謎のプリンス/11~15章

Last-modified: 2021-11-29 (月) 08:36:44
 

11章

憤懣の種

■日本語版 11章 p.328
ハーマイオニーにとっては憤懣の種だったが、「半純血のプリンス」のおかげで、信じがたいことに、「魔法薬学」が突然ハリーの得意科目になった。

■UK版 p.205
Incredibly, and to Hermione’s increasing resentment, Harry’s best subject had suddenly become Potions, thanks to the Half-Blood Prince.

■試訳
信じられないことに、ハーマイオニーの憤りが増す中、「謎のプリンス」の影響によってハリーの得意科目が突然「魔法薬学」に変わった。

■備考

  • 憤懣の種は少し分かりにくい気がする。
  • 半純血のプリンスも変。
  • Half-Blood Princeは表題だと「謎のプリンス」なのに本文だと「半純血のプリンス」になってるなどの訳語の不統一も問題だよな。


啀んだ

■日本語版 11章 p.345
「ほー、利口なこった」ハグリッドが啀んだ。

■UK版 p.216
"Oh, very clever," growled Hagrid.

■試訳
「ヘッ、こざかしいやつめ」ハグリッドはうなるように言った。

■備考

  • 啀み合いとかなら言うけど、啀むはあまり使わなくない?
  • 激しい口調でどなり立てるとき、「ほー」なんていうかな?
  • growlは辞書の訳に「怒鳴る」もあるけど、「うなる」とか「凄む」が近いかな。
    「啀んだ」というほど激しく言い返したわけじゃないよ。
    素直に「うなるように言った。」とかそんな訳でいいと思う。
  • ついでに、"Oh, very clever,"は「ヘッ、こざかしいやつめ」って感じじゃないかな?
    「利口なこった」なんて言い返しはあまり自然じゃないと思う。
  • ハグリッドにしては珍しく嫌味っぽい言い方する場面だよね。
    「ほー」じゃなくて、「啀んだ」がおかしい。
    わざわざ難しい言葉を使ったけど使い方が間違っているってことか。


12章

ホグワーツの誰かを驚かす物

■日本語版 12章 p.379
「(略)ホグワーツの誰かを驚かす物だって、それを自分が届けなきゃならないって言ったわ。(略)」

■UK版 p.236
‘(略)said it was a surprise for somebody at Hogwarts and she had to deliver it.(略)’

■試訳
「(略)学校の誰かへのびっくりプレゼントだって、(略)」

■備考

  • リーアンが、ネックレスのせいでおかしくなったケイティについて話している場面。
  • 「驚かす物」というのは確かに間違ってはいないけど、直訳すぎるし、それでは怪しまれてしまう。
    「内緒のプレゼント」とかの方がこそこそ隠し持っているいいわけとして好都合。
  • a surpriseときたらまず「びっくりプレゼント」ではないかと疑うべきだと思う。


イライラのあまり地団駄を踏んでいた

■日本語版 12章 p.387
ハーマイオニーはイライラのあまり地団駄を踏んでいた。

■UK版 p.241
said Hermione, actually stamping her foot in frustration.

■試訳
ハーマイオニーはいら立ちのあまり、床を踏み鳴らしながら言った。

■備考

  • 「苛立ちのあまり」とするところを「イライラのあまり」としてしまったのだろう。
  • それよりも、ここの大きな問題は「地団駄を踏んでいた」だと思う。
    苛立ちを表す修辞表現ではなく、本当に足で地面を踏みつける仕草をしていた、というのがポイントだから。


13章

マールヴォロ家

■日本語版 13章 p.395
マールヴォロ家の家宝の一つのロケット

■UK版 p.245
the locket that was one of Marvolo's treasured family heirlooms.

■試訳
マールヴォロの大切な家宝の一つだったロケット

■備考

  • マールヴォロはメローペの父の名で、家名はゴーントだと思うんだが…。
    「マールヴォロ家」という言い方はおかしい。
  • 優秀な編集者や校正者がいればチェックしてもらえた単純ミスだと思う。


開闢

■日本語版 13章 p.417
「わしがあのとき、開闢以来の危険な闇の魔法使いに出会ったということを、わかっていたかとな?」

■UK版 p.258
‘Did I know that I had just met the most dangerous Dark wizard of all time?’

■試訳
「わしがあのとき、史上最も危険な闇の魔法使いに出会ったということを、わかっていたかということかね?」

■備考

  • ペンシーブで孤児院時代のリドルを見た後のダンブルドアの台詞。
  • 開闢と言われると、『古事記』の「天地開闢」のイメージがあるので、古めかしく日本的な感じがする。
  • 日本語が苦手なのでわざとそういう難しい言葉を使って読者を煙に巻こうとしているような印象があるね。


ハーモニカはあくまでもハーモニカ

■日本語版 13章 p.420
「指輪がなくなっています」ハリーは振り向いて言った。
「でも、ハーモニカとか、そういう物をお持ちなのではないかと思ったのですが」
ダンブルドアは半月メガネの上からハリーを覗いて、ニッコリした。
「なかなか鋭いのう、ハリー。しかし、ハーモニカはあくまでもハーモニカじゃった」

■UK版 p.260
‘The ring's gone,’said Harry, looking around,
‘But I thought you might have the mouth-organ or something.’
Dumbledore beamed at him, peering over the top of his half-moon spectacles.
‘Very astute, Harry, but the mouth-organ was only ever a mouth-organ.’

■試訳
「指輪がなくなってますが」とハリーは部屋を見回しながら言った。
(略)
「なかなか鋭いのう、ハリー。しかし、あのハーモニカはただのなんでもないハーモニカだったでの」

■備考

  • ペンシーブで11歳のトム・リドルと出会い帰ってきたハリーとダンブルドアの会話。
  • 邦訳をみるとハーモニカというのがいきなり出現してるみたいだけど、原書ではそれが特定のハーモニカだということがわかる。
    それはmouth-organにtheがついているから。その特定のハーモニカとはリドルが友達をいじめて取り上げた戦利品のひとつ。
  • この前のペンシーブの旅でハリーはマールヴォロの指輪を見てそれがダンブルドアが現在持っているもので、
    部屋に帰ってきたときダンブルドアの小テーブルの上にあるのを見た。
    だから今度は指輪のかわりにトムのハーモニカが置いてあるんじゃないかと思ったんだね。
    何かのキーアイテムとして。それで「今度はさっきのハーモニカとかそんなものが置いてあるんじゃないかと思いました」といったわけ。
  • でもダンブルドアは笑って「あのハーモニカはただのなんでもないハーモニカだったでの」となぞめいた答えをしたということ。
    つまりホークルクスじゃないから持ってこなかったよというわけ。
  • また、原書ではハリーはどこかにハーモニカがあるんじゃないかと見回しながら言っている。邦訳のように振り向いて言ったのではない。
  • ちょっとした違いですがこういう人物の細かいしぐさを正確に訳すことは状況を伝えるうえですごく大切だと思う。


14章

ブーッといびき

■日本語版 14章 p.438
ロンがブーッと大きくいびきをかいた。

■UK版 p.271
Ron gave a great grunting snore.

■試訳

  1. ロンが大きくいびきをかいた。
  2. ロンは大きなうなり声でいびきをかいた。

■備考

  • いびきが「ブーッ」って変だと思うんだが…。
  • gruntはうなり声。grunting snoreなら、うなるようないびきかね。
    要するに鼻息だけじゃなくて声だしてるいびきだと思う。
  • 「ブーッ」にしたのは辞書に「ブーブー声」という訳もあるからだろう。
    もちろんナンセンス。屁じゃあるまいし、いびきでブーッはない。


眼(がん)をつけた

■日本語版 14章 p.439
自分に眼(がん)をつけた

■UK版 p.271
looking at him

■備考

  • 「眼をつけた」は俗語だと思う。
  • looking atは普通の表現で、スラングとかではない。
    ロンの怒りかたとしては、「おい、何見てるんだよ」みたいな感じだったと思う。
    「ガンをつけた」というヤクザな表現はどこから出てきたのか。


15章

フリー・エージェント

■日本語版 15章 p.461
「そりゃあ、まあ、スラグホーンのクリスマスパーティーにあいつと行くつもりだったさ。
でもあいつは一度だって口に出して……単なる友達さ……僕はフリー・エージェントだ」

■UK版 p.285
‘I mean, all right, I was going to go to Slughorn's Christmas party with her,
but she never said,...just as friends...I'm a free agent...’

※原文は改行なし。

■試訳
「(略)友達としてすらパーティーに誘ってくれなかった……誰と付き合ったって勝手だろ!」

■備考

  • ラヴェンダーといい加減な付き合いを続けてるロンの言い訳。
  • 「フリー・エージェント」ってそのまま過ぎる気がする。
  • フリー・エージェントには絶句。
    自由契約選手=恋人募集中=誰と付き合ったって勝手だろ!ってことだと思うんだが。
  • フリー・エージェント以外のとこもおかしいような。
    このjust as friends はロンが口ごもってるからはっきりはしないけど「友達としてすらパーティーに誘ってくれなかった」という意味じゃないかな?
    「単なる友達さ」は間違いだと思う。(ここで「友達さ」は変だし)


キャラの口調ミス

6巻における代表的な誤訳を参照。


ロットファングの陰謀

■日本語版 15章 p.486
「闇祓いって、ロットファングの陰謀の一部だよ。みんな知っていると思ったけどな。
魔法省を内側から倒すために、闇の魔術と歯槽膿漏とか組み合わせて、いろいろやっているんだもン」

■UK版 p.299
“The Aurors are part of the Rotfang Conspiracy, I thought everyone knew that.
They're working to bring down the Ministry of Magic from within using a mixture of dark magic and gum disease.”

※原文は改行なし。

■試訳
「闇払いは『腐敗の牙計略』の一部なんだよ。みんな知ってると思ったけど。
闇魔法と歯周病を組み合わせて魔法省を内側から倒そうとしているんだよ」

■備考

  • Rotfangはrot(腐敗)とfang(歯牙)を組み合わせた言葉。
  • 「ロットファングの陰謀」じゃ確かに人か組織みたいで意味がわからないね。
  • Rotfangとgum disease(歯周病)が関連してるのがおもしろいところなのに、
    カタカナでロットファングと言われても日本語読者には何の事だか伝わらない。


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