右打ち教

Last-modified: 2021-01-10 (日) 16:42:45

片岡篤史が阪神タイガースコーチ時代に編み出した宗教。
フライボール革命」は邪教であり、(右打者は)とにかく右方向を意識しろが主な教義。
セカンドゴロレボリューション」とも揶揄され、地獄が生まれた一因とされている。
 

概要

片岡は2010年に1軍打撃コーチとして入閣したが、2012年に打撃不振を理由に辞任。
そのため2015年オフに金本知憲監督が片岡を1軍打撃コーチとして再起用したことを疑問視する声もあったが、前任の関川浩一*1や高橋光信*2よりはマシという評価もあり、2年間は大きな問題が起きなかった。
しかしヘッドコーチも兼務した2017年の秋季キャンプで、中谷将大大山悠輔「右打ちのススメ」を説き、ひたすら右方向へ打つ練習に取り組ませたことで状況が一変した。

 

「引っ張るだけではなく、広角に打ち分けられるようになれば打撃の幅が広がる」という指導方針自体は一理あり、現にオリックスの若月健矢が2020年に田口壮から右打ち指令を受け打撃改造を行った結果、打撃向上に繋がった例もあるため一概に間違いとは言えない。しかし、片岡の指導はやり過ぎるあまり「セカンドゴロゲッツーを打つ練習」「2017年の反動でセカンドゴロに飢えているのか」などと言われ、阪神ファンを大いに不安にさせた。

2018年の阪神の打撃

阪神ファンの不安はオープン戦から的中。貧打もあり序盤から連敗街道を爆走しオープン戦ぶっちぎり最下位になったのを皮切りに、6月中旬までは打率1割台は当たり前、二割台あれば上々という有様。チームの四球数・三振数・得点圏打率・残塁数・併殺数もセでぶっちぎりワーストで、2016年暗黒時代すら下回る「史上最低打線*3とさえ言われた。

また中谷は開幕から2か月近く二軍に幽閉され、大山規定打席未満ながらセ・リーグ最多併殺を長らく記録していた。
期待の新外国人であるウィリン・ロサリオも、オープン戦で早くも弱点を露呈。5月下旬に二軍落ちする頃には三振・併殺・失策の裏三冠王であの人再来と揶揄された。

この頃になると片岡の右打ち指導に疑惑を持つ声が徐々に出始め、プルヒッター右打者たちの持ち味を消しまくる指導のことを、村田真一ヘッドコーチの「コンパクト教」に擬え「右打ち教」という言葉が誕生した。
 
そんな中、開幕以降二軍漬けだった陽川尚将らがこの年から二軍監督に転じた矢野燿大や濱中治二軍打撃コーチの指導のお陰で結果を残し一軍のカンフル剤となったこと、梅野隆太郎や大山が中村紀洋のYouTube上の打撃指導の動画を視聴し、それを参考に打撃フォームを修正し復調した*4ことがあり、片岡の指導は二軍首脳陣は愚かYouTubeの動画にさえ劣るとみなされてしまった。

なお、片岡の指導には野球解説者たちも著しく低い評価を与えている*5

結局、右打ち教を蔓延させた結果、大山たちを伸び悩ませ17年ぶりの最下位と言う地獄を招いてしまい、シーズン終盤は金本と片岡を非難する横断幕や苛烈なヤジが飛びながらも、翌シーズンも金本体制の継続は決定的であり片岡後任の一軍打撃コーチとして新井貴浩の阪神復帰が取り沙汰されたり和田一浩の名が上がっていた。
ちなみに当の片岡は二軍監督に配置転換が内定しており、翌年以降も右打ち教の継続が心配されていた。

右打ち教の終焉

しかし、この決定に不服だったのが、阪神の親会社である阪急阪神HD*6である。
同社は、株の値動きや毎年6月に行われる株主総会の情勢が阪神タイガースの成績で左右されると言っても過言ではない特殊な事情がある。
当然、オープン戦とペナントで最下位、交流戦もあわや最下位という一軍最下位コンプリート同然の暗黒期ばりの非常事態*7になってしまった事から、HD株の下落や来年の株主総会の泥沼化を見過ごす訳には行かなかったのか、最終的には電鉄本社を飛び越えHD本体がわざわざ介入する異例の事態となり、金本監督と坂井信也オーナーが揃って辞任。*8
片岡自身も打撃不振の責任を取り、10月14日付で阪神を退団するという結末で2018年シーズンは幕を閉じた。

片岡の呪い

退団後、片岡はカンテレの解説者に復帰。しかしテレビ出演する度にコーチ時代の失敗がなかったかのように「右打ち論」の蘊蓄語りを繰り返すので、関西方面の阪神ファンからすっかり呆れられてしまっており、打撃指導者としては名誉外様扱いを受けている。
さらに片岡が解説を務める日の阪神の勝率がかなり悪いため「片岡の呪い*9」と言われるようになっている。
なお、片岡本人は後に自身のYoutubeチャンネルで「何も右打ちの練習ばかりさせてた訳ではない」と主張している。

矢野政権発足後

矢野燿大政権になり片岡に変わって二軍から一軍に配置転換された濱中は、再び大山と中谷に「右打ち指令」を出し阪神ファンを不安がらせた。

2019年は3位になったものの打撃成績自体は最下位になった前年よりもさらに酷くなり、大山も夏場以降は控えとなり中谷に至っては二軍でも結果を残せない惨状に陥った。このため一軍打撃コーチを務める濱中や平野恵一への批判も少なくなく、「関川・高橋・片岡よりも酷い」「一難(関川)去ってまた一難(片岡)去ってさらなる一難(濱中)」などと言われる事もあった。結果濱中は同オフに辞任し、平野は二軍内野守備コーチに異動した。もっとも2018年は打撃もだが守備陣が余りに崩壊しきっていたことに加え、投手陣も後半戦では俺達竜達以下だったこと、さらに自然災害による過密日程の影響なども大きかった。更に20-4を筆頭に死体蹴りや馬鹿試合と化した試合が多かったため、実質的な得点や印象はかなり悪かった。
2019年は逆に最終盤で巨人、De、広島が失速、それまで好調だった中日の息切れヤクルトの壊滅状態等が重なったことが幸運だった。

ただし打者有利とはいえオールスターで梅野隆太郎原口文仁近本光司が打ちまくる活躍もあった為、最大の問題はメンタルやファンの野次、打者不利の甲子園球場をホームにしていること*10ではないかとも言われる。

しかし、2020年は、大山がようやく右打ち教の呪縛から逃れ本塁打・打点・三塁打はいずれもリーグ2位を記録。陽川もまずまずの働きをした反面、中谷は呪縛から脱却出来ず江越と共に守備要員としてシーズンを過ごすことになった。ただし中谷に関しては意識の問題として片付けられることもある。

2018年と2019年シーズンのチーム打撃成績

1)2018年(最下位)

  • 打率.253(セ5位)
  • 長打率.361(セ6位)
  • 得点圏打率.265(セ4位)
  • 出塁率.330(セ3位)
  • OPS.691(セ6位)

チーム本塁打王:糸井(16本)、次点:福留(14本)
チーム首位打者:糸井(.308)、次点:糸原(.286)
チーム打点王:糸井(72)、次点:福留(68)

2)2019年(3位)

  • 打率.251(セ4位)
  • 長打率.362(セ6位)
  • 得点圏打率.247(セ6位)
  • 出塁率.317(セ4位)
  • OPS.681*11(セ6位)

チーム本塁打王:大山(14本)、次点:マルテ(12本)
チーム首位打者:糸井(.314)、次点:近本(.271)
チーム打点王:大山(76)、次点:梅野(59)

右打ちコンパクトの元祖

和田豊*12は現役時代から右打ちを得意としコーチ時代から監督時代まで軽打や右打ちを推奨していた*13ことは有名だが、ある時上本博紀が本塁打を放った時にカミナリを落とした時のエピソードについてこう述べたことがある。

上本は勘違いをしている。幹になる選手、つまり外国人や金本新井のような選手はホームランを狙うべきだが上本のような小兵がホームランを打って喜んでいてはいけない。 枝となり葉となる選手にはそれなりの役割がある。ホームランよりもまずは塁に出ること。転がすこと。ランナーがいたら右に打つこと。ヒットでなくとも構わない。 私は現役時代、キャンプでホームランを打つ練習をした。それは「今日で長打は打ち止めだ」と自分を戒める為の練習だった。 身長や腕力など、身体的にどうしようもない事はある。しかし小兵は小兵なりの戦い方をするしかない。だからホームランの上本に雷を落としたのです。

「フライボール革命」以降、小兵でも狙えるなら本塁打を狙うべきとする風潮からすればまさに時代錯誤もいいところであり、和田の考えは片岡よりも村田の考え方に近いものがあり、和田を「右打ち教」「コンパクト教」双方の元祖とみなす向きもある*14
 
かつて金本は、解説者時代に名前こそ出さなかったものの暗に和田と村田真一の打撃論を批判していたのだが、自分が監督として率いたチームの打撃スタイルがまさしく和田のそれになってしまったというのは皮肉という他ない。

関連項目


*1 現ソフトバンク三軍打撃兼外野守備走塁コーチ
*2 現・オリックスフロント。2017年のみオリックス1軍打撃コーチだったがやはり貧打で解任。
*3 チームで3ラン以上のホームランが初めて出たのが6月という珍記録も作っている。
*4 梅野は初めて規定打席に到達し、打率.259、8本塁打、49打点とキャリアハイの成績を残し、大山も8月まで打率2割台前半、2本塁打(どちらも右方向)と苦しむも9月に打率4割超、9本塁打と大爆発し、最終的に打率を.274まで上げ初の2桁本塁打を記録した。
*5 例:和田一浩阪神のバッターがやけに右に右に打とうとしてる。だから硬くなってるんですよね」(NHKでの解説時の発言)
*6 阪急阪神東宝グループの持株会社で阪急電鉄や阪神電鉄などの子会社を統括。ちなみに2006年の経営統合時には「阪急側は10年間タイガースの経営に口を出さない」と言う覚書が交わされていたが、10年経過後の積極介入が問題になっている。
*7 暗黒時代でも最悪の部類に入る1991年がオープン戦・ペナント双方でぶっちぎり最下位になっている。
*8 事実上の解任。
*9 元々カンテレ放送時の阪神の勝率は悪い上に、片岡解説時はあり得ないような逆転負けを食らうパターンがなぜか目立ったため。
*10 OBの田淵幸一、金本が共に「広い甲子園球場をホームにしている限り野手育成は無理」という旨の発言をしており、金本は監督時代ラッキーゾーンの復活を強く希望していた。ホームランラグーンを設定したロッテの打撃成績が急激に上昇したため、意外と信憑性のある要素である。特に阪神は投手力が良く打撃と守備力が悪い傾向にあるため、ゾーンの設定で打撃力向上と共に、フィールドを狭くすることで守備範囲を狭め、間接的に守備をしやすくする等利点が多い。ただし他球団と異なり高校野球を最優先する必要がある。取り外し可能にするなど案はネットでも出ているが、中々設置に高野連から賛成意見が出ないのが現状である。
*11 ちなみに二年連続でOPSが6割代だったのはセリーグでは阪神のみ
*12 ちなみに和田は最多安打も記録した巧打者だった反面、併殺数上位の常連でもあった。
*13 パワーヒッターであるアリアスやブラゼルに「ワダサンスタイル」という流し打ちの技術を会得させ確実性を向上させた。またスラガガータイプだった関本賢太郎を巧打者に育てるなどしている反面、ワダサンスタイルはNPに拍車がかかってしまう欠点もあるため打撃指導者としての評価は微妙になっている。
*14 なお当の和田本人は右打ち教に対して否定的なスタンスを取っていた模様。ただし大山や中谷といったスラッガータイプ、和田が言うところの幹になる選手に右打ちを強要するのに否定的なニュアンスであったならば筋の通った主張ではある。