サルベージ

Last-modified: 2020-04-06 (月) 18:02:00

geocities
ハリポタ邦訳改善運動


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幼かったあのころ、私たちは英国のファンタジーに触れて育った。
ピーターパンが、メリーポピンズが、アリスが、くまのプーさんが
時にはロンドンの喧騒を、時には田園の穏やかな時間を私たちに運んでくれた。


大きかった文字が小さくなり、ルビが少なくなり、
指輪物語に出会い、アーサー王伝説に出会い、そして1999年。
私たちは新たにハリーポッターと出会った。


しかし私たちのハリーはJ.K.R.が何年もの時を費やし生み出した
本来のハリーではなかった。
マダム・マルキンの洋装店で作ったはずのローブはユニクロ製に思えるし
オリバンダーの店で買ったはずの杖は斉藤商店で買ったものだろう。


妙に日本ナイズされたインチキ英国人じゃなく、
ホグワーツに学び、ファイアボルトで自由に空を飛び、
ラテン語由来の呪文を唱える、本当のハリーに会いたい。


大人になっても色あせない空想の世界を、
私たちが幼かったころに夢中で何度も読み返したような美しい文章を、
憎たらしくも愛しい日本の子供たちに与えてあげたい。


大人でも楽しめる、ハリーポッターを。
子供が理解できる正しい文章を。
読者として当然の権利を。
出版社として当然の義務の遂行を、私たちは切望する。 


2005/12/24
ネタバレスレットより派生


2006/01/12
たたき台として一応スタート


2006/02/12
更新停止。今までありがとう。
4の800と修正まで終わってます。







1巻・賢者の石

g-1-1
原文:"were proud to say that they were perfectly normal,
    thank you very much."
邦訳:「おかげさまで、私どもはどこからみてもまともな人間です」
試訳:「わたしたちはかなりまともですけど?はい、さようなら。」

   1巻書き出しダーズリー夫妻の性質を表現した台詞。ここでの'Thank you very much'は自分たちに対してゴチャゴチャ干渉してくる人たちに対して「いいから、ほっといてください」 って突き放すようなニュアンスですごく失礼な言い方なのに邦訳ではかなり丁寧な言葉のように感じる。

g-1-2
原文:...and in their opinion there was no finer boy anywhere.
邦訳:…どこを探したってこんなにできのいい子はいやしない、
    というのが二人の親バカの意見だった。
試訳:

   ダーズリーの親バカぶりとおめでたさは行間から伝わってくるが「親バカ」に相当する言葉などどこにも入っていない。

g-1-3
原文:"Young Sirius Black"
邦訳:「ブラック家のシリウスっちゅう若者」
試訳:「ブラック家の息子のシリウス」(携帯版修正後)

   「a young Sirius Black」なら「シリウスちゅう若者」になるけど「Young Sirius Black」だから誤訳。
   携帯版は修正されたがハードカバーは以前のまま。
   「ブラックんとこのシリウス」「ブラックの倅(せがれ)のシリウス」のがハグリッドらしい気がする。

g-1-4
原文:"Ah, shut up, Dursley, yeh great prune,"
邦訳:「黙れ、ダーズリー。腐った大スモモめ」(4章P73)
試訳:

   ハグリッドのセリフ。
   prune=<俗>まぬけ、嫌われ者。great pruneは「大バカ者」の意味と思われる。
   干しスモモの言葉遊びかな?っていうか本当にスモモだと思ったのかな…

g-1-5
原文:"I know I don't have to."
邦訳:「しなくていいのはわかってるよ。」
試訳:「必要ないのはわかってるけど俺の気持ちなんだよ」

   ハリーが最初にダイアゴンに行ったとき杖を買う前の会話。
   「誕生祝を買ってやってなかったな」
   「そんなことしなくていいのに」
   「しなくていいのはわかってるよ。そうだ。動物をやろう」
   しなくていいのにって言われたら普通は「そんなこというなよ」みたいな返事をすることはあっても「しなくていいのはわかってるよ」というのは不自然。

g-1-6
原文:Dumbledore's silver hair was the only thing in the whole Hall that shone as brightly
    as the ghosts.(UK版P91)
邦訳:広間の中では、ゴーストとダンブルドアの白髪だけが同じようにキラキラ輝いているだけだった。(P182)
試訳:間中で、ゴーストと同じくらい明るく輝いているのは、ダンブルドアの銀髪だけだった。

   組み分け直後のシーン。
   「だけが~だけだった。」日本語が変。邦訳だと、輝いている物がゴーストとダンブルドアの髪しかないように感じる。

g-1-7
原文:And then, they had managed to find them,(UK版99)
邦訳:やっとクラスへの道がわかったら…(8章P198)

   ホグワーツでの授業が始まったあたり。
   場所のことを「クラス」とは言うのはおかしく感じる。「教室」などのほうが自然。
   それにこのthemは教室をさしていない。
   この前の文章では、動く階段、幽霊達、ピーブス、フィルチ等が教室移動の際にどんな邪魔をするかを語っているので(やや意訳だが) 「そしてようやく移動の際の様々な障害の避け方がわかったら」などとした方が訳として誠実かな。(findには経験から知るという意味もあるよね)

g-1-8
原文:When Harry knocked they heard a frantic scrabbling from inside and several
    booming barks.(UK版P104)
邦訳:ノックすると、中からメチャクチャに戸を引っ掻く音と、ブーンとうなるようなほえ声が
    数回聞こえてきた。(P207)
試訳:ハリーがノックすると中からせわしなくドアを引っかく音がして、低い鳴き声が何度も響き渡った。

   音が大きく反響してる状態。狭いハグリッドの小屋の中ででっかい犬(ファング)がウォンウォン大声で吼えてるのが響いて聞こえてきてると考えられる。
   犬はブーンとは吼えない(鳴かない)。

g-1-9
原文:For a moment, he was sure he'd walked into a nightmare-...(UK版119)
邦訳:しばらくの間、ハリーは自分が悪夢にうなされているに違いないと思った。(9章P236)
試訳:悪夢を見ているに違いないと思った。

   フラッフィーに顔をつきあわせてなぜうなされていると思うのかわからない。
   walked intoそのまま訳さないほうが日本語として自然な気がする。

g-1-10
原文:"Will you look at this? I've got some presents!"
    "What did you expect, turnips?"(UK版P147)
邦訳:「ねえ、これ見てくれる?プレゼントがある」
    「ほかに何があるっていうの。大根なんて置いてあったってしょうがないだろ」(P292)
試訳:「これ見てくれよ。僕プレゼントをもらっちゃったんだ!」
    「当たり前じゃないか。カブなんかもらってもしょうがないからな」

   なぜカブ→大根?というのはおいといて。
   原書ではまともにクリスマスプレゼントなんかもらったことがないので感激しているハリーと、冷めてるロンの対比がすごくおもしろい場面。
   ハリーのセリフの最後の「!」をとってしまったのはなぜだろう?
   原文にあふれているハリーの気持ち、はじめてまともなクリスマスプレゼントをもらったハリーの感激がまったく表現できていない。

g-1-11
原文:this one looked younger; he had white-blond hair and a palomino body.(UK版187)
邦訳:もっと若く、明るい金髪に胴はプラチナブロンド、淡い金茶色のパロミノのケンタウロスだった。
    (15章P376)
試訳:こちらはもっと若く見えた。髪と尾は淡い金色、胴体は薄い茶色(黄金色)だ。

   禁じられた森(ユニコーン探し中)でのフィレンツェの容姿についての記述。
   パロミノとは「たてがみと尾が淡黄色で体が黄金色の馬」または「たてがみと尾が白で胴が黄金色か淡黄褐色の馬」のこと。月毛ともいう。
   「パロミノ」では日本人には理解できない。
   このときの焦点は「パロミノとは?」。その謎は解消されたけど、日本人の感覚ではプラチナブロンドはマルフォイ父のような白に近い金髪。明るい金髪は黄色に近いイメージだと思われる。だから邦訳は、胴と髪の表現も逆にならなければいけないのではないか?金茶色のパロミノって白い白馬みたいなもん?

g-1-12
原文:"it'll really wipe the smiles off their faces if we win."
    "Just as long as we're not wiping you off the pitch,"(UK版P162)
邦訳:「……僕たちが勝って、連中の顔から笑いを拭い去ってやる」
    「グラウンドに落ちたあなたを、わたしたちが拭い去るようなハメにならなければね」(13章P321)
試訳:「連中を落ち込ませてやる」「あなたがピッチに落ちなきゃね」

   クィディッチの試合についての3人の会話。
   ハリーをグラウンドから拭い去るというのは日本語として不自然。
   両者の会話にwipe offが使われていて訳すのが難しいとこだがもう少し自然な日本語にしてほしい。
   「wipe the smile off one's face」は悔しがらせる、落ち込ませるみたいな意味の慣用句(らしい)。

g-1-13
原文:He recognized the figure's prowling walk. Snape,(省略)(UK版P165)
邦訳:あのヒョコヒョコ歩きが誰なのかハリーにはわかる。スネイプだ。(P328)
試訳:

   スネイプが審判をしたクィディッチの試合の後のシーン。
   ハリーは禁じられた森にこっそり向かうスネイプを見つける。
   prowlは辞書によれば、「こそこそうろつく、ぶらぶらと見て回る」。
   反面「ヒョコヒョコ」には、こっそり静かに行動していることが感じられない。
   その上、邦訳では「ヒョコヒョコ」がスネイプの歩き方の特徴であるように感じられる。
   フラッフィに噛まれて怪我をした時に、スネイプが片足を引きずっていたためだろうか?
   ちなみに試合のシーンは噛まれてから数ヶ月経っているのであのときの怪我は完治しているはずである。
   prowlingにはライオンやトラみたいな猫系の野生動物が獲物を探しながら歩き回る時にもよく使われ、なめらかな動きの歩き方の意味もある。「スネイプは足音を立てずにしなやかに歩いていた」のではないだろうか。
   recognizedは「分かる、知ってる」というより、「特徴から理解する(舐めたら甘かったから砂糖だと分かった、みたいな)感じ」では?邦訳はニュアンスが違うように感じる。

g-1-14
原文:slyly the poison trie to hide
     You will always find some on nettle wine's left side;(UK版P206-207)
邦訳:毒入り瓶のある場所は いつもイラクサ酒の左
試訳:イラクサ酒の左にはいつも毒入り瓶がある(毒酒はいつもイラクサ酒の隣)

   ハーマイオニーが解いたスネイプのクイズ。
   クイズ中では毒瓶が3本でイラクサ酒が2本。
   毒瓶が常にイラクサ酒の左にあるならイラクサ酒も3本なければいけない。
   必ずしも毒瓶の右にイラクサ酒がある必要はないということで 「イラクサ酒の左にはいつも毒入り瓶がある」が正しいと思われる。

【検証】

g-1-15
原文:"Quirrell said Snape-"
    "Professor Snape, Harry."
    "Yes, him-Quirrell said ...."(UK版217)
邦訳:「クィレルが言うには、スネイプが」
    「ハリー、スネイプ先生じゃろう」
    「はい、その人です…」(17章P441)
試訳:「クィレルが言うには、スネイプが」
    「ハリー、スネイプ先生といいなさい」
    「はい…クィレルがいうには…」

   ダンブルドアは「『先生』とつけなさい」という意味で言ったんであって、誰のことかわからなかったわけじゃないんだから、「はい、その人です」はおかしい。
   クィレルの呼び捨てはスルーなのか…。どうせ一年で辞めると思ってるのか、スネイプを大事にしてるのか。

g-1-16
原文:"Good afternoon," he said smoothly.
邦訳:「やあ、こんにちは」スネイプがいやに愛想よく挨拶をした。(16章P393)
試訳:「ごきげんよう、諸君」彼は抑揚なく言った。

   スネイプがトリオに話しかけるシーン。
   smoothly=1.滑らかな、すべすべした 2.円滑に動く、順調に進む。
   本文中のsmoothlyは「何事もなかったかのように」みたいなニュアンス?
   ハリーに愛想の良いスネイプなんてむしろ怖い。

2巻・秘密の部屋

g-2-1
原文:"You've forgotten the magic word," "I meant 'please'!"
邦訳:「君、あの魔法の言葉を付け加えるのを忘れたようだね」
    「僕、『どうぞ』のことを言ったんだ。べつに僕…」
試訳:「君、『魔法の言葉』を忘れてるよ」
    「『魔法の言葉』っていうのは『お願いします』のことだよ!」

   「フライパンのベーコンを取って来い」 と言ったダドリーの横柄な態度に怒ったハリーがつぶやいた台詞と、「magic(魔法)」という単語に反応して怒るダーズリー氏に言い返したハリーの台詞。
   "You've forgotten the magic word"は、子供に「プリーズっていいなさい」と注意する意味で英米では慣用的に使われるらしい。
   誤訳ではないがそのまま訳されても日本人には理解できなかった。

g-2-2
原文:"Pathetic."
邦訳:「悲劇的だよな」(P68)
試訳:「哀れなやつだ」

   止まり木から落ちちゃったよれよれのおいぼれふくろうエロールを水きり板に横たえながらロンがつぶやく台詞。 pathetic(哀れな)とpessimistic(悲観的な)を取り違えたのではないかという推測されてる。

g-2-3
原文:"Fat Myrtle! Ugly Myrtle! Miserable, moaning,moping Myrtle!"(UK版P103)
邦訳:「太っちょマートル、ブスのマートル、惨め屋・うめき屋・ふさぎ屋マートル!」(8章P201)
試訳:「デブのマートル、ブスのマートル、惨め屋・愚痴り屋・ふさぎ屋マートル!」

   moaningって確かにうめくって意味もあるけど、「ぶつぶつ文句をいう」という意味もある。
   マートルの場合はいつもぶつくさグチこぼしてばっかりいるので、むしろ後者。
   うめき屋だったら、なんか苦しくてうめいてるみたいで…。

g-2-4
原文:In the end, Professor McGonagall conjured a large fan out of thin air... (US版P152)
邦訳:結局マクゴナガル先生が空気で大きなうちわを作り上げて... (11章P303)
試訳:結局マクゴナガル先生が何も無いところから大きな送風機(扇)を魔法で出し…

   このconjureは魔法で何かを呼び出すこと。
   つまりマクゴ先生は空中から魔法でうちわを取り出したので「空気で作り上げた」というのは明らかな誤訳。
   out of thin air (何も無いところから)の解釈ミスかとも思われたがconjureの訳ミス。
   何か他の単語(たとえばcomposeなど)と読みまちがったままむりやり作文したのでは?と考えられる。

g-2-5
原文:"...soo hungry...for so long..."(UK版P105)
邦訳:「…腹がへったぞー…こんなに長ーい間…」(8章P204)←おどろおどろしいフォント
試訳:「…空腹だ…とても…ずっと…長い間…」

   ハリーにだけ聞こえる不気味な声、のはずだが全然怖くなかった。むしろギャグ。

g-2-6
原文:"Excuse me," said Snape icily, "but I believe I am the Potions master at this school."
邦訳:「おうかがいしますがね」「この学校では、我輩が魔法薬の先生のはずだが」
試訳:「失礼だが」「この学校では、私が魔法薬の教諭ではなかったかね?」

   ロックハートのでしゃばりに対するスネイプの台詞。
   「お伺いしますが」なら「私が先生なのではありませんでしたかね」と、軽い疑問形のようになりそうなものだけど。前半と後半の口調が全然違うのも違和感。またスネイプが自分のことを先生と言うのも違和感がある。

g-2-7
原文:and was followed by a second, very odd-looking man.(UK版P193)
邦訳:後ろからもう一人、チンケな男が入ってきた。(14章P385,386)
試訳:次に奇妙な格好の男が続いた。

   ファッジの表現。
   ファッジは「背の低い恰幅のいい体(portly=「風采の立派な」「恰幅のよい」「威厳のある」)であって、決してチンケな男ではない。
   odd-lookingは「チンケ(貧相なさま。器量の小さいさま」ではなく「奇妙な風采の」という意味。
   その後のほうにファッジがどういう格好してたか書いてある。
      He was wearing a strange mixture of clothes: a pin-striped suit,
      a scarlet tie, a long black cloak and pointed purple boots.

g-2-8
原文:Harry went to tip an armful of withered stalks onto the compost heap(UK版199)
邦訳:ハリーが萎えた(くさ)を一抱えも切り取って、堆肥用に積み上げていると(15章P397)
試約:ハリーは一抱えの枯れた茎を堆肥の山の上に捨てようとして~

   「切り取って」「積み上げる」にあたる単語が原文のどこにもない。
   tip(捨てる)とcompost heap(たい肥の山)の意味がわからなかったとしか考えられない。
   「くき」が何故か携帯版では「くさ」に変更。
   「さ」と「き」を見間違えたのか?だが携帯版発刊にあたって全文打ち直すわけではないと思われるので、意図的に「くさ」と変更したと思われる。
   個人的には原文は茎になってるけど、日本語で「茎を切り取る」はおかしい(茎だけの植物はないから)と思い、とりあえずルビだけ「くさ」にしたんだと思う。地球とかいてテラと読むみたいな感じ。

g-2-9
原文:"He'd look dreadful on the front cover. No dress sense at all.
    And the witch who banished the Bandon Banshee had a hairy chin. I mean, come on..."
    (UK版P220)
初版:「本人が表紙を飾ったら、とても見られたものじゃない。ファッション感覚ゼロだ。
    バンドンの泣き妖怪を追い払った魔女は兎口(みつくち)だった。
    要するに、そんなものですよ…」(16章P438)
66刷より:「本人が表紙を飾ったら、とても見られたものじゃない。ファッション感覚ゼロだ。
    要するに、そんなものですよ…」

   某国の某団体からの抗議により2004年より原書はharelip→hairy chinと書き換えられたが日本語版は一文ごそっと削除。
   兎口(うぐち)(としん)(みつくち)=口唇裂。
   買いなおした図書館、学校も多かったらしい。
   言葉狩りの犠牲者と言えなくもないが、別の言葉に置き換えるべきだったのではないか?
   上記削除部分はロックハートの容姿至上主義、差別的な面を強調するためにの台詞ではないんだろうか?

g-2-10
原文:Snape looked as though someone had just fed him a large beaker of Skele-Gro.(US版P236)
邦訳:スネイプときたら、たった今、誰かが大ビーカーになみなみと
    「骨生え薬」を飲ませたばかりという顔をしていた。(13章P351)
試訳:スネイプは、大きいビーカー一杯の『骨生え薬』を
    誰かに飲まされたかのような顔をしていた。

   ビーカーに飲ませないでくれぇ。

3巻・アズカバンの囚人

g-3-1
原文:runner-beans
邦訳:お隣のインゲン豆の(つた)を透かすように
試訳:

   「Runner Beans(ベニバナインゲン)」
   イギリスで夏によく食べられるマメ科植物(ものすごく大きなさやいんげんみたいな感じ)。
   育ちやすく家庭菜園で育てる人も多い。
   ダーズリー家のお隣さんは庭でRunner Beansを育てていて、両家の庭の間でRunner Beansがラティス・トレリス(高い支柱みたいなのにつるを這わせて栽培するけど、本来は生垣用ではない)のような役割になっている。
   そのラティス代わりのつるの隙間から脱獄囚が潜伏しているんじゃないかとペチュニアが隣の様子を伺っている様子、と思われる。
   また「つた」になっているルビは間違いで「つる」が正しい(「つた」は葡萄などの植物を指す)。

g-3-2
原文:someone or something was standing in the narrow gap between the garage
     and the fence behind him.(UK版P30)
邦訳:ハリーの背後の垣根とガレージの間の狭い隙間に、誰かが、何かが立っている。
    (3章P45)
試訳:ハリーの背後のフェンス(木戸)とガレージの間の狭い隙間に、誰かが、何かが立っている。
                       ・・・・・・・・・
原文:and turned around quickly to stare at the alleyway between
    the garage and fence.(UK版P31)
邦訳:そして慌てて振り返り、ガレージと石垣の間の路地を見つめた。(3章P47)
試訳:そして慌てて振り返り、ガレージとフェンス(木戸)の間の路地を見つめた。

   マグノリア・クレセント通りに立つハリーをシリウスがこっそり覗き見る場面。
   シリウスはガレージとfenceの間の路地に隠れているわけだが同じfenceが、P45では「垣根」、P47では「石垣」と訳されている。
   イギリスの普通の住宅街でfenceといったら木製のフェンスだと思う。
   垣根はhedges、石垣ならstone wall。

g-3-3
原文:Stan came back downstairs, followed by a faintly green witch wrapped in a travelling cloak.
    (UK版3章P32)
邦訳:スタンが戻ってきた。その後ろに旅行用マントに包まった魔女が
    緑色の顔を青くしてついてきた。(3章P50)
試訳:スタンが戻ってきた。旅行マントに身を包み、かすかに青ざめた魔女が後に続いた。

   ナイトバスのシーン。
   greenは気分が悪くて顔色悪くなってる状態。
   ナイトバスの運転が乱暴で車酔い状態の魔女ってこと。

g-3-4
原文: ...,each of which was driven by a furtive-looking wizard,
    wearing a suit of emerald velvet.(UK P57)
邦訳:二台ともエメラルド色のビロードのスーツを着込んだ胡散臭い魔法使いが
    運転していた。(3巻5章P93)
試訳:

   ハリーたちが車でキングズ・クロス駅に向かう場面。
   furtive-lookingは胡散臭いではなく、「人目を忍ぶような様子」という意味では?

g-3-5
原文:a fat, dapple-grey pony(UK版P77) / his pony(UK版P77)
邦訳:太った灰色葦毛の馬(3巻6章P132) / 仔馬(3巻6章P132)
試訳:灰色に黒いぶちがある太ったポニー / ポニー

   このponyは同じponyだと思われる。
   またponyは日本人にはポニーで通じるし、仔馬ではなく小型種の馬。一般的に「馬」と呼ばれているものとは種類が違う。
   dapple-greyを灰色葦毛としたのは間違いじゃないけど子供にはイメージしにくい。

g-3-6
原文:Ron repeated, looking significantly at Harry.
    He turned around and saw Malfoy watching closely.(UK版P96)
邦訳:ロンが曰くありげな目でハリーを見た。
    ロンが振り返ると、マルフォイがジーッと見つめていた。(3巻7章P167)
試訳:「ここからあまり遠くない…」ロンはハリーに目配せしながらシェーマスの言葉を繰り返した。
    ハリーが振り返るとマルフォイがじっと見つめていた。

   2回目の「ロンが」は「ハリーが」の間違い。
   ハリーとロンが向かい合わせで座っており、ハリーの後ろにいるマルフォイの視線に気がついたロンがハリーに目配せして、ハリーが振り向くとマルフォイがハリーを見ていた、ということ。
   この直前にシェーマスが、あまり遠くないところでブラックが発見されたという話をしていてロンがその言葉を繰り返す。それは、すぐそこにマルフォイがいるぞ、という意味もこめられてたんじゃないかと思う。
   それからrepeatedの訳も抜けてる。

g-3-7
原文:"Many witches and wizards, talented though they are in
    the area of loud bangs and smells and sudden disappearings,
    are yet unable to penetrate the veiled mysteries of the future,"
邦訳:「いかに優れた魔法使いや魔女たりとも、派手な音や匂いに優れ、
    雲隠れ術に長けていても、未来の神秘の帳を見透かすことはできません」(P136)
試訳:「世の多くの魔法使いや魔女達は、耳障りな音をたてたり
    嫌なにおいを出したり、突然消え失せたりすることはお得意ですが
    神秘のベールに覆われた未来の謎を見通すことはできません」

   トレローニーのセリフ。特に「派手な音や匂いに優れ」という日本語の意味が不明(特に慣用的な英語もみあたらない)。
   トレローニーが占いのできない一般の魔女や魔法使い達のことを貶めて「嫌な匂い~」等と言っているのかと思われる。

g-3-8
原文:this extraordinary pronouncement (UK版P79)
邦訳:この思いもかけない宣告(6章P136)
試訳:

   上記トレローニの台詞の後、塔から降りないと宣言したところ。
   ちょっと邦訳がなくてよくわからなかったので自分で考えてください

【議論詳細】

g-3-9
原文:"Oooooooooh!"
邦訳:「おおおおおおおおおっ!」(激しく強い感じ)
試訳:「ふぅーんー………」

   トレローニーの授業でのラベンダー・ブラウンの台詞(ハーマイオニーがトレローニー先生の授業をやめた場面)
   最近の若い女の子が、何かにすごくナットクしたときに発する声で、日本語ならすごく力を抜いて「あぁ~~、そうかぁ~~~」みたいなニュアンスの言葉。発音的にも「おお」じゃなくって、「うぅ~~~」って口尖らせて笛ふくような音。「ふぅ~~~~~~ん」みたいな感じかな。

g-3-10
原文:"You asked us a question and she knows the answer!
    Why ask if you want to be told?"
邦訳:「先生はクラスに質問したじゃないですか。ハーマイオニーが答えを知ってたんだ!
    答えて欲しくないんなら、なんで質問したんですか?」
試訳:「先生はみんなに質問しました。ハーマイオニーはその答えを知っているんです!
    答えて欲しくないのならなぜ質問するんですか?」

   いつものようにハーマイニーの発言を認めないスネイプに対し、キレたロンのセリフ。
   usをクラスとするのも一般の日本人にはピンとこないと思うが、原文の時制が無意味に変えられているためかなんとなく読みにくい。

g-3-11
原文:zoomed away.
邦訳:(ピーブスが)ズーム・アウトして消えうせた。(P173)
試訳:あっという間に(ビューンと)飛び去った

   動詞のzoomはブーン(ビューン)という音を立ててすばやく動く飛ぶ、飛行機などが急上昇するという意味だと、どの辞書にもある。
   ピーブスがzoom awayしたのなら誰がどう考えてもすばやく飛び去ったなどと訳すのが普通。

g-3-12
原文:abnormally large nose
邦訳:異常なお節介(14章)
試訳:他人事にその非常に大きな鼻を突っ込むのをやめてください

   忍びの地図に浮かび出てきたスネイプへの文章のうちのムーニーの部分。
   ワームテールの「髪を洗え」と同じく個人の容姿攻撃入ったイヤミな言葉遣いだと思うんだけど、そこが「異常なお節介」と濁されてるのはイマイチ。
   意味は通じるけど、あえて「鼻」に言及した部分は活かしておいてほしい。
   5巻の過去エピソードでもけっして「いい子」じゃないルーピンの姿は出ているし、 こういうムーニーにもイヤミなところがあるってことを表現してる部分はそのまま残してほしい。

g-3-13
原文:"Silence! " snarled Snape.
邦訳:「だまれ!」スネイプの唇がめくり上がった(P223)
試訳:「黙れ!(口を閉じたまえ)」スネイプが唸るように言った。

   snarledは唸ったり、がみがみときびしいことを言う感じ。というか唇とはなんの関係もない。
   犬が歯をむき出して唸る意味もあるが、スネイプがそこまで感情をむき出しにして怒るのはキャラクターのイメージに合わない。
   日本語としても「唇がめくれあがった」や「スネイプが唇をめくり上げた」であるべきで読みにくい。(携帯版ではめくりあげるに変更)
   また、3巻のボガートの授業の前、ネビルを侮辱する所でも'Snape's lip curled,'を「スネイプの唇がめくれ上がった」と訳されていたり(侮辱する表情としては口元を歪めたなどが適切)、2巻4章マルフォイ氏とボージン氏の会話のあたりでの'Mr. Malfoy's lip curled.'は「マルフォイ氏の口元がニヤリとした」と他のキャラクターの唇の表現が普通であることから、邦訳版ではスネイプは「唇がめくれあがる」癖があると脚色・設定されているらしい。
       ※他の唇の表現
       原文:Snape's lip curled.(UK版323)
       法文:スネイプの唇が冷笑した。(5巻上17章P572)
       試約:スネイプの唇が歪んだ。
       査察シーン。
       「唇が冷笑した」という日本語も変だが「冷笑」にあたる単語がない。
       curl one's lip=口元をゆがめる(▼軽蔑の表情)
       原文:Snape's lip curled,
       邦訳:スネイプの唇がめくれ上がった。(3巻)
       原文:the familiar sneer curling his mouth.
       邦訳:スネイプの口元が、お馴染みの嘲りで歪んだ。(5巻25章)
       原文:Snape's lips curled into a sneer.(1巻)
       邦訳:スネイプは口元でせせら笑った。

g-3-14
原書: Everyone said the Dementors were horrible,
but no one else collapsed every time they went near one
no one else heard echoes in their head of their dying parents.
For Harry knew who that screaming voice belonged to now.
He had heard her words, heard them over and over again during the night hours in the hospital wing while he lay awake, staring at hte strips of moonlight on the ceiling.
When the Dementors approached him, hi heard the last moments of his mother's life, her attemps to protect him, Harry, from Lord Voldemort, and Voldemort's laughter before he murdered her...
Harry dozed fitfully, sinking into dreams full of clammy, rotted hands and petrified pleading, jerking awake only to dwell again on the sound of his mother's voice.
邦訳: 吸魂鬼は恐ろしいとみんなが言う。
しかし、吸魂鬼に近づくたびに気を失ったりするのはハリーだけだ…
両親の死ぬ間際の声が頭の中で鳴り響くのはハリーだけだ。

それもそのはずだ。ハリーにはもう、あの叫び声が誰のものなのかがわかっていた。(P239)
試訳:

	吸魂鬼は恐ろしいと皆が言う。

しかし他のみんなは吸魂鬼が近づくたびに意識を無くしたりはしない…両親の最期の声が頭の中でこだまするようなこともない。
そう、あの叫び声の主はだれなのか、ハリーにはもう、わかっていたのだ。
吸魂鬼のせいでニンバスから落ちてしまったハリーの心境をつづるところ。
原文を読むと邦訳で2回繰り返されている「~のはハリーだけだ」が無神経な意訳であることがわかる。
「それもそのはずだ」に当たる言葉もない。

【議論詳細】

g-3-15
原文:"YOU'D BEEN PASSING INFORMATION TO HIM FOR
    A YEAR BEFORE LILY AND JAMES DIED! YOU WERE HIS SPY!"
    (怒鳴っているから大文字)
邦訳:「おまえはジェームズとリリーが死ぬ一年も前から、『あの人』に密通していた!
    おまえがスパイだった!」
試訳:「お前はリリーとジェイムズが死ぬ一年も前からヴォルデモートに情報を流していた!
    お前は奴のスパイだった!」

   クライマックス、叫びの屋敷でピーターの正体を暴いたシリウスがブチ切れる場面。
   邦訳はHIM が「あいつ」でも「あの男」でもなく勝手に『あの人(You-Know-Who)』に変えられている。
   『あの人』という呼び方はヴォルデモートを恐れている証であり、それを登場当初から使っているかいないか ― それは原作者が提示した、キャラを理解する上での重要な鍵のひとつである(もちろんシリウスは『あの人』と言うようなへたれではない)。
   翻訳者は「あいつ」などでは誰を指すか子供にはわかりにくいと思い、よく使われていた『あの人』にしたのかもしれないが、キャラクターを大切に思っている人間にとってはショックであり無神経ともとれる訳であった。
   仮に『あの人』がYou-Know-Whoを表していなくても親友を殺され人生をめちゃくちゃにされた大の男が怒りの頂点で使う言葉としておかしい。
   また間違いではないが、「密通」は男女の秘め事としての意味合いのほうが一般的である。

4巻・炎のゴブレッド

g-4-1
原文:the drawing room
邦訳:居間
試訳:応接室、客間

   冒頭のリドル家にまつわる話のあたり。
   その近辺でも珍しいぐらいの豪邸だったんだから、当然立派な応接間があったはず。
   リドルがタキシードで亡くなっていたことから「もしかしたら若き日のヴォルデモートは客人として晩餐に呼ばれるほどの待遇を受けていたのかもしれない」ということを示唆している重要な記述。応接室(客のための部屋)とするか居間(家族のため部屋)とするかで印象は大きく変わる。

g-4-2
原文:some of its windows boarded(UK版P7)
邦訳:窓にはあちこち板が打ち付けられ(1章P6)
試訳:あちこちの窓には板が打ち付けられ

   邦訳だとひとつの窓にいくつもの板が打ち付けられてるみたいだが、リドル館ってのは窓がいくつもあるような大きな屋敷で、「たくさんある窓のうちいくつかに板が打ち付けられてた」が正解。

g-4-3
原文:
邦訳:暗い顔で目を見交わした(P8)
試訳:暗い表情でお互い目と目を見交わした

   「暗い顔」で「目を見交わした」という組み合わせが日本語としてなんとなくすわりが悪い。
   dark eyesは黒、濃い色の目を表す時ももちろんあるが、暗い表情で目と目を見交わしている人たちの目がみんな黒かった、ってのは考えられない。
   要は、言葉の表面的意味ではなく、前後の脈絡の中で行間の意味、背景となっている状況をとらえるのが肝要ってことですね。

g-4-4
原文:"One more curse"(UK版16)
邦訳:「もう一度死の呪いを…」(P21)
試訳:「もう一度、呪いを」

   原文は単にOne more curse。「死の」なんて解説はない。

g-4-5
原文:Frank Bryce crumpled(UK版19)
邦訳:フランク・ブライスはグニャリとくず折れた。(P26)
試訳:フランク・ブライスは崩れるように倒れた。

   頽れる=気落ちする、がっかり/崩れるように倒れる、座る/衰弱、老朽
   漢字がちがう。精神的に弱るという意味もあるのでニュアンスが違う気がする。
   グニャリにあたる単語が原文にない。もっとさっぱりと「フランクは倒れた」くらいでいいのでは?
   (3巻12章P314にも同様。携帯版では「崩折れた」→「くずおれた」と平仮名に変更)

g-4-6
原文:"the previous year"
邦訳:「一年前」(2章)
試訳:「前の学年のとき」

   ワームテールにハリーが初めて会った時期が「一年前」となっているがストーリに合わなくなる。

g-4-7
原文:"At the end of last year"
邦訳:「去年の暮れだったね?」(10章)
試訳:「去年の学年末」

   トレローニー先生が本物の予言をしたときのこと言ってるが、暮れでは12月になってしまう。

g-4-8
原文:"He played Quidditch for England himself, you know."(UK版P73)
邦訳:「~自分がクィディッチのイギリス代表選手だったし~」(上7章P121)
試訳:

   アーサーのセリフ。
   単なるミスだろうか?ちゃんとイングランド代表てなってるとこもあるし。

g-4-9
原文:"Missing your half-breed pal?"(UK版P385)
邦訳:「混血の仲良しがいなくて寂しいのか?」(下P129)
試訳:「雑種の仲良しがいなくて寂しいのかい?」

   ドラコからハリーへのセリフ。ハリーは混血(half-blood)で、half-breed pal=ハグリッドなので、ここは誤訳だと思われる。

g-4-10
原文:please-men
邦訳:慶察(11章)
試訳:

   マグル用語の言い間違い。
   please→喜→慶…だろうか?でも発音が「けいさつ」になってしまっては意味がない(話し言葉だから)。
   そもそも日本語版魔法省には魔法警察部隊(Magical Law Enforcement Squad)(3巻で登場)という機関がある。魔法使いは「警察」という言葉を知ってるはずでネタ自体が破綻してる。

g-4-11
原文:"Perhaps Amos is suggesting," said Mr Crouch, cold anger in his every syllable,
    "that I routinely teach my servants to conjure the Dark Mark?" (UK版P122)
邦訳:「おそらく、エイモスが言いたいのは」
    クラウチ氏が一言一言に冷たい怒りをこめて言った。
    「私が召使いたちに常日頃から『闇の印』の創り出し方を訓えていたとでも?」(上P211)
試訳:「おそらくエイモスは」
    「私が召し使いたちに日ごろから『闇の印』を出現させる方法を教えていたと言いたいんだろう」

   原文ではちゃんと繋がってるが、邦訳のクラウチの台詞はつながってない感じがする。
   邦訳はクラウチのセリフのthatが抜けてるような感じがする。
   三行目を「私が召し使いたちに日ごろから『闇の印』を出現させる方法を教えていたということかな?」 とすればだいたい意味はつながると思う。
   訓えるは教えるでいいと思う。なぜ訓えるにしたのか不思議。

g-4-12
原文:"Dimitrov skins Moran - deliberately flying to collide there
    and it's got to be another penalty."(UK版PB8章P126)
邦訳:「ディミトロフがモランを赤むけにしました--わざとぶつかるように飛びました--(略」(P173)
試訳:「ディミトロフはモランに接触しかけた、
    ぶつかろうとしてわざといったものです。これはもうひとつペナルティをとらねばなりません」

赤剥け=皮膚などが擦りむけて赤くなっていること。また、その部分。

   skinにはサッカーなどで敵のディフェンスをすりぬける意味もあるのでここでは「接触しかけた」だと思われる。それをskin→皮をはぐ→「赤むけ」と誤訳した?
       ※他の「赤むけ」
       原文:"So you've got your exams coming up, haven't you?
           They'll be keeping your noses so hard to that grindstone,
           they'll be rubbed raw,"(UK版P204)
       邦訳:「先生たちは君たちの神経を擦り減らして赤剥けにする」(5巻上12章P360)
       試訳:「だからテストが待ちかまえているじゃないか。
           5年生は徹底的に勉強に集中させられるよ。
           神経がやられちゃうぜ」
       keep your nose to the grindstoneは慣用表現で「気をそらすことなく一生懸命やること」(引用:クリストファー・ベルトン著作)(grindstone(砥石)で研磨する仕事は気をそらすと大怪我をしてしまうかららしい。)
       3行目のbe rubbed rawは「神経を逆なでされる」という意味。
       つまりフレッドはOWLを控えたハーマイオニーに「試験勉強は(他になにも出来ないくらい)非常にハードだ」、「(適当にサボらないと)神経がもたない」と例のあぶないスナックを勧めているんだろう。
       原文:Several grimy portraits had been scrubbed, much to the displeasure of
           thier subjucts, who sat huddled in their frames muttering
           darkly and wincing as they felt their raw pink faces.(UK版208)
       邦訳:煤けた肖像画の何枚かが汚れ落としされた。
           描かれた本人たちはこれが気に入らず、額縁の中で背中を丸めて
           座り込み、ブツブツ文句を言っては、赤むけになった顔を触って
           ギクリとしていた。(4巻15章P367)
       試訳:何枚もの汚れた肖像画がゴシゴシ洗われた。描かれた本人達は大いに
           迷惑がり、額縁の中で縮こまってぶつぶつ文句を言ったり
           ひりひりするピンクの顔に触れては顔をしかめている。
       ボーバトンとダームストラングが来るので城が大掃除され、長年良い感じに汚れていた肖像画の人物たちがいきなりきれいな顔にされて嫌がって落ち着かない様子が描かれているわけだが、原文にあるraw pink facesの中で一番注目しなくてはならないのはrawの部分。
       これはまさに皮膚がすりむけてたり、すりむけないまでもこすれてヒリヒリ痛くなってる状態の時によく使う表現。つまり肖像画さんたちもゴシゴシこすられすぎて、本当にヒリヒリ痛かったんだと思われる。
       今まで出てきた中では一番「赤むけ」に近いと言えるが、「きれいになったピンクの顔」とでも訳すのが無難。
       またwinceには「顔をしかめる」という訳語があるのだから「ギクリ」ではなくそれを使うべきだと思う。
       原文:As they entered March the weather became drier, but cruel winds skinned
           their hands and faces every time they went out into the grounds.(UK版P442)
       邦訳:三月に入ると、天気はからっとしてきたが、
           校庭に出ると風が情け容赦なく手や顔を赤むけにした。(4巻下27章P232)
       試訳:三月に入ると天気はからっとしてきたが、風はまだ身を切るように冷たく、
           校庭に出るたびに手や顔がひりひりと痛んだ。
       「赤むけにした」になっているのはskinned。
       クィディッチのようなスポーツの試合ではskinは「敵の間をすり抜ける」 「接触しかかる」みたいな意味でよかったと思うが、ここではたぶん 冷たい風に擦られて手や顔が痛めつけられるということでいいと思う。
       それでもやっぱり「赤むけ」という言葉は変な感じが否めない。
       カラッとした天気っておかしいと思う。空気が乾燥してるという意味?晴れの日が多くなったのかな?

g-4-13
原文:Snape made a soft noise of impatient disbelief in the shadows. (UK版242)
邦訳:スネイプは、薄暗がりの中で、「信じるものか」とばかり、イライラ低い音を立てた。
    (上17章P426)
試訳:(?)暗がりに立っているスネイプが苛立ちと不信をこめて小さく鼻を鳴らした。

   イライラ低い音を立てたというのはどういう意味か?
   なにを使ってどのような音を立てたのかの説明が一切ない
   とりあえず今のところ、下記3つの意見が出ている。
   ・不信と苛立ちを表すフンみたいな小声
   ・欧米人がイライラしたときにやる鼻を鳴らす音
   ・英国人はそういう時、「ハァーっ!」と大きめに息を吐いて(吸って)わざと顔をそらしたり、周りの人たちに同意を求めるような感じであたりを見回したり、もぞもぞしたりすることがある。

g-4-14
原文:"Maybe she had you bagged,"(UK版P475)
邦訳:「もしかして君に虫をつけたんじゃないかな」(下28章P292-293)
試訳:「もしかしたら小さい盗聴器を虫みたいに飛ばしたのかも」
    (ロン「トーチョーキってどんな虫?蚤かなんかついてたってこと?」)

   bag=小さな虫、俗語として盗聴器・盗聴する。
   ロンとの会話(蚤かなんかつけたってこと?)やリータがコガネムシのアニメーガスだと気づくエピソードにつなげるために「虫」を使わなければいけない。
   日本語に相当する言葉はないので難しいが、「虫と呼ばれる盗聴マイクや録音装置(P293・虫と呼ばれるの部分は原文になし)」と説明させるのはいささか無理があるのではないか?
   「虫みたいな何か」などと例えたほうが良かったのではないか?
   『偵察する習性がありカナブンくらいの大きさの誰でも知ってる飛べる虫』に例えるなら蜂とかかな。まぁ虫の名のついた盗聴装置や、盗聴器=昆虫名を暗号として使ってる盗聴マニアグループはいそうな気がするが、それを普通に知ってる14歳なんて嫌だ。

g-4-15
原文:原文:The injusttice of it made him want to curse Snape into
    a thousand slimy pieces.(UK版263)
邦訳:あまりの理不尽さに、ハリーはスネイプに呪いをかけて、
    ベトベトの千切りにしてやりたかった。(18章P464)
試訳:

   a thousand slimy piecesは「千切り(細く切る)にしたい」ではなく、スネイプの油っぽいという表現に引っ掛けて「1000個のヌルヌス(スライム)した物体にしてやりたい」みたいな感じ?
   それなら千切りじゃなくて油っぽいものに分割する表現にすべきでは?
   「ハリーはスネイプにコールタールになる呪いをかけて、ぶちまけてやりたいと思った」とか。廃油とかなるべく汚そうな…

g-4-16
原文:pretty-boy
邦訳:可愛い
試訳:顔がいい・かっこいい

   容姿を形容する"pretty"がすべて「かわいい」と訳されてるためハリーがセドリックをかわいい顔と思ったことになってる。
   女の子がprettyだったら『きれい』とか男の子がpretty-boyなら『顔がいい』とか普通は工夫して訳すべき。

g-4-17
原文:"...well, you wouldn't understand...you're too young..."
    "That's what my dad said at the World Cup,"
    "Try us, why don't you?"(UK版P456)
邦訳:「…いや、君たちにはわかるまい…あのときは、まだ小さかったから…」
    「僕のパパもワールドカップでそう言ったんだ」
    「僕たちを試してくれないかな?」 (下27章P257)
試訳:「お前らには話してもわからんだろうな。まだガキだから」
    「親父にもW杯で同じこと言われたよ。」
    「そんなに子ども扱いしないで試しに話してみてくれよ」

   シリウスがチキンを食べながら、ロン達にヴォルデモート全盛期におけるクラウチら魔法界の大人たちの心理を語ろうとして口ごもるセリフ。
   邦訳は後半が何故か過去形になっている(お前たちは昔赤ん坊だったから)が、原文は現在形(お前たちは今子供だから)である。

【議論詳細】

       ※同じパターン
       原文:"The terror it inspired...you have no idea, you're too young."(UK版P127)
       邦訳:「それがどんなに恐怖を掻き立てたか…わからないだろう。
           おまえはまだ小さかったから。」(4巻上9章P220)
       試訳:「それがどんなに恐怖を掻き立てたか…わからないだろう。
           おまえはまだ子供だから。」
       闇の印の章の最後のほうのアーサーのセリフ。

g-4-18
原文:"He is now no more a Death Eater than I am."(UK版P513)
邦訳:「いまや、わしが『死喰い人』ではないと同じように、スネイプも『死喰い人』ではないぞ」
    (下P363)
試訳:「わしが『死喰い人』でないと同じように、いまやスネイプも『死喰い人』ではないぞ」

   いまやの位置のために校長は元死喰い人だと思った読者もいたらしい。
   「いまや」の後ろに句読点があるので校長は元死喰い人ではなかったことになり、誤訳ではないが分かりにくい文章ではある。

g-4-19
原文:said Amos Diggory, loudly enough for Harry to hear
    as he made to walk out of the door with Mrs Weasley and Bill.(UK版P536)
邦訳:エイモス・ディゴリーが、ウィーズリーおばさんやビルと一緒にドアから出ながら、
    ハリーに聞こえるように大声で言った。(下31章P403)
試訳:ウィーズリーおばさんやビルと一緒に部屋(ドア)から出ていこうとするハリーに
    聞こえるようにエイモス・ディゴリーが大きな声で言った。

   ディゴリー氏が大広間から出て行くハリーにいやみを言うシーン。前後関係から見て「he」はハリーを指しているがハリーとディゴリー氏が逆に訳されていて、ディゴリー氏が出ていくことになってしまっている。

g-4-20
原文:"The Dementors will join us...they are our natural allies...
    we will recall the banished giants..."(UK版P564)
邦訳:「吸魂鬼も我々に味方するであろう・・・あの者たちは生来我らが仲間なのだ…
    消え去った巨人たちも呼び戻そう…」(33章)
試訳:「~追放された巨人も呼び戻そう」

   ヴォルデモートの台詞。 banished 「追放された」とvanish「消える」の間違えと思われる。

g-4-21
原文:"It is a disappointment to me... I confess myself disappointed"
邦訳:「俺様は失望した…失望させられたと告白する」(´・ω・`)
試訳:「私は失望した。失望したと言わざるを得ない」

   今や『俺様』と『告白する』はセットでギャグネタ。

5巻・不死鳥の騎士団

g-5-1
原文:The old woman's face blanched.(UK版P74~75?)
邦訳:老女の顔が血の気を失った。(上4章P128~130?)
試訳:

   シリウスの母親の表現、老女。
   彼女が死んだのは1985年で、5巻の10年前。(シリウスが25くらいの時)
   肖像画が年をとるかどうかはよくわからないけど、校長たちの肖像画が白髭まみれになっていないところを見ると、たぶん死んだ時から変わらないんじゃないかと思う。
   ここでは口語表現の「おふくろ」や「女主人」、「年配の女性」の意味ではないだろか?

【詳細】

g-5-2
原文:writing desk
邦訳:文机
試訳:

   writing deskは天板を起こして閉じることで収納家具、文机は書籍をのせたり読書したりする机のこと。
   古風な日本の文机という言葉からは大きな棚がついていてボガードが入っているとは想像し難い。まだ「戸棚」「箪笥」などのほうが近いのではないだろうか。

g-5-3
原文:"I'm perfectly clear who he is, thanks, Molly"
邦訳:「お言葉だが、モリー、わたしは、この子が誰か、はっきりわかっているつもりだ」
試訳:「この子が誰かなんてことはよく分かっていますよ、お言葉ありがとうモリー」

   あのいやみったらしい「ありがとう」はシリウスの性格を表す大事なセリフだと思う。

g-5-4
原文:in a patch of moonlight
邦訳:古い絨毯の上に丸く切り取ったように月明かりが差し込み(9章)
試訳:

   ロンが客間で倒れてるシーン(本当はボカート)。
   「丸く」にあたる単語がない。(月明かりが丸くなるなら窓も円形じゃないとおかしい)

g-5-5
原文:"Dumbledore happens to trust me,"
邦訳:「ダンブルドアはたまたま我輩を信頼してる」
試訳:「ダンブルドアはあいにく私を信用しているんだ」

   偽ムーディーの言いがかりに対してスネイプが言い返すシーン。
   邦訳版は'happen to V'はもれなく「偶然~する」「たまたま~する」と訳すことにしているらしいが、ここでは'S happen to be'(「Sはあいにく....なんだぞ」と相手が述べたことに対し怒って言う)が用いられていて、 スネイプは「ダンブルドアは私を信頼しているんだ」と強く切り返したかったんだと思われる。
       ※同じパターン
       原文:And he also happened to be a wizard.
       邦訳:その上、ハリー・ポッターはたまたま魔法使だった。

g-5-6
原文:"Europa's covered in ice, not mice -"(UK版P269)
邦訳:「オイローパは氷で覆われているの。子鼠じゃないわ。」(上14章P473)
試訳:「エウロパは(アイス)で覆われているの。子鼠(マイス)じゃないわ。」

   ハーマイオニーの台詞。
   原文は「ice」「mice」と言葉遊びになっているが、氷と子鼠では意味がわからない。
   オイローパは、日本で定着している物なら「エウロパ」、英語らしくするなら「ユーロパ」では?

g-5-7
原文:"OK, Stop!" "Stop! STOP!" "That wasn't bad."
邦訳:「オーケー、やめ!」「やめ!やめだよ!」「なかなかよかった」(18章)
試訳:「オーケー、ストップ!」「ストップ!ストップ!!」「悪くなかったと思うよ」

   DAの練習シーン。ハリーの言葉が偉そう。
   五巻のハリーはやたら感情の起伏が激しかったけど、原作のこのシーンのハリーはすごく皆に気遣いながら優しく丁寧にぜんぜんえらぶらないで指導していて、ハリーが少しずつ精神的に成長してるのを示すいいシーンだったのに残念。
   言語的誤訳じゃないけど、作者の意図するイメージを勝手に改竄してるって点では充分に誤訳だと思う。

g-5-8
原文:"Who're you writing the novel to, anyway?"
    Ron asked Hermione, trying to read the bit of parchment now
    trailing on the floor. Hermione hitched it up out of sight.
    "Viktor."(US版P407)
邦訳:「ところで、その小説、誰に書いてるんだ?」
    「ビクトール」(下21章P69)
試訳:「ところで、その小説みたいな長い手紙誰に書いてるんだ?」
    ロンがハーマイオニーに~
    「ビクトールよ」

   ロンはハマイオニーが書いてる長ったらしい手紙を見て、皮肉を込めてnovelって言葉使ってるけどそれをそのまま「小説」って訳したら、彼女が本当にクラムのために小説書いてるみたい。
   「その長ったらしい手紙」とか「その小説みたいに長い手紙」ぐらいにしてほしかった。
   ロンが盗み見ようとし、ハーマイオニーが隠す部分が邦訳にはない。
   たった二行のたわいない文章だが、ほとんど隠し事がなかった3人の間に男女の距離ができ始めたことを示唆しているのではないのだろうか?

g-5-9
原文:the rest of the team felt this save compared favourably with one made recently by Barry Ryan,
    the Irish International Keeper, against Poland's top Chaser, Ladislaw Zamojski.
    (UK版P355)
邦訳:チーム全員が、これこそ、アイルランド選抜チームのキーパー、バーリー・ライアンが、
    ポーランドの花形キーパー、ラディスロフ・ザモフスキーに対して見せた技にも匹敵する
    好守備だと感心した。(上P630~631)
試訳:

   ラディスロフ・ザモフスキーのポジションがキーパーになっている。正解はチェイサー。

g-5-10
原文:"tell me, Potter,"said Snape softly, "can you read?"(US233P)
邦訳:「教えてくれ、ポッター」スネイプが猫撫で声で言った。「字が読めるのか?」(上370P)
試訳:
『猫撫で声-ねこなでごえ』
猫をなでるように、当りをやわらかく発する声。相手をなつかせようとするときの声。
猫が人になでられたときに発するような、きげんを取るためのやさしくこびる声。

   スネイプはハリーに対して皮肉をこめてるんだから、「猫撫で声」というのはおかしい。
       ※他の「猫撫で声」(sweetly・softly・silkiest voice・cooed)
       ■アンブリッジ
       原文:"Yes, as gamekeeper fresh air must be so difficult to come by,"
           said Umbridge sweetly.(UK版387)
       邦訳:「そうね。家畜番は、新鮮な空気がなかなか吸えないでしょうしね」
           アンブリッジが猫撫で声で言った。(5巻下20章P34)
       原文:"This is school, Mr Potter, not the real world,"she saidsoftly.(UK版220)
       邦訳:「ここは学校です。ミスター・ポッター。現実世界ではありません」
           先生が猫撫で声で言った。(5巻上12章P386)
       アンブリッジには裏があるから、猫撫で声でもいいかもしれないが、この場合は「静かに言った」、「優しい口調で言った」、「優しく言った」くらいが妥当では?
       ■スネイプ
       邦訳:「あぁ、さよう」猫撫で声だ。(1巻8章P202)
       原文:"So," he said softly, (UK2巻P62)
       邦訳:「なるほど」スネイプは猫撫で声を出した。(2巻P115)
       原文:"Let's see,"he said, in the silkiest voice.(UK版263)
       邦訳:「さよう」スネイプが最高の猫撫で声で言った。(4巻上18章P464)
       ドラコの呪いが当たってハーマイオニーの歯が伸びたのを見て、スネイプが「いつもと変わりない」と言ったので、ハリーとロンがスネイプを罵った場面。
       この後スネイプは、グリフィンドールから50点減点+ハリーとロンに罰則まで与えてる。
       辞書にはsilky voice=「猫撫で声」とのっているが、この場面でのスネイプの台詞としてはニュアンスが違うと思う。
       ここはスネイプががみがみ怒鳴らずわざとソフトに言ったことでかえって抑えた怒りの凄みを感じさせるシーン。
       「この上もなくなめらかに言った」「この上もなく柔らかな口調で言った」、またはいやみたらしくわざと静かにしゃべってるんだろうから「嫌みったらしく」「嫌味っぽく」「わざとらしく穏やかに言った」と意訳してしまってもよかったかもしれない。
       しかも「最高の猫撫で声」…最上級だから「最高の」なんだろうか?
       ■ハーマイオニー
       原文:Hermione cooed through the wickework,(UK版P56)
       邦訳:ハーマイオニーが籠の外から猫撫で声で呼びかけた。(3巻5章P93)
       試訳:ハーマイオニーが籠越しに優しい声で話しかけた。
       原文中のcooedは「優しい声で話しかけた」「ささやくように話しかけた」とするのが普通。
       ■ヴォルデモート
       原文:...Voldemort's soft cold voice, drawing nearer,...(UK版P574)
       邦訳:「隠れんぼじゃないぞ、ハリー」ヴォルデモートの冷たい猫撫で声が
           だんだん近づいてきた。(4巻下34章P466)
       試訳:ヴォルデモートの静かな冷たい声が近づいてきた。
       冷たい猫撫で声はありえない。でも竹中直人なら演じられるかもしれない。

g-5-11
原文:Ron had had four more Quidditch practices
    and not been shouted at during the last two.(UK版295)
邦訳:ロンはさらに四回のクィディッチの練習を、そのうち最後の二回は怒鳴られずにこなし。
    (16章520p)
試訳:ロンはさらに四回クィディッチの練習を重ね、後半の二回は怒鳴られることなくこなした。

   the last twoの直訳と思われる。
   語順の納まりが悪いのも気になるのが、「最後」とは「一番終わりの一つ」であって「最後の2つ」とは言わない。
   しかも100のうちの99と100番目ならまだしも、4のうちの3と4。

g-5-12
原文:"I think she might have appealed to Dumbledore."(UK版334)
邦訳:「たぶん、マクゴナガルはダンブルドアに控訴したんだと思う。」(上18章P591)
試訳:

   クィディッチチーム再編許可が下りたシーンの、アンジェリーナの台詞。
   appeal=哀願、懇願/上告、告訴。
   告訴の意味もあるけど、別に裁判しているわけではないんだからここは「頼み込んだ」「懇願した」くらいでいいと思う。

g-5-13
原文:"crying his eyes out over my mother's old bloomers or something."(UK版446)
邦訳:「僕の母親の古いブルマーか何かにしがみついて目を泣き腫らしているんだろう。」
    (下23章P138)
試訳:「お袋のはき古した下着か何かにしがみついて泣きじゃくっているんだろう」

   ハリーに対してクリーチャーのことを話しているときのシリウスの台詞。
   「私」も嫌だが「私」に決めたなら一人称は「私」で統一してほしい。
   ここで使われてる「bloomers」は下穿きの意味だろうけど、日本人のブルマーのイメージは体操服なので下着っぽいほかの言葉に代えてしまったほうが良かったかもしれない。
   嫌みったらしくいうなら「我が母君様のはき古しのズロース(日本人的時代錯誤な女性下着)かなにかで泣いてるんだろう」くらい丁寧にしてしまっても良かったかも。いくらハウスエルフが小さいからって女性の下着にしがみつけるほどは小さくないと思う。抱える、抱きしめる、すがるくらいでは?っていうかそれに相当する英単語無いん(r

g-5-14
原文:...in a shadowy corner beside the fireplace sat a witch with a thick,
    black veil that fell to her toes. They could just see the tip of her
    nose because it caused the veil to protrude slightly.(UK版300)
邦訳:暖炉脇の薄暗い一角には、爪先まで分厚い黒いベールに身を包んだ魔女がいた。
    ベールが少し突き出しているので、かろうじて魔女の鼻先だけが見えた。(16章P528)
試訳:暖炉脇の薄暗い一角には、爪先まで分厚い黒いベールに身を包んだ魔女がいた。
    ベールが少し突き出しているので、かろうじて魔女の鼻の位置だけは分かった。

   ホッグズ・ヘッドに入ったところ。
   「ベールが突き出しているので鼻が見えた」とは、意味がわからない。
   魔女は全身を厚い黒いベールで覆われていたがベールが突き出ているので鼻先の位置だけがわかった(could just see)のではないか?
   突き破っているのではないから見えたとするとつじつまが合わない。

g-5-15
【原文】

 Weasley cannot save a thing
 He cannot block a single ring
 That's why Slytherin's all sing
 Weasley is our King

 Weasley was born in a bin
 He always lets the Quaffle in
 Weasley will make sure we win
 Weasley is our King
【邦訳】

 ウィーズリーは守れない
 万に一つも守れない
 だから歌うぞ、スリザリン
 ウィーズリーこそ我が王者

 ウィーズリーの生まれは豚小屋だ
 いつでもクアッフルを見逃しだ
 おかげで我らは大勝利
 ウィーズリーこそ我が王者
【試訳】

 ウィーズリーは守れない
 万に一つも守れない
 我らが負けるはずがない
 ウィーズリーこそ我が王だ

 ウィーズリーの生まれはゴミ箱だ
 いつでもクアッフルを見逃しだ
 きっと我らが優勝だ
 ウィーズリーこそ我が王だ

   原作では「thing」「ring」「sing」「king」「bin」「in」「win」「king」とホントに、ちゃ~んと韻を踏んでるところに面白さがあるんだけど邦訳だと、それが全然分からない。
   だから邦訳版でのドラコの「うまく韻を踏まなかったんだ」に対しては「いや、初めっから韻踏んでないし」と突っ込まざるを得ない。
   bin(ゴミ箱)が「豚小屋」になっているが「ウィーズリーの生まれはゴミ箱だ」じゃいけなかったんだろうか?
       ※同じ間違い(bin)
       原文:jump behind the big bin outside the kitchen doors.
       邦訳:食堂の外にあった大きな容器の陰に飛び込もうとした。(1巻2章)
       学校食堂の厨房の勝手口のドアの外にある大きな生ごみ用のごみ箱の後に隠れようとしたんだと思う。

g-5-16
【原文】:
(Luna) "but people used to believe there were no such things
    as the Blibbering Humdinger or the Crumple-Horned Snorkack!"
(Her)"Well, they were right, weren't they?"
(Her)"There weren't any such things
    as the Blibbering Humdinger or the Crumple-Horned Snorkack"(UK版P236)
    (略)
(Luna)"You know what could be in there?"
(Her)"Something blibbering, no doubt,"said Hermione under her breath
    and Neville gave anervous little laugh.(UK版P684)

【邦訳】:
(ルーナ)※1「だけど、ブリバリング・ハムディンガーとか、しわしわ角スノーカックがいるなんて、
    昔は誰も信じていなかったんだから!」
(ハー)「でも、いないでしょう?」
(ハー)「ブリバリング・ハムディンガーとか、しわしわ角スノーカックなんて、いなかったのよ」
    (上13章P413~414)
    (略)
(ルーナ)※2「あの部屋に入っていたかもしれない物、なんだかわかる?」
(ハー)「どうせまた、じゅげむじゅげむでしょうよ」ハーマイオニーがこっそりと言った。
    ネビルが怖さを隠すように小さく笑った。(下34章P551)

【試訳】:

   ※1ルーナとハーのブリバリング・ハムディンガーは存在する、しないという遣り取り。
   ※2それからしばらくしてからルーナがいつもの調子で謎の生物について話そうとするのをハーマイオニーが茶化して、それを聞いたネビルが笑った、というシーン。
   ※1から考えるとSomething blibberingというのはBlibbering Humdingerの事。
   だったら訳も、「あのブリバリング何とかに間違いないわね」みたいな感じで繋がりをわかるようにしてほしかった。じゅげむじゅげむではなんのことか分からない(生き物ですらないし)。
   nervousに「怖さを隠す」という意味はないのでは?

g-5-17
原文:"Harry, we saw Uranus up close!---ha,ha,ha---Get it Harry? We saw Uranus, hahaha"
邦訳:「僕“臭い星”を見たんだ…モー、クセー、なんちゃって」
試訳:

   魔法省・全員集合のところで、ロンがヘロヘロになってたところの台詞。
   Uranusを「臭い星」なんて唐突な訳にするより、本来の「天王星」にしてそこからつながるダジャレにしてほしかった。
   Uranusに関するジョークは4巻にもあるが("Can I see Uranus too, Lavender?"→ 「ドンケツの星か…。ラベンダー、僕に君のドンケツちょっと見せてくれる?」)日本語版はあくまでも子供向けなので『Uranus → Your Anus(肛門)』というネタはだめなんだろう。

g-5-18
原文:stomach
邦訳:胃
試訳:

   五巻のハリーはすごく精神的に不安定でその様子が原書でも「stomachが~」と記述されている。
   だが邦訳はいちいち忠実に「胃が~」と直訳してるため、まるでハリーの胃の調子が悪いように感じる。
   ハラワタが煮えくり返るとか少しは工夫してもらいた。

6巻・謎のプリンス

g-6-1
原文:the Half-Blood Prince
邦訳:謎のプリンス
試訳:

   各国の副題をみて推測される限りでは、スペイン語圏など'the Half-Blood Prince'の直訳がまずい国に原作者の出した代案が下記の二つと推察される。
   1. the Mystery of the Prince
   2. the Mysterious Prince
   「謎のプリンス」はほぼ2の直訳であり翻訳者が勝手なアイデアで題名を変えてしまったとはいえない。
   が、作品に対する理解や人並みな言語センスが備わった翻訳者なら日本語の特殊性を考慮に入れ違う副題を模索したに違いない。
   混系のプリンスとか?(王子っぽいし、血筋に関係あるし、一応差別用語じゃないし。本文中はハーフブロッドで通せばなんとか…)

7巻・

g-
原文:
邦訳:
試訳:

不明・その他

g-f-1
原文:Remus
邦訳:ルーピン
試訳:リーマス

   シリウスがルーピンのことを「ルーピン」と呼んでいる箇所があるが原書の該当部分では「リーマス」だった。
   十数年間誤解しあってきた友人達だけに、ファーストネームで呼ぶか、ファミリーネームで呼ぶかの差は大きい。

g-f-3
原文:Pepperup Potion
邦訳:「元気爆発薬」(2巻8章P182)
原文:Cheering Charm
邦訳:「元気の出る呪文」(3巻15章P217)
原文:On the other hand,Ginny Weasley was perfectly happy again.
邦訳:一方、ジニー・ウィーズリーは再び「元気いっぱい」になった。
    (2巻18章P365)
原文:(Fred and Angelina)were dancing so exuberantly
邦訳:(フレッドとアンジェリーナは)「元気を爆発」させて踊っていたので…
    (4巻下23章P94)

   「pepper」「cheer」「happy」「exuberant」、この4つの言葉を全部「元気」と訳すセンス。
   英語力云々よりも、日本語力の問題(語彙不足)だと思う。