公共機関などの対応:自衛隊編

Last-modified: 2024-04-03 (水) 00:17:59

このページでは自衛隊のゾンビ災害発生後の対応の解説をしています。

概説

ここではゾンビ災害が発生した時、自衛隊がどのように対処するかを考えていく。
自衛隊は陸海空の3つの組織で構成され、隊員数は最大24万人。その中でもゾンビ対応の矢面に立たされるであろう陸上自衛隊は最大15万人程度の隊員から構成されており、日本国内で最も戦力を有する組織である。
彼らはゾンビ災害にどう対応するのだろうか。
 

自衛隊は出動できるのか?

まず、そもそも自衛隊はゾンビ災害で出動できるのだろうか。
ご存じの通り自衛隊は、憲法で軍事力を放棄した筈の国に存在する軍事力(彼らが言うところの防衛力)、という矛盾した存在である。だからこそ自衛隊が出動するには複雑な手順が設けられており、防衛のための出動でも複雑な手続きを必要とする。
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災害派遣で出動する自衛隊トラック(※1)
 
ではゾンビが発生したとき出動できるのか?結論から言えば、出動できる。自衛隊にはいくつかの出動形態があるが、その中で考えられるゾンビ災害への出動形態は次の通り。出動できたとして、ゾンビに対処できるのかも考える。
 

出動形態1.治安出動

まず考えられるのは、治安出動
自衛隊が治安維持のために出動することで、主に暴動鎮圧やテロ対処を目的とした出動である。ゾンビ発生を大規模な暴動や騒乱と捉えるか、ゾンビウイルス蔓延を生物・化学兵器テロと捉え、総理大臣が命令を出せば自衛隊は出動できる。国会の審議を後回しにすることもできるが、総理大臣からの出動命令が出されるのを待つ必要があり、出動に少し時間がかかる。
 
しかし治安出動ではゾンビ災害に対処できない。
というのも、治安出動した自衛官には警察官職務執行法が適用されるのだが、これは「公共機関などの対応:警察編」で述べた警察比例の原則が自衛官に適用されることを意味する。これは犯人と同レベルか、一段階上の武器や装備で対処するという考えだが、知能がないゾンビは武器を持たないので、治安出動した自衛官は素手でゾンビに対処しないといけない。
ただし、例えば「ゾンビウイルス蔓延は生物・化学兵器テロ」と捉えるのであれば、兵器に対応するために兵器を用いるという理屈で、自衛官は武器を使用できる。……できるのだが、ゾンビを射殺できるかはかなり怪しい。警察比例の原則を準用すると、刑法36条の正当防衛、刑法37条の緊急避難、あるいは凶悪犯に抵抗された時などを除き、相手に危害を与える武器の使用が認められていない。しかも警察比例の原則では「必要最小限度の措置」しかしてはならないとされるため、迂闊に致命傷を与えることが許されていない
正当防衛と緊急避難を拡大解釈すれば辛うじて許されるかもしれないが、これらもさまざまな要件を満たさなければ認められない。
ゾンビが自衛官の目の前で生存者を喰い殺し、自衛官の方へ向かってくるのであれば、ゾンビを「凶悪犯」の現行犯として発砲することは出来るだろう。しかし、生存者を喰い殺す様子を自衛官が目撃出来ていなければ、現行犯としての発砲は不可能である。
さらに発砲するにしても、発砲は口頭での警告後に行う必要があり、意図的に致命傷を与えることも駄目で、しかも自衛隊側からゾンビを攻撃する場合(ゾンビの殲滅作戦を行うなど)は、上記の武器使用は全て認められない。ゾンビを制圧することは出来ないだろう。
そして、もしも総理大臣と総理臨時代理の就任予定者全員がゾンビ化した場合、命令を出す者が居なくなるので出動すらできない可能性がある。仮に総理が生きていても、国会への事後承諾が必要であり、命令が出される可能性が低い。
 
 

出動形態2.災害派遣

次に考えられるのは、災害派遣
自衛隊による自然災害への対応を目的とした出動である。ゾンビ発生を何らかの特殊な災害として捉えれば、自衛隊は災害対応として出動できる。災害派遣の場合、「自主派遣」という形であれば、国会どころか総理大臣の許可すら必要としないので一番早く出動することができる。
 
そして災害派遣ではゾンビ災害に対処できる可能性がある。
そもそもの話だが、災害派遣では武器の使用が基本的に認められていないので、武器を持たないで出動する可能性もある。この場合、ヘリコプターで孤立した家々から生存者を救助するとか、生存者らの避難所を開設するといった、自然災害への対応の延長線的な活動しかできず、自衛隊はゾンビを攻撃することが出来ない。
しかし、災害派遣でも自衛隊は武器を使用できる。災害派遣だと武器は使用できない、と勘違いしている人間は少なくないが、「自衛隊の災害派遣に関する訓令第18条」では、救援活動に必要ならば武器や弾薬を使用できるとしている。例えば崩落したトンネルを切り開くため爆薬や砲弾を使うことは認められており、過去には東京湾でタンカーが炎上した際、安全を確保するためにロケット弾や魚雷でタンカーを撃沈した事例もある。74式戦車のページで記述したとおり、戦車が災害派遣されたことも。また、旧防衛庁の机上研究や過去の防衛大臣の発言では、仮にゴジラなどの大怪獣が襲来した際には自衛隊は災害派遣で対処する(=戦車や戦闘機を出動させる)ことになるだろうとの見解が示されている。つまり災害に対処するための「救助道具」として武器を使用することは認められているのだ。
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火山の噴石対策に災害派遣された自衛隊装甲車。この場合、装甲車は武器ではなく「救助道具」扱いとなる(※2)
 
ただし災害派遣でも、自衛官には警察官職務執行法が準用される。つまりこの場合でも警察比例の原則を適用しないといけないのである。では、自衛隊はまたもゾンビを撃てないのか……と思いきや、実はそうでもない。
治安出動ではゾンビを「犯罪者」として扱ったために攻撃することが出来ないが、災害派遣ではゾンビを「死体」として扱い、武器を「救助道具」として扱えば「救助道具を使用した死体処理任務」を名目に自衛隊はゾンビを射殺できる可能性がある。死体回収のためのやむを得ない火器使用、という形であれば恐らく武器使用は認められる。
現実的な出動形態としては、これになるだろう。しかも治安出動は1度も実施されたことがないのに対し、災害派遣は災害大国日本ゆえ、既に3万回以上も出動実績がある。
出動の手続きにも総理大臣の命令を必要とせず、国会の審議や承諾も必要としないため、一番簡単かつ現実的に自衛隊が出動できる。ただし、生きてるのか死んでるのか分からないゾンビを死体として扱うことに、人権団体などが猛反発しそうだが……それとゾンビが死体と認められなかった場合は出動が難しいだろう。それでも災害(ゾンビ)に対応するために救助道具(武器)を使うという名目なら、恐らくは対応できる。
 
 

出動形態3.防衛出動

最後に考えられるのが、防衛出動
自衛隊による国の防衛を目的とした出動で、有事(戦争)に発動される。これは唯一自衛隊に交戦権が認められ、他の出動よりも一段上の活動を自衛隊ができるようになる。ただし国会の審議が必要であり、審議を後回しにしても総理大臣からの出動命令がなければ出動できない。さらに明確な武力攻撃があった時しかこの命令は出されないため、映画『シン・ゴジラ』のように超法規的な措置を必要とする。
 
防衛出動ならば、ゾンビ災害に対処できる。
防衛出動では自衛隊に交戦権が認められ、ゾンビを処理するためであれば戦車を動かしたり、やろうと思えばゾンビに占領された都市を爆撃することも理論上可能だ。また、ゾンビを「敵兵」「敵戦力」として扱えば、ゾンビを射殺することも許可されるのである。ゾンビに対処する手段としては一番効果が高いと考えられるだろう。
ただし上述したように、防衛出動には総理大臣の命令と国会の承認が必要かつ、超法規的措置が必要になるため、命令が出される可能性が一番低い。よってあまり現実的ではない。しいて言えば、ゾンビ発生を「第三国から未知の生物兵器・化学兵器による攻撃を受けた」と拡大解釈して捉えれば、法律に反することなく防衛出動命令を出すことは一応できるかもしれない(一応なので可能性はかなり低い)。
 

出動形態のまとめ

現実でゾンビ災害が発生した場合、現実味があるのは、災害派遣、次いで治安出動、最後に超法規的措置が必要な防衛出動だろう。

その中でもゾンビ災害に対処できると考えられるのは

  • 「死体処理を名目とした災害派遣」
  • 「ゾンビ災害を特殊災害と捉えた災害派遣」
  • 「超法規的な防衛出動」
     

これらであれば、自衛隊は出動後に武器を使用し、ゾンビに対処することが出来る。
 
 

自衛隊はゾンビに勝てるのか?

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陸上自衛隊の主力銃 89式5.56mm小銃 (※3)
 
では仮に自衛隊が出動でき、かつゾンビを攻撃可能だった場合、自衛隊はゾンビ災害に対応可能かどうかを考える。
自衛隊には全隊員の手に渡せるだけの数の89式5.56mm小銃または64式7.62mm小銃があり、どちらも警官の使う拳銃がオモチャに見えるほどの高い攻撃力をもつ。他にも10式戦車を筆頭とする戦闘車両や、戦闘機を含む900機以上の航空機、50隻近い護衛艦が配備されている。
これほどの武装があればゾンビなど赤子の手をひねるが如く鎮圧できそうなものだが、実は自衛隊にはゾンビ災害に対処するに際し、いくつか不安要素がある。それをひとつずつ説明する。
 

問題点1.弾薬不足

陸上自衛隊の各駐屯地には小さな弾薬庫があり、ここに銃弾などの弾薬が保管されているが、その弾薬量は極めて少ないと言われる。普段は補給処・弾薬支処と呼ばれる施設に大量の弾薬が備蓄されており、有事(戦争)が近づいたら弾薬支処から弾薬を搬出して駐屯地に運ぶ、という想定だからである。
だがもし全国規模のゾンビ災害が発生し、弾薬支処から弾薬を搬出する前にゾンビが全国に溢れかえるほど発生すれば、自衛隊は各地の駐屯地に備蓄された少ない弾薬だけで戦わされることになる。そうなると弾薬不足弾切れに陥る可能性が考えられるだろう。弾薬不足の自衛官らは、弾切れを恐れて銃の使用を控えるか、銃剣などの近接武器だけでゾンビに対処せざるを得ない。
 
また、自衛隊そのものも「弾に撃つ、弾がないのが、玉に瑕」なんて言われるくらいには、元からの弾薬備蓄量がそこまで多くないことが度々指摘されている。ただ、国際情勢悪化によって自衛隊は近年急速に弾薬確保と弾薬庫の増設を進めているので、弾薬備蓄量に関してはそこまで問題とならない可能性もある。
 

問題点2.補給品不足

軍隊などの大規模かつ自己完結式の組織は、食料や燃料などの補給品を自活することが出来る。これは自衛隊でも同じである。だが、ゾンビ災害が長期化すれば、補給品が不足する可能性がある。
 
食料に関しては、自衛隊で約400万食を備蓄しているとされ、このうち2から3分の1(約130~200万食)が各駐屯地に備蓄されていると考えられる。しかし自衛官の総数は24万人。24万人に1日3食を提供し続ければ130~200万食の備蓄食料など2、3日で底を尽く。普段は民間から食事も購入できるのだろうが、全国規模のゾンビ災害が起きればそれも途絶えるので、備蓄品をやりくりするしかない。(言い方は悪いが)ゾンビ災害で殉職する自衛官も出て食い扶持も減るはずだが、それでも1週間程度が限度だろう。備蓄が底をつけば、ゾンビに制圧された市街地の店舗や食品倉庫から調達せねばならない。
 
食料は市街地からの調達で何とかなるが、燃料不足も問題である。自衛隊には戦車を筆頭に、燃料消費量がバカみたいに悪い装備品がいくつもある。ゾンビ災害が長期化すれば、電力供給も途絶えるため、各自衛隊施設は自家発電のためにも燃料を使用する必要が出てくる。駐屯地にも燃料を備蓄している場合はあるが、それも長持ちしないだろう。こちらも備蓄が尽きる前に市街地のガソリンスタンド等から調達せねばならない。
 
(自衛隊の名誉のために補足するが、これは自衛隊だけの問題ではなく、世界中のあらゆる軍隊がゾンビ災害で同じ問題に悩まされる筈である。また食料備蓄量については少なく見積もりすぎている可能性があるため、正しい情報をお持ちの方は訂正願います)
 

問題点3.戦力不足

日本の人口は1億2000万人。人口密度の高いこの国では、かなりの割合がゾンビ化する恐れがある。仮に1割しかゾンビ化せずとも1200万体のゾンビが発生することになる。これに対し、自衛官の総数は24万人、うち陸上自衛官は15万人。単純計算になるが、陸自だけなら隊員1人当たり80体、自衛隊全体でも隊員1人当たり50体のゾンビと当たることになる。マルス理論を適応するとしても正直、戦力不足ではなかろうか。
 
また、陸上自衛官15万人も、その中には会計課や整備士などの非戦闘職種の隊員、配属される前の新米隊員などが含まれ、さらにゾンビ災害で殉職する隊員も出てくる筈だ。このため実際にゾンビ対応のために動員できる人数はもっと少ない。それこそ1人当たり100体のゾンビと当たる可能性もあるだろう(ただし、自衛隊側が戦車や戦闘機などを投入すれば、ある程度は差を縮められはするが)。
 

問題点4.集団生活

最大の問題はこれである。自衛隊は隊舎と呼ばれる寮で大半の隊員が寝泊まりし、集団生活をしている。しかし集団生活ということは、ゾンビに噛まれるなどして感染した隊員が一人紛れ込むだけで、就寝中の隊員が寝込みを襲われるなどして集団でゾンビ化する恐れがある、ということである。
これは漫画『アイアムアヒーロー』でも、自衛隊がZQN(同作におけるゾンビ)に壊滅させられた理由のひとつとして示唆されているように、十分可能性のある問題である。集団生活をしている組織は感染率が高く、かのスペイン風邪も交戦中の軍隊から発生したことで知られる。一方警察官の場合、官舎や寮に住んでいる警官は一部であり、大半が民間の賃貸住宅や持ち家に住んでいるので、この問題を回避できる可能性がある。しかし自衛官の場合、隊舎に生活する隊員が大半であり、自衛隊は出動せず壊滅する恐れがある。
 
仮に隊舎で自衛官がゾンビ化した場合、銃と実弾が必要になるが、平時でこれらを装備している自衛官はごく少数である。平時から銃と実弾を携行しているのは、警務隊(自衛隊内部の警察組織)、弾薬庫の警衛隊員だけだ。しかも前者は対ゾンビには不向きな拳銃で、後者は5発しか実弾を交付されない。他だと施設出入り口を警備する警衛隊員にも銃が交付されるが、実弾は詰所の金庫に保管されているため、すぐに取り出せないだろう。隊舎でのゾンビ発生には警務隊が一番早く対応できる可能性があるが、対応が遅れれば、自衛隊駐屯地はゾンビ化した自衛官で溢れ返ることとなる。
 

問題点5.妨害行為

自衛隊が実際にゾンビの駆除を行うとなった場合、活動家などの妨害の可能性もある。例を挙げるとするならば「ゾンビにも人権はある」など言ってゾンビ駆除の妨げとなり、結果的にゾンビ災害を抑えられず最悪の事態を招く可能性もある。人間の命がかかってる場面でそんなこと言うか?と考える方もいるかもしれないが、実際に人間に危害を加えるクマの駆除に対しても難癖をつける輩はいるため、実際にゾンビが発生した場合も同様に難癖をつける輩が当然出ると考えられる。
 
難癖だけならまだいいが、デモ隊を組んで自衛隊施設や道路を塞ぎ、自衛隊車両の移動を妨害するとか、あるいは自衛官を直接攻撃したり、暴徒化して自衛隊施設に押し入ったりするようなことになれば面倒だろう。一番恐ろしい事態としては、自衛隊に命令を出すべき政府や政治家が、活動家に扇動された世論の声に屈して自衛隊にゾンビの殺害を許可しない、あるいはゾンビも人間だから殺害した自衛官は刑事罰に処す……などというような訓令を出すことである。活動家自体は何てことはないが、活動家がもたらす影響が自衛隊の活動を大きく妨害しかねないことには注意が居る。
 

問題点6.法的問題

上記のように自衛隊が出動することには法的問題がないことは記したが、ゾンビを射殺しても法的に問題ないのかは懸念が残る。先に言っておくが、創作によくある「発砲許可」は自衛隊に存在しない(武器使用許可とかはある)。代わりに法律的に厳しい部分がある。例えばゾンビを死体として扱ったとしても、死体に発砲すれば死体損壊罪に問われる。当然だがゾンビを死体として扱わない=生きた人間として扱う場合、ゾンビを射殺した自衛官は殺人罪に問われてしまう。法的にゾンビを射殺することが厳しいのである。
 
またゾンビを死体として扱うには、当たり前の話だがゾンビが死亡している必要がある。しかし日本では、人が死んだかどうかを判定できるのは医師のみと法律で定められており、医師が「呼吸の停止」「脈拍の停止」「瞳孔拡大」の3つの判定基準を確認してはじめて死亡したと認められる。当然、ゾンビ相手にそんな悠長なこと出来るはずもなく、医師が噛まれてしまう。さらにゾンビは作品によっては呻き声を出すことがあるが、声を出すということは呼吸をしているということ……つまり、上記の判定基準の一つ「呼吸の停止」が当てはまらなくなることを意味する。ゾンビを死体と判定することは難しい。
 
流石に死者が蘇って人を襲う異常事態にここまで悠長なこと議論している場合でもない……と信じたいが、絶対ありえないと一蹴できる問題でもないので、ここに記しておく。ただし自衛隊は過去、谷川岳宙吊り遺体収容にてザイルで宙づりとなり回収困難な遺体を、ザイルへの銃撃で遺体を落下させて回収している。宙づりの遺体は医師が死亡判定などできる訳がない上に、遺体を落下させれば遺体は当然損壊するが、銃撃は実行されて遺体も(損壊した状態で)回収されている。なので、ゾンビを死体と判定すること、死体損壊罪に問われる可能性があること、といった問題は無視できる可能性がある。
 

自衛隊のゾンビ災害への対応は?

自衛隊はゾンビ災害でどう対応するだろうか。
ひとまずここでは、自衛隊の出動方法を一番現実味のある「災害派遣」とし、ゾンビを射殺しても特に問題がない、隊舎での集団感染も起きていないという前提で行く。
 
自衛隊が出動するのは、警察がゾンビ災害に機動隊を投入した後からと思われる。このときすでに警察の対処能力は限界を迎えているはずだ。ただ自衛隊の装備は、戦車や大砲やミサイルなど、流れ弾が出れば民間人に甚大な被害が生じてしまう重火器が多数あるので、使用できる装備に制限(いわゆる武器使用基準や部隊行動基準)がかけられる筈である。
恐らく、最初のうち自衛隊はまだ戦車のような重火器を投入せず、小銃や機関銃などの銃器、最大でも携行対戦車火器、迫撃砲、装甲車などの比較的小規模な戦力だけが投入されるだろう。しかし、これだけでも警察の銃器対策部隊を上回る重武装であるため、ゾンビの発生数がまだそこまで深刻でなければ、ここでゾンビ災害を抑え込める可能性はある。
 
また、あくまでも災害派遣として自衛隊が出動しているため、生存者の救出活動、ライフラインなどの重要施設の防護、避難所の開設といったことも行われる筈だ。
特に生存者の救助に関しては、全自衛隊で合計440機以上が配備されているヘリコプターで上空から救助したり、装甲車でゾンビの群れの中を強行突破するなどして、建物の中で籠城している生存者らを救い出していくことが可能と考えられる。海上自衛隊の護衛艦や輸送艦に生存者を避難させることもできるはずだ。
 
しかし仮にここでゾンビ災害を鎮圧できなかったとする。
実弾を携行した自衛隊が出動して鎮圧できなかった時点で、もはやゾンビ災害を抑え込むとか言っている時期はとうに過ぎているだろう。自衛隊すら対応できなくなっている時点で、ゾンビの発生数は甚大なものとなっていると考えられ、日本は国家として崩壊寸前の状態に追い込まれている筈だ。
ここからゾンビ災害を沈静化するためには、自衛隊のあらゆる戦力を投入するしかない。全国に400両超が配備されている戦車を出動させたり、武装ヘリで上空からゾンビの群れを機銃掃射したり、生存者がいないと判断されれば、ゾンビに制圧された市街地への砲撃や爆撃を行うなどして、ゾンビの殲滅戦を図るしかないだろう。ただし国が崩壊寸前になるほどゾンビが大発生している段階では、その程度でゾンビ災害を抑え込める可能性は低いと思われる。
 
ゾンビの殲滅が不可能と判断されれば、自衛隊は全国各地の基地や駐屯地に撤退し、救助した生存者らとともに籠城戦を始めるはずだ。あるいはゾンビ小説『World War Z』で描かれた「レデカー・プラン」のように、どこか防衛に適した地域(北海道、東北、九州南部あたりが候補だろうか?)に集結して再編成を図るかもしれない。だが、上で述べた通り、ここから自衛隊の補給がどこまで保つかは分からない。補給が途絶えて活動停止に至る可能性も十分に考えられる。人口密度の非常に高い場所にある駐屯地や基地は、放棄される可能性もある。
また、これは前置きしたように「隊舎での集団感染が起きていない」という前提の話なので、集団感染発生で自衛隊が出動前から組織崩壊してしまう可能性も十分に考えられる。
 
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ガスマスクを装着した自衛官ら ゾンビ災害では空気感染が起きる可能性もある(※4)
 
 

以下、参考になる?

自衛隊法 - e-Gov
自衛隊の災害派遣に関する訓令 - Wikisource
国民保護法 - e-Gov
事態対処法 - e-Gov
陸上総隊司令部、方面総監部、師団司令部及び旅団司令部組織規則 - e-Gov
警察官職務執行法 - e-Gov
警察官等特殊銃使用及び取扱い規範 - e-Gov
自衛隊にクマ襲来 その対応の法的根拠は何になる? 武器使用が認められるにも条件アリ - 乗りものニュース
「戦車が2両。部隊は完全武装し…」ベテラン猟師を殺した“凶悪ヒグマ”の駆除に自衛隊が立てた作戦とは - 文春オンライン
自衛隊もし戦わば - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 治安出動1~出動! ちょっとその前に - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 治安出動2~投石、火炎瓶、催涙弾、銃剣 - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 治安出動3~デモ隊からゲリコマへ - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 治安出動4~そして今、自衛隊は - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 駐屯地警衛~入るな、きけん~ - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 
 

コメント

  • 前回編集した人へ、問題点5は一度削除されたようですが、普通にあり得そうな問題なので復活させときました。 -- 2023-10-21 (土) 22:53:19
  • 演習場で熊に襲われた自衛官(第6普連らしい)が小銃で反撃して射殺した、って噂話を聞いたんだがソースが見つからん。もし熊に反撃して正当防衛が認められたなら、ゾンビを射殺しても問題ないってことに出来そうなんだが……それと、ゾンビが発生したらどうするかは自衛隊でも考えていたらしい。といっても、現場の幹部とか陸曹が頭の体操程度に話し合っただけで、「害獣駆除でどうにかできないか」「ゾンビを害獣と認定できれば対処できる」って話だったそうだけど。 -- 2024-01-31 (水) 19:05:39
  • 一番の敵は無能な上官 -- 2024-02-13 (火) 11:44:13
    • たいていの場合、暴走する現場の末端のほうがよっぽど敵なんだよなあ -- 2024-02-13 (火) 20:31:34

 
 
 

出典

※1 陸上自衛隊西部方面隊公式X(旧Twitter)の短文投稿 (https://twitter.com/JGSDF_WA_pr/status/1697211016525058328
※2 陸上自衛隊公式X(旧Twitter)の短文投稿 (https://twitter.com/JGSDF_pr/status/1268098282250633216 )
※3 陸上自衛隊公式facebook (https://www.facebook.com/jgsdf.fp
※4 陸上自衛隊中央特殊武器防護隊公式X(旧Twitter)の短文投稿 (https://twitter.com/jsdf_gcc_cnbc/status/1483932842086178819