24章
自由なしもべ妖精
■日本語版 24章 p.141
自由なしもべ妖精 ドビー ここに眠る
■UK版 p.389
Here lies Dobby, a Free Elf.
■試訳
- 自由になった妖精 ドビー ここに眠る
- 自由になったハウスエルフ ドビー ここに眠る
■備考
- 「自由なしもべ妖精」って全然自由じゃない。
- 読んでて可笑しいと思わなかったのか?
- ハリーは誇り高く死んだドビーを悼み「フリーエルフ」と墓に刻んだ。
その気持ちを考えたら「しもべ」なんて言葉は入り様が無い。
日本語云々の前に無神経。 - 普通の訳者ならしもべとしてても、最後の墓だけは屋敷妖精にするはずだよな。
寒いギャグは幾らでも出るのに、何でそういうとこは工夫しないんだよ。
克服された杖
■日本語版 24章 p.161
「(略)克服された杖は、通常、新しい持ち主に屈服するものじゃ」
■UK版 p.399
'(略) the conquered wand will usually bend its will to its new master.'
■試訳
- 「(略)奪われた杖は、たいてい新たな持ち主に従うのじゃ」
■備考
- 杖は障害や困難じゃないから克服できないよ。
- conquereは上のvanquishと似てて「獲得する」「打破する」「克服する」みたいな意味だけど
このthe conquered wandは普通は「(力尽くで)奪われた杖」みたいに訳す。
bend its will to its new masterも「新たな持ち主に従う」で良いと思う。 - 杖の忠誠が移動する件とかこの巻で最も大切な説明なのになぁ…。
必要
■日本語版 24章 p.162
「それでは、杖の真の所有者になるためには、前の持ち主を殺す必要はないのですね?」
ハリーが聞いた。
オリバンダーはごくりと唾を飲んだ。
「必要? いいや、殺す必要がある、とは言いますまい」
■UK版 p.400
'So, it isn't necessary to kill the previous owner to take true possession of a wand?' asked Harry.
Ollivander swallowed.
'Necessary? No, I should not say that it is necessary to kill.'
■試訳
「それでは、杖の真の所有者になるためには、前の持ち主を殺す必要はないのですね?」
ハリーが聞いた。
オリバンダーはごくりと唾を飲んだ。
「必要? ええ、殺す必要がある、とは言いますまい」
確実な信憑性
■日本語版 24章 p.166(※原文は改行無し)
不明瞭な記述も含めてじゃが、文献も残っており、わしら杖作り仲間は、それを研究することを本分としておる。
そうした文献には、確実な信憑性がある。
■UK版 p.402(※原文は改行無し)
There are written accounts, some of them obscure,
that I and other wandmakers have made it our business to study.
They have the ring of authenticity.
■試訳
記録文献もあるんじゃよ。あまり世に知られておらんものもあるが。
わしや他の杖作りたちが研究のためそれに取り組んできたんじゃ。そうした文献には信憑性がある。
■備考
- 「不明瞭な記述に確実な信憑性とは?」と言う部分と「杖作りの本分は杖を作ることでは?」という部分の二箇所が可笑しい。
- 「確実な信憑性がある。」の原文は"They have the ring of authenticity"
「信憑性があるようだ」「信憑性が高い印象だ」というような意味では?
参考(have the ring of truth)
参考(ring) - 「不明瞭」の原語は"obscure"
この文脈では「不明瞭な」ではなく「あまり知られていない」「無名の」という意味では?
参考(obscure)
25章
見返り
■日本語版 25章 p.178
「――見返りに」小鬼ははっきりと言った。「代償をいただきます」
■UK版 p.408
'- in return,' said the goblin firmly, 'for payment.'
■試訳
- 「――見返りとして」ゴブリンはきっぱりと言った。「報酬をいただきます」
- 「――見返りとして」ゴブリンはきっぱりと言った。「支払いを求めます」
■備考
- グリンゴッツへ押し入る為の協力を求めた事へのグリップフックの返答。
- 「見返り」と「代償」では意味の重複になる。
- しばらく(数日?)待たされ→協力します→やった!ありがと!→報酬を支払え→えっ いくらくらい…
→お金じゃない、グリフィンドールの剣をよこせ→どっひゃーと言う、
上げて落とす様なゴブリンらしい嫌らしさが出ているシーン。 - 2つ目のセリフはお金を連想する物が良いのでは。「代償」だと範囲が広すぎる。
- clearlyでは無くfirmlyなのだから、「はっきり」より相応しい訳語を使って欲しい。
(firmly=力強く[きっぱりと・断固とした口調で]言う) - 「小鬼」はやめて!
敷居 - 真っ青 - 白髪
■日本語版 25章 p.191
ルーピンは敷居に倒れ込んだ。
真っ青な顔で旅行マントに身を包み、風にあおられた白髪は乱れている。
■UK版 p.415
Lupin fell over the threshold.
He was white-faced, wrapped in a traveling cloak, his greying hair windswept.
■試訳
- ルーピンは入り口で倒れこんだ。
旅行マントに身を包んだ彼の顔は血の気がなく、白髪混じりの髪は風にあおられ乱れていた。
■備考
- 「敷居に倒れ込んだ」では何の事やらだね。
fell overなんだから敷居「に」倒れた訳じゃないだろうに。 - thresholdは敷居っていうか、「玄関の外」の所の下にある板。
イギリスもそうだけど、欧米の家はドアは「内開き」でそういうのが付いてる。 - thresholdって玄関の所に有るとは限らないよ。
この場合は玄関のドア部分に付いてる奴で、部屋と部屋の境目のより大きいから、
そこに躓いて倒れ込んだみたいな状況では無いかと。 - イギリスの家が内開きだと分かってれば容易にその場面の様子が想像が付くんだけど
ドアが外開きの日本の読者じゃ「何でルーピン倒れてんの?」って疑問になるよね。
注釈とか付ければ良いのに。 - 敷居は鴨居とセットのイメージ。やはり日本臭が有り過ぎる。
最近の翻訳者は外国文学で「敷居をまたぐ」「敷居が高い」等と書かない様に気を付けているはず。
- white-faced は「真っ青」だとちょっと深刻に具合悪いみたいだから
「青白い」「青ざめた」位にしたらどうかと思う。 - 日本語で「真っ青な顔をして飛び込んで来た」とやると、ネガティブな事を予測してしまう。
とるものも取り合えず急いで来たんだろうから疲れて顔色が悪く、
髪もボサボサだっただけだと思うんだけど。 - greying hairは「白くなりかかった髪」「白髪混じりの髪」だと思うけど…
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- 見返り UK p.408 -- ヘキサ 2018-10-05 (金) 20:47:01
- p192でルーピンがハリーに「君が名付け親になってくれるか?」と頼んでいますが、p191ですでに子供にはテッドという名前がつけられていることが分かっているので意味不明です。UK版ではどのように表現されているのでしょうか。 -- ka? 2022-07-28 (木) 23:18:38
- UK版では‘It’s a boy! We’ve named him Ted, after Dora’s father!’→‘You’ll be godfather?’(いずれもUK版415P)です。 -- op2chスレ主 2022-07-29 (金) 09:50:46
- 有名な誤訳 -- 2023-08-07 (月) 00:30:34