第25回 ジャパンカップ
THE JAPAN CUP (GI)
2005年11月27日 (日)
芝・左 2400m 3歳以上 国際 指定 定量(4歳上牡57.0kg 4歳上牝55.0kg 3歳牡55.0kg 3歳牝53.0kg)
展望
展望
今年は日本勢がそこそこのレベルに留まったのに対して、
海外勢がかなり豪華な顔ぶれとなり難解な一戦となっている。
日本の大将格ゼンノロブロイは今年未だに勝ち鞍が無いという状況。
今年初戦が6月の宝塚記念で3着、スイープトウショウに足元をすくわれる。
2戦目が遠征で英インターナショナルSもあと少しのところで勝ち星を逃す。
前走天皇賞(秋)は残り50mで優勝を手中に収めながら最後に差し切られ2着。
能力はまだまだGI馬のそれを維持しているが、如何せん実績が伴わない。
とは言えようやく叩き2走目と言える状況で望めるレースとなれば、
やはり否応にも期待は高まる。連対率100%の府中2400mで王者健在を示す。
そんなゼンノロブロイにひきかえ、
対抗馬と言える存在が見当たらないのが今年の日本勢。
敢えて対抗と言うなら、前走の敗因がハッキリしているハーツクライか。
超スローペースを追込で6着、平均ペースならもっと上位に行けたろう。
ただ追込一辺倒な馬だけに諸刃の剣と言うのは選択しづらいものである。
先週もデュランダルがそうだったように・・・。
今年に入り、末はしっかり延びるようになっている、
昨年のようにはならないだろう、今年はどれだけ順位を上げられるか。
リンカーンは左回りが今ひとつなのか、前走天皇賞(秋)が負けすぎ。
確かに馬群を捌くような状況じゃなかった為、度外視していいっちゃー良い。
かと言って大きな変わり身が期待できるかと言うとやはり厳しい。
上位に食い込みそうではあるが勝ちまで期待するのは酷かもしれない。
タップダンスシチーも同様に案外なレース続きなのが気になる。
一昨年の優勝馬ももう8歳、ピークは過ぎてしまったのだろうか・・・。
前走天皇賞(秋)は急遽参戦という事もありあんなもんだろう。
しっかり調整しての2走目と言う事で多少は変わり身が見込める。
問題は宝塚記念での惨敗、あれがある限り全幅の信頼を置くには心許ない。
天皇賞馬ヘヴンリーロマンスはフロック視されており、
また実際、能力的にも距離延長もやはり疑問符を打たざるを得ない。
牝馬と言うだけで既に大きなマイナス要素なのだが、
スイープトウショウの例もあり今年の牝馬は異常に強く感じる。
勝たれたら勝たれたで、妙に納得してしまいそうな気配はある。
ライバルスイープトウショウが2つ目のGIを2週間前に奪取しており、
ここを勝って大きなアドバンテージを手に入れると共に、名実共に名牝となるか。
ようやくGI戦線に復帰したデルタブルース。
賞金面での不安があり出走できるかはまだ不明だが、出てくるとなれば注目。
前走アルゼンチン共和国杯は10ヶ月超の休み明けに59kgのハンデと、
明らかな敗因がありその5着なら十分、2走目でどこまで変わってくるか。
昨年のJCでも菊花賞勝利のフロック論を実力のものと証明するように、
出遅れながら驚くような末脚をみせ3着を奪取、スムーズな競馬ならと思わせた。
能力的なものは申し分ない、後は調子ひとつというところか。
3歳勢はディープインパクトの物差しになる重要な勝負だろう。
もし惨敗するようならディープインパクト神話自体崩れかねない。
3歳牡馬の評価全てが、ディープインパクトの有馬記念より前に、
このジャパンカップという舞台で委ねられた。
菊花賞での粘りがここでも見られるなら、アドマイヤジャパンは恐ろしい。
強力な先行馬はいても逃げ馬はこれと言って見当たらない。
長いとは言え改修でバラけづらくなった府中の直線で、
馬群を捌く後ろの馬達ををよそにやすやすと先行逃げ切りと言うパターンも。
ラインクラフト・ダンスインザムード・オースミハルカ・ダイワメジャー、
なんとなく先行勢は怖く感じてしまう。
香港ヴァーズへの出走が決まっておりJC出走は未定だがシックスセンスも。
2000mでも3000mでも必ず伸びる末脚が魅力なところは何となく、
1年先輩のハーツクライに面影を重ねてしまい食指を伸ばしづらいが、
こちらは常に安定した成績を残しており舐めてかかると痛い目にあいそう。
コスモバルクについてだが・・・最早何も言うことは無いだろう。
馬に問題は無い、あるとすればそれを取り巻く環境。
よって、走る走らないという議論はもうやる価値も無い。
要は好きか嫌いか、この1つのみが焦点ではないだろうか。
追い続けるなら地の果てまで、止めるならきっぱり、そんな馬です彼は。
サンライズペガサス・スズカマンボの両馬は、
ここを勝つにはもう一つ何かが欲しい印象、連下までか。
海外馬なのだが、毎年この時期になると聞かれるのは、
"地の利"と"今年の海外馬は強い"の2つ。
"近年の日本馬上位独占""硬い馬場は欧州勢には合わない"と、
毎年散々言いながら数年に1度痛い目に合わされている。
シンボリクリスエスとファルブラヴ、エアグルーヴとピルサドスキー。
逆に"今年は豪華な海外馬が揃って地元日本勢は苦戦必死"といえば、
ファンタスティックライト、エリシオなど幾頭も沈んだ。
蓋を開けてみるまで分からない、からこそのジャパンカップだろう。
さて、海外勢一番手は実績でバゴ(BAGO)、言わずと知れた昨年の凱旋門賞馬。
今期の勝利はガネー賞のみだが、キングジョージ・凱旋門賞3着・BCターフは4着、
今年6戦1勝を今ひとつと言うか、1勝2着1回3着2回で堅実と言うかは好みの問題。
ウィジャボード(OUIJA BOARD)は昨年の欧州最優秀牝馬。
今年は6月のプリンスオブウェールズこそ大敗したものの、
9月の英GIIIを勝ち連覇を狙ったBCフィリーで2着。バゴ同様好みで取捨か。
アルカセット(ALKAASED)、大きなレースは今年のサンクルー大賞のみだが、
これまで15戦5勝2着7回と実に堅実な成績を残している。
他に参戦してくる海外馬以上に硬い馬場を望んでの参戦。
それ以外の3頭はどれも微妙か・・・。
ウォーサン(WARRSAN)は昨年のJCが15着、馬場適性に疑問が残ったままだ。
上記馬と比べても見劣りする。
ベタートークナウ(BETTER TALK NOW)は所謂気紛れ屋さん。
人気にならないようならちょっとくらい手を出してみるのも良いかも。
キングスドラマ(KING'S DRAMA)は先行タイプ、凶と出るか吉と出るか。
当然ながら馬場適性を見極める事が大事だが、
意外と読めないペースにも細心の注意を払いたい。
予想
姐御
wiki障害により記載できず
えあ
◎:ゼンノロブロイ ○:ヘヴンリーロマンス ▲:アドマイヤジャパン
△:アルカセット・ヴィジャボード・タップダンスシチー
注:サンライズペガサス
結果
| 着順 | 枠 | 馬番 | 馬名 | 姐御 | えあ | 性齢 | 斤量 | 騎手 | タイム | 着差 | 馬体重 | 人気 |
| 1 | 7 | 14 | [外]アルカセット | 牡5 | 57.0 | L.デットーリ | 2:22.1 | レコード | 496 ? | 3 | ||
| 2 | 8 | 16 | ハーツクライ | 牡4 | 57.0 | C.ルメール | 2:22.1 | ハナ | 496 +6 | 2 | ||
| 3 | 4 | 8 | ゼンノロブロイ | 牡5 | 57.0 | K.デザーモ | 2:22.4 | 1 3/4馬身 | 508 +8 | 1 | ||
| 4 | 3 | 5 | リンカーン | 牡5 | 57.0 | 武豊 | 2:22.4 | ハナ | 472 -2 | 9 | ||
| 5 | 3 | 6 | [外]ウィジャボード | 牝4 | 55.0 | K.ファロン | 2:22.4 | クビ | 456 ? | 5 | ||
| 6 | 7 | 13 | サンライズペガサス | 牡7 | 57.0 | 蛯名正義 | 2:22.6 | 1 1/2馬身 | 484 +6 | 15 | ||
| 7 | 5 | 10 | ヘヴンリーロマンス | 牝5 | 55.0 | 松永幹夫 | 2:22.7 | 1/2馬身 | 508 -2 | 8 | ||
| 8 | 6 | 12 | [外]バゴ | 牡4 | 57.0 | T.ジレ | 2:22.8 | 1/2馬身 | 488 ? | 6 | ||
| 9 | 8 | 17 | スズカマンボ | 牡4 | 57.0 | 安藤勝己 | 2:22.9 | クビ | 488 +8 | 10 | ||
| 10 | 1 | 2 | (外)タップダンスシチー | 牡8 | 57.0 | 佐藤哲三 | 2:23.1 | 1 1/4馬身 | 510 -10 | 7 | ||
| 11 | 2 | 4 | アドマイヤジャパン | 牡3 | 55.0 | 横山典弘 | 2:23.2 | 3/4馬身 | 478 +4 | 4 | ||
| 12 | 4 | 7 | [外]ベタートークナウ | せん6 | 57.0 | R.ドミンゲス | 2:23.4 | 1 1/4馬身 | 426 ? | 11 | ||
| 13 | 2 | 3 | [外]ウォーサン | 牡7 | 57.0 | J.スペンサー | 2:23.4 | ハナ | 480 ? | 16 | ||
| 14 | 6 | 11 | [地]コスモバルク | 牡4 | 57.0 | D.ボニヤ | 2:23.5 | 1/2馬身 | 500 +4 | 12 | ||
| 15 | 1 | 1 | (父)マイソールサウンド | 牡6 | 57.0 | 本田優 | 2:24.0 | 3馬身 | 470 0 | 18 | ||
| 16 | 7 | 15 | [外]キングスドラマ | せん5 | 57.0 | E.プラード | 2:25.0 | 6馬身 | 508 ? | 13 | ||
| 17 | 8 | 18 | ビッグゴールド | 牡7 | 57.0 | 和田竜二 | 2:25.6 | 3 1/2馬身 | 468 +2 | 17 | ||
| 18 | 5 | 9 | (父)(市)ストーミーカフェ | 牡3 | 55.0 | 四位洋文 | 2:25.7 | 3/4馬身 | 490 +6 | 14 |
まずまずのスタート、内からタップダンスシチーが押してハナへ。
ストーミーカフェ・ビッグゴールドも予想通り前。各馬思い思いの位置取りを取る。
そんな中逃げるタップダンスシチーが作り出したペースは、
空前稀に見るハイペース、前半1000m通過が58.3、1600m通過が1.34.0。
2000m通過1.57.7は2000mコースレコードを0.3秒上回る明らかに速い時計。
4角回って先頭タップダンスシチーが強かったときの手応えで先頭、
これで逃げ粘れるわけ無いが、残り200mまで先頭を走ったタップダンスシチー。
その外ウィジャボード、アルカセット、ヘヴンリーロマンスが伸びる。
しかし更に外からゼンノロブロイの脚色が良い、サンライズペガサスも大外から飛んでくる。
残り200m力尽きたタップダンスシチーに代わりゼンノロブロイ先頭。
ウィジャボード・ヘヴンリーロマンスの牝馬2頭はやや後退、
間を通って英国馬アルカセットが伸びてゼンノロブロイと叩き合い。
2頭の後ろからリンカーン・ハーツクライが飛んでくる。
残り100mで先頭アルカセット、内ハーツクライが並びかける。ゼンノロブロイ一歩後退。
リンカーンは伸び切れない。内ハーツクライと外アルカセットの2頭渾身の叩き合い。
2頭鼻面を併せてゴールイン。
写真判定の結果アルカセットがジャパンカップを制覇。
2着にはまたまた(やっぱり?)ハーツクライ。
3着を死守したゼンノロブロイ、4着にはリンカーン。
5着にはウィジャボードが入った。
短評
1着:アルカセット
前走から使いたいレースを使えず挑んだジャパンカップだったが、
日本の硬い馬場を見越しての来日で評判以上の強さだった。
調教師の注文通り、外枠ながらさっとインに入れじっくり脚を溜め、
直線は前の馬が邪魔にならない外目から伸び完勝。
まさに世界の名手L.デットーリが完璧な騎乗をし、
アルカセットがその完全な指示に応え完全な競馬をしてみせた。
文字通りワールドクラスの競馬だったろう。
2着:ハーツクライ
こちらもじっくり脚を溜めて直線に賭けるいつもの競馬。
向こうが不利なく直線弾けられたのに対し、ハーツクライは壁が邪魔。
相当色んなところへ持ち出そうとルメールは苦心したようだ。
それさえ無ければと言う結果だが、これもまた競馬なのだろう。
34.4の末脚をこのペースで繰り出されるとは思いもしなかった。
強い競馬をしたのは事実、負けて尚強しだが痛い2着でもあった。
3着:ゼンノロブロイ
今年に入って勝ちきれないというか、呪われているのか。
ただ力の衰えは感じさせないのは流石の貫禄だろう。
勝ちに行く競馬だったのだが前2頭が上手い競馬をしたという事か。
多少外を回った事が最後の最後100mで影響した感じ。
4着:リンカーン
府中(左回り)に難があったわけではなかったか、力を出し切っての4着。
ただ前2頭はいざ知らず、ロブロイを交わしきれなかったところに、
リンカーンのリンカーンたるもう一歩という感があって・・・。
無冠の帝王がGIを勝てる日は来るのだろうか。
5着:ウィジャボード
道中10番手付近の中団にいたが、早めの仕掛けで4角は4番手。
速い競馬に日本の硬い馬場、そして牝馬。
こう考えて見ると3着争いに混じっての5着は立派だろう。
昨年の欧州最優秀牝馬の力は見せきってくれたと思う。
6着:サンライズペガサス
展開は向いていたと思うが、2400mはちょっと長かったかも。
でもまぁ・・・15番人気はちょっと力を甘く見すぎかなぁとも思う。
3着に入れなければ一緒っちゃ一緒なんだけどさ。
7着:ヘヴンリーロマンス
こちらも牝馬ながら力を見せきった。褒めて良い7着だろう。
8着:バゴ
うーん・・・。まぁこんなもんじゃないかなぁ。
せめてヘヴンリーロマンス・サンライズペガサスくらいはって、
まぁ馬場適性があるから仕方ないな。
10着:タップダンスシチー
2番手で18着ストーミーカフェが3F39.3の走破タイム2.25.7。
3番手の17着ビッグゴールドは3F38.6で走破タイムが2.25.6。
でタップダンスシチーは3F37.3で2.23.1って・・・ある意味化け物だわ。
1000mを1.57.7なんて殺人ペースで逃げて何で10着に入れるのか、
何だろ、負けたけど清々しい。強い、いやもう強いわ、恐れ入った。
11着:アドマイヤジャパン
古馬と3歳馬の壁は大きかった・・・、かどうかは正直なところ分かんない。
総括
ホーリックスとオグリキャップが作り出した世界レコード2.22.2。
これが破られる日がついにやってきた。
しかしまぁ、あと数年もすれば2分21秒台に突入するんじゃないかとすら、
そういう恐ろしさまで感じた今年のジャパンカップ。
タップダンスシチーの暴走(それでも10着に入る底知れなさ)に、
ハーツクライが見せた光と見紛わんばかりに強烈な末脚、
4角で夢を見せたウィジャボード・ヘヴンリーロマンスの牝馬2頭、
そして世界の力を日本の競馬ファンに如何なく発揮したアルカセット。
競馬の凄さを改めて実感した。