原初の巫女メーヴェ

Last-modified: 2024-03-05 (火) 08:35:14

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※このページに記載されている「限界突破の証」系統以外のすべてのスキルの使用、および対応するスキルシードの獲得はできません。


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Illustrator:Maeka


名前メーヴェ
年齢不明
身分流浪の孤児

精霊に命を捧げ、精霊を体に宿した巫女<シビュラ>と呼ばれる存在の一人。
シビュラ精霊記のSTORYは、全体的にグロ・鬱要素が多数存在します。閲覧には注意と覚悟が必要です。
舞園 星斗「そこが一番ゾクゾクするし、ピュアなお話なんだよ?」

巫女<シビュラ>

後に初代風の巫女となる、流浪の孤児。
母親を知らずに『箱庭』の世界を放浪する少女。その母親の正体は……。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1道化師の狂気【NEW】×5
5×1
10×5
15×1


道化師の狂気【NEW】 [ABSOLUTE+]

  • 一定コンボごとにボーナスがある、強制終了のリスクを負うスキル。コンボバースト【NEW】と比べて、コンボノルマが2/3倍になる代わりにJUSTICE以下許容量が-100回となっている。
  • NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したDANGER系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大49個(GRADE50))。
    • なお、NEW初回プレイ時の引継ぎによるGRADEが最大(50スタート)かつNEWおよびNEW PLUSで実装された全キャラをRank 15まで上げても50+12×26=362までしか上がらず、この時点でもボーナスは増え続けていた。
      道化師の狂気【SUN】がGRADE 400オーバーでのボーナス増加打ち止めが確認されたことから、こちらも400で打ち止めになる形だった(がキャラ数不足で到達することがなかった)可能性がある。
  • GRADE100を超えるとボーナス増加量が鈍化(+10→+5)する。
  • CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「道化師の狂気」から変更された。
    効果
    100コンボごとにボーナス (???.??%)
    JUSTICE以下50回で強制終了
    GRADEボーナス
    1+6000
    2+6010
    11+6100
    21+6200
    31+6300
    41+6400
    50+6490
    ▲PARADISE LOST引継ぎ上限
    61+6600
    81+6800
    102+7000
    142+7200
    182+7400
    222+7600
    262+7800
    302+8000
    342+8200
    362+8300
    推定データ
    n
    (1~100)
    +5990
    +(n x 10)
    シード+1+10
    シード+5+50
    n
    (101~)
    +6490
    +(n x 5)
    シード+1+5
    シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期最大GRADEボーナス
2022/8/18時点
NEW+269+7835
NEW313+8055
~PARADISE×362+8300


GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
※NEW稼働時点でゲージ5本以降の到達に必要な総ゲージ量が変更。必要なゲージ量を検証する必要があります。
ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
136912162025
4136912151924
5636911151923
7636811151823
8736811141822
11436811141722
13136811141721
14235810141721
17935810131721
20235810131620
24535710131620
28135710131619
302
(362)
3579121519


所有キャラ

所有キャラ

  • 期間限定で入手できる所有キャラ
    カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。
    また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 一縷の望み「多くを失った少女は、ただ果てを目指す。そこに、世界を正しく導くものがあると信じて」


 箱庭の世界で繰り返される巫女たちの宿業。
 その物語の始まりは、今より遥か昔、人々の幸福を願う少女のもとに四つの希望の力が舞い降りた事から始まる。
 少女の名はネフェシェ。
 神の力を行使する少女は、自らが思い描く理想郷――“平等な幸福を享受できる世界”を作るため、箱庭の世界を少しずつ満たしていった。
 その恩恵は世界の各地にまで及び、荒れ果てていた地には恵みの雨と、豊かな緑があふれ始める。
 やがて箱庭の世界に住まうものたちは、豊穣をもたらす神として少女を奉った。
 神がもたらす恩恵は、いつまでも続いていく――人々が祈りを捧げる限り。

 しかし、ネフェシェが想い描いた理想郷への道は、どこで違えてしまったのか、いつしか大きく逸れていってしまう。
 幾多もの困難に見舞われ。
 信じてきた者達も、今となっては僅かばかり。
 彼女が持つ力までもが剥がれ落ちてしまった。
 彼女の手元に残っているものは、いか程か。
 それはもはや彼女にも分からない。

 だが、それでも往かねばならないのだ。
 彼女を信じてくれた多くの者達に、報いるためにも。

 北へ、北へ。
 前へ、前へ。

 どんな強風が吹きつけようとも、進むしかない。
 彼女に下された神託に、一縷の希望をかけて。


EPISODE2 風の吹くままに「吹きすさぶ風に誘われて辿り着いた異郷の地。そこでの出会いは、彼女に何をもたらすのだろうか」


 ネフェシェ達の旅は、アギディスの険しい山々を抜けて西に降り、砂漠が広がる丘陵地帯へと差し掛かろうとしていた。
 年がら年中、一帯に強い風が吹きつけていて、陽射しも肌を容赦なく焼く程に鋭い。
 ルスラやアギディスと比べると、緑の少ない地ではあったが、そこには独自の進化を遂げてきたと思われる生態系が形成されていた。
 この地域には強い陽射しから逃れられる場所が少ない。そんな過酷な環境の中でも生きている生命の逞しさに、ネフェシェは小さく口元を緩めた。

 「このような地でも生命はしっかりと芽吹いているのですね。素晴らしいことです……」

 辺りを見回しながら歩いていたネフェシェだったが、どこか足取りが覚束ない。

 「ネフェシェ様? お顔が優れないようですが……あっ!」

 言い終わらぬ内に、ネフェシェはそのままもつれるように足を絡ませて崩れ、座り込んでしまう。

 「ネ、ネフェシェ様!!」
 「ぁ…………」

 ほんの一瞬で、ネフェシェは眠りについてしまった。
 いくら揺れ動かしても、起きる気配は一向にない。
 彼女はいつの頃からか、歩いている際中にも突然眠りに落ちる事が増えていたのだ。
 まるで、何者かに誘われるように。

 「どうする? どこか休める場所を探さなくては」
 「日陰となる場所もあるにはあるが……」
 「待て、あれを見ろ」

 護衛官が指さした方角に目を向けると、遠くの方で微かに立ち昇る煙が見えた。そのまま視線を下に滑らせると、巨大な岩石が横たわっているのが見える。

 「行ってみよう」

 護衛官達は頷き合い、歩を進めるのだった。

 巨岩が近づくにつれて、その存在感に圧倒され感嘆の声を漏らす護衛官達。
 そのまま辺りを調べてみると、切り出された岩場が道のように続いている事に気付く。
 続けて断崖絶壁の道を進み、程なくして開けた場所に出た。
 その中心には、支え合うようにして大小様々な岩が立ち並んでいる。よく見れば、それは岩を上手く利用して造られた住居であった。
 中には岩を器用に削ったものや、土を塗り固めた壁で補強したものまで様々だ。
 ここに居を構える者達からは、自然と共存するという強い意思が伝わってくる。

 「ともかく、誰かいないか探そう」

 護衛官達が集落の奥へと進もうとしたその時、ふと背後から物音がした。

 「……お前ら、何者だ?」

 振り返ると、そこには日に焼けた肌を露出させた数人の男女が立っている。肩には近くで狩猟してきたと思われる獣を担いでいて、各々が弓や石のナイフなどを握っていた。
 数は圧倒的に彼らに分があった。

 「クッ……!」

 護衛官達はどうにかネフェシェを護る術はないかと周囲に目を配りつつ、剣の柄に手をかける。
 だが、護衛官の視線にいち早く気付いたリーダー格の男は、手を前に出してやんわりと告げた。

 「剣を収めろ。俺達、戦わない」

 男の瞳に敵意は感じられない。
 それを悟った護衛官達は渋々警戒を解くのだった。


EPISODE3 砂漠に生きる民「ネフェシェを真に救えるのは、創造神イデアのみ。眠りにつく少女の姿をした神に、護衛官達は誓う」


 僅かな緑と砂漠が広がる地でネフェシェ達が出会ったのは、自然と共存しながら生きる人間の狩猟民族「メーヴェ」。
 元は流浪の民だったが、この地に流れ着いてからはここを拠点にして狩りを行なっているらしい。
 そう教えてくれたのは、リーダー格の男。
 彼らは部族名を持ってはいるが、個別の名前を持たない文化のようだ。
 彼らからは独特ななまりを感じたが、言葉が通じない訳ではなかった。
 護衛官はネフェシェの身上などは伏せたまま、これまでの経緯や目的を話して聞かせる。

 「……東の赤い空、理解した。だが、何故お前たち、砂漠に来た?」
 「我々は彼女を護衛しながら、ここより遥か北にある場所へ向かわなければならない」

 男は岩陰に寝かしつけられたネフェシェを見やった。
 ネフェシェと彼女の護衛についている者の周りに、子供達が群がっている。
 ネフェシェの透き通るような白い肌と金色の髪に、皆興味津々なのだろう。

 「悪気はない、大目に見てくれ」
 「あ、ああ……」
 「北の地、俺達も近付けない場所。辿り着けない時、またここに戻ってこい。いつでも、歓迎する」

 男はそう言うと、奥に作られた小屋を指差した。
 そこを寝床に使えと言う事だろう。

 「ありがとう。貴方がたの申し出は嬉しいが、ネフェシェ様の疲れが取れたら直ぐに出発させてもらうよ」

 男と別れた護衛官は、他の護衛官と共にネフェシェを小屋に運ぶのだった。
 干し草の上に寝かしつけると、護衛官達は安堵の息を漏らす。

 「何事もなく済んでよかったな……」
 「ああ、ここの者達はルスラやティオキアの人間達と比べると、雰囲気が違うというか」
 「何れにせよ、以前のような事態だけは避けたいところだな」
 「何としてでも、ネフェシェ様を送り届けねばならぬ」
 「それが我らの使命だからな」

 ネフェシェは今も深い眠りに落ちている。
 力が剥がれ落ちてからというもの、彼女は突然意識を失う事が増えていた。
 その頻度と深さは、ルスラの時と比べると雲泥の差である。
 もはや彼女に残されたのは、風の力だけ。
 もし、それさえも失ってしまったら……彼女は一体どうなってしまうのだろうか。
 気が気ではない護衛官達だったが、考えたところでそもそも彼女とは見えている世界が違いすぎた。
 不死の身体を持つ彼女の気持ちを推し量る事もできなければ、その逆もまた然り。
 本当に彼女を救えるのだとしたら、それは彼女が夢に見たという神――創造神イデアをおいて他にはいないのだろう。

 護衛官達は願った。
 数々の困難に直面してきた彼女が、どうか救われるように、と。


EPISODE4 与えられた幸福「幸福とは、ただ平等に分け与えたところで意味をなさない。少女がそれに気付いた時、異変は起きた」


 私は、またあの夢を見ていました。
 せせらぎにも似た音に包まれながら、私へと語り掛けてくる声に耳を傾けます。

 最初は、ほんの小さな声でした。
 ですが、何度も逢瀬を重ねるうちに、ゆっくりと大きくなっていったのです。

 あなたは決まって、先の見えない道で手を差し伸べてくれましたね。
 悩み、苦しみ、悲しみに暮れた時もそうでした。
 わたしが望む時に、必ずあなたは現れるのです。

 だからでしょうか。
 わたしはすっかりあなたの声に、すがるようになってしまいました。
 あなたは、どんなお顔をしているのでしょう。
 あなたは、どんなお声でほほ笑むのでしょう。
 あなたに逢えるのなら、私はどれ程の苦難が待ち受けていようとも、乗り越えられるのです。

 あと少し、あと少しであなたに手が届く。
 そうすれば、私は――

 「――ェ、ネフェシェー?」
 「っん……あ……私、また眠っていて……」

 私は、目の前にいた女の子の声で深い眠りから戻ってきました。
 何か言いかけていたような気もしましたが、どうにも思い出せません。

 「良かったー! ネフェシェ、起きないから死んだと思った!」

 この子がそう思うのも無理はありません。
 皆さんが言うには、本当に死んだように眠っているそうですから。
 最初は、寝て起きても気持ちのいいものではありませんでした。ですが、あの声が鮮明に聞こえるようになってからは、晴れやかな気持ちで目覚める事ができるようになったのです。

 「ネフェシェー? また死んじゃったー?」
 「いいえ、起きていますよ。それより……あなたのお名前は?」
 「名前? 名前、ない! アタシ達、メーヴェ! 砂漠で狩りしてる!」

 メーヴェと名乗る女の子はそう言うと、痩せ細った身体を揺らしながら「にしし」と笑っていました。
 砂漠という過酷な地に生きているにも関わらず、私には何故か楽しそうに見えたのです。
 私は自然と、彼女に尋ねてしまいました。

 「あなたは今、幸せなのですか?」
 「幸せ……? よく分からない。でも、父と母いる。アタシ、いつも楽しい!」

 彼女はまた幸せそうに笑います。
 この辺りは、私の力も行き届いている訳ではありません。なのに、ここに暮らす人々は、とても幸福で満ち足りているような気がしたのです。

 「……私がいたルスラとは大違いですね」
 「ネフェシェ、よく分からない! でも、楽しい!」

 この時、私は思いました。
 最初からこの世界に私などいなくとも、日々を生きる者達にとっては些細な事だったのかもしれないと。
 ただ与えられるだけの祝福に意味はなかったのです。
 そこでようやく私は気付きました。
 私が見ていたのは、世界に生きる者達の未来ではなかったのだと。
 むしろ、私よりも彼女の方がずっと先を見ているとさえ思う。
 長い時を生きてきたのに、私は今まで何を見てきたのでしょうね……。
 もっと早く気付いていれば、私は皆を喪わずに済んだかもしれないのに。
 叶うのならば……もう一度私は――

 「っ……ん!?」
 「ネフェシェ、どうした? お腹、痛い?」

 突然の痛みが私を襲いました。
 その時、私は何かを感じたのです。

 ――今のは、声……でしょうか。

 それは、自身に絶望した私が、
 この世界に授ける最後の祝福でした。


EPISODE5 異形「少女が身籠ったのは、この世に存在する形とは似て非なるものだった」


 それは、明朝の事だった。
 ネフェシェの呻き声に気付いた護衛官達が小屋に駆けつけると、彼女が地面に蹲ったまま動けずにいたのだ。

 「ネフェシェ様!?」

 駆け寄って調べてみると、ふとネフェシェの周りだけ地面が湿っている事に気付く。
 外傷も見られない。
 だが何故これ程までに苦しんでいるのか、彼女を仰向けにしてみると、ようやく原因と思われるものが何か分かった。
 ネフェシェの下腹部が、大きく膨れていたのだ。

 「ま、まさか……これは!?」

 この苦しみように、ここまで極端に張った腹ともなれば、自ずと答えは見えてくる。だが、それはいくらなんでも急過ぎた。
 なんの兆候もなしに、突然“身籠って”しまうなど。
 さすがの護衛官も直面した事がない事態に、急ぎ集落の女たちに助けを求めた。
 小屋にやってきたのは、昨日ネフェシェと戯れていた少女と、少女の母親だった。
 女はネフェシェの腹と顔を見るなり、既にネフェシェが破水している事に気付く。

 オロオロと動揺するだけで何もできない護衛官達を追い出すと、女はネフェシェの下腹部に手を沈める。
 それから数時間後――
 陽が傾き始めた頃に、女は腕に赤子を抱きかかえて小屋を出てきた。
 ネフェシェは無事に子をなしたのだ。
 余程疲れたのだろう、ネフェシェは女が話しかける前に深い眠りの中に落ちていた。

 女は、母親の近くに赤子を置こうとしたところで、ようやく何かがおかしい事に気付く。
 子供が全くと言っていいほど、産声をあげていない。
 いや、それ以上におかしな点がある。
 子供の頭をよく見てみると、耳の少し上の辺りにザラっとした硬い何かが触れたのだ。

 「なんだい、これ……?」

 その得体の知れない何かは、人の子であれば生えてこないもの。
 しかし、その何かは母親がよく目にする物でもあった。
 そう、それはメーヴェの民達が狩りで捕らえてくる獣が生やす――角によく似ていた。
 内巻きに伸びた、真っ黒な角。
 赤子の異様な風貌に、誰も言葉を発せずにいた。


EPISODE6 メーヴェ「生まれた子に未来を託し、ネフェシェは向かう。イデアが待つ原初のうつろへと」


 「私が……この子を、生んだのですか?」

 意識が戻ったネフェシェは、目の前の赤子を見て小さく首を傾げた。
 ネフェシェの胎から突然産まれた子。
 それは、誰も見た事のない姿をしていたのだ。

 褐色の肌に、小さく渦を巻いた二本の角。
 通常の人間の子供ならば、今も産声をあげているはずである。
 しかし、その子供は一度も泣き叫ぶ事もなく、穏やかに寝息を立てていた。
 誰も状況を飲み込めていない中で、ネフェシェは一人思案する。

 「……あの時、私が願ったから……」

 すると、ネフェシェは目を閉じ、何かを確かめるように内側に意識を傾ける。
 程なくして、ネフェシェは告げた。

 「……風の力が、私からその子へ移ったようです」

 驚愕する護衛官をよそに、ネフェシェは至って冷静にしている。
 そのまま間髪入れず、護衛官達に話しかけた。

 「お願いがあります。どうか、その子を皆さんで育ててはもらえないでしょうか」
 「ネ、ネフェシェ様?」
 「希望の力は、私からすべて失われました。もはや豊穣の神などとは呼べません。ですが、私が『原初のうつろ』にてイデア様と邂逅する事で、次の時代が訪れるでしょう。その時に、この世界には彼女がいなくてはならないのです」
 「で、ですが……我々にはネフェシェ様を送り届ける使命が……!」
 「私と共に来ても、その先に未来はありません。イデア様と邂逅する事こそがすべての力を失った私の最後の使命。ですが、その子には未来と希望があるのです。どうかお願いです、私ではなく、その子を護ってあげてください」
 「…………」

 ネフェシェがこうまでして意固地になるのは初めての事だった。それ程までに、この異形の赤子を気にかけているのだろう。

 「…………ネフェシェ様の願いは分かりました。しかしながら我々は、ネフェシェ様とこの赤子の両方をお護りし、身命を賭して行く末を見届けたいのです」
 「ここに残る者達は、この地でメーヴェの民と共に暮らしましょう。いつの日か、ネフェシェ様が戻って来られるその日まで」
 「皆さん……ありがとうございます……」

 それは、ネフェシェが久しぶりに見せた笑顔だった。
 慈愛とも悲哀ともつかぬその笑みは、どこか憑き物が落ちたようですらある。
 誰も彼もが言葉を失い動けずにいると、不意にネフェシェは懐からある物を取り出す。
 それは、一振りの短剣だった。
 全体を翡翠色で覆い、金の装飾を施した儀式用の物。

 「お願い“メーヴェ”を護って……」

 ネフェシェはその刀身へ祈りを込めるように口付けを交わすと、それを護衛官へ渡した。
 その日の内に、ネフェシェ達は集落を後にする。
 イデアが待つ、原初のうつろを目指して。


EPISODE7 想いは、風に消えて「ネフェシェが去りし後、集落に訪れる黒い影。それはすべてを巻き込んで、荒野へと消えた」


 数人の護衛官を連れて創造神イデアが待つ場所へ向かったネフェシェ。
 半数の護衛官は集落に留まり、メーヴェを育てる事を選択したが、その生活は長くは続かなかった。

 夜、寝静まった集落を野盗の一団が襲撃したのだ。
 寝込みを襲われながらも応戦する男と護衛官達だったが、圧倒的な数の野盗を前に、抵抗も虚しく殺されていく。
 夫を殺され、後を追うように自害した女を除いて、女子供は奴隷として囚われてしまった。
 そして、野盗達の魔の手はメーヴェが眠る小屋へと伸び――

 「あぅ……まぁ……」
 「ハァ!? あいつら必死に守ってやがるから、お宝があんのかと思ったらよぉ! 外れじゃねぇか!」
 「物好きな奴にゃ“売れる”かもしれねぇが、邪魔なだけだ殺しちまえ」
 「ヘッヘ、元からそのつもりよ。ガキはやわらけぇ、端からちょっとずつバラすのが……あ、なんだこりゃ」
 「どうした?」

 メーヴェに手をかけようとした男の声に、もう一人の男が振り返る。
 ちょうどメーヴェに手をかけようとした男が、メーヴェの首根っこを掴んで持ち上げている所だった。

 「なんだこりゃ? 頭に変なもんがくっついてやがるぜ」
 「ぅぅ……やぁ……」
 「ハハハ! いっちょ前に嫌がってるぜ! オラ、さっさと泣けよ!」

 男はメーヴェの足を持ち、逆さにするとそのまま地面に叩きつけようと振り上げ――その瞬間、小屋に一陣の風が吹いた。

 「オォ!? ゲホッ、なんなんだ、今の風は!」
 「なんでこんなとこに……って、お前! その腕どうしたんだよ!」
 「あん? 何を騒いで……は!? お、俺の腕が! アァァアァァァ!!??」

 泣き叫ぶ男の足元に転がる腕。
 その横では、メーヴェが小さな手足を上に向けてバタバタと動かしている。

 「まぁ……」
 「まさか、このクソガキ――」

 それが、男の最期の言葉だった。
 突如、集落をまるごと消し飛ばす程の暴風が吹き荒れたのだ。
 人も、物も、すべてが風によってバラバラになり……何もかもが吹き飛んだ後に残されていたのは、穏やかな寝息を立てるメーヴェと、その近くで転がる翡翠色の短剣のみ。

 傍から見れば、ただの赤子に過ぎないメーヴェ。
 だが、希望の力によって形作られたその身体は、ネフェシェと同じく彼女を生かし続けるように絶えず力を消費する。

 それは、皮肉にもネフェシェがもたらした豊穣の力を奪い取っていくかのようであった。


EPISODE8 その瞳に映る世界は「豊穣の神から祝福された少女は、ただ世界を彷徨い続ける。一振りの短剣を、旅の道連れにして……」


 希望の力が周囲の力を吸い取ってメーヴェの生命を維持させようとした結果、環境は荒れ果て、見る影もなく衰退していった。
 吹き付けていた風も止み、辺りは静寂に包まれている。
 辛うじて生活する事ができた風と砂の大地は、一瞬にして過酷な環境へと成り果ててしまったのだ。

 ――それから、次にメーヴェが目を覚ましたのはネフェシェが死の大地へ向かってからおよそ100年の歳月が経過した頃だった。

 周囲の力を吸い上げてきたメーヴェの身体は、彼女が眠っている内に成長していたのだ。

 人の身でいえば12歳ぐらいの身体つきだろうか。
 照りつける陽光に晒される中で、メーヴェはただぼんやりと果てのない砂漠を眺めていた。
 ふとメーヴェは空に浮かぶ太陽が気になったのか、それを掴み取ろうと立ち上がる。
 しかし、何故か体勢を崩して砂地に顔を埋めてしまった。
 大きく成長していた角に、脚を取られてしまったのだ。
 メーヴェは何度も転がりながら、ようやく感覚が馴染んできたのかその場で立ち上がると、ゆっくりと歩き始めた。
 行く宛てなどない。
 頼る者もいなければ、言葉も持たない。
 今の彼女にできるのは、ただ果ての見えぬ広大な砂漠を彷徨い続けるのみ。

 「まぁ……まぁ……」

 異形の子として産み落とされた少女――メーヴェ。
 果たして彼女は、この世界で何を見て、何を感じるのだろうか。
 ネフェシェが祈るように、彼女が正しき道を歩むかどうかは、まだ分からない。




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無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
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