第132回 天皇賞(秋)
(エンペラーズカップ100年記念 第132回 天皇賞(秋))
THE TENNO SHO (AUTUMN) (GI)
2005年10月30日 (日)
芝・左 2000m 3歳以上 国際 指定 定量(4歳上牡58.0kg 4歳上牝56.0kg 3歳牡56.0kg 3歳牝54.0kg)
展望
昨年のJRA50周年記念での天覧競争は、新潟大震災で取り止めとなった。
今年は天皇賞100年記念で、取り止めとなった天皇陛下が改めてご観戦の様子。
エンペラーズカップ100年記念天皇賞(秋)。
恐らく本命であろうゼンノロブロイは外国人騎手が乗った時に真価を発揮する謎の傾向。
今回鞍上は横山典は先週の菊花賞の鮮やかな手綱捌きで2着など、日本でも上位の騎手だが、
非常にムラがあり、本命馬での騎乗より穴馬での騎乗の方が良く見える難しいタイプ。
またロブロイ自体、調整こそスムーズに来ているが8月の海外遠征から間が開いているのがネック。
宝塚記念でもそれが懸念されていたが、その理由か別の理由か、3着と敗れた。
騎手で見ても競走馬で見ても、取捨選択が非常に難しい1頭だろうが、
そんな馬が本命馬として据えられる事自体、天皇賞の難解さを物語っているだろう。
一方永遠のライバル、タップダンスシチーは京都大賞典→JCの予定が調整遅れて京都大賞典スルー。
その後オパールSからJCを目指すもOPレースで酷量背負わされると判明し、急遽ここへ。
年齢による衰えを否定できない上に調整が難航、前哨戦を叩けなかった事はかなりのマイナス。
むしろここを叩きに使う可能性もあり、当日の気配次第だろう。
前走宝塚記念の惨敗だけでピークを過ぎたとは断言しづらい事と、
昨年有馬記念では7-8割の仕上げで驚異的なレコードの立役者になり尚且つ2着と、
年齢や調整の状況だけで判断しづらい、走るときは恐ろしいくらいのパフォーマンスを見せる。
しかしながら、今回ばかりはJC・有馬記念を本番と想定してるんではないかと疑いたくなってしまう。
3番手の評価は春のグランプリ馬、新女王スイープトウショウか。
昨年秋は距離不安も囁かれる中、ローズS3着→秋華賞1着。
今春も都大路S5着→安田記念2着→宝塚記念1着と叩き良化型。
国内でも五指に数えるほど一級品の末脚を武器に、毎日王冠の6着から確実に良化して来るだろう。
オークスと安田記念で2着に入っており、距離や東京実績もある。
春の宝塚記念で国内トップクラスを一蹴して見せたパフォーマンスに、夢再び。
東の前哨戦毎日王冠で新たな一面を見せたサンライズペガサスも気づけばもう7歳馬。
2度の屈腱炎で休み休み使ってきた事で、年齢以上に馬は若いようだが流石に後がなくなってきているのは確か。
GIでの実績はさほどと言う感もあるが大敗は決まって京都。
産経大阪杯22回(02・05年)、天皇賞秋3着(02年中山)、など中距離はかなり走る。
瀬戸際も迫っており、陣営も大きな勲章が欲しいと意気込んでくる事必至。
それ以上に勲章を欲しがっているのは西の前哨戦京都大賞典を勝ったリンカーンか。
昨年の阪神大賞典から勝ち星に遠ざかっていた為、盾の勲章どころかGI出走すら厳しい中、
京都大賞典を渾身勝利、秋のGI出走を手繰り寄せた。
前哨戦から必勝態勢で挑んだことから更なる上積みでは疑問もあるが、
鞍上に念願の武豊を迎えたことで侮れない。三冠騎手が3週連続GI制覇を目論む。
忘れられた第三の前哨戦オールカマー、勝ったのはホオキパウェーブ。
昨年は菊花賞でデルタブルースの2着と善戦したがJCでは一転、故障かと思わせるほどのシンガリ負け。
今年の春は疲れを取るため全休し迎えたオールカマーを完勝、状態は確実に戻った印象。
オールカマー自体レースの質は高くないが、軽視出来ない1頭だ。
それ以上に面白そうなのはハーツクライ、体調は過去最高との噂。
不器用なので緩やかなコーナーを持つ東京は向いており、昨年秋の東京遠征は調整不良と原因は明瞭。
宝塚記念から直行はマイナス要素だが、鞍上にC.ルメールを向かえ惑星候補に伸し上がる。
春の天皇賞馬スズカマンボもぶっつけ本番、しかしそれ以上にこの距離でどう出るかが鍵。
苦戦を強いられそうなのは確実で、当日の気配次第で或いはというところか。
アサクサデンエンも前哨戦を使えず安田記念からのぶっつけと、調整が上手く行っていない様子。
完全な状態で出てくれば面白い1頭だったのだが・・・、当日の気配に注意。
府中の鬼テレグノシスもGIとなると苦戦を強いられている。
昨年は毎日王冠を勝って堂々と迎えた天皇賞だったが今年は3着で後が無い。
3歳勢からはセントライト記念制覇のキングストレイルと、春のクラシック候補生ストーミーカフェ。
牝馬勢は昨年の天皇賞秋2着のダンスインザムード・同3着アドマイヤグルーヴの牝馬コンビと、
クイーンS2着からの連闘で札幌記念を制したヘヴンリーロマンス。
ペリエが跨るハットトリックに、小倉三冠王メイショウカイドウ、古豪バランスオブゲーム。
以上の18頭が参戦。
先週のディープインパクト一色から一転して、混迷極める天皇賞秋となりそうだ。
予想
姐御
◎ゼンノロブロイ ○ハーツクライ ▲スィーブトウショウ △タップダンスシチー
スズカマンボ リンカーン
注 ホウキパウェーブ
3連複で
えあ
◎:サンライズペガサス ○:ゼンノロブロイ ▲:スイープトウショウ
△:タップダンスシチー・ハーツクライ
×:リンカーン 注:ホオキパウエーブ
展望やら結果やら書いてるのを見てもらえば分かるように、えあさんはへヴィな競馬ふぁん。
だけど予想となるとそれが一転、えらくチープなものに見えるのはなぜだろう。
答えは簡単、うん、私、馬券買わないから。
あんまり実害がないから結構無茶な理論振りかざせるのよね、これが強みであり弱み。
さてそんなへヴィでチープなえあさんが本命に据えるのはサンライズペガサス。
能力云々より、この馬好きなのよね、だから贔屓目に見てるのが大きい。
けど人気も考えると結構美味しい。毎日王冠の内容を見てもなかなか侮れない。
対抗はゼンノロブロイ、休み明けで強く推せないけど勝って当たり前の感じも、素直に。
休み明け以上に分かんないのは典ちゃんが乗るってことなんだけd
スイープトウショウも出遅れを巻き返すほどの直線一気や、
宝塚記念の中団から差し込みがあり注目。人気になってないときの牝馬+池添は正直怖い。
タップダンスシチーも、ストーミーいるけどラチ頼れそうだから改めて注目。
ハーツクライはペースが上がればってことでちょっと割引。
リンカーンはあんまりGI馬って感じがしっくり来ないのでかなり評価を下げる。
穴に指名するのはホオキパウエーブかな、セントライト記念でコスモバルクの2着レコードだし。
結果
| 着順 | 枠 | 馬番 | 馬名 | 姐御 | えあ | 性齢 | 斤量 | 騎手 | タイム | 着差 | 馬体重 | 人気 |
| 1 | 1 | 1 | ヘヴンリーロマンス | 牝5 | 56.0 | 松永幹夫 | 2:00.1 | 510 -2 | 14 | |||
| 2 | 7 | 13 | ゼンノロブロイ | 牡5 | 58.0 | 横山典弘 | 2:00.1 | アタマ | 500 ? | 1 | ||
| 3 | 6 | 12 | ダンスインザムード | 牝4 | 56.0 | 北村宏司 | 2:00.1 | クビ | 468 -4 | 13 | ||
| 4 | 3 | 5 | (外)アサクサデンエン | 牡6 | 58.0 | 蛯名正義 | 2:00.3 | 1馬身 | 496 -6 | 9 | ||
| 5 | 7 | 14 | スイープトウショウ | 牝4 | 56.0 | 池添謙一 | 2:00.4 | 1/2馬身 | 464 -2 | 4 | ||
| 6 | 5 | 10 | ハーツクライ | 牡4 | 58.0 | C.ルメール | 2:00.4 | クビ | 490 -6 | 2 | ||
| 7 | 2 | 4 | (市)ハットトリック | 牡4 | 58.0 | O.ペリエ | 2:00.5 | クビ | 490 +2 | 11 | ||
| 8 | 6 | 11 | (父)(市)ストーミーカフェ | 牡3 | 56.0 | 四位洋文 | 2:00.6 | 3/4馬身 | 484 +2 | 15 | ||
| 9 | 3 | 6 | (外)タップダンスシチー | 牡8 | 58.0 | 佐藤哲三 | 2:00.6 | ハナ | 520 +8 | 6 | ||
| 10 | 4 | 7 | (市)ホオキパウェーブ | 牡4 | 58.0 | 藤田伸二 | 2:00.6 | ハナ | 488 0 | 12 | ||
| 11 | 8 | 18 | (父)(市)バランスオブゲーム | 牡6 | 58.0 | 田中勝春 | 2:00.7 | クビ | 470 0 | 16 | ||
| 12 | 8 | 16 | サンライズペガサス | 牡7 | 58.0 | 後藤浩輝 | 2:00.7 | クビ | 478 -8 | 5 | ||
| 13 | 1 | 2 | スズカマンボ | 牡4 | 58.0 | 安藤勝己 | 2:00.8 | クビ | 480 -4 | 8 | ||
| 14 | 7 | 15 | テレグノシス | 牡6 | 58.0 | 勝浦正樹 | 2:00.9 | 1/2馬身 | 470 -2 | 7 | ||
| 15 | 2 | 3 | リンカーン | 牡5 | 58.0 | 武豊 | 2:00.9 | クビ | 474 0 | 3 | ||
| 16 | 4 | 8 | キングストレイル | 牡3 | 56.0 | 福永祐一 | 2:01.1 | 1 1/4馬身 | 486 -2 | 10 | ||
| 17 | 8 | 17 | (市)アドマイヤグルーヴ | 牝5 | 56.0 | 上村洋行 | 2:01.1 | ハナ | 466 -8 | 17 | ||
| 18 | 5 | 9 | メイショウカイドウ | 牡6 | 58.0 | 幸英明 | 2:01.3 | 1 1/2馬身 | 518 +2 | 18 |
女心と秋の空とはよく言ったもので・・・。
スタートはキングストレイルが出遅れた以外、綺麗なスタート、スイープトウショウもいいスタートを切る。
直後第2コーナーで内タップダンスシチーを外からストーミーカフェが交わして先頭へ。
大外からバランスオブゲームも3番手を取れたくらい緩やかな立ち上がりが続きスローペース。
ダンスインザムード・アサクサデンエン・サンライズペガサスなども前目に付ける。
4コーナーを回り直線へ入るまで大きな順位変動もなく、その反動か直線で大激戦が開始される。
まず逃げたストーミーカフェにタップダンスシチーが襲い掛かるが伸びる気配が無く、
最内からその2頭をあっさりダンスインザムードが交わして先頭へ、2馬身ほど前に出て粘りこみに掛かる。
外目からアサクサデンエン・スイープトウショウが伸びてくるが、間を通ってゼンノロブロイの脚色が良い。
残り200Mを切った辺りからゼンノロブロイがダンスインザムードを捉え始める。
更には内で死んだふりをしていたヘヴンリーロマンスもダンスインザムードの外に持ち出し進出。
100Mを切って最内ダンスインザムードが半馬身先頭、外ゼンノロブロイがそれを交わす。
その間からヘヴンリーロマンスがゼンノロブロイと並び、もう一伸びしたところがゴール。
確かに牝馬にも注意しろとは気付いていたが、それはスイープトウショウの事であったわけで…。
他に関しては2-3着に絡むかもしれないと言う程度だった、よもやGI未連対の14番人気ヘヴンリーロマンスなどとは・・・。
短評
1着:ヘヴンリーロマンス
最内の利点を生かし経済コースで末脚を溜め、直線に入っても持続した力強い末脚で伸びる。
周りの伸びが止まった残り200M辺りからゼンノロブロイとともに爆発的な伸びを見せ出し、
まず内で粘るダンスインザムードを、そして最後には王者ゼンノロブロイまで交わし大金星。
エアグルーヴ以来8年ぶりの牝馬での優勝。天皇賞秋史上最低人気での優勝。
人気や実績・ペースなんてどうでもいい、古馬中距離No.1を決めるこのレースを勝ったのだ。
昨年の王者ゼンノロブロイを破っての勝利はまさに脱帽と言ってよく、完勝だろう。
並み居るGI馬を撃破した事を素直に称えたい、恐れ入りました。
好調時と不調時のリズムが実に分かりやすく3戦ほど好調を維持し5戦ほど不調が続く。
あまりに人気が割れたので指名こそしなかったが、穴程度には思ってたんだよなぁ
牝馬のエスコートと言えば松永幹夫、を改めて見せ付けられた。
女性が天皇に即位する事を認める法改正、皇族紀宮様御成婚、天覧競争、
今年の天皇賞は"エンペラーズカップ100年記念"、これはまさしく運命だった!
なんて事はないだろうが、神掛りの走りを見せたヘヴンリーロマンスと松永幹夫。
いやはや、もうおめでとうございますとしか言えません。
2着:ゼンノロブロイ
直線入ってすぐは前の馬が壁になりヒヤヒヤさせるが、
残り250M辺りから、1頭を除いて他の周り全てが止まって見えるような鋭い伸び。
結局その唯一止まって見えなかった1頭が勝ったわけで、力負けであり勝って尚強しであり、
鞍上横山典弘・調教師藤沢和雄、共に心中複雑なご様子。
しかし負かした残り16頭に対しては完全なアドバンテージを握った結果となり、
ジャパンカップ・有馬記念では古馬の代表としての活躍が期待される。
英雄ディープインパクトvs王者ゼンノロブロイ、割って入ってくる馬は見当たらず。
3着:ダンスインザムード
昨年2着時の騎手C.ルメールに劣らないナイス騎乗を今回は北村騎手がやってのけた。
考えればこれくらいの結果も昨年の成績を見れば当然といえば当然だが、
今年の惨敗続きからは到底想像できる訳もなく、13番人気も妥当なところだった。
ただ、これで完全復活かといえば答えはNoの一言、だって直線でいきなり尻尾振り回すじゃじゃ馬娘っぷりが、
全然成長を感じさせてないんだもの、このおてんばは引退するまで治らないかもしれないね。
府中が好きかと言われればオークス・府中牝馬Sの惨敗、2000Mが得意かと問われれば、秋華賞での逆噴射。
東京2000Mというピンポイントの得意条件だという事かもしれないが、
もしかしたら同じ藤沢厩舎の代表格であるゼンノロブロイに惚れてんじゃないかと・・・。
冒頭に書いた"女心と秋の空"はどちらかと言えばヘヴンリーロマンスでなく、この娘に相応しい。
でも父親同じだから、結ばれる事はない悲しい運命。
4着:アサクサデンエン
5着:スイープトウショウ
前評判では"宝塚記念の再現か!?"とも取り沙汰されていたが、再現されたのは安田記念1・2着の光景だった。
前で粘るダンスインザムード(サイレントウィットネス)を同じような脚色で捉えにかかった2頭。
間からアサクサデンエン、大外回してスイープトウショウ、僅差抑えてアサクサデンエンが先着。
と何から何までそっくり、ペースや距離が違ってもここだけ変わらないという謎の光景だった。
アサクサデンエンはぶっつけ本番ながら頑張った、スイープを押さえ込む根性も見事。
スイープトウショウは内有利のスローペースと不利条件山積みの中での5着は致し方ない。
普通なら頑張ったと言えるのだが、1着に低実績・3着に同期の牝馬が入線しており、悔しい限りだろう。
アサクサデンエンは次走香港へ登録(香港マイル)、スイープトウショウはエリザベス女王杯への登録。
どちらもこの1戦で次走への期待は高まった、改めて注目したい。
6着:ハーツクライ
他力本願・不器用なこの馬が、スローペースで内馬場有利な中、後方一気で外を回らざるを得ない。
この手のタイプはハマらないとこんなもんだ、今回はツイてなかったと割り切るしかなさそう。
9着:タップダンスシチー
無難に考えれば、年齢による衰えだと思うのが普通であり、この先軽視しても構わないだろう。
スローで粘りこめないのは先行馬にとっては致命傷だと思うし。
でもまたもやここぞと言うときに内ラチを頼れない展開、ぶっつけのGIで調整不足だったのも事実。
見限るべきかまだまだ追い続けるべきか、それは思い入れとオッズのみが示してくれるだろう。
10着:ホオキパウェーブ
まぁこんなもん、もう少し経験が欲しい。
12着:サンライズペガサス
直線での伸びが今ひとつだったのは前走の反動か、それともこのくらいの実力なのか。
スローだしもう少し前につけてもよかったが、伸びを考えれば結果は覆らなかったろう。
13着:スズカマンボ
後ろすぎ!
休み明けでも走らない事は無いけど、距離や位置取りを考えれば負けて当たり前。
15着:リンカーン
同じく後ろすぎ! んでもって負けすぎ・・・。もうだめかも。
総括
勝利したヘヴンリーロマンスの松永騎手と管理調教師山本正司師は所謂師弟関係。
松永騎手は先日行われた調教師1次試験及び来年1-2月の2次試験に合格すれば2月一杯で引退。
また師である山本調教師も2007年2月での定年が決まっており、師弟で一花咲かせた。
双眼鏡を手に身を乗り出して観覧なさっていた天皇皇后両陛下に向かって、
ウイニングランから帰ってきた松永騎手は、正面スタンド前でヘルメットを脱ぎ馬上ながら一礼。
印象的なワンシーンだった。
男松永幹夫、渾身の勝利。いははや、おみそれしますた。
2週続けて、競馬の醍醐味を満喫できました。