XES-72【ディアナ・プリメーラ】

Last-modified: 2024-03-06 (水) 16:54:26

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。
・「限界突破の証」系統を除く、このページに記載されているすべてのスキルの効果ははCHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです。
 現在で該当スキルを使用することができません。
・CHUNITHM PARADISE LOSTまでのトランスフォーム対応キャラクター(専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター)は、
 RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

通常ルミナスウイング
ディアナ・プリメーラ.pngディアナ/ルミナスウイング.png

Illustrator:巌井崚


名前XES-72【ディアナ・プリメーラ】
年齢不明
職業ファクトリー製プログラム(探索型)
  • 2019年2月21日追加?
  • AMAZON ep.IIIマップ1完走で入手。<終了済>
  • 入手方法:2022/10/13~ カードメイカーの「CHUNITHM AMAZON」ガチャで入手。
    カードメイカー再録歴
    • 入手方法:2021/5/13~6/9開催の「大きな魚がお空を泳ぐでしょう」ガチャ<終了済>
    • 2022/3/3~2022/4/13開催の「可愛さ指数は3000倍!?」ガチャ<終了済>
  • トランスフォーム*1することにより「XES-72【ディアナ・プリメーラ/ルミナスウイング】」へと名前とグラフィックが変化する。
    PARADISE LOSTまでのトランスフォーム仕様
    • 専用スキル「FREQ-Vertex Luminous」を装備することで「XES-72【ディアナ・プリメーラ/ルミナスウイング】」へと名前とグラフィックが変化する。
  • 対応楽曲は「Life」。

ファクトリーにより作られた探索型プログラムでありXGN-72【ルナ・ノーヴァ】の姉。
MIRシリーズの後継型をコンセプトに製作されている。

1時のしるし
5
10FREQ-Vertex Luminous
15


時のしるし [HARD]

  • 天使の笑顔のハイリスクハイリターン版と言えるスキルだが、ジャッジメントなどの方が6本はとりやすい。ただしこのスキルは、通常のゲージ上昇が無くなる分、MISSさえしなければATTACK多発でもゲージに影響はない。
  • ちなみに、勇気のしるし嘆きのしるしのように名前が~のしるしであるが、即死条件や効果はジャッジ系に近い。ノート数が多い譜面のほうが効果が大きいと思わないように。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
    • 筐体内では入手できない。
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し×
あり+2
PARADISE
(~2021/8/4)
無し×
あり+8
CRYSTAL無し+3
あり+8
AMAZON+以前
GRADE効果
参考理論値:126150(7本+150/26k)[+2]
参考理論値:130500(7本+4500/26k)[+3]
参考理論値:152250(8本+500/28k)[+8]
[条件:絶対にチョコミントを食べる
アオイチャン[MASTER] ]
参考理論値Ω:129050(7本+3050/26k)[+2]
参考理論値Ω:133500(7本+7500/26k)[+3]
参考理論値Ω:155750(8本+3750/28k)[+8]
[条件:なるがちゃんなぎにいよいよ
えれー目にあわされる話]
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
共通ゲージが上昇しない
MISS判定30回で強制終了
初期値一定時間ごとに +1350
+1〃 +1400
+2〃 +1450
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+3〃 +1500
+4〃 +1550
+5〃 +1600
+6〃 +1650
+7〃 +1700
+8〃 +1750

所有キャラ【 テルミット(1,5) / ワイズマン(1~10) / ディアナ(1,5) / Dr.テオ(1,5)

GRADE・ゲージ本数ごとの必要時間(発動回数)
  • 時間はメトロノームの1拍目が基準。1ノーツ目まで4秒以上ある場合は必要時間が増える。
  • 灰色の部分は到達不能。
  • 9本以上はGRADEを問わず到達不能。
    GRADE4本5本6本7本8本
    初期値1分30秒
    (45回)
    2分00秒
    (60回)
    2分32秒
    (76回)
    3分08秒
    (94回)
    3分46秒
    (113回)
    +11分26秒
    (43回)
    1分56秒
    (58回)
    2分26秒
    (73回)
    3分00秒
    (90回)
    3分38秒
    (109回)
    +21分24秒
    (42回)
    1分52秒
    (56回)
    2分22秒
    (71回)
    2分54秒
    (87回)
    3分30秒
    (105回)
    +31分20秒
    (40回)
    1分48秒
    (54回)
    2分16秒
    (68回)
    2分48秒
    (84回)
    3分24秒
    (102回)
    +41分18秒
    (39回)
    1分44秒
    (52回)
    2分12秒
    (66回)
    2分44秒
    (82回)
    3分18秒
    (99回)
    +51分16秒
    (38回)
    1分40秒
    (50回)
    2分08秒
    (64回)
    2分38秒
    (79回)
    3分10秒
    (95回)
    +61分14秒
    (37回)
    1分38秒
    (49回)
    2分04秒
    (62回)
    2分34秒
    (77回)
    3分06秒
    (93回)
    +71分12秒
    (36回)
    1分36秒
    (48回)
    2分00秒
    (60回)
    2分30秒
    (75回)
    3分00秒
    (90回)
    +81分10秒
    (35回)
    1分32秒
    (46回)
    1分58秒
    (59回)
    2分24秒
    (72回)
    2分54秒
    (87回)

FREQ-Vertex Luminous [ABSOLUTE] ※専用スキル

  • アストラル・リベレイションの亜種のようなスキル。ATTACK以下25回で強制終了だが、MISSは5回分でカウントする。JUSTICEの数は不問なのでALL JUSTICEなら必ず完走可能。
    GRADE効果
    理論値:153000(8本+1000/28k)[初期値]
    共通ゲージ上昇UP (255%)
    ATTACKでカウント[-1]
    MISSでカウント [-5]
    カウント[0]で強制終了
    初期値(※初期カウント25)
    +1(※初期カウント30)
    低評価の許容量が複数段階に分かれるスキル

    低評価の許容量が複数段階に分かれるスキル

    スキル名上昇率
    カウント(初期/J/A/M)
    理論値
    [HARD]
    ハーモニゼーション+2230%
    40/0/-1/-2
    138000(7本+12k)
    ※汎用スキル
    憑依「喜怒哀楽ポゼッション」?+3225%
    999/-1/-25/-50
    135000(7本+9k)
    [ABSOLUTE]
    アストラル・リベレイション+9255%
    145/-1/-10/-10
    153000(8本+1k)
    FREQ-Vertex Blaze+1255%
    110/-1/-5/-5
    153000(8本+1k)
    セラフィックブレイド+3240%
    150/-1/-5/-5
    144000(7本+18k)
    FREQ-Vertex Luminous+1255%
    30/0/-1/-5
    153000(8本+1k)
    ジーニアスパーティー+1255%
    80/-1/-1/-10
    153000(8本+1k)
    cherry blessing
    ~巡る恵みの物語~?
    260%
    10/0/-1/-3
    156000(8本+4k)
    [CATASTROPHY]
    天地創造+3355%
    10/-1/-9/-9
    213000(10本+3k)
    ※汎用スキル

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 SPEC:ディアナ「ティフォン亡き後、メタヴァースは残されたオリジン達の制御下に置かれたがネメシスの侵攻を受ける」


 人類の揺り籠メタヴァース。
神祖エクレールによって創造された電脳の楽園は、その玉座の主をエクレールからティフォンに移した。

 そしてティフォンは自らが生み出した自立型探索プログラム『MIRシリーズ』の叛逆に遭い、神去ることで再びメタヴァースの王の座は空となり、代わりに残った『最古(オリジン)』が合議制でもって楽園の管理を行うこととなった。

 まず最古たちが行ったのは世界の間引きであった。ティフォンは暴虐な王であり、自らの欲するままに世界を拡張させ続けた。
こうしてその数を増やし、膨張し続けたメタヴァースだったが、皮肉にも暴虐かつ比類なき力を持つティフォンによって、何とか適切に管理されていた。
 それは、全ての力を持ちうるもののみに許された力技とも言える強引なものであったが、メタヴァースが存続する上では必要なものだったのだ。

 だが、もはや絶対の王は存在しない。
また、ティフォンの消滅に伴い、メインフレームからは多くの力やリソースが失われていた。

 いかに強大な力を持つ最古と言えど、今のメタヴァースを統治するどころか、メインフレームを運用することすらままならない状況だった。

 よって最古たちはメタヴァース内の世界を適切な数まで抑え込み、制御することで楽園に再び秩序をもたらそうとしたのである。

 しかし、そんな最古たちの思惑は砕かれる。最外周部より現れたネメシスという謎の敵性プログラムがメタヴァースに侵攻を始めたからだ。
特にネメシスの王を称する『混沌の器』の力は凄まじく、あっという間に世界は混沌の戦禍に巻き込まれることとなってしまったのである。


EPISODE2 創造主たちの末裔「メインフレームの末端と成り下がったファクトリーだが、自らもメタヴァースを探査する必要に迫られる」


 悪夢の如き災厄ネメシスの強襲、そして世界の神たるメインフレームの弱体化は、神の遣いである『ファクトリー』にも大きく影響することになった。

 ファクトリーとは、元々はまだ人類が肉体を持っていた前時代に、電脳世界メタヴァース、そして神祖エクレールを作り上げた研究機関である。

 ファクトリーは言わばメタヴァースの生みの親ともいえる存在だが、メタヴァース黎明期に起こった大災厄を境に権威を失墜させ、エクレールが神去る頃には、すっかりメインフレームの下位の機関へと成り下がっていた。

 また、ファクトリーはメタヴァースの開発に携わっていた研究者が主体となっていたためだろうか?
彼らは人間としての再生を早々に放棄すると、メタヴァースでの生存に特化したボディに切り替えた。
そして自らの権力をはく奪するメインフレームに対し、抵抗するどころか半ば望むように彼らの支配を受け入れ、ファクトリーは辛うじて自治権を保ってきたのだ。

 長い年月の中、ファクトリーはメインフレームの庇護のもとでネメシスとの戦における尖兵と成り果てていた。
それでもエクレール、ティフォンの統治が安定している頃は、彼らもまた、ゆりかごの中で怠惰な安らぎを得ていた。

 安寧の中、急速な技術発展を見せるメインフレーム。
ファクトリーは隔世の技術格差を痛感するも、メインフレームから開示された情報をベースに防衛用プログラムMDAシリーズの作成や、アンチウイルスBOTの作成を進め、独自のネメシス研究も行っていた。

 ところが、ティフォン体制の崩壊後、勢力を増したネメシスの侵攻により、なんとメインフレームとの連携が途絶してしまう。

 メインフレームとの連携が途絶するということは、即ち彼らの助力を一切受けられないことを意味する。
この危機的な状況を打破するため、ファクトリーは急遽自らメタヴァースを探査……
それもネメシス出没領域である暗礁領域を探査し、メインフレームとの再接続を行わなくてはいけなくなる。

 しかし、メインフレームの助力無く、ネメシスの支配する領域を越えて、広大なメタヴァースを探査するには、非常に強い力と自我を持つプログラムが必要だった。


EPISODE3 ES計画、禁忌を侵して「メタヴァース調査に選ばれたのは2人の姉妹。姉妹はMIRシリーズを参考に人体実験を繰り返された」


 メインフレームとの断絶により、ファクトリー陣営の状況は悪化する一方だった。
彼らが現在所持する防衛プログラムでは、下位のネメシスプログラムの撃退がせいぜいで、とてもではないが混沌の器には太刀打ちできない。

 そこでファクトリーの首脳陣である『三賢者』はネメシス領域を越えてメタヴァースを探査するために、メインフレームから受領した情報に含まれていた『MIRシリーズ』を模倣したプログラムの作成を開始する。

 MIRシリーズとは、メタヴァースの前王ティフォンが自ら開発を手掛けた自立型探索プログラムである。
しかし、彼女らの真価はその探査能力にあったわけではない。
MIRシリーズは人間を素体とすることで電子的存在ながらも『寿命』を持つというデメリットがあった。
けれど、彼女らはそんなデメリットを遥かに凌ぐ『進化と不確定性』という特性を有していたのだ。
彼女らは純粋なプログラム種にはない不確定性を持つ特殊な融合体、新人類というに相応しい存在だった。
そしてその可能性の申し子たちはついに、メタヴァースの王ティフォンすらも打ち破ったのである。

 MIRシリーズを復活させることができれば、恐るべきネメシス領域を越え、メインフレームとの再接続も可能かもしれない。
ところが、MIRシリーズの情報は、その特殊な開発経緯と彼女らが引き起こした結末により、完全にはファクトリーに開示されていなかった。
むしろほとんどの情報がブラックボックス化されていたのである。

 かつて、MDA-21【レグルス】などにおいて、ネメシスプログラムを流用した素体の作成には成功していたファクトリーではあったのだが、メインフレームほどの先端技術を持ちえてはおらず、限定された情報からMIRシリーズを再現するのは至難の業であった。
よって彼らは、かつてのティフォン以上のトライ&エラー……人体実験を必要とされていた。

 被験者として強引に選出されたのは二人の姉妹……。ディアナとルナ、辛うじて名前だけが残された彼女たちは、過酷な人体実験を前に心を閉ざしてしまった。
しかし、そんな姉妹に対して待っていたのは、実験中止の慈悲でもなく、死による解放でもない。
誰もが心を痛めるような実験が続くだけだった。

 ファクトリーの統治者の一人でもあり『三賢者』と言われる科学者の『ユバル』は、元より姉妹のことなど全く考慮していなかった。
彼はただ、ファクトリーがより深くネメシス領域に足を踏み入れるための研究にしか興味がなかったのだ。

 最も、姉妹に同情する者が全くいなかったわけではない。
ユバルと同じく三賢者の『テオ』と『メト』は、姉妹の境遇に深く同情していた。
だが、適合率の問題から、姉妹以上の適切な被検体は見つからず、ファクトリーを、そしてひいては世界を救うためには姉妹の必要な犠牲であると、仲間たちから説得され、非情な人体実験を継続したのだった。


EPISODE4 喪失、全ては世界のため「実験は過酷を極め姉妹は全てを失い、全てを憎んだ。そして生まれたのがXES-72とXGN-72だ」


 試験稼働後、強引にプログラムと結合させられ、生まれ変わった姉妹は
『XES-72【ディアナ・プリメーラ】』
『XGN-72【ルナ・ノーヴァ】』という新たな名前を与えられた。

 しかし新たな名など彼女たちにとっては枷でしかなく、ただファクトリーに対しての憎しみと、己が己で無くなる喪失感が澱のように溜まっていくだけだった。

 そして迎えた初戦闘訓練。
今までモニター越しでしか姿を見せなかったユバルが、監視室の中からではあるが、直接姉妹たちの前に姿を現した。

 「さて、愛すべき我が娘たちよ。お主らの性能を吾輩に見せておくれ」

 そう言うなりユバルは戦闘初体験の姉妹たちに、いきなり上級防衛BOTたちをけしかけてきた。

 「……お姉ちゃん!」
 「ええ! ……『マイア』起動!」
 「ぶった切れ! 『スバル』!」

 ディアナは近接戦用小型ブレード『マイア』で、そしてルナは指向性音撃砲内臓ブレード『スバル』で次々と敵を一刀両断していき、全く危なげない戦いをして完全勝利を収める。

 これにはユバルも興奮を抑えられなかったのだろう。思わず、監視室から飛び出し姉妹の健闘をたたえた。

 「ワンダフル!流石は吾輩の生み出したプログラムじゃ!」

 ……この一瞬の隙を見逃すルナではなかった。

 「内臓をぶちまけて死ねッ! この外道ッ!」
 「……待って! ルナッ!」
 「お姉ちゃんどいて!! こいつを殺す!」
 「あっ!」

 今までの非道な人体実験を恨んでいたルナは姉であるディアナの制止も聞かず、ユバルに刃を向け、BOTと同じく切り捨てようとした。
だが……。

 「……愚か者。吾輩が何の策も講じていないと思ったのかね?」

 ユバルが手元のスイッチを押すと、ルナの頸椎ユニットに設置された拘束具が発光し、バチンッという轟音と共に彼女は崩れ落ちた。

 「あっ……ぐッ!!」
 「ルナ!」

 ディアナは、意識を失い倒れた妹に慌てて駆け寄った。一方、命を狙われたはずのユバルは場違いな笑みを浮かべている。

 「初期稼働にしてはいい動きだった……。さあ、再調整じゃ!」

 ……こうして姉妹は再び耐え難い実験と、恐ろしい戦闘訓練を繰り返すこととなった


EPISODE5 絆だけ残して……「実験で姉妹は人間らしさを奪われる。彼女たちは何があっても姉妹の絆だけは無くさずにいようと誓った」


 度重なる人体実験の中、その都度姉妹たちには新しいプログラムがインストールされていく。
新たな機能が追加される度に、人として持ち合わせた元々の機能や思い出と呼ばれる記憶たちが徐々に置き換えられていく……。
特に姉妹の記憶領域への侵食は大きく、記憶の欠損が無視できない状況まできていた。
もはや、ここに来た以前のことはぼんやりとしか思い出せない……もし鮮明に思い出せたとしても、きっと現実感のないものになってしまっているだろう。

 それでも姉妹たちは誓った。

 「……仮にこれから先、どんなことがあっても、私たちはずっと一緒よ。姉妹の絆だけは忘れないで。私にとって一番大事なのは貴女なのよ……」
 「うん……お姉ちゃん」

 ……自らの記憶が侵されるのは避けられない。
ならば無くしてはいけない大事な物だけ、しっかりと守り抜こうという、悲しい決意を姉妹はしたのだった。

 その甲斐あってというべきか、その後の調整試験を重ねても、ディアナもルナも互いの絆だけは失わないでいた。

 けれど姉妹の心……特にまだ幼かったルナの心は調整の度に壊れていくようだった。
彼女は調整により感情の抑制などが行われた結果、日に日に人間味をなくしていってしまったのである。

 例えば、ある日の戦闘実験の後、ディアナはルナが怪我を負っていることに気がついた。

 「大丈夫? ルナ?」
 「……」

 ところが、ルナは姉の声にも反応を示さず、ぼうっと中空を見つめていた。

 「……ルナ?」
 「えっ? あ、お姉ちゃん? どうしたの?」
 「どうしたのって……貴女が怪我をしていたから」
 「えっ? ……あ、本当だ……でも大丈夫だよ!大したこと、ないと思うし……心配しないで?」
 「……ええ」

 ディアナは、恐らくルナの意識は痛覚機能に対し反応しづらくなっているのだろうと察知していた。
それでも自分の前では人らしい反応をしようと努めている妹の姿を見ると、失われつつある愛情と哀しみが一気に募るのだった。

 ディアナはそっとルナの身体を抱きしめた。

 「……いつか、いつかきっと姉妹で穏やかな日々を過ごしましょうね」
 「……うん」

 今の姉妹には、自分たちに平穏な過去があったのかも思い出せない。
だがきっとあったのだ。
何も心配なく、痛みもなく、ただ未来を信じて無邪気に笑いあえていた日々が……。
そしてこれからもきっと、そんな未来を取り戻すことは可能なのだ。

 「……メインフレームに再接続さえすれば……彼らの技術を使えば、私たちを元に戻せるかもしれない……」

 それは三賢者『メト』が語った予想であり、確証のない淡い希望だ。
だが、そんな儚い希望に縋ることでしか、姉妹たちは正気を保つことができないのだった。


EPISODE6 旅立ちの日「ネメシスの脅威は一層激しくなり、姉妹たちは不完全な調整のまま、メタヴァース調査へ出発する」


 姉妹の調整がようやく佳境に入った最中、遂にファクトリーはネメシスの猛攻に耐えるだけのリソースを使い果たしてしまう。

 残る希望は一刻も早くメインフレームと再接続をする以外にない。
そこで姉妹は不完全な状態のままネメシス領域を目指し、メタヴァースを探査することになってしまった。

 姉妹の出発を三賢者のテオとメトが見送る。

 「……せめて万全な状態で送り出してあげたかったんだけど……ごめんなさい」

 申し訳なさそうに頭を下げるテオとメトにディアナは尋ねた。

 「……Dr.ユバルは?」
 「あー……ユバルのじーさまなら、前哨基地だね」
 「前哨基地?」
 「ええ。そこでDr.ユバルはメインフレームの接続座標特定と、ネメシスの鹵獲を行っているわ」

 テオとメトの話によると、メインフレームは現在ネメシスの侵攻へ抵抗するために、接触できる座標を制限しているらしく、正確な座標を知るためには、前哨基地にいるユバルに会わねばならないということだった。

 姉妹にとってユバルは唾棄すべき存在だが、彼女らが自由を獲得するためには、メインフレームとの再接続は必要不可欠である。
仕方がなく、姉妹はテオとメトのオーダーを遂行することを誓った。

 「テオ、例のアレを彼女たちに」
 「でも……アレは……」
 「いいから。アレがないと最終調整も終わってない状態のディアナとルナじゃ、とてもじゃないけどネメシスに太刀打ちできないよ?」
 「……ええ」

 メトに急かされるようにして、テオはあるプログラムを持ってきた。

 「……これは『FREQ-Vertex』というとても強力な戦闘機能よ。これをインストールすれば、きっとネメシスとも渡り合えるはず。でも……」

 先ほどからパッとしなかったテオの顔は一層暗いものになる。
それもそのはずで、FREQ-Vertexという機能はMIRシリーズが所持していた『トリニティヴァーテックス』という短期的なリミッター解除機能を模したものだった。
もとになったトリニティヴァーテックスは莫大なデータを処理するために、対象者の能力を強制的に引き上げる。それにより機能不全を起こした部分を無理やり代謝させ、最大性能を維持し続けるという能力だった。
それはつまり、使用者の寿命を大きく縮めることに等しい。
神であるティフォンが制作したMIRシリーズですら、寿命の壁を超えることはできなかった。
ましてや自分たちが作ったのはその劣化版(コピー)。そして使用者は未だ完全な状態ではない。
今の状況で姉妹たちがFREQ-Vertexの負荷に耐えられるのか?
耐えられるとすれば何回まで耐えられるのか?
テオにもメトにも分からなかったのである。

 「いいかい、この機能は本当に危険なとき以外使ってはダメだ……そうだね? テオ?」
 「……」

 テオにはFREQ-Vertexを最後まで説明することができなかった。
姉妹たちもまた自分たちと同様に、あるいは自分たち以上にメインフレームとの再接続に希望を見出していたからだ。

 「……ディアナ、ルナ……メトの言うようにFREQ-Vertexはなるべく使わないで。そして身体にはくれぐれも気をつけてね……」
 「ええ……」
 「行ってくるわ」

 結局、歯切れの悪い別れの言葉を交わし、姉妹はファクトリーを旅立っていった。


EPISODE7 量産型MDAシリーズ「前哨基地で、強く心優しい量産型MDAタイプのアルドラと出会い姉妹たちは一瞬の安らぎを得る」


 新たな名を与えられてから、初めてファクトリーの外へと出た姉妹だったが、途中で敵と遭遇することもなく、また大きな問題も起こらず、無事に前哨基地に到着することができた。

 前哨基地の内部はファクトリーと比べて慌ただしく、大勢のプログラムが飛び回り己の仕事をこなしていた。そのせいか無味乾燥なファクトリーでは味わうことの少なかった、騒然とした『生』の勢いを感じ、姉妹たちは驚かされたのだった。

 誰に話を聞いたら良いかと姉妹たちが悩んでいると、一体のプログラムが話しかけてきた。

 「やあ、もしかして君たちがXES-72とXGN-72かな?」
 「そうですが……貴女は?」
 「私はファクトリー製の防衛型BOTアルドラ。『MDA-88-009【アルドラ・ノイン】』。
……みんなはノインと呼んでいる」
 「貴女もファクトリーの……?」
 「そう。君たちの仲間だ」
 「仲間……?」

 とても親しいノインの態度に姉妹は衝撃を受けた。これまでもテオのように姉妹に心を砕いてくれる存在はいた。
けれどテオの場合、姉妹に対しての親愛の情よりも罪悪感と憐みの感情の方が強く出てしまい、どうしても
姉妹と真っ直ぐ向き合ってくれなかったのだ。
テオとは違い、ノインには哀れみも同情もない。
彼女はあくまでも姉妹たちを自分たちと対等な仲間として扱ってくれている。

 「……Dr.ユバルから話は聞いているよ。君たち、これが初陣なんだって? 初っ端からへヴィな任務に就いてしまったな」
 「……Dr.ユバルはここにいるの?」
 「ああ。あの方はいつも通り、研究室に籠っておられるよ……君たちが到着次第、連れてくるようにと言いつけられている」
 「そう……」

 姉妹たちの表情から察したのだろう。ノインは励ますように姉妹の背を叩いた。

 「……まあ、君たちも辛いとは思う。でも、そんなに暗い顔をしないでほしいな」
 「……ノインは嫌にならないの? ユバルみたいな奴のもとに居て……それにファクトリー製のプログラムなんて、ネメシスと戦わされて、使い捨てられるだけの人生じゃない」
 「おっと、これは厳しいコメントだな……まあ事実だけど」

 ノインは一瞬の間の後、答えた。

 「……確かに私らは使い捨ての存在かもしれない。でも私は私の生き方に誇りを持っている」
 「誇り?」
 「ああ……私が戦うことで仲間が……力無き人々が救われるなら、怖くてもネメシスに立ち向かうことができるんだ。これは私たちにしかできないことだ。
胸を張り、誇って良いことだと思うんだよ、例えそう思うようにプログラムされていたとしても」
 「……私たちにしかできないこと……」
 「そう……結局、私たちが幸せだったのか?そうではなかったのか? それは最期、倒れるときにしか分からないからね。せめてその時に悔いがなく、自分を誇れるようにありたい。そう私は思ってるんだ」
 「……素敵ね。私たちもノイン、貴女のように思える日が来るといいんだけど……」
 「きっとすぐにそうなるさ……やれやれ、先輩風を吹かせていたら、随分時間を食ってしまったな。
それじゃあDr.ユバルのもとに案内するよ」
 「……ええ」
 「大丈夫。この前哨基地にいる間は、君たちに滅多なことが起きないように私が全力でアシストするから。……ね?」
 「……分かったわ。ありがとう。ノイン」

 ノインに励まされ、ようやく踏ん切りがついた姉妹は、ユバルと対面した。

 「ふむ、ようやく来たのか。遅かったのぅ、早速だが、これがこの周辺領域の情報じゃ」
 「……メインフレームとの再接続するための座標は?渡された情報には記載がないんだけど?」
 「それが、流石はメインフレームじゃなあ。簡単には手の内を明かさんでのぅ……接続座標に辿り着くまでには、幾つかの座標をジャンプする必要があるようじゃ。だからまずはそこを目指し、彼らが次に指定する座標をいくつか越えなくては……」
 「……分かったわ」
 「ふむ、そうじゃ一つ大事なことを、忘れておったわ」

 そう言うと、ユバルは姉妹から緊急停止コードと、頸椎ユニットに取り付けられた拘束具を取り除いた。
 「お主たちを停止させるだけならばまだしも、改造すればお主たちを服従させるのにも使えるからのぅ……敵に使われると困るのじゃよ。
代わりに、自爆機能を付け足しておいたぞ。本当ににっちもさっちもいかなくなったら使うのじゃ」
 「……」

 ……つまり、姉妹たちに『何かあったらさっさと死ね』と言っているのだ。
ノインは名誉ある生と誇りある死を願っていたが、ユバルはそういった概念を持ち合わせていないらしい。

 (……いつか、自由になった日は、必ずこいつに復讐してやる! 絶対に許さない、絶対に!!)

 ルナが心の中で薄暗い決意を固めるとほぼ同時に、前哨基地内にけたたましいアラームが鳴り響いた。

 「いったい何事!?」
 「これは……ネメシスの襲来じゃ!」


EPISODE8 進軍せし闇の軍団「突如前哨基地を襲撃してきたネメシス。姉妹は初めての戦闘に息を飲み、アルドラの無事を祈った」


 突然のネメシスの襲来に前哨基地は騒然となった。
アルドラを始めとした防衛型BOT、また攻撃型BOTがすぐさま戦闘態勢になるが、モニター室で敵の姿を確認したユバルは思わず絶句する。

 「……なんじゃ!?あの凄まじいネメシスの大軍はッ!」

 ユバルの言葉通り、本来は個で敵を襲うはずのネメシスがあたかも統率の取れた軍隊のように前哨基地へと進軍してきていた。
状況を素早く判断したユバルは姉妹たちに叫ぶ。
 「……何をぐずぐずしておる! 貴様たちはさっさとこの場を離脱するんじゃッ!」
 「えっ……?」
 「私たち、戦わなくてもいいの?」
 「何を馬鹿なことを言っておる! 貴様らの本分はあくまでもメタヴァースの探査。メインフレームと接触することが存在意義のはずじゃろう!?」
 「それは……そうだけど」

 予想外に戦わなくても良いと言われた姉妹たち。内心、ほっとするも、今の彼女たちの心には別の感情もあった。

 (ノイン……)

 この前哨基地の守護者の一人であるノインは、間違いなく最前線で戦うはずだ。
例え僅かな邂逅であったとしても、自分たちを仲間と呼んでくれた彼女の身を姉妹たちは案じた。

 そしてその心配は、より激しい焦燥へと変わる。姉妹たちが初めて見るネメシスとファクトリーとの戦闘は彼女らの想像よりも遥かに激しいものだったからだ。

 (ノインは無事なの!?)

 姉妹たちは探査能力を活かし、混戦状態の中、見事にノインの反応をキャッチしていた。
そして彼女は無事であることを確認した。

 「良かったわ……」
 「ええ! それによく見て! お姉ちゃん!ノインや他のアルドラたちはネメシスを次々倒してる!
……あれならやれるかも!」

 ……ネメシスとの戦いを初めて見た姉妹たちには知る由もなかったが、今回やってきたネメシスは数こそ多いものの、それぞれの個体はさほど強いものではなかったのだ。
対してこの前哨基地に控えていたファクトリー製のBOTはそれぞれが一騎当千の実力者たちばかり。
当初の混乱とは反して、戦局はファクトリーの優勢となった。


EPISODE9 欺瞞の使徒「『混沌の器』が一器『欺瞞の使徒ヴェルゼビュート』の力は凄まじく戦局は一気に不利になる」


 ネメシスの大軍の襲撃により、一時は混乱に見舞われたファクトリー前哨基地だったが、戦局が大きく彼らに傾いたことで、安堵の雰囲気が漂い始める。

 『これなら、ネメシスの軍勢を駆逐できるかも』
……誰もがそう思い始めた時に『それ』は現れた。

 突如戦場に稲光のような閃光が走り、その場に居た者たちの目を焼いた。
そして光は二度、三度と瞬く、超高質量の弾頭が雷を纏い、戦場を切り裂いたのである。
着弾地点となった前哨基地はただでは済まなかった。

 「こ、これはいったい……!何が起こったというの!?」

 幸い、姉妹たちが避難している場所は被害が少ない状態だった。
そこで姉妹は、攻撃の主を探るべく、戦場をサーチし出す。

 「……お姉ちゃん! あそこ!」
 「あれは……!」

 遂に姉妹は『それ』を確認した。
『それ』は不気味な触手に覆われた青白い肌の女の姿をしていた。

 「……ノイン! 敵はあそこよ!」

 ディアナはすぐさま観測した敵の情報をノインと前哨基地のモニタールームにリンクさせる。

 「……ありがとう! ディアナ! ルナ!
……みんな行くぞ! あの触手女に総攻撃をかける!」

 だが、ノインたち精鋭のBOTが束になっても女に傷を与えるどころか、彼女に近づくことすら能わない。
女の肢体を覆う触手から放たれる光弾に射貫かれ、ノインと同型のアルドラたちは次々に倒れていった。

 それどころか防衛型BOTたちの劣勢を悟り、自ら攻撃プログラムを身に纏い出撃したユバルすらも、
女の触手に貫かれ、一瞬のうちに修復不可能なダメージを負わされる結果となった。

 「そんな……アルドラたちでも敵わないなんて」
 「い、いったい……なんなの!?あのネメシスは!?」

 すると、まるで姉妹たちの質問に答えるかのように青白い女は呟いた。

 「……つまらないわぁ、羽虫さんの精鋭がいるというから、楽しみにしていたのに……
まさかこの程度の護りでこの『ヴェルゼビュート』の攻撃をしのげると勘違いしていただなんて……期待外れもいいところよ。退屈過ぎて、あくびが出てきそう」

 ヴェルゼビュートと名乗った女は、心底つまらなそうに言いながら、BOTたちの残骸を破壊し始めた。この無礼にノインは激怒した。

 「……おのれ! ネメシス風情がッ!」

 ノインは果敢にも1人、ヴェルゼビュートに向かい必殺の剣、フォースリヴァイヴァーを振りかざす。
 かつてファクトリーを救ったオリジナルMDAタイプ、MDA-01【シリウス】を模したアルドラシリーズ。
 その中でも特に精鋭とされていたノインの攻撃はヴェルゼビュートの身体を二つに切り裂くはずだった。

 「あら、勇ましいお嬢さんね……でも残念♪」

 ヴェルゼビュートの触手は、アルドラの光剣をがんじがらめに掴み取り、動けなくなった彼女の身体を一閃のうちに切り伏せてしまう。

 「……そ、そんな……馬鹿な……ッ!!」

 データ粒子を撒き散らし、アルドラは力なく宙を漂う。ヴェルゼビュートは機能を停止した彼女を放り投げ、再び進軍を開始する。

 「……ノインッ!!」
 「行くわよ! ルナッ!」
 「……うん! お姉ちゃん!」

 ノインを目の前で失ったことで、姉妹たちは初めて、己の意志で戦うことを決意したのだった。


EPISODE10 FREQ-Vertex「絶望的な状況で姉妹は、FREQ-Vertexを使いヴェルゼビュートに辛うじてダメージを与える!」


 目の前で仲間を喪い、ヴェルゼビュートとの戦いを決意したディアナとルナ。

 しかし、姉妹とヴェルゼビュートとの戦力の差は圧倒的だった。

 「……パーシュートザッパー!!」

 近距離から中距離での戦闘を得意とするディアナは、右手に持つ大型複合兵装『アルキオネ』の射撃モードでヴェルゼビュートを牽制しつつ、距離を縮めようとするのだが、
牽制のショットをヴェルゼビュートは、一向に避けようとすらせず、身体を覆う触手で弾いてしまう。

 「どうしたの? ふふッ……くすぐったいわぁ……」

 加虐心に溢れたヴェルゼビュートの笑みを見て、ディアナはどうすることもできなかった。

 「くっ……!」
 「お姉ちゃん! 今度は私が! ……いっけー!CSPエクスキューション!」

 ルナは姉とは対照的に遠距離攻撃と後方支援を得意としている。
ルナは自身の持つ兵装の中でも特に火力の高い火砲を一気にヴェルゼビュートに浴びせた。

 「……今度は花火? もういい加減、諦めたらどう?お嬢さんたち」

 ルナの遠距離砲撃を以ってしてもヴェルゼビュートの触手の防御を貫くことはできない。けれど、姉妹の目的はそこにはない。

 「アルキオネ近接モード……ヴォ―パルブレード! 食らえッ!!」

 派手なルナの砲撃でヴェルゼビュートの気を引き、隙をつくった後、ディアナが近距離から一気にヴェルゼビュートを貫こうとする!

 (やった……!)

 勝負はこれで決まった。そう姉妹は確信したのだが……。

 「……ぬるいわね。お嬢さん」
 「なっ!?」

 ディアナの渾身の一撃は、ヴェルゼビュートを切り裂くどころか、彼女の青白い肌に到達することすらできていなかったのだ。

 絶好の勝機は危機へと変わり、ディアナにヴェルゼビュートの触手が迫る。

 「お姉ちゃん! ……バイナリ―バインド!」

 姉の危機に咄嗟にルナは自律型ウイルスシードを散布した。
これにより、近くの領域に居たネメシスユニットの活動が一時的に鈍化する。それと同時に目くらましのような障壁が一帯を覆い、ディアナの身を守った。

 「……ありがとう。ルナ。助かったわ」
 「お姉ちゃん……怪我がなくて良かった」

 それでもルナのシールドの効果は長くて十数秒しか持たない。姉妹は選択を迫られた。

 「どうしよう、お姉ちゃん……ここは逃げた方が」
 「……ダメ。私たちが戦闘領域を脱出するよりも、あいつの触手が届く方が早い」
 「そんな……じゃあ、どうすれば……」

 恐怖で顔を青ざめるルナの肩を優しく抱きながら、ディアナは覚悟を決めた。

 「……FREQ-Vertexを使いましょう」
 「えっ!? で、でも、あれはテオたちがなるべく使わないようにって……」
 「同時にこうも言っていた『FREQ-Vertexはとても強力な戦闘機能だ』と……どのみち、このままでは私たちはここで死ぬ。なら、やれることはすべてやり尽くしましょう……悔いを残さないように」
 「お姉ちゃん……分かったわ」

 姉妹がFREQ-Vertexの使用を決意したのとほぼ同時にルナのシールドが崩壊する。すると、シールドの向こうではヴェルゼビュートが艶然と微笑んでいる。

 「ふふふ。もうかくれんぼは終わりかしら?
……なら、そろそろ私の解体ショーに付き合って頂戴?」

 ヴェルゼビュートは禍々しい瘴気を放つ。だけど、姉妹は恐れることなく青い女に立ち向かった。

 「……行くよ! お姉ちゃん!」
 「ええ!」
 「『FREQ-Vertex』!ゼロカウント・フルオープン!」
 「うああああーーッ!!」

 FREQ-Vertexは、MIRシリーズのリミッター機能を模倣して作られたもので、短時間ではあるが自分たちの力を数十倍まで引き上げることができる。
 リミッターを解除した姉妹は、ルナがディアナを撃ちだすような形で加速した。

 大型複合兵装『アルキオネ』の出力を最大にして、凄まじい勢いでヴェルゼビュートに迫らんとする
ディアナはまるで流星のようだ。
そんな彼女の猛攻にも、ヴェルゼビュートは少しも焦ることなく、触手のガードを出す。

 「何っ? 急にやる気を出したみたいだけど、こんなの……」

 ところが、ヴェルゼビュートの予想に反し、ディアナのヴォ―パルブレードは触手の防御壁を破壊し、ヴェルゼビュートの眼前に迫る!

 「!?」
 「……獲ったッ!!」

 ディアナ必殺の剣は、今度は確かにヴェルゼビュートの身体に届いた。
……そのはずだったのだが。

 「そ、そんな……」

 ディアナの剣は、ヴェルゼビュートの頬を浅く切り裂いただけに過ぎなかったのだ。
それでも、ヴェルゼビュートにとっては大きな衝撃だった。

 「……まさか、蟻に傷を負わされるなんて、思ってもいなかった……フフフ。面白いわ。貴女たち!
このままじっくりと愛してあげたいところだけど
……時間切れみたいね」

 ヴェルゼビュートは非常に残虐な性格と、同時に冷静な軍師としての一面を持ち合わせていた。

 FREQ-Vertexの影響は、周辺空間にもおよび、周囲に展開していた
ヴェルゼビュート配下の活動は完全に停止状態。そしてかすり傷とはいえども、ネメシスの王・混沌の器である自分にダメージを負わせた不確定要素が居る中での戦闘を、ヴェルゼビュートは望まなかった。

 「……じゃあね。勇敢なお嬢さんたち。貴女たち、とても良かったわ。とても滾った……。フフフ。またお姉さんと遊びましょうね?今度は壊し尽くしてあげる」

 ヴェルゼビュートは呆然とする姉妹に妖艶な笑みを残し、その場を離脱したのだった。


EPISODE11 世界の中心へ至る道「ネメシスの軍勢は撤退。姉妹は彼らの進軍座標がメインフレームに通じる手がかりだと判断し追跡する」


 ヴェルゼビュートの撤退により、辛うじて残った配下のネメシスも併せて戦域を離脱。
 ネメシスの軍勢は前哨基地から目標を変え、別の座標へと進軍していったようだった。

 ようやく脅威は去った。
それなのに、ファクトリー勢力に安堵の雰囲気はない。
姉妹もまた、FREQ-Vertexのフィードバックにより苦しんでいた。

 「うっ……ぐっああ……!」
 「あ、あああ……! お、お姉ちゃん……痛いッ!」
 「ルナ……だ、大丈夫……?」

 全身を切り刻むような痛みに対し、姉妹は互いに身を寄せ合い、耐えるしかなかった。

 (テオがFREQ-Vertexの使用を控えるようにと言ったのはこういうことだったのね……)

 姉妹は痛む身体を引きずりノインを探した。しかし、彼女の残骸はおろか、痕跡すら見つけることはできなかった。

 「ノイン……」
 「お姉ちゃん、ノインは……最後、幸せだったのかな?」
 「……分からないわ……何も、何も残っていないもの」

 振り向けば戦場はすでに廃墟へと変わろうとしていた。
ファクトリー側の被害は凄まじく、恐らくこの前哨基地が再び活躍する機会は二度とないだろう。

 「う、ぐぅ……!」
 「お姉ちゃん! アイツ!」

 姉妹は瓦礫の中から瀕死の状態のユバルを見つけた。

 「……お姉ちゃん、どうしよう?コイツ、私たちの手で息の根を止めて……ッ!!」
 「……いいえ。別に私たちが手を汚すまでもない。ユバルはもう助からないわ」

 ディアナの分析は正確で、ユバルは虫の息だった。それでもユバルは研究者特有の偏執的な笑いをしている。

 「ぐはっ! ……ははは! す、素晴らしい!あ、あれが……混沌の器……! その力……確かに……記録……したぞ!」
 「……こいつ、とことんイカれてるのね。自分が死ぬ時も、研究のことしか考えてないなんて」
 「……」
 「……くっくっく……貴様らには分かるまいよ……。確かにこの身は滅びるじゃろう……だが、吾輩のアストラルコピーはすでに隔離させた……吾輩の記憶と研究結果さえ残れば……ボディなど……どうでもいい
問題じゃよ」
 「……貴方、本当に人間なの? 生物としてその思考は狂っているわ……そんな矛盾した生物は滅びるべきよ」
 「……そんな下らぬ問いはいい……XES-72、XGN-72……貴様らはネメシスたちを追うんじゃ」
 「えっ?」
 「ネメシス共が進軍した座標、何もないはずがない……奴らの狙いもまた、メインフレームなのじゃから」
 「つまり……ネメシスたちがジャンプした座標こそがメインフレームの接続座標に繋がっていると?」
 「恐らくはのぅ……」

 ユバルの言葉を聞いて、姉妹たちは悩んだ。ネメシスの軍を追うということは、再び戦闘になる可能性が高い。
そうなれば、またヴェルゼビュートと遭遇する可能性もある。

 ……けれど、答えは最初から決められているようなものだった。

 「……行きましょう。メインフレームと再接続して、私たちの枷を解いてもらう……それ以外に私たちが生き抜く道はないのだから」
 「うん……きっと私たち、元の身体に戻れるよね!お姉ちゃん!」


チュウニズム大戦

レーベル難易度スコア
スキル名/効果/備考
■メタヴEXP0 / 320 / 640
テクニカルジャッジ(BAS、ADVミス)
次のプレイヤーのBAS、ADVの
COMBO/CHAINは、MISSとなる。

■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


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*1 『PARADISE LOST』まではRANK 25、『NEW』以降はRANK15で開放