海戦術

Last-modified: 2024-01-22 (月) 00:10:54
 
 

海域において敵性勢力の意図を破綻させ、自国と味方の意図を達成させるため用いられる戦術の総称
なお典型的な戦争状態に至る前の心理戦は基本的に海軍戦略として本稿とは区別されるコトが多い

海戦に焦点を当てる場合、史実の第二次世界大戦を概観すると軍用航空機と潜水艦および両者に対する目覚ましい戦術の発達が特筆事項として挙げられる

それまでの戦場で見られなかった典型的な状況としては、速力に優れた航空機と隠密性に優れた潜水艦が、敵が最も対応を脆弱とする時期と地点を狙い、重鈍で目立つ艦艇を目掛け殺到し袋叩きにする、というものである

なお関連ページとして基礎海戦ドクトリンを挙げたが、ここで述べられている状況は おおむね一つ前の大戦すなわち WWI における条件、すなわち装甲を持つ蒸気船を主力とする勢力同士における海戦術であり、主として航空機の存在が無視ないし極端に軽視されている
このような旧来の戦闘方式に固執した各国は大戦に突入した途端、新戦術を繰り出す新興国に翻弄され、野望を遂げるコトなく戦禍の中で砕け散っていった  銀河の歴史が、また 1 ページ ( ナレーション : 屋良有作 ) 
 ヘタリア 

 

潜水艦戦

軍用の潜水艦艇を用いた戦闘
敵の潜水艦に対する戦闘は対潜 ( 水艦 ) 戦 ( Anti submarine warfare ) と言う

群狼戦術

3 個以上の潜水艦部隊が共同して単一の標的を包囲下に誘導、殲滅する戦法の 1 つ

ドイツ海軍 レーダー元帥 デーニッツ少将の  思い付き  発案により誕生した
しかし完成した戦術と評するにはムリのある戦法であり、それなりに妥当な対応を行えば別に最適解でなくとも破綻する

手順としては一隊が発見した船団を半包囲を保ちつつ追跡し、逆 方位 包囲のリスクが無い、数的優位の存否など、戦術的妥当性が確認できた時点で奇襲を仕掛ける、というものである

判断に必要な条件が練られておらず、特に哨戒はまだしも潜水艦そのものを偵察に用いている点が致命的である

  • 故事によると

    史実では友軍から敵船団の大まかな位置と目標地を無線で受け取り、近くを うろついている遊撃隊が集結したケースの方が多かったらしいものの、コレはコレで問題であり、暗号化しているとはいえ戦力を隠密性に全振りしているようなユニットの行動に関する情報を大出力の高周波で海洋全域に向けて発信するとは いかにも自殺行為であったと伝えられる

    WWI の戦訓から、既にドイツ軍は単艦での潜水艦戦が ほとんど無意味たるコトを熟知していた
    しかし潜水艦によらず連絡線が(かよ)っていない条件で当時の軍隊が情報交換に利用できた手段は主として無線であり、海上 ( ≠ 海底 ) においては現代ですら通信回線を構築する技術は未だ完成を見ていない

    一応、短波だと減衰するからといって極端な長波長なら水を介しても届くだろうというコトで超長波を用いてみたり、潜水艦同士をケーブル*1で接続して電話線を引いてみたりと苦戦しつつも努力はしているらしい
    しかし これらは俯瞰すると実証を試みたものの基礎研究不足で技術的な解決策が絶望的に足りないために生じている事態であり、日常風景を舞台とした擬人的な風刺を考えると無理に低重音で話してみたり糸電話でコミュニケーションをとってみたり、という具合に妥協に妥協を重ねている状況である
    しかしまぁ、コレが妥当な努力かどうかの判断は読者に任せたい

    というワケで脱線したが、要約としては危険であっても現場で情報交換できないと潜水艦は役に立たないし、大戦当初におけるリスクは さほど大きくなかったため、自殺行為との認識が通念的で非常識な方法たるコトを承知でドイツ軍は試してみた、というコトである

    しかし大戦当初の結果は大方の予想に反して むしろ良好であり、1940 年代初頭における U ボートの活躍は目を見張るものがある
    新兵器の開発が進んでくると失敗どころか返り討ちに遭う確率の方が徐々に高くなっていくが、それでも戦艦ビスマルクに象徴されるような失態続きのドイツ海軍にあって唯一戦果らしい戦果を挙げている部署であったコトから、そうした現場の熾烈な状況が公表されても乗組員の志願者は後を立たず、次々と士気旺盛な若者が決死の覚悟で大西洋へと繰り出していったという

     

    ちなみに、その後 1943 年 5 月を境にナチス ・ ドイツの U - boat 部隊は ほとんど戦果を出せなくなってゆく
    以降の期間は Black May と呼ばれ、この 1943 年 4 月末 ~ 5 月末という わずか約 1 ヶ月の間に 40 隻前後の U - boat が撃沈、同数程度が大破となり、大西洋域における潜水艦の戦力が相対的に ほぼ無視できる水準まで低下してしまった事が露呈したためである
    なお 80 隻というのは当時の総数約 240 隻に対する比率から言っても 3 分の 1 に相当する統計であり、この状態が続けば 2 月で壊滅という状況を意味した

護衛空母 ( Escort Carrier )

輸送船に随伴し、主に対潜哨戒を担う空母
なお、本来は設計前に水上機母艦や航空母艦としての運用を想定しておらず、途中から改造させた いわゆる改装空母などを指す
しかし便宜上、ここでは味方の水上兵力の中で攻撃を主目的としない補助艦として運用される空母、と定義する

( 対潜水艦 ) スクリーニング ( ( Anti-submarine ) Screening )

サッカーやバスケットボールなどの球技でも転用されている概念だが、前提として本隊の前部 を防護 に布陣する部隊をスクリーン ( screen ) と呼ぶコトがある

  1. 脱線するが、

    そうしたプレーはサッカーにおいてスクリーンプレーとも呼ばれ、ボールや捕球した味方選手と相手選手の間に割り込んで選手同士の連携や捕球を妨害するようなプレーを指す
    割り込んで捕球してから方向転換する場合はスクリーン ( & ) ターンと呼ぶコトもある
    ふざけたロスタイムですね ( 怒 )

そして、特に 哨戒 対処する対象が あらかじめ想定されている場合は 「 対 ( = Anti ) [ 対象 ] スクリーン 」 などと称し、陣形の前部で潜水艦に対する輸送船の盾として活動するコトを船団護衛に際しては対潜水艦スクリーニングと言ったりもする

この時、

 

Figure_2.PNG

 

のように ( 十字は航空機の位置 )、航空機を静止させたまま監視させた場合は死角が大きくなり突撃を許してしまうリスクが非常に大きくなる

そのため本隊を中心に回転させるか前後に振動させるかは状況によるが、

 

Figure_3.PNG

 

のようにして定期的に機動させるコトにより、

実態として以下のような壁が作られるように立ち回るのが、ひとまず標準的なモデルとなる

 

Figure_4.PNG

 

なお航空機の不足などによりユニット同士の距離が長過ぎると以下のように 紹介 哨戒網が薄くなり、監視の穴となる

 

Figure_5.PNG

 

しかし、どの程度の機数を揃えれば適切か、という点については機械的、一概に結論付けるコトはできない
なぜなら各ユニットはドクトリンによる性能差があり、艦隊というシステムが結果的に発揮するパフォーマンスには少なくとも 4 パターン、研究レベルを含めれば更に相当数 存在する
かつ司令官たるプレイヤーの練度や能力により、レスポンスタイムやレスポンスの質に差が生じるためである
より具体的には、敵が想定通りの行動を採る場合には有効なプロトコルだが、このスクリーンという " 陣形 " だけでは対処できない状況に陥るコトもある
そうした場合、司令官たるプレイヤーは後述する戦術を駆使して立ち向かわなければならないだろう

 

海上航空戦

戦間期 ~ WWII 初期の護衛空母、輸送船、潜水艦、駆逐艦、巡洋艦または戦艦という 5 者で構成されていた環境に本格的な海上航空戦を担い得る正規空母が追加されると、艦艇同士の本格的戦闘は ほとんど潜水艦と水上艦との間でしか生じなくなった*2
また、それまでの環境において航空機は艦艇に対してのみ干渉し得たが、航空機同士の接触が頻繁に発生するようになる
そのような新しい環境下では、空母打撃群 ( CVBG, Carrier Vessels Battle Group ( ≠ ( 邦訳はいずれも空母打撃群だが、次に示すものはミサイル駆逐艦やジェット戦闘機などを保有する現代の それを指す ) CSG, Carrier Strike Group ) に象徴される航空機運用能力が海戦の勝敗を左右するようになる

ゲーム内距離単位 ( = game distance unit ) において砲弾の届く範囲が巡洋艦で 50、戦艦が 70 なのに対し、航空機は局地戦専用機たるロケット戦闘機ですら 200 以上ある
またスピードが最も優れた艦種である駆逐艦の最大レベルであっても数字にして 100 強である一方、航空機の中で最も鈍足の戦略爆撃機ですら初期のレベルで 300 程度あり、また海軍爆撃機や迎撃機では最大レベルになると 700、800 程度に達する
したがって航空優勢がある場合、動き続ける空母機動艦隊を水上打撃艦隊が追撃する状況では空母を進発する航空機が少なくとも 3 倍、平均的には 7 ~ 8 倍の速度で交戦と退却を繰り返す
そして交戦の度に水上打撃艦隊は現在位置と次の目標地を特定されてしまうため、空母機動艦隊は自身や味方の航空機の行動圏内かつ可能な限り彼らが向かう地点から遠ざかるように次の目標地点を定め得る
このプロセスを繰り返すコトにより、水上打撃艦隊は一度も反撃できぬまま空母の存在が疑われる水域を闇雲に捜索する状態に陥る
このように、数的優位が確保できない状況でも空母機動艦隊は情報戦におけるアドバンテージが圧倒的であり、しかも水上打撃艦隊側が空母の移動できる領域を 制限す 収束させるためには左右両翼および前部の三方を遮断せねばならず、したがって この場合は少なくとも全戦力の 3 分の 2 を分散、遊兵化させる必要が生じる
しかし五大洋が戦場となった場合は点在する陸地が大陸と接続されていないため、航空機部隊がもたらす情報に基づいて敵から一定の距離を保つよう機械的に動き続けさえすれば、分散しても 3 倍以上といった極端な戦力差でもなければ航空機部隊が枯渇するより先に空母機動艦隊が陸地に追い詰められる事態は現実的に起こり得ない

 

空母戦術

珊瑚海海戦やマリアナ沖海戦のような正規空母を中核とする艦隊同士における戦術を空母戦術と呼ぶような慣習が一般的にあるワケではないが、差し当たり本稿では左様に称することとする
先述通り空母機動艦隊は敵艦隊との距離を一定に保つよう機動し続けるコトにより、機械的な判断だけでも それなりの優位を確保し得る
そしてコレを双方が志向する状況、つまり空母機動艦隊同士が交戦する場合では双方が一定距離を維持しようとすることがある
また双方が翻意しない場合、下図のように艦隊同士のちょうど中間地点を軸に円運動をする状況が典型的な戦闘のパターンとして あり得る

 

Figure_7.PNG

 

他方、下図のように並行追撃戦の形態を採るパターンも あり得る

 

Figure_8_改.PNG

 

ただし実戦においては陸地への衝突を回避したり、劣勢側が交戦機会を減らそうとするので、序盤は上図のような形態を採っていても、途中から下図のように戦場全体が弧を描きつつ移動するパターンに移行するコトが多い

 

Figure_9_改.PNG

 

よって先述までのような戦闘形態が出現した場合に有利または不利と見なし得る局地的なルーチンやプロトコルがあれば、それは空母戦術と呼ぶに相応しいだろう

そのような戦法には、以下のようなものが考えられる

 

大規模戦闘機網 ( Big Blue Blanket ( System ) )

空母戦術の概要では あたかも空母機動艦隊に対する最大の脅威が攻撃機か潜水艦のような印象を与えたかも知れない
しかし、WWII では艦艇に対する最大の脅威は雷撃機だったと言っても過言ではないだろう
なお CoW ではモデル簡略化のためか海軍爆撃機 ( Naval Bombers ) という  謎の  名称を与えられているが、史実では先述した “ 雷撃機 ( Topedo Bomber ) ” の他に “ 対潜哨戒機 ( Maritime Patrol Aircraft ) ” などと呼ばれていた機体種別であり、「 機体の外部か爆弾倉に魚雷や爆雷等の水雷兵器を抱えておき、敵艦艇の目前で海上に投下、雷撃 」 というような任務を担った航空機達である
この雷撃機や対潜哨戒機に対抗するためのノウハウとしては、Big blue blanket という戦術、戦法が知られている
330px-Big_blue_blanket.svg.png
上図のように、本戦法は概して輪形陣を旨とする
艦隊の最外縁に戦闘機、その内側に哨戒艦を配置し、哨戒艦が敵機をレーダーなどで捉えると、その情報が艦隊全体に伝わり主に戦闘機で構成される味方の航空隊が迎撃に向かうという内容である
アメリカ海軍のジョン・スミス・サッチ ( John Smith Thach ) 大将が考案したとされ、日本帝国陸海軍による航空特攻を防ぐのに用いられた

 

アウトレンジ戦法

敵艦隊に含まれる全戦力の射程外から攻撃する戦法
空母の利点を十分に理解していないプレイヤーが陥りがちな状況であり、支援機や支援艦の協力という選択肢を潰すコトから一般的には悪手と評価される
しかし、後述のデメリットを無視できるほど機体性能に著しい差がある、あるいは それ以外に勝機が存在しないなど、例外的な条件が揃う場合もある
例えば敵の迎撃機が味方の攻撃機に比べて極端に鈍足であるとか、性能は少し低くても数が多く囮の攻撃隊を用意したり飽和攻撃を行える場合、全ての味方攻撃機には対処できない状況に敵を陥らせるコトができるため、一概に不利とは限らない

まず敵艦隊の視程から逸れていれば航空攻撃以外は退けるまでもなく そもそも到達しないのだから、本来、理論的には味方艦隊外縁が敵艦隊の視程ギリギリに布陣していれば充分である
不測の事態、例えば進路が暴露して距離を詰められる場合などを考慮した場合に多少の猶予が必要としても、敵艦隊の射程の 2 ~ 3 倍程度、自艦隊航空機の航続距離の半分程度の距離を取れば実戦でも砲熕兵器の射程内に誘い込まれる公算は極めて小さくなる
そのため具体的には ゲーム内距離単位 換算で戦艦の射程たる 70 の 2 ~ 3 倍すなわち 140 ~ 210 程度、あるいは航続距離の半分すなわち 200 ~ 400 程度の範囲を安全圏と見なせば妥当だろう
しかし敵の航空攻撃をも届かない地点まで離れた状態で攻撃しようすると、様々に弊害が生じるようになる
それは一言で言えば支援機や支援艦の協力が得られないコトである
海戦によらず、WWII 当時の常識として航空攻撃では本隊が向かう前に偵察機や陸上ユニット等により索敵を行い、標的そのものと標的の置かれている状況を暴露させ、かつ攻撃実行まで監視し続ける ( = 触接 ) のが通例だった
同様に海戦においても長大な航続距離を持つ攻撃機や爆撃機等が艦隊に含まれていようと、支援機の航続距離が空母戦力による組織的戦闘能力の発揮できる限界だった
 しかし  また標的に関する情報以前の課題として、標的までの距離が長すぎると他の戦力に発見されるリスクも高くなる
味方攻撃隊の存在と位置が暴露されれば敵艦隊は哨戒艦からの詳細情報をもとに迎撃機等による抵抗を強化し、遭遇確率と遭遇した場合の機数を増加させるプロトコルを発動するだろう
そうなると攻撃による費用対効果が見込めなくなり、攻撃は断念せざるを得なくなる
また攻撃を中止した後に敵は味方攻撃隊に対し追撃を試みる選択肢がある
この時、敵艦隊と味方艦隊の距離が離れるほど味方攻撃隊の逃走ルートは長く回収までの時間を要するため、味方艦艇や迎撃機による迎撃を難しくする

 

ところで 「 敵の偵察機は確認されたものの敵攻撃隊の存在は暴露されなかった 」 状況は、敵から見ると 「 敵は攻撃意図を以て情報収集を試みてきたが主たる標的が判明しなかった 」 状況になる
しかし、より厳密に言えば 「 暴露されなかった 」 のは 「 敵攻撃隊 」 ではなく 「 敵本隊 」 であり、対潜哨戒スクリーンを狙った迎撃機隊の可能性なども否定できず直掩機が減れは空母を直撃されるリスクが高まるコトから、この情報だけでは敵艦隊は迎撃機を動かせない

 

関連ページ

海戦のいろは
基礎海戦ドクトリン
水陸戦のいろは
基礎水陸戦ドクトリン
戦術
航空戦術

外部リンク

公式フォーラム : Guide to Naval Warfare for 1.5(バージョン 1.5 の海戦ガイド)
FM 17-95 Chapter 4 Security Operations>Section II. Screen

 
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コメント [hatena]

  • ガチすぎるけどめっちゃ助かる -- Dream Cloud? 2024-01-13 (土) 21:21:51
    • そっかー…
      そういうコメントは とっても ありがたいけど、かなーり手抜きだから加筆者募集しているよ… -- 2024-01-13 (土) 21:31:06
  • いやでも実践でこういうことをできる人少ないでしょうし -- Dream Cloud? 2024-01-15 (月) 20:20:10
  • 陸戦のいろはの戦線のやつ見てwikiの真価に気づいた(まだ戦線うまく使えてないけどチャレンジ中) -- Dream Cloud? 2024-01-15 (月) 20:22:15

*1 電纜(デンラン)
*2 細かい事を言えば本当は当初から空母として設計されながら比較的規模の小さな軽空母を挟むが、ここでは省略する