クラスのひとつ。「聖戦士」「聖騎士」と訳される事が多い。
戦士としての鍛錬と同時に、善なる神への信仰と修行により、神秘的な力を授けられた戦士系クラスのひとつ。
D&Dでは版により制限や細かい能力は異なるが、戦士としての戦闘能力に神官や聖職者としての能力が付加されたクラスとなっている。
クラスとしての在り方や能力から、ファンタジー作品では主役や副主役のようなイメージがある。もっとも、日本では『ソードワールドRPG』で起きた「ファリスパッシング」のように法や善を司る神だからといって好意的に捉えられるとは限らないが。
クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ
コンパニオン・ルール・セットで紹介されるクラスで、新和版では「聖戦士」と訳されている。
ローフルの放浪のファイターがネームレベルに到達した後に選択できるクラス。パラディンに転職するためには、ローフルの教会に忠誠を誓い、教会がそれを受け入れなくてはならない。
経験値表やTHAC0などはファイターと同じだが、以下のような様々な特典と制約が発生する。
- ファイターコンバットオプションが使用可能になる。
- 精神集中により「ディテクトエビル」が使える。
- 自分のレベルの1/3(端数切捨て)と同じレベルのクレリックとしてターニングアンデッドを行えるようになる。
- ウィズダムが13以上であれば、自分のレベルの1/3(端数切捨て)と同じレベルのクレリックとしてクレリック呪文を覚え、行使することができる。
- 自身が旅をする際に雇える人数に制限がある。
- 例外を除いて、助けを求めてくる者は受け入れ、助力しなければならない。
アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ
第2版ではウォーリアー系クラスのひとつ。
パラディンは人間しかなることができない。さらにアライメントはローフルグッド限定であり、必要能力値が4種類と多い。特にカリスマは最低17必要。
ヒットダイスはd10。最大9d8で、10レベル以降はHP+3。一般技能の基本数は4で追加修得は3の倍数レベル。さらにウォーリアー技能だけでなくプリースト技能を技能ポイントの追加なしで習得できる。武器技能の基本数は2で追加修得は4の倍数レベル。
プリースト呪文が使用できる。ただし、コンバット・ディビネーション・ヒーリング・プロテクションの4つのスフィアーに限定される。
さらに以下の特典と制限がある。
- 精神集中により「ディテクトエビル」を1ラウンドに1回使用可能。
- セービング・スローにボーナスを得る。
- 病気に耐性。
- レイオンハンド?という、触れることで傷を癒す能力を得る。
- 病気を癒す能力を得る。ただし1週間単位でしか使えない。
- 邪悪な相手からの攻撃に若干のペナルティを与える霊気(オーラ)を発する。
- ターンアンデッドを、自分のレベルより2低いクレリックとして行える。
- コールウォーホース?という能力。ただし、ウォーホース(戦馬)に限らず、パラディンと一心同体的な特別な関係の生物であればよい。基本的には、探索や試練を越えることで得られる。
- 聖剣(ホーリーソード)を手に持った時に、聖なる霊気を発して敵対的な魔法を中和する可能性がある。
- マジックアイテムの保有数は10個まで。
- 質素な暮らしを心掛け、余った金銭などは善の教会や団体に寄付しなくてはならない。例外は城塞を建築するための費用を貯蓄する時。
- 自身の所属する善の教会や団体に収入の一部を納める。
- 自身が雇う者はローフルグッド限定。
オフィシャルD&Dマガジン21号の「DREAMER'S LOG 夢見録」ではパラディンをロールプレイする際に注意すべき点として以下の4点を挙げている。
- “目的は手段を選ばず”等、目的を達成するために手段を正当化することを、自ら決して許さない。
- 常に誇りを持つ。しかし、これは他に対して威圧感を持って臨めというわけではないのだ。わけなく他人を威圧するのは単なる愚か者のすることである。
- 慈悲の心を忘れない。たとえ、敵対するものが悪しき者であっても、無条件で敵と断定せず、善なる心を取り戻せるよう助力する。
- 最低限、必要な際のみ剣を使う。
ダンジョンズ&ドラゴンズ第3版~第3.5版
属性は相変わらず秩序にして善のみだが、種族制限がなくなっている。
ヒットダイスはd10。技能数は劣悪で基本値は2、クラス技能の種類も非常に少ない。
全ての単純武器と軍用武器、鎧、盾に《習熟》している。セーヴィング・スローは頑健のみ良好で、反応と意志が低い。
得られる特殊能力はAD&D第2版とほぼ同じだが、得られるボーナスに【魅力】の修正値が加算されるものが多くなっている。また「悪を討つ一撃?」という、悪の属性を持つ敵に追加ダメージを与える能力を得た。
ただし、呪文を使えるのは【判断力】が高い場合でも最短で4レベル以降となる。
第2版のように能力値が低いとパラディンになれないというわけではない。しかし近接戦闘を考えれば【筋力】や【耐久力】が必要だし、できれば【敏捷力】も高いに越したことはない。各種特殊能力の恩恵を強く受けるには【魅力】が高い必要がある。パラディン呪文の行使には【判断力】を高くしたい。技能を考えれば知力も低くはしたくない。優先順位は前後するにしても、不要な能力は事実上存在しないと言っていい。
このためプレイヤーによりパラディンの何を重視するかが問われるようになり、能力値の配分に頭を悩ませる事になった。