エステル・ヤグルーシュ

Last-modified: 2024-03-05 (火) 08:33:59

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通常気高き血統
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Illustrator:煎茶


名前エステル・ヤグルーシュ
年齢容姿年齢20歳(製造後12年)
職業強硬派士官
身分金騎士
  • 2023年5月11日追加
  • SUN ep.IVマップ5(進行度2/SUN PLUS時点で455マス/累計1710マス)課題曲「Makear」クリアで入手。
  • トランスフォーム*1することにより「エステル・ヤグルーシュ/気高き血統」へと名前とグラフィックが変化する。

ヤグルーシュの系譜を受け継ぐ強硬派の士官の女性。
聖女レアと共に、真人という種を明日に繋ぐために戦う。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1ジャッジメント【SUN】×5
5×1
10×5
15×1

ジャッジメント【SUN】 [JUDGE]

  • 高い上昇率の代わりに、強制終了のリスクを負うスキル。オーバージャッジ【SUN】と比べて、上昇率-20%の代わりにMISS許容+10回となっている。
  • 初期値からゲージ7本が可能。
  • GRADE100を超えると、上昇率増加が鈍化(+0.3%→+0.2%)する。
  • SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • スキルシードは200個以上入手できるが、GRADE200で上昇率増加が打ち止めとなる。
効果
ゲージ上昇UP (???.??%)
MISS判定20回で強制終了
GRADE上昇率
▼ゲージ7本可能(190%)
1210.00%
2210.30%
3210.60%
▼ゲージ8本可能(220%)
35220.20%
68230.10%
101239.90%
▲NEW PLUS引継ぎ上限
102240.10%
152250.10%
200~259.70%
推定データ
n
(1~100)
209.70%
+(n x 0.30%)
シード+10.30%
シード+51.50%
n
(101~200)
219.70%
+(n x 0.20%)
シード+1+0.20%
シード+5+1.00%
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADE上昇率
2023/2/9時点
SUN15171253.90% (8本)
~NEW+0271259.70% (8本)


所有キャラ

所有キャラ

  • CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
    Verマップエリア
    (マス数)
    累計*2
    (短縮)
    キャラクター
    SUNep.Ⅰ5
    (105マス)
    375マス
    (-40マス)
    チキ&ウリシュ
    ep.Ⅲ1
    (105マス)
    105マス
    (ー)
    エリシャ・ムルシア
    SUN+ep.Ⅳ5
    (455マス)
    1650マス
    (ー)
    エステル・ヤグルーシュ※1 ※2
    ※1:初期状態ではロックされている。
    ※2:該当マップ進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 嵐の前の静けさ「私の行いは裏切りと取られても仕方がない。それでも真人という種を明日に残さなくちゃいけないの」


 ペルセスコロニーの中枢塔から眺める銀色の都市は、夕焼けに晒されてこの世のものとは思えない世界を描き出している。
 まるで、こうである事が前提であるかのような計算され尽くした徹底ぶりに、私は思わず唇を歪めた。
 機械種に美を追求するセンスがあるのかどうか、私には分からない。
 けれど、その非の打ち所のなさが、かえって他者を寄せつけない排他的な意志を内包しているように感じられたのだ。
 この高さからでは確認できないが、眼下に広がる街には機械種との戦闘で亡くなった真人たちの亡骸が多く残されている。
 彼らは皆、ヴォイドの突入指示に従って命を落とした者たちだ。
 そうまでして都市を手に入れたかったのは、このコロニーに備わっている人工子宮を確保するため。
 ただそれだけのために、これほどの死者を出してしまっては……。
 この先の未来を思い描いて、私はふと思う。

 「私たちは、滅ぶべくして滅ぶのかもしれないわね」
 「不甲斐ないわね、本当に。私がヴォイドの考えを変えられていたら……こんな結果にはなっていなかったかもしれないのに」

 隣で力なく答えたレア様に、私は「いいえ」と首を横に振った。

 「貴女だけのせいではありません」
 「でも……」
 「結果はもう覆らない。なら、これからどう動くかを見極めるしかないでしょう」
 「私に、本当にできるのかしら」
 「できますよ。レア様は、やさしい方ですから」

 そこでひとつ、提案をした。

 「まずは、失われたものの大きさを正しく理解するところから始めてみてはどうでしょう。彼らの死を、ただの数字として認識するのではなく、それぞれに向き合うのです」
 「それって……」
 「彼らの名を、役割を知り向き合う。その積み重ねが貴女を支え、貴女を慕う者も動かしていく事でしょう」
 「……嘆いている場合じゃないわね」

 思い詰めていたレア様の表情が心なしか和らいだ。

 「彼らの死を無駄にしないために、私は何がなんでもこの戦いを生き延びるわ。そして、明日につないでみせる」
 「貴女なら、必ずや成し遂げられましょう」

 そう言うと、レア様が私の方へ手を差し伸べた。

 「一緒に、歩いてくれるかしら?」
 「はい。レア様が望む限り」

 彼女の華奢な手を取り、もう片方の手を自身の胸に掲げる。
 かつて私は、誓いを立てた。
 レア様が歩む道を照らし、導くと。
 これ以上、怒りと憎しみの連鎖が生まれないために。


EPISODE2 侍従騎士「ヤグルーシュの名にかけて、必ずや貴女を立派な聖女様にしてみせましょう」


 「エステル・ヤグルーシュ、お前には“これ”の面倒を見てもらう」

 そのお役目が舞いこんできたのは、私がセロ様の補佐官になって間もなくの事だった。
 セロ様の隣で“これ”と呼ばれた真人の少女は、今の自分の状況を理解していないのか、上目遣いでこちらの様子を伺っている。

 「何をしている、レア」
 「……」

 名前を呼ばれても、彼女は身体をびくりと震わせるだけで一向に答えない。

 「セロ様、彼女は一体……」
 「これはバテシバ様の胚を用いて造り出したものだ」
 「な……っ」
 「完全なる模倣には至らなかった失敗作だが……使い道はある」

 セロ様が言う完全なる模倣とは、見た目の事を指しているのだろう。姿形は似ていても、燃えるような髪や煌めく金の瞳は、バテシバ様とは程遠い。

 「以前にも話したが、私の死期は近い。私の死後、強硬派は新たな体制に生まれ変わる。そこでお前には、これが強硬派の御旗として機能するよう導いてもらう」

 セロ様の言葉は絶対だ。拒否権など最初からない。

 「衛士でしかない私に……そんな大役が本当に務まるのでしょうか」
 「お前はヤグルーシュ家の者。聖女の侍女として、これ以上の適任者はいないだろう」

 私の先代、イゼヴェル・ヤグルーシュ。彼女の事は断片的にしか知らないけれど、彼女が戦場に出る前はバテシバ様の侍女だったと聞いていた。

 「承知しました。このエステル、身命を賭してレア様を導きましょう」
 「重畳だ」

 セロ様は私たちを残して自身の研究室へと戻った。
 ……ここは、重苦しくて居心地が悪い。
 少しでも気を休める場所に向かおうと、私は微動だにしないレア様の前に跪いて手を伸ばす。

 「さあレア様、一緒に行きましょう」
 「イヤ……っ」

 私の行いは、彼女をひどく怖がらせてしまったらしい。気づけば、レア様の歯が私の手に突き立てられていた。
 痛みと共に、徐々に熱が強くなっていく。
 フーッ、フーッ、と荒い息を吐きながら、彼女の眼がずっと私を睨んでいた。
 私は彼女に嫌われてしまったらしい。
 言葉すら通じているか分からない彼女に、私がいくら気休めにもならない言葉を紡いだとて、意味をなさないだろう。
 だから私は、彼女が私の手に夢中になっている間に、彼女を運び出す事にした。

 「――っ!?」

 ひょいと片手で持ちあげると、レア様はあっさりと口を離して私の首にしがみついてきた。
 レア様の身体は軽く、私よりひと回りほど小さい。

 「これでは、逆に怖がらせてしまうかも……」

 必死にしがみつく彼女の姿が微笑ましくて、私はつい鮮やかな赤い髪に触れ――目一杯の力で頬を弾かれてしまった。

 「……ふふ、新兵を鍛えあげるよりも大変そうだわ」

 聖女レア・エ・フラータ。
 のちに強硬派の指導者として真人を率いていく彼女との出会いが、私の歩む道までをも変えてしまう事になるとは、この時の私は思いもしなかった。


EPISODE3 聖女の面影「因果なんてものが本当にあるのだとしたら、私がレア様の侍女になったのも必然だったのかしら」


 私が生まれるずっと前から続く機械種との争いは、指導者エイハヴと聖女バテシバの死によって、より苛烈に、より規模を拡大させていった。
 強硬派が目指すのは、オリンピアスコロニーから遥か東に位置する機械種の拠点ペルセスコロニー。
 要衝とも言える巨大な都市を制圧し、真人を生み出す人工子宮を確保する事が私たちの命運を決める。
 私たちには、時間がなかった。
 真人の管理下にある多くの人工子宮が、老朽化や機械種の妨害といった理由により、稼働を停止しつつあったからだ。

 多くの真人は、短命という欠陥を生まれながらにして抱えている。
 いかに優れた者でも、寿命が短ければできる事には限りがあった。

 「ねえエステル、私も寿命ですぐに死ぬの?」
 「レア様は少し事情が違います」
 「どんな事情?」
 「エイハヴ様とセロ様の研究が、私たちの世代の寿命を延ばしてくれたのです」

 今までの世代の寿命は、長くて10数年だったけど、私たちはその倍近く生きる事ができる。
 数々の研究を経て確立された技術が、真人の可能性を広げてくれたのは間違いない。

 「これで私たちは、より練度の高い戦闘や兵器を開発できるようになりました」

 すると、レア様はふとした疑問を口にした。

 「寿命が延びても、私たちは戦うの?」
 「え?」
 「戦う以外、何もできないの?」

 そんな風に考えた事は、これまで一度もなかった。
 レア様は、これまでと同じやり方を続ける事に違和感を覚えている。
 私たちの存在意義は、機械種と帰還種を滅ぼし、大地の支配者になる事。
 戦う以外の道があると訴えでもしたら、穏健派や融和派のように思想犯として投獄され処分されるだけ。
 冷徹な判断を下すセロ様が知れば、レア様は確実にそうなってしまう。
 それだけは、絶対に避けなくては。

 「レア様、その考えを口にしてはいけません」
 「どうして? 他の道を考えるのはいけない事?」
 「……いけません」
 「ねえ、どうして?」
 「っ……どうしてもです!」
 「……ひっ!」
 「も、申し訳ございません、レア様」

 純粋な気持ちを私は踏みにじってしまった。
 戸惑いの色を浮かべる瞳を真っ直ぐに見られない。

 「貴女に求められているのは、強硬派を導いたバテシバ様の意思を引き継ぐ事です。先程の考えは、貴女の身を危険に晒しかねません。私は、貴女にはそうなって欲しくない。だから、今は心に留め置いてください」
 「……」
 「レア様?」
 「エステルは、やさしいのね」
 「わ、私が?」

 そんな風に言われたのは初めてだった。

 「うん。なんとなく、あったかいなって」

 レア様はそう言って寂しそうに笑うと、自分の考えを心にしまうと言ってくれた。

 「今日はここまでにしておきましょう。また明日」
 「わかった。また明日ね、エステル」
 「お休みなさいませ」

 レア様の居室を出て、扉に寄りかかる。
 額に感じた冷たさが、私が動揺していた事を物語っていた。

 「レア様、本当に優しいのは貴女ですよ……」

 投げかけられた小さな疑問。
 彼女の中に芽吹いていた感情を、私は無理やり摘み取ってしまったような気がして、心がちくりと痛んだ。


EPISODE4 狂気が生みしモノ「こんな事が許されるなんて……あの方の中には、どれほどの執念が渦巻いているというの?」


 レア様との日々は、3年程の月日が経過したある日、終わりを迎えた。
 強硬派指導者セロ・ダーウィーズの死。
 聖女バテシバに代わり、彼が主導となって動いていた強硬派は、彼の死後、合議制へと変更された。
 それに伴い、新たに真人たちを導く指導層には、聖女レア、宰相ヴォイド、カイナン、サルゴン――そして、レア様の補佐官として私が加わる事に。

 指導層の方針は、ペルセスコロニーの制圧に変わりはない。けれど、体制の移行による混乱は、各地で変化の兆しを見せ始めていた。

 警備が手薄な地方都市や真人の研究施設を狙ったテロ事件。
 バテシバ様の統治以降、急激に推し進められた真人の統一に、穏健派と融和派は当然不満を唱えた。
 彼らの主張は、機械種に恭順の意を示し、帰還種とともに生きる道を見つける事で大方一致している。
 では相違点は何か?
 それは、力によって主張を押し通すか否かだ。
 寿命によって自然消滅しつつある穏健派とは違い、一定の勢力を持つ融和派は平然と暴力を行使する。

 融和派による犯行声明を受け、私は配下の兵たちと共にとある都市へと向かった。

 「――お前たちは武器もろくに扱えないのか? ただ頭数を揃えただけでどうにかなると思ったら大間違いだ」
 「強硬派の犬め!」「裁かれるべきはお前たちだ!」「暴君を引きずり下ろせ!」

 捕らえたテロリストたちは口々に身勝手な主張を繰り返す。

 「お前たちが何を主張しようと構わない。だが、暴力を用いれば話は別だ」
 「武力を持たなければ、交渉の場にもつかせない現体制に問題がある! 我々の行いだけが処罰されるいわれはない!」

 私は、彼らの足元で動かない真人たちに目を向けた。
 テロリストが立て籠もった研究施設の者たちだろう。交渉道具にされる事を拒んだのか、はたまた別の理由があったのか、全身に何度も殴られた痕がある。
 後頭部から額にかけて空いた穴からは、赤い花が咲いていた。

 「無関係な民間人を処刑するのが、お前らが掲げる正義か。ずいぶんと立派だな」
 「……わ、我々は、間違っていない! こいつらの所業は、断罪されるべきだった!」
 「所業? 何を言っている……」
 「語るに落ちたな、犬め! 何も知らないのなら、見てくるがいい。あの向こうに、何があるのかを!」
 「こいつらを連行しろ」
 「了解」

 拘束したテロリストたちが配下の兵に連れられていく中、部屋の奥にある扉を見やる。

 「あの向こうに、何があるの……」

 半開きのままになっている扉の奥へと向かう。
 中を覗くと、透明な壁に囲われ隔離された、白髪の幼い男の子が台の上で横たわっていた。
 まるで……見世物のような扱いだ。
 寝ているのか死んでいるのか、ここからでは確認のしようがない。
 至るところにチューブがくくりつけられた身体は裸同然で、ひどくやつれていた。

 「幼子の真人なんて、戦時下になってから見かけていないのに。ここでなんの研究を……」

 施設を調べていくうちに、少年の身柄が判明した。
 彼の名は、ソロ・モーニア。
 聖女バテシバの血を引く実の“子供”だった。

 「――にわかには信じがたいけれど、もし奴らがこの子を利用して機械種に交渉を持ちかけようとしてたなら」

 その時、私の端末に通信が入った。
 画面には「カイナン」と表示されている。

 「珍しいわね。貴方が連絡を寄こすなんて」
 『君が制圧した施設の“状況”を知りたい』
 「……へえ、耳が早いのね」

 カイナン・メルヴィアスは、私がセロ様からレア様の従者になったのを機に、オリンピアスコロニーの中枢に出入りするようになった。
 私は彼について詳しくは知らないけれど、セロ様と同じくらいバテシバ様への忠誠心を持っているのは確かだ。

 「ここの情報も、セロ様から予め聞いていたの?」
 『そんなところだ。彼の死後、私が引き継いだ研究は多くある』
 「じゃあ、機密事項を知ってしまった私は、あのテロリストたちと同じ目に遭うのかしら」
 『私はセロやヴォイドのような強権主義者でも秘密主義者でもない。君にはむしろ、私に協力してもらいたい』
 「協力?」
 『ソロ・モーニアを、誰の目にも触れないよう匿ってほしい』

 カイナンは言った。彼の存在は現体制を根幹から揺るがしかねないと。
 確かに、強硬派は新体制に移行したばかり。そこを融和派の残党が突かないはずがない。
 それに加えて、他の勢力の台頭まで許してしまう可能性もある。
 強硬派がバラバラになってしまえば、レア様にも影響があるだろう。
 不安要素は少ない方がいい。
 だから私は、カイナンの提案を呑む事にした。

 ――
 ――――

 ソロ様とともにゴリツィアコロニーで暮らすようになってからしばらくして、カイナンから再び連絡が入った。
 端末越しに見るカイナンの眉間には深いしわが刻まれている。

 「その様子だと、状況はあまり芳しくないようね」
 『……融和派の拠点を幾らか制圧したが、やはり情報提供者を知る者はいなかった。こちらは引き続き調査する』
 「そう、分かったわ。じゃあ何か進展があれば、連絡をちょうだい」
 『待て、話はまだ終わっていない』
 「まだ何かあるの?」
 『ひとつ、君に頼みたい事がある』

 カイナンはそう言うと、端末にある映像を表示した。
 映っているのは、白衣を着たまま眠る真人の女。

 『名はゼファー。彼女は私がセロから引き継いだ研究で造られたバテシバ様の複製体だ』
 「複製……」
 『彼はバテシバ様のためにあらゆる手を尽くした』

 セロ様が目指していたのが、彼女のような複製体を造る事だとしたら。彼女やレア様以外にも、研究のために造り出された者がいたはず。
 手段や素体を変えて、たったひとつの答えを導きだすために。

 『彼女をソロのもとに置いてはくれないか』

 一体、セロ・ダーウィーズはどれだけバテシバ様に執着していたのだろう。何が彼をそこまで動かすのか、私には理解ができなかった。


EPISODE5 意志を形にして「ふたりは本当の家族のよう。カイナンは、初めからこれを望んでいたのかしら……」


 ソロ様とゼファーがゴリツィアコロニーで暮らす事になった。
 ゼファーはバテシバ様の純粋な複製体と聞いていたけれど、彼女は私が知るレア様ともバテシバ様とも違う雰囲気を持っている。
 おっとりしているというか、生きる事に不慣れというか……とにかく「世間知らず」だった。
 でも、そんな彼女だったからこそ、ソロ様に良い影響を与えてくれたのは間違いない。

 ゴリツィアに来たばかりで敵意をむき出しにしていたソロ様が、ひたむきに接してくれた彼女に心を開いてくれたのだ。

 ――
 ――――

 月日は流れ、ふたりはもう私が気に掛ける必要もないぐらい、良好な関係を築いてくれるようになった。
 傍から見れば、ふたりは親子にも姉弟にも見える。
 きっと、ふたりだけに通じる血のつながりのようなものがあるのかもしれない。
 緩やかに流れていく時間は、オリンピアスとゴリツィアを行き来する私にとっても、癒しになっていた。
 そんなある時、ゼファーが神妙な顔つきをして私に謁見を求めてきたのだ。

 「――エステル様、どうか私に衛士としての手解きをしていただけないでしょうか」
 「あら、それはどうして?」
 「私はソロを護りたいんです。あの子はこれからも辛い目に遭うかもしれない。もしそうなった時、私に戦う力がなかったら……だから」

 真摯な眼差しが私に注がれる。

 「お願いします、エステル様」

 その眼には、見覚えがあった。
 瞳の色は違えど、その奥に秘めているものはレア様と限りなく似ている。

 「……バテシバ様との違いは、どこにあったのかしら……」
 「え?」
 「なんでもないわ。ゼファー、貴女が抱いたその気持ち、絶対に忘れないでね」
 「えっと、じゃあ……」
 「ええ、私が直々に鍛えてあげる。でも、貴女だけという訳にはいかないわ。ソロ様と一緒に、しっかりしごいてあげる」
 「ええっ!?」

 ゼファーとともにソロ様の部屋に向かうと、ソロ様は私の提案を二つ返事で聞き入れるのだった。

 ――
 ――――

 訓練を始めてから、月日は流れ――

 「良い連携だったわ。ふたりとも成長したわね、私に一撃を与えられるようになるなんて」
 「……あ、ありがとう、ございました、エステル様」
 「え、エステルに、殺されるかと思った……」
 「ちょっと、ソロ……」

 息を切らして地面に横たわるふたりに、私は言った。

 「正しい指摘よ。私は本当に殺すつもりで戦ったわ。殺されるかもしれないと思うぐらい追いこまないと、訓練にならないもの。戦場では理不尽な状況に陥る事だってある。命なんて、奪われる時は一瞬よ?」
 「うん……わかった」
 「あら、良い顔つきになってきたわね。そんな貴方に私からこれを贈らせてもらうわ」

 長い訓練に耐えたソロ様に、ある物を手渡した。

 「銃? うっ、重っ……」
 「身体が大きくなれば、自ずと扱えるようになるわ。それは、カイナンが帰還種の武器を参考にして製造した兵器――“バラキエル”。貴方の大切な人を護る心強い味方になってくれるはずよ」
 「あ、……エ、エステル」
 「ん?」
 「あっ、ぁりがとう」

 ソロ様は笑おうとして、結局うまく笑えなかった。
 けど、私が見た彼のどんな表情よりも輝いて見えた。


EPISODE6 扇動者たち「戦争の機運が高まり、水面下で蠢いていた思惑が交錯していく……この流れは誰にも止められない」


 穏やかな日々は、夜陰に紛れて現れた融和派たちの襲撃によって唐突に終わりを告げた。
 街は被害に遭ったが、幸いソロ様に怪我はなく、死傷者もほとんど出ずに済んだ。
 けれど、安心はできない。
 ソロ様の居場所が露呈し、ゴリツィアコロニーも安全ではなくなったのだから。

 ふたりはカイナンの手引きでオリンピアスコロニーに移る事になった。
 けれど、そこも安全とは言えなかったようで――

 ゴリツィアの事後処理に追われていた私のもとに、ふたりが行方をくらましたという報せが入ったのだ。

 「カイナン……貴方がついていながら、何をしていたの!?」
 『彼らの動向は補足していた。だが、イオニアコロニーで何者かの妨害があり、追跡できなくなってしまった』
 「まさか、まだ融和派が?」
 『いや、奴らはゴリツィアコロニーの襲撃と、先日実行した掃討作戦でほぼすべての戦力を失った。残党も数日の内に排除されるだろう』
 「じゃあ一体誰が……」
 『強硬派も一枚岩ではなかった、という事だ。我々は利用されたんだよ』

 続けてカイナンは、ヴォイドがソロを口実にして機械種との戦争を早めると語った。

 「ヴォイドが裏で関わっていたと?」
 『融和派とのつながりを示すものは何もない。私は複数の要因が重なった結果、今回の件につながったと見ている。ここで過ぎた事を話しても仕方がない。追手はすでに私の方で手配した。情報が入れば君にはいち早く連絡しよう』
 「…………分かった」

 仮初の平穏は、いとも簡単に打ち破られた。
 一度戦争へと傾いた天秤は、すべてが終わるまで元の位置に戻る事はないのだろう。

 ――
 ――――

 オリンピアスコロニーに帰還した私を出迎えてくれたのは、戦争一色に染められ様変わりした機械都市の姿だった。
 街の至る所には武装した兵隊が闊歩し、彼らの上では聖女バテシバを思わせる風貌のレア様が戦争を焚きつける映像が流されている。

 「レア様……」

 映像の中の彼女は、どこか冷たい。
 まるで、資料として残るバテシバ様の映像を事細かに模倣しているかのよう。
 私は一抹の不安を覚え、レア様の下へと急いだ。

 強硬派指導層と一部の者だけが通る事を許されたヘライアの上層階。装飾もほとんどない殺風景な通路をまっすぐ進んだところに、レア様の居室がある。
 固く閉ざされた扉の前で彼女の名前を呼んだ。

 「――どうぞ、入って」
 「失礼し……」

 部屋に入った途端、レア様が私の胸へと飛びこんできた。

 「レ、レア様……?」
 「久しぶりね、エステル」

 寂しげに笑うレア様の顔は、ひどくやつれていた。

 「驚かせてしまってごめんなさい。ここには衛士以外誰も来ないから、嬉しくて……」
 「それはどういう事でしょうか」
 「普段、この階層を出る事が許されていないの」
 「え……」
 「前に貴女は言ってくれたわよね。自分の考えを口にしてはいけないって。でも、ダメだった。無理やり戦争を押し進めようとするヴォイドを止めようとしたら、こうなってしまったの」

 これは事実上の幽閉だ。
 大衆に伝わるレア様の姿は、聖女バテシバを演じているだけに過ぎない。本来のレア様が彼女とはかけ離れている事を悟られたくなかったのだ。

 「申し訳ございません、レア様」
 「貴女は悪くない。私が愚かだったのよ」
 「レア様は、私たちにはないものの考え方ができるお方です。聖女の名に相応しいですよ」
 「平和な世界を想いながら、兵士たちを死地へと向かわせているのに? 笑顔で死ねと言っているようなものだわ……こんな私の、どこが聖女だって言うの? 私は、死神以外の何者でもない!」

 彼女の中で、ずっと押さえつけられていた感情がとめどなく溢れだす。
 自身の意思にそぐわぬ行動が、これほどまでにレア様を追い詰める事になるだなんて……愚かなのは私の方だろうに!

 「……諦めないでください」

 こんな事しか言ってやれない自分に嫌気がさす。
 何が侍女だ。これでは、バテシバ様の下を離れたイゼヴェルと同じ道をたどってしまう。
 私は、彼女が歩む道を最期まで照らすと決めたのだ。

 「貴女の本当の願いが聞き入れられる日が、いつか必ずやってくる。貴女は今、誰もが目を逸らすような過酷な道を歩こうとしているのです」
 「本当に? 私は、ただの無力な女でしかないわ」
 「ヴォイド様に意見を言えたのですから、貴女は十分に強いですよ」
 「あれは……どうにかしたいって一心で」
 「誰にでもできる事ではありませんから」

 その場でひざまずき、頭を垂れる。

 「貴女はいつか、私たちを導いてくれると私は確信しています。戦いとは違う、明日を」
 「…………頭を上げて、エステル・ヤグルーシュ」
 「はい」

 レア様の手が、目の前に差し伸べられた。

 「私には支えが必要よ。私の右腕として、貴女の力を借りられるなら、私はこの現実に立ち向かっていける」
 「このエステル・ヤグルーシュ、命尽きるまで貴女とともにあります」

 聖女の手を取り、悲しみに揺れる彼女の瞳に誓いを立てた。


EPISODE7 銀の方舟「私たちは明日を取る。滅びではない、生き残るための道を選ぶのだ」


 それから準備は迅速に進められ――ヴォイドの開戦宣言とともに、ペルセスコロニーへ向けて多くの兵員が動員された。
 辺境都市からも徴兵された真人は莫大な数に上り、列車を使って運ばれていく。
 敗北は決して許されない。
 この戦いに敗れれば、真人という種の命運は機械種たちに委ねられてしまうのだから。

 その後、ペルセスコロニーを巡る戦いは一応の決着を見た。
 制圧したコロニーの中枢塔から眺める銀色の都市は、夕焼けに晒されてこの世のものとは思えない世界を描き出している。
 まるで、こうである事が前提であるかのような、計算され尽くした徹底ぶりに、私は思わず唇を歪めた。
 機械種に美を追求するセンスがあるのかどうか、私には分からない。
 けれど、その非の打ち所のなさが、かえって他者を寄せつけない排他的な意志を内包しているように感じられたのだ。
 この高さからでは確認できないが、眼下に広がる街には機械種との戦闘で亡くなった真人たちの亡骸が多く残されている。
 彼らは皆、ヴォイドの突入指示に従って命を落とした者たちだ。
 そうまでして都市を手に入れたかったのは、このコロニーに備わっている人工子宮を確保するため。
 ただそれだけのために、これほどの死者を出してしまっては……。
 この先の未来を思い描いて、私はふと思う。

 「私たちは、滅ぶべくして滅ぶのかもしれないわね」
 「不甲斐ないわね、本当に。私がヴォイドの考えを変えられていたら……こんな結果にはなっていなかったかもしれないのに」

 隣で力なく答えたレア様に、私は「いいえ」と首を横に振った。

 「貴女だけのせいではありません」
 「でも……」
 「結果はもう覆らない。なら、これからどう動くかを見極めるしかないでしょう」
 「私に、本当にできるのかしら」
 「できますよ。レア様は、やさしい方ですから」

 そこでひとつ、提案をした。

 「まずは、失われたものの大きさを正しく理解するところから始めてみてはどうでしょう。彼らの死を、ただの数字として認識するのではなく、それぞれに向き合うのです」
 「それって……」
 「彼らの名を、役割を知り向き合う。その積み重ねが貴女を支え、貴女を慕う者も動かしていく事でしょう」
 「……嘆いている場合じゃないわね」

 思い詰めていたレア様の表情が心なしか和らいだ。

 「彼らの死を無駄にしないために、私は何がなんでもこの戦いを生き延びるわ。そして、明日につないでみせる」
 「貴女なら、必ずや成し遂げられましょう」

 そう言うと、レア様が私の方へ手を差し伸べた。

 「一緒に、歩いてくれるかしら?」
 「はい。レア様が望む限り」

 小さく弱々しかった彼女の手は、とても力強かった。

 『――ル様、エステル様!』

 その時、不意に兵士から連絡が入った。

 「何があった」
 『ペルセスコロニーの東に敵性反応アリ! これは、機械種の戦闘艇です!』
 「数は?」
 『まだ十隻にも満たない数ですので、十分応戦は可能ですが……奴らは広く展開したまま、これといった動きを――』
 「おい、どうした」
 『ふ、船が一隻、こちらへ向かっています!』

 その映像には、銀色の小さな船が映っていた。


EPISODE8 平和の使徒「これは、彼女が手繰り寄せた偶然なのだろうか。新たな道への第一歩になる事を、私は切に願う」


 『船が一隻、こちらへ向かってきています!』

 兵士の言葉どおり、たった一隻でペルセスコロニーを目指す銀色の船があった。
 それは所々に傷があり、どこか古めかしい印象を受ける船だ。
 後方に控えている船は恐らく最新型だろう。
 それなのに、あえて旧式の船でこちらにやって来るとは、よほどの愚か者か何かしらの思い入れやこだわりがない限り非効率だ。
 特攻を仕掛けるにしても、あんな船では一瞬で撃墜されてしまう。
 なら、何が目的で――
 その時、銀の船がペルセスコロニーの外縁部の辺りで停止した。

 『エステル様、あの船から広域通信が!』
 「こちらで対応する。お前は艦隊の監視に当たれ」
 『了解!』

 船の搭乗者とすぐにつながった。

 「私は指揮官のエステル・ヤグルーシュだ。ペルセスコロニーは既に我々の支配化にある。貴艦の出方によっては砲撃もやむを得ない。そちらの目的はなんだ? 繰り返す、そちらの目的はなんだ?」
 『……っ』

 息を呑む気配がした。

 『わたしは、レナ・イシュメイル。この大地に最初に降り立った帰還種です。わたしに戦う意思はありません。もちろん、後ろの船も手は出さないと約束します。ただ、それは……わたしと、わたしたちの船が攻撃されなければの話ですけど』
 「では、目的はなんだ?」
 『わたしは、あなたたちをまとめる人と話がしたい。一緒に、明日を歩いていくために』
 「……」
 『まだ信用に値しないなら着艦許可を。そうすれば、私が人質になりますよ』
 「ここはもう敵地だぞ。つい先日まで殺し合っていたというのに正気か?」
 『信じてもらうには、まず相手を信じるところから始めないとって思うんです。そうしないと……憎しみの連鎖は止まりませんから』

 彼女の澄んだ声が響く。
 その声は、確かな力強さに満ちていた。

 「フ……大した自信だな」

 これ以上、私が問うまでもない。
 あとはレア様に託すとしよう。
 レア様も、彼女と話したくてしょうがないようだ。

 「これは、本当に偶然なのかしら」
 『あなたは……?』
 「私はレア・エ・フラータ。貴女の望む代表者です。私も、貴女のような方とお話をしてみたかった」

 平和を願うふたりの邂逅。
 今この瞬間、世界に光が射した気がした。



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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
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スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • もしかしてノーパン? -- 2023-05-20 (土) 10:28:20
    • もしかしなくても履いてない -- 2023-05-27 (土) 08:44:24
  • ヤグルーシュ家、えっち。 -- 2023-05-29 (月) 20:23:09
  • 意外と20歳前後、こんなに色気強いのにまだ少女と呼べる年齢じゃないか…初見時20代後半ぐらいだと思ったよ -- 2023-06-18 (日) 21:34:46
  • トランスフォーム時の絵まだないのか…トランスフォーム出来る方誰でもいいので追加お願いします -- 2023-09-29 (金) 22:59:58

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