原初の巫女テルスウラス

Last-modified: 2024-07-11 (木) 22:47:19

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※このページに記載されている「限界突破の証」系統以外のすべてのスキルの使用、および対応するスキルシードの獲得はできません。


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Illustrator:ヒトこもる


名前テルスウラス
年齢14歳
身分豊穣の神ネフェシェの従者

精霊に命を捧げ、精霊を体に宿した巫女<シビュラ>と呼ばれる存在の一人。
シビュラ精霊記のSTORYは、全体的にグロ・鬱要素が多数存在します。閲覧には注意と覚悟が必要です。

巫女<シビュラ>

後に初代土の巫女となる、ネフェシェの従者の一人。
幼馴染みの口から告げた、ネフェシェ暗殺計画。自国の現状を知る彼女は、どちらを選んでも悲劇しかない選択肢が迫るのであった。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1道化師の狂気【NEW】×5
5×1
10×5
15×1


道化師の狂気【NEW】 [ABSOLUTE+]

  • 一定コンボごとにボーナスがある、強制終了のリスクを負うスキル。コンボバースト【NEW】と比べて、コンボノルマが2/3倍になる代わりにJUSTICE以下許容量が-100回となっている。
  • NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したDANGER系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大49個(GRADE50))。
  • GRADE100を超えるとボーナス増加量が鈍化(+10→+5)する。
  • NEWで追加されたスキルで唯一、最後までボーナス増加の打ち止めがなかった。
    道化師の狂気【SUN】がGRADE 400でボーナス増加打ち止めが確認されたことから、こちらも400で打ち止めになる形だった(がキャラ数不足で到達することがなかった)可能性がある。
  • CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「道化師の狂気」から変更された。
    効果
    100コンボごとにボーナス (???.??%)
    JUSTICE以下50回で強制終了
    GRADEボーナス
    1+6000
    2+6010
    11+6100
    21+6200
    31+6300
    41+6400
    50+6490
    ▲PARADISE LOST引継ぎ上限
    61+6600
    81+6800
    102+7000
    142+7200
    182+7400
    222+7600
    262+7800
    302+8000
    342+8200
    362+8300
    推定データ
    n
    (1~100)
    +5990
    +(n x 10)
    シード+1+10
    シード+5+50
    n
    (101~)
    +6490
    +(n x 5)
    シード+1+5
    シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期最大GRADEボーナス
2022/8/18時点
NEW+269+7835
NEW313+8055
~PARADISE×362+8300


GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
※NEW稼働時点でゲージ5本以降の到達に必要な総ゲージ量が変更。必要なゲージ量を検証する必要があります。
ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
136912162025
4136912151924
5636911151923
7636811151823
8736811141822
11436811141722
13136811141721
14235810141721
17935810131721
20235810131620
24535710131620
28135710131619
302
(362)
3579121519


所有キャラ

所有キャラ

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 神の住まう都、ルスラ「ネフェシェ様の側で感じる穏やかな時間……。それは私が大切にしているもののひとつです」


 箱庭の世界で繰り返される巫女たちの宿業。
 その物語の始まりは、今より遥か昔、人々の幸福を願う少女のもとに四つの希望の力が舞い降りた事から始まる。
 少女の名はネフェシェ。
 神の力を行使する少女は、自らが思い描く理想郷――“平等な幸福を享受できる世界”を作るため、箱庭の世界を少しずつ満たしていった。
 その恩恵は世界の各地にまで及び、荒れ果てていた地には恵みの雨と、豊かな緑があふれ始める。
 やがて箱庭の世界に住まうものたちは、豊穣をもたらす神として少女を奉った。
 神がもたらす恩恵は、いつまでも続いていく――人々が祈りを捧げる限り。

 しかし、その祈りに――神を信仰する人々の中に、一点の陰りが見え始めた。
 それは、痛んだ果実が他を侵食していくように、少しずつ、だが確実に腐食させていく。
 信仰によって成り立つ平和は、存外脆い。
 嫉妬や欲望は、生まれて間もない赤子でさえ持つ自然な感情。
 だからこそ。
 人が人である限り、安寧は仮初でしかないのだ。

 今は何も知らず安寧を享受する聖都アレサンディアの民達。
 彼らに奉られるネフェシェの側に、一人の少女がいた。
 彼女は柔和な笑みを浮かべながら、手慣れた様子でネフェシェの髪をとかす。
 これまでと何ら変わらぬ日常。
 だが少女は、その笑みの奥に秘密を隠していた。


EPISODE2 従者の一族として「ネフェシェ様は私が幼い頃より可愛がってくださいました。その思いに応えたいのです」


 ルスラの首都、聖都アレサンディア。
 外界より迫りくる災いから都を見守るように、アレサンディアに寄り添ってそびえる高山がある。
 その山頂に築き上げられた堅牢な宮殿に、ネフェシェは居を構えていた。

 国が国として、その形を保つためには、多くの務めをこなさなくてはならない。
 まして、神と奉られる者であるならなおさら。
 ネフェシェは慣れた様子で宮殿内を忙しなく渡り歩く。
 今日は貴族からのご意見聞きと、中央院からの定期報告が重なっているからだ。
 そんな彼女の後を一人の少女――テルスウラスはピタリとついて歩いている。

 「次は白百合の間でございます、ネフェシェ様。お疲れではありませんか」
 「私は大丈夫です。まだ予定もありますし」
 「ですが……最近は眠りにつかれる事があるようですので……」

 希望の力を持つネフェシェは老いる事もなく、本来であれば眠る事も必要不可欠ではない。

 「時にはそういう事だってありますから。ですが……ここ数日、眠る度に妙な夢をみるのです……どこからか不思議な声が聞こえてくるような……」

 テルスウラスはその言葉を聞き、心配そうな顔を向ける。

 「眠りにつかれるのはきっとお疲れの証拠です。政務の調整であれば、すぐにでも私の方から中央院に掛け合って……」
 「ありがとう。でも、本当に大丈夫なの。さあ、この話は終わりにして、急ぎましょう」

 テルスウラスの問いかけに、笑顔で返すネフェシェ。
 その表情には、テルスウラスに厚い信頼を寄せている事が見て取れる。

 テルスウラスは、この宮殿の外をほとんど知らない。
 彼女は代々ネフェシェに仕え、宮殿内で一生を終える従者の一族の生まれである。
 ルスラの民以上に並々ならぬ信仰心を持つ先祖達に倣い、従者としてその生を捧げるテルスウラスであったが、その中でも極めて聡明だった彼女は、まだ幼さの見える年頃ながらもネフェシェの傍仕えとして抜擢され、以来こうして神の一番近くであらゆる身の世話をするようになった。
 テルスウラスは、ネフェシェが最も心を許している人物だといっても過言ではない。

 とある日、宮殿内の祈祷室。
 テルスウラスは大きな出窓から顔を出し、山下に並ぶ街並みを覗いていた。
 山頂にいながらも聞こえるほどの鐘や太鼓の音が鳴り響き、色とりどりの旗が街中で翻っている。

 「ネフェシェ様、街は大変な活気でございます」
 「そうですか。皆さん、私のために……ありがたいことです」
 「ええ、本当に……」

 今日は国中をあげて盛大に祝う、ネフェシェの生誕祭が行われる。
 普段、宮殿の中で豊穣の祈りを捧げるネフェシェが、唯一民衆の前に姿を現す――つまりは神に謁見できる祭りとあって、民の熱も尋常ではない。
 テルスウラスら従者の一族も、この日は宮殿を出て参列する事が唯一許されており、本来ならテルスウラスも大いに喜ぶべき日であった。
 だが、ネフェシェに笑いかけるテルスウラスの表情は、どこかぎこちない。
 彼女の中に秘められた、とある悲しい未来予想図。
 それが現実のものとなるかどうか。
 審判の日は、この生誕祭であったからだ。


EPISODE3 交錯する思惑「そんな事……神に許されるはずがありません! そう……許されるはずが……でも……」


 遡る事、数ヶ月前。
 テルスウラスは、とある若き護衛官――アヴェニアスに呼び出されていた。
 幼少より武をもってネフェシェに仕えていたアヴェニアスとは、似た境遇を持つテルスウラス。
 二人はいわば、幼馴染みのような関係であった。
 だが、多くの交流があったのはそれこそ幼き日の事。それが何の前触れもなく、ましてや『深夜、誰にも見つからないように来てほしい』と言われたのであれば、テルスウラスはどうしても警戒してしまうのであった。

 静まりかえった、深夜の宮殿。
 傍仕えとしての立場があるテルスウラスは、当直の衛兵にも怪しまれることなく、指定された場所へと足を運んだ。
 宮殿の地下、山をえぐるようにして作られた巨大な用水路。
 どこかで断続的に雫が落ちる音だけが響く薄暗いこの場所で、アヴェニアスは待っていた。

 「お久しぶりですね。こんな夜更けに呼び出して、何の用ですか」
 「少なくとも、色めいた用ではないという事は分かるだろう」
 「冗談に付き合うつもりはありません。単刀直入にお願いします」
 「ああ、そうさせてもらう」

 私情の類ではない、何かよくない話なのだろう。
 テルスウラスは薄々察していたが、それは自身の予想を遥かに超えた言葉だった。

 「ネフェシェ様の……暗殺が計画されている」
 「な……っ!?」

 ネフェシェ暗殺計画。その実行日は生誕祭に予定されており、さらには実行役として自分が選ばれてしまった。
 あまりに不穏な内容であるにも関わらず、アヴェニアスは淡々とそう説明する。
 驚き、声にならないテルスウラスをよそに、アヴェニアスはさらに続けた。

 「僕はその機会を利用して、逆に中央院を……この国を転覆させようと思っている」

 ルスラは現在、ネフェシェを奉るアテリマ教を第一とした宗教国という形をとっているが、実際の内情は中央院という政務機関が国を管理している。
 ネフェシェの存在を疎ましく思う中央院は、彼女の暗殺を企て、その実行役としてアヴェニアスが選ばれたのだ。
 だが、アヴェニアスは中央院に忠誠を誓っているわけではなかった。
 誓うのは、ただ一つ。
 それはアテリマ教であり、ネフェシェそのもの。
 実行役という皮を被ったまま、生誕祭の日に暴動を起こして中央院を転覆させ、かつてのルスラのようにアテリマ教を中心とした国に建て直そうと計画していたのだ。

 「最もネフェシェ様の側にいるのはテルスウラス、君だ。君にはこの計画を知らせておく必要があった。生誕祭の日、君にはネフェシェ様を守って欲しい」

 ネフェシェを守るという事に異議は無い。
 だが、テルスウラスは僅かに狼狽の表情を浮かべる。
 彼女は分かる。分かってしまっている。
 ネフェシェを暗殺するという、“中央院の動機”を。

 その戸惑いに気付いたのか、アヴェニアスは疑念の目をテルスウラスに向けた。
 見開いたその目はギラギラと光り、熱を孕んでいる。
 彼は幼少の頃からそうだった。自分の理想のためならどんな手段でも問わずに行使する。
 その危険性を、テルスウラスは知っていた。
 今は同意するのが得策である。
 そう考えた彼女は、ゆっくりと首を縦に振らざるを得なかった。


EPISODE4 神の預かり知らぬ所「一方を守れば、一方が苦しむ……そんな残酷な決断を、どうして私が下す事ができましょう……」


 ネフェシェに仕える従者達は、基本的に政務に関わる事を許されていない。
 だがテルスウラスは、ネフェシェの最も近くにいるものとして、中央院やアテリマ教などの政治的動向には敏感にならなければいけなかった。
 それはネフェシェを守るためという思いから来るものだったが、彼女はあまりに聡明すぎた。
 テルスウラスは日々考える。
 政治、経済、民の暮らし。
 日常の中で耳に入ってくる情報をきちんと整理し、この国が抱えている問題を導き出す。
 中央院という組織が何をしたいのか。
 彼らがなぜネフェシェの暗殺を企てるのか――。

 “ネフェシェが掲げる理想郷”とは、平等幸福という誰もが均等に幸福を享受するというもの。
 それは、裏を返せばどこまでも平行線であり、変化を認めないという事でもある。
 自然溢れる大地はネフェシェの私物とされ、開拓は許されない。ましてやその土壌で生きる生物を、人間の損得で人工的に増減させるなどもってのほかであった。
 だが民の暮らしが安定すればするほど、ルスラの人口は急激に増え続けていく。
 多くの民の受け皿となる土地や、彼らを賄う食料など、様々な問題が限界を迎えるのは時間の問題だった。

 また、危惧すべきはルスラ国内だけではない。
 ルスラ建国当初、諸外国は豊穣の神を手中に納めようとルスラに対しネフェシェの身柄を求めた。
 それを武力で抑圧しようとしたルスラであったが、ネフェシェはそれを諫める。
 それぞれの思惑と主張の一つの着地点。それは条約という形で結ばれた。

 『ネフェシェの恩恵を平等に受ける権利を持つ代わりに、諸外国はルスラに干渉または進入しない』

 この条約の下に各国――特にルスラは安寧を得たが、それは時の流れと共に崩れ去ってしまう。
 ネフェシェを諦めた代わりに自由な発展を許される他国は着々と力をつけ、今ではすでにルスラ以上の技術力、武力を有している。それはルスラにとっては十分すぎる脅威であった。
 対抗策として、ルスラは条約とネフェシェという存在を利用し、他国へと与える豊壌を取り上げる事を切り札としてチラつかせた。
 そんな事はネフェシェ本人が許すはずもないが、そんな彼女の意思を悟られないようにしながら、何とか牽制を続けてきたのだった。

 ネフェシェの統べる世界では平等が最優先され、発展は許されない。
 しかしルスラは今、ネフェシェが想定していない諸問題に板挟みにあっている。

 神を取るか。民を取るか。

 決定権を神から人へと完全に取り戻し、この国をより豊かに発展させる。
 中央院が企てているネフェシェの暗殺計画は、民の未来を思うからこそ決断されたものだったのだ。

 テルスウラスのアテリマ教に対する、ひいてはネフェシェに対する信仰心は強い。
 しかし、このままでは多くの民が苦しむ事になるのは目に見えている。
 この国に残された選択肢。
 そのどちらを選んでも、辿り着く先は悲劇だろう。
 一族の中でも特に聡明で、自分の力で物事を考える力を持つテルスウラス。
 だからこそ、彼女は信仰という名の下に思考を放棄する事ができない。

 「私はどうすれば……」

 残酷な天秤は、テルスウラスの中でゆらゆらと揺れ続けている。


EPISODE5 バースデードレスは何色に「誰も幸福になれないのなら、少しでも望みのある方へ。それが……私の答えです」


 そして、生誕祭当日。
 ルスラの首都、アレサンディアの大聖堂前には生誕祭を祝う会場が作られ、民たちは思い思いの祝福の言葉をネフェシェに投げかけている。
 それに手を振り応えるネフェシェの半歩後ろに立つテルスウラスは、過剰なまでに神経を尖らせていた。

 『祈りの鐘が鳴ったら、それが合図だ。君たちはネフェシェ様を連れて逃げてくれ』

 あの日、テルスウラスはアヴェニアスからそう伝えられていた。
 生誕祭は予定通りに進んでいる。
 祈りの時間はもうすぐだ。

 ――失敗は、許されない。

 教会の最上部から、清涼さと青銅の鈍さを含んだ鐘の音が街を包んだ。
 瞬間、会場を囲うように扇型に配置された護衛官たちが、一斉に剣を抜く。
 ネフェシェ暗殺計画の実行役に選ばれたのは、あのアヴェニアスひとりではなく、志を共にした護衛官全員だった。
 生誕祭の熱狂の中という事もあり、民たちはまだ異変に気付かない。見世物だと思って囃し立てる者もいる。
 そんな彼らを気にする様子もなく、護衛官達は真っ直ぐに切っ先を向けた。
 ネフェシェではなく――中央院の高官が座る席へと。
 みるみる青ざめていく高官達に向かって、護衛官達が距離を縮めていく。
 さすがに異常な雰囲気だと察したか、民たちの間でおきたどよめきは、一瞬で伝播し会場は大混乱の様相を呈した。
 「これでこの国は変わる」、護衛官の一人であるアヴェニアスがそう思いながら剣を振り上げたその時。

 「ネフェシェ様!!」

 民の中から、よく通る女性の声が会場に響き渡った。
 その音色に疑問を感じたのは護衛官達だ。
 ネフェシェに剣は向けられていない。
 何かがおかしい。
 誰もが声の指し示した方へと視線を向ける。

 「申し訳ございません」

 そこには、真っ白なドレスを赤く染め、髪を乱して倒れるネフェシェ。
 そして、ドレスと同じ赤を纏うナイフを持ったテルスウラスが、顔を伏せて立っていた。

 テルスウラスは選んだ。神ではなく、人間である自分たちで掴む未来を。
 ネフェシェを殺めれば、確実に自分の命も無い。
 それでも。板挟みのまま少しずつ腐り落ちていくよりも、祖国の民を、未来を、彼女は選んだのだ。

 ネフェシェへの信仰を捨てたわけではない。
 どんな利益を説いたところで、彼女の意思が変わるような事はないと。
 むしろ、それほどまでに世界の幸福を願うからこそ神に選ばれたのだと。
 ネフェシェを誰よりも一番近くで見てきたテルスウラスには分かっていた。
 彼女は、ここまで純粋に――ともすれば偏執的に幸福を願ったネフェシェが、自分の力無さによって世界が崩壊していく様を見せたくなかったのだ。
 それはネフェシェに対する信仰というよりも、愛するがゆえの選択だった。

 テルスウラスは膝をつくと、血に染まったネフェシェを抱き抱えようと手を伸ばす。
 己の手で殺めたにも関わらず、亡骸になった姿を未だ信じられないかのように。
 慈しむように。

 「ネフェシェ様……民を、国を守るためには、こうするしかなかったのです……」

 テルスウラスがそう呟いた時だった。
 会場に置かれたテーブルがカタカタと音を立てて小さく揺れたかと思うと、地の奥底から強烈な地響きが鳴り出した。
 中央院への反乱、凶刃に倒れるネフェシェ、大地の異変。
 立て続けに起こる事件に、ルスラは混乱の坩堝へ落ちていく。
 地響きは、低く不穏な音を奏で続ける。
 それはまるで、獰猛な獣の唸り声のように。


EPISODE6 神の力、ネフェシェの愛「幸福を願う貴方様の愛が、これほどのものとは……。私の信仰など、あまりにも浅かった……」


 ルスラの民、高官、護衛官、そしてテルスウラス。
 誰もが事態を飲み込めずに慌てふためいている。
 そのさなか、倒れたネフェシェの身体が、ピクリと動いた。
 血に染まったドレスの胸が上下し、僅かではあるが呼吸を取り戻す。

 ネフェシェがただの少女であれば、テルスウラスの刃は十分に致命傷となっていただろう。
 だが、彼女はただの少女では無い。
 四つの希望の力を持つ――神である。

 希望の力たちは、延命処置をネフェシェの肉体へと施していく。
 ゆっくり、ごくゆっくりではあるが、流れ続けていた血は止まっていき、浅い呼吸はリズムを取り戻す。
 その光景は、紛れもなく神の力そのものだった。

 しかし、これで事態が収まるわけではない。
 息を飲む一同に、ネフェシェに宿る四つの希望はさらなる力を見せつける。
 依代とする少女への防衛反応。
 テルスウラスを“ネフェシェを傷つけた者”と判断した四つの希望は、その力を彼女へと行使しようとしていた。
 火、水、土、風。
 自然を司るその全ての力が混ざり合った、光の蔓のような物がネフェシェの体から無数に伸びたかと思うと、テルスウラスに襲いかかる。
 己の死を直感したテルスウラスは目を瞑った。
 だが、待てども危害を加えられた感覚がない。

 「やめ……て……」

 聞き慣れたその声に、テルスウラスは思わず目を開ける。
 その視線の先には、苦しそうにもがくネフェシェ姿があった。
 ネフェシェは防衛反応を取る希望の力を抑え込もうとしていたのだ。
 誰も傷つけたくない。
 世界に幸福を与える事以外で神の力を使いたくない。
 自らの命が危機に晒されるほどの出来事があったにも関わらず、ネフェシェの精神は折れなかった。

 だが、希望の力はネフェシェが抑え切れるものではない。
 行き場の無くなった力たちはネフェシェの体内で暴走し、蹂躙する。

 「あ……ぐ……苦しい……」

 血を吐き、肉体は切り刻まれ、皮膚をただれさせながらのたうち回るネフェシェ。
 そんな惨状を前にし、民衆はもちろん、高官や宮殿関係者の一部までもが恐れ逃げていく。
 だが、テルスウラスはネフェシェの近くに立ち尽くし、涙を流しながら呆然とその様子を眺めていた。

 テルスウラスは知らなかった。
 神の力の、本当の強大さを。
 人間の浅はかな考えで、思い通りにできるようなものではないという事を。

 やがて、神の力による蹂躙は収まっていき、かろうじて人間の姿を留めたネフェシェは、テルスウラスの近くで倒れた。
 あたりはシンと静まりかえり、誰もが夢を見ていたかのように呆けている。

 神の力を、ネフェシェの愛を、痛いほど感じた。
 だから、今度こそ。
 取り返しのつかない事をしてしまったと、詫びるように。
 テルスウラスはネフェシェの身体を、強く強く抱きしめた。


EPISODE7 剥離する希望「これは、私が持つようなものではありません! ああ……私はどれほどの罪を……!」


 痛ましいほどに傷ついたネフェシェをテルスウラスが抱きしめた――その時。
 テルスウラスの胸にあるネフェシェから、“何か”が流れ込んでくるのを感じた。
 瞬間、周りの木々が風もなくざわめいたかと思うと、自らの体を中心に放射線状に草花が生えていく。
 硬い石畳を割りながら、花開いては枯れ、花開いては枯れ、一生を一瞬で繰り返していく草花。
 気付けば、胸に抱いたネフェシェの身体が、あれほどの損傷であったにも関わらず完全に治癒されている。

 テルスウラスは、この現象に心当たりがあった。
 先祖代々語り継がれてきた伝承。
 とある少女の元に希望の力が舞い降りた奇跡。
 目の前に広がる光景は、伝承の中のものとまったく同じだった。
 同時に、テルスウラスはもう一つの事実にも気が付く。
 先ほど自分に流れ込んできた“何か”。
 それは、本来ネフェシェが持っていなくてはいけないはずの力の一部だという事に。

 希望の力を抑え込み、その力に蹂躙されたネフェシェは、生物が共有する絶望の概念である“死”に直面していた。
 ナイフで傷つけられた程度では、神を宿すネフェシェが死ぬ事はない。
 だが、守護するはずの力そのものに傷つけられたとあらば例外だ。
 死という絶望に襲われたその瞬間、ネフェシェから希望の力のひとつが剥がれ落ちた。
 行き場を失った力は、次なる依代へ。
 「未来を自分たちの手で掴む」という、テルスウラスの希望の元へと、吸い寄せられていたのだった。

 だが、未だ現実を受け止めきれないテルスウラス。
 その混乱に呼応するように、“土の力”が大地を揺らし始めた。
 揺れは瞬く間に膝をついてしまうほど大きくなり、聖都アレサンディアの地面はいくつかに裂き離れ、飛び越える事など不可能なほど深い谷が生まれ、テルスウラスとネフェシェは引き離れてしまう。

 「ネフェシェ様!!」

 テルスウラスは叫んだ。己の主の名を。
 今も彼女の、従者であるかのように。


EPISODE8 パーティーの終わり「決して償う事などできない、私の罪。でも少しでも。最後の時までは……」


 揺れが収まり、残された者たちがかろうじて落ち着きを取り戻し始めた頃。
 早くも彼らは“次”を考え、行動を起こそうとしていた。

 逃げ遅れた民衆を含め、ルスラの人間はその目で見てしまった。
 希望の力はネフェシェのみに許されたものではない。
 希望の力は“奪い取る”事ができる。
 その事実を。

 現状を好機と見た中央院の高官、それに反する過激派のアテリマ教徒、醜い野心を持つ民。
 彼らは一斉にネフェシェへと襲い掛かる。
 彼女を守るべく必死に奮闘する護衛官。その中に、あのアヴェニアスの姿もあった。
 誰もが顔を歪め、欲望にまみれた暴力を交わし合う。
 およそ理想郷とは呼べない光景。
 割れた大地の谷を挟み対岸に残されたテルスウラスはどうする事も出来ずにそれを見ているしかなかった。

 ――全て……神を虐げようとした私への罰なのですね……。
 神の国、民の国……もはやそのような世迷言を吐けもしないほどに、私はルスラを壊してしまいました……。
 ああ、ネフェシェ様……。
 あなたを思うこの気持ちだけは、どうか……。
 どうか……。

 誰に教わったわけでもない。だがテルスウラスは不思議と理解していた。
 神の力の使い方を。

 「ネフェシェ様……貴方様の傍仕えとして、最後の仕事をさせてください……これが終わったら、私は長い暇を頂戴しようと思います……」

 テルスウラスは、対岸で争いを続ける者たちへとゆっくりと片手を伸ばす。
 途端、地面から太い蔓が伸び、ネフェシェを襲っていた者たちを吹き飛ばすと、蔓はそのまま身体にまとわりつき、彼らを石畳へ縫い付けるように拘束した。
 そしてテルスウラスは、もう片方の腕も伸ばす。
 すると今度は、ネフェシェたちのいる対岸の崖の断面から無数の木々が伸びていき、崖と崖を繋ぐ橋が築かれた。
 それはテルスウラスの方ではなく、ルスラから出国する道の方へ伸びていた。
 唖然とするアヴェニアスを促すように、テルスウラスは声をかける。

 「ルスラにいるのは危険です。ネフェシェ様を連れてお逃げください」
 「貴様ぁ……!」

 アヴェニアスは怒りを露わにしてテルスウラスを睨みつけた。
 助力してもらったとて、元凶は計画を裏切ったテルスウラスそのものだ。
 何より、狂信的なまでに崇拝するネフェシェを傷付けた事が、アヴェニアスには許せなかった。
 だが、今はやるべき事がある。
 アヴェニアスはテルスウラスを睨みつけたまま、他の護衛官に指示を出す。
 そしてネフェシェを抱き上げると、木々の橋を渡りルスラを離れていった。
 それを見届けると、ほんの少し前までの華やかさを失った生誕祭会場で、テルスウラスは一人呟く。

 「どうかご無事で……そして、さようなら……」

 豊穣の神ネフェシェを失ったルスラは、壊滅状態に陥った。
 だが、その後ほどなくして、神を奪った大罪人が新たな王としてルスラを治める事となるのだが――
 それを知る者は、今はまだいない。




■ 楽曲
┗ 全曲一覧( 1 / 2 / 3 ) / ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


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