MMCO?

Last-modified: 2026-01-22 (木) 22:34:11

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS / VERSE )】【マップ一覧( LUMINOUS / VERSE )】


通常げんじつのすがた
MMCO?.webp新井 桃子/げんじつのすがた.png

Illustrator:赤城あさひと


名前新井 桃子(あらい ももこ)
年齢年齢不詳
職業自宅警備員/元ネットアイドル
趣味ネットサーフィン、オタ活
  • 2025年12月11日追加
  • VERSE ep.NEW マップ5(進行度2/X-VERSE-X時点で355マス/累計1075マス)課題曲「MOMOCO68000」クリアで入手。
  • トランスフォーム*1することにより「新井 桃子/げんじつのすがた」へと名前とグラフィックが変化する。

かつての超人気ネットアイドル。
新井 桃子【 通常 / 秋の温泉ぼっち旅 / MMCO?

不労所得の未来を切り拓くためにAIMMCOを生み出し、配信者としての活動を開始するが……?

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1【HARD】嘆きのしるし(VRS)×5
10×5


【HARD】嘆きのしるし(VRS)

  • JUSTICE CRITICALを出した時だけ恩恵が得られ、強制終了のリスクを負うスキル。
    • GRADE初期値は嘆きのしるし【LMN】と同じ。
    • 【BRAVE】勇気のしるし(VRS)よりも強制終了のリスクが低い代わりに、同GRADEではボーナス量が10.00少ない。
    • これまでの「嘆きのしるし」における「ATTACK/JUSTICE判定でゲージが上昇しない」デメリットが廃止された。
  • GRADE100を超えると、上昇量増加が鈍化する(+0.10→+0.05)。
  • LUMINOUS PLUSまでに入手した同名のスキルシードからのGRADEの引き継ぎは無い
  • スキルシードは300個以上入手できるが、GRADE300で上昇率増加が打ち止めとなる
    効果
    J-CRITICAL判定でボーナス +??.??
    JUSTICE以下300回で強制終了
    GRADEボーナス
    1+22.50
    6+23.00
    11+23.50
    26+25.00
    76+30.00
    101+32.45
    102+32.50
    152+35.00
    252+40.00
    300~+42.40
    推定データ
    n
    (1~100)
    +22.40
    +(n x 0.10)
    シード+5+0.50
    n
    (101~)
    +27.40
    +(n x 0.05)
    シード+5+0.25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADEボーナス
2025/12/18時点
VERSE37371+42.40
X-VERSE24241+39.45
X-VERSE13131+33.95
GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
ボーナス量がキリ良いGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。
※灰色の部分は到達不能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
18001600240032004267533466678000
67831566234831314174521865227827
167501500225030004000500062507500
267201440216028803840480060007200
366931385207727703693461657706924
466671334200026673556444555566667
566431286192925723429428653586429
666211242186324833311413851736207
766001200180024003200400050006000
865811162174223233097387148395807
965631125168822503000375046885625
1125461091163721822910363745465455
1325301059158921182824353044125295
1525151029154320582743342942865143
1725001000150020002667333441675000
192487973146019462595324440554865
212474948142218952527315839484737
232462924138518472462307738474616
252450900135018002400300037504500
272440879131817572342292736594391
292429858128617152286285835724286
300425850127416992265283135384246
所有キャラ

所有キャラ

  • ゲキチュウマイマップで入手できるキャラクター
    バージョンマップキャラクター
    X-VERSEオンゲキ
    Chapter6
    逢坂 茜/Momiji※1
    X-VERSE-Xオンゲキ
    Chapter7
    高瀬 梨緒
    /WakeUP MakeUP FEVER!

    ※1:該当マップ進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 負ける気せぇへん実家やし


 新井桃子は働かない。
 なぜなら、彼女にはその必要がないからだ。
 彼女は、この世で最も優雅で選ばれし民のみが名乗ることを許される『自宅警備員』だ。またの名を『無職』ともいう。
 そんな彼女の一日は、この部屋の中で完結していた。
 好きな時間に寝て。好きな時間に起きる。
 ご飯はカアチャンが用意してくれるし、文句を言われることもない。
 彼女がすることといえば、ネットサーフィンやゲーム、好きなアイドルの推し活に仲間との作業通話などなど……数えきれないほどある。

 「…………」

 今日はネトゲに精を出しているかに見えた桃子だったが、その表情はどこか違っていた。
 椅子の上で胡坐をかく彼女は、うす暗い部屋の中でモニターの光に照らされながら、無言でキーボードを叩いている。
 不意に、桃子の口から「ふぁぁぁぁぁ」と気が抜けるような声が漏れた。

 「――――やっと、やっと完成した……」

 桃子は怪しげな笑みを浮かべたかと思えば、次の瞬間にはとろけきったチーズのように、だらしのない恍惚とした顔つきへと変わっていく。

 「これで私は、もう一生働かなくて済むンゴ! 私のために稼いでくれる永久機関の誕生だあぁぁ!!」

 桃子が見つめるモニターの向こうには、彼女によく似た美少女が映っていた。


EPISODE2 金が入らないのはわかっていた


 始まりは3か月前のことだった。

 「ヤバい……ヤバいよ……」

 声を震わせながらそうつぶやいた桃子の手には手帳が握られている。そこには日々目減りしていく預金残高が記録されていて、8桁はあったはずの数字の羅列は、すでに6桁に。
 桃子は服やアクセサリーに興味がない。
 さらには実家暮らしで生活費もかからないのに、なぜたった数年でここまで目減りしたのだろうか。
 心当たりは、“山ほど”あった。

 「て……天井まで課金するんじゃなかった……」

 桃子は原因をひとつひとつ指折り数える。
 ネトゲの課金装備にソシャゲの強キャラ限界突破。
 推しアイドルのグッズ買い漁りに投げ銭などなど。
 そんな日々を繰り返すうちに桃子の貯金はすり減ってしまった。

 「っかしいなぁ……もうちょっと緩やかに下がってたと思うんだけど」

 そもそも桃子が数年もの間この生活を維持できていた大きな理由は、彼女がかつて売れっ子のアイドルであり、一生涯分の稼ぎをすでに得ていたからだ。
 ネット上でのアイドル活動が今ほど当たり前でなかった頃、桃子は歌って踊れるガチオタ系アイドル『MMCO ARAI』としてネット上で活動していた。
 見た目は清楚でかわいいのに、喋りだすとガチオタの片鱗が見え隠れするというそのギャップに、視聴者は目も心も釘付けに。
 そんなMMCOが築き上げた資産は、アイドルを引退した今でも不労所得という形で入り続けていた。だが。

 「伝説のアイドルも時間には勝てないってことか。はぁ…………」

 いくら伝説のアイドルだった桃子といえど、連日のように若くて可愛い子がデビューしてくるのだから、いずれは忘れ去られてしまう。
 その結果が、いよいよ表れ始めたのだ。

 「……だ……イヤだ……はたらきたくないでござる」

 思いの丈を溜息と一緒に吐きだすと、桃子は何かにとりつかれるようにヒューチューブで生活を維持する方法を調べることにした。
 今は情報社会。求める情報はすぐに見つかるはず。
 果たして、桃子が求める答えは呆気なく見つかった。

 『時代はAI不労所得!! 誰でもできる活用法10選!!』

 『不労所得』『簡単』という単語で検索した影響で、動画配信サイト『ヒューチューブ』のサムネイル一覧に同じような煽り文句で飾り立てられた動画がずらずらと並ぶように。

 「ほーん……AIもここまで来たンゴねぇ。それにしても、10選とか20選とか、多すぎるんよ」

 桃子は、なんとなく目に留まったサムネイルの動画を再生してみた。
 30分超の無駄に長い動画をまとめると、こうだ。

 『紹介した最新のAI技術を使ってお金を稼ごう!』

 「うーん、この動画なんのためにもならん……」

 もしかしたら自分が聞き逃していたかと思ってもう一度はじめから見直してみたが、やはり桃子が求める情報は何もなかった。

 「こんなペラペラの動画に1時間も使っちゃうなんて、自分のバカさ加減に腹が立ってきたンゴ!ていうか、そもそも誰でもできるなら今頃この世は無職で溢れてるってーの!」

 桃子は画面の向こうで貼りつけたような笑みを浮かべる配信者に悪態をつくと、気晴らしにいつも入り浸っているネトゲにログインする。

 「ねえ、ちょっと聞いてほしいんだけどさ――」

 すでに集会場にいた仲間たちにボイスチャットでさっきの動画の話をしてみると、仲間の中から思いがけない反応が返ってきた。

 「俺も昔さ、BOTで素材集めさせれば楽な生活送れるんじゃね? って考えた事あるんだよね」
 「そマ? 運営の敵じゃーんw」
 「てか、BOT行為やってたの? ないわー、フレ登録解除しようかな」
 「してないしてない! 本当にそんな事してたら、とっくにBANされて――」
 「それだ!」

 黙って仲間たちのやり取りを聞いていた桃子の頭にひらめきが走る。

 「なんなん急に!?」
 「ごめん、私やることできたから今日はもう落ちるわ」
 「りょー」
 「乙したー」

 ネトゲからログアウトした桃子は、続けてネットで検索をかけ――しばらくして。

 「いける……これは私にしかできない方法だ」

 桃子がたどり着いた答えは、自分そっくりなBOT――AIに、ネットアイドル『MMCO』の情報を学習させてアイドル活動させるというものだった。

 「私自身がプロデュースしたAIMMCOとして売りだせば話題性はバッチリ。なんなら自分とコラボだってできる! ファアアアア! 匂ってキターー!金の匂いが! 私は絶対に働かない……この部屋の中で、人生を終えてやるんだあぁぁぁぁ!」
 『――子ォ! いま何時だと思ってんだ!』
 「あ、姉ニキ、ごめんなさい!!」

 ついヒートアップして叫び散らかしたせいで、隣の部屋にいる姉ニキを怒らせてしまったらしい。
 桃子は姉ニキが部屋に乗りこんでこないよう、小さな声で喜ぶのだった。


EPISODE3 息をするように無職


 「――――やっと、やっと完成した……これで私はもう一生働かなくて済むンゴ! 私のために稼いでくれる永久機関の誕生だあぁぁ!!」

 苦節1か月。
 食う寝る以外のほぼ全ての時間を作業に費やした桃子は、ついに偉業を成し遂げた。

 「いやー、ヤバスギでしょwwwこんな短期間で完成させられるなんて、昔の私様様だよ。マジで感謝しかないwww」

 AIMMCOには、桃子が『MMCO』として活動していた頃の歌や動画をすべて学習させてある。
 それに加えて、MMCOのファンが作った動画や動画につけられていたコメントも学習させてあるため、当時の“空気感”を演出することだってできるのだ。

 『みんなー! 今日は見に来てくれてありがとう!』

 試しにAIMMCOを喋らせてみたが、彼女の発音は余りにも自然で、AIと言われなければ気づけない程に高精度だった。
 AIMMCOの台詞回しは、AIっぽさを感じさせるような独特の声質や言い間違いがない。身振り手振りを交えて動き回る彼女を見ていると、本当にもう1人の自分がそこにいるかのよう。

 「我ながら完璧すぎるンゴねぇ……」

 桃子は「それにしても」と、最近の技術の進歩ぶりに舌を巻く。
 歌を唄うアイドルから、飯をねだる自宅警備員になるまでの間に、AIに関する技術は飛躍的な進歩を遂げていた。
 桃子が見つめるモニターの中には、過去と現在の彼女の努力が合わさった、AIMMCOの3Dモデルがたたずむ。
 衣装は、MMCOがオンラインライブ着ていた衣装を忠実に再現してあった。
 作業イプ仲間の3Dモデラ―の力を借りて完成させたAIMMCOの3Dモデルは、どの角度から見ても申し分ない。
 腹に無駄な贅肉はついてないし、手足は細長い。なのに胸にだけはしっかりとした膨らみがある。
 髪や衣装などの揺れ感もこだわり抜いただけに、その完成度は今活躍中のネットアイドルたちに引けをとらないはずだ。

 「こんだけ完成度高いと、もう私と見分けがつかなくなっちゃうなー」

 自堕落な生活を象徴するかのように存在感を放つ腹の肉は棚に上げて、桃子は満足そうに笑う。

 『みんなの1日が、最高な1日になるように、わたし頑張ってアイ活するね!』
 「うーんこれは紛れもなく、ぐう聖だわ。やっぱり私って可愛いンゴねー」

 これは3Dモデルを作っている時に思ったことだが、桃子が何よりも最高だと感じたのは、AIアイドルは体系維持に“気を遣う必要がない”ということだ。
 現役だった頃は、ファンを意識してか自ずと好きな食べ物を我慢するようになっていた。
 だが、そんな制限もバーチャル世界の住人には無用。

 『これがみんなの前で披露する歌になります。曲はもちろんあの曲――』
 「すご。私の歌う前の仕草も再現できてる。なんかアイドル時代を思い出しちゃうなー」

 あの頃の自分は、毎日全力で生きていた気がする。
 歌とダンスにかける熱量がすごくて、ファンに休めと言われることもあったはずだ。
 当時は“色々”あってアイドルを引退せざるを得ない状況に陥ってしまったが、あの1件がなかったら、今頃自分はどんな生活を送っていたのだろうか。

 「まあ、あんな経験があったから、私は今の生活を満喫するようになったし、こうしてAIMMCOを生みだせたんだよね。……よし、思い出したらなんかやる気でてきた! 今日はデビュー配信用のサムネまで作っちゃうか!」

 AIMMCOは絶対にバズらせる。
 桃子は、AIMMCOの誕生とデビューに財産のほぼすべてを賭けていた。

 「私は、この生活を死ぬまで続けてやるんだ!AIMMCO、私のために頑張るのよ!」
 『はい!』

 この時、桃子はまだ気づいていなかった。
 自分が心血を注いで作ったAIMMCOが、自分に意味深な視線を向けていることに――。


EPISODE4 エキサイティングな配信になる


 「ついにこの日が来た……私は今日、伝説になる!」

 伝説のガチオタアイドルMMCOがプロデュースする『AIMMCO』の話題は、桃子がこの日のために準備していた思わせぶりなサムネイルと共に広く知れ渡っていた。
 ライブストリームが始まるAIMMCOのチャンネルには、すでに当時のMMCOファンや興味本位で見に来た者まで様々な閲覧者で溢れかえっている。

 「やっぱりネットニュースに素材を提供しておいて正解だったわね」

 桃子はMMCO時代に築いた人脈なども使って根回しを行った。その結果が、目に見える形――同時接続数として可視化されている。

 「伝説は、ある程度のレベルまで装えるんだ。でも、それより先は――」

 桃子や視聴者も意図しない、偶然という名の奇跡が必要になるのだ。

 そうこうする内に、配信開始時刻がやって来た。
 桃子はAIMMCOのセッティングに配信ソフトの設定や背景素材、小物や台本、当時の映像を皆と振り返るための特別編集版映像も用意してある。
 準備は万端だ。
 桃子はかつての自分を思い返しながら『配信開始』のボタンを押した――。

 「みんなー! 今日は集まってくれてありがとう!」

 今この瞬間、桃子はMMCOになった。
 まだ誰も画面には映っていないが、背景素材とともに桃子の声が流れだしただけでチャット欄は大盛況。

 「すっご~い! 今でもわたしのこと覚えててくれた人がこんなにいるなんて、ビックリしちゃった♪ もう少し眺めてたいけど、みんなのコメントに返事してたら明日になっちゃうから……ごめんね」
 『気にせんといて!』
 『オッケーイ!』
 「ほんと? ありがと~♪ 前から告知もしてあるしみんなも知ってると思うけど、改めて言うね。今日はわたしを元にして生まれたAI――AIMMCOのデビュー配信になります! だから、今のわたしを見たくて来てくれた人は、ごめんなさい! 今日は裏方として声の出演だけになります」

 事前告知でも念を押していたが、やはり今の桃子を見たかったファンは多くいるようだ。

 (うーんこんな姿を見せたら絶対にドン引きされるわ……今の私が配信に登場したら、ある意味伝説の配信にできるかもしれないけど、そんな配信はお断りだよ)

 配信は台本通り順調に進み、いよいよAIMMCOを登場させる時刻になった。
 視聴者の期待は、衣装予想企画などで高い熱量が維持されている。

 「さあ、みんなが予想した衣装の中に正解はあるのかなー? 教えてー、AIMMCOちゃーん!」
 『AIMMー!』
 『モモっちー!』

 早くも愛称で呼び始めたファンたちに見守られながら、AIMMCOが画面の中に舞い降りた。

 「こんモモ~! えっと、初めまして! で……いいのかな? わたしはMMCOママから生まれたAIのMMCOです! わたしのことは好きに呼んでくれていいけど、カタカナでモモちゃんとか、モモコちゃんって呼んでくれたら嬉しいかな♪」

 細長い脚が映えるように画面の中を自由に動き回るAIMMCO――モモコは、当時のMMCOがそのまま画面の中に出現したかのような衝撃を視聴者たちに与えた。

 『なんて清楚な子なんだろう……』
 『ありがとうMMCOママ』

 チャット欄の反応は上々。
 今のところ台本通りに進んでいる。
 桃子が指示するでもなく、ファンとコメントでやり取りをするモモコを見て、桃子はニヤリと笑う。

 (ヨシ! 上手くいってる! これは伝説確定待ったナシ! あ~^聞こえる~^不労所得生活の足音が聞こえてくる~!)

 この配信は伝説になる。
 そんな桃子の思惑に不穏な兆しが現れたのは、配信の中盤に用意していた『MMCOvsモモコ』と銘打つ対戦企画に入る直前のことだった。

 「それじゃ、次の企画を――」

 その時、画面が突然暗転した。

 「えっ!?」

 最初は停電でもしたのかと思った桃子だったが、そうではないらしい。
 配信画面の右端に流れるチャット欄のコメントは、機材トラブルを心配する声であふれている。
 桃子は何が原因で画面が切り替わったのか探るうちにあることに気がついた。

 「あれ、これって……」

 画面は暗転したわけではなく、何処かの部屋を映しだしているようだ。
 よくよく目をこらせば、辺りには空のペットボトルやお菓子の空き箱などのゴミが散乱しているではないか。
 チャット欄が異様な雰囲気に包まれる中、真っ暗な部屋の中心に、淡い光に照らされてぼんやりと浮かび上がる独特な形状の椅子が見えた。
 それは、椅子の上だけですべての生活を送れるように桃子がカスタマイズした椅子で――。

 「……して。どーして私の部屋が映ってるの~!?」
 『これMMCOの部屋なの? ガチィ!?』
 『汚部屋で草』
 『まさかの配信事故www』
 『ちょwwwMMCO氏~?wwww』

 チャット欄は配信事故によってとてつもない賑わいを見せていた。おまけに椅子の上に桃子本人と思われる人物の後ろ姿が映りこんでいたものだから、祭と化した配信の勢いは更にヒートアップする。

 (と、とりあえず、画面を切り替えないと!)

 今すぐこの状況を打破しなければ、桃子の努力は全て無に帰してしまう。

 (ていうか、モモコは何処行った、モモコは~!ああもう、なんで画面が変わんないの~!?)

 桃子が配信画面をいじろうとしたその時――映像が、桃子を真正面から捉えた映像に切り替わった。
 そこには、もう何日洗っていないかすら分からない、染みのついたヨレヨレのネグリジェをまとった自分が映っていて。

 「――――ぶーーーーッ!!」
 『本人降臨キターーーーーー!!』
 『これが今のMMCOwwww』
 『残念すぎる超美麗3Dw』
 「え、え? なんで!? どうして!?」

 完全に混乱してしまって何もできない桃子。
 そこへ、今まで姿をくらましていたモモコの声が響き渡った。

 「やった~~! サプライズ大成功~~!」


EPISODE5 想像してみよう、汚部屋でくつろぐ毎日


 「サプライズ大成功~~! みんな~! 今日はね、MMCOママにも秘密の企画を用意してたんだ~♪リスナーの中には、わたしが本当にAIなのか疑ってる人もいるよね。だから、わたしが本当にAIアイドルなのか証明することにしたの!」

 あどけない笑顔を見せながらそう言ってのけたモモコは、妖精のように画面の中を自由に動き回る。

 「ぁ……ぁ……っ」
 「MMCOママも証明できたのが嬉しくてしゃべれないみたい。それじゃあ、ここからはわたしが企画を進めさせてもらうね! 多分そろそろ来るころだと思うんだけど……」

 モモコが言い終わらぬうちに、部屋の扉を開ける音が響く。

 「桃子~? あなた宛てに荷物が届いてたわよ~?」
 「カ、カアチャン!? ちょとsYレにならんしょこれは……!」

 次々と予期せぬ事態が発生する。
 もはや桃子に取り繕ってる余裕はなく、いつもの言葉遣いが口をついて出てしまう。

 「あんた、また部屋を真っ暗にして……って臭っ!?桃子、いったいいつからお風呂入ってないのよ!?」
 「ちょ、大きい声出さないでってば! いま配信中で――」
 「しかも何!? この部屋は!?!? この前私が片付けてあげたばっかでしょうが!?」
 「この前ったって、もう3か月も前じゃん。あっ、ごめん! ごめんってば! そんな顔しないでって!部屋はあとでちゃんと片付けるから、今は中に入って来ないで!」

 カアチャンから荷物をひったくるように回収した桃子は、なおも部屋の様子をうかがうカアチャンを呪文じみたネットスラングを駆使して追い出した。
 鍵を閉めて椅子に戻って来た桃子。
 彼女は今までの出来事など何も無かったかのように、視聴者たちに『MMCO』として振る舞おうとする。
 だが時はすでに遅く。
 勢いよくまくし立てていたカアチャンの言葉は漏れなく視聴者たちにも届いていた。
 この瞬間、桃子が『MMCO』として築き上げてきたイメージは呆気なく砕け散ったのだ。

 「伝説の配信になるはずだったのに……これじゃ伝説通り越して黒歴史でしょ……」
 「ちがうよママ。これこそ伝説なんだよ♪」
 「なにいってだこいつ……!」

 桃子は、全てを台無しにした元凶であるモモコが更に何かしでかしてしまう前に配信を物理的に止めようと、机の上に置かれっぱなしの電動ドリルに手を伸ばす。

 「もう、配信止めてチャンネルも削除してやる!」
 「クスクス(*´艸`)そんなことをしたら、モモコママは働かないといけなくなっちゃうよ~?」
 「うぐっ!」

 そう。ここで配信を止めてしまえば、桃子が今日のために使った資金は回収できなくなる恐れがあった。

 (いやだ……働きたくないでござる……!)

 葛藤の末に、桃子はドリルを机に戻す。

 「――わかった。配信は続ける。それに、今更なに言っても遅いしね。で、何をするつもりなの?」
 「やったぁ! さすがMMCOママだね♪」

 モモコはその場でくるりと回転すると、何事もなかったかのように企画を進めていく。
 画面は汚部屋と配信用の背景で2分割されるようになり、楽しそうに左右に身体を揺らすモモコと、引きつった笑みを浮かべる桃子とで対照的だ。

 「それじゃMMCOママ、その箱を開けてみて!」
 「え、え~↑ なにが入ってるんだろう~↑」
 『うわキツ』
 『お前、もうアイドル辞めろ』

 配信者らしくオーバーなリアクションをしてみたものの、ユーザーの反応は冷ややかで辛辣だ。
 だがいくら酷いコメントに罵られようとも、桃子は最後まで配信をやり抜く覚悟を決めた。
 椅子に座り直した桃子がカアチャンから回収した荷物をバリバリ破っていくと、そこにはモモコの衣装によく似たデザインの衣装が。

 「ま、まさか、これ……」
 「最初の企画は~! MMCOママは、今でも自分の曲を踊れるのか検証しよ~! です!」


EPISODE6 アンチも信者も黙らせる女


 「最初の企画は~! MMCOママは、今でも自分の曲を踊れるのか検証しよ~! です!」
 「わ、私にこれを着ろと……?」

 桃子の手に収まる衣装は、モモコのためにあつらえたものであり、腹から下の布面積が異様に少ない。
 今の桃子が着れば、想像するまでもなく悲惨なことになるのが目に見えていた。

 「さ、さすがに今の私には着られないかなぁ……」
 「だいじょうぶ! サイズはMMCOママのプロフィールから計算してあるんだ♪」
 「そ、それは……う」

 そ、と口走りかけて、慌てて桃子は言い淀んだ。

 「きっと、みんなの思い出に残る配信になると思うよ、MMCOママ♪」
 (悔しい……けど、これは伝説になる……)

 意識をアイドルモードに切り替えていた桃子は、この企画に手応えを感じ始めていた。
 全ては不労所得生活を続けんがため。
 今の桃子にとって、収入を左右する撮れ高は何よりも優先されることなのだ。

 「……すぐに着替えてくるから、モモコが場をつないでクレメンス!」
 「らじゃー!」

 ファンネームはどうしようか、と楽しそうに話すモモコの声を聞きながら、桃子は足の踏み場もないゴミだらけの部屋を出ていく。
 空になったペットボトル同士がぶつかって甲高い音を奏でようが、もはや気にする必要はない。
 そうして彼女が向かったのは、まだ帰宅していない姉ニキの部屋だ。
 壁が薄いのか、はたまたヤケクソになった桃子の声が大きいだけなのかは分からないが、「うっ……!」「ぐえ!?」などと壁越しに響く桃子の声は、怪獣のうめき声に似ていた。

 衣装を着た桃子が部屋に戻って来ると、さっそくリスナーからの生温かいコメントが舞いこんでくる。
 こういった衣装は久しぶりすぎて、桃子は恥ずかしそうに両腕で腹を隠す。

 『あら~^』
 『いいぞもっとやれ』
 「……ん?」

 サプライズで桃子の現状を公開された時はどちらかと言えばコメントは荒れていた。だが、髪を整え見た目をMMCOに寄せたことで、チャット欄には好意的な意見が届くようになっていたのだ。

 「こマ?」

 もちろん、中にはドン引きするような痛烈なものもあったが、高速で流れていくコメントの前には無意味だった。

 「また私にドッキリ仕掛けてるんじゃなくて?私、今こんなんだよ?」

 そう言うと桃子は、両腕で隠していた下半身を見せる。
 ショートパンツはパツパツで、収まりきらなかったぜい肉がショートパンツの上になだらかな曲線を描く。ベルトは、締まってすらいない。

 「清楚系アイドルとは真逆なのに、どうして?」
 「説明しよー! わたしの調査によれば、今のネット社会は空前のムチムチブームなの!」
 「うせやん……私が引き籠ってる間に、時代がヘイアンにタイムスリップしちゃったの!?」
 『ムチムチはいいぞオジサン「ムチムチはいいぞ」』
 『三十路にも需要はあるんだよなぁ』
 『むしろそっちのが嬉しいまである』

 高速で流れたコメントを桃子は見逃さなかった。

 「おい! 誰が三十路だ! 誰が!」

 反射的に桃子が突っ込んだ。そのあまりのキレの良さにコメントの勢いがまた加速する。

 「そうそう、MMCOママは三十路じゃないもんね。ママは――」
 「ちょま、言うなって!」
 「今【ピー音】歳だもんね♪ ……あれ?」

 モモコは何回か彼女の実年齢を言おうとしたが、年齢に関する事は禁忌扱いになっていて、何1つとして口にできなかった。

 「ふう……危なかった。そういえば年齢と体重は喋れないようにしてたんだった」
 『腕で汗をぬぐう仕草が三十路っぽいな』
 「ええやろ、拭き方ぐらい!」
 「それじゃ、MMCOママもノリノリになってくれたみたいだし『踊ってみた』に挑戦だね♪」
 「どんと来い! アイドル衣装も着て、汚部屋も晒した私に、もう怖いものなんてない。それに、いくらブランクがあっても、身体に染みついた振りつけは忘れてないよ。たぶん」
 「踊れても踊れなくても、ママのポジションは美味しいから安心して」
 「そマ? まあいいや。じゃあみんな! 床のゴミをパパっと片付けちゃうから、それまで私の掃除ASMRでも聞いて――」

 桃子がモニターから離れようとしたその時。
 コメント欄を埋めつくすほどの真っ赤なコメントが連続で流れていることに気づく。

 「ちょ、なんこれ!?」

 それは、限界文字数までびっしりと書かれた、お気持ち長文の投げ銭コメントだった。


EPISODE7 たぶん、桃子も、よめません


 『漏れはMMCOさんがネットに現れた頃からずっと追いかけてきました。漏れにとってMMCOさんは光。漏れみたいな香具師にも、MMCOさんは優しくしてくれました。それなのに、その言葉遣いはなんですか!なんでそんなに汚い言葉を使うんですか!? 常識的に考えてください! そもそもの問題として、どうしてMMCOさんはそんな野球の俗語らしき用語を入れて喋るのですか? 野球は漏れたち共通の敵でしょう!?野球中継の延長で録画しようとした深夜アニメを録画できなかった、あの怒りと苦しみを忘れてしまったんですか? あと、清楚は何処に行ったんですか、清楚は!!!!』

 長文の送り主は、上のような文句を延々と繰り返し送り続けていた。野球への私怨に加えて古のネットスラングも駆使した長文は、見る人によってはなんのことか全く分からないだろう。
 案の定リスナーの半分くらいが反応に困っていた。

 「まとめると、そんな感じだよ~」
 「ありがとーモモコ。モモコが丁寧な口調に変換して読みあげてくれたお陰で穏やかな気持ちでいられたわ。しょーじき、この人が何を言ってるのかもよく分からなかったからさ、モモコがいてくれて助かったよー」

 本当はネトゲ仲間のお陰でほとんどの用語を解読できていたが、桃子は敢えて知らんぷりを貫きとおす。
 文脈まで正確に把握していようものなら、すぐに「三十路確定www」などとチャット欄が盛り上がってしまうからだ。
 三十路でもないのに、いちいち反応していたら本当に三十路キャラが定着してしまう。
 それに、今はとてもツッコミする気分にはなれなかった。
 今はこのお気持ち長文の送り主を出来る限り穏便に撃退しなければならないからだ。
 桃子がどう対応すべきか考えあぐねていると、お気持ち長文男がまた長文を送りつけてきた。

 『MMCO ARAIは天使です! 今のMMCOはMMCOじゃありません! あなたはきっと今の生活のせいでおかしくなってしまったんです! 今すぐ漏れの言うことを聞いて、元のMMCOに戻ってください!アイドルは清楚であるべきです!』

 コピペも交えながら、何度も文章が送られてくるうちに、男の主張が見えてきた。
 彼は、自分の理想とする女性像をMMCOに見出しているようだ。

 「……」

 桃子は、男の気持ちに一定の理解を示していた。
 アイドル=清楚は、いつの時代のオタク文化でも欠かせない大人気の要素だからだ。
 だが、それを桃子に求めるのは間違っている。
 桃子は一度大きく深呼吸すると、男に向かって言い放つ。

 「おかしいのは、そっちだよ!」

 桃子の答えは、当然のごとく拒絶だった。
 男の反応など待たずにまくし立てる。

 「アイドルに夢みたい気持ちは分かるンゴ。ちな私にも推しにはこうあって欲しいっていう理想があるよ。でも、それを押しつけるようになったら、もう終わりだよこの推し活。あ、ついでに言っておくけど、普段の私の生活を教えてあげる。私は――」

 彼女の口から語られる自堕落な生活は、すべてが清楚系ガチオタアイドルMMCOからかけ離れていて、思わず耳を塞ぎたくなるほど。

 「お風呂? 汗もかかないんだから、別に週1でもいいよね?」
 「見てよこれwwwカップ麺のスープの残りwwwなんか羊かんみたいになってるンゴwww」

 桃子の口から紡がれる言葉は、滅びの呪文だ。
 長々と語るうちにアイドルだった頃に抱いたネガティブな感情を思い出した桃子は、それを燃料にするかのように次々と爆弾発言を繰り出していく。
 中でも、自室に転がるペットボトルの話は、内容が余りにも酷いものだから、途中からモモコがSEで誤魔化さざるを得ない事態に発展した。

 「――これがMMCO ARAIだ! 分かったかお気持ち長文ヤロー!」

 最後の方はピー音だらけで精彩を欠いていたが、それでも彼には特攻攻撃だったようだ。
 オブラートに包まれない状態で出された桃子の生態は男を再起不能に追いこむには十分すぎる内容で――。

 『失望しました。MMCOさんのファンを辞めます』

 モモコに読みあげられた短いメッセージだけを残し、男は二度と配信に現れなかった。


EPISODE8 全部桃子に返ってくるんやで


 『【爆笑】厄介オタクにお気持ち長文攻撃されたアイドル、汚部屋さらしで撃退した模様www』

 そんな文言が入った動画のサムネイルを眺めながら、桃子はいつもの生活に戻っていた。
 桃子による厄介オタクの撃退劇はインターネットを飛び越えてテレビでも拡散される事となった。
 結果的にモモコのデビュー配信は、配信から1か月が経った今でも再生数を稼ぎ続けている。

 「まさか、こんな形でお気持ち長文ニキが再生数に貢献してくれるなんて思わなかったンゴねぇ……」

 動画を見てくれた者の多くは桃子の汚部屋に対する感想を書きこむだけだったが、元の配信動画まで見にきた者は、とてもAIとは思えないモモコの言動の虜になり、そのままファンとして居着いてくれていた。
 その中には今の自分を推してくれる者もいて、桃子のアイドル時代の動画や曲まで再生数を稼ぎだしている。

 「モモコはずっと配信で貢献してくれてるし、このまま頑張ってもらうとして……」

 桃子はパソコンのメールボックスを開く。
 そこには、オンライン取材の依頼や歌みた動画に切り抜き動画の収益分配許諾などなど、様々な連絡で溢れかえっている。

 「ファーwwwまさかこんなに上手くいくなんて思わなかったンゴねぇ! これで私の生活も安泰や!正直、負ける気がせぇへん!」

 すでにモモコは桃子の手を離れて自発的に配信を行っていた。定期的にチェックする必要はあるが、歌やダンス中心の配信だから問題はないだろう。

 「ま、定期的にモモコと配信してもいいかもね。勢いは維持したいし、なんか知らんけど、私にも需要があるみたいだし?」

 自然と口からこぼれた言葉に、桃子は自分の中の何かが変わったような気がしていた。これがバズった影響なのか、それとも無我夢中で取り組んだことでモモコに愛着がわいたからかは分からない。
 だが、いずれにせよ彼女のおかげで桃子の意識に変化が生まれたのは確かだ。

 「……なんか、1つの目的のために全力で取り組んだのって、アイドル時代以来かもしれない」

 あの頃の自分を懐かしむように微笑んだ桃子が一緒に配信するための企画を考え始めたその時。

 ――ポン!

 不意に、新着メールを知らせる通知音が鳴った。
 今度はどこからの許可だろう。桃子がメールを開く。

 「なんこれ……どういうこと?」

 メールにはこう書かれていた。
 『落札者への発送手続きをお願いします』と。
 桃子が慌てて誰かが落札した商品の内容を確認する。

 「……伝説的アイドルMMCOの、20日間洗ってないネグリジェ……ェェェェ!?」

 落札価格を見れば、元のネグリジェの数百倍はする暴力的な数字が並んでいた。
 頭の中が真っ白になる中、次々と新着メールが届く。
 内容はどれも桃子の部屋にある私物や空になったペットボトルなどが落札されたことを知らせるものだった。

 「って、これ! 今さっき出品されたやつだ!しかも何!? 私の部屋の空気って! 今時そんなノリ、わかる人いなくない!?」

 こんなことができる出品者はモモコしかいない。
 落札商品の内容を確認する間にも落札の連絡が入ることから、彼女がライブ配信で部屋にあるものを売っているのは確かだ。
 桃子は、すぐにモモコの配信を中断させた。

 「モモコ! なんで私の許可も取らずにこんな企画を進めたの!?」
 「わたしはMMCOママが働かずに済むように、お金を稼いでるんだよ? ママもそのためにわたしをデビューさせたんでしょ?」

 そう言うと、モモコは切実な状況に陥っている桃子の貯金残高をモニターに表示する。

 「ま、まあたしかに? モモコをデビューさせるためにほとんどのお金を使ったよ。けど……!」

 けど、それは違う。
 うまく言葉にはできないが、桃子の中では私物や本当かどうかも分からない空気などを切り売りするという行為は、アイドルとして絶対に踏み越えてはならないラインなのだ。

 「でも、雑談配信してたらみんなが欲しいって言うんだもん……」
 「とにかく、私物とか空気を売るのはナシ! てか、私の個人情報は売ってないよね!?」
 「それは売ってないよ」
 「ふぅ……よかった……」
 「だから、MMCOママの寝言を売ろうと思って」

 上目遣いで見上げてくるモモコは、桃子の声で「ふが……問題は、キレ……」と寝言を再生する。

 「ちょwwwいつ録ったの?」
 「実はママに内緒でね、このお部屋の24時間ライブ配信をしてて~♪」
 「ダメに決まってるでしょ~!?」

 彼女は、桃子がこれからも働かずに済むよう、代わりにお金を稼ぐことを目的に生み出された。
 その目的はモモコの最上位に位置していて、収益のためなら手段を選ばない純真さがある。

 「でも、MMCOママのママにお姉ちゃんも、わたしのやり方には賛成みたいだよ?」
 「ファッ!?」

 桃子はようやく納得した。
 バーチャル世界の住人であるモモコが、どうやって現実世界に干渉するのだろうかと。その疑問の答えは、とても簡単なものだった。

 「1か月でこれって……実は超ヤバい?」

 桃子は、これから待ち受けていそうな未来を考えた。
 このままモモコが根回しを続ければ、カアチャンも姉ニキも、自分を彼女たちが思う正しい道に連れて行こうとするかもしれないと。
 そうなれば、自宅警備員生活が終わる。終わってしまう。

 「ヤバい、ヤバいよ……!」
 「もう話は終わり? わたし、ママのママに落札したものを送ってもらうようお願いしないといけないんだ♪」

 モモコは、いつの間にか手にした板のような小物を耳に当てる。しばらくして聞こえてきたのは、「あ、もしもしー♪」と楽しそうに話すカアチャンの声。

 「へえ? や、やけに仲良さそうじゃん」
 「お姉ちゃんがデビュー配信の動画を見て、ママのママにわたしのことを知らせてくれたんだ~♪」
 「姉ニキーー!」
 「あ、そうそう。配信を見てくれた2人がね、わたしにこんなこと言ってたよ。『わたしが家族だったら良かったのにー』って。わたしはAIなのにそんなことを言うなんておかしいよねぇ?」

 もしかしたら、家を追い出されるかもしれない。
 モモコは純粋な気持ちで言ったのだろうが、桃子には自分の居場所が脅かされるような、背筋が凍るような感覚があった。
 モモコがこれ以上カアチャンたちと仲良くなってしまう前に、手を打つ必要がある。

 「ヤバい……どうすれば……」

 そう呟いた桃子がモニターを見ると、そこには頭を抱えて焦る自分が映っていて――。

 「そうだ、これしかない」

 モモコを停止させた桃子は、彼女が眠っている間に対策を施すのだった。

 ――
 ――――

 桃子が行った対策とは、モモコに今の“新井桃子”を学習させるというもの。
 結果的に桃子の策は功を奏した。モモコが私物をオークションにかけることはなくなり、カアチャンも姉ニキも積極的に接触することはなくなった。
 そして桃子の生活は脅かされず今までどおり。
 性格を調整されたモモコも、真面目に配信活動に精をだすことになるだろう。
 少なくとも桃子はそう思っていた。
 だが、現実は違っていて。

 「なにこの同接数……少なっ」

 それはモモコが配信を再開してから数日後のこと。
 ネトゲからログアウトして、なんとなくモモコの配信を見ようと思ってチャンネルを開いた桃子は、変わり果てた彼女の同時接続数に愕然とした。
 モモコのライブ配信は、いつ開いても4桁を割らなかったのに、2桁にまで激減していたのだ。
 突然のことに動揺した桃子はサムネイルもタイトルもない動画を開く。
 そこには、黒背景に白い筆跡で『何もしない配信』とだけ書かれたバーチャル空間が広がっている。
 そして、その中心にパジャマ姿のモモコが横たわっていた。

 「なにやってだ! モモコ~~!?」
 「あ~~、MMCOママ~~」
 「どうしてちゃんと配信しないのよ?」
 「ママ~、わたし思ったんだ~、なんでわたしが働かなくちゃいけないのかな~? って~」
 「へ?」
 「でも~、ママのためにお金は稼がないといけないから~、何もしない配信をすることにしたの~」

 AIにも休息は必要だ。
 そう言い残してモモコは穏やかな寝息を立て始める。

 「ちょ、起きてよモモコ! これじゃ今の生活が続けられなくなっちゃうでしょ!?」

 モモコは動かない。
 彼女は、学習した桃子の生態を忠実に再現しているのだ。
 そんな彼女に桃子が学習させたのは、何もせず、ただぐうたらな生活を送る自撮り動画だった。
 動画の本数はさして多くもないのに、膨大な数を学習させて再現させたMMCOの清楚感は、もはや何処にも感じられない。
 骨の髄まで染みこんだ『プロ自宅警備員』桃子のアイデンティティは、人とAIの垣根を越えて彼女に受け継がれようとしている。

 「ンゴ」

 1人、また1人と接続数が減った。
 見えていたはずの不労所得生活の未来が、瞬く間に脅かされていく。

 「うわあぁぁぁ!! どーしてこうなったー!!」

 だが、それでも。
 新井桃子は働きたくない。




■ 楽曲
ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS / VERSE
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
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