原初の巫女サラキア

Last-modified: 2024-03-05 (火) 08:35:14

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】


※このページに記載されている「限界突破の証」系統以外のすべてのスキルの使用、および対応するスキルシードの獲得はできません。


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Illustrator:旧都なぎ


名前サラキア
年齢17歳
身分孤児院育ちの下女

精霊に命を捧げ、精霊を体に宿した巫女<シビュラ>と呼ばれる存在の一人。
シビュラ精霊記のSTORYは、全体的にグロ・鬱要素が多数存在します。閲覧には注意と覚悟が必要です。
舞園 星斗「そこが一番ゾクゾクするし、ピュアなお話なんだよ?」

巫女<シビュラ>

後に初代水の巫女となる、孤児院育ちの下女。
貴族達の支配下にあるティオキアの中、反乱軍の友人と共に乗り越えてきた彼女。
ある日、そんな二人が暮らす孤児院に奇妙な客人が来た事によって運命の歯車が廻り出す。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1道化師の狂気【NEW】×5
5×1
10×5
15×1


道化師の狂気【NEW】 [ABSOLUTE+]

  • 一定コンボごとにボーナスがある、強制終了のリスクを負うスキル。コンボバースト【NEW】と比べて、コンボノルマが2/3倍になる代わりにJUSTICE以下許容量が-100回となっている。
  • NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したDANGER系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大49個(GRADE50))。
    • なお、NEW初回プレイ時の引継ぎによるGRADEが最大(50スタート)かつNEWおよびNEW PLUSで実装された全キャラをRank 15まで上げても50+12×26=362までしか上がらず、この時点でもボーナスは増え続けていた。
      道化師の狂気【SUN】がGRADE 400オーバーでのボーナス増加打ち止めが確認されたことから、こちらも400で打ち止めになる形だった(がキャラ数不足で到達することがなかった)可能性がある。
  • GRADE100を超えるとボーナス増加量が鈍化(+10→+5)する。
  • CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「道化師の狂気」から変更された。
    効果
    100コンボごとにボーナス (???.??%)
    JUSTICE以下50回で強制終了
    GRADEボーナス
    1+6000
    2+6010
    11+6100
    21+6200
    31+6300
    41+6400
    50+6490
    ▲PARADISE LOST引継ぎ上限
    61+6600
    81+6800
    102+7000
    142+7200
    182+7400
    222+7600
    262+7800
    302+8000
    342+8200
    362+8300
    推定データ
    n
    (1~100)
    +5990
    +(n x 10)
    シード+1+10
    シード+5+50
    n
    (101~)
    +6490
    +(n x 5)
    シード+1+5
    シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期最大GRADEボーナス
2022/8/18時点
NEW+269+7835
NEW313+8055
~PARADISE×362+8300


GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
※NEW稼働時点でゲージ5本以降の到達に必要な総ゲージ量が変更。必要なゲージ量を検証する必要があります。
ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
136912162025
4136912151924
5636911151923
7636811151823
8736811141822
11436811141722
13136811141721
14235810141721
17935810131721
20235810131620
24535710131620
28135710131619
302
(362)
3579121519


所有キャラ

所有キャラ

  • 期間限定で入手できる所有キャラ
    カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。
    また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 ルスラからティオキアへ「この国は素晴らしいものがたくさんあります。ただ、私達が恩恵に預かれることはありません……」


 箱庭の世界で繰り返される巫女たちの宿業。
 その物語の始まりは、今より遥か昔、人々の幸福を願う少女のもとに四つの希望の力が舞い降りた事から始まる。
 少女の名はネフェシェ。
 神の力を行使する少女は、自らが思い描く理想郷――“平等な幸福を享受できる世界”を作るため、箱庭の世界を少しずつ満たしていった。
 その恩恵は世界の各地にまで及び、荒れ果てていた地には恵みの雨と、豊かな緑があふれ始める。
 やがて箱庭の世界に住まうものたちは、豊穣をもたらす神として少女を奉った。
 神がもたらす恩恵は、いつまでも続いていく――人々が祈りを捧げる限り。

 しかし、永遠に続くかと思われた仮初の幸福は、ネフェシェの生誕祭を境に脆くも崩れ去った。
 人の欲望によって神は政治の道具へと成り下がり、それをめぐる思惑が幾重にも交差し衝突した結果、ネフェシェは神の力の一欠片を失い、定住の地であったルスラを追われる事となってしまう。

 ネフェシェは、彼女を信仰し続ける護衛兵達を連れて逃げ続ける。
 ひたすら北へ、北へと。
 やがて一行は、ひとつの都にたどり着く。
 そこは、豊かな自然と質の良い水源を有するティオキアという国だった。
 ルスラの隣国の内の一つではあるが、長い時を宮殿で過ごしてきたネフェシェにとって、そこは何もかも見知らぬ土地。
 そんなティオキアで、彼女は一人の下女と出会う。
 彼女達の運命の歯車は、今廻り出した。


EPISODE2 ルールという運命「頑張っても頑張っても、暮らしは良くならない。でも、それでも歩き続けるしかないわ」


 「サラキア、それが終わったら次は客間の掃除をして頂戴」
 「はい。かしこまりました、奥様」
 「まったく。指示される前に自分で動いて欲しいものね」
 「大変申し訳ありません……」

 貴族の屋敷で、なんとか形を留めているだけのぼろぼろの服を身に纏い、せっせと雑務を続ける下女がいた。
 彼女の名はサラキア。
 遺児である彼女は孤児院で生まれ育ち、数年前になんとか今の仕事を見つけて以来、今日まで汗水垂らして働いている。
 彼女は十分な教育を受けられていたわけではないが、生来の器量の良さがあるため、本来であればもっと稼ぎのいい仕事ができるはず。しかし、この国でそれは許されない。
 ティオキアは、物流の要であるティオキア港を取り仕切る豪族が統治している。
 完全階級制の所謂貴族政治は、貴族の利益を第一に考えており、下級市民は多大な税をかけられ厳しい生活を強いられていた。
 職業選択の自由などなく、サラキアのみならず、彼女たち下級市民は皆同じような暮らしを送っていた。

 だが、当然そんな現状に甘んじるはずがなく、下級市民たちは支配階級を打ち倒そうと静かに反乱軍を立ち上げる。
 サラキアは直接的に加わってはいないものの、身近に一人、反乱軍の中枢メンバーがいた。

 「よう、サラキア。昼休みにしちゃ遅いね」
 「ちょっとお仕事で粗相をしちゃって……サンディアは仕事?」
 「ああ、アタシはこれから港で積荷を下ろすとこさ」
 「サンディアは凄いなぁ……頑張ってね」
 「おう、サラキアもな」

 腕っぷしを買われ、港で力仕事をするサンディア。
 同じ孤児院出身の二人は、幼馴染みであり、大の親友同士であった。
 17歳である彼女達は、来年には孤児院を卒院する。
 子供達の中でも最年長者である二人は、皆からは第二の母のように慕われていた。


EPISODE3 ルスラからの客人「なんだろう……ただの貴族にしてはあまりにも雰囲気が……何かもっと、特別な……」


 二人の暮らす孤児院に、奇妙な客人たちが訪れる。
 いくらかの護衛と、それを引き連れた幼き少女という一団が。
 彼女達の顔はいささか疲れているように見えるが、身に着けている物の質は良い。
 何かのっぴきならない事情があるのだろう。そう思わせるのは風貌のせいだけでなく、この孤児院を頼ってきたという時点で明白だった。

 サラキア達の暮らす孤児院は、アテリマ教を信仰している。
 自分たち以外を信ずる者の存在を嫌った豪族達は、アテリマ教を懲罰対象と認定し、このティオキアという国では異教とされている。
 信仰が公となれば粛清は免れないのはもちろん、密告者には報奨金まで出すほどの手の込みようである。
 そんなティオキアにおいて、ここは孤児院でもあり、アテリマ教会の隠れ蓑でもあったのだ。

 「サラキアさん。あの方達は大切な客人です。失礼のないよう丁重におもてなししてください」
 「はい、分かりました。院長」

 院長が念押しするほど、客人達は恭しく丁寧に扱われた。
 特に一行の中でも、美しい金色の髪を持つ少女。彼女に対する院長の対応は異常なほどだった。
 聞けば、彼女たちはルスラからやってきたのだという。
 そのきめ細かな肌と上品な振る舞いは高貴さを感じさせた。

 (落ちぶれた貴族の子供かしら?)

 日頃から虐げられ、上流階級に良い感情を持たないサラキアは、一行を見やり眉をひそめる。
 だが、ルスラからやってきた少女は気位の高さを鼻にかける素振りなどはまったく見せない。
 それどころか孤児院の子供達から早々に懐かれ、ままごとをしたり、読み聞かせをしたり、率先して世話を請け負ってみせていた。
 しかし、彼女は時々思いつめたような表情をすることがあった。
 身分の違いはあれ、きっと苦労の末ここに辿り着き、それでも子供達と親しく、何事もないように接してくれているのだろう。
 その姿に、サラキアの警戒心も段々と解けていったのだ。

 「子供達、すごく懐いてますね」
 「ふふ。すっかりお世話になってしまい、申し訳ありません。でも、本当にサラキアさんは好かれているのですね」
 「え?」
 「みなさん、頻繁にお話されるのですよ。優しいサラキアさんが、みんな大好きだって」
 「そうですか……ちょっと、照れてしまいますね」
 「子供は人をよく見ていますから」

 和やかに親睦を深める、サラキアと少女。
 だが、サンディアだけは少女と一行に疑いの目を向け続けていた。


EPISODE4 その背中に祈りを「ネフェシェ様、お願いです……どうか、私の大切なサンディアをお守りください……」


 孤児院に奇妙な一団がやってきてから、しばらくの時が経った頃。
 反乱軍による上流階級への襲撃決行の日が決定した事を、サラキアは突然知る事となる。

 「機は熟した。明日、アタシたち実行部隊は襲撃を開始する。子供達は街に一歩も出させないでくれ」

 小声でサラキアにそう告げるサンディア。
 いつかはこの時が来るとは思っていた。
 だが、あまりに前触れがなかった。

 「そんな、突然……」
 「どうもルスラで大きな事件があったらしい。そのせいか豪族共が何やら慌ただしく動き回ってるんだ。おかげで城の警備が薄くなってる。やるなら今しかない」
 「そう、なの……」

 サンディアが反乱軍に属している事は、孤児院ではサラキアしか知らない。
 サンディアはサラキアの幼馴染みであり、大切な親友だ。
 反乱を起こせば、最悪の事態だってあり得るだろう。
 サンディアには傷つくような目に遭ってほしくない。それがサラキアの本音だ。
 だが、サラキアたち下級市民の苦しみはもう限界に来ている。そのために立ち上がったサンディアの覚悟に水を差すような事もしたくない。
 サラキアはしばしじっと目を瞑り、胸に置いた拳をぎゅっと握ると、サンディアを激励する。

 「分かった。絶対成功させて……生きて帰ってきてね」
 「当たり前だろ。サラキアは何の心配もしなくていいんだ」
 「孤児院は、私が守るから」
 「うん、任せた。それじゃあ行くよ。明日に備えてアジトに泊まるから、今日はここには帰らない」

 そう言って、孤児院の門を開くサンディアが、何か思い出して付け加える。

 「そうだ、あの客人達からは目を離さないでくれ」
 「……?」
 「彼らは、この戦いの鍵になるかもしれない。あの女はもしかしたら……いや、今はやめておく」

 言い濁して、サンディアは孤児院を去っていく。
 その背中にアテリマの祈りを必死に捧げながら、サラキアは願う。
 人間らしい平等な暮らしを送れる未来。
 そしてサンディアの無事を。


EPISODE5 燃ゆるティオキア「あの護衛の方……心の底から主を信じ切ってる……。あれほど誰かに心酔している人、見た事ないわ」


 反乱軍の準備は周到に行われていたのだろう。
 襲撃の合図が下ったのとほぼ同時に、ティオキアの貴族が持つ屋敷という屋敷から火の手が上がっていく。
 中でも実質的に政治の実権を握っていた豪族の屋敷は、武器を手に取った反乱軍である市民に包囲されていた。
 情報の漏洩を防ぐため、反乱軍以外の市民は襲撃計画を知らない。
 突然街中で起こった暴動と燃え広がる炎に、誰もが慌て逃げ惑っていた。

 「慌てないで! ここまで来ればもう大丈夫です!」

 街の中心から離れた小高い丘の上に建つ孤児院は、逃げるにはうってつけの場所だ。
 サラキアは命からがら逃れてきた市民を招き入れると、子供達と一緒に孤児院の中で一番広い講堂へ避難するよう促した。
 不安そうな顔を浮かべる市民や、子供達。
 その中には、ルスラからやってきた一行の姿もある。

 「一体何が……」
 「あんなに早く火が回るなんて……」
 「おかあさん! おかあさん!」

 市民達の雑多な声が講堂を埋め尽くしていく。
 それに対し、ルスラからの一行の中でも比較的若い黒髪の護衛が、募る苛立ちをぶつけるように机に拳を振り下ろして叫んだ。

 「なんなんだ、この争いはっ!?」

 別の護衛が問いに答える。

 「どうやら反乱軍による豪族への襲撃のようです」
 「襲撃だと? こんなところで……!」

 酷く焦る様子を見せる黒髪の護衛は、苛立ちを隠せず忙しなく身体を揺する。
 やがて意を決したようにサラキアや院長の方へと向くと、こう宣言した。

 「我々はティオキアを出る! 道を開けるのだ!」
 「なりません! 街の関はすでに封鎖されていると聞きました。それに、あの火の中を通り抜けるのは不可能でございます……!」

 サラキアの返した言葉は全て事実だった。
 関はすでにティオキア軍――実質貴族の所有する軍が、反乱軍を逃さぬよう堰き止めており、孤児院を出るということは丘を下って燃え盛る街を通らなくてはならない。
 つまりは今、ティオキアを脱出する事は不可能という事だ。

 「クソッ……!」

 苛立ち床を蹴る黒髪の護衛。それを宥めるように声を発したのは、一行の中のあの少女だった。

 「落ち着いてください。焦ってもどうにもならないでしょう。それよりも今、私たちにはやるべき事があります。さあ、怪我をした人たちの手当てを」
 「……はっ!」

 あれほどまでに感情を露わにしていたにも関わらず、少女の言葉で黒髪の護衛が背すじを伸ばした。
 ただ貴族に仕えているだけの兵ではない。何かとてつもなく深い忠誠心が言動の端々から溢れている。
 サラキアはそれが一瞬気にかかるが、さらに押し寄せてきた避難民達の保護で忙殺され、霧散していった。


EPISODE6 暴かれた正体「まさか……私はずっと神と一緒にいたなんて……。疑う余地もない。それほどまでに、あの方は……」


 反乱軍による上流階級への襲撃は、周到に準備されていたという事もあり、勝利は確実かと思われた。
 だが、軍を名乗っているとはいえ、あくまでも貧しい下級市民の寄せ集め。
 随所に見られる練度不足と、貴族たちティオキア軍の物量を前に、ひとり、またひとりと力尽きていく。
 戦闘不能となった者達は、ろくに設備も整っていない診療所や、集会所、そしてサラキアのいる孤児院に運ばれていった。

 「頼む! また怪我人だ! 傷が深い、急いで手当てしてやってくれないか!」
 「分かりました! こちらへお願いします!……サンディア!?」

 サラキアの元へ運ばれてきた怪我人。それは親友であり反乱軍中枢メンバーのサンディアだった。
 手製の担架に乗せられ、苦しそうに脂汗をかくサンディア。
 その腹部には、肉が削げるほどの大きな傷を負っていた。
 サラキアは迷わず走って駆け寄ると、だらりと下がった腕を取る。

 「サンディア…! ああ……なんてひどい……」
 「サラキア……ごめん、しくじった……」
 「しゃべらなくていいわ。今手当てしてあげるからね」

 サラキアの言葉にサンディアは微かに笑みを浮かべると、うわ言のように呟いた。

 「……ネフェシェ様……アタシ達にお力をお貸し下さい……」

 神への祈りを口にしたのだと思ったサラキアは、サンディアを鼓舞しようと声をかける。

 「ネフェシェ様はルスラにおられるのよ。今は自分たちの力で勝たなくちゃ」
 「いや……神は……ネフェシェ様はすぐ近くにいらっしゃるんだ……」
 「……そうね。私たちの胸の中にずっといらっしゃるわ。だから――」
 「違う。そうじゃないんだサラキア……神は、そこに……」

 サンディアはゆっくりと指を差す。
 その先にはルスラからの一行、金色の髪を持つ少女がいた。

 「ネフェシェ様だって!?」
 「ルスラが崩壊してネフェシェ様がお逃げになったという噂は……本当だったんだ!」

 どよめきが孤児院の講堂を包み、誰しもが少女を見る。
 ネフェシェと呼ばれた少女は気丈に立っているが、その顔は少し青ざめていた。
 サンディアは力を振り絞って叫ぶ。
 異教と呼ばれ排他されながらも信じ続けたアテリマ教、その始祖への懇願の言葉を。

 「ネフェシェ様……どうか、どうか……我ら信徒にそのお力を……っ!!」


EPISODE7 啓示は誰のもとに「みんな自分のことばかり……これでは私たちを苦しめる、あの貴族達と何も変わらない……」


 「希望の力は……使えません……」

 サンディアの懇願は、ネフェシェによって拒否される。
 ルスラの時と同じ。ネフェシェはいかなる状況であっても人を傷つける事を良しとしない。その強固な思想が曲がる事は絶対にない。だからこそ彼女は、神に選ばれた。
 だが、ネフェシェを奉っていたルスラではなく、他国であるティオキアの民はそれを知る由もない。
 伝承や人伝により語り継がれた“神”は、“期待”によって誇張され膨らんでいる。

 「なぜです!? 民に平等な幸福をお与えくださるのではないのですか!?」
 「このままでは、さらに多くの者が傷ついてしまいます!」

 もはや神に対するものとは思えない、非難にも似た言葉が次々とネフェシェに投げかけられていく。
 だが、それに反論する事もなく、ネフェシェはただじっと黙って俯いていた。
 そのうち、サンディアは傷口を抑えながら、よろよろと立ち上がった。
 そしてネフェシェへと真っ直ぐ向き合うと、口の端を歪めて言う。

 「ご自身には関係のない他人事のつもりでございますか。もし我々市民が負ければここにも軍が訪れ、貴方様方もお捕まりになることでしょう」
 「それは……」
 「それとも……いざとなればルスラでの事のように、身を挺して我らをお救いくださるのですか?」

 サンディアの言葉を聞いて、黒髪の護衛が激昂する。

 「貴様っ! なぜそれを……っ!!」

 サンディアはそれを無視して続ける。
 今度は嘲笑するような態度ではない。
 ネフェシェの前に片膝をつき、まるでこれから崇高な儀式が始まるかのように。

 「私は……アタシには力を授かる覚悟がありますっ! 平等な幸福を! ネフェシェ様!!」

 ルスラで生誕祭が執り行われたあの日。
 ネフェシェに宿る四つの希望が見せた、禍々しいまでの神の力。
 それを目の当たりにした民たちは驚愕したが、それ以上に誰よりも驚いていたのはネフェシェ本人であった。
 人の命など軽々と屠ってしまう力。
 本来、幸福を与えるはずのそれが、人々を虐げる可能性を孕むものなのだと実感したネフェシェは、己に、希望の力にひどく怯えていた。
 ましてや、今ネフェシェの中の希望はひとつ失われ、その均衡を崩している。
 もしも今、ティオキアの民達がネフェシェに牙を向いたとしたら。
 それを守ろうと暴走する力を、今度は抑え切る事はできないだろう。

 ネフェシェは決断を迫られる。
 武力として力を行使するか、見殺しにするか。
 あるいは、そのどちらでもない方法か。

 「……分かりました」
 「ネフェシェ様!」

 あの日剥がれ落ちたのはひとつではない。残りの力も依代への定着が不安定になっているのを、ネフェシェは理解している。
 強烈な絶望を体感した自分と比べ、未来への希望を持つ者であれば、依代を移す事も可能だろう。

 「力を……授けましょう」
 「で、ではすぐに……!」
 「しかし、それは貴方ではありません」

 喜び勇むサンディアを制すると、ネフェシェは指を差す。
 一連のやり取りを不安げに見つめていた、彼女を。

 「……サラキア。貴方に授けます」

 ネフェシェは――希望の力はサラキアを選んだ。
 力を渇望するサンディア。彼女のティオキアを救いたいという思い自体に偽りは無いが、その原動力は豪族への“憎しみ”によって生み出されていた。
 対して、サラキアの胸の中に灯り続けているのは、“希望に溢れるティオキアの未来”。
 サラキアなら、明るい未来を築いていける。そして、希望の力も彼女を求める。
 ネフェシェは、そう考えたのだった。


EPISODE8 守れた者、守れなかった者「みんな、ごめんね。でも、おかげで気付いたんだ。やり方を間違えなければ、理想郷は創れるんだ、って」


 事態の終結は、あまりにあっけなく終わった。
 丘の上にある孤児院からティオキアの街へと降りたサラキアは、その細い腕を天へとかざす。
 瞬間、空から豪雨が降り注ぎ、燃え盛る街をたちまち鎮火させてみせた。

 同時に、街を走り抜けたネフェシェ達は手はずどおりにティオキアを離れ北へ向かっていく。
 ネフェシェという存在を独占していたルスラがみすみす彼女を手放すはずがなく、追手を寄越している事は明白だった。
 休息と物資支援のため孤児院を頼ってティオキアにやってきていたネフェシェ一行だったが、これ以上の滞在は危険と判断し、事態の収束を見届ける事なくここを去ったのだ。

 それを見送ったサラキアは、おもむろに手を合わるとアテリマ教の祈りの祝詞をぶつぶつと唱え始める。
 すると、街のあちこちで息を潜めていた豪族たちが突如もがき苦しんだかと思うと、一人残らず絶命していった。
 後にその遺体を検死して分かる事だが、死因は全員“溺死”であった。

 サラキアは、圧政から開放された下級市民や反乱軍らによって盛大に讃えられる。
 「希望を継ぐ者」「ティオキアの女神」だと口々にサラキアを讃え、巻き起こる熱狂の渦のさなか。称賛に応えるのもそこそこに、サラキアは急ぎ足で向かう。
 生まれ育った、あの孤児院へと。

 ――私、やったよ……!
 もうこれで、苦しくて、貧しい暮らしなんかしないで済むわ!
 ネフェシェ様に授かったこの力……。
 これからはこの力を使って、新しいティオキアを作っていくの!

 孤児院にたどり着いたサラキアは、勢いよく扉を開け大声で叫んだ。

 「サンディア! みんな!!」

 だが、その声に返事はない。
 どころか、まるで朽ち捨てられてしまったかのように静まり返っている。
 いつもなら大勢の子供達で常に賑やかな孤児院。
 こんな雰囲気は初めての事だ。
 サラキアは不思議に思いながら奥へと歩を進める。
 みんなまだ戦いが終わったことを知らず、息を潜めているのだろう。
 そう考え、サラキアは講堂の扉を開ける。
 だがそこには、信じられない光景が広がっていた。

 「そんな……!! ライラ!! イーサンッ!!」

 子供達、そして院長ら職員まで。
 ひとり残らず、孤児院にいた全員の首が講堂の長机に並べられ、ステンドグラスから差し込む光に照らされていた。
 その中には、サラキアの一番の親友である彼女の顔もあった。

 「ああっ……!! サンディアッ!!」

 サラキアはたまらず駆け寄り、その顔を胸に抱いた。
 すでに血を失った彼女からは、ぬくもりを感じられない。

 「なんてこと……どうして……」

 抱きしめ夢中で髪を撫でる度、彼女達の死が事実であるという実感が湧いていく。
 サラキアは涙をこぼしながら、理解できないこの現状を嘆いた。
 その時、講堂の影から怯え切った声がサラキアにかけられる。

 「サラキア……お姉ちゃん……」

 驚き振り向くと、まだ幼い少女が立っていた。
 その首元に、刃をあてがわれながら。

 「エルマ!!」
 「お、お姉ちゃん……」

 エルマと呼ばれた少女の後ろで、刃を構える中年の男がニヤリと笑う。
 ネフェシェを追うルスラの者でもない、ティオキア軍でもない。
 男は、どこにでもいるティオキアの一般市民だった。

 「動くなよ。お前もアテリマ教の信者だな?」
 「貴方は……! 一体何をしたのっ!!」
 「何をだって? すっとぼけるな! この孤児院が異教徒の隠れ家だって事は分かってんだよ!」
 「それが事実だったとしても……どうしてこんなむごい事を……」
 「へへ……異教徒の首を差し出せば、貴族様から報奨金がもらえるからなぁ! にしても、この人数……こりゃガッポリ儲かっちまうぜ!」
 「なっ……!」
 「前々から怪しいとは思ってたけどよ、お前らガードが固くてなぁ。けどよ、街が大騒ぎになったのを見て……俺はチャンスだと思ったね!」

 怪我人や避難民の受け入れで、人の出入りが激しくなっていたこの孤児院。
 非常事態ということもあり、普段よりも警戒心が低くなっていたのは確かだった。
 男はまるで自分の手柄を誇るかのように、得意げになって続ける。

 「ババアと子供を殺るのは楽なもんだったぜぇ!」
 「なんて……なんて……愚かなの……」

 サラキアにとって家族と呼べる人々を、報奨金欲しさに殺めた男。
 貴族にへつらう事が心根まで染みつき、軽薄で短絡的な殺人の理由。
 それは、貴族達の豪勢な振る舞いによって一見豊かに見えるティオキアの、まさしく負の側面を煮詰めたかのような行いだった。
 なぜなら――男が金を受ける日など、絶対に訪れないのだから。

 「……貴族は皆死んだわ。貴方に報奨金を払う者などもうどこにもいない」
 「あぁ? 死んだ? ビビりすぎて頭でもおかしくなってんのか? くだらねえ嘘吐きやがって」
 「私は正常よ、それに嘘でもない。なぜなら――“私”が殺したから」
 「けっ、イカれやがって。まあいい、さっさとこのガキから片付けて……」

 そう言いながら、男は刃を子供の首元に食い込ませる。

 「お姉ちゃあん……」
 「大丈夫よ、エルマ。心配いらないわ」

 真っ直ぐ男を見据え、冷ややかな視線を向けながら冷静に言うサラキア。
 男は小馬鹿にするように一度笑うと、少女を手にかけようとナイフを持つ手に力を込めた。
 だが、ナイフはピクリとも動かない。

 「な、なんだこりゃ……力が……入らねえ……」
 「これで信じられますか。貴族達を殺したのが私であると」
 「こ、こいつは……てめえの仕業だってのか……」

 自分の身に起きた、説明のつかぬ異変。
 それが本当にサラキアによるものだと理解した男の顔は、徐々に青ざめていく。

 「貴方だって……少なからず貴族達から虐げられてきたのでしょう? これからティオキアは平和になって……穏やかな暮らしが待っていたというのに……」
 「ま、街でそんな事になってるなんて知らなかったんだ!! もし分かっていたら……」
 「こんな事にはなっていなかったでしょうね。でも、それは過程の話。全ては貴方自身が撒いた種……」
 「おい……何をする気だ……やめ、やめてくれ! 俺には家族がいるんだ!」
 「私達にも“いました”よ、大切な家族が。でも……もうここへ帰ってくることはない……」
 「わ、悪かった! 俺が悪かった! 罪は償う! だから……!」

 つい先ほどまでの彼女であれば、少女ともども殺されるしかなかっただろう。
 だが、今は違う。
 彼女は――神になったのだ。

 「何でもする! 許してくれ!」
 「新しいティオキアの未来に……」
 「頼む…………!」
 「……貴方は必要ありません」
 「こんの……異教徒風情がぁ……あぁ? ああおぉぉぉぉ!!?」

 男が喋り終わらぬうちに、その身体は醜く歪に膨れ上がる。
 すかさず少女の手を引いたサラキアが、彼女を抱いて背中を向けた瞬間。
 男の身体は水風船が割れるように、その内側から破裂し、四散した――。

 まるで見せしめの如く惨たらしく殺された、血は繋がらなくとも家族というべき存在であった者達を前に、サラキアは悲痛に暮れる。
 だが悲しみと同時に、それに相反するかのような小さな炎が彼女の胸に灯っていく。

 己の欲望のため、民に圧政を強いていた貴族。
 虐げられながらも暮らしを守るため、子供達を殺した民。
 ティオキアというこの国は、自分が思っていた以上に腐り切っていた。
 その闇は根深く、ちょっとやそっとでは生まれ変わる事はできないだろう。
 サラキアはそう考えながら、決意する。

 「平和な国を作るために必要なもの、必要ないもの。それを見極める必要があるわ……私ならやれる……私にはそれができる……! 完璧な理想郷を、この手で創りなおしてみせるの!!」

 二度とこんな悲劇が起こらないように。
 誰一人として道から踏み外すことのないように。
 今まさに新たな王が生まれ、ティオキアは未来へと歩き出す。
 彼女の想う、理想の国へと。




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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
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スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
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