イエロー・スピネル

Last-modified: 2020-09-03 (木) 22:54:52


9.イエロー・スピネル
宝石言葉:自己愛 恋の年頃

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あらすじ ※ネタバレ注意※

#ショートカット
キュヌクス図書館
魔法戦士の家
プロクト
プロクト広場

 

冒頭回想・ワタル&スミカ編

戦士権大会でスミカたちのチームが負けた。
仲間たちは負けたことをスミカのせいにし、口々に中傷する。
「やっぱり負けたじゃん」
「兄のツケでメンバーに入ったのに、学校の名に泥を塗った」
「役立たずなだけならまだしも、味方の足を引っ張るくらいならいない方がマシ」

教室で一人落ち込むスミカを、探しに来たワタルが励ます。
「ここにいたんだな! 探しちゃったぜ!
まあ、今回は残念だったけど、また次に頑張ればいいじゃん。
皆、きっと分かってるって!
スミカは一生懸命やったんだから、誰もスミカを責めねえよ!
結果なんてオマケだよ、オマケ。大事なのは、精一杯頑張ったかどうかじゃん。」
長い沈黙の後、スミカは、
「……そうだね」
と笑ってみせた。

キュヌクス図書館

キュヌクス図書館に戻ったクオンは、早速入手した功績を使って結界を解除した。
図書館に入ることができたワタルたちは、クワエリエレズを追って先を急ぐ。
「魔力が強くなってきた。先に入った五人組に追いついてきてるのかもな。」
クオンが注意を呼びかけた時、不意にスミカの足が止まる。
「足の調子がよくないので先に行ってて」
ヤマトがその場に残るというので、他の3人はスミカを気にしつつも先へ進む。
2人になったところでヤマトが
「あいつ(=クオン)に何か言われたのか」
と尋ねるが、スミカは否定した。
「鉱山の町で魔物に遭遇したけど、アタシ、何もできなくて。
クオンくんがいなかったら何も護れなかった。
誰の役にも立てなかったら生きている価値がないよ。誰からも好きになってもらえない」
と涙を見せる。
「スミカは役に立ってるだろう。魔王を倒すために頑張っている最中じゃないか。
鉱山の魔物のことは相性の問題もある。
俺みたいな人間からすれば、スミカの速さは羨ましいよ。
だから、スミカは役に立っているよ。
スミカが必要ないなんて、そんなわけないだろう。」
と、ヤマトはスミカを励ます。
「今のままでいればいい。このままで、ずっといればいいよ。」
その言葉にスミカは気持ちを持ち直し、
「……ありがとう。アタシ、もっと頑張る!
アタシにできることをやって、皆で魔王を倒せば、たくさんの人を護れるんだからね!」
と、先に行った3人を追って走り始める。その後ろ姿を見たヤマトは胸中で呟く。
(二人にだけはこの世界に絶望してほしくない。そうなれば俺も消えてしまうから)

最奥部にたどり着いたワタル達は、再びクワエリエレズと相見える。
解呪呪文の書かれた書物はクワエリエレズの手に渡っていた。
「どうやって魔法を覚えたか知らないが、
魔法が使えるならお前たちが魔王を倒せばいいだろ。」
と、さりげなく疑問を含めた言葉をぶつけるクオンに、
「できたらやってるわよ! 大魔王を倒せるのは勇者だけなの!」
と否定の言葉を返すクワエリエレズのパンテラ。
そして、トゥードとコルニクスの
「つまり! 我々に今できることは勇者の力を覚醒させることなのだよ!」
「というわけで、ここで暴れておくかあ?
解呪呪文が知りたければ、俺様たちを倒してみな!」
という挑発の言葉を合図に、再度勝負をしかけてくる。
ワタルたちはこれを返り討ちにし、呪文書の入手に成功する。
しかし、さすがに二度目とあって、クワエリエレズも奥の手を用意していたらしい。
「こうなることも想定済み……。レオ!」
「おう!」
「森で使ってた魔法、俺様ひらめいちゃったぜ! 天才だぜ!」
実は先日、ザフラの森で様子を窺っていたのはコルニクスだったのだ。
レオの力を借りながら、コルニクスがスミカを狙って魔法を放つ。
咄嗟にヤマトがスミカを庇う。
「スミカ!」

──そして、ヤマトは倒れた。──

コルニクスが放った魔法は、クオンの爆発魔法をヒントに独学で編み出された、
付け焼き刃の滅茶苦茶なものだった。
当然、きちんとしたコントロールなど出来るはずもなく、
建物までが損傷し、崩れ始める。
「解呪呪文は無事に届けた! 撤退だ!」
とりあえずの目的は達した、と撤退するクワエリエレズ。そして、
「脱出が先だ! 突っ立ってんじゃねえ!」
呆然としていたワタル達も、クオンの叱咤にその場から逃れる。

魔法戦士の家

魔法戦士の家の外では、ヤマトを案じてアヤネが気を揉んでいた。
そこへ、ヤマトの手当を終えたクオンが現れる。
ヤマトの傷は幸いにしてそう深くはなかった。
ただし、当たり所が悪くてしばらくは目を覚まさないだろう、とクオンは言う。
「スミカちゃんが戻ってこないんです。探しに行かれたワタルさんも……。」
と心配するアヤネに、クオンは問いかける。
「あんた、どうしたいの?
あいつが戻って来ない。そこから何がしたいんだ?」
「私は……。」
「どうなろうが関係ない? それとも、諦める理由を探してるの?」
「だって私は、力のない女の子だから──」
クオンは、
「俺は俺のやりたいようにしかやらねえよ。
魔法戦士だろうが正義の味方像を押し付けられようが、
プロクトとイカルガがどうなろうが。」
と言い残して、スミカを探しに出かけた。しかし、残されたアヤネは動けない。
(無理ですよ……。だって私は、女の子だから……。
何もかもが劣っている性別なんだから……
村の風習を変えたかった。女性でも戦士になれると思ってた。
でも、それも結局、男の子を産む儀式に利用されただけ……)

プロクト

自分を庇ってヤマトが倒れたことで、深い絶望に染まるスミカ。
プロクトをあてもなく彷徨ううちに、足の傷が開いたのか血が流れ出てくる。
そこへアザリーが現れて薬を差し出すが、スミカは「いらない」と拒絶する。
「……いらないわよ、そんなの……!
戦ってほしいだけなんでしょ? 魔王を倒してくれれば用済みなんでしょ?
でもアタシにはできないから!
だってアタシのせいでヤマトが倒れちゃったんだから!
役に立つどころか迷惑かけてるんだもんね……。
こんなの、生きる意味ないもんね!
それにね、アタシ、分かるよ。
別に、アタシを助けたいわけじゃないんでしょ?
同じ目をしてる。
お兄ちゃんに近づくための口実としてアタシにすり寄ってきた人と、
同じ感じがする。
事実についてる嘘じゃなくて、気持ちについてる嘘って誤魔化せないものだよ。」
スミカは自らを嘲りつつ、アザリーに不信感を示す。アザリーは
「そうね。その通りよ。」
とスミカの言葉を肯定しながらも、次には否定の言葉を口にした。
「ただ、勘違いしている。世界のことすらどうでもいいわ。
あなたが何をしても勝手。
けれど、彼を迷わせるようなことをしたら私は容赦はしない。」
アザリーの言う「彼」が分からずスミカが聞き返すと、アザリーはきっぱりと言った。
「あなたのような人間が傍にいればワタルは自分を傷つける決断をするわ。」
何故ワタルの名前が出てくるのか分からないスミカ。
「彼だけよ。私を認めてくれたのは――」
アザリーが言いかけた時、スミカを呼ぶワタルの声が聞こえる。
二人の前に現れたワタルは、ボロボロになったスミカに驚き、気遣う。しかしスミカは
「大したことないよ。」
と虚勢を張る。
「また無理する気かよ! もっと自分を大事にしろよ!」
アザリーは、自分には目もくれずスミカを気にかけるワタルを、黙って見ていた。

プロクト広場

雨が降り出してきた。
プロクト広場に移ったワタルとスミカはベンチに座って休んでいた。
ワタルは次々とスミカを励ます言葉をかける。
「ヤマトなら大丈夫だって! 
セネクト廃殿でダークラウンが変なこと(スミカは自己承認欲求の塊である)
言ってたけど、あんな分かりやすい精神攻撃にのせられることねえって!
また変なこと言ってきたらオレがブッ飛ばしてやるからさ!
スミカの母さんにも何か事情があったんじゃねえか?」
だがスミカは、ワタルの言葉を激しく拒否する。
「あんたってさ、アザリーさんにも大事にされてるんだね。
同じテストで14回赤点とっても、
毎日寝坊しても、ものを壊して軽口叩いても、
あんたは、好きになってもらえるもんね。」
思ってもいなかったスミカの反応に、ワタルは当惑する。
「幼馴染とか言ってくるけどさ、本当はあんたも、
お兄ちゃんに近づきたかっただけなんでしょ?
お兄ちゃんとの人脈を作るための道具になるくらいだったらね、
優しくなんてされない方がマシ。
自分でやればいいのよ。
あんたは、何もしなくたって皆から好きになってもらえるんだから!」
それでもスミカを心配するワタルを、
「来ないで。心配してるフリに付き合いたくない」
と拒絶し、スミカは走り去っていく。
ワタルは呆然と見送ることしか出来ない。雨がいっそう激しく降り始める。

走るスミカの脳裏に、今までに自分にかけられてきた否定の言葉が次々と浮かぶ。
そんなスミカに、魔物が忍び寄っていた。
「おい!」
その時、クオンがスミカを発見するが、一歩及ばない。
スミカは魔物と一緒にクオンの前から姿を消した。

何がしたかったんだっけ?
大切な人を傷つけたかったんだっけ?
何をしてほしかったんだっけ?
好きになってほしかったんだっけ?
何で戦士になりたかったんだっけ?
認めてほしかったんだっけ?

もう自分が何をしたかったのか分からない。
それなのに、自分が汚かったことだけは分かる。
「こんなに汚かったんだアタシ……。」
膨れ上がるスミカの負の感情に、忍び寄る魔物の力が強くなる。
闇に飲み込まれたスミカは、魔物に取りつかれていく……。

※ネタバレ注意※

 

考察 ※ネタバレ注意※

折りたたみ内のメインキャラのセリフは、
文字色をそれぞれのイメージカラーにしています。
「ワタル」「スミカ」「ヤマト」「アヤネ」「クオン」です。
それ以外のキャラの色もメインキャラに準じて決めています。
詳細は折りたたみ内最初に記載しています。

※今回は重要なお話なので、ポイント部分のセリフをノーカットで掲載します。

ショートカット
キュヌクス図書館
クワエリエレズ戦
アヤネとクオン
闇堕ちへのカウントダウン
スミカの闇堕ち

 

第9話のタイトル「イエロー・スピネル」の宝石言葉は「自己愛 恋の年頃」。
もちろん、今回の宝石言葉がさしているのはスミカである。
宝石の色がスミカのカラーである黄色なのは皮肉な一致か。

 

冒頭回想・ワタル&スミカ編

冒頭回想では、ワタルとスミカのすれ違いに注目しよう。
ワタルの励まし自体は間違いではないが、スミカのほしい言葉ではなかった。
スミカは「兄のように強くなる」ということに縛られているため、兄のような結果を残せなければ意味がないのだ。
同じようなすれ違いが今回また発生する。
過去では、ワタルの意を汲み取って頷いたスミカだったが、
決定打を与えられてボロボロになった今回のスミカには……。

実際の会話

──優勝はチーム・アマダ!

声(おそらくはクラスメイトかチームメイト。)
あーあ。やっぱり負けたじゃん。
お兄さんのツケでメンバーに入ったくせに
学校の名に泥までぬって、図々しいにも程があるよねー。
役立たずなだけならまだしも、味方の足引っ張るとか、
いない方がマシだもんな!

──場面転換 教室で一人落ち込むスミカ──

「ここにいたんだな! 探しちゃったぜ!
まあ、今回は残念だったけど、また次に頑張ればいいじゃん。
皆、きっと分かってるって!
スミカは一生懸命やったんだから、誰もスミカを責めねえよ!
結果なんてオマケだよ、オマケ。
大事なのは、精一杯頑張ったかどうかじゃん。」

──すぐには返答出来ず、沈黙するスミカ──

「…………うん。そうだね。」

キュヌクス図書館

スミカとヤマトの会話では、最後のヤマトの胸中のつぶやきが非常に重要だ。
(二人(=ワタルとスミカ)にだけには絶望してほしくない。そうなれば、俺も消えてしまうから。)
第3話の考察で触れた、ヤマトが自己肯定感の欠如を埋め合わせるための代替が
「ワタルとスミカ」なのだということが、ここで示されている。
(ただし、初見ではこの意味を正確に読み取るのは難しいのだが……。)
言い換えれば、純真無垢で希望にあふれた二人に自己投影し、
間接的な人生の価値を得ているという図式が成り立っている。
二人が変わってしまったら、これが崩れてしまう。
だからこそヤマトは二人の変化を極端に恐れ、
第8話でクオンに「余計なことをするな」と言ったのだ。
「今のままでずっといればいい」
「このままでいればいい」
上記のフレーズは今後、度々ヤマトの口から発せられることになる。
初見のこの段階で見た時は、おそらく十中八九励ましの台詞に聞こえるだろうが、
これが次第に狂気を帯びる様に注目してほしい。

そして、非常に目立たないが立ち止まるクオンもポイントだ。
何だかんだ言いつつも、クオンがスミカを気にかけていることを表している。
彼本来の性格の現れであり、また次の話への伏線の一つともなっている。

実際の会話

♪キュヌクス図書館(曲名:在りし日の想い/配布元:M-ART)

「魔力が強くなってきた。
先に入った五人組に追いついてきてるのかもな。」

「どんどん先に進もうぜ。」

──不意に、スミカの足が止まる──

「スミカ?」
「先に行ってて。すぐ追いつくから。」
「でも……。」
「ちょっと足の調子がよくないだけ。
しばらくすれば大丈夫になるから。
ほーら、急ぐ! 間に合わなくなるから。」

「スミカちゃん……。」
「ワタル達と行ってください。スミカは俺が看てるので。」

──クオン、不意に立ち止まる。アヤネが訝しんで声を掛ける──

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──クオン、無言で歩きはじめる。アヤネも後に続く──

♪フェードアウト

♪スミカ(曲名:ミチビキソウ/配布元:H/MIX GALLERY)

「あいつに何か言われたのか?」
「ううん、違うの。アタシ──
魔物が出てきたの。でもアタシ、何もできなくて。
クオンくんがいなかったら何も護れなかった。」

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「スミカは役に立ってるだろう。
魔王を倒すために頑張っている最中じゃないか。」

「でも、あの魔物にアタシの攻撃は──」
「相性だってあるだろう。
考えすぎて気が付いたら取り返しがつかなくなる、
俺みたいな人間からすれば、スミカの速さは羨ましいよ。」

「そうなの……?」
「だから、スミカは役に立っているよ。
必要ないなんて、そんなわけないだろう。」

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「……ありがとう。アタシ、もっと頑張る!
アタシにできることをやって、皆で魔王を倒せば、
たくさんの人を護れるんだからね!
そうと決まったら、解呪呪文を手に入れに、レッツゴーだよ!」

9-4.jpg

──画面暗転──

♪フェードアウト

クワエリエレズ戦

クワエリエレズとの会話では、クオンとパンテラ、レオの問答にポイントがある。

※ 「クオンのセリフ」「パンテラのセリフ」「レオのセリフ」

「どうやって魔法を覚えたか知らないが、
魔法が使えるならお前たちが魔王を倒せばいいだろ」

「できたらやってるわよ! 大魔王を倒せるのは勇者だけなの!」
「あの女が、てめえらの世界で種を蒔いちまったからよ」

ズーマ塔の時もそうだったが、ワタル達が「魔王」と表現している人物と、
クワエリエレズが「大魔王」と表現している人物は別人だ。
魔王を倒すのは魔法が使えればできるのだが、大魔王を倒すとなると勇者の力が必要ということだ。
(ただし、クワエリエレズの魔法では力不足で魔王も倒せない。)
「大」の有無だけなので表記ブレや言葉違いだと思うかもしれないが、ハッキリと別個体として書かれている。
また、レオの台詞は今現在の情報では意味が分からないだろう。
あの女とは誰か。何の種を蒔いたのか。
これらはラスボスの謎にもかかってくる重大な謎なので、頭の片隅に入れておこう。

実際の会話

※ 「レオのセリフ」「パンテラのセリフ」「トゥードのセリフ」
「メルのセリフ」「コルニクスのセリフ」

 

 

「あれ? 行き止まりか?」
「隠し部屋のひとつやふたつ、あってもおかしくないか。とりあえず──。」


「君たちが探しているものはこれかな?」

──クワエリエレズ、出現──

♪クワエリエレズ (曲名:Dark Wizard/配布元:犬小屋オンライン)

「クワエリエレズ……!」
「覚えていたか。まあ、俺様の焔を忘れるなんて
百万回転生しても無理だろうけどなぁ!」

「君たちが探しているのはこの呪文書だろう?」
「書……。むしろ、巻物に近いでしょうか……?」
「頑張って手に入れたのに文字が全然読めなかったですぅ……。
勇者ならきっと解読できるですです……!」

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「つまり! 我々に今できることは勇者の力を覚醒させることなのだよ!」
「というわけで、ここで暴れておくかあ?
解呪呪文が知りたければ、俺様たちを倒してみな!」

──戦闘開始──

♪クワエリエレズ戦(曲名:狡猾なるなんとか/配布元:DEAD END WONDER)

「今回こそはオレの拳を喰らわせてやるぜ!」
「前回はしくじったけど、今回は粘るんだから!」
「勇者の力を覚醒させるべく全力で戦わせてもらうぞ!」
「わわわわわ私は、後方支援に徹するですですぅ!
だから乱暴はしないでほしいですですぅ!」

「俺様の魔法の灰になれることを光栄に思いな!」

──戦闘勝利後──

♪クワエリエレズ (曲名:Dark Wizard/配布元:犬小屋オンライン)

「よっしゃ! ゲットだぜ!」
「ちょっと! また勇者の力覚醒失敗なの!?」
「こうなることも想定済み……。レオ!」
「おう!」
「森で使ってた魔法、俺様ひらめいちゃったぜ! 天才だぜ!」
「弱ってるヤツをぶちのめして勇者の力覚醒作戦! いくぜ、弓女ぁ!」
「スミカ!」

──画面が朱に染まる。──
(※ 以下、状況描写がないため、
セリフ内容と各キャラの性格から誰なのかを判別して記載)

♪オフ

「ヤマトさん!」

「何やってんのよ! あの人が勇者かもしれないのよ!?」
「あわわわわ! ゆ、揺れだしたですですぅ!」

「くそ! 付け焼刃で変な魔法使いやがって!」

「解呪呪文は無事に届けた! 撤退だ!」

「ヤマト! ヤマト!」
(※ 状況から、スミカは放心状態と思われるため、声をかけたのはワタルの可能性が高い)

「脱出が先だ! 突っ立ってんじゃねえ!」

アヤネとクオン

アヤネとクオンのシーンは、短いながらいくつか重要なポイントがある。
この場面で、クオンが「あの馬鹿、あいつ」と言っているのは全てスミカを指している。
探しに行ったワタルのことではない。
言い争いにはなったが、ずっとスミカを気にかけているということなのだ。
また、
「あんた、どうしたいの?
あいつが戻って来ない。そこから何がしたいんだ?」
「俺は俺のやりたいようにしかやらねえよ。
魔法戦士だろうが正義の味方像を押し付けられようが」
この言葉から、彼はアヤネが自分の思う通りに行動できないこと、
彼女がスミカに自分の理想像を押し付け、スミカがそれに応えていることを見抜いているのが分かる。
そして、さらにアヤネにわざわざそう言ったということは、アヤネも気にかけているということなのだ。
初見では気を付けていないと見逃しやすいが、クオン本来の性格が見えやすいのがここだ。
ここでクオンが言ったことは、後の展開のフラグなので、記憶の隅に置いておこう。

一方のアヤネは、ここまでずっと
(私は女の子だから……)
と思い悩んでおり、このシーンでも最後まで行動を起こそうとはしていない。
「女だから何もできない」という村の風習にがんじがらめとなっている弊害が続いているのだ。
しかし、アヤネはその風習を変えたいと願っており、自分が思っているより実力があり、心も強い。
彼女は壁を乗り越えられるのか、今後どういう行動を取るのか。答えはもうすぐそこまで来ている。

実際の台詞

♪オフ

「ヤマトさんは……?」
「手当は済んだ。付け焼刃の魔法だったから傷はそこまで深くない。
ただ、当たり所が悪くてしばらくは気絶したままだろうな。」

「スミカちゃんが戻ってこないんです。
探しに行かれたワタルさんも……。」

「あの馬鹿……。
あんた、どうしたいの?」

9-6.jpg

「私は……。」
「どうなろうが関係ない? それとも、諦める理由を探してるの?」
「だって私は、力のない女の子だから──」

9-7.jpg

(村の風習を変えたかった。女性でも戦士になれると思ってた。
でも、それも結局、男の子を産む儀式に利用されただけ……)

闇堕ちへのカウントダウン

一方、プロクトを彷徨うスミカは、いよいよ闇堕ちへのカウントダウン開始となってしまった。
ヤマトが自分を庇って倒れたことで「誰かの役に立つ」という、スミカのはじまりにして根底にある思いまで壊れてしまう。
「誰かの役に立つどころか、迷惑をかけてしまった。」
という図式が成立してしまったのだ。
また、ここで倒れたのがヤマトだったことも不幸だった。
他の人間ならスミカがショックを受けなかった、というわけではない。
スミカの精神安定の支柱はヤマトなのだ。
それなのに、よりにもよって自分を庇ったために、倒れてしまった。
そのことは、スミカの負の感情を受け止められる人が、
自分のせいでいなくなってしまったという、最悪の状態となったことを意味する。
ワタルの励ましは冒頭の通り的外れ。
アヤネは無意識にスミカに理想像を押し付け、スミカもそれに無理をして応えようとしている状態だ。
クオンに至っては、彼の考えを受け容れられず口論になっている。
そしてアザリーは「自分を認めてくれたのはワタルだけ」と告白する。
今回の宝石言葉「自己愛」はスミカへの皮肉だが、「恋の年頃」はアザリーを表したものかもしれない。
ワタルと過去に何があったのか、今後明かされる真相に注目しよう。

これは完全に筆者の主観だが、アザリーの胸中には
「ワタルに一番近い女であるスミカへの嫉妬」
があったのかもしれない。
実際、ワタルは登場してからアザリーに声をかけることは一度もなく、ずっとスミカを心配している。
アザリーの沈黙は
「自分よりもスミカが優先なのね」
という恋の年頃の女の子の心境なのだろうか。

付け加えるなら、無界版をプレイした人なら、
この考えと似たようなものを持ちやすいかもしれない、ということだろう。
魔コネシリーズを全てプレイ済みの補完者もまた、
アザリーがワタルに抱く思いに、恋心があったと見ている。
後のアザリーの行動をどう見るか……
恋心の有無が、見解が分かれるポイントとなっている。

実際の台詞

※ 「アザリーのセリフ」

 

 

♪オフ SE水の音

「はっ、は、っ……。」
「……薬よ。」
「……いらないわよ、そんなの……!
戦ってほしいだけなんでしょ? 魔王を倒してくれれば用済みなんでしょ?
でもアタシにはできないから!
だってアタシのせいでヤマトが倒れちゃったんだから!
役に立つどころか迷惑かけてるんだもんね……。
こんなの、生きる意味ないもんね!
それにね、アタシ、分かるよ。
別に、アタシを助けたいわけじゃないんでしょ?
同じ目をしてる。
お兄ちゃんに近づくための口実としてアタシにすり寄ってきた人と、
同じ感じがする。
事実についてる嘘じゃなくて、
気持ちについてる嘘って誤魔化せないものだよ。」

「そうね。その通りよ。私はあなたのことなんてどうでもいい。
ただ、勘違いしている。世界のことすらどうでもいいわ。
世界の、私の存在を認めることができたのは
あの一瞬しかなかったのだから。
あなたが何をしても勝手。
けれど、彼を迷わせるようなことをしたら私は容赦はしない。」

「彼……?」

9-8.jpg

「何でワタルが出てくるのよ……。」
「彼だけよ。私を認めてくれたのは──」

──ワタルの声が聞こえてくる──

「スミカ!」

──ワタル、二人の前に姿を現す。──

「どうしたんだよ、怪我したのか?」
「大したことないよ。」
「戻ろうぜ。早く手当しねえと。」
「大丈夫だってば。」
「また無理する気かよ! もっと自分を大事にしろよ!」

──アザリー、黙って二人を見守る──

スミカの闇堕ち

心身共にボロボロのスミカは、ワタルの的外れな指摘を流すことができない。
そのために酷い言葉でワタルに八つ当たりをし、さらに自己嫌悪に陥る。
まさに負のスパイラルだといえるだろう。
直前にアザリーがワタルへの執着を見せたことも、スミカが堕ちていく引き金になっている。
「あんな風に自分を思ってくれる人が自分にはいない=誰にも好きになってもらえない」
スミカはこう考えてしまった。
この場面のスミカの台詞は多くの調整が入ったらしい(制作ブログより)。
ワタルの言葉選びの拙さや、スミカの八つ当たりしてしまう心の余裕のなさも、年齢を考えれば無理もないものだ。
年相応の不器用さですれ違ってしまうキャラクターたちを全員平等に、ハッキリ描くのも本作の特徴。
そのため、ワタルが一応主人公となってはいるが、実際のところはメイン5人全てが主人公なのだといえる。
補完者も以前に作者様からそう伺っている。

β版コメンタリー(見たい人は反転)
ここのスミカの台詞はかなり気を遣ったのですが、如何でしょうか(苦笑)。
冒頭の回想と照らし合わせることで、
スミカから余裕が消えていることを伝える場面ですね。
この直後に「何であんなこと言っちゃったのよ、アタシ最低」とか思ってさらに嫌悪する泥沼化(笑)
逆に言えば「ワタルを傷つけてしまった」と後悔する気持ちはずーっと捨てていないということです。
両親や兄への思いも、友人への後悔も全部を嘘にはしたくないと背負いすぎて
ぶっ壊れちゃうのがスミカクオリティ。

話がそれたが、以上のように追い詰められてしまったスミカの負の感情は、急速に膨れ上がってしまう。
さらに、自分の奥底にあった真実の気持ち……
つまり、誰かに認めて欲しい、という気持ちを自覚し、純粋な性格故に絶望してしまう。
無界版と同じ、スミカの印象的なセリフがここに出てくる。
「こんなに汚かったんだ、アタシ……。」
そうして、闇に染まって魔物に取り憑かれてしまうのだ。

実際の台詞

♪オフ

「スミカ、歩けるか? 帰ってちゃんと手当した方がいいぜ。
ヤマトなら大丈夫だって! あいつ打たれ強いし、
防御面なら誰にも負けないくらいじゃん。
セネクト廃殿でダークラウンが変なこと言ってたけど、
あんな分かりやすい精神攻撃にのせられることねえって!
また変なこと言ってきたらオレがブッ飛ばしてやるからさ!
それにさ、スミカの母さんにも何か事情があったんじゃねえか?
スミカがこうなるなんて知らなくて、一部分しか説明されなかったとかさ。
本当にスミカのこと、どうでもいいなんて思ってな──」

9-9.jpg

「そんなあんたに、アタシの気持ちなんて分かるわけないでしょ。」
「スミカ……?」
「幼馴染とか言ってくるけどさ、本当はあんたも、
お兄ちゃんに近づきたかっただけなんでしょ?
言っていいんだよ?
「オレの親友に怪我させるなんて、役に立たないクソ女だな」
って。」

「何でそんなこと言うんだよ……!」
「お兄ちゃんとの人脈を作るための道具になるくらいだったらね、
優しくなんてされない方がマシ。
自分でやればいいのよ。
あんたは、何もしなくたって皆から好きになってもらえるんだから!」

「スミカ──」

9-10.jpg

──スミカ、ワタルの前から去る。ワタル、呆然と立ち尽くす。──

SE雨の音

クラスメイト
ま、完全に劣化ユウジさんだな。
俺だって有名な兄弟がいれば簡単に出世できるのになー。

スミカの母
あなたみたいな一家の恥さらしの出来損ないに
かけている時間なんてないのよ!

ダークラウン
さあ、正直に言ってくださいヨ。
「私は自己承認欲求の塊です。
兄よりも劣った戦士でありながら同じ愛を求める強欲者です」
とネ!

──場面転換。クオンが駆けつける──

「おい!」

──しかし間に合わず、クオンの前からスミカと魔物が消える──

「くそっ……!」

──画面暗転、落ちていくスミカ──

何がしたかったんだっけ?
大切な人を傷つけたかったんだっけ?
何をしてほしかったんだっけ?
好きになってほしかったんだっけ?
何で戦士になりたかったんだっけ?
認めてほしかったんだっけ?

9-11.jpg

──落ちていくスミカに魔物が取り憑く──

※ネタバレ注意※

攻略

キュヌクス図書館

  • イベント後、図書館内部に入れるようになる。
    このタイミングでLv2の武具と魔装石を合成できるようになる。
    • 武具は、新しい素材が必要になる。キュヌクス図書館以前のドロップは使えない。
  • ギミックはないダンジョン。構造も今までで一番くらいにシンプル。
  • 光耐性、封印耐性と闇属性攻撃手段が欲しい。
    会心率が高い敵がいるので、特にアヤネは物理回避率を高めるか、物理耐性があると
    予期せぬ事故を減らすことが出来る。
  • 初回チャットで敏捷性上昇+の魔装石を入手する。
チャット内容

「光属性の属性場を感じるな。闇属性で殴れればいいが。」
「闇属性ならヤマトだな!」
「攻撃に回る余裕があればの話だけどな。
ワタルかスミカあたりに属性付与した方がはやいかもしれない。」

──敏捷性上昇+獲得──

「そうなると、手数を増やすのが一番か。数の暴力で何とでもなるしな。」

  • 宝箱全回収を最速でしたいなら最初の左右の分岐は左。
    図書館に入って正面の白い扉にも実は入れる。中庭っぽい場所に出る。
    3階は先に右側を探索しよう。
    • 宝箱の中身
      1階左:幼竜の牙(5)、魔族の布(5)、雨雲のランプ(5)、深海の珊瑚礁(5)、
      1階中央:黒き杯(5)、天界のハープ(5)、猛き溶岩(5)、天の羽衣(5)
      3階:虹色の筆(5)、癒しのオルゴール(5)、シルクのベール(5)、純血の雫(5)、
      ゴールドエリクサー
  • 最奥部でボス戦。
ボス攻略
ボス戦の攻略はこちら→クワエリエレズ2回目
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サブイベント情報

  • 僕を見つけろ!
キュヌクス図書館に隠れてやったぜ!
見つけられるものならやってみろ!

キュヌクス図書館に隠れた依頼主を見つけるだけ。
正面の白い扉から入った場所の、最前列左側にある本棚の裏に隠れている。
報酬は遊技場カードⅠ。遊技場のゲーム「21カード」が解放される。
セーブ&ロードを活用すれば、比較的コインを増やしやすいゲーム。
お金が足りずコインを買えない場合はこれで増やすのがオススメ。

※ サブイベント会話集に会話掲載あり。
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  • 誕生石→詳細はこちら「誕生石の在り処※ 別タブで開きたい場合は右クリックでお願いします。
    ボス戦後、最奥部に再訪するとオパール入手。
    ただし、次の章に入ってイベントが終わった後からでないと入手できない。

→次のお話へ