クラス/【スペシャリスト・メイジ】

Last-modified: 2023-05-03 (水) 04:09:47

原語はSpecialist Mage。
幻術や死霊魔術、召喚魔法といった特定分野の魔法に長けた魔法使い。
クラシックD&Dでは存在しないタイプの魔法使いだが、AD&D第1版では後に追加されたイリュージョニストなどでその基本形が形成され、第2版でスクールの設定と共に基本ルールの1つとして確立した。
基本的な役割はマジックユーザーメイジと同じ。得意分野の呪文には強いが、得意分野以外の呪文は不得手とし、得意分野の対極に位置する呪文は全く扱えないという特徴を持つ。
1980年代の頃はこういった魔法の種別や系統はあまり見られなかったが、AD&D第2版で呪文に様々な系統(スクール)が設定されて以降、様々なファンタジー作品で散見されるようになった。
特に2010年以降のライトノベル作品では死霊魔術に長けたネクロマンサーや、召喚魔法に長けたサモナーといった一風変わった魔法(というチート設定)でゴリ押しする主人公が見られる。

アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ

イリュージョニストだけでなく、スペシャリスト・メイジ全てに言えることだが、あくまで基本はメイジであり、メイジを経験していないプレイヤーにはいろいろな意味で難しいとされる。

第1版

特定分野の呪文を得意とする魔法使いとして「イリュージョニスト」がクラスとして存在していた。

第2版

ウィザードクラスの1つ。
基本的な能力はメイジと変わらないが、専攻するスクールにより特定の能力値で高い数値を要求される。また種族制限もある。
ヒットダイスはd4。最大10d4で、11レベル以降はHP+1。一般技能の基本数は4で追加修得は3の倍数レベル。武器技能の基本数は1で追加修得は6の倍数レベル。
第2版からは、個々の呪文は8つのスクールのいずれかに分類されており、スペシャリスト・メイジはそのうちの1つのスクールの魔法を専攻している。
スペシャリスト・メイジの最大の特徴は、専攻したスクールのウィザード呪文を得意とし使用回数が増加する代わりに、専攻分野から対極に位置するスクールの呪文の習得が不可能になる点である。
呪文の使用回数の基本数はメイジと同じだが、加えて各レベルにつき1つずつ専攻のスクールの呪文を記憶、使用できる。
さらに、専攻するスクールの呪文を使用した場合、対象のST判定に-1のペナルティを課し、逆に専攻するスクールの呪文によりST判定を要求された場合は自らのST判定に+1のボーナスを得る。
また呪文の習得確率に関しては、専攻するスクールに関する呪文は成功率にボーナスを得る。ただし専攻範囲外のスクールの呪文はペナルティが課せられてしまう。専攻に対極するスクールの呪文は修得する機会すら無い。この時、呪文によっては専攻するスクールと対極するスクールが同居していることがあるが、その場合は専攻スクールと見なされる。
また、未訳のサプリメント『Complete Wizard's Handbook』ではスペシャリスト・メイジはスクールごとに設定された特殊能力を得ることができる。ただしこれらの特殊能力は概ね8レベル以降の修得となる。


スペシャリスト・メイジはその専門性ゆえに、原則としてマルチクラスが不可能となっている。この唯一の例外が、イリュージョン/ファンタズムに種族として高い適性を有するノームのイリュージョニストである。ノームの中にはファイターシーフクレリックのいずれか1つのクラスと、イリュージョニストのダブル・マルチクラスとして活躍している者がいる。

アブジュラー

防御呪文である「アブジュレーション」を専攻するスペシャリスト・メイジ。
必要条件は人間であることと、ウィズダムが15以上であること。
対極となるスクールはオルタレーションとイリュージョンの2つ。どちらも汎用性の高い呪文が多く、攻撃用に使える呪文に乏しくなる点が悩みどころ。
またアブジュレーションはその性質上、相手にST判定を要求する呪文がかなり少ないため、ST判定へのボーナスやペナルティが発動しにくい。
追加される特殊能力は以下の通り。

  • 毒、麻痺、即死魔法に対するST判定に+1のボーナス。
  • アーマークラスが1強化。
  • ホールド系呪文に完全な耐性。

イリュージョニスト

幻術である「イリュージョン/ファンタズム」を専攻するスペシャリスト・メイジ。
必要条件は人間ノームのいずれかであることと、デクスタリティが16以上であること。複雑な身振りや挙動を必要とするため、デクスタリティが必要という設定。
対極となるスクールはアブジュレーション、インヴォケーション/エボケーション、ネクロマンシーの3つ。地味にありがたいアブジュレーションだけでなく、あと2つも攻撃や防御に有用な呪文が多いのが厳しい。
またイリュージョン/ファンタズム呪文はST判定の成否だけでなく、術者の創意工夫で効果が上下することがあるため、術者(とプレイヤー)の素質(閃きと口車)に左右されてしまう。
追加される特殊能力は以下の通り。

インヴォーカー

魔法のエネルギーを操る「インヴォケーション/エボケーション」を専攻するスペシャリスト・メイジ。
必要条件は人間であることと、コンスティテューションが16以上であること。魔法のエネルギーを引き出して制御することは肉体に負担がかかるため、高いコンスティテューションを要すると記述されている。
対極となるスクールはエンチャントメント/チャーム、コンジュアレーション/サモニングの2つ。
ダメージ呪文が多く直接的な火力が高いので、好きな人は好きだろう。
追加される特殊能力は以下の通り。

  • インヴォケーション/エボケーションに属する呪文に対するST判定に、さらに+1のボーナスを得て+2になる。
  • 上記のボーナスがさらに+1され、+3になる。
  • 3レベル以下のインヴォケーション/エボケーションに属する呪文1つに対して完全な耐性を得る。

エンチャンター

人や物体を問わず、自他に魔法の力を与える「エンチャントメント/チャーム」を専攻するスペシャリスト・メイジ。
必要条件は人間エルフハーフエルフのいずれかであることと、カリスマが16以上であること。他に対する影響力が必要とされるため、カリスマが重要と記述されている。
対極となるスクールはインヴォケーション/エボケーションとネクロマンシーの2つ。対極スクールである2つは攻撃呪文が多いため、これらを切り捨てることになる。
追加される特殊能力は以下の通り。

  • 制限こそあるが、特殊な「フリー・アクション」を使えるようになる。
  • チャーム系呪文に対して完全な耐性を得る。

トランスミューター

自他を変化、もしくは変質させることに特化したスペシャリスト・メイジ。「オルタレーション」スクールを専攻している。
必要条件は人間ハーフエルフのいずれかであることと、デクスタリティが15以上であること。
対極となるスクールはアブジュレーションとネクロマンシーの2つ。
オルタレーション呪文は種類が多いだけでなく便利な呪文が多数ある点で優秀だが、対極する2つのスクールも有用な呪文が少なくないのが悩みどころ。
追加される特殊能力は以下の1つのみ。

  • オルタレーションの呪文や呪文効果のアイテムに対するST判定にボーナスを得る。高レベルでさらにボーナスが増える。

ディビナー

探知や感知、鑑定といった知覚系呪文を得意とするスペシャリスト・メイジ。「ディビネーション」スクールを専攻している。
必要条件は人間エルフハーフエルフのいずれかであることと、ウィズダムが16以上であること。ウィズダムが必要な理由は、忍耐力と洞察力が必要とされるためと解説されている。
対極となるスクールはコンジュアレーション/サモニングのみ。
ディビネーション呪文は無いと冒険中に詰む可能性がある。しかし、第2版では4レベル呪文までは専攻に関係なく使えるという仕様のため、どちらかというとNPC向けかもしれない。未訳だが、後に「ユニバーサル・スクール」という追加設定により前述の仕様が変更されているため、プレイ時には確認しておかないと後悔するハメに陥る可能性大。
追加される特殊能力は以下の通り。

  • ファインド・トラップ」が制限付きで使用可能になる。
  • ESP」をはじめとする探知系呪文に対して耐性がつき、これらの効果に反応しなくなる。

コンジャラー

生物や物体、エネルギーなどを召喚する「コンジュアレーション/サモニング」に特化したスペシャリスト・メイジ。
必要条件は人間ハーフエルフのいずれかであることと、コンスティテューションが15以上であること。召喚呪文自体が術者の肉体に負担をかけるため、コンスティテューションが重要になると解説されている。
対極となるスクールはグレイター・ディビネーション(ディビネーション)とインヴォケーション/エボケーションの2つ。
対極する2つのスクールに関して、プレイヤーがどう捉えるかで印象が大きく変わる。またAD&Dでは面白い呪文が多いスクールだが、コンピュータRPGのような召喚魔法のつもりで選ぶのは危険かもしれない。
追加される特殊能力は以下の通り。

  • コンジェアレーション/サモニングの呪文を使用する際、マテリアル・コンポーネントが不要になる。
  • 他者がコンジェアレーション/サモニングの呪文で召喚したクリーチャーのうち、ヒットダイスの低いものに限り、「ディスペル・マジック」をかけたように破壊、消滅させることができる。

ネクロマンサー

生命力や死者、あるいはアンデッドに関わりが深い「ネクロマンシー」スクールを専攻するスペシャリスト・メイジ。
必要条件は人間であることと、ウィズダムが16以上であること。生命と死という禁断の知識を追求するためには強い意志力を必要とするため、ウィズダムが重要と記述されている。
対極となるスクールはイリュージョンとエンチャントメント/チャームの2つ。どちらも戦闘や交渉などで有用な呪文が多く、これらを切り捨てることになる。
基本ルールだけでは呪文の種類が少ないのが難点。戦闘に利用できる呪文は多いが、単体相手向けの呪文が多い。それでも「ネクロマンサー」やアンデッドに浪漫を求めるならば一興。
なお未訳の上に原則としてNPC用だが、「The Complete Book of Necromancers」というサブリメントが出るくらいには人気なのかもしれない。
追加される特殊能力は以下の通り。

  • ネクロマンシー呪文に対するST判定に、さらに+1のボーナスを得る。
  • スピーク・ウィズ・デッド」を制限付きで使用可能。
  • アンデッドからの特殊能力に対して、部分的な耐性を得る。具体的にはST判定に+2のボーナスを得ることと、エネルギードレインなどの抵抗できない特殊能力に対してもペナルティ付きとはいえ、ST判定が可能になる。

関連用語

マジックユーザー】【ウィザード】【メイジ