魔法戦士の本棚

Last-modified: 2021-08-20 (金) 23:43:21

魔コネファン作の魔コネssを集めたページです。

  • 完全に二次創作ですので、苦手な方は回れ右!
    閲覧後の苦情は受け付けません。
  • 細かいルールは、ファンサイト系ページ一覧に載せていますので、一読をお願いします。ルール違反行為には、何らかの対応をします。

魔コネが好きな人なら誰でも投降できます。
編集出来ない人はコメント欄に投降してください。転載します。

掲載時の規則

  • 人により好みが分かれそうな場合は、タイトルに「キャラ崩壊注意」「〇〇とか▲▲のイチャイチャあり」などの注意書きを添えて下さい。
  • ssは折りたたみで投稿してください。

転載時の規則

  • 基本的に文章の変更はしないでください。ただし、閲覧の利便性を考え、セリフへの色づけのみはOKです。
    • 例外として作者が加筆修正を希望する場合は変更可とします。
  • 誤字脱字修正や文字装飾は、作者の希望に添ってください。
  • 作品タイトルがないssへのタイトル付けも作者が希望する場合のみ行ってください。
    • タイトルなしで掲載する場合は、目次へ掲載するため「ノン・タイトル」でナンバリングして、見出しにして下さい。
 

魔法戦士の日常

こちらの本棚には、お題に関係のない作品を収納しています。

ノン・タイトル1 (100%ギャグ注意)

魔法戦士たちがホラーゲームをプレイするようです

長いのでおりたたみ

「皆! ゲームやろうぜ!」
「何だ急に。こっちは夕食の準備で忙しいのに」
「そう言わずにさ、すっげえクールなパッケージのゲームなんだよ! 見た目買いしちゃったぜ!」
「何のゲームかも確認してないわけ?」
「げーむ とは、馴染みのないものですね。ほのぼのとした気持ちになれるものだとよいのですが……」
「黒背景のパッケージで中身がほのぼのだったら炎上だな」

「お、主人公の名前を決められるみたいじゃん。何があってもいいように『おっかさ』――」
「夕食の人数が一人減りそうで、準備がはかどるな」
「あーん、嘘だよ、嘘! それじゃあ『だいじん』でいっか」
「心置きなくバッドエンドを迎えられるな」
「せっかくなんだからクリア目指そうよ。あ、動かせるようになったよ!」
「洋館でしょうか……? 何だか暗くてよく見えませんね」

「まずはオレがプレイするぜ! えーっと……何すればいいんだ?」
「話聞けよボンクラ」
「呪いの館から脱出するために、5つの宝珠を集めないといけないみたいだな」
「宝探しゲームでしょうか(*´ω`*)」
「アヤネが想像しているような雰囲気ではなさそうなんだけど」
「とりあえず手当たり次第の部屋に入って――うわあああああああああ」
「立てかけてあった箒が倒れてきただけじゃねえか、うるせえな」
「大声出さないでよ! こっちまでびっくりするじゃん!」
「お、ピアノの上で何かが光ってるぞ! これが宝珠じゃね? やっぱり!」
「今、扉の鍵が閉まる音がしなかったか?」
「え? いやいや、そんなこといったら脱出できな――ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ」
「いやああああああああああああああああああああああああ」
「ひいっ……!」
GAMEOVER

「……どうやら、あの宝珠を手に入れる前に仕掛けをしないと、今のように黒髪の女性に襲われるようだな」
「ホラーゲームじゃねえか」
「うわあああああああああああああんこんなはずじゃなかったのにいいいいいいいいいいいい(´;ω;`)」
「説明文を読まないで買うからだろう」
「べべべべべべべべべっべつに、怖くなんてないしっ……! とりあえず、ここはいったん置いておいて、他の宝珠を探そう……」
「上の階もあるみたいですね」
「彫刻の上に宝珠発見! ここは廊下だから、閉じ込めの心配もないもんね」
「さっきみたいに、宝珠をとった瞬間に霊がわいてくるかもな」
「だだだだだだだだだだ大丈夫、このスミカちゃんの俊足で逃げ切って……きゃああああああああああああああああでたよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「あたふたしてないで逃げろ!」
「どこまで走ればいいのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「バカ、そっちは――」
「きゃああああああああああああああ行き止まりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
GAMEOVER

「……ったく、探索中に館の構造くらい記憶しておけよ」
「そんなの無理だよお(´;ω;`)」
「はわわ、私にできるでしょうか……」
「そこにあるお札って取れませんか?」
「あ、入手できました」
「これで霊を追い払えるかもな」
「あら、あちらにご年配の男性が」
「札を欲しがっているな」
「こいつも霊体で、あの女とグルなんだろ。無視だ無視」
「なるほど、病気のお孫様のためにお札が必要なのですね……。かしこまりました。お使いください」
「ええ……」
「はわわ、後ろから妖怪さんが」
「言わんこっちゃねえ」
「はわわしなくていいですから、逃げてください!」
「でも男性が」
「だからそのジジイも妖怪――」
GAMEOVER

「こんなんじゃ徹夜してもクリアできねえよ、よこせ」
「宝珠のある金庫をあけるのに暗証番号が必要なのか」
「さっき手に入れたメモと鏡を使えば――鏡文字を解読して暗証番号が分かるって仕組みだな」
「幽霊が出たぞ」
「札で撃退」
「お札もなくなってしまったな」
「問題ない。大臣を何体か屍にして検証した結果、あの幽霊は2コーナー以上の差をつけられると追跡をやめる。この地下は廊下が迷路状だから曲がり角が多くてまきやすい」
「何でお前たちは淡々と攻略してるんだよ! 製作者に申し訳ないと思わないのか!」
「ぷるぷる」「ぷるぷる」
「あとは地上に戻るだけ――ん?」
「扉が2つあるな」
「これって、片方が正解で、片方がゲームオーバーってやつじゃないの?」
「ノーヒントかよ! とりあえずオレはひ――」
「右にするか。人間は切羽詰まっていると左に曲がる習性があるというからな。それを利用してくる可能性は高い」
「はわわ……! 妖怪さんが大集合しています……!」
GAMEOVER

「クリアまであと少しだったのに……」
「残念です……」
「もう! クオンちゃんったら本当に運がないんだから! ここまでのオレたちの努力を返してよ! クリアできるかもと思ったアタクシのトキメキも――」
(爆発音)
「何で俺がしりぬぐいしてるんだか……」
GAMECLEAR

「やった! オレたちの絆が幽霊にも勝ったんだ!」
「あんたは出オチもいいとこだろうが」
「やれやれ、やっと夕食の続きにとりかかれる」
「次はもっと楽しいゲーム買ってきてよね!」
「あのおじい様はご無事だったのでしょうか……」
「アヤネには『あつめろ! ようせいの園』とかがいいかも」
「おい、仕込んでおいた鶏肉が足りないんだが?」
「知らねえよ! オレはこのゲームを買いに行ってたんだから!」
「アタシとアヤネも一緒にお庭のお手入れしてたし!」
「(*・ω・)(*-ω-)ウンウン」
「喫茶店でチュロスボール食べてた」
「……じゃあ、鶏肉を食べたのって……」
一同「…………」
END?

ノン・タイトル2(合作)

コメント欄で自然発生したssまとめ。
明日は主婦休みの日でもあるそうです。ヤマトおっかさんをたまには休ませてあげて。

明日はホットケーキの日にゃので、クオンねこがおつくりしますにゃ!
「アタシがご飯作ってあげる(`・ω・´)」
「気持ちだけで嬉しいよ」
「お願いですからどうかおよしになって死んでしまいます」
「お、お料理は、私が頑張りますので」
「他の家事をするといいのにゃ」
「何でそんなに必死なの( ˘•ω•˘ )」
「おい、猫。俺のセリフを取るんじゃねえ」
「に、睨みつけられたにゃ! 助けてにゃ!」→誰かの胸元に飛び込んで頭スリスリ
「幼気な猫ちゃんを怒っちゃダメだろー!」
「猫ちゃんが怖がってるじゃん!」
「……本当に怖がってるのか?」
「はわわ、クオンさんと猫さんの空気が……(; ・`д・´)」
(ナデナデヾ(・ω・*)してもらえてうれしいのにゃ♡)
(……この生意気猫……(~_~メ) )

新しい一日

前に作ったスミカ誕生日の寸劇とかぶるところもありますが、ふと思いついたので。アヤネの出番多し。

「見たところ、変わりはないようですが……。」
庭の様子をざっと見回して、アヤネはほうっと息を吐いた。冷たい空気にさらされたそれは、たちまち白い煙となって消える。
踏みしめる雪のギュ、ギュという音を聞きながら、時折しゃがんだり、背伸びをしたりして育てている植物の様子を丹念に見て回る。
年が明けて間もなく一月が過ぎようとしていたが、昨夜は急な寒波に見舞われて5㎝ほど雪が降り積もった。
寒さに弱い植物に防寒対策は施してあるが、雪の重みや風で囲いが外れたり、木の枝が折れたりしていないか、心配だった。
だが、男たち3人に手伝ってもらったおかげだろうか、見慣れた風景に雪以外の変化はない。
淡い朝の光を受けて辺り一面がキラキラ煌めく様も、アヤネの心を明るくした。
「この様子なら大丈夫ですね。」
アヤネの口許に小さな安堵の笑みが浮かぶ。この雪が溶けたらバラの手入れをしよう、そんなことを考えていると、
「アヤネー!」
スミカの明るい声が聞こえてきた。息を弾ませながら駆け寄ってくるスミカに、アヤネは手を振る。
「スミカちゃん。おはようございます。」
「おはよう! 寒いねー! アヤネは凄いね、こんなに寒くても毎日お花の世話をしてるんだから。」
「楽しいですから、寒くても忘れてしまうんです。それより、朝ごはんですか?」
「あ、そうそう! 今日の朝ごはんはゴージャスだよ!」
「それは楽しみですね。冷めたらいけませんから、早く戻りましょう。」
「あ~、ちょっとぐらい遅れても大丈夫だと思うよ。今頃クオンくんとバトルだから。」
「……そうですね。」
アヤネとスミカは顔を見合わせて笑った。
果たしてその頃、魔法戦士の家では──
「おい、クオン! いい加減に起きろ! だから夜更かしはやめろと言っているだろう!」
ヤマトの怒号が響き渡り、ワタルが渋い顔をして耳を塞いでいるのだった。
半分夢の中にいるクオンが朝を迎えるまでもう少し。
今日も、新しい一日が始まる。

あなたに贈る言葉(詩)

作者様の拍手絵課題が「手」ということから思いついたポエム。

大きくて 少しゴツゴツした手
いろんなものを守ってきた あったかい手
だけど、自分のケガは知らないふり
だから治しましょう、わたしに傷を見せて

可愛らしいけど 少し固い手
たくさん練習してきた 努力の手
いつも明るい顔しかしないけど
涙を見せて わたしの前では泣いてもいいから 

誰にだって愛される権利はある
日の当たる道を歩く権利がある
痛々しい微笑みを見せないで 本当の心を見せて
わたしたちは知っている
あなたの本当の声を どうか聞かせて
諦めないでその手を伸ばして
わたしはここで待っている

小さくて柔らかいけど、少しガサガサの手
我慢強くて働き者の 綺麗な手
弱さを知るあなたは いつも控えめ
だから教えましょう あなたは強いと

大きくて とっても頼りになる手
頑張りすぎて、傷だらけの手
強がりは あなたが隠した優しさと寂しさの証
だから包みましょう 伸ばした両腕で

つながる手
わたしの手 あなたの手
みんなの手を繋ぎましょう
世界と世界を繋ぎましょう

ノン・タイトル3

「今日はご主人にミルクレープを作るのにゃ!」
「おい猫、重ねるときにムラ作るんじゃねえぞ」
「分かってるにゃ! そっちこそ、クリームの甘さを間違えるにゃ!」
「あんたに言われるまでもねえよ、生意気だな」
「おっきいのに言われたくないのにゃ! 飾り付けには、この猫オーナメントをつけるにゃ。可愛さ倍増にゃ!」
「ったく、しょーがねえな」

季節の本棚

こちらは、お題に添った作品を収納する本棚です。
お題にはその月のみ有効な月別お題(要は季語のようなもの)と、通年お題の2種類がありますが、掲載は区別せずに載せています。
お題作品は、月別お題+通年お題で書いてもOKです。
また形式も台詞のみ、地の文ありどちらでも書きやすい方でOKです。
お題配布サイト様へもリンクを貼っておきますので、それを使用するのもOKです。(礼儀として、使用したサイト様とお題は明記してくださいね)

通年お題一覧(思いついたら追加してください)

クオン猫(関連ワード:猫じゃらし、ぎゅむぎゅむタイム、なでなでなど)、お菓子、シェフ、パティシエ、メイドさん、
秘密、読書、鍛錬、ガーデニング、仲間、こころ、種、世界、占い、夜行性、夜更かし、
早朝、早起き、おかえり、シャボン玉、傘、魔法、ハンカチ、灯火、ビー玉、虹、通り雨、十六夜(月)、願いごと、
流れ星、うたた寝、休日、幼馴染み、クラスメート、手紙、日記、お弁当、不意打ち、涙、奇跡、記憶、思い出

月別お題

1月お正月……関連ワード:書き初め、年賀状、お雑煮、おせち
2月雪、雪合戦、雪だるま、牡丹雪、粉雪、吹雪
関連ワード……冷たい、白いなど
手袋、マフラー
3月桃、ひな祭り、卒業
関連ワード……ピンク、平安時代など
4月桜、入学式、出会い
5月新緑、柏餅、こいのぼり、立夏、小満、甘党男子、GW、母の日
6月梅雨、紫陽花、傘、てるてる坊主、夏至
7月梅雨明け、夏休み、七夕、花火、風鈴、暑気払い、蝉時雨
8月夕立、入道雲、夏祭り、海、ひまわり、朝顔、お盆、灯籠流し、ひぐらし、立秋、催涙雨
9月十五夜、月見、お彼岸(墓参)、コスモス、竜胆、彼岸花
10月ハロウィン、焼き芋、葡萄、読書、演奏会、菊、神無月、十三夜
11月時雨、紅葉、冬将軍、千歳飴、木枯らし、立冬
12月年の瀬、冬至、針供養、冬休み

お題配布サイト様→Toy様「しのぐ式」様お題配布ページ宵闇の祷り様

家路(吹雪)

作中に出てくる二人の名前を書いてないのは意図的です。分かる人、いるかな?
一応、季節お題「吹雪」です。あんまり関係ないけど。

「やべっ、本格的に吹雪いてきたな。」
「あんたが土産物屋でグズグズしてるからだろ。」
「あーん、そんな怖い声を出して! イケメンが台無しよ!」
「やめろ気色悪い! 無駄口叩く暇があったら、一歩でも先へ進め。これ以上酷くなったら帰れなくなるぞ。」
二人の魔法戦士がプロクトの街中を、軽口を叩き合いながら小走りで通り抜けていく。
大臣の依頼をこなしてポーレートまで行った帰り道だが、つい先ほどから急激に風が強くなり始め、降っていた雪が二人の身体にまとわりついている。
「こんなことになるならテレポレスを俺たちが持つべきだったな」
「仕方ねえよ、俺たちの方が近場だったんだからさ。」
それに加え、二人への依頼は仲間のそれよりも簡単なもので、予定より早めに終わっていた。
そして二人は、見事に嵌まった。「気の緩み」という大きな穴に。
船の出航時間まで余裕があったため、時間を潰すという名目で羽を伸ばしすぎて乗り遅れたのだ。
結果的に一便後の船で帰ってきたというのがこれまでの顛末だ。

だが、彼は文句を言いつつも相方をそれほど責めることはしない。
(──ったく、お人好しにも程がある。)
それは知っているからだ。相方が、魔物に親を殺された子供達の面倒を時々見ていることを。
今回買った土産の中に、仲間に頼まれていたものの他に、その子達のものが入っていることを。
(何だかんだ言いつつ、結局合わせてくれるんだよな。口に出したら機嫌悪くなるから言わねえけど)
そして、彼もまた知っている。
買うものに迷っていた時、言われた文句の中にさりげないアドバイスが含まれていたことを。
船の出航時間に間に合わないことよりも、土産を選ぶ時間を優先してくれたことを。

家の灯りが二人の行く先に煌々と点っているのが見えてきた。
お帰りなさいの声と、温かい食事が二人を出迎えるまで、あと少し。

冷たい朝と君の温もり(冷たい)

シリアス寄り。登場するメインキャラはヤマトとアヤネだけ。ヤマアヤ好き増えろ。

 冬という季節と朝方という時間帯の組み合わせは氷剣だ。氷属性の魔法など不要だと思うほどである。
 それならば日が昇ってから出かければよいのだが、この家は常に食糧難なのだ。2名の盗み食い常習犯がいるためだ。
 朝市に出かけないと朝食の食材すらないのである。
 市場の活気に近づくにつれて、コートのフードを深くかぶる。
「いらっしゃい、お兄さん。今日はトマトが安いよ!」
 張りのある声の女性が笑顔を向けてきた。
 フードによって視界は狭くなっているが、毎日料理をしている自分にとっては問題のないことだ。
(トマトをベースにするなら……。人参とパセリもあるのか。ミネストローネに出来そうだな。マカロニのストックはあったはずだ)
 品定めをしている間、売り子の女性は別の客の相手をしていた。それがなかなかに長い。女性という生き物は何気ない会話を積み重ねることで立場を確立する。世間話は生命活動なのだ。故に、自分が避けたいものでもある。
「大丈夫? こんなに持てるかい?」
「平気です。子どもが食べ盛りだから、これでも足りないくらい。よいしょ」
 客の女性は大きな紙袋を持ち上げた。おぼつかない動作で歩を進めようとする。警戒せねばならない。
「あっ」
 素早く女性を受け止める。予想通りだ。あの足取りで転倒しないわけがなかった。雪で足元が悪くなっているのだ。
「ありがとうございま――」
 胸の中の女性の顔が、一瞬で引きつったのが分かった。慌てて頭に手をかける。脱げてしまっていた。真っ黒な自分を隠すためのフードが。
 女性は小さく悲鳴を上げる。生存欲求に従って一目散に走り出す。
(……人に接しなくて済むように、なるべく早い時間に来たんだがな)
 女性に対する怒りは沸いてこなかった。あれが当たり前の反応だろう。
「……これ、いただけますか」
 店員からも先ほどまでの快活さは消えていた。会計をする手は震えている。
 当然だ。自分は大魔王なのだ。数多くの命を奪い、負の感情のままに破壊の限りをつくした虐殺者なのだから。

 礼を言って市場を去り、帰路を歩きながら考える。
(やっぱり、ここを離れた方がいいのかもな)
 自分がいることで、民は必要のない恐怖や憎悪を抱かねばならない。
 自分と共にいてくれる皆が、影で何を言われているのかも知っている。
 ここを離れて、誰もいない山奥でひっそりと暮らす。その選択肢を考えない日はなかった。
(陛下に謁見してみるか)
 あの国王陛下は自分を気にかけてくれていた。城の役人や兵士からの嫌がらせが陰口程度で済んでいるのはあのお方が気を回してくれているからだろう。
 だが、それがなくなれば、今より状況は酷くなるだろう。
 自分が傷つく分には構わない。それだけのことをした自覚はある。贖罪する覚悟はできている。
 居た堪れないのが自分の周りに被害が及ぶことだ。大切な親友や幼馴染、こんな自分を心配してくれた仲間が傷ついてしまうのは耐え難い。
 重たい息を吐く。こんなに真っ黒な存在なのに、吐き出される息は真っ白なのだ。

「ヤマトさん。おかえりなさいませ」
 気が付くと家の前に辿り着いていたようだ。ガーデニング中のアヤネが微笑みを向けてくる。
「申し訳ございません。もう少し早く起きていれば、お買い物のお手伝いができるのに」
「いいんですよ。自分の都合で、朝早く出かけているんですから」
「半分お持ちしますね」
 アヤネの手が自分に触れる。アヤネは小さく声をあげた。
「こんなに冷たくなってしまっては、あかぎれができてしまいます……」
「大丈夫ですよ。慣れているので」
「お花のお手入れをしていた私よりも冷たいなんて、慣れていいことではありませんよ」
 華奢な手でぎゅっと握ってくる。温かさに触れた手が喜んでいるのが分かる。
「こうやって、温もりを覚えていないと駄目なんです。冷たいまま慣れてしまうと、気が付かないうちに肌が傷ついてしまうのですから」
 白い手が離れる。体温を失った手が抗議として痛みを与えてくる。
「中に入りましょう。私も、朝食の支度、お手伝いいたしますね」
 扉に吸い込まれる彼女を見て、慈愛とはなんと惨いのかと思う。
(……温めてもらわなければ、反動でより冷たくなることもなかったのに)
 大魔王を赦し、共に暮らし、笑ってくれる人が存在するから。
 同じ家で温もりを共にするという、生まれてから渇望していたものが、今、この手に入ってしまったから。
 だから、独りになりたくないなどと思ってしまうのだ。
 こうして今日も、ここを去るという決意が砕けてしまう。
 まだ光のない灰色の空を見上げる。
 こんな自分を見ている人は、自分を赦してくれるだろうか。

 とりあえず今は温かい食事を作ろう。そろそろ盗み食い犯たちが起きるころだ。
 酷使してしまった手に、少しばかり温もりを与えてもいいだろう。
 大魔王は今日も、無限の愛に溢れた「家」に帰る。

巣立ち(卒業)

突発的に思いついたクワエリエレズネタを投稿。
あるシーンを切り取っただけなので、山も谷もオチもないですが、よければどうぞ

クルクルと、薄いピンクの花びらが舞う。
花びらを踊らせる風はまだ冷たく、温かさの中に去りゆく冬を思わせる。
今年もまた、別れの季節がやって来た。

「お別れはやっぱり辛いですですう……」
「別に、会えなくなるわけじゃない。祝いの日なんだ、泣くのはやめよう。」
「俺様は別に、泣いてないからな!」

教会が保護している子どもたちは、一定の年齢になると社会へ巣立っていく。
中には、規定の年齢になる前に引き取られていく子どももいるが、それは稀なことだ。
大抵は、働き口を見つけ、社会の一員となる。

「あいつらも大きくなったなあ……」
「何よ、レオ。珍しくしみじみしちゃって。」
「うるせえ。」

教会による不正は、今はもう行われていない。
偶然彼らの手助けをすることになった魔法戦士たちの働きかけで、悪事を行っていた幹部が一掃されたためだ。
だから、もうコソコソとローブで顔を隠し、物陰から見守らなくても良いのだが、どうにも踏み切れない。
結局、魔法戦士たちに頼んで風魔法で彼らの声を届けてもらっている。

「『今日という日は、残りの人生の最初の日である。(※参照)』 こういった人が昔いたそうですが、毎日とは、人生で初めての、そして一生で最後の1日なのです。朝起きて始まる、まだ何も起きていない真っ白な一日を、どうか大切にして下さいね。」

神父の声に応えるかのように、風が吹く。
花びらを乗せて、過ぎて行く。
その行き先は誰にもわからない。
願わくば、巣立つ子の歩む道に幸多からんことを。

※ Today is the first day of the rest of your life. (Charles Dederich)
翻訳:今日という日は、残りの人生の最初の日である。 (チャールズ・ディードリッヒ)

ノン・タイトル(甘党男子の日)

5月5日は甘党男子の日ということで投下されたSS。挿絵という名のクオン改変画像あり

「今日は甘党男子の日なんだって!」
「何だその日は……。俺には関係ないが」
「お、オレだっておこちゃまは卒業してるんだぞ! ヤマトと同じコーヒーだって飲め――ゲエエエエエ! この苦さは人類の味覚を破壊する殺人兵器だ!」
「あんたはまだまだお子様ね」
「俺にも関係のない日だな」
「ただいま戻りました」
「お帰りアヤネ! その袋は?」
「喫茶店で新商品のマカロン、とても可愛らしい見た目だったので、思わず買ってしまいました。皆さんの分もございますので、よかったらいかがですか?」
「わーい! ありがとう!」
「うひょー! このマカロンが食べられるなら、オレは甘党男子のおこちゃまでもいい!」
「気持ちだけ受け取っておきます。アヤネさんの分にしてください」
「……」
「うーん! おいしーい!」
「男が甘いものを食べて何が悪い! うまいものはうまい!」
「……」
「……ふたつもいただいたら、ご飯が食べられなくなってしまいますので……。クオンさん、よかったらいかがですか?」
「……貰っておく」
「(*´ω`*)」
(手懐けるのも慣れたものだな……)

 

甘党男子.jpg
甘党男子2.jpg
甘党男子3.jpg

霖雨(梅雨)

ふと思いついたスミカとアヤネの何気ない日常

店の窓から通りへ目をやりながら、スミカは小さなため息をついた。
ここのところ、天気がずっと思わしくない。
「梅雨に入ったんだろうな」
洗濯物を干す場所に困る、と幼馴染みがぼやいていたが、
スミカにとっても雨天・曇天続きはあまりいい気分ではない。
水たまりに気をつけながら歩かなくてはならないし、大事な服が濡れてしまいがちなのも嫌だ。
しかし、彼女は気づく。
隣で同じく窓の外に目をやるアヤネが微笑みを浮かべていることに。
タイミングを測ったかのように、彼女が声をかけてきた。
「綺麗ですね。」
「え?」
怪訝に思って聞き返すと、彼女は笑みをいっそう深めた。
「色んな傘がたくさんあって、お花みたいです。」
改めて目をやると、色とりどりの傘が見える。
確かにそれは、アヤネの言うとおり動く花だ。
そういえば、雨に濡れるとガラスのように透き通る花(注・山荷葉)がある、と教えてくれたのもアヤネだ。
植物を愛する彼女は、色々なことを教えてくれる。
それは、自分の知らない知識だったり、自分とは違うものの見方だったり様々だ。
(凄いな、アヤネは。)
男尊女卑の風習に苦しめられ、何もない閉ざされた田舎で育ったというが、彼女の考え方には驚かされてばかりだ。
今のようにたった一言で心を軽くしてくれることも、しばしばある。
「あはは、そんな風に考えたら、雨も楽しくなりそうだね! ねえ、アヤネ。ちょっと雑貨屋さんに寄っていこうか。新しい商品が入ってるって聞いてたから、気になってたんだ。」
「そうなんですか。それは楽しみですね。」
アヤネの微笑みに、スミカは心がスーッと晴れ渡るのを感じた。

夜雨(梅雨)

ふと思いついたクオンとちょっとだけヤマト。こんな日もあるんじゃないかなーと。

月のない夜は、動きやすくていい。五感を尖らせ、息を潜め。
周囲の様子を窺いながら、音も立てずに暗がりを進む。
やがて、見回りの兵士に見とがめられることもなく城内から抜け出すことに成功した。
その頬に、冷たいものが当たる。
(雨か……。)
軽く眉をひそめると、小さく舌打ちをした。
早めに帰った方が良さそうだ。
近道をしようと手近なところに飛び降りると、溜まっていた水が跳ねて小さく音を立てた。
一瞬ドキリとしたが、幸いなことに周囲には誰もいないようだ。
ホッと胸をなで下ろしつつ、心の中で悪態をつく。
(だから雨は嫌いなんだ。)
だが、すぐに頭を切り替えて城の敷地外に出るための最短ルートと、覚えている見張りの動きを計算する。
やるべきことを決めれば、彼の行動は素早かった。
そしてその後は、僅かなミスもおかさず、城の外へ抜け出したのだった。
あとは家へ帰るだけなのだが……。
(まともに道を進んだら帰るのが遅くなる。身体が冷えたら拙い。)
彼は地面を蹴ると、まるで黒猫のようにしなやかに、音も立てず塀の上へ跳び上がった。
そして、風魔法を使いながら再び跳躍して、ひときわ高い民家の屋根へ降り立った。
方向を確かめるために見下ろしたプロクトの街中は、街灯以外の灯りを見つけ出すのは困難だ。
その灯りを頼りに進むべき方向を探り出す。
(滑らないように気をつけねえと)
帰るべき場所へ、彼は急ぐ。

* * *

(土砂降りにならなくて良かった。さっさと風呂に──)
突然、目の前に差し出されるタオルに、一瞬硬直する。
「遊びすぎだぞ。何時だと思ってるんだ。」
「……珍しいな。あんたがこんな時間まで起きてるなんて。」
「ちょっと目が覚めてな。そしたら誰かさんがまたいなかったから。」
クオンにタオルを押し付けながら、ヤマトは軽く彼を睨む。クオンは軽く肩をすくめた。
「身体を拭いたらキッチンに来い。何が飲みたい?」
「ダージリンのストレート。」
無言でキッチンに向かうヤマトの背中を見ながら、クオンは笑みを浮かべる。
やっぱり暗闇はいい。こんな表情を見られなくてすむのだから。