アルマンダイン・ガーネット

Last-modified: 2020-09-03 (木) 22:56:32


10.アルマンダイン・ガーネット
宝石言葉:実行力の勝利

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あらすじ ※ネタバレ注意※

※ 10話は前半の山場につき、別ページに道中チャットを含めた
メインストーリーのセリフをノーカットで掲載してあります。
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シーンごとの細かいリンクは考察の各項目最後部分にあります。

ショートカット
プロクト城
プロクト駐屯地
プロクト駐屯地バルコニー
プロクト駐屯地・アザリーとの邂逅
作戦開始
勇気の道
勇気の道・最奥部
立ち直ったスミカ

 

冒頭回想・アヤネ編

──アヤネの家の前で、アヤネと父親が対峙している──

「お前のような軟弱な女が戦士になんてなれるわけないだろう」
「それが本当かを確かめたいのです。
閉ざされた村の中で、劣等だと思われたまま、
一生を終えるのは耐えられません。」

──母親がアヤネに取りすがるが、父と娘は対立したまま──

態度を変えない娘に、父親はついに決別宣言をする。
「どこへでも行け、この化け物め!」
アヤネは無言で両親に背中を向けて、歩み始める。

魔法戦士の家

行方不明になったスミカ。
最後に目撃したクオンによると、魔物にとりつかれて消えてしまったという。
スミカを探しに行こうとアヤネは提案するが、クオンは否定する。
「城の連中は結界破壊作戦を早く始めたいらしいぞ。」
どういうことか、と尋ねるワタルにクオンは説明する。
プロクト城の医務室には、倒れたヤマトがいる。
「それが実質人質だろ。」
また、姿を消したスミカについてもそれほど重要視していないという。
「魔法戦士は魔王を倒すための駒。
動ける駒だけで大丈夫だと判断すれば他の駒は斬り捨てるだろ。
世界の平和という大義名分もあるしな。
皆のために犠牲になった英雄とかいって
美化することで罪悪感を和らげようとする。」
皆のため、という言葉に考え込むワタル。
「より多くの人間を救いたければ
魔王討伐を最優先に考えるってのは間違いではないだろうけどな。」
アヤネはスミカとヤマトのどちらも優先できず、思い悩む。
(放っておいたらスミカちゃんが……。でも結界破壊作戦が遅れたら? ヤマトさんに何かあったら……?)

プロクト城・謁見の間

ワタル達3人は、作戦の詳細を聞きに謁見の間にやってくる。
しかし、説明を始めた大臣がスミカやヤマトを
「戦わない魔法戦士は資源を浪費するだけの家畜」
と揶揄するのを聞き、激昂したクオンが玉座に詰め寄る。
「うっせえな、ヒゲ野郎!」
「てめえらが人ひとりの感情すら制御できねえ
無能だから魔物が生まれるんだろうが!
(魔法戦士は)てめえら上流階級の道具でも家畜でも尻拭い機でもねえんだよ、
感情ひとつわからないてめえらの方が人間じゃねえ!」
無礼な物言いに兵士が慌てて止めに入るが、国王は兵士を制した。
「感情を制御できないと魔物が生まれるとは、どういうことだ?」
元の位置に戻ったクオンは、ダークラウンから聞いた話を説明する。
「魔物は人間の負の感情を餌に成長することが分かりました。
世界の狭間に存在するエネルギーも
全世界から漏れる感情エネルギーだと。」
しかし、アザリーは
「とりあえず作戦についての話を進めるべき」
と、あくまでも本来の目的を優先すべきだと主張する。
図書館で手に入れた呪文は巻物に書かれており、アヤネの故郷にあるものと同じだった。
そして、それが読めるのはアヤネだけだったため、彼女は解呪担当に抜擢される。
作戦はアザリーと王の主導で行われるという。
クオンが
「二人の魔法戦士は見捨ててか?」
と問いかけるも、アザリーは冷たくこう言うのみだ。
「他人のために自分のすべてを諦める。それが戦士よ。
それも分からず、命をかけるなんて言ったわけではないでしょう。」

プロクト駐屯地

ワタル達はスミカとヤマトを欠いたまま、結界破壊作戦のために駐屯地にやってくる。
そしてまずは、アザリーから作戦の詳細を聞くこととなった。
アザリーによると、解呪呪文はバリシッサ標塔の頂上で唱える必要があるという。
しかし、魔王軍がそれを黙って見ている筈はない。
そのための道はプロクト軍で開き、魔法戦士たち、
特にアヤネにはきちんと護衛をつけるという。
クオンは
「護衛なんて言っているが、余計なことをさせないための監視だろ」
と、ハッキリ指摘するが、アザリーは姿勢を崩さない。
「自覚があるならそれ相応に振る舞うことね。」
作戦の決行は明日だ。

プロクト駐屯地バルコニー

夜、バルコニーでアヤネは一人で迷っていた。
スミカを優先すべきか、作戦実行を優先すべきか。
それは、スミカとプロクトの人々の命を天秤にかけるに等しい。
(戦士になれば女は劣悪品という村の考えを変えることができると思ったのに)
逡巡する自分に
(何にもできない弱虫で駄目な子のままだ)
と、自嘲していた時、ワタルがやってくる。
「アヤネ、ここにいたのか。よかった、ちゃんといてくれて。
クオンもどっか行っちゃってさ、探してたんだ。」
「ワタルさんは、スミカちゃんを助けたいですか?」
「当たり前だ!
……だけど。」
「世界、ですか?」
ワタルの脳裏に、スミカが行方不明になる直前に、彼女に投げつけられた言葉が過ぎる。

幼馴染とか言ってくるけどさ、本当はあんたも、
お兄ちゃんに近づきたかっただけなんでしょ?

来ないで。心配してるフリに付き合いたくない。

「スミカと一緒にいたはずなのに、
もっと分かってやれたはずなのに、
一緒にいて楽しかったのって、きっとオレだけで。」
「それは違います。
何があったのかは存じませんが、そんなことはないはずです。」
アヤネはワタルの言葉を否定し、過去のある出来事を語りだす。
アヤネは入学したばかりのころ、男子学生にからかわれていたところを
スミカに助けられたことがあったのだ、と。
その時からスミカに憧れていたという。
「その時から私、スミカちゃんが憧れだったんです。
私にはできないことを、私にはない勇気を持っている人だから。
だから、そんなスミカちゃんだから、
世界を護ることを願いそうな、そんな気もしているんです。」

プロクト駐屯地バルコニー・アザリーとの邂逅

アヤネと別れたあと、ワタルは一人駐屯地を歩いていた。
スミカを助けることと魔王を倒す使命──アヤネだけでなく、ワタルもまた、迷っているのだ。
そこへアザリーが現れ、声をかけてくる。アザリーはワタルの悩みを察しているようだ。
「彼女を助けたいの?」
そう問いかけたアザリーと、ワタルの問答がはじまる。
「これも彼女の選択よ。戦士とはそういうもの。
英雄として名を刻めるのは一握りであとは無様に消えていく。」
「でも、スミカは皆を護ろうと必死に──」
「まだ分からないの。あなたの望む彼女はいないのよ。」
「……楽しい時だけ一緒にいればいいって、そういうの、嫌だ。
自分の理想を押し付けるだけの関係なんて、そんなの嫌だ。」
その言葉に、アザリーは鋭い問いを投げかける。
「それは本当に心の奥から出てきた言葉?」
そしてワタルに近づき
「大臣の逆鱗に触れれば、気絶している魔法戦士。
彼をどうにかすることだってできる。
選びなさい、彼か、彼女か。」
と選択を突きつける。ワタルには答えられない。
「なら、大人しくしていて。あなたにこの事実は受け入れられない。
無駄に壊れるだけ。」
アザリーはそう言い残して、ワタルに背中を向ける。ワタルは訳が分からない。
「何だよ、結局、何が言いたいんだよ。」
「全体幸福の祈り、わけへだてない優しさ、あなたのそれは残酷すぎる。
だからやめて。そういうことよ。」
と背中を向けたまま答え、立ち去っていく。
しかし、大切な友達を天秤にかけることなど、ワタルにはできるはずもない。

その頃プロクト城では、ヤマトの眠る医務室を兵士が二人見張っていた。
他愛もない雑談をしていた兵士たちだが、突然、何者かが放った闇魔法に倒れる。
ダークラウンが忍び込んだのだ。
「さて、騒がれる前に、済ませましょうカ!」
ダークラウンは医務室へと入っていく。

そして同時刻、駐屯地の武具庫ではクオンが何やら探していた。
探しながらクオンは考える。
(どうするつもりなんだか、あいつは)

作戦開始

いよいよ結界破壊作戦が開始されようとしている。
その作戦とは、ワタルとクオンが前線に混ざって道を切り開き、
後ろからアヤネを含む部隊が追ってくる、という方法だ。
ワタルは、一つの結論を出していた。
(作戦がはやく終われば、すぐにスミカを助けに行ける。皆を助けるにはこれしかない)

一方、アヤネは未だに迷っていた。
(私、どうして戦士を目指したんだっけ?)
村の人を見返したかったのか、英雄になりたかったのか、自分にできることを見つけたかったのか。
村でかけられた心無い言葉が次々と脳裏に浮かぶ。
それらに、あの夜、クオンが問いかけた言葉が重なる。

「どうなろうが関係ない? それとも諦める理由を探してるの?」

そして不意に、アヤネはある大事なことに気が付く。
「違う! これ以上言い訳をしたくない!」
アヤネの表情に力強さが宿る。
「女であることを誰よりも利用していたのは私だった。
何でもできない自分に「女だから」と言い訳を与えていた!
大切なお友達を助けに行くのに男も女も、化け物も関係ない!」
スミカのもとに向かおうとするアヤネ。
しかし、当然のことながら見張り──護衛の兵士たちに阻まれてしまう。
「作戦のことだけを考えてください!」
「離してください! もう言い訳をしたくない、
女であることに甘えたくないんです!」
その時、一人の兵士が飛び出し、アヤネと他の兵士たちを引き離した。
「貴様、何者だ!」

その頃、前線部隊では一つの異変が起きていた。
前線部隊は順調に進軍していたが、クオンは作戦が始まってから一言も話していない。
そのことを訝しんたワタルがクオンに声をかけた瞬間、
クオンの身体は水へと変じて弾け、地面に染みこんで消えてしまった。
「……え?」
ワタルには何がどうなったのか、理解できない。

前線部隊で異変が起きたのは、魔法の効果が切れたせいだった。
アヤネを救った兵士が言う。
「言っただろ。俺は俺のやりたいようにしかやらねえって」
鎧を脱ぎ捨てたその姿は、なんとクオンだった。こちらが本物だ。
昨晩武具庫に忍び込んで探していたものは、兵士の鎧だったのだ。
クオンはアヤネの手を取ると、爆発魔法で兵士たちを巻き、その場から逃走する。
彼らが向かったのは「勇気の道」。その奥に、スミカに取りついた魔物がいる。

勇気の道

アヤネとクオンは、スミカのいる場所へと近づきつつあった。アヤネの
「最初から、スミカちゃんを助けるつもりで準備していたのですか……?」
との問いかけには答えず、クオンは先を急ぐよう促す。
「……こうやって来てみると、何をすればいいのか分からなくて。
スミカちゃんはきっと、ヤマトさんの無事を優先してほしかったはずです。でも──」
スミカの思いよりも自分の気持ちを優先してしまった、というアヤネをクオンは励ます。
「自分のやりたいようにやればいい。」
そして、自分よりもアヤネがやった方が、スミカが助かる確率が高い、とも。
「スミカちゃんのこと、よくご存知なのはワタルさんなのかな、って。」
自分では力不足ではないのかという不安が、アヤネの心にはあった。
しかしクオンは、スミカを助けるように促す。
「助けに来たきゃ自分で来るだろ。
目的はあいつを倒すことじゃねえ。正気に戻して、魔物から引き離すこと。
俺が前に出る。あんたは補助しつつ呼びかけろ。」
二人は勇気の道の最奥部たどり着く。
そして、そこには──。

魔物にとりつかれ、”気づかざる者”と化したスミカがいた。

勇気の道・最奥部

「スミカちゃん……!」
”気づかざる者”は、二人を見ても何の反応も示さず、攻撃を仕掛けてくる。
「怯むな! 来るぞ!」
クオンはアヤネに檄を飛ばしつつ前に出て応戦する。
アヤネは必死にスミカに呼びかけた。

スミカちゃん。私です。分かりますか?

スミカちゃんは、魔物に心を許すような人じゃない……!
明るくて、いつも笑顔で、勇気があって──

人を傷つけるようなこと、絶対にしたくないはずです!

スミカちゃんだって、悩んだりくじけたりしますよね。
それなのに私、「明るくて格好いいスミカちゃん」を押し付けて。
憧れの部分しか見ないで、傷から目をそらすような人にはなりたくない。

だから、スミカちゃん──
もう一人で悩まないで……!

その声は、「気づかざる者」に届き始めていた。しかし、まだだ。

「いつまでも魔物なんかの好きにさせてんじゃねえ!」
クオンも声をかけるが、”気づかざる者”は容赦なく雷魔法をクオンに放つ。
「クオンさん!」
「俺にかまうな。あんたは、あいつを──」
クオンの言葉は”気づかざる者”の土魔法に遮られた。
魔法を受けたクオンが傷つき、血を流すのを見てアヤネは、
「お願い……! もうやめて……!」
と、悲痛に訴える。
「何だよ、あんたの家族をボロクソに叩いた復讐かよ」
クオンは傷つくのも構わず、さらに前へ進み出て呼びかける。
「それじゃあ、やってることが変わらねえだろ、俺も、あんたも」
それでも”気づかざる者”は攻撃をやめず、その牙はアヤネにも剥かれる。
攻撃に耐えきれず、後退しながらも呼びかけをやめないアヤネ。
「うっ……。お、おねがい……!」
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その様子にたまらずクオンは叫び、爆発魔法で”気づかざる者”の魔法を止めた。
「嘘にしないんだろ! 家族のこと好きだって気持ちを!
恨みなんかに変えないって! 俺みたいにはならねえって!」

そして、魔物の動きが止まった。
その時──。

「スミカ!」
後ろからワタルの声がする。
「ワタルさん。ヤマトさん……!」
「スミカ!」
ヤマトが声をかけながら、防御魔法をかける。ワタルの大声が響いた
「目、覚ませ! スミカぁぁぁああああ!」

その声に、ついに魔物が離れる。
そして、”気づかざる者”がいた場所に、呆然としたスミカが現れた。

立ち直ったスミカ

気がついたスミカは、自分の正面にヤマトの姿を認め、安堵して駆け寄った。
「ヤマト……! よかった。アタシのせいで──」
しかしすぐに、ヤマトが倒れた原因を思い出し、皆に背を向けて自虐し始める。
「アタシなんて、弱くて使えなくて役立たずで、欲だけは人一倍で、人として終わってるもんね!」
スミカの自傷行為を見たアヤネは、彼女の傍へ近づいてその頬を打った。
「これ以上言ったら、許さない!」
普段大人しいアヤネの行為は、周囲を驚かせた。
「これまで私を助けてくれたのは、スミカちゃんのお兄さんではありません。
自分の中の辛い傷を別の傷で誤魔化そうとしないでください。
スミカちゃんだって悩むし、泣きたくなるときだってあるし暗い気持ちにだってなる。
でもそれって、前を向いている印だから。
自分勝手な理想を押し付けるの、やめますから。」
泣きながらそう告げたアヤネの言葉に、感極まったスミカもまた涙を流す。
「そんな風に言ってくれる人が、近くにいてくれたのにさ。
魔物に取りつかれても必死に呼びかけてくれる人がいたのにさ。
自分を悲劇のヒロインにしたくって、周りの人を嫌な人ってことにして、
そんな自分に酔うことでしか生きられなくなって。」
彼女は、泣き崩れた。
「ごめん……! ごめんね……!」
こうしてスミカは立ち直った。
「お兄ちゃんにはなれなかったし、
家族を護れるのはアタシじゃなくてお兄ちゃんだけど。
こうやって言ってくれる人がいるから、アタシはアタシの場所で、頑張っちゃう!」
そして、皆に声をかけ始めた。
「ワタルも、ごめんね。アタシ、酷いこと言っちゃって。」
「いいんだ。スミカが元気になってくれれば。
オレのメンタルはブラックホールだからな!」
「ヤマトは、もう大丈夫なの?」
「ああ。異常もないし、さっきも、ちゃんと防御魔法を使えたし。」
「よかった。それですぐ、ここまで来てくれたんだ。」
ヤマトの目が覚めたことで、ワタルにもスミカを助けに行けない理由が無くなった。
それでここまで来たのだ。喜び、会話を弾ませる仲間たち。

だが、ただ一人、クオンだけがその様子を静観していた。
「茶番やってる暇があったら戻るぞ。無駄な時間を喰っちまった。
さっさと魔王倒して、
イカルガに帰る手がかり探したいのに。」
傷の手当てをしようともせず、クオンは皆に背を向け、一人でさっさと帰っていく。
「何であんなこと。誰よりも先に助けようとしてたのに」
憎まれ口を叩く意図が分からないワタル。
(クオンくんみたいに、何でも自分でできちゃうような人は、
アタシみたいな子の面倒みるの嫌なんだろうな)
この時スミカが思ったことは、大いなる誤解だったことが後に判明する。

※ネタバレ注意※

考察 ※ネタバレ注意※

10話は前半の山場につき、別ページに道中チャットを含めた
メインストーリーのセリフをノーカットで掲載してあります。
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考察の各項目最後からも掲載場所へダイレクトに跳べますが、
考察なしのシーンは会話ページへはダイレクトに繋いでいません。ご注意ください。

ショートカット
プロクト城・謁見の間
プロクト駐屯地
勇気の道
ボス戦
クオンの言葉の解釈

 

冒頭回想・アヤネ編

第10話のタイトル「アルマンダイン・ガーネット」の宝石言葉は「実行力の勝利」。
アヤネが自分の意思で成したいことを実行したことで、
スミカ救出に成功したことを示している。

第10話のメインキャラはアヤネだ。
冒頭で描かれるが、本作の裏テーマに「親離れ」がある。
メイン5人それぞれの事情があるのだが、親離れの傾向は大きく分かれて二つ。

一つはスミカ・ヤマト・クオンで、
「親の側から突き放されたことで親離れを余儀なくされた」
のだ。
スミカは親に愛されたかったが、両親、特に母親に拒否されている。
ヤマトは両親にも親族にも疎まれている。
クオンについてはまだ詳しく書けないが、
第8話で彼が「俺だけ置いてあの世に逃げた」と言ったことから察せられる。

ワタルはこの時点ではきちんと親離れをしていないので伏せるが、
「傾向は二つ」と先述した通りなので、想像して欲しい。
そしてアヤネは、今回の回想の通り
「自ら親元を離れ、親の定めた以外の道を行く」
のだ。
「何だかんだで生き残るのはアヤネみたいな子」
「メンタル最強って実はアヤネじゃない?」
という感想がプレイヤーからあがったそうだが(おまけ部屋より)、
その裏付けに
「いち早く親の柵から抜け出そうとした」
ことがあるのかもしれない。

※ 冒頭シーンの会話はこちら→冒頭回想・アヤネ編
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プロクト城・謁見の間

プロクト城では、大臣の物言いにとうとう感情が爆発。
一番反発しそうなのはワタルだが、クオンだったことが大きなポイント。
クオンは、とある理由で権力者や安っぽい「正義」を激しく憎んでいる。
彼が権力者を憎む理由は、これまでに何度も口にしている通り。
「人を人とも思わず、自分の都合のいい駒として扱う」
駒として扱われた人間がどうなろうが、権力者には関係ない。
しかし、駒にされた側からすれば、場合によっては命さえ脅かされることもある。
「俺だけ置いてあの世に逃げた」
というクオンの言葉とつなげると、この時点でもクオンの事情を
ある程度つかむことができるだろう。

ちなみに、この第10話はクオンの素の部分が少しではあるが、表に出る回でもある。
(制作ブログによると「お前はデレを隠せなくなるのが早すぎるんだよ!」とのこと。)
その一つがこのシーンだ。

※ 実際の会話はこちら→プロクト城・謁見の間
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プロクト駐屯地

ワタルとアザリーの会話では
「それは本当に心の奥から出てきた言葉?」
というアザリーの指摘が超重要ポイントだ。
「自分の理想を押し付けるのは嫌だ」
というワタルの言葉を聞いて上記の台詞が出てくるということは、
アザリーには、ワタルが理想を押し付けている人間に見えるということになる。
この指摘の意味にワタルが気が付くのはかなり終盤になってからになる。
しかし、アザリーは早くもこの段階で、ワタル最大の欠点を鋭くつく台詞を言っている。
これはアザリーがワタルとは正反対の
「最も大切なひとりを想う」
愛に生きる女、(恋愛感情なしと見るなら、たった一人に依存する視野狭窄者)
だからこそ気づいたのだろうか。

※ 実際の会話はこちら→プロクト駐屯地・アザリーとの邂逅
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そして短いシーンだが、プロクト城でダークラウンが
ヤマトのもとへ忍び寄ってきたのも見逃せない。
この接触が後の展開に大きくかかわってくる。

勇気の道

結界破壊作戦~勇気の道への突撃では、
アヤネが自分の欠点を克服する瞬間が描かれる。
これまで「女だから~」という発言を多用していたのは、他でもないアヤネ本人だ。
それに気が付いたアヤネが、5人の誰よりも早く自身の醜い部分に向き合い、成長する。
これも多くのプレイヤーから
「メンタル最強はアヤネ」
と言われる理由かもしれない。

また、作戦開始時からクオンのセリフが一切ないのもポイント。
作戦開始時点でクオンはダミーを仕込んでいたのだ。
夜に武器庫に忍び込む様子が描かれるが、他に彼がしていたことは、
このダミーの作成と、スミカの居場所を突き止めることだ。
プロクト城へ行く前にスミカがどうなったか分からないと言っていたことから、
わずかな時間を利用して、彼女を必死になって探していたことが分かる。
クオンが何故ここまでしてスミカを助けようとしたのかは、後で解説する。

このシーンは、「アヤネを助けた兵士=クオン」が明るみに出ると同時に
BGMが流れはじめる演出も重なり、本作屈指の盛り上がりとなる場面。
(筆者主観。補完者の異界魔コネ名シーンベスト3の一つでもある)

※ 実際の会話はこちら→作戦開始勇気の道
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ボス戦

スミカに呼びかけるシーンでは、途中に出てくる
”気づかざる者”のモノローグに注目しよう。
アヤネとクオンの呼びかけを聞いて
「その言葉は誰のもの?」
「ああ、お兄ちゃんのものか」
と言っている。
「アタシみたいな弱くて役立たずで汚くて
狡くてうそつきでいじきたなくて
オロカモノノデキソコナイニ
ヤサシイコトバナンテモラエルハズガナイ」
つまり、二人の呼びかけが自分に向けられていることが分かっていないのだ。
しかしクオンが大声で
「スミカ!」
と呼ぶと同時に、”気づかざる者”の動きとモノローグが止まる。
その後、ワタルがスミカに呼びかけて、スミカと魔物が分離する、という流れ。
最終的にスミカを呼び戻したのはワタルの声だが、
二人の呼びかけが無駄だったかと言えば、そうではない。
クオンの「スミカ!」によって、スミカは「自分に語りかけられている」と気づいたのだ。
この「誰かが自分を呼んでくれた」という点はスミカも承知している。
それが明文化されるのは中盤のラストシーンになる。
そしてついに、長かったスミカの闇堕ちも終了し、立ち直りに成功する。

※ 実際の会話はこちら→勇気の道・最奥部立ち直ったスミカ
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クオンの言葉の解釈

第1章(1~12話)魔王討伐編は、スミカとアヤネに焦点が当たっているが、
前半の終わりが近づき、二人の立ち直りを迎えたところで、
物語のバトンはスミカ・アヤネからクオンの手に渡っていく。
今回はその助走。クオンの素が今までに比べるとはっきり見えてくる話だ。
「嘘にしないんだろ! 家族のこと好きだって気持ちを!
恨みなんかに変えないって! 俺みたいにはならねえって!」
このセリフから分かる通り、クオンは自分の生き方を正しいものだとは決して思っていない。
しかし、これだけ必死に呼びかけたにもかかわらず、スミカの無事を確認した途端、
「茶番やってる暇があったら戻るぞ。
無駄な時間を喰っちまった。
さっさと魔王倒して、
イカルガに帰る手がかり探したいのに。」
と、いつもの憎まれ口モードに戻ってしまう。
クオン視点で見れば
「自分が呼びかけても無駄だったのに、脳内花畑の万年末席が呼びかけたら一発で元に戻った」
ということになっているのだ。

(クオンには後に真実がスミカ自身から伝えられるが、この時点では分かる筈もない。
そして、彼がそう思い込まざるを得ない状況が、彼の人生にはあったということを付け加えておきたい。
第7話で、「簡単に護れる」という言葉が地雷だと解説したことを思い出して欲しい。)

今回の憎まれ口は、その事実に対して「べ、別に傷ついてねえし」という、
いわば防御としての言葉だ。
和やかな会話に自分だけ入れていない寂しさもあったのかもしれない。
(制作ブログでは「あんだけ嫌味言ってるんだから自業自得だろ」と言われている)
クオンの憎まれ口は、相手を攻撃するためではなく、
自分を護るために発されているのだ。
これは後の回で、とあるキャラから指摘されることになる。

また、クオンを無視してヤマトに駆け寄ったスミカに対し、
「酷い」と思う人がいるかもしれないが、それは違う。
公式にて以下のように述べられている。
>「兄とか家族とか世界なんて見殺しにしちゃえ」と言っているわけですから、
>そんなヤツの呼びかけで正気に戻るわけないんです。
>直後にスミカがヤマトに駆け寄りますが、これも信頼度の差によるものです。
>まあ、自分のせいで倒れてしまったヤマトが目の前にいれば、
>そっちを先に心配するのは当然の流れでもありますが。
つまり、7話での
「世界なんて無視しろ」
「あんたの兄なんて妹を犠牲にするような程度の低い人間だ」という、
クオンの皮肉的な……もっと言えば、
スミカの大切な物に対する蔑みのような発言の罰がかえってきたにすぎない。

そのクオンだが、次に物語の中心となるのは彼だ。
憎まれ口を叩いておきながらスミカを助けようとしたり、
クオンの言動は非常に分かりにくい。
無界版の話だが、手がかりとなりそうなことがあるので紹介しておく。

>スミカへの優しさ半分、自己投影半分ですね。
>自分は納得いくように諦めることができなかった。
>初めはスミカも自分と同じようになるのでは、との思いから反発しますが、
>自分にはない強さを持ったスミカを見て、ある意味信頼したのかと。
>自分と同じ失敗をしなくて済むのでは、という。
>自分にできなかったことを達成してほしい、という自己投影が強いです。

※ネタバレ注意※

攻略

プロクト

イベントの最後にエキサイダーマを入手する。
ここで操作するのはワタル・アヤネ・クオンの3人。
プロクト城の謁見の間で王様に話しかけるとイベントが進行する。
このイベントが終わらないとプロクトの外には出られない。
ただし、プロクト内は自由に動けるので、EPスキルの習得、遊技場の利用、
相談所の確認、武器防具の合成を先にある程度済ませておいてもいい。

小ネタ
魔法戦士が3人しかいないので、プロクト内にいるNPCの会話が変わっている場合がある。
面白いのはこれ。

ネタバレにつき折りたたみ

相談所の入り口左にいる大工っぽい男性に話しかけると、通常は以下の会話。

NPC:これを参考に依頼書を書けばいいのか。「俺をモテモテにしてください」
「モテモテってのは、多くの異性にチヤホヤされることか?」
「一度は憧れる状況だよね! 奪い合いとかされちゃったりー。」
「恋愛感情なんて「二番目以下」という順位が意味をなさない最たるものだろ。
100人にとっての二番目になるなら1人にとっての一番を選ぶ。」

「またそうやってイケメン度を上げることいって!
これ以上オレとの格差を広げるな!」

それが、この時だけは、スミカの変わりにワタルの台詞が入り、以下のようになる。

NPC:これを参考に依頼書を書けばいいのか。「俺をモテモテにしてください」
「モテモテってのは、多くの異性にチヤホヤされることか?」
「クオンみたいなイケメンのこと。女生徒から誕生日プレゼントもらいまくる人のこと。
オレみたいなバカじゃない人のこと。あーん、羨ましいなあー!」

「恋愛感情なんて「二番目以下」という順位が意味をなさない最たるものだろ。
100人にとっての二番目になるなら1人にとっての一番を選ぶ。」

「またそうやってイケメン度を上げることいって!
これ以上オレとの格差を広げるな!」

他にも、本来ならヤマトのツッコミが入るところがワタルになっていて、
ワタルがツッコミ担当という本来ではあり得ない光景が見られたりもする。
興味がある人は、片っ端から話しかけてみよう。
魔跡地の攻略も3人で行ってみると面白い変化がある。
真性ボケのワタルと天然ボケのアヤネにツッコミは厳しいようで、
普段は飄々ボケのクオンがツッコミに回っている。

サブイベント情報

-お菓子を届けて

教会の子どもたちにお菓子を届けてください。
プロクトの近くにある
断絶のほこらにて待っています。

断絶のほこらでフードをかぶった人物からお菓子の袋を貰う。
フードで顔を隠しても「5人のお兄ちゃんお姉ちゃん」で正体がバレバレ。
プロクトの教会(魔法戦士家すぐ上)の外にいる金髪の男の子に渡そう。
その後、再び断絶のほこらに行き、依頼主に報告するとクリア。
報酬は5000coinとエキサイダーマ1個。

イベント会話

……そうですか。あなた方にお願いすることになるとはね。

──お菓子の袋獲得──

プロクトの相談所に依頼した通りです。このお菓子を、
プロクトの教会に届けてほしいのですよ。
ああ、ひとつ気を付けてください。シスターには内緒にしてほしいのですよ。
外にいる子どもに渡してください。いつも庭で遊んでいる男の子がいるはずです。
「大人には秘密に、か。怪しい臭いがするけどな。」
(※ クオン不在時はアヤネになる。
「大人の方にお伝えしてはいけないのでしょうか?」
いつも渡していますからね。子ども達には分かると思いますよ。
「五人のお兄ちゃんお姉ちゃん」と伝えればね。
渡し終えたら戻ってきてください。報酬を差し上げます。

──教会で男の子と会話──

「なあ、「五人のお兄ちゃんお姉ちゃん」とかいうヤツに覚えはあるか?」
(※ クオン不在時はアヤネになる。
「すみません。「五人のお兄ちゃんお姉ちゃん」に覚えはありますか?」
うん、知ってるよ! いつもね、服とかお菓子とかくれるの!
「その人から、これを渡してって頼まれたんだ。」
ありがとう! いつものお手紙つきだ!
「どうして大人の方に教えてはいけないのか、ご存知ですか?」
知らなーい! お菓子ばっかり食べると、怒るからじゃないかな?
「まあいいじゃん。報告しに行こうぜ!」

──報告時──

ありがとうございました。

──5000coinとエキサイダーマ獲得──

これはお礼です。では、失礼いたします。
「自分で行けばいいのにな。喜んでるところ、見ればいいのに。」

  • 誕生石→詳細はこちら「誕生石の在り処
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    ルビー
    プロクト駐屯地:ベッドがたくさん並んでいる部屋。

プロクト駐屯地

♪プロクト駐屯地(曲名:Battle/配布元:Presence of Music)

  • プロクトから、かなり南に進んだ先にある。
    しかし、最初からテレポレスが使えるので手間はいらない。
  • 駐屯地に入って正面、道を塞いでいる兵士に話しかけ「大丈夫」を選ぶとシナリオ進行。
    シナリオを進める前にサブイベントや装備の補充などができるのでお好みで。
    尚、駐屯地では道具の補充・回復・武器防具の合成も可能。
    • サブイベントについては上記を参照。
    • 各部屋の木箱にはアイテムが入っているので回収しておこう。
      • 左真ん中の食料庫:猛き溶岩(5)、天の羽衣(5)、雨雲のランプ(5)
      • 左側資料室の上の部屋:深海の珊瑚礁(5)、幼竜の牙(5)、 魔族の布 (5)
      • 道具屋の下の武器庫:虹色の筆(5)、癒しのオルゴール(5)、 シルクのベール (5)
      • 右側資料室:純血の雫(5)、 黒き杯(5)、 天界のハープ (5)
    • 左下の部屋の食糧をつまみ食いしているメイドに話しかけると各種欠片を1つずつ入手。
    • 上にある会議室を掃除しているメイドに話しかけると
      「閉目耐性+」「麻痺耐性+」の魔装石を入手。
    • 右真ん中あたりで、洗濯物を運んでいるメイドに話しかけると
      「雷耐性+」「風耐性+」の魔装石を入手。

勇気の道

♪大切な人のもとへ!(曲名:RISE/配布元:Andante)

  • イベント後、ダンジョンの入り口へ自動移動する。
    アヤネとクオン二人での攻略だが、苦戦はしないだろう。
    • チャット内容は雑魚戦のヒント(敵の弱点=爆発魔法)。今回はアイテムなし、残念。
  • ダンジョンの構造は難しくなく、ワンマップしかないため迷わないだろう。
    左側は行き止まりになっているので、
    先に左を探索してから中央、右と進むと宝箱の回収が楽。
    • 宝箱の中身
      左下:地耐性+
      左上:雷耐性+
      真ん中:ブルーポーション、レッドポーション、グリーンポーション
      右上から:スティミュラント、キュアミスト、ブルーウォーター、レッドウォーター、
      グリーンウォーター、ブルーエリクサー、レッドエリクサー、グリーンエリクサー
  • 中央の階段を上がるとボス戦。攻略法が特殊だが、誤って撃破してもストーリーは進む。
ボス攻略
ボス戦の攻略はこちら→気づかざる者
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クリア時、スミカが固有EPスキル「ペルグランデアーラ」を習得する。

小ネタ
ボス撃破後のイベントにて、BGMの音量に注目してみよう。
使用されているのは、Wingless Seraph様の「蛍道」だが、この曲はアヤネのテーマ曲となっている。
イベント開始後しばらくは音量が小さめだが、
自分を否定するスミカをアヤネが立ち直らせたあたり」で、音量が大きくなる。
これは、プレイヤーの気持ちを引っ張る効果があり、舞台でも使われる方法。
そして、イベント終わりにクオンが台詞を言ったと同時に、
今までプレイヤーを感動へと向かわせていた音楽が突然途切れる。
これも、これまでの流れをプツリと断ち切るシナリオに合わせた、音楽的な演出だ。
ドラマや映画でもよく使われているが、意識していないと気付かない場合も多い。
作者様の感覚が優れているか、演出の知識があるかどちらかでないと多分使えないのではないだろうか。

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