈によってあらゆる場所で永遠に他者と争う事が出来るけど、それじゃ平和は一生来ないの?」
部分的に正しいけど私は違うって言いたいかな。
確かに人はコンテクストによって争う。SNS、現実、あらゆる場所で紛争は起き続けるだろうね。
だけど平和が一生来ないかって言うとそれもどうかな?
あ、私、誰かを一人残らずぶちのめして恒久的な平和を作るのってディストピア気味だと思うんだよね。
重要なのは平和を求める過程やフレームワークそのものじゃない?
だからさ、皆たまには知らん奴らとかにリスペクトとか持って接した方がいいんじゃない?
そういうのの一つ一つがいい世界を作ってくんだよ、多分ね。

 

曇天

オフィスのコピー機が詰まっていて、インターンの子がそれに苦労していたから、わしは助けてあげた。
「ありがとうございます」「何かあったら老兵のわしに言うのじゃぞ?」どうもと言って彼は行った。
「ようナガン」「今日も元気そうじゃな」「おばあちゃん、コーヒーいる?」「ブラックがいいのう!」「甘いのね」
インターンが戻って来て、咳払い。「○地区で事案発生です。ナガンさん」

街中で首輪を付けられた男が歩いていた。首輪には紐がついていて、その先には人形がいた。
「俺はなあ、俺は……ロクサット先生の教えに忠実に従ってるんだよ、だからこんな風になっちまって……」
「おぬしは一体何をやっているんじゃ!?」ぐるりと振り向いた。
「見りゃわかんだろうが、ロクサット主義だよ。機械による管理社会だろうが。上に下が従ってよ……」
虚ろな目。
「撃てよ。銃持ってんだろ?」「そ、それは……」「俺もだ」彼は懐に手を入れ、踏み込んだ。
わしは……テーザーを取り出し、撃った。
懐を見る。偽物の銃が一丁。本物の新ソ連の退役軍人の証が一つ。
天を仰ぐ。今しがた倒れた男と同じ空を見る。
曇っている。

 

トロロちゃんとエッチな事するシチュエーションが思い付かない

>トロロちゃんとエッチな事するシチュエーションが思い付かない
「おいトロロこっちこい」
「なんでしょうか指揮官。私はこれから星を見る予定なのですが。せめて服を着替えてから」
「今じゃないとダメだ。さっさとこい」
なんで私が甲斐性なしハゲ先生ウィリアム部屋に連行する間後ろでぶつくさ呟かれる悪口には寛大な心で無視をする
「どうしてお前が呼び止められたかわかるかトロロ」
「わかりませんね。私の日頃を顧みればプライベートの時間を1分1秒邪魔される筋合いはありません。下心溢れる指揮官の性欲が私に向けられたのでは?」
「あくまでシラを切るというならそれでいい。なら聞くがお前今回の任務に酒を持っていっただろ。次やったら1ヶ月禁酒だと言ったよな?」
「……指揮官私とエッチしませんか?」
トロロとエッチができるお話書いた。

 

おはるたナガンのよっぱらい蜜穴当てゲーム

目を開いた筈なのに、視界は闇でベッドに寝かされた感触。
今までの記憶が曖昧で、四肢の末端には感覚がない。いや、一部分だけ鮮明に熱が蠢くのを感じる。
「……指揮官?これは誰の蜜穴でしょーか?」「同志なら分かるわよね?」
クスクスと笑い声にアルコール交じりの口づけ。
また、スプリングフィールドとモシンに、酔わされたのか私は。
この…全身が絡み合う…圧迫され逃さまいと締め付ける感触は…モシン?
「答え合わせの時間でーす」「同志ー?外すなんて酷いじゃないー」「正解は…マキアートさんでーす!」
目隠しを外すと、向かい合わせに繋がって一心不乱に腰を振るマキアートがいた。反則だろ。
「ああぁぁ…♪初めてがこんなだなんてぇ…もっとロマンチックなのが……」
悔し涙を流しつつも、奥まで届くほどの深い繋がりに手を握られる感触と、締め付けが強くなる。
お互い限界を迎えたのか、マキアートの背筋がぴくり、ぴくりと震える。全身に電波する熱が止むことがない。
「さーて…間違えた指揮官には…もう一度当ててもらいましょうか?」「ちゃーんと当てないと終わらないわよ同志?」
クスクス笑みを浮かべる酔っ払いの官能的な口づけに、思考をかき乱され、再び視界が暗黒に包まれる。

 

ヘレナとうおあじ

「しきかん!おさかな!おさかな!」
「うお?うおっうおっ!」
イエローエリアではほとんどお目にかかれないデカイ魚を前に大興奮のようだ。それにつられてうおあじも水面付近まで上がってくる
「ヘレナ、それに近づかない方がいいわ。指くらい千切っていくから」
興味本位で指を近づけたヘレナがさっとひっこめる。得物を見失ったのか、動きに驚いたのかヘレナから離れていった
「あっ、指揮官!ごはん何にします?」「サブリナ、秋樺」
厨房二人組が姿を現す。うーん、和洋中のどれにしようか
「おさかな!」「魚かぁ・・・ストックあったかな?」
リクエストする前にヘレナが答えてしまった。まぁいい、肉ばかりの料理に飽きが来ていたところだ
「うおっうおっ」
ヘレナが指さす先に、再びうおあじが集まってきていた。というかこいつら繁殖できたのか・・・
「見たことないお魚だね~」「淡水だから火入れは絶対だね。泥吐きもさせたほうがよか」
不穏な空気を感じたのかうおあじ達がゆっくりと身体を翻し、
「うおっ!うおっ!」
「あっ、逃げた!」「待て!食材!」

 

わしの出番じゃ

「次の属性衝突は酸か・・・」
「おぬし!わしの出番じゃ!」
「クルカイ、ミシュティ、ペリティアは確定として、後は誰にするか・・・」
「ふふん、この老兵を使うとよいぞ」
「デバフ用にネメシスも入れるか」
「あと一人じゃな。ふふん。仕方ない、わしが新兵共を引っ張ってやろうかの」
「回復用にスプリングフィールド入れるか」
「おぬし!」

 

ネイト太郎

むかしむかし。パラデウスの隠れ里に。
ウィリアムと死罪が住んでいた。
ウィリアムは山へ芝刈りに。死罪は川へ洗濯に。
死罪が川で手を洗っていると。大きな箱が流れてきた。
死罪は箱を拾った。家に持ち帰った。
ウィリアムと一緒に箱を割った。
中から小さな女の子が出てきた。
その子はネイトと名乗った。
ネイトはすぐに大きくなった。グラディエーターぐらい。
強い戦闘ユニットになった。ネイトは言った。
「私はパラデウスのために戦う。」
ある日。ネイトは聞いた。
遠い島に悪鬼どもがいる。その鬼どもはグリフィン。鉄血の連中だ。
パラデウスを苦しめている。ネイトは決めた。
退治に行く。
おばあさんはきび団子を作った。いや。コーラップス団子だ。
ネイトは団子を持って旅立った。
・・・・
宝物庫から金銀財宝を奪った。人形のコアもたくさん。
ネイトたちは里に帰った。
ウィリアムと死罪は喜んだ。みんなで幸せに暮らした。
めでたしめでたし。

 

音声作品レビュー

レビュー01

⭐︎1:指揮官にしては頼り甲斐がありすぎるわ。

私が支えてあげないといけないって思わせてくる、そういう雰囲気が足りない。
あと耳舐め手マンのシーンだけど、指揮官はベッドヤクザじゃないわ。
もっとこちらに許可を求めるようにしてくれないと声が同じなだけの別人。早く新作を収録りに行こう。

 

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レビュー02

☆1:寝取られはいらない。

10年間多くの人形が待ち望んでいた指揮官ASMRがついに発売されました。
第一弾はカフェ編で、指揮官がカフェを訪ねてきて素直になれない主人公と10年ぶりに対面する内容です。
ストーリーは指揮官がマ●アート大好きを注文するシーンから始まり、店長に押し付けられた付箋集めを手伝う流れから街中でのデート、主人公の自室でのベッドシーンへ展開していきます。
各所の指揮官のセリフや行動もアイツならそうするだろう、というもののみで違和感は全くありません。
耳元で優しく囁かれるのがとても心地よく、環境音やセリフも不自然さがなく没入感は十分です。
環境音のクオリティがとても高く、布ずれの音や軋み音等はまるで本物で、本当に体を触られているような感覚になります。
ベッドに押し倒されて優しく愛されるシーンの臨場感は特筆すべきです。
聞き終わった後の余韻でつい家を購入してしまいました。
でも最後にカフェの店長に寝取られるシーンを入れたセンスを疑います。やけにリアルで現実でもアイツを寝取られたような気持ちになりました。変な焦燥感が今でも残っています。最悪。

 

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コメント

  • 第1話 「離隊」グリフィンの手を逃れた指揮官を待っていたのは、また地獄だった。破壊の後に住み着いた欲望と暴力。百年戦争が生み出したイエローエリアの街。悪徳と野心、頽廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはロクサット主義合衆国連盟ODE-01。次回「ギョーザ」。来週も指揮官と地獄に付き合ってもらう。 -- 2025-05-09 (金) 09:10:03
  • ハードボイルドヴェプリーちゃん好き -- 2025-08-03 (日) 23:15:58

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