帝都を揺らす重装砲軍/会話

Last-modified: 2022-10-17 (月) 08:50:40
ネタバレ注意
1:帝都を覆う暗雲
1:開始時

レオナ

……おかしいな。
出迎えが一人もいないとは。

アンナ

お気になさらないでください。
私たちは気にしていませんから。

レオナ

だが、合同訓練のために派兵してくれた貴国に
歓迎もできんようでは、帝国の威信に関わる。

モーティマ

歓迎ったって、どーせ堅っ苦しい式典とかだろ?
んなもんハナから期待してねえっつーの。
しっかし、こう街並みを見てると思うが、
帝国の奴らって金持ちが多そうだよな……。

アンナ

モーティマさん、まさかこんな時に
盗みを働こうなんて思ってはいませんよね?

モーティマ

ば、馬鹿言うなよ! 火事でも起きねえ限り、
こんなでけぇ街で盗みを働くなんて無謀だっつうの。

ケイティ

おや、あれは……。

山賊

ヒャッハーッ! 燃やせ燃やせぇッ!
できるだけ騒ぎを大きくしてやろうぜぇーッ!

アンナ

……モーティマさん!

モーティマ

ち、違ぇよ! あんなアホみてぇな奴らが
このモーティマ様の部下なわけねえだろ!

レオナ

貴様ら……どこの馬の骨かは知らんが
帝都近郊で不届きを働くとはいい度胸だな。

山賊

おう、その顔は帝国の軍師レオナだな?
あんたの身柄にゃ懸賞金が出るって噂だ。
野郎ども、取り巻きどもをとっちめて
あの生意気そうな女を涙目にしてやろうぜ!
1:終了時

レオナ

……誰を涙目にするって?

山賊

ヒィィッ! す、すいやせんでしたーッ!!

ケイティ

……ふぅ。これで全員捕まえられたでしょうか。
しかし、帝国にもこのような不届き者がいるのですね。

ルーテ

はぁ、はぁッ……レオナ様、ご無事ですか?

レオナ

ルーテか。どうした、そんなに息を切らせて?

ルーテ

ご報告いたします。帝都および
その周縁の各地で小規模な騒乱が多数発生中です。

レオナ

なにッ!? 同時にか?

ルーテ

はい。
レオナ様たちが鎮圧なさったのもその一つかと。
軍内からも騒乱に加担する者が多数出ており、
兵が鎮圧にあたっていますが、正直手一杯の状況です。

レオナ

同時多発的な騒乱、か……報告感謝する。
私は陛下に会いに行く。お前は客人を安全な場所に――

アンナ

待ってください、私たちも協力します!

レオナ

な、なにを言う?
賓客である貴国の兵に手間をかけさせるわけには……。

ケイティ

しかし、私たちとしても放ってはおけません。
このままでは住民に被害が及ぶ可能性もありますので。

レオナ

そうか……では貴国には遊撃隊として、騒乱の鎮圧と
此度の騒動の首謀者の捜索を担当してもらいたい。
今回の件には裏で糸を引いている者が必ずいるはずだ。
道案内はルーテに任せる。ルーテ、頼んだぞ。

ルーテ

承知いたしました。
では王国の皆様、早速ですが参りましょう。
2:謎の重装砲兵
2:開始時

ルーテ

こちらが我ら帝国の兵がまだ派遣されていない
市街地となります。

ソーマ

あれ?
でも向こうに帝国の兵士さんの姿が見えますよ?

帝国兵士

…………。

ルーテ

あ、本当ですね。
私の知らない間に派遣されたのでしょうか?

リカルド

ふっ、意外と抜けたところのあるお嬢さんだな。
先程も何もない場所で転んでいたようじゃないか。

ルーテ

し、仕方がないではありませんか。
急いでいて服の裾を踏みつけてしまったのですから。

帝国兵士

――よし、全員揃ったな。
では予定通り、これより市街地の破壊を開始する。
だが、本作戦の目的は騒乱を惹起し、現体制側の
兵たちの注意を引きつけることだ。破壊は程々にな。

ルーテ

貴方たち、そこで一体なにをしているのですか!

帝国兵士

ん、見慣れん部隊だな?
まあいい。皆の者、早速敵襲だ! 出会え!

アンナ

兵士たちがこちらに向かってきます!
王子、ひとまず応戦しましょう!
2:戦闘中

ルーテ

あれは――!

???

おいおい……交戦の報せを聞いて駆けつけたけど、
あんたたち、大丈夫?

帝国兵士

フリーデ殿!
それが、所属不明の敵部隊が妙に手強くて……。

フリーデ

所属不明の部隊?
……よくわかんないけど、確かに強そうだね。
よしっ、あたしが相手してやる!
あんたたち、下がってな!
父様から貰ったばっかのコイツで
あいつらのド真ん中に砲弾をお見舞いしてやるよ!
2:終了時

フリーデ

あいててて……こりゃ予想以上だ。
所属不明の部隊、か……。
(そういえば最近、帝国の上の連中が
王国と合同軍事演習をするとか言ってたな……)
(……とすると、あいつらはあの皇帝陛下が
認めたっていう王子と、その手勢の兵ってわけか)
(正面からやりあうのは上策じゃなさそうだね)
……みんな、ここはひとまず撤退するよっ!

ケイティ

……行ってしまいましたね。
あの重装であの身のこなし、只者ではないようです。

ルーテ

まさか、あの人が……。

アンナ

ルーテさん、なにかご存知なのですか?

ルーテ

はい。兵科こそ異なりますが、
重装砲兵のフリーデといえば
同年代では名の知れた存在です。
ですが、彼女は与えられた任務においては優秀でも、
主体的に物事に取り組むのは苦手と聞いています。

ユリアン

つってもあの子、
さっきの隊の隊長よりも立場が上に見えたぜ?

ルーテ

数個の隊を率いるよう誰かに命じられたのでしょう。
彼女の戦術眼は確かだそうですから。
しかし、重ねて申し上げますが、彼女は自ら
騒乱を主導するような人ではないと思います。

ケイティ

とはいえ、フリーデという方が首謀者と
比較的近い立場にいる可能性は高そうですね。

アンナ

ええ。今後は騒乱の鎮圧を継続しつつ
彼女の動向についても注視していきましょう。
3:都に忍ぶ影
3:開始時

ケイティ

さぁ、追い詰めましたよ。
大人しく爆発物を渡しなさい。

忍者

……断る。

カゲロウ

解せんな。なぜ忍が帝国の騒乱に手を貸す?

忍者

そちらこそ、なぜ体制側の肩を持つのだ?
……それと、周りを見てみるがいい。

アンナ

――ッ!?
建物の周りに多数の忍者が!

ユリアン

チッ、囲まれたか。
お前は俺たちを罠に誘い込むおとりだったってわけだな。

忍者

ふふふ、気づくのが遅かったな。
……皆の者、かかれッ!
3:終了時

忍者

くっ、抜かったか。
だが、我らに与えられた任は果たせたはず……。

カゲロウ

任? なんのことだ?
ぬしらは誰かに雇われているのか?

フリーデ

――おーい、忍者さんたちー!
もうお役目は済んだから撤退していいよー!

ルーテ

フリーデさん!?

忍者

おお、フリーデ殿!
首尾よく要所の砦を落とせたのですな。

フリーデ

ああ。あんたたちがソイツらを
引きつけてくれてた間にね。ありがとなっ!

ルーテ

要所の砦が、陥落した……?

ケイティ

どうやら私たちは、敵の陽動作戦に
引っかかってしまったようですね……。

フリーデ

そんじゃ、あたしは砦に向かうから。
じゃーな、忍者さんたち!

ルーテ

お待ち下さい、フリーデさん!

フリーデ

……ん、誰だっけあんた?
こんな可愛い子、知り合いにいたかな?

ルーテ

直接の面識は……なんてことはともかく、
帝国に忠誠を誓った兵である貴方たちが、なぜ……。

フリーデ

……仕方ないだろ、そう命じられたんだから。
あの御方にあたしが逆らえるわけないし……。

ルーテ

あ……待って、フリーデさん!

アンナ

……とにかく、私たちも砦に向かいましょう!
彼女の話が本当なら、奪われた砦を奪還しなくては!
4:砦制圧戦
4:開始時

アンナ

砦の上に大勢の帝国兵が……。
あれが本当に全員敵なのでしょうか?

フリーデ

――来なすったね!
重装砲兵隊、砲撃用意っ!

ルーテ

フリーデさん、おやめください!
こんなこと、本心では望んではいないのでしょう?

フリーデ

……だったらどうだってのさ?

ベラート

何をためらっているのだ、フリーデ!
早くゴミ虫どもを始末せんか!

モーティマ

あ、あのハゲは……!

アンナ

ベラート伯爵!
謀反が発覚して帝国から逃走したはずでは?

ベラート

そういう貴方がたは王子殿下とその軍の方々ですな。
まったく、また私の計画を邪魔するつもりですか。
ふふふ……しかし純粋な帝国兵の部隊だけでは足りず
他国の兵にまで協力を仰がなければならないとは。
現体制下の帝国の治安維持能力には
疑問符をつけざるを得ませんなぁ?

ルーテ

……ベラート伯爵、口を謹んでください。

ベラート

……それに引き換え我が軍の強さはどうです?
難攻不落を誇る砦をたった一日で奪取したのですぞ?
これで遠縁とはいえ王家の血筋を引く私が、
「力こそ絶対」というこの国の主義の下でも
支配者に相応しいことが証明されてしまいましたなぁ?

ケイティ

それはどうでしょう?
卑怯な手段とはいえ砦を奪取したのはお見事ですが、
そのすぐ後に奪い返されるようでは片手落ちですよ?

ベラート

フン、貴様らごときに奪い返せるものか!
フリーデ! この虫ケラどもを始末するのだ!

フリーデ

……はい、ベラート様。
――行くよ、みんな! 攻撃開始ッ!
4:終了時

ベラート

ひ……ヒィイッ!
我が配下の選りすぐりの精鋭たちが……。
ふ……フリーデ! なにをやっておる!
家族が裕福に暮らせているのは誰のおかげか忘れたか!

フリーデ

うっ……申し訳ありません。

ベラート

言い訳は後で聞く! さっさと来い!
私を飛空船の隠し場所まで護衛するのだ!

フリーデ

は……はいっ!

モーティマ

待ちやがれ――って、もう行っちまいやがった。
相変わらず逃げ足の速ぇ野郎だぜ。

ルーテ

……思い出しました。フリーデさんは
ベラート伯爵家に代々仕える家系の出身です。
それと確か、6人兄妹の長女だったと記憶しています。

アンナ

伯爵を裏切れば家族にも累が及ぶから、
やむなく命令に従っている、ということですか。

レオナ

――くっ、一足遅かったか。
ルーテ、状況を説明しろ。

ルーテ

はい。各地の騒乱の首謀者が判明。ベラート伯爵です。
目的は現体制の転覆。王国軍の協力で占拠された
砦は奪還しましたが、伯爵たちには逃げられました。
あと、確か飛空船の隠し場所まで行くとか――

レオナ

――飛空船だと!?
ベラートの奴、そんなものを個人で所有していたのか!

ユリアン

どうするよ?
空に逃げられたんじゃ、さすがに追いかけようがねえぜ?

アンナ

いえ、ひとつだけ追いかける方法があります。
レオナさん、帝国の飛空船を出していただけますか?

レオナ

……やむを得ん、至急手配しよう。
王子、悪いが次の舞台は空だ。覚悟してくれ。
5:クリスマス・パレード
5:開始時

シャルロット

わぁ……神殿に雪が積もってますわ!

ベルニス

すごく珍しいことみたいですよ?
神殿の森に雪が降るのって。

アリサ

でも、とっても綺麗です♪
今年も素敵なクリスマスになりますように……。

シャルロット

……ところで、ずっと気になっていましたけれど、
アリサさんのその恰好はなんなんですの?

アリサ

こ、これはその、ある方からの頂き物で……。
とても暖かいので、つい着てきてしまったんです。

ベルニス

いいなぁ、可愛いサンタ服。
(防御力の面ではちょっと不安だけど……)

シャルロット

ずるいですわ、アリサちゃん!
私も早くサンタクロースの服を着て
皆さんにプレゼントを配りたいですわ!

アリサ

で、でしたら早いうちに
クリスマスツリーに使う木の
下見を終わらせてしまいましょう……ね?

ベルニス

あはは……そういえばそうでしたね。
お使いの途中だったこと、すっかり忘れてました。

シャルロット

あ! 皆さん、あの木なんてどうですの?
大きさも手頃だし、とっても元気が良さそうですわ♪

ベルニス

わ、確かに活きのいい木ですねぇ。
根っこなんてワシャワシャ動い、て…………えっ?

アリサ

きゃあぁぁッ!!
き、木の魔物ですぅッ!!

ベルニス

あわわ……か、囲まれてしまいました。

シャルロット

だ、大丈夫ですわ!
アタシこう見えて強いですから! 強いですからっ!

ベルニス

と、とにかく魔物たちを追い払いましょう!
神殿には指一本触れさせませんよ!
5:終了時

シャルロット

……ふぅ。さんざんな目に遭いましたわ。

ベルニス

でも、神殿が無事でよかったですね。

アリサ

皆さん、お疲れ様です。
お怪我があったら癒しますので、言ってくださいね?

シャルロット

…………(じーっ)。

アリサ

あ、あの……シャルロットさん?

シャルロット

やっぱり、アリサちゃんだけずるいですわ!
アタシも早くサンタクロースの服を着たいですわ!

アリサ

で、ですから、クリスマス当日には
みんなでサンタクロースの衣装を着て
プレゼントを配れますから……ね?

ベルニス

でも、いまみたいに急に魔物が
襲ってこないとも限りませんし……。
……決めました。私、当日に間に合うように
サンタクロースの鎧を作ってもらうことにします!

シャルロット

いまから間に合うんですの?

ベルニス

だ、大丈夫です……たぶん。
ふふっ。プレゼント配り、いまから楽しみですね♪

アリサ

はい。戦続きで疲れている皆さんを
少しでも楽しい気分にさせられたらいいな……。

シャルロット

ええ。そのためにもまずは、
クリスマスツリーの木の下見を終わらせますわよ!
6:氷上の妖魔軍
6:開始時

アンナ

この辺りでしょうか? ゴブリンたちが
妙な機械で通行人を襲っているというのは。

ケイティ

――っ!
王子、あれを!

ゴブリン

ギャギャッ! テスト、セイコウ!
シンガタ、スゴイ! ユキ、ナゲホーダイ!

アンナ

あれは……カタパルトでしょうか?

ケイティ

そのようですね。ですが石ではなく
雪を固めて投げられるように改良してあるようです。

カリオペ

雪合戦じゃ大活躍ってわけね。
なかなか面白そうじゃない♪

セシリー

……なんて言っている場合でもなさそうだぞ?

ゴブリン

ギャギャッ、ミツケタ!
ニンゲン、タオス!

レアン

望むところだ。元より奴らがこれ以上
通行人に危害を加えるのを許すわけにはいかない。

ケイティ

ええ。ですが敵は凍結した道の上を猛スピードで
滑走してくることが予想されます。慎重に対処しましょう。

アンナ

カタパルトへの警戒も忘れないでくださいね。
それでは王子、ご指示をお願いします。
6:終了時

ゴブリン

ギャギャッ!? カタパルト、コワレタ!
ハカセニ、オコラレル……。
タ……タイキャク! タイキャク!

アンナ

……ふぅ。なんとか追い払えましたね。
皆さん、お疲れ様でした。
しかし……どうやらあの雪玉仕様のカタパルトは
ゴブリン博士の発明品だったようですね。

ケイティ

やはりというか、なんというか……。
敵ながら彼の開発力は侮れませんね。

カリオペ

ねえ、それよりみんなで雪合戦しましょうよ。
あいつらが雪玉投げてるの見てたら
なんかウズウズしてきちゃった!

ダン

おお、いいじゃねえか雪合戦!
王子、勝負しようぜ!

アンナ

皆さん、私たちは遊びに来たんじゃありませんよ?

王子

…………。

アンナ

え、王子も雪合戦をしたいのですか?

王子

…………(こくり)。

アンナ

……もう、少しだけですよ。
滑って転ばないように注意してくださいね?
7:空に轟く爆砲
7:開始時

ディルク

報告! 船首前方に所属不明の飛空船を発見!

アンナ

飛空船……逃走中のベラートが
秘密裏に所有していたものでしょうか?

レオナ

所属不明の飛空船がそう幾つもあってたまるか。
全速力で接近するよう操舵手に伝えろ!

ディルク

はっ。只今――。

キャリー

ひぇえ~~っ!
ちょ、ちょっと速度出し過ぎじゃありませんか!?

フリーデ

――くっ、追いつかれたか。
でも、ベラート様には指一本触れさせない!
黒の軍団、準備しな!
こっちの飛空船に乗り込まれないように
あいつらをここで叩くよっ!

レオナ

黒の軍団だと!?
くっ……最近奴らの部隊の幾つかが消息を絶ったと
聞いていたが、ベラートたちに手懐けられていたか!

ディルク

敵の接近を確認!
黒の軍団、ならびに天馬騎士の部隊のようです!

アンナ

とにかく、飛来する敵を迎え撃ちましょう!
ベラートの身柄確保はそれからです。
7:戦闘中

フリーデ

――よっ、と!

ルーテ

な……天馬騎士の後ろに乗って飛んでくるなんて!
命が惜しくはないのですか? この高さから落ちたら……。

フリーデ

……命がけなんだよ、こっちは。
ベラート様の援助がないと、守りたいものも守れないんだ!
さぁ、誰からでもかかってきな!
コイツで雲の彼方までぶっ飛ばしてやるっ!
7:終了時

レオナ

よし、そこまでだ。
天馬騎士部隊、敵の飛空船に乗り込み船内を捜索しろ。

フリーデ

……残念だったね。
ベラート様はその飛空船には乗ってないよ。

レオナ

なんだと?

クラーラ

ほ、報告でし……でしゅっ!
船内を捜索しましたが、目標は見つかりませんでした。

レオナ

なにッ!? どういうことだ?

フリーデ

どうもこうも、ベラート様は最初から
この飛空船には乗ってなかったのさ。
あの御方にお仕えしてるあたしが乗ってるのを見て、
あんたらはまんまと騙されてくれたみたいだけどね。

アンナ

なッ……ではこの飛空船は、
私たちを欺くおとりだったのですか。

レオナ

なら、奴はいまどこに……?

フリーデ

ベラート様なら、今頃は大軍を率いて
手薄になった帝都を襲撃してるところじゃない?

ユリアン

チッ。俺たちはあのハゲ親父の
手のひらで踊らされてたってわけか。

フリーデ

――そんじゃ、あたしそろそろ行くから。
じゃーね!

ロイ

おわっ!? ま、待ちなさいお嬢さん!

ケイティ

くっ……まだ動ける天馬騎士がいたとは。
ですが、いまは逃げたフリーデさんを
追っている場合ではありません。

レオナ

ああ。可及的速やかに帝都に向かおう。
ベラート如きに陛下の威光を傷つけられてなるものか!
8:帝都を包む砲炎
8:開始時

ベラート

ふふ……思った通り衛兵もろくにいないようだな。
各地で同時に騒乱を生じさせ、敵軍の兵力を
分散させた甲斐があったというものだ。
諸君、よくぞ私の呼びかけに応じ参集してくれた!
いまこそ共に偽りの皇帝を打倒しようではないか!
素性卑しい傭兵上がりにどうして民が従おうか!
正当なる君主には正当なる血統が必要なのだ!
そのことを、王家の血筋を引くこの私と
私に忠誠を誓う諸君ら誇り高き騎士たちとで、
奴の首級を挙げることによって証明しようではないか!

帝国騎士

おおおおおッ! ベラート様、万歳ッ!

アンナ

お待ち下さい、ベラート伯爵!
いますぐ配下の兵たちに剣を収めさせてください!

ベラート

ちっ……もう戻ってきおったか。
フリーデめ……使えん小娘だ。

レオナ

貴様の高説は興味深く聞かせてもらった。
だが、たとえ御大層な血統書付きだろうと
私欲にまみれた豚に帝国を任せるわけにはいかん。

ベラート

お、おのれ……この期に及んでこの私を侮辱するか!
もう許さん! 皆の者、こやつらを粛清するのだッ!

帝国騎士

はっ! 仰せのままに!!

ユリアン

うおっ、なんだこいつら!?
やけに士気が高いじゃねえか!

ルーテ

……伯爵は遠縁とはいえ王家の血統を継ぐ者。
その彼の家系に代々使えている騎士の多くは
彼の命に従うことを名誉と考えているのでしょう。

ケイティ

あのベラート伯爵に王子のような
士気高揚の力があるということですか……。
だとすれば意外に厄介な相手かもしれませんね。

アンナ

王子、ここが正念場です。
なんとしてもここで敵軍を撃退し、
ベラート伯爵の野心を打ち砕きましょう!
8:戦闘中

フリーデ

はぁっ、はぁっ……フリーデ、只今戻りました!
ベラート様、ご命令を!

ベラート

……フン、小娘が。
どの面下げて戻ってきた? えぇッ!!

フリーデ

ひっ……!

ベラート

まったく……貴様がこいつらをもっと長く
引きつけていれば、今頃なんの苦もなく
皇帝の首を挙げられていたものを。

フリーデ

も、申し訳ありません……。

ベラート

言い訳はいい! さっさと敵を殲滅しろ!
できなければ……わかっているだろうな?

フリーデ

……承知いたしました。
必ずやご期待に応えてみせます!

ベラート

ああ、そうだろうとも。
病の父の医療費を当家からの借金で賄っている以上、
長女の貴様がしくじれば一家没落は必定だからなぁ?
8:終了時

ベラート

ぐぬぬぬぬ……こ、こうなったら!
フリーデ、こっちに来い!

フリーデ

――きゃッ!?
ベ、ベラート様、なにを……。

ベラート

ふはははは!
軍師レオナよ、いますぐ兵を退くのだ!
こいつの喉に刃を突き立てられたくなければな!

レオナ

貴様、気が狂ったか?
その娘は貴様自身の配下ではないか。

ベラート

えぇ、この娘は私の下僕。だが同時に帝国兵でもある。
若気の至りで過ちを犯したとはいえ、私を捕らえる為に
見殺しにしたとあれば、同胞たちはどう思いますかなァ?

レオナ

くっ……下衆めが。

皇帝

――剣を捨て娘を解放しろ、ベラート。
そうすれば貴様の要求通りにしてやる。

レオナ

陛下!? ご、ご無事でなによりです。
……しかし、お言葉ですが
この期に及んでベラートを見逃しては……。

皇帝

奴には兵一人分の価値もありはしない。
奴に従った兵たちも、そのことを思い知ったはずだ。

ベラート

ぐっ……この偽善者めが!
覚えておれ! その甘さがいずれ
貴様自身と貴様の天下の最期を招くのだ!

レオナ

……まだ国の支配を目論む意欲があるとはな。
他国に隠し持った財産でもあるのだろうか?
まぁ、奴への対応は後ほど検討するとして……。

フリーデ

……煮るなり焼くなり好きにしてよ。
理由はどうあれ、あたしが反逆者なのは事実だ。

皇帝

そうか。ではこの場で処断してやる。

ルーテ

お、恐れながら申し上げます!
彼女が逆賊ベラートに加担したのは、家族を守るため。
多少は情状酌量の余地があるかと……。

皇帝

……貴様はクビだ、フリーデとやら。
帝国を去り、そこにいる王子を新たな主とするがいい。
此度の件の償いも兼ねてな。

フリーデ

…………え?

レオナ

……だそうだ、王子。
すまんがこの娘を貴国で預かってはくれんだろうか?
彼女の家族の件については、我々がなんとかしよう。

王子

…………(こくり)。

フリーデ

う……ご、ごめんなさい……。
あたし、皆に迷惑かけて……でもこれからは、
絶対に裏切ったりしないって、誓います……。

アンナ

ふふ、ちゃんと反省されているようですね。
それでは、私たちはそろそろ帰還いたしましょう。
合同軍事演習どころではなくなってしまいましたしね。
9:オークゾンビ・パニック
9:開始時

アンナ

酷い……。
オークたちの野営地が壊滅状態に……。

ルナール

ね、言ったでしょ?
吸血鬼たちの大軍に襲われたって。

ケイティ

確かに、吸血鬼やその眷属たちの姿が
あちこちに見えますね……。

ルナール

あれ? でも隊を指揮してた
一番偉そうな吸血鬼がいなくなってる。

アンナ

一番偉そうな吸血鬼?

ケイティ

これだけの人数の吸血鬼を動員できる吸血鬼……。
ひょっとするとヴァンパイア公爵では?

アンナ

ヴァンパイア公爵……言われてみれば
こんなことができるのは彼くらいかもしれませんね。

ルナール

――危ないっ! オークがこっちに向かって
……って、あれ? なんか肌の色が変じゃない?

フーリ

――っ! 皆さん、気をつけてください!
あのオークたち、ゾンビ化しているみたいです!

ルナール

わわわ! 襲ってきたぁ!

アンナ

王子、ひとまず応戦しましょう!
9:終了時

ルナール

はぅ……怖かったぁ。

オーク

誰だ、お前ら!

アンナ

――オークの部隊! 生き残りがいたのですね。
私たちはここが吸血鬼たちに
占領されたという報せを聞いて駆けつけたのです。

オーク

お前らがあの卑怯者どもを倒したというのか。
……フン、余計な真似をしてくれる。

ケイティ

卑怯者ども? 吸血鬼たちのことですか?

オーク

……奴らは俺たちの根城に夜襲をかけたのみならず、
同胞たちの戦士としての魂を冒涜したのだ。
生き残った我々で弔い合戦をするつもりだったが、
お前らのせいでそれも台無しだ。

ダニエラ

ちょっとぉ、そんな言い方ないんじゃない?
せっかく私たちが仇を討ってあげたっていうのに。

オーク

……確かに、不死者と化したとはいえ同胞は同胞。
俺たちとしても手をかけるのをためらっていたのは事実だ。
うむ……礼を言おう、人間どもよ。
だが、戦士たちの弔いは俺たちの手で行う。
悪いがここを去ってはくれんか?

ケイティ

……吸血鬼たちを退治するという目的は果たせました。
いまはそっとしておいて差し上げましょう。

アンナ

そうですね……それでは帰還いたしましょう。
王子、お疲れ様でした。
……しかし、ヴァンパイア公爵は
着々と魔物を眷属とし、自陣に加えているようです。
今後も彼の動向には十分に警戒して参りましょう。

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