傾国の妖狐と誘惑されし王子/会話

Last-modified: 2022-08-08 (月) 11:49:45
ネタバレ注意
1:華の国の妖狐
1:開始時

???

……ほう、あれが噂の王子か。
領内で適当に悪さをしておれば出てくる、
という噂は本当だったのぅ。

アンナ

貴方ですか?
魔物の群れを引き連れて街や村を襲い、
人々を脅かしている獣人のような女性というのは。

堕姫

ふん、獣人ごときと一緒にするでない。
わらわは堕姫。華の国は邪仙郷より、
王子を捕らえよとの命を受け見参した妖狐じゃ。
民を襲われたくなければ、王子の身柄を渡すがよい。
なぁに、悪いようにはせんさ。

ケイティ

そう言われて
おとなしく王子を渡すとでも思いますか?

堕姫

くははっ、それもそうじゃのぅ!
では、力ずくで頂くとしよう――!

アンナ

――ッ!?
かんざしを掲げて……
一体なにをしようというのですか?

堕姫

……皆の衆~っ、聞いてたもれ~!
わらわ、王子を捕まえてほしいのじゃ♪(くねくね)

アンナ

……………………は?

ゴブリン

――ギャギャッ!
堕姫サマ、ダイスキ! ネガイ、カナエル!
オウジ、ツカマエル! アイジョウ、シメス!

フィリス

わわっ!? こ、こっちに来たぞ!
っていうかヤツら、普段より興奮してないか?

マオ

あれはまさか……誘惑の術!
その道に長けた者が邪仙郷にいる
という噂は聞いていましたが……。
王子、お気をつけください。
あの堕姫という妖狐の術で誘惑されている敵は
普段よりも手強くなってると思われます。

アンナ

先に術者をどうにかした方がよさそうですね。
王子、ご指示をお願いします。
1:戦闘中

兵士

報告! 新たな敵の出現を確認!
見たところ人のようですが……う、浮いてる……?

マオ

あれは……邪仙郷の道士と思われます。
堕姫と共に王子を捕らえてくるよう、
邪仙たちから命じられているのでしょう。
仙術――中でも浮遊術を修めた道士たちは
地形に囚われることなく移動してきます。
彼らの挙動には十分にご注意ください。
1:終了時

堕姫

ば……馬鹿な。
魔物はともかく、道士たちまでもが
かくも容易く倒されるとは……。

ケイティ

相手が悪かったですね。
さあ、大人しくお縄についてもらいますよ。

堕姫

――って、それは本物の縄ではないか!
ま、待て! い、イヤじゃっ!
縄は……縄だけは堪忍してたもれ~~~~っ!!

ケイティ

暴れても駄目です。
邪仙に命令されてしたこととはいえ、
王子をさらおうとした罪はちゃんと償って――

王子

…………。

ユリアン

おいおい、王子。
その女を庇うっつうのかよ?

堕姫

な……何故じゃ?
わらわは……おぬしを捕らえて
邪仙郷へ連れ去ろうとしたのじゃぞ?
……って、なんじゃ、その手は……?
け、怪我はないか……じゃと?

ケイティ

まったく……王子は甘すぎです。
この方は貴方を誘拐しようとしたのですよ?

堕姫

(ななな、なんじゃ、この王子とかいうヤツは?
わらわの手を気安く握りおって……。
うぅ……なんだか胸がドキドキしてきおった……)

アンナ

……大丈夫ですか?
少しお顔が赤いように見えますけど……。

堕姫

んなッ……あ、赤くなどなっておらんわ!
気安く触れるでない、このっ……痴れ者め!
お……覚えておれ、王子!
おぬしなんか……おぬしなんかーーーっ!!

サイゾウ

……なんたる逃げ足の速さ!
まさに脱兎の如し……否、脱狐の如しというべきか。
……む、この赤い花は?

アンナ

堕姫さんの落とし物でしょうか?
また会うこともあるかもしれませんし、
念のために保管しておきましょう。
2:誘惑の赤き花
2:開始時

兵士

ほ、報告!
魔物に混じって人間の兵が攻めてきます!
先日行方不明になった兵たちのようです!

ケイティ

そんな……兵たちが反乱を起こすなんて。
一体なにが起こっているのでしょうか?

ソーマ

あ! 見てください、王子。
向こうに兵士たちを指揮している人がいますよ。

アンナ

あれは……堕姫さん?

堕姫

くふふ……よいぞ、どんどん行くのじゃ!
見事王子を捕らえた者には、
わらわが手料理を馳走してやろう!

山賊

でへへ……任してくだせえ、姐御!

兵士

なにが姐御だ! そこをどけ!
堕姫様の手料理は俺のものだ!

アンナ

なるほど……誘惑の術ですか。
また王子を捕らえに来るなんて、
あの人も懲りませんね。

ケイティ

なら今度こそ懲らしめてあげなくては。
王子、兵たちを正気に戻すためにも、
ひとまずここは応戦しましょう。
2:終了時

堕姫

く、ふふ……強いのう。
それでこそ、わらわの王子じゃ。

ケイティ

王子は貴方のものではありません。
さあ、今度こそ大人しく捕まりなさ――。

王子

…………。

ケイティ

王子……退いて頂けませんか?
貴方が前に立っていては、
堕姫に縄をかけることができませんよ?

アンナ

……………………王子?

堕姫

くははははっ! 無駄じゃ無駄じゃ!
王子はすでに、わらわの誘惑の術に
かかっているのだからのぅ!

アンナ

な……なんですって!?

マオ

嘘だ! 王子みたいに意志の強い人が
お前なんかの術に簡単にかかるものか!

堕姫

ああ、そうとも。だから王子には
最も強力にして最も解けにくい術をかけた。
わらわの力を凝縮した、この宝貝を使ってな……。
だが、一度術をかけてしまえば
もうこんなものは不要じゃ!

マオ

なッ……宝貝を壊した!?

堕姫

くふふ。術をかけたこの宝貝で解除の術を施さねば、
王子にかけた誘惑の術は死ぬまで解けることはない。
その宝貝を壊した今、
王子は永久にわらわのものじゃ!
のう、王子?

アンナ

う……嘘ですよね、王子?

王子

…………。

ケイティ

そんな……アンナさんの制止を振り切って
堕姫のもとへ行ってしまうなんて……。

堕姫

どうした? 他に王子を止められる者はおらぬのか?
止めなければ王子はわらわと共に去ってしまうぞ?
くふふっ! そうかそうか、一人もおらぬか!
では、王子は頂いていくぞ? くふふっ、くははははっ!
2:終了後

ナタク

……話は聞かせてもらったよ。
いやはや、大変なことになってしまったね。

アンナ

はい……王子が邪仙の手先に連れ去られるなんて。
正直、もうどうしたらいいのやら……。

ナタク

それで華の国の仙人であるぼくに
解決策を聞きにきたってわけだ。
うん、なかなか賢明な判断だね。

アンナ

そ……それではナタクさんは
王子が元通りになる方法をご存知なのですか!?

ナタク

まぁ、そう焦らずに聞いてよ。
王子にかけられた術を解くためには、
術をかけたのと同じ宝具で解除の術を施すしかない。
そのためには……うん、そうだね。
堕姫が壊した宝貝の欠片を集めて、
それを元通りにする必要があるわけだ。
宝貝っていうのは強力な仙術を使うための道具だ。
作り方は仙人によっていろいろだけど……。
堕姫は力そのものを結晶化したものを
さらにギュッと凝縮して宝貝を作ったみたいだ。
おそらく、術の力をより高めるためだろうね。
さて、術の力を結晶化するには
核となるのに適した物質が必要だ。
その物質として、堕姫は赤い彼岸花を選んだ。
……ふふ。見えてきたかい、アンナ?
君たちが拾った赤い花は、
堕姫の宝貝に込められた力の結晶なのさ。

アンナ

赤い彼岸花を集めて堕姫さんの宝貝を修復。
それを使って王子にかけられた術を解く。
……それでいいのですね?

ナタク

ああ。幸いなことに王子を連れた堕姫が
華の国に向かっているのを見たとの情報がある。
真っ赤な彼岸花をバラ撒きながらね。
彼らを追うなら道案内くらいはしてあげるよ。
……危険だから無理にとは言わないけどね。
どんな選択をするかは、君たち次第だ。
3:王子の逃避行
3:開始時

ナタク

もうじき華の国だ。
堕姫と王子も近くにいるはずだよ。
みんな、山道続きで疲れてないかい?

モーティマ

ゼエッ、ゼエッ……。
クソッ……あの女、なんつー体力だ。

ダニエラ

っていうより、浮いてるから
山道でも関係ないんでしょうね。
はぁ……仙人って羨ましいわぁ。

バシラ

あれ? あの洞くつの手前で
お弁当を広げてる二人って……。

アンナ

――あれは!
王子と堕姫さんではないですか!

堕姫

んむっ!? おぬしら、何故ここに!?

ケイティ

判りきったことを……。
早く王子を返しなさい!

堕姫

……ふん、嫌じゃ。
わらわと王子の新婚旅行を邪魔しおって。

ユリアン

……新婚旅行?
邪仙どもに王子を引き渡すつもりじゃねえのかよ?

堕姫

誰が邪仙になど渡すか!
王子は一生わらわと共に暮らすのじゃ!
のう、王子?

王子

…………(こくり)。

アンナ

王子……。

堕姫

さぁて、話は終わりじゃ。
ゆけ、獣ども! わらわと王子の愛を邪魔する
目障りな人間どもを蹴散らすのじゃ!
3:終了時

ユリアン

ここまでだな、堕姫。

堕姫

う……うわ~~~~ん!
王子ぃぃ~ッ! この男がいじめるのじゃ~!

王子

…………。

ユリアン

……なぁ、どうしちまったんだよ王子?
どうしてこんな女狐なんかを庇うんだ?
俺の声が聞こえてねえわけじゃねーんだろ?

王子

…………。

ユリアン

……そうかよ。
仲間に剣を向けてまで守りてえほど、
あの女狐が大事だっつーんだな?

アンナ

ゆ、ユリアンさん、落ち着いてください。
……って、あら? 堕姫さんは?

堕姫

お~い、王子~っ!
わらわはもう大丈夫じゃぞ~っ!
王子も早くこっちに来るのじゃ~っ!

ケイティ

くっ……いつの間にあんな遠くに!

王子

…………。

アンナ

あっ! 待ってください、王子――

ナタク

――無駄だよ、アンナ。
気づいているんだろう?
術が解けない限り、王子を捕まえても意味ないって。

アンナ

それは、そうですけど……。

ナタク

心配いらないさ。
堕姫は王子を邪仙に渡さないって言ってるわけだし、
彼に危害を加えるつもりもなさそうだしね。
今は地道に赤い彼岸花を集めながら機会を伺おう。
王子を助け出すための好機は、じきに訪れるさ。
4:炎を纏いし邪仙
4:開始時

堕姫

……ふぅ。ようやく見えてきたぞ、王子。
あれがわらわの隠れ家……いや、
今日からは我ら二人の愛の巣じゃ。
ここならそうそう見つかることもあるまい。
さぁ……これより夫婦の契りを交わし、
生まれたての愛を二人でじっくりと育もうぞ♪

王子

…………。

堕姫

くふふ、こう見えてわらわは家庭的なのじゃぞ?
おぬしのためにこれから毎朝
美味しいおかゆを作って――
(――むむっ、誰か来おったようじゃ。
王子、すまぬがしばし隠れてたもれ!)

???

……道士ども、あの家だ。
浅黒い肌の妖狐は殺しても構わん。
人間の男が連れにいたら、そいつは生け捕りにしろ。
堕姫ィ……薄汚れた女狐め。
我らの命に背き、王子を連れて逐電したことは
とうに判っておるのだ……。
我ら十天君から逃げられると思っているなら片腹痛い。
貴様の行き先ごとき、見抜けぬ我らではないわ。

堕姫

(あわわ……大変なことになってしもうた。
すまぬ、王子……あの家にはもう住めぬ)
(いましばらく、共に逃げてくれ……。
……苦労をかけてすまぬのぅ。
わらわがおぬしをさらったばかりに)

マオ

あれは――。
邪仙郷の道士が民家を襲撃しようとしています!

アンナ

詳しい事情は不明ですが、
とにかくあの家を守りましょう。
中に人がいるかもしれません。
4:戦闘中

???

――ヌハハハハ!
妙な邪魔が入ったと思ったら、
貴様ら、王子の軍の者だな?

ナタク

……キミこそ名のある邪仙の一人と見受けるが、
もしかして十天君の一人ってヤツかい?

狛天君

おうとも。ワシは十天君が一人、狛天君。
東の国では仲間が世話になったらしいな?

ケイティ

……かの国の支配を目論み、
侵攻してきた十天君の二人を
現地の陰陽師と私たちとで退けた件ですか。

狛天君

あぁ。おかげで東の国の占領計画が滞った。
……目障りなのだ、貴様らは。
だから、長である王子を部下にさらわせた。
貴様らの軍の士気を削ぐためにな。

ナタク

で、王子を追ってくるであろうぼくたちを
華の国までおびき寄せることにも成功したってわけか。

ユリアン

なかなかいい計画だが、重大な欠陥があるな。
それは、てめえじゃ俺たちには勝てねえってことだ。

狛天君

ヌハハッ、馬鹿め!
王子のいない貴様らの軍など恐るるに足らんわ!
炎を自在に操るワシの宝貝『烈焔陣』。
全てを灰と化す業火に灼かれ、己の分を知るがいい!
4:終了時

狛天君

ぐふッ……ぬ、抜かったか……。
……仕方あるまい。ここは一時撤退だ。

モーティマ

あ、てめえ! 待ちやがれ!

ナタク

行かせてやればいい。
あれだけ負傷したんだ。しばらくは悪さもできないさ。
それに、ぼくたちの目的は
あくまで王子を連れ戻すことだろう?
あんな奴に構ってる場合じゃないはずだよ。

アンナ

ナタクさんの仰る通りです。
引き続き王子と堕姫さんの行方を追いつつ、
術を解くために必要な赤い彼岸花を集めましょう。
(……待っていてくださいね、王子。
私たちが必ず、貴方を元に戻しますから……)

狛天君

(フフ……馬鹿な奴らめ。
こうしている間にも、既に我らの仲間が
堕姫とその連れの王子を追っているとも知らずにな)
5:滅びを奏でし銃口
5:開始時

???

(……私はなにを迷っているのでしょう?
神より仰せつかりし、人間たちを滅ぼすという命を
果たすために地上に降り立ったというのに……)
(全ては神の御心のままに……。
そんな天使としての信念が、此の地で懸命に生きる
人間たちの姿を目にしただけで揺らいでしまうとは)
(神よ……いま一度お示しください。
人間たちは本当に、抹殺しなければならないほど
愚かで不浄な存在なのでしょうか……?)

ファー

――は~な~せ~よぉ~~~っ!
王子は、これからアタシたちと
街でデートするんだっつーの~~っ!

レアン

なにがデートだ! 無理やりさらったくせに!
さぁ、王子は返してもらうぞ!

ナディア

もうっ! どうして邪魔するの?
せっかく王子と一緒に食べようと思って
美味しいリンゴを採ってきたのにー!

???

(これは一体……?
仲間同士で争っているように見受けられますが……)

アンナ

皆さん、一体どうしてしまったのですか?
王子をさらって街へ連れ出すなんて……。

ナタク

堕姫が落としたっていう赤い彼岸花が原因かもね。
それに乗り移った強い誘惑の力に影響されて、普段は
抑制されている他者への情愛が表出してしまったんだ。
――というわけで、王子はぼくが頂くよ!

レアン

ナタク、お前もか!

ドロテア

ひがむな、王国の者たちよ。
貴様らと違い、我々はいわば他国からの来客。
国の長たる王子に厚遇を求めるのは当然であろう?

テティス

バシラ~っ!
私たちもデートしましょ~っ♪

ラピス

(――ッ!
この気配、ルチアも来ているのか……)

ケイティ

……とにかく、この事態を収拾しなくては。
王子、向かってくる女性たちを鎮圧しましょう。

???

(愚かな……仲間同士で刃を向け合うとは。
やはり神の仰せの通り、人間たちは我々天使の手で
滅ぼさなければならないようですね……)
5:戦闘中

アンナ

あれは……天使?
……いえ、翼が黒いので堕天使でしょうか?

フォニア

私は天使フォニア。
神の命により貴方がた人間を浄化しに来た者です。
この黒き翼は、一瞬でも神のご意志を疑った
不遜な私への戒めの証……。
ですが、もう迷いはしません。
さぁ、戦きながら逝きなさい。
この銃が滅びの旋律を奏でる時です。
5:終了時

フォニア

(くっ……そんな馬鹿な……。
この私が……人間たちに、負ける……?)

イナリ

あいたたた……たんこぶできちゃった。

カヨウ

だが、王子たちや皆に迷惑をかけたのは
わらわたちの方のようだ。
すまんのぅ。どうかしておったわ。

メルヴィナ

あぁ。私も得体の知れない感情に衝き動かされ、
ついこの血塗られた魔剣を抜いてしまった……。

アンナ

今回ばかりは仕方ありません。
皆さんは赤い彼岸花に秘められた
誘惑の力の影響を受けていたのですから。

ルチア

ふぅ……それを聞いて安心した。
今日の王子がやけに魅力的に見えたのは、
その赤い彼岸花とやらのせいだったんだな?

フォニア

(……フォニア、惑わされてはなりません。
たとえ赤い彼岸花とやらが原因の一端だとしても、
人間同士が相争っていたのは紛れもない事実)
(その争いの焦点となっていた
あの王子という人間だけでも討たなければ――)

王子

…………。

フォニア

(ふふ、私に気づいてはいないようですね。
その脳天気な頭を吹き飛ばしてあげましょう)
……………………。

アンナ

――ッ!
王子、危ない! フォニアさんに狙われています!

フォニア

……安心なさい。
撃つつもりなら既に撃っています。
今日のところは一旦退きましょう。
私が銃の引き金を引けなかった、
その理由をつきとめなくてはなりません。

ケイティ

……天使の撤退を確認。
追わなくて良かったのですね?

アンナ

……ふぅ。天使が介入してくるとは予想外でしたが、
なんとか一件落着したようですね。
それでは帰還致しましょう。
6:風舞う山道
6:開始時

東天君

……ここには来ていないか。
まあいい。堕姫は見つからなかったが、
かわりに面白いものを拾うことができた。
あの女狐の宝貝の力の源たる、赤い彼岸花。
試しに近くにいた妖怪たちに使ってみたが、
これほど容易く奴らを配下にできるとは……。
これは思わぬ収穫かもしれん。
この手の術はあまり得意な方ではないからな。
っと、誰か来たようだ……ん、あれは……?

アンナ

堕姫さんと王子、見当たりませんね……。
彼女が落としたと思しき
赤い彼岸花はちらほらと見受けられますが……。
……あら?
あなたは確か、東の国でお会いした……一目連さん?

東天君

……言ったはずだ。
俺は華の国の仙人、十天君が一人東天君だと。
(王子軍の連中……さらわれた王子を探しに来たのか。
ここは一応、足止めしておくのが賢明だろう)
……よし、堕姫の術の力を試すいい機会だ。
行け、妖怪ども。向こうにいる人間たちを攻撃しろ。

モーティマ

げっ!?
あの野郎、妖怪どもをけしかけてきやがったぞ!

ダニエラ

まったく……いけ好かない子ねぇ。

ケイティ

とにかく応戦しましょう。
皆さん、戦闘の準備をしてください。
6:戦闘中

東天君

ふむ……ひとまずはこんなものだろう。
さて、そろそろまたあの女狐を探しに行くか。
……まあ、こちらに来ていないということは、
そろそろ『ヤツ』に捕まっている頃だろうがな。
6:終了時

兵士

敵軍の殲滅を確認!
味方の損害は軽微です。

アンナ

皆さん、お疲れ様でした。
それにしても、あの一目連さん……いえ、
東天君も堕姫さんと王子を探していたようですね。

ナタク

十天君が総出で――かどうかはわからないけど、
少なくとも何人かは捜索に駆り出されているんだろうね。
邪仙郷も本気で王子を手に入れようとしてるんだ。
ぼくたちも急いだほうがいいかもしれないね。

ケイティ

ですが、王子の奪還に成功したところで
誘惑の術が解けなければ元も子もありません。

アンナ

ええ。王子にかけられた術を解くには
堕姫さんの宝貝を復元せねばなりません。
それに必要な赤い彼岸花は、今後も集めていきましょう。
7:雨を統べる邪仙
7:開始時

堕姫

はぁ、はぁっ……苦労をかけてすまんのぅ、王子。
わらわがおぬしをさらって逃げたばかりに……。

王子

…………。

堕姫

じゃが、ここまでくればもう安心じゃ。
ここなら身を隠す場所はいくらでも――

???

――あらやだぁ、堕姫ちゃんじゃない?
ウフフッ……こんなところで会うなんて奇遇ねぇ♪

堕姫

なっ……その声は――皇天君!?

皇天君

やぁねぇ、堕姫ちゃん。
そう毛を逆立てなくても大丈夫よぉ。
アチキは貴方たちの味方なんだからぁ♪

堕姫

だ、騙されぬぞ!
おぬしらは邪仙郷で王子を拷問し、
情報を得た後に殺めるつもりなのじゃろう?

皇天君

ふぅん……斥候たちの報告で聞いてたけど、
貴方、そこの彼――王子にゾッコンみたいねぇ♪
……どう、彼と一緒に暮らしたいと思わない?

堕姫

……な、なんじゃと?
いま、王子と共に暮らせると云うたか?

皇天君

ウフフ……貴方がアチキの言うことに従って
邪仙郷に王子を連れて行くって約束するなら、
そうなるように取り計らってア・ゲ・ル♪
さぁ……どうする堕姫ちゃん?
アチキに従い、最愛の王子と共に暮らすか。
アチキに背き、裏切り者の末路を遂げるか。

堕姫

わ、わらわは…………。

アンナ

――堕姫さん、王子! 見つけましたよ!
……あら? 一緒にいるのは?

皇天君

へぇ……あれが噂の王子軍御一行様ってワケね。
ウフフッ、思ったより美男美女揃いじゃない♪
とはいえ、彼らに王子を奪い返されちゃ困るわねぇ。
堕姫ちゃん、ここはアチキが引き受けるわ。
貴方は王子を連れて先に邪仙郷に向かいなさい。
……逃げたらどうなるか、わかってるわね?

堕姫

くっ……背に腹は代えられぬ。
王子、すまぬがもう少しだけ一緒に逃げてたもれ!
7:戦闘中

ナタク

この雨は――妖術か!
ひょっとして、キミが音に聞く皇天君かい?

皇天君

アハハッ、ご明察よぉん!
アチキは華の国の仙人、十天君が一人の皇天君。
この雨は私の宝貝、昂水陣で降らせたってワケ。

ナタク

昂水陣……みんな、注意してくれ!
陣中での彼は攻撃力が上がっているはずだ。
守りを固めないと危険だよ!
7:終了時

皇天君

……あらやだ、やるじゃない。
あの妖天君たちの侵攻から
東の国を守っただけのことはあるわねぇ。
……フフ。でも、残念だけどもう時間切れよ。
堕姫ちゃんたちはもうじき
邪仙郷の入口に到着する頃かしら?
アチキもそろそろ向かうとするわ。
それじゃ、アデュー!

モーティマ

どわっ!?
や、野郎……飛んでいきやがった!

ナタク

さすがに強者は引き際を知る……ってところか。
次に会う時は気をつけた方がいい。
皇天君は邪仙郷の十天君の中でも指折りの術者だ。
本気を出した彼の力はあんなものじゃないはずだよ。

ケイティ

ですが、臆してはいられません。
邪仙郷に連れ去られる前に王子を奪還しなくては。

アンナ

急ぎ彼らを追いましょう!
ナタクさん、道案内をお願いします。
8:逃避行の果て
8:開始時

皇天君

……堕姫ちゃんってばぁ、どうしちゃったのよぉ?
邪仙郷はもう目の前よぉ?
なのに、どうして立ち止まるのよぉ?

堕姫

……教えてたもれ、皇天君。
邪仙郷に着いたら、王子をどうするつもりなのじゃ?

皇天君

ウフフ……安心して。傷つけたりはしないわ。
王子と彼の軍を分断できた時点で、
アチキたちの目的は達成できたも同然だもの。
王子を手中に収めた今、東の国は骨抜きよぅ♪
彼がいなくなれば、あの国を支配する上での
障害なんてなにひとつないもの……ウフフッ!
でも殺すのも勿体ないから、
王子は生かしたまま堕姫ちゃんに進呈するわ。
人質としてなにかの交渉に使えるかもだしねぇ。
フフッ、そうなるまでは邪仙郷で
一緒に暮らさせてあげるわ。

堕姫

王子と、一緒に暮らせるのか…………。
……い、いや! そんなものはまやかしじゃ!
おぬしら邪仙どもの虜囚となった王子なぞ、
最早わらわの愛する王子ではないわ!

皇天君

ウフフ……選択肢があるとでも思ってるの?
王子を連れてアチキたち十天君から逃げ続ける、
なんて芸当は貴方には不可能なのよぉ?
何十回、何百回……いや何千回だったかしらねぇ?
貴方が邪仙郷からの逃亡を図り、失敗してきたのは。
フフ……もう消えたかしら? 先日首に刻んだ縄の痕は。

堕姫

あぁぁ……イヤじゃ、思い出しとうない……。
頼む、縄は……縄の話だけはやめてたもれ……っ!

アンナ

――そこまでです!
今度こそ王子を返していただきますよ!

皇天君

……しつこいヤツらねぇ。
でも、悪いけど王子を返すわけにはいかないの。
道士たち、ヤツらの息の根を止めてちょうだい!
8:戦闘中

皇天君

貴方たち……このアチキを怒らせたわね!

ナタク

くっ、なんていう豪雨……これが皇天君の真の力か。
みんな、気をつけてくれ! 陣中ではさらに
ヤツの攻撃力が上がっているはずだ!

ケイティ

皆さん、ご注意ください!
この豪雨では飛び道具の射程が
大幅に減少することが予想されます!

皇天君

さぁ堕姫ちゃん、王子と共に戦いなさい!
さもなければ二度と王子に会えなくなるわよぉ?

堕姫

う……うぅぅぅ……っ!
イヤじゃ……それだけはイヤじゃぁぁ……ッ!
すまぬ……王子、すまぬ……っ!!

王子

……ッ!?
ぅ……グ…………ォォオォ……ッッ!!!

アンナ

そんな……王子が私たちの敵になるなんて。

ユリアン

道士どもの目の色が変わった……。
英雄の覇気が彼らを奮い立たせてるってのか!
みんな、気をつけな! 士気が上がった敵は厄介だぜ?
8:終了時

アンナ

――王子ッ! 大丈夫ですか!?

皇天君

チャンスよ!
堕姫ちゃん、駆け寄ってきたその女を
人質に取るよう王子に命じなさい!

堕姫

…………ッ。
す、すまぬ、王子……その女を拘束するのじゃ。

アンナ

お、王子……?
そんな……嘘、ですよね?

王子

ぐ……ゥ……アン、ナ……逃げ、ろ……ッ!
お、おまえ、を……拘、束……したく……ない……ッ。
ぅぐっ…………う、ぅぁあぁあ……ッ!!

堕姫

――もういいッ!!
王子……もう、やめてたもれ……ッ!!

アンナ

…………堕姫さん?

堕姫

……ぐしゅっ……ひぐっ、うぅぅ……っ。
王子ぃ……わらわはもう、おぬしの……、
そんな辛そうな姿は……見とうないのじゃぁ~~っ!

皇天君

……堕姫ちゃん、貴方には失望したわ。
お望み通り、裏切り者の末路を辿らせてア・ゲ・ル♪
ウフフ……安心なさい。縄より痛いのは一瞬だけ――。

ケイティ

――少しは周りを見てから話をされてはいかがですか?

皇天君

……あらやだ。いつの間に囲まれちゃったのかしら?
ウフフ……確かにこれじゃあ分が悪いわねぇ。
仕方ないからここは撤退させてもらうわ――アデュー!

ケイティ

くっ……また雨ですか!

ナタク

豪雨を目くらましに使うとはね……。
すまない、みんな。皇天君を見失ってしまった。

アンナ

……いえ、いいんです。
私たちは一番大切な人を取り戻せたのですから。
皆さん……本当にありがとうございました。
ですが、まだ王子にかけられた術は解けていません。
ひとまず帰還いたしましょう。
堕姫さん、貴方も一緒に来ていただけますね?
8:終了後

堕姫

……目が醒めたようじゃの、王子。
ん? なぜわらわが此処にいるか、じゃと?
……そうか、おぬしは眠っておったからのぅ。
おぬしが眠っておるうちに、わらわは
おぬしの軍の者たちが復元してくれた宝貝を用いて
かけていた誘惑の術を解いたのじゃ。
……それが彼奴らとの和解の条件じゃったからの。
とにかく、もうおぬしはわらわからは自由じゃ。
今まで迷惑をかけて、本当にすまんかった……。
邪仙郷にさらわれて以来、術で誘惑した者を除けば
わらわに優しくしてくれた者は一人もおらなんだでのぅ。
じゃから、おぬしに惚れてしまったことは許してたもれ。
じゃが、おぬしらを見て思い知らされたわ。
術で無理やり誘惑したところで、
本物の絆には決して敵わんとな……。
二度と会わぬと誓うこと。それが一番の罪滅ぼしじゃ。
さらばじゃ、王子……こんなことを言う資格はないかも
しれぬが、おぬしと過ごせてわらわは幸せだったぞ……。
……ん、どうしたのじゃ、王子?
わらわにまだ話があるというのか?
……なに? お、王国で暮らせ、じゃと?
ち、血迷うたか!
わらわはおぬしを誘拐したのじゃぞ?
……悪いのは命令をした邪仙たち?
……わらわが命がけで命令に背いたおかげで助かった?
た、確かにそうかも知れぬが……。
……本当に……よいのか?
本当に……わらわを傍に置いてくれるのか?
う……うわーん! 感激じゃぁ~っ!
王子ぃ……わらわ、今後は術を使わずに
おぬしに好きになってもらえるように頑張るからの……。
じゃから……、
これからもず~っと、傍にいさせてたもれ……。
9:黄泉の門
9:開始時

堕姫

……確かこの辺りだったはずじゃ。
調子に乗って彼岸花を沢山バラ撒いてしまったのは。
さほど強力ではないとはいえ、
あの彼岸花には誘惑の術の効果が乗り移っておる。
邪仙どもに悪用される前に少しでも回収せんと……。

妖天君

――ふふ。堕姫、来ると思ってたヨ。

堕姫

ひぃッ!? その声は――妖天君!
それに、隣におるのは屍解仙か!
まさか、わらわを始末しに……?

屍解仙

カッカッカ……なにを驚いておる?
ぬしのように邪仙郷の掟に背いた者が
粛清されるのは自明の理であろう?

妖天君

キミにはボクたちの面子を随分潰されたからネェ。
裏切り者に相応しい凄惨な死を迎えさせてあげるヨ!

堕姫

あわわ……も、もうおしまいじゃぁ……。
あぁ、王子……死ぬ前にもう一度会いたかった……。

王子

…………。

堕姫

――のわっ!?
お……王子!? なぜ斯様な場所に……?

アンナ

よかった、間に合ったようですね。
堕姫さんが一人で華の国へ向かったという
噂を聞いて、急いで飛んできて正解でした。

妖天君

全く……目障りな奴らだネェ。
そんなに死んじゃいたいなら、
邪仙郷有数の術者が三人で相手してやるヨ!

ケイティ

三人……?
妖天君と屍解仙の他に誰かいるというのでしょうか?

アンナ

詳細は不明ですが、十分に警戒してまいりましょう。
王子、ご指示をお願いします!
9:戦闘中

妖天君

……そろそろ頃合いかねェ。
屍解仙、準備はできたカイ?

屍解仙

カッカッカ! 勿論ですとも!

妖天君

ホホっ、いい返事だネェ!
それじゃあ、そろそろ登場してもらうとしヨウ。
邪仙郷の異端と呼ばれた、あの男にネ――ホホイっ!



妖虎仙

……グ……ヴォオォォッ……!!

アンナ

あれは……妖虎仙!
屍解仙に殺められたはずでは……。

妖天君

魂パクを自在に操るボクの落魂陣。
その力を甘く見られちゃ困るネェ!

屍解仙

妖虎仙……生前は目障りとしか思わなんだが、
死後の魂を弄され、戦わされるとは難儀よのぅ。
今こそ邪仙郷の為、存分に力を振るうがよい!
9:終了時

妖天君

くっ……せっかく操った妖虎仙を。
キミたち、本当に邪魔ばかりしてくれるネェ!
まぁ、いいサ……無駄に戦力を費やすのは
通天教主様の望むところじゃないだろうし、
今日のところは撤退させてもらうヨ。

堕姫

はわわ……こ、怖かったのじゃ……。
すまぬ、皆の衆……。
わらわ、助けてもらってばかりじゃのぅ。

ユリアン

まったくだぜ。
危険なことは判ってんのに、
どうして一人でこんなところまで来やがったんだよ?

堕姫

う……す、すまぬ。
赤い彼岸花を各地に撒いたのはわらわじゃから、
邪仙たちに悪用される前に自分で回収したくての……。

アンナ

気持ちはわかりますけど……。
今後はこのようなことが起きないように
単独行動はなるべく控えてくださいね?
赤い彼岸花の収集なら、私たちも手伝いますから。

王子

…………(こくり)。

堕姫

お……王子。
おぬしもわらわに、一人で行動するなと申すのか?
(く……ふふっ……くふふふふっ♪
そこまで言われては仕方ないのぅ~。
もう一生おぬしから離れぬぞ、王子ぃ~っ♪)

アンナ

ふふっ。堕姫さん、なんだか嬉しそうですね。
それでは、帰還いたしましょう。

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