メレー・ダイヤモンド

Last-modified: 2020-09-03 (木) 22:59:40


11.メレー・ダイヤモンド
宝石言葉:脇役からの出発

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あらすじ ※ネタバレ注意※

ショートカット
プロクト駐屯地
プロクト駐屯地・武具庫
アザリーの過去
バシリッサ標塔

 

冒頭回想・ワタル&クオン編

学校の武道会。
次が最終競技だが、ワタル達のチームは相手に大差をつけられている。
相手に大量リードを許す原因となったチームメイトが
「僕のせいで……」
とひたすら謝罪するが、ワタルは「オレが何とかする!」とムードを盛り上げる。
しかし、現実的にはワタル達の勝利は絶望的だった。
最終競技は物理と魔法の両方を競うが、ワタルの魔法では話にならない。
加えて、相手のチームは前回の競技会の首席を投入するという。
ふと思い出したように、ワタルは当時転校してきたばかりだったクオンに声をかける。
「そうだ! 転校生の──クオンだよな! 何とかならないかな?」
今でこそ首席として一目置かれているが、この時クオンの実力は未知数だった。
相手チームは
「試合を諦めて転校生に恥を押し付けようってか?」
「人数合わせで突っ込まれただけの転校生に勝てるわけがないわ。」
と、試合前から勝ちおごり、完全にワタル達を見下している。
そんな雰囲気の中、クオンは黙って出場し──そして、圧倒的な実力を見せつけて完勝した。
ワタル達の逆転優勝だ!
しかし、チームメイト達は勝利の立役者であるクオンには声をかけず、自分たちの勝利を喜び合う。
ワタルが
「皆で頑張ったおかげだな! 誰か一人でも手を抜いたらもっと点差があったわけだし。」
と言ったことで、先ほど謝罪していたチームメイトがワタルに礼を言う始末だ。
その後にやっと、
「それにしても、すごかったな、あの爆発魔法!
教本には載ってなかったよな? あれはどうやって──」
とワタルがクオンに声をかけた時には、
クオンは既に皆に背中を向けて歩きはじめていた。

プロクト駐屯地

ワタル達は大臣から、作戦を途中で抜け出したことを叱責される。
謝罪しようとするアヤネの言葉を遮って、
「彼女は指示に従っただけ」
と罪を一人で被るクオン。
以前から大臣の反感を買っていたクオンだが、当然の結果として、さらに悪印象を与えることになってしまう。
アザリーは
「今度こそ作戦を完遂する。あなた達の行動の責任はあなた達自身でとることね。」
と告げ、ワタル達は作戦が始まるまで駐屯地にて待機になる。

プロクト駐屯地・武具庫

その夜、ワタルは落とした魔装石を探しに武具庫へとやってくる。
そこでは、アザリーが複数のメイドに囲まれて嫌がらせを受けていた
「貧民のくせに、変な力のおかげで特権階級になっちゃって。
あのまま魔法陣の向こうで死んでればよかったのに!。」
心ない言葉を投げつけ、アザリーに手を挙げるメイド達。
しかし、彼女たちはワタルに気が付くと、慌てて出て行ってしまった。
アザリーを心配するワタルだが、アザリーの言葉はいつも通りそっけない。
「平気。いつものこと。」
「いつものことって、余計にダメじゃねえか!」
「皆を救いたいなら魔王討伐のことだけを考えて」
「その「皆」の中にアザリーが入っていなければ意味がないだろ!」
一向に引く気配のないワタルに、アザリーの表情が険しくなる。
「あなたをこんなものにしたのは私よ」
「アザリーは世界を救いたかった。助けてくれる人が必要だった。それだけだろ。
少なくともオレは悪くないと思ってる。
自分の知らないところで泣かれるより、言ってもらった方が嬉しいから。」
アザリーはついに叫ぶ。
「違うわ! 世界なんてどうでもよかった! 私はただ、あなたにもう一度……」
そしてアザリーは、突然自身の過去を語り始める。
「教えるわ。私は、救うに値しない存在だということを。」

アザリーの過去

幼少期の頃からアザリーはメイドによるいじめを受けていた。
元奴隷だったアザリーは城の人間に受け入れられなかったのだ。
執事からも仕置きを与えられていたようだ。

ある日、城の調査隊がズーマ塔の魔法陣を調べていると、突然魔法陣が作動した。
以前、スミカを襲ったのと同じ力が周囲に満ち、調査隊の一人に当たる。
力が当たった調査隊員は恐怖におののき、
己の保身のためにアザリーを魔法陣へ押しやる。
アザリーは魔法陣に飲み込まれ、周囲は元の通り静まりかえった。
「な、何が起こったのでしょうか……?」
「まあ、いい。最悪、あの奴隷女はどうなろうがな……。」
アザリーの心配をする声は、一つもなかった。

魔法陣に吸い込まれたアザリーは、自分がとっくに捨てた物──
人の感情が流れてくるのを感じる。
そこには感情が溜まっていたが、何故か黒い──負の感情ばかり。

──種をあげましょう。

生き物の吐き出す感情は醜いものがほとんど。
幾多の世界の感情が溜まったこの場所は──
「世界の狭間」とでも呼ぶべきだろうか?

世界を無に戻す種を。

アザリーの視界に世界が見える。おそらく、プロクトとは別の世界が。

今の世界を認める種を

けれど、あの世界も本質はプロクトと同じ。
黒い感情で、醜く汚れているのだろう。

アザリーが見た世界は、イカルガだった。
別の世界であっても、アザリーにとっては何も変わらない。
心ない言葉が際限なく降りかかる。

──私はこの、名も知らない世界で死ぬのだろうか。
まあ、大して変わらないのだが。
もとの世界に帰ったところで私を待っている人などいないのだ。

もはやアザリーは、ボロ雑巾も同様だった。
雨が降ってくる。
心身共に疲れ果て、道ばたへ座り込んでいたところへ、
一人の少年が通りかかる。その少年こそ、幼いワタルだった。
アザリーを見て驚いたワタルは、手を差しのべる。
「大丈夫か!?」
「とりあえず、これ! 魔法使いごっこしてた時の服!
 これで少しはあったかいと思う!」
「それから、これはハンカチ! ちょっとでも身体拭かないと、風邪ひいちゃうぞ。
ああ、そこに書いてあるの、オレの名前だよ。ワタルっていうんだ。」
「……お腹空いてるのか? えーっとえーっと……。
あった、チョコレート! これあげる!」

――種を植えましょう。この世界を護る種を。

その時、ワタルの背中に別の少年の声がかけられた。
「あ、ヤマト!」
「ワタルのお母さんが探していたよ。約束したのに帰ってこないって。」

――種を植えましょう。この世界を無に還す種を。

その時、アザリーは光に包まれた。
「ワタルは、こんなところで何をしていたの?」
ヤマトに聞かれたワタルが、
「そうだ! ここに女の子が──」
と振り返った時には、アザリーの姿は消えていた。

アザリーは再び世界の狭間にいた。
何故プロクトに帰ることができたのかは分からない。
だが、アザリーの中に、ひとつだけ残った気持ちがあった。
たったひとりの、私に手を差し伸べてくれた人。
私に真っ白な感情をくれた人。
理由なんて何でもいい。
世界なんてどうでもいい。
私の生きる糧は、あなた。わたしは、あなた。

世界の狭間に存在するエネルギーを使い、
魔法戦士システムを作ったアザリーの地位は、上げられた。
それは世界のためではなく、もう一度ワタルに会いたいがための行為だった。
「私の想定外だったのは、あんなものに、あなたが選ばれたこと。
魔法戦士になってしまったらあなたはいつか、その役目に直面してしまう……。」
アザリーは憂う。そして改めてワタルに問いかける。
「……何度も言ってきたこと。
全体幸福を願うあなたは、たったひとつしか見ていない私を助けることができるの?
私を助けたばかりに、あなたは、こうなったのよ。それでも全体幸福を望むの?」
ワタルはすぐに答えられない。
しかし、「難しいこと、分かんないけど。」と前置きし、
「アザリーを助けなかったら後悔していたと思う。
タクヤを失ったから分かるんだ、自分の意思で自分を殺す、そんな人がいる辛さが。
だからオレは皆で幸せになる方法を探す。
アザリーにだって、独りで苦しんだままになってほしくない。
あの時のオレのおかげで、この言葉を伝えられたんだから、
後悔なんてするわけないだろ。」
そこにワタルを探していたスミカが入ってくる。
「ワタル! いつまでふらふらしてるのよ。とっくに時間過ぎてるんだけど!」
「そんなに怒るなよー。怒りの波動で脂肪が波打つぞ──」
「いくわよ。」
「はーい。」
気心の知れた物同士の会話をするワタルとスミカを、
アザリーが悲しげな表情で見ているのに、スミカは気づくのだった。

バシリッサ標塔

ワタル達は、バシリッサ標塔の最上階へ到達する。
解呪呪文の詠唱をはじめようとした途端、魔物が現れて妨害しようとする。

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すかさずスミカが前に出る。
自分としっかり向き合った彼女に、もう迷いはない。
ワタル達は、魔物の撃退に成功したのだった。

解呪呪文を唱えるアヤネもまた、決意を新たにしていた。

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※ネタバレ注意※

考察 ※ネタバレ注意※

折りたたみ内のメインキャラのセリフは、
文字色をそれぞれのイメージカラーにしています。
「ワタル」「スミカ」「ヤマト」「アヤネ」「クオン」です。
それ以外のキャラの色もメインキャラに準じて決めています。
詳細は折りたたみ内最初に記載しています。

ショートカット
冒頭回想・ワタル&クオン編
アザリーの過去

 

第11話のタイトル「メレー・ダイヤモンド」の宝石言葉は「脇役からの出発」。
主体性に欠けていたアヤネが、自らの意志で動くようになったことを意味していると思われる。
それと同時に、「天才戦士の妹」の立場に甘んじていたスミカが
「一人の魔法戦士・スミカ」として戦い始める回でもある。
つまりは、ここでスミカ・アヤネの葛藤と成長の物語は一段落するということだ。
バシリッサ標塔でのアヤネのモノローグが締めくくりの意味を持っている。

 

冒頭回想・ワタル&クオン編

冒頭回想はワタルとクオン編。
前回の出来事と今回の回想を合わせると、クオンがワタルに抱く感情が見えてくる。

武道会で実際に活躍したのはクオンだ。
しかし、相手に大量リードを許す原因を作ったチームメイトが
真っ先に感謝の言葉を述べたのはワタルの励ましに対してだった。
他の人間も、クオンには礼の一言も言わず、自分たちの勝利に酔っている。
こうなった原因はクオンとその他の人間、双方にある。
少し掘り下げてみよう。

ワタルは、誰にでも分け隔てなく接する優しい性格の持ち主だ。
(それに加え、心の底に大きな問題を抱えているのだが、今は伏せる。)
だから、「自分の失敗せいで……」と落ち込むチームメイトを真っ先に気遣う発言をしており、
声をかけられたチームメイトがそれに感謝するのは当たり前だろう。
そして、ワタルは皆の輪からやや離れたところにいたクオンに
「そうだ! 転校生の──クオンだよな! 何とかならないかな?」
と頼んだ。それを聞き入れたクオンが出場して逆転勝利をもぎ取ったのだが、
彼らのなかの誰一人として、チームに戻ってきたクオンに礼を言っていない。

クオンに真っ先に声をかけたのはやはりワタルだったが、
その時にはクオンは彼らに背を向けて歩いていた。
クオンが戻って来ても黙っていたから、あるいは皆と会話していたから
声をかけるのが遅れたという見方もあるだろう。
しかし、誰か一人がクオンにすぐ声をかけていたら、どうだっただろうか?
クオンにしても、彼らの会話が落ち着くのを待ってから
「俺への感謝はないのかよ?」
というような軽口を叩いていれば、情況は大きく変わっただろう。

そうしなかった、あるいは出来なかった事情を考えてみよう。
クオンは一見すると一匹狼で近寄りがたい雰囲気を醸し出しており、ましてや転校してきたばかりだ。
(※ 制作者によると、クオンは「一見すると一匹狼だが実は……」というのを狙ったキャラとのこと。)
チームメイトから見れば、声をかけづらい相手ではないだろうか。
一方のクオンは、他人が和気藹々としているところに進んで飛び込むような性格ではない。
これは元々の性格に加え、彼に降りかかった事件や彼が転校してきた理由が関連しているのだが、今は伏せる。

細かい事情はひとまず置くとして、最大の問題点を挙げると
クオンとワタル含むその他チームメイトにある「信頼度の差」だといえるだろう。
ワタル以外の人間はクオンの名前を呼ばず、「転校生」と言っているところからもそれが伺える。
(逆にいえば、こういう細かいところにワタルの優れた点が現れている。)
お互いに相手のことがよく分かっていないということだが、クオンは面白くない筈だ。
特に、自分に「何とかならないかな」と声をかけたワタルには
ひときわその気持ちを強く持ってしまってもおかしくない。

第10話でも、自分が血の出る怪我を負いながら、
スミカに必死に呼びかけたにもかかわらず、目に見えた効果は出ていない。
ところが、ワタルはたった一度の呼びかけでスミカを呼び覚ますことに成功した。
実際は違っているのだが、
「自分は何もできなかった」
クオンはそう思い込んでしまった。
(彼がすぐにそういう結論に至る原因はこれから明かされる悲しい生い立ちにあるのだが、ここではまだ伏せておく。)

クオンからしてみれば、学校で首席の座に座る実力があるのに、いざとなると何もできない。
それなのに万年末席のワタルが簡単に自分にできないことをやってのけ、
自分のほしい言葉を手に入れている。
当然それは、気持ちがよくないことだろう。
この「ワタルコンプレックス」とでもいうべき感情は、後にはっきりと口にされる。

β版コメンタリー(見たい人は反転)
この回想と10話ラストシーンを組み合わせることで、
クオンの中にある「誰も救えない」という無力感を
受け手に伝えることになります。
ワタルは皆を大切にするキャラということで、
「その時一番壊れてしまいそうな人」のケアを優先するんですよね。
ですから、まずは失敗して落ち込むクラスメイトのカバーに行くわけです。
その子が元気になったらクオンに声をかけていますよね。
同級生たちが酷く見えるかもと心配していますが、
クオンの斜に構える態度や捻くれた物言い、決して擁護は出来ない暴言の数々は
ここまできたらプレイヤーにも伝わっていると信じています。
実際の会話

──ただいまの勝負、チーム・ルーナに57ポイント!
チーム・ルーナが128ポイントリード、最終競技に入ります!
今回の武道会を制するのは、どちらのチームなのでしょうか!?

チームメイト:
うーん……。まいったな、こりゃ。
128ポイント差じゃ、もう絶望的だね!
ごめんなさい。僕が、あんな負け方をしたから……。
「大丈夫大丈夫! このオレがさくっと挽回するからさ!」
最終競技は物理と魔法の両方を競うのよ。
物理はともかく、魔法はからきしでしょう、あなた。
「えへっ。」
そして相手はトオル。細剣と水魔法使いのイケメン御曹司だ。
後半は関係ないでしょう。ただ、彼は前回の競技会の首席。
私たちに勝ち目はないわね。
やっぱり僕のせいで……。
「そうだ! 転校生の──クオンだよな! 何とかならないかな?」
転校生をいきなりトオルとやり合わせるのかよ!?
でも、私たちが出たら128ポイントを埋めるどころか
さらに差を広げられて惨敗でしょうね。
手の内が分からない転校生に出てもらえれば
相手の不意を突いてワンチャンスあるかも! みたいな!

──クオン、試合に出る──

敵陣営:
何だぁ? チーム・ソールは試合を諦めて転校生に恥を押し付けようってか?
トオル様の敵はいないわ! トオル様は今期一番の優等生なんだから!
人数あわせで突っ込まれただけの転校生になんて!

チームメイト:
ごめんなさい……! 僕のせいで、転校生に恥を……!

──試合開始。クオン、速攻で完勝。司会者も半ば呆然としている──

……た、ただいまの勝負、チーム・ソールに197ポイント……。
67ポイントリードで、チーム・ソールの優勝……。

チームメイト:
やったやった! あたしたちの勝ちよ!
「皆で頑張ったおかげだな!
誰か一人でも手を抜いたらもっと点差があったわけだし。」

ありがとうワタルくん。そう言ってくれて嬉しいよ。
あなたがもう少し魔法の勉強をしていればもっと楽に勝てたはずなのよ。
「いやん。」

──クオン、皆の会話には加わらず、無言でその場から離れ始める。──

「それにしても、すごかったな、あの爆発魔法! 教本には載ってなかったよな? あれはどうやって──」

──ワタルの問いに答えず、クオンは去って行く──

アザリーの過去

そして今回は、いよいよアザリーの過去が描かれ、ワタルに執着する理由が明らかになる。
何回か出てくる「あんなもの」は「魔法戦士」ではないと確定するシーンでもある。
「私の想定外だったのは、あんなものに、あなたが選ばれたこと。
魔法戦士になってしまったら、あなたはいつか、その役目に直面してしまう……。」
という台詞があるからだ。
では、アザリーのいう「あんなもの」とは。ワタルが背負うことになる役目とは。
それが明らかにされるのは物語の終盤になる。

また何回かに分けて登場する
「――種を植えましょう」
という一連の文章だが、実はこれが超重要センテンス。
(ある重要人物のモノローグなのだが、今は伏せる)
これらが表示されたタイミングと文面に注目しよう。
鋭い人なら、ここで「種」というワードにピンと来たかもしれない。
第9話でレオが言った言葉の中に「種」というワードが入っていたはずだ。

実際の会話

※ この色は種に関する文章(重要キーワード)

 

 

♪オフ

──夜の武器庫。3人のメイド達がアザリーを囲んで嫌がらせをしている。──

ねえねえ、聞いたわよ。魔法戦士様に逃げられたんですって?
やっぱりアザリー様の化け物オーラを感じたんじゃないですかあ?

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──アザリーに手を上げるメイド達。その時、ドアが開いてワタルが入ってくる──

「あれー? 魔装石、どこに落としたっけなー?」
魔法戦士様、お探し物ですか? 私たち、お邪魔になるので出て行きますね!
「大丈夫か!?」
「平気。いつものこと。」
「いつものことって、余計にダメじゃねえか!」
「皆を救いたいんでしょう。なら、魔王討伐のことだけを考えて。」
「その「皆」の中にアザリーが入ってなかったら意味ないだろ!」
「……あなたをこんなものにしたのは、私よ。」
「アザリーは世界を救いたかった。助けてくれる人が必要だった。
それだけだろ。
それで、オレたちを頼ってくれて、少なくともオレは悪くないと思ってる。
自分の知らないところで泣かれるより、言ってもらった方が嬉しいから。」

「違うわ!」

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「教えるわ。私は、救うに値しない存在だということを。」

──場面転換:過去。倉庫の隅で、アザリーがメイドに虐められている──

いい気味よねー。貧乏人にはお似合いだわー。
奴隷なんて人間じゃないもの。
それなのにパンを盗み食いなんて、意地汚いわね!
こーんな汚い所なんて、可哀想ね。食べられるパンの方が!
あははは……!

──言うだけ言ってメイド達は出て行き、入れ替わりに執事らしき男性がやってくる──

アザリー……分かっているね。

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さあ、来なさい。

──場面転換:ズーマ塔の魔方陣付近。巨大な力の渦が荒れ狂っている。──

何だ、この魔法陣は……!

──突然のことに驚く調査隊。そのうちの一人に魔方陣の力が当たる。──

ああああああ、やめてくれ……!

──魔方陣の力に当たったメンバー、アザリーを魔方陣へ押し出す──

そ、そうだこの女を! やるならこの女に……!

──アザリー、魔方陣に吸い込まれて消える。そして、辺りは静まりかえる。──

な、何が起こったのでしょうか……?
まあ、いい。最悪、あの奴隷女はどうなろうがな……。

──どこかを漂うアザリー──

──何かが流れてくる。
とっくの昔に捨てたはずの……。
ニクイツライドウシテワタシガウラメシイネタマシイ
ゲキドフンドヨクセンボウテイカンショウキョクレットウ

ああ、ここには感情が溜まっている。
黒い感情ばかりじゃないか。

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生き物の吐き出す感情は醜いものがほとんどだ。
幾多の世界の感情が溜まったこの場所は──
「世界の狭間」とでも呼ぶべきだろうか?

世界を無に戻す種を。

ああ、あそこに世界が見える。
プロクトとは違う世界だろう。

今の世界を認める種を。

けれど本質はきっと変わらないのだろう。
黒い感情で、醜く汚れているのだろう。

──場面転換:イカルガ──
──公園の噴水前で3人の男の子がアザリーを囲んでいる。──

何だコイツ、汚いし臭いしだせえし!
ちゃんと水浴びしてんのか?
お前みたいなクソが出歩くんじゃねえよ!
おいおい失礼だぞ。クソにな!
ははははは……!

──場面転換:どこかのお店の中──
──その片隅で、4人の男女がアザリーを取り囲んでいる。──

この子だよ! お金払ってないのに、パン食べてたの!
うわあ……。見るからにお金なさそうだねえ……。
どうする? 何も喋らないし、親もいるのかどうか……。
……ったく。親もいない金もない。そんな餓鬼はゴミと変わらねえなあ。

──場面転換:学校のような建物の前に、2人の姉妹がいる。──

お姉ちゃん、あの子、何してるの?
見ちゃ駄目! 関わらないの、あんないかにも危険そうな子には!

──2人はアザリーを見なかったことにして立ち去っていく。画面暗転。──

──私はこの、名も知らない世界で死ぬのだろうか。
まあ、大して変わらないのだが。
もとの世界に帰ったところで私を待っている人などいないのだ。

──場面転換:町中のどこか、建物の隅に隠れるようにいるアザリー。──
──小さな男の子がその前を通りかかる。──

「おつかい、おつかい、ランララーン。カレーにシチューにハヤシラーイス。
飽き飽きローテーショーン。」

──男の子、アザリーに気づいて声をかける。──

「大丈夫か!? えーっとえーっと……。
とりあえず、これ! 魔法使いごっこしてた時の服!
これで少しはあったかいと思う!
それから、これはハンカチ!
ちょっとでも身体拭かないと、風邪ひいちゃうぞ。」

「ああ、そこに書いてあるの、オレの名前だよ。
ワタルっていうんだ。すぐそこの学校に通ってるから、
その先生に「ワタル」って言えば伝わるから!」

「……お腹空いてるのか?えーっとえーっと……。
あった、チョコレート! これあげる!」

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「ワタル!」
「あ、ヤマト!」
「ワタルのお母さんが探していたよ。約束したのに帰ってこないって。」
「うわああああ! 忘れてたああああ!」

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──アザリー、光に包まれて消える。──

「ワタルは、こんなところで何をしていたの?」
「そうだ! ここに女の子が──」
「……誰もいないけど。」
「あれー? 絶対いたんだよ! おかしいなあ……。」

──場面転換:世界の狭間 アザリーが再び漂っている。──

──何が再び私を「世界の狭間」へ呼んだのか。
プロクトへ帰したのか。
それは分からない。
だひとつ、たったひとつだけ、私の中に残った気持ち。
たったひとりの、私に手を差し伸べてくれた人。

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理由なんて何でもいい。
世界なんてどうでもいい。
私の生きる糧は、あなた。わたしは、あなた。

──場面転換:現代の武器庫──

「世界の狭間に存在する感情エネルギー。
それを用いて魔法戦士を呼び出すシステム。
それを作った私の地位は上げられた。」

「世界のためではなかった。
ただ、もう一度あの世界と──あの人との繋がりがほしかった。」

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「魔法戦士になってしまったらあなたはいつか、
その役目に直面してしまう……。」

「……何度も言ってきたこと。」

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「私を助けたばかりに、あなたは、こうなったのよ。
それでも全体幸福を望むの?」

──ワタル、すぐには答えられない。──

「……難しいこと、分かんないけど。
その時、アザリーのこと知らないふりしてたら、一生後悔したと思う。
タクヤを失ったから、分かるんだ。
自分の意思で自分を殺す。そんな人がいる辛さ。
だからオレは探す。絶対に諦めない。
皆で幸せになる方法を。
アザリーのことだって、こんな風にされるの見逃せない。
ずっと独りで苦しんでいたのを苦しんだまま終わらせてほしくない。」

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──背後の扉が開き、スミカが入ってくる──

「ワタル! いつまでふらふらしてるのよ。
とっくに時間過ぎてるんだけど!」

「そんなに怒るなよー。怒りの波動で脂肪が波打つぞ──」
「いくわよ。」
「はーい。」

──悲しげな表情のアザリー──

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※ネタバレ注意※

攻略

プロクト駐屯地

♪プロクト駐屯地(曲名:Battle/配布元:Presence of Music)

イベント後、自由に動かせるようになる。今度は5人全員揃っている。
前と同じく、入って正面にいる兵士に話しかけるまでイベント進行はない。
装備を調えたり、サブイベントをこなしたりしてしっかり準備してから先へ進めよう。

  • ワタル・スミカ・ヤマトの装備が外れているので忘れずに装備し直そう。
  • イベント進行後、バシリッサ標塔攻略まではここが拠点になる。
    宿屋もどきや道具屋・武具屋もあるので困ることはないだろう。
  • 初回チャットで魔装石を入手する。
    • 「非常食物色」→敏捷性上昇+(会話:ワタル、スミカ)
    • 「情報収集」→物理ダメ率減少+(会話:ワタル、ヤマト)
    • 「空想鍛錬」→魔法回避率上昇+(会話:ワタル、アヤネ)
    • 「眠」→HP再生率上昇+(会話:ワタル、クオン、ヤマト)
チャット内容

非常食物色
「何だろうこの、秘密基地的な胸の高鳴り……!こういう場所でやるべきは──」

──敏捷性上昇+獲得──

「美味しそうなパンの匂い……。」
「食い物に支配されて恥ずかしいと思わないのか?今に脂肪で死亡するぜ。」
「動くから平気ですー!」

情報収集
「何だろうこの、秘密基地的な胸の高鳴り……!こういう場所でやるべきは──」

──物理ダメ率減少+獲得──

「敵地の情報収集だろう。遊びに来たんじゃないんだから。」
「ヤマトがやってくれるのか! それじゃあオレは宝探ししよっと!」
「お前のお守りには観音様レベルの忍耐が必要であることを失念していた。」

空想鍛錬
「何だろうこの、秘密基地的な胸の高鳴り……!こういう場所でやるべきは──」

──魔法回避率上昇+獲得──

「戦闘の想像でしょうか。ええっと、いめーじとれーにんぐ?」
「「お前の行動は読んでるぜ……!」とかできたらカッコいいよな!」
「…………はあ。」


「何だろうこの、秘密基地的な胸の高鳴り……!こういう場所でやるべきは──」

──HP再生率上昇+獲得──

「体力温存だろ面倒臭い。」
「夜はギリギリまで起きていたい!」
「朝はギリギリまで寝ていたい。」
「ああ、何と言う矛盾! 人間の身体というものがいかにその場の欲に支配されているのか、睡眠にまつわる欲求は我々にそれを見せつける!」
「もう意味が分からん、文字通りに意味が分からない。」

二回目以降
「何だろうこの、秘密基地的な胸の高鳴り……!こういう場所でやるべきは──」
「「ここは鬼ごっこの聖地、
直線での逃げ切りを狙うか、障害物を利用したフェイントを仕掛けるか……!」とかいう生産性のない回答はいらないからな。」

「ボケを潰すな! ツッコミ失格だぞ! いや、でも、逆に言えばそこまでオレのことを熟知してるということ……。いやーん。ここは往来よ! ちょっとアピール激しいんじゃない?」
「喧しくなったり、気持ち悪くなったり忙しいヤツだな。あと今の発言で吐き気に見舞われたからお前の夕飯つくらないからな。」

サブイベント情報

  • 宝探しをしませんか?
宝探しをしませんか?
詳しくはプロクトの中央エリアで。

手順は次のとおり。

  1. プロクト中央区北東の公園にいるガストンに話しかける。
  2. プロクトに隠したピンク色の3つの宝箱を探す。宝箱の隠し場所は以下のとおり。

    相談所前の右側にある槙の右:愛情の魔装石
    プロクト城前(プロクト城2階屋外)左側:シルクのベール
    プロクト東エリアの公園右下にある柱の裏:宝石の指輪
  3. ガストンに報告する。報酬は宝箱の中身に加えてエキサイダーマ1つ。

※ サブイベント会話集に会話掲載あり
※ 別タブで開きたい場合は右クリックでお願いします。

バシリッサ標塔

♪バシリッサ標塔(曲名:遊戯/配布元:音楽の卵)

  • 駐屯地から直接行き来することになる。
  • 雷耐性、風耐性、麻痺耐性、地強化と地属性攻撃手段があると楽に進める。
  • ギミックはないダンジョン。
    最短で宝箱を全回収するなら最初の左右の分岐は左へ行こう。
    その後テレポレスで入り口へ戻り、右へ進む。
    2階の分岐は左を先へ。その後は道なりに進めばいい。
    ちなみに、宝箱は2階とボス戦エリア前の3階にある。
    • 宝箱の中身
      左:雷耐性+
      右:風耐性+、地強化
      3階:麻痺耐性、ゴールドエリクサー
      • クリア後再訪:10000coin
  • 初回チャットでチャット「地強化+」の魔装石を入手する。
チャット内容

「ここの魔物は風・雷属性が多いみたいだな。」
「ふたつの属性だと!?
一個のことしかできないオレにはあまりにレベルが高すぎる!」

「幸い、弱点となる属性は地で同じみたいです。
地属性の攻撃手段があると理想的ですね。」

──地強化+獲得──

「そんな時にはこれ! スミカちゃんお手製魔装石!」
「うわああああああ!
それをつけた者は「ショ・クヨーク・ブックブーク」という
呪いにかけられるぞおおおお!

「あとで話があるから。」

※ 二回目以降は──地強化+獲得──以降の会話がカットされる。

  • 最奥部でボス戦。
ボス攻略
ボス戦の攻略はこちら→アザゼル&ビシャモンテン
※ 別タブで開きたい場合は右クリックでお願いします。

クリア時、アヤネが固有EPスキル「カンティクムサニタス」を習得する。

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