【無刀陣】

Last-modified: 2022-12-29 (木) 11:13:27

ダイの大冒険

【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】に登場するオリジナル特技。正式名称は「アバン流究極奥義無刀陣」。
その名の通りアバン流殺法の奥義で、「敢えて武器を手放し、自らの【闘気】を無にすることで相手の攻撃を冷静に受け流し、隙を晒した相手に必殺技を打ち込む」という捨て身の【カウンター】技である。
動の奥義【アバンストラッシュ】と対を成す、静の奥義と言われる。
 
アバンは15年前の【ハドラー】との最終決戦の際にこれを編み出し、無刀陣からのアバンストラッシュによってハドラーを打ち破っている。
また、この技の設定が登場するよりも前の話だが【デルムリン島】におけるハドラー戦でも、アバンはハドラーの攻撃を受け間合いが詰まってからカウンターの【メガンテ】を放っている。
新アニメ版では、初回の冒頭にアバンが魔王ハドラーに対して使用したと思われるシーンが描かれ、ヒュンケルが使用する際にも技のイメージとして同じ一幕がより詳しく描写された。
このシーンでは、カウンターに賭けて咄嗟に剣を捨てたアバンがハドラーの闘気拳を真正面から受け、後ろに吹っ飛びながら威力を受け流した。そのまま跳ね起きて剣を拾い、拳を振り抜いて隙ができたハドラーにアバンストラッシュ・ブレイクを打ち返している。
また異空間での【キルバーン】との戦いでもキルバーンの攻撃をあえて受けてメガンテを放とうとしている(【ジャッジ】の妨害にあったため失敗)。
 
作中では【アバンの書】からこの技の存在を知った【ヒュンケル】が使用。
子供の頃から復讐のためだけに剣を握っていたヒュンケルにとって、武器を捨てることで自分を無の境地に追いやるこの技は絵空事でしかなかったが、【バーンパレス】に単身乗り込もうとする【バラン】を殺さずに止めるにはこの技しかないと確信し、無刀陣での勝負に挑む。
血気盛んになりがちな戦場で闘気を完全に無にすることは、【闘いの遺伝子】を受け継ぐ百戦錬磨のバランですら不可能な芸当であるらしく、その覚悟に気圧されていた。
暫く睨み合いが続いていたが、ヒュンケルの覚悟に心を打たれたバランは自らもカウンターを食らう覚悟の勝負を選び、敢えてセーブした一撃を放ち、カウンターに耐えた後の二撃目で決着を付けようとした。
しかし、両者突撃の刹那に【アルビナス】が乱入。ヒュンケルは咄嗟に攻撃対象を変更し、彼女の【ニードルサウザンド】【ブラッディースクライド】でカウンターして撃退したものの、代わりにバランの攻撃に無防備となり重傷を負ってしまった。バランが再起不能と見立てるほどの傷だったが、そこは不死身の代名詞ヒュンケル。後に復帰している。
なお先述の通りバランの攻撃は「力をセーブした一撃」でありギガデインを使う様子もないのだが、ギガブレイクを使ったと誤解している読者が意外に多い。バランといえばギガブレイクなイメージのせいだろうか。
 
ヒュンケルは瞬間的にカウンターの相手を切り替えて見事迎撃に成功しているが、アルビナスに反撃したあとに大きな隙を作っているため、本来は邪魔の入らない一騎打ちに集中できる状況で使う技のようだ。
アバンストラッシュと並び称されるだけのことはあり、一対一の決戦においては非常に有用な技となるのだろう。
 
なお、この技は攻撃を受け流してダメージを最小限に抑えるが、完全に無効化できる訳ではない。
昇格した【ヒム】との戦いでは、疲弊しきったヒュンケルには彼の強烈な【闘気拳】を受けるだけの余裕がなかったことから、攻撃を受ける寸前に敵の勢いを上乗せして先手を叩き込むという、クロスカウンター型の応用版無刀陣で迎え討った。
この時は「一撃もらったら確実に死ぬ」ことをより強く意識するためか、武器を手放すのみならず鎧も解除しており、攻撃性どころか防御の保険まで捨てて自らを無の境地と死線に追い込むという、元の技以上に高度かつ無茶な事をしている。
もうひとつの切り札【グランドクルス】もそうだが、死中に活の原理で全くの別物に昇華させた例と言えるだろう。
ただしこの応用版は、敵よりも先に一撃を叩き込むために武器を拾えず素手でカウンターすることになる関係上、相手のボディが非常に強固な場合などには拳に甚大な負担がかかる。
実際作中では、ヒムやマキシマムのオリハルコン兵に対して素手でカウンターを続けたヒュンケルは全身の骨にヒビが入り、呪文を用いた治療でも回復できないほどのダメージが体に残ってしまった。

 
ちなみに、バランには【ギガデイン】【紋章閃】といった鎧の魔槍で無効化できない飛び道具で攻める選択肢もあったはずで、敢えてカウンターを受けに行くリスクを採った事には疑問を持つ読者もいる。
しかし、ヒュンケルはギラ系のエネルギーを飛ばすニードルサウザンドを間合いの伸ばせるブラッディースクライドで迎撃しており、ある程度の距離なら飛道具であろうと迎撃できる備えがあった。
また、受け流しで威力を減らした攻撃に耐えてカウンターを放つ無刀陣の性質からしても、威力を削がれてなお一撃でヒュンケルを仕留める確信がなければ、どのみち反撃を覚悟する点は変わらない。
天空から雷を落とすデイン系なら反撃を受けないほど距離を離すことも可能だろうが、対決場所が敵の本拠地直上の【死の大地】だったこともあり、派手な落雷を起こせば魔王軍に発見される危険性があった。バランは単身バーンに挑むつもりでヒュンケルらを巻き込む気は無かったため、バーンの元に突入する前に目立つのは避けたかったとも解釈できる。「攻撃呪文は通じない」からというクロコダインの見解も、デイン系は使わない(使えない)だろうと見立てていたなら矛盾しない。
紋章閃なら急所を撃ち抜けば即死も狙えるものの、額から直線的に撃つのみの技なので、技を見たことがあり高い反応速度を持つ迎撃姿勢のヒュンケル相手に一撃で有効打を取るのは難しいだろう。
鎧の魔槍を纏って立ちはだかるヒュンケルの姿に【ラーハルト】の願いを見たバランは、あえてその技を受けるとも宣言しており、狙ってかはともかく、心理面でもヒュンケルが上手くバランを誘導していた。
 
余談であるが、一時期アバンの仲間であった【ブロキーナ】も、【オリハルコン】すら容易に破壊するパワーをもつ【ミストバーン】の強力なパンチを腹部に受けながら平然としていたことがある。
彼によれば枯木のようなボディでもって相手の攻撃を吸収し受け流す武神流の極意とのことで、闘気や硬度などで正面から受け止めるのではなく一見無防備に攻撃を受けた上で受け流すという点では無刀陣とも類似性がある。
技を構成する根底の思想は真逆ではあるが、後に披露される大魔王の奥義【天地魔闘の構え】もまた敵の全力攻撃を防いでから打ち込むカウンター技であった。