概要
【エニックス】時代の1989年から2001年までにDQシリーズを北米(DQMのみ欧州でも)で発売する際に使用されていた作品名。直訳すると「竜の戦士」。
1980年に既に米国ではSPI社がよく似たタイトルの【DragonQuest】というテーブルトークRPGを販売、商標を登録していたため、【DRAGON QUEST】というタイトルを使えなかった。
【堀井雄二】はコンピューターRPGで初めてRPGにはまった世代であり、TRPGについては詳しくなかったとのこと。
代わって用意されたのがこの "DRAGON WARRIOR" というタイトルである。
なお、日本国内でも、ナムコのアクションゲーム『ドラゴンバスター』(1985年稼働開始)が当初は "Dragon Quest" というタイトルで計画されていた(『ファミ通』2004年4月16日号 「ゲームのトリビア」より)。
もしナムコがこのタイトルを変更せずに使用していたら、エニックスは国内でも『ドラゴンクエスト』を使えず、今のDQはすべて別のタイトルになっていたかもしれない。
沿革
北米地域で1989年から1992年にかけてDW1からDW4までがファミリーコンピュータの海外版であるNintendo Entertainment System (NES)で発売された。販売は任天堂が担当。
その後エニックスはSuper Nintendo Entertainment System(SNES、海外版スーパーファミコン)でDQ以外の自社や他社のゲームの海外版を発売。
一方DW5は1994年に発売される予定であったものの発売されず。その後もSFCで発売されていたDQシリーズ作品は海外展開されずに終わった。
これについて【三宅有】は2018年の『IGN』記事でのインタビューにおいて「SFC時代からPlayStation時代への移行期に差し掛かり、海外展開のチャンスを逃した」と回答している。
一方当時の資料である【月刊Vジャンプ】1996年4月号で報じられた記事によれば、1996年夏にもDQ(どの作品かは不明)の発売が予定されていたものの、エニックス米国支店の閉鎖によって発売中止となったとのこと。
その代わりに海外のマニアの間では非公式の翻訳版が作られ、今でもプレイ動画がネットに公開されている。
その後2000年になって海外展開が再開され、GAME BOYやPSの作品群が北米で発売されるようになる。
SNESで作品を出さなかった弊害として、ナンバリングは5と6が欠番のままいきなりDW7が発売されたり、トルネコ2の北米版はナンバーを無くしたタイトルにされたりした。
なおモンスターズ(第1作のみ)は初めて北米のほか欧州でも発売された。
しかしここまでの作品はいずれも、海外での売上はよろしいものではなかった。
これには、RPG(JRPG)は海外ではメジャーなものとは言い難い状態になっている事が影響しており、海外でRPGがウケない事は任天堂のかつての社長である山内も予想していた事だった。
一方のライバル的存在であったファイナルファンタジー(FF)シリーズもSNES時代までは目立たない存在であったが、SCEが販売を担当したFF7ではまるでアクションゲームであるかのような宣伝の効果により世界で大ヒットとなった。
これによって『クロノ・トリガー』や『MOTHER2』など過去のJRPGにも海外からの注目が集まるようになったのだが、残念ながらその中にDQシリーズの姿は無かった。もしSNESでDQ5やDQ6が出ていたならば、と悔やまれるところである。
DW7を出した後はPS版DW4の開発が行われ、翻訳作業も進んでいた。だが、次回作であるDQ8の開発会社に【レベルファイブ】が選ばれたのに伴いPS版ナンバリング作を担当していた【ハートビート】は撤退し、PS版DW4は海外展開中止となった。
この次に発売された海外版はスクウェアとの合併後の "DRAGON QUEST VIII Jouney of the Cursed King"となり、"DRAGON WARRIOR" のタイトルは結果としてDW7が最後となった。
このタイトルが使われた作品の一覧はこちらを参照。
特徴
NES向けに制作された4作品と、数年のブランクの後にGBとPSで発売された作品群とでは特徴が異なっている。以下ではそれぞれの時代の特徴を述べる。
タイトルが国内版と統一されたPS2時代以降については【DRAGON QUEST】を参照。
NES時代
NESのDRAGON WARRIORシリーズでは、パッケージイラストに鳥山明のイラストは使われず、全く異なるイメージの画像が使われた。
【タイトルロゴ】も日本語版とは全く異なるものであり、さらにパッケージとゲーム内の【タイトル画面】でもデザインが異なっている。
いわゆる宗教上の配慮として様々な部分にローカライズが入っているのも特徴。
【十字架】や卍型が別のものに差し替えられていたり、【棺桶】ではなく透明人間の姿をした霊魂だったり、【クリフト】の職業が【神官】ではなく執事だったりする。
プレイヤーキャラクターの【名前】は英字8文字まで付けられるが、ステータスウィンドウ上ではスペースの関係で4文字に絞られる。
アイテム名やモンスター名の文字長は英単語の関係で日本版の倍近くになり、リストウィンドウでは2行にまたがって表示される。
戦闘などの各種メッセージは、日本版では過去形を使って表されるのに対し、NES版では現在形(DW2のみ過去形)で表される。
DW3までは単なる翻訳版にとどまらず、DW1ではグラフィックの大幅変更、DW1とDW2では【復活の呪文】に代わるバッテリーバックアップの採用、DW2とDW3では後のリメイク版で逆輸入されたオープニングデモの追加が行われるなど、日本語版に対するバージョンアップ版のような作品になっている。
GB・PS時代
GBやPSの作品では、タイトルロゴが日本語版に近い形に変更され、パッケージイラストにも原作のキャラクターのイメージに近いものが採用された。
しかし、NES版で変更が行われていた十字架や棺桶などの表現については、GB系やPSでは特に変更は行われていない。
戦闘中のメッセージが過去形で表記される点もNES版と異なっている。
プレイヤーキャラクターの名前は、DW7はNES時代と同じく「入力できるのは最大8文字で、ステータスウィンドウでは4文字に絞られる」という仕様だが、GB版DW1~DW3ではそもそも元から英数字4文字以内しか入力できないという、英語圏にとっては厳しい制約になっている。
GB版DW1~DW3の固有名詞は、TantegelやKandarのようにNES版を引き継いでいるものもあれば、一方でErdrick→LotoやMalroth→SidohのようにNES版から変更されたものも多い。
アイテム名やモンスター名の文字数は日本版と同じ9文字に揃えられており、一部のアイテム名は長さを日本版と合わせるため、剣や盾などの絵文字が使用されている(例:帽子の絵文字を▲とすると、木のぼうしはWooden▲と表記される)。
一方、呪文名についてはNES版のものを引き継いでいる。
この時代のDWシリーズではNES時代のような大きな追加要素は無く、ほぼ日本語版を翻訳したのみとなっている。