第30回 エリザベス女王杯
THE QUEEN ELIZABETH II COMMEMORATIVE CUP (GI)
2005年11月13日 (日)
芝・右・外 2200m 3歳以上 国際 指定 定量(4歳56.0kg 3歳54.0kg)
展望
秋の天皇賞馬でゼンノロブロイを接戦の末打ち負かしたヘヴンリーロマンス、
桜花賞・NHKマイルCを圧倒的なスピードで制したラインクラフト、
両馬が回避しても例年以上に豪華なメンバーが集う今回のエリザベス女王杯。
中心は新旧秋華賞馬、この2頭による二強対決の様相を呈しつつある。
その中でも筆頭は春のグランプリ宝塚記念を制したスイープトウショウか。
前走天皇賞(秋)は久々に、馬場入りで鞍上を振り落とし再度跨れば一歩も動かない、
3歳時によく見せたじゃじゃ馬っぷりを発揮して心配させたが、
そんなアクシデントも何のその、外枠で超スローペースをものともせず僅差の5着。
叩いて良化する事も確実、秋3走目で牝馬限定レースとなれば負けるわけにはいかない。
3歳時は出遅れ癖が酷く常に後方待機を余儀なくされ、その結果終い斬れる脚ばかり注目されたが、
今年に入って発馬がそれなりになってからは自在性が増している。
昨年は3歳馬ながら1番人気に推されたが、スローペースに泣かされ33秒2の末脚を見せるも5着。
その末脚は相変わらず健在で現役屈指。頭一つ抜けておりあとは展開次第だろう。
その女王に牙を剥くのが秋の充実著しい3歳馬エアメサイア。
終い3Fが、オークスで33.8、ローズS・秋華賞は34.2、末脚が直線伸びる京都2200Mで更に光る。
シーザリオの強襲に屈したものの、オークス2着の実績はスタミナ面での不安が一切無い事の裏打ち。
元々中距離向きと評価されていただけに、秋華賞から更に200Mの距離延長はむしろ歓迎と言ってよい。
挑む壁は決して低くないが、ラインクラフトを差し切った能力を発揮できればここでも十分勝負になる。
二強対決に待ったを掛けるのは3連勝中のヤマニンアラバスタ。
昨年の紫苑Sでの5着降着(1位入線)からスランプが続いていたが、
不調時の馬体重は440kg未満だったが、450kgに安定してからの3走で劇的な変わり身を見せた。
新潟記念では52kgのハンデも相まって、終い3Fを33.3の豪脚で纏め牡馬を一蹴。
府中牝馬Sでは55kgを背負ってどうかと見られたが、再び33.2の末脚を繰り出す圧巻の競馬。
夏からの好調を維持していれば当然GIを狙える位置に居るだろう。
今年は不調が続いているが、牝馬限定レースならアドマイヤグルーヴも侮れず。
牝馬限定戦では7戦して4勝2着1回3着1回、大敗したオークスは出遅れとスローが響いたもの。
天皇賞(秋)は馬体重466kgのセオリーで初めて大敗したが、自身最速となる33.3の脚は使っていた。
スローの外枠では仕方なく、一番遅い馬で34.1(ストーミーカフェ)の競馬だった、度外視してよい。
不調とは言え大阪杯・金鯱賞の4着もあり、無視できない存在。鞍上は上村騎手が濃厚か。
昨年2着の5歳馬オースミハルカの先行力もまだまだ健在。
小回りの福島牝馬Sでも直線の長い府中牝馬Sでも一級の粘り腰を見せており、
さして逃げ馬も見当たらず、更には有力馬に後方待機が多いこのメンバー、
であれば今年もまた先行力が唯一無二の強力な武器となる可能性は高い。
先行力と言えば、マーメイドS・府中牝馬Sで2着のマイネサマンサも。
新馬・500万をダート戦で連勝、その後芝で1400-2000Mと、パワー・スピードはなかなかの物。
前走府中牝馬Sはヤマニンアラバスタの豪脚に屈したが、オースミハルカを上回っている。
クイーンSを勝ったレクレドールも距離延長は歓迎か。
ローズSでスイープトウショウと叩き合った印象が強く、後方待機型のイメージがあるものの、
クイーンSでは終い一杯になったものの先行逃げ切りの新しい一面を見せた。
前走府中牝馬Sは経験少ない左回り、右回りで地元の京都ならまだまだ。
英国馬サミットヴィルだが、陣営の強気とは裏腹に実績は今ひとつ。
とは言え03年タイガーヒルの例もあり非常に選択しづらい馬ではある。
それなりの自在性もあり、人気にならないようなら買ってみるのも一考か。
常に牡馬との対決で善戦し続けているエルノヴァ、復権を切望する2歳女王ショウナンパントル、
昨年の秋華賞2着以来となるヤマニンシュクル、春先までの好調が目を引くウイングレットなど、
伏兵陣にもなかなか味のある馬が揃った。
予想
姐御
◎スィープトウショウ ○エアメサイア ▲ヤマニンアラバスタ
△アドマイヤグルーヴ オースミハルカ
荒れはないかなと
えあ
◎:レクレドール ○:スイープトウショウ
△:エアメサイア・オースミハルカ・ヤマニンアラバスタ
穴:マイネサマンサ
結果
| 着順 | 枠 | 馬番 | 馬名 | 姐御 | えあ | 性齢 | 斤量 | 騎手 | タイム | 着差 | 馬体重 | 人気 |
| 1 | 4 | 8 | スイープトウショウ | 牝4 | 56.0 | 池添謙一 | 2:12.5 | 464 0 | 2 | |||
| 2 | 1 | 1 | (父)オースミハルカ | 牝5 | 56.0 | 川島信二 | 2:12.6 | 1/2馬身 | 476 +6 | 5 | ||
| 3 | 2 | 3 | (市)アドマイヤグルーヴ | 牝5 | 56.0 | 上村洋行 | 2:13.0 | 2 1/2馬身 | 470 +4 | 4 | ||
| 4 | 7 | 14 | (父)ヤマニンシュクル | 牝4 | 56.0 | 四位洋文 | 2:13.1 | 3/4馬身 | 488 +16 | 8 | ||
| 5 | 6 | 11 | エアメサイア | 牝3 | 54.0 | 武豊 | 2:13.2 | クビ | 464 -4 | 1 | ||
| 6 | 1 | 2 | ライラプス | 牝3 | 54.0 | 松永幹夫 | 2:13.4 | 1 1/2馬身 | 446 +4 | 10 | ||
| 7 | 3 | 5 | (父)オースミコスモ | 牝6 | 56.0 | 岩田康誠 | 2:13.4 | クビ | 430 +2 | 17 | ||
| 8 | 6 | 12 | ヤマニンアラバスタ | 牝4 | 56.0 | 江田照男 | 2:13.5 | 1/2馬身 | 448 -4 | 3 | ||
| 9 | 8 | 18 | (父)ベストアルバム | 牝5 | 56.0 | 渡辺薫彦 | 2:13.5 | アタマ | 492 +8 | 12 | ||
| 10 | 7 | 15 | ウイングレット | 牝4 | 56.0 | 武幸四郎 | 2:13.6 | 1/2馬身 | 468 +12 | 15 | ||
| 11 | 5 | 9 | (父)クロユリジョウ | 牝3 | 54.0 | O.ペリエ | 2:13.7 | クビ | 488 +6 | 9 | ||
| 12 | 4 | 7 | (市)マイティーカラー | 牝5 | 56.0 | 内田浩一 | 2:13.8 | 3/4馬身 | 484 +8 | 13 | ||
| 13 | 3 | 6 | メモリーキアヌ | 牝5 | 56.0 | 角田晃一 | 2:13.8 | アタマ | 476 +6 | 18 | ||
| 14 | 8 | 16 | マイネサマンサ | 牝5 | 56.0 | C.ルメール | 2:13.8 | ハナ | 484 +6 | 11 | ||
| 15 | 2 | 4 | ショウナンパントル | 牝3 | 54.0 | 吉田豊 | 2:13.9 | クビ | 448 -4 | 14 | ||
| 16 | 7 | 13 | [外]サミットヴィル | 牝5 | 56.0 | S.サンダース | 2:14.0 | 1/2馬身 | 504 ? | 7 | ||
| 17 | 8 | 17 | レクレドール | 牝4 | 56.0 | 蛯名正義 | 2:14.5 | 3馬身 | 452 +6 | 6 | ||
| 18 | 5 | 10 | (父)(地)ブライアンズレター | 牝6 | 56.0 | 福永祐一 | 2:14.7 | 1 1/2馬身 | 456 +4 | 16 |
スタートは五分、最内から予定通りオースミハルカが先頭へ。
ライラプス・ショウナンパントル・レクレドールは早めの競馬。
2コーナーを回って早くもオースミハルカが独走、マイネサマンサが前に上がる。
スイープトウショウは中団、エアメサイアは後方。オースミハルカ独走態勢を維持。
3コーナー回ってマイネサマンサがオースミハルカを捉えにかかるが捕まらない。
ウイングレット・ショウナンパントル辺りも進出しようとするのだが・・・。
直線に入りオースミハルカは後方に5馬身は差をつける。
昨年のメモリーキアヌ以上は差をつけただろうか、後方は一気に広がって残り400M。
2番手から抜け出したのはアドマイヤグルーヴとスイープトウショウ。
その2頭がオースミハルカ目掛けて矢のような末脚、しかし差はまだまだ。
残り200Mを切ってオースミハルカ逃げ切りが濃厚かと思われたが、
女王スイープトウショウが最後まで色褪せない末脚で寸前しっかり捉えてゴール。
今年も惜しいところで2着、逃げ粘ったオースミハルカ。
そこから2馬身半離されて3着にアドマイヤグルーヴ。
4着ヤマニンシュクル、一番人気エアメサイアは5着と敗れた。
短評
1着:スイープトウショウ
昨年と同じく届かないかと思われたところから、今年はしっかり捉えてみせた。
大きく出遅れなかった事が最後の差に繋がっただろう、昨年は出遅れで届かずだった。
しかしそれ以上に牝馬相手では負けられないという鞍上の気迫が伝わってきた。
ヘヴンリーロマンスが残り2戦のどちらかを勝つ可能性は低め、これで最優秀古馬牝馬は当確。
2着:オースミハルカ
200-400の1Fだけ10.9、残りは11秒後半から12秒台と完全に自分のペースを作り出した。
直線に入ったときは菊花賞のアドマイヤジャパンを髣髴とさせる完勝パターン。
それを覆されたのはただただ勝ち馬が強すぎただけ、普通に考えればこれで十分なくらい。
昨年は3/4馬身、今年は半馬身、惜しいとしか言いようがない。
3着:アドマイヤグルーヴ
やはり牝馬に入るとこの程度は普通に力を出すのだろう。
しかし直線でいち早く抜け出したもののそれでもオースミハルカとは2馬身半、決定的。
3着は展開のアヤ、オースミハルカとの2馬身半を道中どうにかして縮めようとしていたら、
恐らくその仕掛けによって4着以下の馬が台頭してきたろう。
老いなのか何なのか、とにかく迫力がなくなった事は認めざるを得ない。
しかし1・1・3着は立派で3年間その力を維持し続けてきたことを評価したい。
4着:ヤマニンシュクル
3着なら評価は変わっただろう、馬券対象だし。
とは言え1年以上のブランクでこの結果、やはり能力は高いものを持っている。
ここを叩いた次走、是非注目したい。
5着:エアメサイア
伸びてはいるんだ、決して末脚で屈した印象はない。力もあったし。
しかし後方過ぎて・・・あまりにお粗末な騎乗といわざるを得ない気がする。
あの位置では届くものも届かない、鞍上の5連覇も今回ばかりは自滅で潰えたと思う。
せめてアドマイヤグルーヴくらいは交わさないと話にならない。