賢者の石/5~9章

Last-modified: 2021-10-12 (火) 17:57:29
 

5章


家族の姓

■日本語版 5章 p.120
「(略)君、家族の姓は何て言うの?」

■UK版 p.61
”(略) What's your surname, anyway?”

■試訳

  1. 「君のファミリーネームは何て言うの?」
  2. 「君の姓は何て言うの?」

■備考

  • ハリーとマルフォイが初めて出会ったシーン。
  • 普通に「苗字は何?」じゃだめなのかな。
  • 「ファミリーネーム」か「姓」でよかったと思うよ。
    多分ファミリーネームを馬鹿正直に「家族の~」と訳したんだろうけど「家族の姓」が意味不明。
    「姓」に「家族の」ってつくのがおかしい。
    苗字はちょっと日本的すぎるかなと個人的に思う。


ハッフルパフには劣等生が多い

■日本語版 5章 p.121
「(略)ハッフルパフには劣等生が多いとみんなは言うが、しかし……」

■UK版 p.61
”(略) Everyone says Hufflepuff are a lot o’ duffers, but -”

■試訳
「ハッフルパフには愚鈍な連中が多いとみんないっちょるが、しかし……」

■備考

  • このduffersは不器用という意味だと思う。
  • duffer:〈俗〉ばか者、愚か者、あほ、間抜け、能なし
    不器用なとか退屈なとか太ったとかいうニュアンスもある。 (参考
  • ハッフルパフからは死喰い人は(本編の時間軸だと)一人も出てないのに酷い話だ。


しなくていいのはわかってる

■日本語版 5章 p.123
しなくていいのはわかってるよ。

■UK版 p.62
I know I don't have to.

■試訳
必要ないのはわかってるけど俺の気持ちなんだよ

■備考

  • ハリーが最初にダイアゴンに行ったとき杖を買う前の会話。
  • 「誕生祝を買ってやってなかったな」
    「そんなことしなくていいのに」
    「しなくていいのはわかってるよ。そうだ。動物をやろう」
    しなくていいのにって言われたら普通は「そんなこというなよ」みたいな返事をすることはあっても「しなくていいのはわかってるよ」というのは不自然。


6章


7章


ゴーストとダンブルドアの白髪だけ

■日本語版 7章 p.182
広間の中では、ゴーストとダンブルドアの白髪だけが同じようにキラキラ輝いているだけだった。

■UK版 p.91
Dumbledore's silver hair was the only thing in the whole Hall that shone as brightly as the ghosts.

■試訳
広間の中でゴーストと同じくらい明るく輝いているのは、ダンブルドアの銀髪だけだった。

■備考

  • 組み分け直後のシーン。
  • 「だけが~だけだった。」では日本語が変。普通なら校正が入る箇所。
  • 邦訳だと、輝いている物がゴーストとダンブルドアの髪しかないように感じる。


そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい!

■日本語版 7章 p.182-183
「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」

■UK版 p.91-92
“Welcome!” he said. “Welcome to a new year at Hogwarts! Before we begin our banquet, I would like to say a few words. And here they are: Nitwit! Blubber! Oddment! Tweak!
“Thank you!”

■試訳

  1. 「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。間抜け! 泣き虫! 半端物! 未熟者! 以上!」
  2. 「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。はみ出し者の半端物、はみ出たお腹の大でべそ! 以上!」
  3. 「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。間抜けのぜい肉、よけいなおまけ! 以上!」
  4. 「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。マヌケなハミダシ、ハンパなオマケ! 以上!」
  5. 「ようこそ! ホグワーツの新入生、ようこそ! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。それでは ―― ふたこと! みこと! ご静聴ありがとう!」

■備考

  • なにこれ言葉じゃなくて掛け声だよね。
  • これはダンブルドアのジョーク。
    よくお偉いさんが「二言、三言(a few words)いわせていただきたい」と言って
    それから長々とスピーチを続けたりすることがあるが、
    ダンブルドアは文字通り、単語をいくつか並べてみせたというもの。
    とてもゴロがよくて、調子のいい軽妙なはやし言葉のような感じ。
  • 豆ふくろう通信の作者談によると「言葉の意味は関係ないので、調子のよい言葉に訳して欲しい」ということだったらしい。
    (あくまで「調子のよい言葉」である。「威勢のいい掛け声」ではない!)
  • “Nitwit! Blubber! Oddment! Tweak!”を直訳すると「間抜け(馬鹿、阿呆、愚か者)!贅肉(泣き虫)!半端物(変わった物)!未熟者(微調整)!」となり、どれも役に立たないものや余計なものを表している。
  • ダンブルドアは子供達におあずけを食わせている「二言、三言」など余計なものだということを言いたかったのでは?
  • 馬鹿正直に「まぬけ!ぜいにく!はんぱもの!おまけ!」だとダンブルドアが頭おかしくなったみたいだしなあ。
    ちょっと遊び言葉っぽく工夫する必要はあると思う。
    テンポ良い言葉にすることで、「そういう言い回しなんだ」とも思わせられるし。
  • 「はみ出し者の半端物、はみ出たお腹の大でべそ」
    むかしのはやし言葉っぽく、リズムある文にしてみたよ。
  • 「間抜けのぜい肉、よけいなおまけ!」の方がいいかな。「け」が効いてる。
  • 『マヌケなハミダシ、ハンパなオマケ!』なら「ケ」と「ハ」が利くぞ
  • 「二言、三言、言わせていただきたい。では行きます・・・二言、三言!」とかで良いんじゃね?
    司会「では一言お願いします」、客「一言!」みたいな受答え、ジョークであるじゃん
  • こういう部分こそ「センス」が必要だね。
    無意味なはやし言葉をいきなり言わせておいて、読者が??ってなった後、注釈やあとがきで補足してあげればいいのに。


8章


クラスへの道

■日本語版 8章 p.198
やっとクラスへの道がわかったら、(略)

■UK版 p.99
And then, once you had managed to find them,(略)

■備考

  • ホグワーツでの授業が始まったあたり。
  • 場所のことを「クラス」とは言うのはおかしく感じる。「教室」などのほうが自然。
  • それにこのthemは教室をさしていない。
    この前の文章では、動く階段、幽霊達、ピーブス、フィルチ等が教室移動の際にどんな邪魔をするかを語っているので(やや意訳だが) 「そしてようやく移動の際の様々な障害の避け方がわかったら」などとした方が訳として誠実かな。(findには経験から知るという意味もあるよね)


ブーンとうなるようなほえ声

1巻における代表的な誤訳を参照。


グリンゴッツ侵入さる

■日本語版 8章 p.209
グリンゴッツ侵入さる

■UK版 p.105
GRINGOTTS BREAK-IN LATEST

■試訳

  1. グリンゴッツ侵入事件 最新情報
  2. グリンゴッツ侵入される

■備考

  • 「日刊予言者新聞」の記事タイトル。
  • 文語表現のせいで古臭く感じる。意訳するにしてもせめて「グリンゴッツ侵入される」にしてほしい。


9章


麻痺したようにトボトボ

■日本語版 9章 p.221
マクゴナガル先生は大股に城に向かって歩き出し、ハリーは麻痺したようにトボトボとついていった。

■UK版 p.111- p.112
Harry caught sight Malfoy, Crabbe and Goyle's triumphant face as he left, walking numbly in Professor McGonagall's wake as she strode towards the castle.

■備考

  • 初めての箒飛行訓練で、勝手に飛んでしまったのをマクゴナガル先生に見つかり城に連れて行かれる場面のハリー。
  • 麻痺したようにトボトボって?いったいどんな歩き方?
  • 「麻痺したようにトボトボ」は相当苦しい訳だが、多分numb=麻痺した、という融通の利かない知識だけで訳したのだろう。
    mist=霧、という知識で、misty eyesを「霧のような瞳」と訳したのと同じかな。
    文芸作品でよく使われる訳語のバリエーションを知らないせいで不自然になっているのだが、
    不自然に気がつくだけの日本語力もないからそのまま書いてる感じ。
  • numblyで「ぼんやり、無表情に」というのはわりと一般的な訳語だと思う。
    要するに気持ちが麻痺して感情表現ができなくなった状態だが
    そこはハリーが退学かもしれないと思ってショックうけてるところだね。
    その感じが一番出るのは「呆然としながらついていった」って感じじゃないかな。


終わりよければすべてよし

■日本語版 9章 p.228
いずれにしても、「終わりよければすべてよし」の一日にはならなかったなと考えながら、
ハリーはその夜遅く、ベッドに横になり、ディーンとシェーマスの寝息を聞いていた(略)

■UK版 p.115
All the same, it wasn't what you'd call the perfect end to the day, Harry thought,
as he lay awake much later listening to Dean and Seamus falling asleep(略).

■備考

  • ことわざを引用して、「~にはならなかった」と否定している部分だけど、ことわざがあまりはまってないような気がするのですが。
    なんか無理矢理ことわざを引っぱってきてあてはめたみたいな、無理してことわざを使わなくていいのに、って感じがする。
  • 「終わりよければすべてよし」って,意味が逆じゃない?
    昼間すばらしいことがあったのに最後によろしくないことになったというのが原文の意味だと思うし、
    話の流れもそういうことだろうけど、ことわざの「終わりよければすべてよし」だと、
    「昼間いやなことばかりあっても最後にいいことがあってよかった」というわけにはいかなかった、とハリーは考えてることになっちゃうのでは?


『どうぞ』と言いな

■日本語版 9章 p.235
「どっちに行った? 早く言え、ピーブズ」フィルチの声だ。
「『どうぞ』と言いな」
「ゴチャゴチャ言うな。さあ連中はどっちに行った?」
「どうぞと言わないなーら、なーんにも言わないよ」
ピーブズはいつもの変な抑揚のある癇にさわる声で言った。
「仕方がない――どうぞ」
「なーんにも! ははは。言っただろう。『どうぞ』と言わなけりゃ『なーんにも』言わないって。はっはのはーだ!」

■UK版 p.119
"Which way did they go, Peeves?""Quick, tell me."
"Say “please”."
"Don't mess me about, Peeves, now where did they go?"
"Shan't say nothing if you don't say please,"
"All right - please,"
"NOTHING! Ha haaa! Told you I wouldn't say nothing if you didn't say please! Ha ha! Haaaaaa!"

■試訳

  1. 「やつらはどっちへ行ったんだ、ピーヴス? とっとと言え」
    「『ください』って付けな」
    「うるさいぞ、ピーヴス。どっちなんだ」
    「『ください』付けなきゃ知ってても教えない」
    「仕方がない――教えてください」
    「知らない!ははははは!ちゃんと『知らない』って教えたぞ!ははははははは!」;
  2. 「やつらはどっちへ行った、ピーヴス? 早く言え」
    「『お願いします』って言いな」
    「ごちゃごちゃ言うな、ピーヴス、さあ奴らはどっちに行ったんだ?」
    「お前が『お願いします』って言わないならなんにも言わない」
    「仕方がない―お願いします」
    「なーんにも!ハハハ!俺はお前に『お願いします』って言わなきゃ『なんにも』言わないって言ったよなあ!ハーッハッハッハ!」

■備考

  • 直訳すぎ。「『お願いします』と言いな」くらいにして欲しい。
  • 知っててもうんたらのところは別として、「ください付ける」にするだけでダサくなくなるのに。
  • 人になにか頼み事をするときはplease(お願いします)をつけるのがマナー。それをつけない子供に大人は「what's the magic word?」と聞いてpleaseをつけるように促します。ここはそういうあちらの常識を踏まえてのシーン。


悪夢にうなされる

■日本語版 9章 p.236
しばらくの間、ハリーは自分が悪夢にうなされているに違いないと思った――

■UK版 p.119
For a moment, he was sure he'd walked into a nightmare-...

■試訳
しばらくの間、ハリーは自分が悪夢を見ているに違いないと思った。

■備考

  • 真夜中に寮を抜け出し、ピーヴズに騒がれて逃げ込んだ先で怪物犬を見つけたシーン。


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