羽生 二三

Last-modified: 2025-10-15 (水) 19:42:46

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※このページに記載されている「限界突破の証」系統以外のすべてのスキルの使用、および対応するスキルシードの獲得はできません。

通常龍至る一手
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Illustrator:kakao


名前羽生 二三(はにゅう ふみ)
年齢17歳
職業女棋士
  • 2024年6月20日追加
  • LUMINOUS ep.Ⅳマップ2(進行度1/LUMINOUS PLUS時点で265マス/累計340マス)課題曲「幻想ロードオブキング」クリアで入手。
  • トランスフォーム*1することにより「羽生 二三/龍至る一手」へと名前とグラフィックが変化する。

将棋の神様と呼ばれた祖父の魂を受け継ぐ女棋士。
極竜王戦の果てに命を落としてしまう彼女の運命をさねる愉快な仲間達は変えることはできるのか…

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1オーバージャッジ【LMN】×5
5×1
10×5
15×1


オーバージャッジ【LMN】 [JUDGE+]

  • 高い上昇率の代わりに、強制終了のリスクを負うスキル。
  • 初期値からゲージ8本が可能で、GRADEを伸ばすと9本も視野に入る。
  • LUMINOUS初回プレイ時に入手できるスキルシードは、SUN PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • GRADE100を超えると、上昇率増加が鈍化(+0.3%→+0.2%)する。
  • スキルシードは200個以上入手できるが、GRADE200で上昇率増加は打ち止めとなる。
    効果
    ゲージ上昇UP (???.??%)
    MISS判定10回で強制終了
    GRADE上昇率
    ▼ゲージ8本可能(220%)
    1235.00%
    2235.30%
    3235.60%
    18240.10%
    51250.00%
    ▼ゲージ9本可能(260%)
    85260.20%
    101264.90%
    ▲SUN PLUS引継ぎ上限
    127270.10%
    177280.10%
    200~284.70%
    推定データ
    n
    (1~100)
    234.70%
    +(n x 0.30%)
    シード+10.30%
    シード+51.50%
    n
    (101~200)
    244.70%
    +(n x 0.20%)
    シード+1+0.20%
    シード+5+1.00%
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADE上昇率
2024/5/9時点
LUMINOUS13157256.10% (9本)
~SUN+257284.70% (9本)
所有キャラ

所有キャラ

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
 
1617181920
スキル
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

近年のGUMINレーベルの例に漏れ(ry

近年のGUMINレーベルの例に漏れ(ry


  • キャラクター名
    • 実在の棋士である「羽生(はぶ)善治(よしはる)」と「加藤一二三(ひふみ)」からとられていると思われる。
  • トランスフォーム版立ち絵
    • 女騎士がいわゆるくっころをするときによくある構図。

  • STORY全体
    • 女騎士ものと呼ばれるジャンルのよくある流れを踏襲しつつ、将棋の世界にそれっぽく落とし込んだものになっている。
      本キャラの職業である「女棋士」も将棋プレイヤーを意味する「棋士」とKnightの意味の「騎士」をかけたものであると思われる。
      • 女騎士ものでは、女騎士が何かの理由によりくっころすることのがテンプレの流れとなっている。
      • 「女性棋士」と「女流棋士」は混同されやすいが、明確に異なる意味を持ち、名乗る難易度は「女性棋士」の方が桁違いに高い。現時点で将棋の女性プロはいずれも「女流棋士」であり、「女性棋士」になれた人はまだいない。ただ、今後誕生しても「女棋士」という言い方はしないと思われる。
  • 対戦相手の名前
    • 女騎士もののテンプレにおいてゴブリン、オーク、オークキングというのは容姿の醜悪さからとりわけ上記のくっころに関するメジャーな種族である。
    • ストーリーの作者が知って書いたかは分からないが、阿久津主税八段という姓が阿久津で段位が八段の棋士は実在しており、全棋士参加棋戦優勝2回を誇るすごい棋士である。当然ながら、作中の阿久津馬王八段のような卑劣な人物では断じてない。
  • 黒乃姫(洗脳された坂本八九)
    • 女騎士ものにおいては女騎士の知り合いがモンスター側に洗脳されて戦わされるのもお約束の展開の一つとなっている。
  • 人格破壊……いや、排泄……?
    • 近年創作された新ジャンル。内容についてはニッチすぎる上にどう頑張っても全年齢向けの記述ができないので各々で調べるように。間違っても未成年は検索しないように。
  • こんな力は望んでいない、正々堂々戦いたいと望む相手を無理やり改造する!(中略)貴様は闇落ちのなんたるかをまるでわかっていない!
    • 闇落ちとは八九のように、光サイドだったキャラクターが洗脳や堕落など様々な理由・要因によってダークサイドになること。闇堕ちや悪堕ちとも。
      創作においては一般・成人向け問わず多種多様な作品で使用されている。
      チュウニのシナリオにおいても度々みられ、メタヴァースレーベルのネメシス化は一種の闇落ちのように描かれている。

  • 「我が前に跪くがいい……エターナル・F・ブレイカー・タイフーン」
    • 中二病コピペではおなじみ「エターナルフォースブリザード」が元ネタか。
      エターナルフォースブリザードについては小ネタ集を参照。
  • 「刀を使ったことは?」「一度だけなら、ありますわ!」
    • アニメ「∀ガンダム」の最終話にて、主人公がライバルと交わした台詞が元ネタ。同作品内ではライバルが主人公に刀を渡し、戦いに決着をつけようとした。

ストーリーを展開

EPISODE1 女棋士、二三「敗者として辱めを受けるくらいなら……くっ、殺せ!」


 ――棋士。
 それは将棋の世界に命を賭けた者たちの称号。
 羽生二三――彼女もまた棋士として生き、棋士として死ぬという覚悟を決めた棋士だった。
 彼女が目指すは極竜王の称号。
 今、その称号を手にする一歩手前まで来ている。
 ――だが、その夢は叶わなかった。

 「こんなところで……」

 顔を歪ませながら地に伏せている二三。
 その顔からは生気が抜け、もう立つ気力すらない。

 「貴様に私の投了を捧げるくらいなら……くっ!殺せ……!」
 「ならば、お望み通りに……!」

 男の手が二三のはだけた肩へと伸び、そこで彼女の意識は途切れてしまう。

 ――これが二三の最後だった。

 「将棋で負けたくらいで、なんであないなことになっとるんや?」
 「おぬしは知らぬようじゃな。将棋とは酷く神経や気力を使うものなのじゃ」
 「つまり?」
 「つまりじゃ、その一戦に集中しすぎてしまい心身ともに疲れ果ててしまったのじゃろ」
 「将棋の世界って、そんなに厳しいのだ!?」
 「おぬしらにはわかるまいな。まあ、わしは将棋を嗜んでおるからわかるのじゃが」
 「なら、今回は八雲にお任せアルな」
 「うむ、任せておくのじゃ!」
 「それじゃあ、とっとと行くで!」

 ――極竜王戦まであと十日。
 将棋の神とまで呼ばれた祖父の遺影を前に私は来たる極竜王戦に向けて精神統一を行っている。

 「お祖父様……私は必ず称号を……」
 『なるほど、おぬしの祖父も棋士じゃったか』
 「……え?」
 『わしの声が聞こえておるか?』
 「なんだ、この音は……声のようなものが途切れ途切れに聞こえるような……」
 『なんじゃ、全部は聞こえておらんのか』
 「やはり、これは声か。そうとわかれば、意識を集中すれば……」
 『聞こえておるか?』
 「これは、子供の声だな。幻聴とは少し違うようだが何者だ?」
 『深くは考えんでよい。わしらはお主を救うためにこうして交流を試みておる』
 「……まさか、私を洗脳しようというのかっ!?」
 『……洗脳?』
 「わ、私の頭の中をいじくり回して、お前たち好みの女にするつもりだな! そして、なんでも言うことを聞くようになった私に、あんなことや、こんなことを……破廉恥な!」
 『や、やめい! 想像するでない! どっちが破廉恥じゃ! わしらはそのようなことは考えておらんわ!』
 「えっ……そうなのか……」
 『なんでちょっと残念そうなのじゃ……』
 「違うというのなら、説明してくれ」
 『つまりじゃな……』

 八雲と名乗る少女の声から、私は自分の未来について聞かされることとなった。
 正直、とても信じられないような内容だった。
 何故なら、私が竜王戦の対局中に力尽き、そのまま帰らぬ人になるという話だったからだ。
 しかし、この声の主が嘘をついているようには思えなかった。

 「なるほど……」
 『飲み込みが早くてなによりじゃ』

 極竜王戦で力尽き、か……。

 「それなら棋士として本望だ。戦場の中で死ねるならそれ以上の死に場所などない」
 『なっ、おぬしはそれでいいのか!?』
 「ああ、それが死力を尽くした結果ならば。だが、私は別に負けるために戦いたいわけではい」
 『なら、いいのじゃが……』
 「さあ、明日から極竜王戦が始まる。今日はしっかり休んで備えなければな!」

 本当に極竜王戦で負けるのならば、その未来とやらを変えてやろうじゃないか。


EPISODE2 極竜王戦、開始!「これが私の極将棋だ、敗北は許されない!」


 迎えた極竜王戦、当日。
 私は会場入りして自分の番が来るのを待っていた。

 『いや、待て。これはどういう状況じゃ?』
 「どう、とはなんだ? 私はただ極竜王戦の出番を待っているだけだ」
 『どうもなにも、なんで極竜王戦がトーナメント戦になっておるんじゃ!』

 会場に張り出されていたトーナメント表。
 私の出番は第二試合からだから、まだ時間はある。

 「なにを言っているんだ? タイトル戦は全てトーナメントと決まっているだろ」
 『そんなの初耳じゃ!』
 「なんだ、極将棋のことを知っていると言いながら、そんな基本的なことも知らないとは」
 『う、嘘じゃろ……ん? 極将棋?』
 「ああ、そうだ。なにか変なことを言ったか?」
 『将棋じゃなくて、極将棋らしいアル。ならトーナメントでも、総当たり戦でもありアルか?』
 『な、なんということじゃ……聞き間違いかと思っておったが、あの極竜王も……』
 「ああ、私が目指すのは極竜王! そしてそのタイトルを保守し続け、そして……永世極竜王と呼ばれることなんだ!」
 『永世極竜王……?』
 「お祖父様が長く持っていた称号だ。でも、それは……いや、なんでもない」
 『まあよいわ、極でもなんでも……』

 なぜか困っている八雲を他所に極竜王戦は進み私の順番が回ってきた。

 「よし、行くぞ!」
 『ま、まあ、出鼻はくじかれたが、将棋であることに変わりはないじゃろ。わしからも助言できるはずじゃ』
 『目指すは極竜王戦、優勝なのだ!』

 ――極竜王戦一回戦、第二試合。
 羽生二三VS五部林蔵

 「ゴブゴブ、来たな! 羽生名人の孫!」
 『ゴブリンなのだ?』
 『ちゃうちゃう、五部林蔵(ごぶりんぞう)やって』
 「お祖父様は関係ない! 私は私、羽生二三だ!」
 「噂通り、生意気な女だ。そういうヤツは“わからせて”やらないとな!」
 「そう容易くやられるほど私は甘くない!」
 「極竜王戦第一回戦、第二試合! 開始!」

 号令とともに、私の極竜王戦の幕が切って落とされた。

 「行くぞ、はあああああっ!」

 私は手に持った歩を叩きつけて、五部林蔵の駒を巻き込んで吹き飛ばす。

 「ゴフッ!? なかなかやるゴブ! さすが、羽生名人の孫だけのことはあるゴブな」
 「この程度、ちょっと腕を振ったに過ぎん!」
 『待て待て待て! なんじゃ、今のは!?』
 「うるさい、試合に集中できないだろう!」
 『いや、なぜ駒で相手の駒を吹き飛ばすのじゃ!?』
 「これが“極将棋”だ!」

 林蔵も負けじと歩を大量に展開して、私の駒を取り囲んでくる。

 「いくら数を揃えようが、歩は歩! 我が一撃の前には無意味だ!」

 私は再び駒を振り抜く。
 さっきは歩だったが、今度は桂馬。威力は段違いだ!
 思った通り、林蔵の歩は吹き飛んでいく。

 「ふっ、勝負にならないな。その程度の腕で、この私に立ち向かうなど笑止千万!」
 「……そいつはどうゴブかね? 盤面をよく見てみるゴブよ」
 「なにっ!?」

 先ほど、吹き飛ばしたはずの歩が再び、私の王将を囲むように大量に打ち込まれていた。

 「ば、バカな、いつの間に!?」
 「ゴブゴブ、所詮は歩と油断したゴブね。これぞ我が五部家に伝わる奥義! 百鬼兵団ゴブ!」
 「なっ!? こ、この数は!」

 林蔵が繰り出してくる歩は百鬼兵団の名の通り、百、いやそれ以上の数が押し寄せてくる。
 このままでは私の王が歩に蹂躙されてしまう。

 『なんだかわからないけどピンチアル!』
 『ど、どないするんや、これ!』
 「あ、ああ、こんな大量の歩に囲まれるなんて……!私は、私は乱暴されてしまうのかっ!」
 『……は?』
 「ひとりを相手にしてもひとり、またひとり……途絶えることのない歩が乱暴の限りを尽くす……っ!最後はボロ雑巾のようになった私に、歩をぶつけて……愉しむ気だなっ!」
 『おおい、なにを考えておるのじゃ!!』
 「はっ、しまった!?」
 「ゴブブ! ほーら、まだまだ歩が増えるゴブよ!」
 『このままじゃまずいのだ! これ以上囲まれたらお終いなのだ!』
 「そ、そうだ、今は試合に集中しなければ!」
 「この状況、お前になにができるゴブか?」
 「私は負けない……!」

 私は高らかと駒を振り上げる。
 その手に持っているのは桂馬――!

 「嵐の如く駆け抜けろ、我が桂馬!シュツルム・ブレイカー!」
 『なんでカタカナなんじゃ!?』
 「なっ!? け、桂馬が竜巻のように!?」

 叩きつけた桂馬が突風を呼んだ。それが盤面を駆け、取り囲んでいた歩を吹き飛ばしていく。

 「密集していたのが仇になったな!」

 そして、大量の歩の中心にいた相手の王将ごと、跡形もなく蹴散らした!

 「ご、ゴブー!?」
 「五部林蔵の王将の再起不能を確認。勝者、羽生二三!」
 「我が棋士道に負けはない!」

 会場に湧き上がる拍手と共に私は高らかに叫んだ。


EPISODE3 突破不可能!? 立ちふさがる歩の壁!「こ、こんなものに潰されて、私が喜ぶとでも思ったら大間違いだぞ!」


 極竜王戦第二回戦、第一試合。
 羽生二三VS大久夜斗

 『……オークナイト?』
 「違う、大久夜斗(おおくないと)さんだ。我々の業界では大久プレスの異名を持つ熟練の棋士だ」
 『いやいや、その前に説明せぬか! なんじゃあれは! どこが将棋なんじゃ!』
 「お前、極将棋を嗜んでいるとは嘘だったのか。その眼でしかと見ただろう。あれが極将棋だ」
 『そんなわけあるか! どこの世界に歩が大量生産される将棋があんねん!』
 「ああいうものなんだ。敵の王将を討つ、わかりやすいルールだろう。そんなことより、対戦相手が来るぞ」

 私の前に現れたのは山のような巨体の男。
 彼の前に立とうものなら、その威圧感だけで押しつぶされていると錯覚しそうだった。

 「ぐへへ、お前みたいな小娘が二回戦に来るとはな」
 「ただの小娘かどうか、確かめてみろ!」
 「おお、やってやろうじゃないか!」
 「では、極竜王戦第二回戦、第一試合! 開始!」

 先手必勝、私は桂馬を構える。

 「嵐の如く駆け抜けろ、我が桂馬!シュツルム・ブレイカー!」
 『いきなりの大技なのだ!?』
 「それは見たぞ、こう避けるんだろ!」

 そう言うと夜斗は王将をひらりと舞い上がらせて私の一撃を華麗に避けてみせた。

 「ば、バカな!?」
 「そんな一直線に来る技、簡単に避けられるんだよ」

 そう言うと夜斗は自分の場に大量の歩を並べ始める。

 「ふっ、なにかと思えば。態度の割には五部林蔵と同じ数でしか勝負できないのか!」
 「そいつは、どうかな?」
 「なに?」

 すると、夜斗は歩を広げて展開するのではなく上へ上へと積み上げていく。

 「こ、これは……!?」
 「これこそが我が肉の壁! 肉弾圧殺だ!」
 「こ、この圧力は……!」

 大きな壁のように立ち塞がった歩の壁が、津波の如くなだれ込んでくる。

 「ぐはっ!?」

 歩によって作られた巨体に私の王将がプレスされた。
 歩の肉壁のあまりの重さに身動きが取れず、跳ね除けることができない。

 「こ、これは……」
 「ほらほら、早くどけないと潰れてしまうぞ!」
 「歩たちが合わさった肉の壁……汗まみれのまま、私を押しつぶそうだなんて……」
 『ま、またなのだ~!?』

 汗臭い肉の塊が、身動きが取れない私を潰して……私を好き放題する……ああ……っ! 私の王将が穢されていく……っ!

 「ぐふふ、どこまで耐えられるかな?」
 「このまま汚されるくらいなら……くっ、ころ――」
 『待つのじゃ、まだ諦めるのは早い!』
 「えっ……?」
 『おぬしは、自分がなにをしにここに来たか忘れたわけではあるまい? そうじゃろう!』
 「くっ……そ、そうだった……私の目的は、極竜王戦に勝つことだ! この程度の壁で、私を封じ込めると思うな!」
 「なにを! 貴様は今、身動きすら――」
 「……いいや、王手だ!」
 「なっ――!?」

 驚いた夜斗が自分の王将を見る。そこには、私の香車がすでに陣取っている。

 「ま、まさか!?」
 「その首、もらった!」

 私の香車が疾走り、夜斗の王将を切り裂いた。

 「疾風と共に駆け、光を置き去りにしろ!ソリッド・ゲイルスプリンター!」
 「な、なんだとおおおおお!?」
 「大久夜斗の王将の再起不能を確認。勝者、羽生二三!」
 「ば、バカな、いつの間に……!?」
 「なにも見えていなかったようだな。自慢の肉の壁で足元が疎かになっている事に気づけなかった。それが敗因だ」
 「く、くそ……!」
 『な、なんとか勝ったのか……?』
 「あのまま潰されていたら、負けていただろう。君には助けられたよ」
 『おぬしが潰されてなどおらんかったら……』
 「あの誘惑に勝てなかったのだ、許せ」
 『なんやねん、こいつ……』
 「お、俺に勝ったからといって調子に乗るな。次の相手は、我らの王だぞ……」
 「王、だと……?」


EPISODE4 破壊破壊破壊! そそり立つは鋼の柱!「ああ、こんなに太くて硬い……! そんなにされたら壊れてしまうだろ……っ!」


 極竜王戦第三回戦、第一試合。
 羽生二三VS大久金次

 「来てしまったか、大久金次(おおくきんじ)。通称、大久の王!」
 『強いのか?』
 「ああ、今度こそ油断したら負けてしまうだろうな」
 『つまり、おぬしが妙な癖を発症しなければ容易く勝てる相手と言うことか』
 「な、なにを言う! 私がいつ妙な癖を!」
 『とにかく、油断せずに行くのじゃ』
 「なるほど、てめえが夜斗をやった棋士か」

 またも巨体の男、いや夜斗よりもまた一回り大きい。
 こんな男が、今度の私の相手だというのか。
 くっ……どんな手を使って来るのだ!

 『おい!』
 「あっ、ああ、いや大丈夫だ!」
 「では、極竜王戦第三回戦、第一試合! 開始!」

 試合開始の合図。
 すぐさま飛車を構えようとするが、前回の夜斗との戦いが頭をよぎる。このまま技を出したところで、この金次には通用しないかもしれない。
 私はギリギリの所で踏みとどまった。

 「なるほど、バカじゃねえようだな。なら、こちらから行くぞ!」

 金次が飛車を構える。
 どんな技が繰り出されるのかと待っていると、歩が妙な動きを始めた。

 「また歩か!」
 「いいや、これはただの歩じゃねえぞ!」
 「なに……ま、まさか!?」
 「そう、成り上がってるのさ!」

 成り上がった「と金」が、金次の手に持った飛車に集まっていく。
 すると、それが金棒のように太くて硬い一本の棒になった。

 「な、なんて、太くて硬い棒なんだ……!」
 『ちょ、言い方! 言い方ってものがあるじゃろ!』
 「あんなものに貫かれたら、壊れてしまいそうだ!」
 『なんで嬉しそうなんじゃ~!』
 「くらえっ! 我らが大久家の一撃を!鉄柱落とし!」

 振り下ろされたと金の棒が私の王将に直撃する。

 「おっっ! な、なんて一撃なんだ……っ!」
 『悦んでおる場合か!』

 わ、私は悦んでなどいない!
 この棒の威力を自ら確かめ、対策を練っているんだ!

 『ほ、ほんまかいな……』
 「ほらほら、どうした!」

 金次はそう言いながら棒を何度も何度も私の王将に振り下ろす。
 激しい痛みが何度も何度も王将を襲ってくる。

 ああ、なんてすごい……!
 こんな棒に何度も打たれたら壊れてしまうぞ……!

 『待て待て、なんで王将が傷つけてられておるのにおぬしが傷ついておるのじゃ!?』
 『そう、前から気になってたのだ!』

 王将とはすなわち、自分。
 そう、王将が受けた攻撃は私が受けたも同じ!
 つまり、一心同体!

 『なんでやねん!』
 「なんだ、さっきから黙って。俺の棒の前に、もう壊れちまったのか?」
 「……だ」
 「んん、なんだって? もう声も出ないのか?」
 「まだ足りない!」
 「……は?」
 「それくらいで私が壊れると思ったのか。まだだ、まだ耐えられる!」
 「ほう、ならもっと食らわせてやるよ!」
 「あひ……っ!」
 「どうだ、身動きひとつ取れず、俺の鉄柱落としで壊されていく気分は?」
 「ふ、踏み込みが足りん! 遠慮しているのか!?」
 「こいつ、まだ耐えるのか!」
 「もっとだ、もっと来い!」
 「くそが!」

 金次が猛った太くて硬い棒を何度も何度も私に向けて振り下ろしてくる。
 振り下ろされるたびに強くて鈍い痛みが私の身体を貫いていく。
 腕に、胸に、お腹に、ズシンと……。
 なんて……なんて、心地いい感覚なんだ……。
 殴られるたびに服が破れ、裂けていくのが分かる。
 どんどん、私の身体が蹂躙されていく!

 『な、なんじゃこれは!? 頭の中に妙なイメージが流れて来てるのじゃ!?』
 『こ、これ、極将棋の駒で作られたマイクロビ――』
 『あかん、それ以上はあかん! こんなもん見せたら色んな意味でアウトや!』
 『いい身体してるアルなー』
 『そんなこと言っておる場合ではないぞ!』
 「フゥ……どうだ、いい加減限界だろ。大人しく敗北を認めて楽になっちまいな」

 私がもう限界だと思ったのか、金次は荒い息をつきながら棒を振る手を止めていた。
 もう満足しただろう、と言わんばかりに。

 ――だが、私はまだ足りていない。

 「随分とぬるいな。限界なのはそっちじゃないか?」
 「なに?」
 「もっと、もっと打ち込んでくるんだ! この程度で私は倒れないぞ!」
 「こ、こいつ……!」
 「さあ、さあ!」

 ええい、なにを迷っている!
 私の心も! 身体も! まだ満ち足りていないのだ!

 「私たちはまだ、高みに昇れるはず!」
 「……や、やめだ」
 「えっ?」
 「これ以上続けたら俺の棒が折れちまう」
 「え、え……?」
 「分からないのか、俺は棄権すると言ってるんだ」

 そう言うと金次は棒を収めて、私に背を向けた。
 そして、なにも言わずに戦いの場から去っていく。

 「大久金次、試合放棄により勝者、羽生二三!」
 『おお、勝ったのじゃ!』
 『二三の精神力がやつを上回ったアル!』
 『やった、これで次は準決勝なのだ!』
 「なんで……」
 『どうした、もっと喜ばんか二三よ!』
 「なんでやめるんだあああああああああ!!!!!」

 私の絶叫は、極将棋会館全体に響き渡ったという。


EPISODE5 ごきげんようですわ! お嬢様棋士登場!「私のことを七光りと呼びたければ呼べばいい。だが、それは私の極将棋を見てからにしてもらおう!」


 極竜王戦準決勝、第一試合。
 羽生二三VS坂本八九

 ついに迎えた準決勝。
 ここを勝ち抜けば、念願の決勝戦だ。
 だけど、そう簡単にはいかないだろう。
 なにせ、相手が相手なのだから。

 「貴女がここまで勝ち残るなんて思いませんでしたわ」
 「八九(はく)、相変わらずのようだな」
 「馴れ馴れしく呼ばないでくださいまし。親の七光りで棋士になった貴女とは違います」
 「またその話か。私はお祖父様の名前で棋士になったわけではない」
 「あらあら、本当のことを言われて怒りましたの?」
 「いや、怒るほどのことじゃない。そういう考えを持っている棋士は多いからな。だから、私はこうして力を示している。七光りではない、私の実力だということを見せるために」
 「……ふん、その減らず口がいつまで続くかしら。さあ、試合開始の宣言をなさい!」

 「で、では、極竜王戦準決勝、第一試合! 開始!」

 先手の八九が、角行を手にする。

 「なに、いきなり角行だと!?」
 「その角で天をも穿て、我が角行!ドリルホーン・スマッシュ!」

 回転を始めた八九の角行が天高く舞い上がる。
 そして、角行はその勢いのまま私の王将へと急降下した。

 「し、しまった、早く避け――」
 「逃げられませんわよ!」

 角行の回転から生まれた風が私の王将を天高く舞い上げて身動きを封じ、そして――

 「穿て!」

 八九の角行が逃げることのできない私の王将を貫く――

 「させるものか! 嵐の如く駆け抜けろ、我が桂馬!シュツルム・ブレイカー!」

 私が桂馬を繰り出して、八九の角行にぶつける。
 激しく火花を散らしながらぶつかり合う桂馬と角行だったが――

 「なっ!?」

 八九の角行によって、私の桂馬は跡形もなく粉々に吹き飛ばされてしまった。

 「あらあら、駄馬がいなくなっちゃいましたわね。私の角の前では所詮、その程度」
 「くっ……! 確かに桂馬を失ったが王は守れた!」
 「でしたら、もう一度守ってもらいましょうか。守りきれるなら、の話ですけど」

 八九は再び角行を構える。
 もう一度、あの技を防ぎきれるのか?
 これではいずれジリ貧だ、打つ手など……。

 「くっ、負けて恥を晒すくらいなら、自ら命を!」
 『諦めが早いのじゃ! おぬし、わざとやっておるのか!?』

 そんなわけない! 私はいつだって真剣だ!

 『ならば、一度冷静になって盤面を見渡すのじゃ』

 盤面を?

 「……ん?」

 八九の角行に目を向けると、微かにではあるがヒビのようなものが入っている。
 もしかしたら、そこに勝機が……!

 「その角で天をも穿て、我が角行!ドリルホーン・スマッシュ!」

 私は残されたもうひとつの桂馬を手に取る。

 「また桂馬? 無駄な抵抗を!」
 「私は負けるわけにはいかない! お祖父様の名に賭けて! 嵐の如く駆け抜けろ、我が桂馬!シュツルム・ブレイカー!」

 今度は私の桂馬と八九の角行がぶつかり合う。
 角行の回転で少しずつ桂馬が削られていくがまだ耐えている。

 「私は負けない!」
 「そんな、ありえませんわっ!?」

 彼女が驚くのも無理はない。
 確かに桂馬は削られているのだが、それと同時に彼女の角行のヒビが広がっていたのだ。

 「そ、そんな!? 私の角が、桂馬ごときに!」
 「桂馬は、二度指す!」

 そして、その瞬間が来た。
 桂馬が削りきれる直前、角行が……砕けた――!

 「なっ!? わ、私の角があああ!」
 「もう貴様を守るものはない! 最後の力を振り絞れ我が桂馬!」
 「しまっ!?」

 八九が他の駒で王将を守ろうとするが、角行が討たれたことに驚いて、その手が遅れていた。
 削れてもはや原型を留めていない私の桂馬が、八九の王将を弾き飛ばす。

 「きゃあああっ!?」
 「八九!?」

 弾き出された王将が八九に直撃してしまい、彼女はそのまま後ろへと吹き飛ばされてしまった。

 『しょ、極将棋の駒が当たっただけで人が吹き飛んだのだ!?』
 「坂本八九の王将の再起不能を確認。勝者、羽生二三!」
 「だ、大丈夫か、八九!」
 「さ、触らないでください!」

 私が伸ばした手を弾くと、八九がゆっくりと立ち上がる。そして、顔を上げた彼女は、私を鋭く睨みつけていた。

 「わ、私がこのような七光りの棋士なんかに……!」
 「八九……」
 「この屈辱、絶対に忘れませんわ。貴女だけは私が必ず……!」

 そう言うと八九は足早にその場を去っていく。
 私はその背中を見送ることしかできなかった。


EPISODE6 決戦前夜、つかの間の休息と過去「ついに迎えた決勝戦……見ていてください、お祖父様……」


 「決勝は後日開催か……」

 会館の人が言うには、今年は激しい駒と駒のぶつかり合いが多かったらしく、試合会場の整備に数日かかることになってしまった。

 『あんなぶつかり合って駒を弾き飛ばしとったら当たり前っちゃ当たり前や!』
 『もういっそのこと、駒も盤も鋼鉄にしたらどうなのだ?』
 「こ、鋼鉄っ!? そんなもので叩かれでもしたら、私の身体はどうなって……くぅぅっ!!」
 『いきなりスイッチ入れんといてえな』
 「ふっ、年々棋士の力も上がっているからな。戦いが苛烈になればなるほど、盤上の戦いも熱くなる。ふ、ふふ……」
 『あかん、もうこれ以上言わんとこ……』

 私は次の決勝戦に向けて、精神を鍛えるべく道場へとやって来ていた。

 『立派な道場じゃな』
 「ここはお祖父様が棋士を育てるために作ったんだ。ご存命のときはたくさんの門下生がいたが……今では私だけになってしまった。当然だな、もう教える者がいないのだから」
 『そうだったアルか……』
 「だが、悲しむことはない。極竜王の称号を手にすれば、この道場も賑わうはずだ」

 お祖父様がいた頃のように、私が導き手として棋士を育てていく。
 それが私の夢なのだ。

 『次の決勝戦、相手のことは知ってるアル?』
 「ああ、もちろんだ。ある意味、とても有名な棋士だからな」
 『有名?』
 「阿久津馬王(あくつまお)。勝つためなら手段を選ばないという棋士だ」
 『手段を選ばないって?』
 「盤外戦術を使う。試合前に出場できない身体にするとも言われている」
 『そ、そんなやつが相手なん!?』
 「しかし、彼が出てくるなんて思わなかった。もう引退して、門下生に任せたものとばかり」
 『門下生がいるのだ?』
 「夜斗や林蔵たちは彼の門下生だ。棋士を蹂躙しながら戦うという素晴ら……コホン、残虐な戦い方をするのも、すべて彼の教えだ」
 『そやつがすべての元凶というわけじゃな』
 「ええ、心してかからないと。不意を打たれたら、いくら私でも奴の手にかかってしまうかもしれない」

 ああ、どんなことをしてくるんだろう……。
 私をどれだけ辱めてくれるのか、楽しみだ……!

 『隙あらばピンクなイメージを頭に流し込むでない!おぬしはちゃんと勝つつもりがあるのか!』
 「当たり前だ! 私は負けたときは自ら命を絶つと決めている!」
 『答えになってないアル』

 私は腰に差した家宝である刀を抜く。
 これがある限り、私はいついかなる時でも腹を切ることができる。

 『よく手入れがされておるようじゃな』
 「ありがとう。これはお祖父様から譲り受けたものでな、“生き恥を晒すくらいなら死ぬべし”と何度も教わってきたんだ」
 『もうツッコム気にもならんわ』
 『まさか、お祖父さんもそれで亡くなったアルか?』
 「ああ、阿久津との戦いでな……」
 『そうだったアルか……』
 「だから、私は阿久津が率いる悪逆非道の輩を討ち、正しき極将棋を取り戻したい! これを果たすには、私が極竜王の称号を手にし、永世竜王となって世直しをしなければならない!」

 私は、ここで負けるわけにはいかないんだ!
 必ず極竜王の称号をこの手に……そして、いつか貴方に追いついてみせます、お祖父様。


EPISODE7 切り札!? 仮面の女に隠された真実!「ついに迎えた決勝戦。なのに相手は仮面の女!?あの人はいったい、誰なんだ……」


 ついに迎えた決勝戦、当日。
 試合会場に来た私が実行委員の男から聞かされたのは思いもよらぬ事だった。

 「あ、阿久津が相手じゃない!?」
 「はい。急遽、他の選手が代理として出場することになりました」
 「どういうことだ! そんなことがまかり通るとでも――」
 「それが通るのですよ」
 「あ、貴方は、阿久津!?」

 阿久津馬王。極将棋を歪めた元凶。

 「どういうつもりですか!」
 「どういうつもりとは? 私はきちんと代理を立てたつもりですよ」
 「決勝戦で代理だなんて、恥を知りなさい!」
 「これは正式に受理されたんです。そうでしょう?」

 阿久津が実行委員の男に話しかけると、男は首を縦に振った。

 「はい、あの方は私たちに実力を示しました。阿久津棋士が連れてきた棋士が、極将棋会館にいたすべての棋士を倒したんです」
 「な、なんだと!?」

 事の始まりは、阿久津が突然代理を立てたいと申し出たのが切っ掛けだった。
 当然実行委員は断ったが、そこで条件として提示されたのが、大会実行委員を含めた全ての棋士を倒す事だった。
 実行委員は試合を管理するだけあって優れた棋士が揃っている。
 だが、その棋士はやってのけた……。

 「それで我々は条件を飲むしかなく……」
 「そんな……」
 「これでわかりましたか。私の代理は正式に認められたものなのですよ」
 「くっ……」
 「では、試合を楽しみにしていますよ。私の棋士と貴女、どちらが極竜王の座に付くのでしょうね」

 そう言うと阿久津は笑いながら去っていった。

 「いったい、どんな棋士が……」

 私は募る不安を胸に抱えたまま試合に望むのだった。

 極竜王戦、決勝。
 羽生二三VS黒乃姫

 「黒乃姫……?」
 「名など、所詮は飾りでしかありませんから。貴女もそうだと思いませんか、羽生名人のお孫さん?」
 「……」
 「さあ、入りなさい」

 阿久津が合図をすると、ひとりの棋士が入ってきた。
 まるでこれから葬式にでも行くかのような黒喪服に顔は般若の面を付けている。

 「貴女は……」

 身体つきで女性だということはわかるがそれ以外の情報はまったくない。
 いったい、どんな極将棋を打つのだろうか。

 「では、極竜王戦、決勝! 開始!」

 開始の合図と同時に、私は香車を手にして最速の攻撃を打つ。
 香車の力はあまり強くないが、相手の手を見るのにちょうどいい手だ。

 「ならば、先手必勝だ! 疾風と共に駆け、光を置き去りにしろ! ソリッド・ゲイルスプリンター!」

 しかし、相手の力は私の想像を超えていた。

 「……」
 「そんな、私の香車が!?」

 私が攻撃したはずなのに、なぜかこちらの香車が相手の歩に弾き飛ばされていた。

 『ど、どういうことじゃ。あやつの歩は動いてすらおらんぞ!』
 「な、なんで!?」
 『待って、相手の駒をよく見るのだ!』
 「あ、あれは!?」
 『全てが成り上がっておるじゃと!?』

 黒乃姫の場に見えた歩は歩ではなかった。
 そこにあったのは「と金」。
 もちろん、歩だけではない。全ての駒が成り上がっていたのだ。

 「バカな、最初から成り上がりなど!」
 「……」

 黒乃姫は何も言わず、まるでホコリを払うかのようにと金を振るう。

 「ぐあっ!?」

 たったの一振りで私の歩たちが吹き飛んでいく。

 『どうするのじゃ、このままでは!』
 「ならば、これを使うまで!」

 私は桂馬を手にする。

 「嵐の如く駆け抜けろ、我が桂馬!シュツルム・ブレイカー!」

 突風と共に駆ける桂馬。
 だが、相手も黙ってみているわけではない。
 その手に持ったのは――桂馬。

 「……」
 「ま、まさか、それは!?」

 見覚えのある構えで桂馬が成り上がった駒、成桂を掲げる。
 覚えがあって当然だ、あれは私の――

 「ファイナリティ・ブレイカー……!」

 そう言うと相手の桂馬が同じように突風をまとって私の桂馬とぶつかり合った。

 「くっ!」
 「……」

 突風を纏った駒同士がぶつかりあったことで暴風が試合会場を包み込んだ。
 立っているのがやっとなほどの風が襲いかかる。
 そして、風が止むと――

 「なっ、わ、私の桂馬が……!?」

 そこに立っていたのは相手の成桂。
 私の桂馬の姿はどこにもない。いや、おそらく消し飛ばされたのだろう。

 「な、なんて力だ……!」

 すると、黒乃姫がまた成桂を構える。
 その姿はまるで、もう一度かかってこいと言っているかのようだ。

 「望むところだ、次こそ!」

 相手は一度使った成桂。
 こちらは新しい桂馬。
 いくら成り上がった駒であろうと消耗しているのなら私にも勝機がある。

 「貴様が相手なら、申し分ない!」
 「……」
 「全てを零に返せ、我が桂馬!零式シュツルム・ブレイカー!」
 「ファイナリティ・ブレイカー……」

 二度、ぶつかり合う駒。
 そして、両者の駒が砕け散った。

 「まさか、この技でも互角!?」
 「っ!?」

 その時、砕けた成桂の破片が黒乃姫の仮面を直撃した。真っ二つに割れた仮面から見える素顔は――

 「あ、貴女は……八九……!?」

 まるで光を失ったかのような瞳。
 以前の彼女とはまったく雰囲気が違う。

 「ふぉっふぉっふぉっ、驚きましたか?」
 「彼女にいったい、なにをした!」
 「ん? 少し改造を施してあげただけですよ」
 「改造だと!?」
 「まだ試合は終わっていないぞ」

 そう言うと黒乃姫、いや八九が成桂を構える。

 「またファイナリティ・ブレイカーを!」

 私に残された桂馬はもう無い。
 なら、これを使うしかないんだ!

 「私の究極を超えられはしない! 正気を失っているのなら、私が目を覚まさせる!」

 私は金と銀を持ち、両手で構える。

 「金と銀が合わさり究極となる! 闇を打ち払え!極式シュツルム・ブレイカー!」
 「私は究極など、とうに超えている」
 「そ、それは成桂! なんで!?」

 黒乃姫の手に握られていたのは一枚の成桂。
 そう、あるはずのない三枚目の成桂だった。

 「我が前に跪くがいい……エターナル・F・ブレイカー・タイフーン」

 ふたつの成桂によって織られた突風は重なり合い激しさを増していく。
 その光景は、まさに神風と呼ぶにふさわしい。

 「きゃあああっ!?」

 その突風に煽られるだけで、私の意識は飛びそうになってしまう。

 『お、おい、しっかりしろ!』
 「そ、そんな、桂馬は二枚のはず……」
 「いつから私のものと勘違いしていた?これは貴様の桂馬だ」
 「私の……はっ!? まさか、最初の桂馬は!?」

 消えたと思っていた桂馬。
 だが、それは相手の成桂に取られていたのか。

 「どうです、闇に堕ちた棋士の力は? 君も同じように堕ちてみませんか?」
 「阿久津……っ!」
 「君ならさぞ優れた闇棋士になってくれるでしょうねえ」

 私が闇棋士に?
 つまり、私も八九のように改造される。
 ん……待てよ、それって、まさか私の身体をいじくりまわしたいって事か!?
 ああそうだ、そうに違いない! それに改造というのだから、己の意思とは無関係に身体が動いてしまうかもしれない――
 くぅぅ……っ! なんて卑劣で――

 「魅力的な提案なんだ!」
 『お、おい、そこは怒るところじゃろが!』

 だって、改造だぞ!?
 どんなことをされたのか気になるだろう!
 しかもだ! あのとき私が八九に負けていたら、改造されていたのは私だったかもしれないぞ!

 『羨ましがるな!』

 見ろ、八九の目を。
 あの目を見るだけで、滾ってくるじゃないか!
 きっと、イヤイヤ改造されて心を失くしてしまったのだろう。人格破壊……いや、排泄……?

 『や、やめぬか~~! とんでもないものを頭の中に流すな!』
 『これは子供は見ちゃいけないアル!』
 『もう遅いて……』
 「き、貴様、嫌がる八九にいったいどんな改造をしたんだ!」
 「嫌がる? なにを言ってるんです。これは彼女が望んだことなんですよ」
 「……え?」
 「勝てる力を与えると言っただけで、ついてきたのですから」
 「え、え……?」
 「彼女は堕ちるべくして堕ちた。さあ、君も力を求めるなら、共に堕ち――」
 「違う……」
 「は? なにが違う?」
 「それは私が望んだ闇落ちではない!」
 「!?」
 「貴様はなにもわかっていない! 嫌がる女を無理やり改造するのがいいんだ!」
 「さ、さっきから、なにを――」
 「黙って聞け!」
 「はい!」
 「こんな力は望んでいない、正々堂々戦いたいと望む相手を無理やり改造する! 身体は闇に堕ちたが、心は残っていて、身体と意志の乖離に悩む! そういう苦しみを与えつつ、自分の思い通りの闇落ちした棋士を使うのがいいんだろ! 貴様は闇落ちのなんたるかをまるでわかっていない!」
 「ひっ……!」
 「こんなものは私の望んだ姿ではない!」

 私は、飛車を手にし――

 「これは極竜王の名を手にするまで使わない……いや、使う資格はないと封印していた。だが、今ここで使う!」

 成り上がらせた!

 「龍王の名を持つ我が駒よ! その力を解き放て!」
 「まさか、それは羽生名人の!?」
 「龍神真具南無!」

 龍王が放たれると同時に会場が閃光に包まれる。
 解き放たれた龍が、凄まじい勢いで盤面を飲み込んでいく。

 『この光はなにアル!?』
 『ま、まずいのじゃ、こちらに干渉するほどの力が放たれておる! もはや、ここに留まり続けるだけの繋がりを保てん!』
 『ど、どうするのだ~!』
 『もうどうすることもできん。二三よ、必ず勝って未来を――』

 頭の中に響いていた声が遠のいていく。
 それに続くようにして、八九の盤面にある駒たちが閃光に包まれ消えていった。

 「これが龍王の力……」
 「いや、まだ終わりじゃない!」

 龍王になった駒は、まだ盤面にすら触れていない。
 本当の力は、これから発揮されるんだ。
 私は、盤面に龍王を叩きつけた。


EPISODE8 解き放たれた龍王! 極竜王、名人二三誕生!「これはまだ足掛かりに過ぎない。私はいつか、貴方を超えてみせます。見ていてください、お祖父様」


 「盤面が、割れた……?」

 私たちの前に残されたのは、全ての駒が吹き飛び、真っ二つに割れた極将棋盤だけだった。

 「な、なんという威力……!」

 試合を観戦していた者はもちろん、阿久津馬王ですら同じように吹き飛ばされて膝を付いている。

 「これじゃあ、試合は中断ですわね」
 「八九!? 貴女、正気に戻ったのか!」
 「貴女の光が、私の闇を払ってくれたのですね……あんな力に手を出すなんて、私は……」
 「元に戻ってくれてよかった。あんな歪んだ闇堕ちを許すわけにはいかないからな」
 「はい? え、ええ、そうですわね……でも、困りましたわ。この場合、試合はどうなるのかしら」

 盤面はもうない。
 お互いの衣服は衝撃で張り裂け、ボロボロだ。
 この立ち合いを見届ける者たちは皆気を失っていた。

 「いや、まだ終わってない」
 「え?」

 私は試合会場に調度品として置かれていた刀を一本取って、それを八九へと投げた。

 「刀を使ったことは?」
 「一度だけなら、ありますわ!」

 私の意図を汲み取ってくれたのか、八九は刀を抜いて構える。私も同じように刀を抜いて構えた。

 「さあ、決着をつけよう。私たちの極竜王戦に!」
 「ええ!」

 刃と刃がぶつかり合い、火花が散った。

 ――あの戦いから、数日後。
 極竜王戦は伝説の戦いとして今でもニュースで何度も取り上げられるようになった。
 その影響は計り知れず、お祖父様の道場には多くの門下生が集っている。もう私ひとりで面倒を見るのも限界だろう。

 「これもすべて、彼女たちのお陰だな」

 彼女たちの声はもう聞こえないが、彼女たちはきっと今もどこかで不幸な末路をたどった者を救っているのだろう。
 この私がそうだったように。

 「名人、そろそろ時間です!」
 「名人はやめてくれ。まだその呼ばれ方には慣れていないんだ」

 私は休憩を終えて、門下生たちが集う道場へと入る。

 「では、稽古の続きだ!」

 極竜王の称号を手にした私のもとには、多くの門下生たちが集まっている。
 お祖父様の頃に比べたら、まだまだ数は少ないが。

 「さて、次はどのタイトルを目指すか」

 極竜王の称号は始まりにすぎない。
 もっともっと、強くならなければ。
 天を駆ける、龍が如く。




■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS / VERSE
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • 名前のモチーフが思いっきり羽生善治+加藤一二三で初めて見た時笑っちゃったなんていうかドストレートすぎる -- 2024-06-26 (水) 00:33:44
    • 一二三と俺のさぁ・・・子供ができたらどうする?え?ドスケベ美女の誕生か? -- 2024-07-08 (月) 01:07:32
  • デカすぎんだろ...って思ったら担当絵師がエロ漫画描いてる人だった -- 2024-06-26 (水) 00:59:04
  • あんまGUMINレーベル見てないけど、最近ずっとこんな路線だとしたら危ない橋渡りすぎて面白い -- 2024-07-07 (日) 18:41:29
  • こんな乳対面に晒されたら集中できないよー -- 2024-07-13 (土) 20:16:07

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