【広野を行く】

Last-modified: 2024-03-10 (日) 05:12:46

概要

【アレフガルド】のフィールド(モンスターズ1では【まちびとのとびら】等のDQ1をモチーフとした扉)で流れる、多くの人がご存知の曲。
間違えられやすいが「荒野」ではなく「広野」である(どちらも「こうや」と読む)。
広大な大地をたった一人で旅する寂しさや不安感を表す、シンプルながらも味わいの深い曲。
「何度聞いても飽きさせない」という、すぎやまのドラゴンクエストの音楽の作曲の原点である曲とも言える。
 
構成=A:12小節、B:8小節
調=ニ短調(Dm)
BPM=104(SFC版)
拍子=4/4
 
演奏順序は「A→B→A→B→A」。
FC版ではAの部分の前半8小節が繰り返されるだけだが、
リメイク版やオーケストラ版では、AとBが交互に演奏され、Aの部分の旋律は現れるたびに違う楽器で奏でられ、それぞれが異なる色彩を見せる。
東京弦楽合奏団版とそれ以外のオーケストラ版でもアレンジが大きく違うし、SFC版もまた異なるアレンジがされている。
また、東京弦楽合奏団版では、Aの部分の前半8小節が2回繰り返されるため、Aの部分は実質20小節になっている。
【街の人々】と違う点は、メロディの変形が見られないこと。3回現れるAの旋律は、全てがキッチリ同じメロディで、キー(調)も変化しない。
1回目のAは、東京弦楽合奏団版ではヴァイオリンが、SFC版ではフルートが、オーケストラ版ではオーボエが旋律を奏でる。伴奏は非常にシンプルなアルベルティ・バス、簡単に言えば「ドソミソ型」であり、静かに奏でられる。
Bでは、楽器のダイナミクスを生かして、束の間、世界の雄大さを演出する。また、コントラバスによるベース音のアクセントが入る。
2回目のAでは、どのバージョンでも前半はヴィオラが、後半はチェロが、伸びやかに旋律を奏でる。伴奏は1回目と同じものに加えて、先程のBから引き続いてコントラバスによるアクセントが入る。
再びBを経て3回目のAでは伴奏の形が変わり、前半8小節は東京弦楽合奏団版ではヴァイオリンがソロで、SFC版ではオーボエが、オーケストラ版ではフルートが旋律を奏でる。SFC版とオーケストラ版は、1回目と3回目がちょうど逆の関係である。そして3回目のAの後半では、東京弦楽合奏団とオーケストラ版はヴァイオリンのトレモロが、SFC版ではピッコロが旋律を奏でる。
全く同じ12小節の旋律が3回も演奏されるが、奏でる楽器が異なるだけでもこれだけの味わいの違いを見せてくれるのだ。
 
DQ1以外では、DQ2、DQM1、キャラバンハート、テリワン3D、剣神で使われている。
ちなみにDQ3では、アレンジがなされた【アレフガルドにて】という曲が使われているほか、よく聞くとゾーマ戦の【勇者の挑戦】にこれのアレンジが一部使われているのが確認できるだろう。
DQ以外では、いたスト2、いたストSP、いたストDS、いたストWiiのアレフガルドステージで流れる。
更にはPC版ジーザスの娯楽室でも聞ける。
 
2017年1月29日の「題名のない音楽会」でDQ3の「アレフガルドにて」が演奏された際のこの曲の解説としては、中世ヨーロッパのドレミファソラシドの音階が使われる以前の音階が使われ、すぎやまこういち曰く、中世ヨーロッパを一人で行く不安な気持ちを表現した、とのことである。実際番組中の対比で流されたグレゴリオ聖歌「アヴェ・マリス・ステラ」の一節と同様の音階を感じさせるものであった。
これを音楽理論的に説明すると、この曲の基本的な調はニ短調の自然的短音階だが、一部にドリアンスケールが使われている。
ドリアンスケールとは教会旋法の一種。教会旋法とは、まさに番組中に流された「グレゴリオ聖歌」で使われた音階なのだ。
自然的短音階は、ドから演奏すると「ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭」となる音階である。
ドリアンスケールとは、ドから演奏すると「ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ♭」となる音階である。
この曲はレの音が基音なので、キーを合わせると、
自然的短音階では「レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ♭、ド」、ドリアンスケールでは「レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド」となる。
短調の自然的短音階とドリアンスケールを比べると、6番目の音が異なるのが分かるだろう。
短調の曲は、ともすると物悲しさばかりが強調されてしまいがち(同じくニ短調であるDQ2の【レクイエム】が良い例)であるが、
ドリアンスケールでは、この6番目の音の違いによって悲しさが少し薄れ、代わりにどこかスッとしたような清涼感が得られるのだ(番組中でも「冷たい風が吹き抜ける感じ」と解説されている)。
この曲がただ物悲しい感じではなく、「悲しさと爽やかな涼しさが混ざったような、どこか漠然とした荒涼感」を持つのは、この6番目の音の違いによるものなのである。

DQ1

フィールドで流れるBGM。
今でこそ割と当たり前となった「寂しげなフィールド曲」であるが、RPGというジャンルがまだまだマイナーだったDQ1当時では、このようにシンプルで寂しげな曲調は、まさに革命的であった。

この曲の是非を巡って【中村光一】【すぎやまこういち】が対立するエピソードはよく知られている。
中村は、他の曲は全て素晴らしいと評価していたが、この曲だけは当初は評価していなかった。
「冒険」という、いかにも勇気を込めた曲調を期待していた中村光一にとって、寂しさや不安感を前面に出したこの曲は、あまりにも予想外だったようだ。
中村は、「勇ましく、いかにも『冒険に行くぞ!』という感じの曲がいい」、「ゲームの『顔』となるフィールド曲には妥協したくない」と主張した。
DQ1開発時点で既に巨匠とも呼ばれるすぎやまに対して、中村は一歩も引かなかった。
 
ところが、ゲームと合わせて実際に曲を流しながら動かしてみたらスタッフには結構好評で、いつの間にかみんな口ずさむようになっていた。
その様子を見て、中村はこの曲の魅力を理解し、「寂しさや不安感も含めて『冒険』なのだ」と納得したという。
寂しさを感じさせる曲調は、意図されたものだったのだ。
 
勇猛果敢な力強いフィールド曲は、DQ3の【冒険の旅】までおあずけとなった(DQ2の【遥かなる旅路】は、オーケストラ版の転調後は雄大だが、ゲームではループが必要な関係上、ループ頭の調に戻って来られない転調はできないため、転調後を聴くことはできない)。
この曲がボツになっていたら、もしかしたらドラゴンクエスト(の音楽)は、全く違う方向に進んでいたかも知れない。

実際、近年のドラクエのイメージが身についている人が改めて初代ドラクエをプレイすると、BGMの物悲しさに衝撃を受けた、という経験談はよくあること。しかし、寂しさの中にも希望を感じさせるような独特の曲調は、冒険を重ねるうちに時代に耳に馴染んでくる感が強い。
 
なお、ガラケー版のDQ1とDQ2では曲の後半部分がカットされてしまっているので、DQ3の「アレフガルドにて」のような印象を受ける。

DQ2

前作の舞台でもあった【アレフガルド】のフィールドで使われる。
FC・NES・MSX・MSX2版では前作と同じくAの前半部分の繰り返しだが、音色が若干異なる。
なおアレフガルドでも元マイラの森の北東部などでは通常のフィールドBGM(【果てしなき世界】または【遥かなる旅路】)が適用される。BGM変更の判定は戦闘後にマップ画面に戻る時に行われ、その瞬間から音楽が切り替わる。
 
リメイク版ではDQ1と共通の曲となっている。

DQ10オンライン

イベント【竜王城の決戦】(2020年の再演)で初使用。その後も強敵撃破後のイベントシーンで使われている。
詳しくはこちらを参照。

DQ11

【エンディング】のテーマ【過ぎ去りし時を求めて】において、イントロの次に流れるのがこの曲。
DQ2のオーケストラ版に準拠しており、この曲の後は間奏を挟んで【果てしなき世界】に続く。
 
また、この曲と同様のメロディを持つ【希望はいずこへ】が登場している。

DQM1・テリワン3D

【まちびとのとびら】を始めとしたDQ1由来の旅の扉の下層で流れる。
GB版ではSFC版のアレンジをベースにしており、GB版DQ1・2で使用されたものと同一だが、初出はこちら。
それ以降の作品では交響組曲版をベースにした編曲になっている。

シアトリズム

難易度ふつう難しい激ムズ
総トリガー92165279

解放チャレンジI-2をクリアすることでミュージックプレイに追加されるFMS
背景は平原で、特殊な演出は無い。

ビルダーズ1

公式サイトと1章の【メルキド】編のフィールドで流れる。
また、オープニングムービーでも荒廃した大地を人々がさ迷うシーンで流れる。

ヒーローズ2

【闇の世界】全域で流れる。

ライバルズ

【ロトの血を引く者】のレベル3のスキルを発動した後に流れる。

ウォーク

2019年9~10月のDQ1イベントのクエスト受注中のフィールドで流れる。
 
また、2021年3~4月のDQ7イベントでも、別の世界へわたるクエスト受注中のフィールドで流れる。

ダイの大冒険(1991)

アバンの回想シーンなどで使われている。
また、「アバン~愛のテーマ」にもアレンジが使われている。

アベル伝説

主に各話の最後の締めとして使われた。
テンポが遅く、ドラム伴奏が入っているなど原曲とはイメージのかなり異なるアレンジ版である。