!!!ここに書いてある情報はゲーム用であり、実機の操縦には使えません!!!
はじめに
このページでは、初めてフライトシミュレーションゲームを触る方が知っておいたほうが良い程度の知識を紹介します。
より深い知識については、別ページ「飛行のための知識」に記載しています。
記事執筆者の方へ
「初心者向け」なので、解説は平易・簡単・短文を意識してください。長すぎると初心者の読む気が失せるため。
- マニアックな解説は飛行のための知識に転記してください。
単位
- 距離:マイル(miles; 省略形=nm)
- 海里(nautical miles)。1nm=1.852km。*1
- 速さ:ノット(knots; 省略形=kt)
- 時速1海里のこと。1kt=時速1.852kmです。
- 高度:フィート(feet; 省略形=ft)
- 1フット(foot; 単数形)は約0.3m。1mは約3.3feet(複数形)。
- 通常は対地高度(AGL)ではなく海抜高度(MSL)を指す。
- よく聞く旅客機の巡航高度「高度1万3000m」は「高度3万9000ft」。
- 体積:ガロン(gallon; 省略形=gal)
- 1gal=約3.754L。あまり使いたくない単位ですが軽飛行機のチャートではgal表記のことがあります。*5
各部の名称
- 航空機の向きに対して回転軸の名前が決まっています:ロール、ピッチ、ヨーです。
- 各軸の角度をロール角(バンク角)、ピッチ角、ヨー角と呼びます。
- 主翼の後ろにある舵が補助翼(エルロン)。舵ではないが、高揚力装置(フラップ)。
- 水平尾翼の後ろにある舵が昇降舵(エレベーター)。
- 垂直尾翼の後ろにある舵が方向舵(ラダー)。
- 前脚、主脚、前輪、主輪。これらを合わせて降着装置(ランディングギア)と呼ぶ。
ロール、ピッチ、ヨー
飛行機は操縦舵面(Flight Surfaces)を操作することで姿勢を変化させ、上昇・降下や旋回を行います。
操作 | 操縦舵面 | 航空機の姿勢の変化 | 結果 |
操縦桿を手前に引く | 昇降舵(Elevator)が下がる | ピッチ角が上がる(上を向く) | 上昇する |
操縦桿を押す | 昇降舵(Elevator)が上がる | ピッチ角が下がる(下を向く) | 降下する |
操縦桿を右に倒す | 右の補助翼(Aileron)が上がり、左は下がる | 右にロールする(右に回転する) | 右に旋回する |
操縦桿を左に倒す | 左の補助翼(Aileron)が上がり、右は上がる | 左にロールする(左に回転する) | 左に旋回する |
ラダーペダルを右に踏む | 方向舵(Rudder)が右に曲がる | 右にヨーイングする(右を向く) | 殆ど旋回はしない |
ラダーペダルを左に踏む | 方向舵(Rudder)が左に曲がる | 左にヨーイングする(左を向く) | 殆ど旋回はしない |
- ロールすることをバンクさせる(傾ける)と呼ぶことがあります。
- 飛行機のコックピットには、足元にラダーペダルという操縦装置が付いています。
ラダーペダルには二つの機能があります。- 左右にずらすと「ヨーイング」、つまり方向舵(ラダー)と車輪を動かします。
- つま先で踏むと「トーブレーキ(タイヤのブレーキ)をかける」
しかし通常、ラダーを踏むというとヨーイングのことを指します。
飛行機の周りの力
推力(Thrust) | 前に引っ張る力。プロペラやジェットエンジンにより発生する。 |
揚力(Lift) | 上向きの力。(主に)主翼が発生する。 |
抗力(Drag) | 後ろに引っ張る力。要は空気抵抗。揚力が大きいほど、抗力も増大する。 |
重力(Gravity) | 地面の向きにかかる力。 |
- 飛行機が重力に打ち勝って宙に浮くのは、主に主翼が発生する揚力のおかげです。
- ちなみに、推力のみで重力に打ち勝つのは、飛行機ではなくロケットであると言えます。
揚力、抗力と対気速度
- 主翼に前方から風が当たると、上向きの力(揚力)を発生します。
(主に)主翼の生む揚力が重力と釣り合うとき、水平飛行になります。*6- ピッチ角が水平のときに水平飛行になるとは限りません
- 揚力が生まれる時、後ろ向きの力である抗力も同時に発生しています。要は空気抵抗です。
- 揚力と抗力は、指示対気速度の2乗に比例しています。*7
指示対気速度とは、航空機の速度計に表示される速さです。大気との相対速度による圧力です。
指示対気速度によって揚力などが決まるため、操縦の目安であり、とても重要です。
揚力、抗力と迎え角
迎え角(Angle of Attack; AoA)は、対気速度の向きと主翼のなす角度です。
(ピッチ角とは違います。ピッチ角は、水平線の向きと主翼のなす角度です。)
- 迎え角が増大すると、揚力と抗力が増大します。
- 一般的には、ピッチ角を増大させると迎え角も増大します。
操作 | 迎え角 | 揚力 | 抗力 | 結果 |
ピッチ角を上げる | 迎え角が大きくなる | 揚力が増える | 抗力が増える | 飛行機は上昇するが、減速する |
ピッチ角を下げる | 迎え角が小さくなる | 揚力が減る | 抗力が減る | 飛行機は降下するが、加速する |
飛行機の安定性
- ピッチ角を上げて速度が遅くなると、逆にピッチ角が下がろうとする力が働きます。
- ピッチ角を下げて速度が速くなると、逆にピッチ角が上がろうとする力が働きます。
このような「飛行機が元の状態に戻ろうとする」特性があるため、飛行機の操縦はある程度安定します。
トリム
トリム(Trim)とは、操縦舵面に加え続ける力を軽減するための仕組みです。酷く大雑把な言い方をすれば、操舵を一定に固定して手放し操縦するための装置です。
例えば、ある速度・ある高度で水平飛行したいとき、操縦桿を少し手前に引かなければならない飛行機があったとします。この姿勢を保ち続けるには、ずっと操縦桿を同じ力で引いていなければならないことになり、これは面倒ですし精度も悪いです。
このようなとき、トリムをうまく調整すれば、操縦桿から手を放してもずっと一定の力で引き続けているのと同じような状態にすることができます。
トリムの種類
トリムには三種類あります。
ほぼ全ての機体にエレベータートリムは搭載されていますが、軽飛行機ではエルロントリム・ラダートリムまで備えていない機体も多いです。
トリムの名前 | 役割 |
エレベータートリム | ピッチ方向にかける力を調節する。最も重要。単にトリムと言えばエレベータートリムを指すことが多い。 |
エルロントリム | ロール方向にかける力を調節する。 |
ラダートリム | ヨー方向にかける力を調節する。 |
トリムの使い方
- シミュレータで遊ぶときは、必ずエレベータートリムをコントローラに割り当てしておきましょう。
- 一応キーボードからも操作できます。デフォルトでは詳しくはデフォルトのキー割り当てを参照
- エレベータトリム(機首下げ) ... テンキーの7
- エレベータトリム(機首上げ) ... テンキーの1
- コックピットからは、ダイヤルやスイッチで操作できます。
失速
翼の迎え角を上げ過ぎると、失速(Stall)状態になります。
- 失速状態では主翼が揚力を生まないため、落下して高度がどんどん下がり、墜落します。
- 大抵の飛行機では失速警報が鳴ります。ピーという笛の音や電子音が鳴ったら失速しています。旅客機では操縦桿がカタカタと震えます。
対気速度が遅すぎる場合、揚力は小さくなり高度を維持できなくなります。
そのような状態では特に無理に迎え角を上げがちになり、失速に繋がります。
失速からの回復方法
- 失速から立ち直るには、スロットルを最大にし、ピッチ角を下げて迎え角を小さくしてください。
一瞬高度を失いますが、主翼が揚力を生むようになると回復できます。- 高度が下がっているからといって、操縦桿を手前に引いてはいけません。迎え角が大きくなり、悪化します。
- 低空での失速は墜落に繋がります。失速から回復するために高度を下げている間に地表に激突する可能性があります。
- また、スピンからの回復は、スピン方向とは反対のラダーを踏み続けることで行います。操縦桿を左右に倒して(エルロンを動かして)はいけません。エルロンはロールのための舵面ではありますが、舵面が動作すると左右の主翼の抗力が変わってヨーイングが発生し、スピンが悪化する可能性があります。
旋回
旋回は主に操縦桿を左右に倒すことで行いますが、補助としてラダーペダルの操作が必要になります。
旋回の基本
水平方向への旋回は、操縦桿を左右に倒して飛行機を左右にバンク(ロール)させることで行います。
左右に傾けるだけで旋回するのです。
主翼の向きを旋回したい方向に傾けることで、揚力の方向も左右に傾くため、飛行機がその方向に引っ張られて旋回します。
- 図について揚力の水平方向成分(緑の矢印)が機体を左右に引っ張っていることが分かります
- 代償として、機体が水平だった時に比べて揚力の垂直方向成分は減ることになります
水平飛行している時に高度を保ったまま旋回しようと思えば、ピッチ角も上げなければならない事が分かります
旋回時のバンク角
通常の最大バンク角は、ふつうは30度以下です。軽飛行機だと45度くらいで急旋回の訓練をすることもあるようです。
旅客機や貨物機では30度以上になると警報が鳴ったり操縦桿が意図的に重くなったりします。
戦闘機やアクロバット機ではぐるぐると360度ロールさせます。
ラダーと調和旋回
要画像追加
旋回するときは、旋回方向と機首の向きが一致するように飛ぶのが理想です。
この状態を「調和旋回(Coordinated Turn)」と呼びます。
横滑り
調和旋回とは逆に、(旋回操作が原因で)旋回方向と機首の向きにズレが生じている状態のことを「横滑り」状態と呼びます。
飛行機が「横滑り」と呼ばれる状態になった時、ラダーを踏んで機首の向きを旋回方向に一致するよう修正する必要があります。
(但し、旅客機などの高級な機体には「ヨーダンパー(Yaw Damper)」という装置が装備されているため、基本的には旋回のためにラダーペダルを自分で操作することは無いようです。)
横滑りには二種類あります。
横滑り現象 | 状態 | 修正に必要な動作 |
スリップ(Slip) | 旋回方向より機首が外側を向いている | 旋回方向にラダーを踏む |
スキッド(Skid) | 旋回方向より機首が内側を向いている | 旋回方向に(踏んでいる)ラダーを弱める |
横滑りの確認方法
シミュレーターでは、旋回釣り合い計(Turn Coordinator)の黒いボールを見ることで調和旋回/横滑りの状態を確認します。
ボールが計器の真ん中に来ている時は調和旋回、ボールが左右にズレているときは横滑り状態を表します。
調和旋回時:( |●| )
横滑り状態:(● | | ) または( | | ●)
横滑りの修正方法
旋回釣り合い系の黒いボールが、計器の真ん中に来るようにラダーペダルを踏みます。
ボールが左にずれている時は左にラダーペダルを踏み、右にずれているときは右に踏みます。
ラダーペダルを踏みすぎてバンク方向とは逆方向にボールがずれた場合、踏む力を弱めます。
フラップ
フラップ(Flaps)は、一時的に主翼の揚力(と抗力)を増加させる装置です。*8
- フラップには展開の度合い(段数)があり、これをフラップ設定と呼びます。
機種や積荷・燃料等の重さ(ペイロード)によって、「いつどのフラップ設定を使うか」は異なります。- FS2020では、一部の機体ではチェックリストにフラップ設定が記載されていることがあります。
- フラップの展開には速度制限があります。対気速度が速すぎる時に展開するとフラップを損傷させます。
基本的な運用方法
- 離着陸時など、低速でも揚力を稼ぎたい場合にフラップを展開(作動)させます。
- 巡航中は、余分な空気抵抗にならないようにフラップを格納(解除)させます。
スポイラーとスピードブレーキ
スポイラーとスピードブレーキは、翼面を用いた減速装置です。抵抗となる翼面を「展開」することで減速します。
ジェット機に搭載されていることが多く、軽飛行機には搭載されていないことが殆どです。
詳しくはこちらを参照。
ランディングギア
降着装置(Landing Gears)はいわば飛行機の脚で、地上において車輪と柱で機体を支えます。単にギアと呼ばれることもあります。
- ギアには固定式と格納式があります。格納式では飛行中の空気抵抗を抑えることができます。
格納式では離陸したらすぐランディングギアを格納しますが、展開するときは速度制限があるので注意が必要です。
- ラダーペダルを左右にずらすと車輪も左右を向き、地上で方向転換することができます。
トーブレーキ
地上走行中にラダーペダルをつま先で踏むと、タイヤに「トーブレーキ」をかけることができます。
トーブレーキは左右独立のため、一方だけ踏むことで地上走行中の方向転換に使うこともできます。
- 大型機では、着陸前に仕掛けておくと接地後に自動で作動する「オートブレーキ」が備わっていることが多いです。
エンジン
長くなってきたので一部情報を飛行のための知識#ENGINEに移しました。
まだ冗長な説明なので更に削るかも。
各エンジン共通
スロットルレバー
スロットルレバーは、エンジンの出力(と推力)を調整するためのレバーです。コックピットでは黒いレバーで表されることが多いです。
単にスロットルと呼ばれることもあります。
自動車のアクセルに相当しますが、踏まなければ戻るアクセルとは違い、航空機のスロットルレバーは定位置に固定されます。
操作 | エンジン出力 | 結果 |
スロットルレバーを奥に押し込む | エンジン出力が増大 | 推力が増大 |
スロットルレバーを手前に引っ張る | エンジン出力が減少 | 推力が減少 |
レシプロエンジン
ピストンエンジンとも呼ぶ。昔ながらのプロペラ飛行機や自動車が積んでいるエンジン。
ミクスチャー
ミクスチャー(Mixture)はエンジン空燃比の調節装置。コックピットでは赤いレバーで表されることが多いです。
空燃比とは、エンジンに送り込む燃料と空気との割合のことです。
奥へ押し込むと燃料が濃くなり(リッチバーン)、手前に引っ張ると燃料が薄くなります(リーンバーン)。
一般的なレシプロ機では、高度によってミクスチャーで燃料の流量を調節しなければなりません。
エンジンの理想的な空燃比は一定ですが、高度を上げるにつれて空気が薄くなり、燃料の割合が大きくなってしまうためです。
- エンジンの騒音や排ガス温度(Exhaust Gas Temperature; EGT)や回転数が最大になるとき、理想的な空燃比です。*9
- 逆に言えば、理想的な空燃比からズレるとエンジンのパワーが下がります。更に、リーンになりすぎるとエンジンが高温になり危険です。
- 海面高度(特に離着陸時)では、レバーを奥に押し込んでFULL RICH(フルリッチ、最大流量)の状態にしておきます。
- FULL RICHのままだと高度3000ft~4000ftくらいからエンジンパワーが有意に減っていくので、レバーを少し手前に引っ張りましょう。
- エンジンを切るときは、まずミクスチャーを最大まで手前に引っ張り、燃料を完全にカットするようにします。マグネトーを切るのはその後です。
プロペラピッチ
プロペラピッチとは、飛行機のプロペラブレードの角度のことです。
- プロペラピッチが固定の機体(固定プロペラ機)では、飛行中にプロペラピッチについて考える必要はありません。
- それに対して「定速プロペラ機」では、巡航速度や巡航高度によってプロペラのピッチ角を変えることで、燃費を改善させることができます。*10
定速プロペラ機においては、プロペラの回転数をレバーで指示することになります。コックピットでは青いレバーで表されることが多いです。
- レバーを遠くへ押し込むと回転数を上げ、手前に引っ張ると回転数を下げます。
- 定速プロペラ機では、スロットル開度(エンジン出力)によらず、プロペラの回転数をレバーの指示通りに(一定に)保とうとします。
- エンジン出力を上げると、プロペラの回転数が上がるのではなく、プロペラピッチ(プロペラブレードのピッチ角)が増します。
すると、プロペラが掻く空気量が増加して機体の推力が向上しますが、プロペラを回すときの抵抗も増すので、回転数自体は上がらないという訳です。 - 但し、エンジン出力が低いせいで、ピッチ角を最大まで浅くしても目的の回転数まで上がらない状態のときは、エンジン出力を上げると単に回転数が上がります。
- 離着陸など最大パワーを必要とする場合は、ピッチ角を最大まで浅くしてエンジン回転数を上げるようにします(PROPS FULL)。
- エンジン出力を上げると、プロペラの回転数が上がるのではなく、プロペラピッチ(プロペラブレードのピッチ角)が増します。
その他の機構
機体によってはキャブレターヒート、カウルフラップなど様々な機構が備えられている。
詳しくは飛行のための知識#PISTONを参照。
ターボファンエンジン
現代的な飛行機が積んだ、いわゆる普通のジェットエンジン*11
推力の指標には「N1」または「EPR」が用いられます(エンジン計器に表示されます)。
- N1は約20%~約100%で表されるエンジンの回転数です。
詳しくは飛行のための知識#TURBOFANを参照。
ターボプロップエンジン
構造はほぼジェットエンジンですが、ジェット(排気)ではなくプロペラで推進力を得るようにしたエンジン。
- 推力の指標にはトルク(TORQUE)が用いられます(エンジン計器に表示されます)。
- スロットル周りには多くの概念があり、初心者にとってはかなり複雑です。
詳しくは飛行のための知識#TURBOPROPを参照。